JPWO2004056872A1 - タンパク質のチオール基を保護する方法 - Google Patents

タンパク質のチオール基を保護する方法 Download PDF

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Abstract

分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加して、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護する方法。

Description

本発明は、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護することによる、効率的で効果的なタンパク質の生成方法に関する発明である。より具体的には、該方法により得られるタンパク質を含有する有用な医薬に関するものである。
タンパク質に遊離のシステイン残基が存在すると、遊離のシステイン残基のチオール基を介して分子間でジスルフィド結合が形成され、タンパク質どうしの重合が起こることが知られている。また、遊離のシステイン残基のチオール基は、分子内または分子間で形成されたジスルフィド結合と交換反応を起こし易く、更に、遊離のシステイン残基は何らかの修飾を受け易いことも知られている。
これらの重合、修飾又は交換は、タンパク質の好ましい高次構造の形成を妨げたり、タンパク質の活性部位に変化を生じさせるため、タンパク質の活性が低下する原因となりうる。
遊離のシステイン残基による上述のような反応は、タンパク質の精製時や保存時に起こることが多い。従来、このような反応を防ぐために、タンパク質溶液のpHを酸性側に保ったり、システイン、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アスコルビン酸のような酸化防止剤を添加する方法が行われてきた(東京化学同人 生化学辞典 第3版 p182b)。
しかし、タンパク質溶液のpHを酸性側に保つためには、タンパク質の精製に用いる溶媒や緩衝液が限定されることとなり、この限定により精製効率の低下を招くことが考えられる。また、精製時や保存時に酸化防止剤を溶媒や緩衝液に添加しても十分な反応抑制効果が得られなかったり、酸化防止剤を除いた後には、重合を抑制できないなどの問題がある。
そこで、システイン残基のチオール基を何らかの化合物で修飾して保護する方法が考えられる。タンパク質のシステイン残基のチオール基を修飾する試薬としては、1)5’,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、2,2’(4,4’)−ジピリジルジスルフィド、四チオン酸、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)、酸化型グルタチオンなどの酸化剤、2)p−メルクリ安息香酸(PMB)、p−メルクリベンゼンスルホン酸(PMBS)などのメルカプチド形成剤、3)ヨード酢酸、ヨードアセトアミド、N−エチルマレイミド(NEM)などのアルキル化剤が挙げられる(東京化学同人 生化学辞典 第3版p182b)。しかしこれらは、活性にチオール基を必須とするSH酵素などのチオール基を修飾することを目的として用いられるため、このような試薬をタンパク質の活性に関与していない遊離のチオール基の保護という目的で用いると、逆に、タンパク質の高次構造形成を妨げる結果となり、タンパク質の活性に影響を及ぼしてしまうことが多い。一方、タンパク質の活性には影響を及ぼさないが、タンパク質を医薬品として使用する際に、残存した試薬を徹底的に除去しなければならない等の問題を生じることもある。従って、タンパク質の遊離のチオール基を保護するという目的で試薬を用いる際には、可能な限り、医薬品添加物として使用可能なものを用いることが望ましい。
また、医薬品用途に用いる蛋白質を生産する際には、血清を使用しない無血清培養を用いることが望ましいが、動物細胞培養の際に血清を使用しないと、細胞の機能維持に必要とされる成分の補給が十分に行えず、十分な有用蛋白質を確保できない場合が多く、生産される蛋白質が目的蛋白質と物理的、生化学的、生物学的に微妙に変化している場合があり、例えば、重合体が生成され易いなどの問題点がある。
東京化学同人 生化学辞典 第3版 p182b
本発明の課題は、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護することによる、効率的で効果的なタンパク質の生成方法の確立と、該タンパク質を含む薬剤を提供することにある。
そこで本発明者らは、鋭意、遊離のシステイン残基の保護剤についての検討、反応条件についての検討を重ね、反応生成物の解析を詳細に行い、かかる問題点を解決することにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加して、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護する方法。
(2)分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加して、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護することにより、タンパク質どうしのチオール基を介した重合反応を抑制する方法。
(3)分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加して、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護することにより、タンパク質の修飾を抑制する方法。
(4)分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加して、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護することにより、タンパク質のチオール基とタンパク質の分子内又は分子間で形成されたジスルフィド結合との交換反応を抑制する方法。
(5)分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物として、シスチン、ホモシスチン、リポ酸又は酸化型グルタチオンを添加することを特徴とする上記1から4のいずれかに記載の方法。
(6)分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物として、シスチンを添加することを特徴とする上記1から5のいずれかに記載の方法。
(7)分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物と、同時に又は別々に、分子内にチオール基を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加することを特徴とする遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護する方法。
(8)分子内にチオール基を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物として、システイン、ホモシステイン、グルタチオン又はジヒドロリポ酸を添加して処理することを特徴とする上記7に記載の方法。
(9)分子内にチオール基を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物として、システインを添加して処理することを特徴とする上記7又は8に記載の方法。
(10)タンパク質が組換え体タンパク質であることを特徴とする上記1から9のいずれかに記載の方法。
(11)タンパク質が抗体であることを特徴とする上記1から9のいずれかに記載の方法。
(12)抗体がF(ab’)化抗体であることを特徴とする上記11に記載の方法。
(13)抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする上記11又は12に記載の方法。
(14)モノクローナル抗体が可変領域にチオール基を有することを特徴とする上記13に記載の方法。
(15)モノクローナル抗体が可変領域に遊離のシステインを有することを特徴とする上記13又は14のいずれかに記載の方法。
(16)モノクローナル抗体が重鎖の超可変領域に、配列表の配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を含み、軽鎖の超可変領域に、配列表の配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を含む上記13から15のいずれかに記載の方法。
(17)モノクローナル抗体が、配列表の配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列表の配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む上記13から16のいずれかに記載の方法。
(18)タンパク質が無血清培地で培養された細胞を使用して生産されたものであることを特徴とする上記1から17のいずれかに記載の方法。
(19)上記18に記載の方法により得られるタンパク質。
(20)上記19に記載のタンパク質を含有する医薬組成物。
(21)抗腫瘍剤であることを特徴とする上記20に記載の医薬組成物。
第1図は、無血清培養によるF(ab’)化GAH抗体の重合抑制効果とpHの影響について示す図である。
第2図は、無血清培養によるF(ab’)化GAH抗体の重合抑制効果と反応温度の影響について示す図である。
第3図は、無血清培養によるF(ab’)化GAH抗体の重合抑制効果とシスチン濃度の影響について示す図である。
第4図は、GAHホール抗体の活性化前の陽イオン交換クロマトグラムについて示す図である。
第5図は、精製GAHホール抗体の活性化後の陽イオン交換クロマトグラムについて示す図である。
第6図は、精製GAHホール抗体の重合抑制処理後の陽イオン交換クロマトグラムについて示す図である。
第7図は、精製GAHホール抗体の重合抑制処理後脱塩・濃縮した精製GAHホール抗体の陽イオン交換クロマトグラムについて示す図である。
第8図は、精製F(ab’)化GAH抗体の陽イオン交換クロマトグラムについて示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において分子内にジスルフィド結合を有し、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物としては、シスチン、ホモシスチン、リポ酸、酸化型グルタチオン又はグルタチオンジスルフィドが挙げられ、好ましくはシスチンが挙げられる。また、本発明において、分子内にチオール基を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を、同時に又は別々に添加する方法も挙げられる。
本発明において分子内にチオール基を有しタンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物としては、システイン、ホモシステイン、グルタチオン又はジヒドロリポ酸が挙げられ、システインが特に好ましい。
本発明において、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさないとは、タンパク質の活性を上昇又は低下させないことである。例えば、タンパク質が抗体の場合、抗原抗体反応の反応性が上昇又は低下しないことが挙げられる。
本発明においてタンパク質とは、その分子構造内に遊離のシステイン残基を有していることが特徴である。ここで遊離とは、システイン残基が不対電子を有し、不安定で、反応性に富んだ状態を指す。さらに、該システイン残基のチオール基が反応性に富むことがより好ましい。
本発明においてチオール基とは、タンパク質の活性に直接的又は間接的に関与している場合が挙げられ、直接的に関与していることがより好ましい。ここで、タンパク質の活性とは、例えば抗原抗体反応における反応性、酵素反応における反応性が挙げられる。直接的に関与している例としては、該チオール基を修飾試薬などで修飾するとタンパク質の活性の低下を招く場合が挙げられる。一方、間接的に関与している例としては、該チオール基の修飾により高次構造の形成が妨げられることによりタンパク質の活性が低下する場合が挙げられる。
本発明において保護とは、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼす重合、修飾又は交換を抑制することが挙げられ、より具体的には、タンパク質どうしのチオール基を介したジスルフィド結合の形成による重合の生成抑制、遊離のシステイン残基の修飾の抑制、又は遊離のシステイン残基のチオール基による分子内若しくは分子間で形成されたジスルフィド結合との交換反応の抑制が挙げられ、タンパク質どうしのチオール基を介したジスルフィド結合の形成による重合の生成抑制がより好ましい。この場合において、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基にシスチンのようなジスルフィド結合を有する化合物が反応し、次式のようにチオール−ジスルフィド交換反応が起こる。
Pr−SH+R−S−S−R→Pr−S−S−R+R−SH 式(I)
(Prはタンパク質を示す。Rは官能基以外の残基を示す。)
従って、反応により生成するPr−S−S−Rは、R−S−S−Rを除去した後でも安定的に存在し、タンパク質どうしの重合などPr−SHを介した反応は抑制される。
また、このような方法においては、タンパク質生産時のいずれの段階で分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加しても良い。例えば、後述の実施例で示したGAH抗体で行う場合には、F(ab’)化された最終精製品(実施例1から3)やホール抗体の活性化直後(実施例4から6)にシスチンを添加する方法が挙げられる。
本発明の方法に溶媒が用いられる。その溶媒は特に限定されるものではないが、タンパク質のシステイン残基のチオール基とシスチンのジスルフィドの交換が起こる液が好ましい。具体的には、弱酸性〜アルカリ性の緩衝液、好ましくは、中性から弱アルカリ性の緩衝液が適当である。
添加する分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物の濃度は特に限定されるものではないが、シスチンを例として挙げると、タンパク質のシステイン残基のチオール基とシスチンのジスルフィドの交換が起こるシスチン濃度が好ましい。具体的には、0.01〜100mM、好ましくは0.1〜10mMが適当である。
タンパク質濃度は特に限定されるものではないが、タンパク質のシステイン残基のチオール基と分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物のジスルフィドの交換が起こる濃度が好ましい。具体的には、0.01〜1000mg/mL、好ましくは0.1〜100mg/mLが適当である。
反応温度は特に限定されるものではないが、例えば、タンパク質のシステイン残基のチオール基と分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物であるシスチンのジスルフィドの交換が起こる温度が好ましい。具体的には、−20〜60℃、好ましくは0℃〜50℃が適当である。
また、このような方法においては、タンパク質とともにシステインのようなチオール基を有する化合物が存在しても、過剰のシスチンを添加することで式(I)の反応は起こる。例えば、WO03/048357公報で示されているように無血清培地にて生産されたタンパク質は、タンパク質産生細胞の機能維持に必要とされる成分の補給が十分に行えず、十分な活性を有するタンパク質を確保できない場合がある。このような場合には、システイン等にてタンパク質の活性化処理をする場合があるが、後述の実施例で示したようにGAH抗体の重合抑制を、システインによるホール抗体の活性化の直後に行うこともできる(実施例4)。
本発明において重合とは、チオール基を介してタンパク質が分子間ジスルフィド結合を形成することによる、タンパク質の高次構造変化、タンパク質の活性の変化、2量体、3量体などの生成が挙げられる。好ましくはタンパク質の活性の変化、2量体、3量体の生成が挙げられ、より好ましくは2量体、3量体の生成が挙げられる。
本発明において修飾とは、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基に活性に実質的な影響を及ぼすような化合物が結合することによる、タンパク質の高次構造変化、タンパク質の活性の変化などが挙げられる。好ましくはタンパク質の活性の変化が挙げられる。
本発明において交換とは、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基とタンパク質の分子内又は分子間で形成されたチオール−ジスルフィド結合が形成することによる、タンパク質の高次構造変化、タンパク質の活性の変化などが挙げられる。好ましくはタンパク質の活性の変化が挙げられる。
本発明において組換え体タンパク質とは、抗体、酵素、増殖因子、サイトカインなどが挙げられ、より好ましくは抗体が挙げられる。
本発明において抗体とは、ホール抗体(全長抗体、抗体全体)、抗体断片(抗体フラグメント、例えば、F(ab’)、F(ab’)、scFv(一本鎖抗体))又は抗体誘導体が挙げられ、より好ましくはF(ab’)化抗体が挙げられる。
本発明においてモノクローナル抗体とは、重鎖の超可変領域に、配列表の配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を含み、軽鎖の超可変領域領域に、配列表の配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を含む抗体が挙げられる。これらのアミノ酸配列は、通常、重鎖及び軽鎖の各鎖の3つの超可変領域に、N末端側から、配列番号1、2及び3ならびに配列番号4、5及び6の順でそれぞれ含まれる。超可変領域は、免疫グロブリンの抗体としての特異性、抗原決定基と抗体の結合親和性を決定するものであり、相補性決定部とも呼ばれる。従って、かかる超可変領域以外の領域は他の抗体由来であっても構わない。すなわち、抗原との結合活性(反応性)を損なわない範囲で一部のアミノ酸を置換、挿入、削除あるいは追加する等の改変を行ったものも本発明において使用できるモノクローナル抗体に含まれる。
より具体的には、配列表の配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列表の配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、すなわちGAH抗体が挙げられる。GAH抗体とは、胃癌及び大腸癌との反応性からスクリーニングされた癌に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体であり(EP526700号公開公報又はEP520499号公開公報)、この抗体は、癌患者由来リンパ球とマウスミエローマ細胞とのハイブリドーマを作製し、上記の特定のアミノ酸配列を有するものを選択することによって得ることができるし、遺伝子工学的な手法により作製することもできる(EP520499号公開公報)。
かかるGAH抗体においては公知のヒトアミノ酸配列におけるシステインの位置と比較して、配列表の配列番号7における32番目のシステインに特徴がある。即ち、これは分子内でのジスルフィド結合形成には関与しない遊離のシステインと推定される。該システイン残基は配列表の配列番号1に示した配列中の4番目に相当し、重鎖の超可変領域に位置することから抗原との結合に関与していると考えられる。
本発明において無血清培地とは、培地成分中に牛(胎児)血清などの血清を含まない培地が挙げられる。一例として、本実施例に記載のような無血清培地CDCHO(インビトロジェン社)及びExCell325−PF(JRH社)などが挙げられる。
本発明は、前述の抗体をはじめ、本発明の方法で得られた蛋白質を有効成分として含有する医薬、例えば上記物質と薬学的に許容しうる担体とからなる医薬組成物を提供し、種々の形態の治療用製剤を提供する。薬学的に許容しうるとは、悪心、目眩、吐き気等投与に伴う望ましくない副作用、頻回投与時の製剤に対する免疫応答などがおきないことを意味する。さらに、本発明の蛋白質に例えば毒素等の物質を結合させた抗体も医薬品として使用可能である。例えば、ドキソルビシン等の抗腫瘍剤等の薬剤を封入したリポソーム等に抗体等の蛋白質を結合させたものを挙げることもできる(EP526700号公開公報、EP520499号公開公報及びEP1174126号公開公報)。抗体が結合した腫瘍性物質含有リポソームは、公知の方法、例えば、脱水法(WO8806441号公報)、安定化剤を加え液剤として用いる方法(特開昭64−9931号公報)、凍結乾燥法(特開昭64−9931号公報)等により製剤化することができ、血管内投与、局所投与などの方法で患者に投与することができる。投与量は有効成分の抗腫瘍性物質の種類に応じて適宜選択することができるが、例えばドキソルビシンを封入したリポソームを投与する場合には、有効成分量として50mg/kg以下、好ましくは10mg/kg以下、より好ましくは5mg/kg以下で用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例には限定されない。
製造例1 無血清培養によるF(ab’)化GAH抗体
(1)無血清培養によるGAH抗体のホール抗体(以下、GAHホール抗体と称する)の培地中への生産
無血清培地CD CHO(インビトロジェン社)及びExCell325−PF(JRH社)1Lにそれぞれ4mmolのグルタミン(SIGMA社)、10mgのインシュリン(SIGMA社)を溶解し0.22μmボトルトップフィルター(コーニング・コースター社)で無菌ろ過を行い細胞培養培地を調製した。調製した細胞培地を予め高圧蒸気滅菌器(サクラ精機社)で滅菌しておいた1Lスピンナーフラスコ(Belco社)に無菌的に仕込み培養制御装置(バイオット社)に設置し、温度37℃、溶存酸素濃度3.0mg/l、pH7.4、攪拌回転数60rpmに調製を行った。
予めローラーボトル(Falcon社)で培養しておいた遺伝子組換GAH抗体産生CHO細胞1−6R(EP520499号公開公報実施例参照)にトリプシンを作用させ細胞を剥離し、遠心後上清を廃棄し、それぞれの無血清培地で細胞を2回洗浄して、種細胞とした。その後、それぞれの無血清培地に懸濁し、無菌的に1Lスピンナーフラスコに細胞を播種し、培養を開始した。播種後、サンプリングを行い血球計数盤で生細胞密度、生存率を測定したところ、それぞれCD CHO:1.09×10cells/ml 82.3%、ExCell325−PF:0.87×10cells/ml 84.1%であった。
播種後353hrで培養を終了し、培養液を回収した。培養液は、遠心(3000rpm,20min)後0.22μmボトルトップフィルターでろ過し、約800mlの未精製バルクを得た。
(2)無血清培養により得られた未精製バルクからのGAHホール抗体の精製
(1)で得られた未精製バルクそれぞれ約800mlをそれぞれ2回に分け、XK16カラム(i.d.16mm、アマシャム・バイオサイエンス社製)にProsep−A樹脂(ミリポア社製)を14.3ml充填したカラムクロマトで精製を行った。流速は、14.3ml/minで実施し、アプライ、洗浄はdownflow、溶出、再生はupflowで未精製バルク及び緩衝液をカラムに供給した。洗浄、溶出、再生の緩衝液組成は、40mM NaClを含む40mM酢酸緩衝溶液でありpHはそれぞれ6.0、4.0、2.7である。
CD CHO、ExCell325−PFの未精製バルクより、それぞれ47.2ml、50.8mlのホール抗体含有液(pH4.0)を得た。この溶液の抗体含有量は、紫外吸光度法で測定を行ったところそれぞれ57mg、48mgであった。
(3)GAHホール抗体の活性化処理
活性化処理方法については、WO03/048357公報を参考とすることが出来る。
(2)により取得した、CD CHO培地及びEXCELL325−PF培地それぞれを用いたGAHホール抗体溶液各々20mgをセントリコン30(アミコン社)を用いて約1.7mLに濃縮した。この液250μL(3mg相当)に最終1.6M塩化ナトリウム、2mML−システイン、12mMアスコルビン酸を含む30mMトリス塩酸緩衝液(pH9)なる組成になる様に試薬を添加し、約10mlにした。この液を室温にて16時間放置した後、トリフルオロ酢酸を加えてpH4にした。セントリコン30で濃縮し、液組成を0.05%酢酸に置換した。
(4)活性化処理後のホール抗体のペプシン消化によるF(ab’)化及び精製
(3)で得られた活性化処理済試料を、pHを4.0に調整後、ペプシン消化を行った。すなわちペプシン(SIGMA社)を1.2mg/g−GAHとなる様に加えて、マイレクスフィルター(ミリポア社、0.22μm)で無菌濾過し、37℃で加温しながら穏やかに17時間攪拌を行った。
ペプシン消化後、陽イオン交換カラムクロマト法を用いてGAHF(ab’)化抗体を精製した。すなわち、XK16カラムに陽イオン交換樹脂SP−Sephrose FF(アマシャム・バイオサイエンス社)を15.3ml充填し、ペプシン消化後の抗体含有液を供した。その後、20mM NaCl含有40mM酢酸緩衝液(pH4.0)で洗浄を行い、塩濃度を徐々に高めながら、抗体のピークを分取した。流速は、1.58ml/minである。CD CHO、ExCell325−PFの試料の体積はそれぞれ10.5ml、11.6mlであった。
実施例1 無血清培養によるF(ab’)化GAH抗体の重合抑制(反応pHの影響)
ExCell325−PF培地を用いて、製造例1に従い得られた活性化処理後のGAHF(ab’)化抗体について、重合抑制を試みた。
濃度約5mg/mLになるように調製したF(ab’)化GAH抗体溶液に最終濃度で1mMになるようにシスチン溶液を加えた。このとき、シスチン溶液は0.5N塩酸にシスチンを40mMになるように溶解したものを使用した。
この溶液を2つに分け、一方には4分の1容の1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を加え(最終pH7.5)、一方には何も加えず(最終pH4.7)、それぞれをシスチン添加pH7.5処理溶液及びシスチン添加pH4.7処理溶液とした。
これらのシスチン添加溶液及びシスチン無添加溶液を37℃で3時間放置し、その後、分子量分画30Kカットの限外ろ過膜を用いて、シスチンを除去し、溶媒を20mM酢酸緩衝液(pH4.7)に置換した。この時点をイニシャルとして、ゲルろ過HPLC分析を行なった。次に、これらの溶液に4分の1容の1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を加え(最終pH7.5)、37℃で45分間放置し、ゲルろ過HPLC分析を行なった。
(ゲルろ過HPLC条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:215nm)
カラム:TSKgel G3000SWXL(内径約8mm×長さ約30cm)東ソー社品
プレカラム:TSKgel guardcolumnSWXL(内径約6mm×長さ約4cm)東ソー社品
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相:50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)/300mM硫酸ナトリウム
流量:0.3mL/min。
結果を図1に示す。イニシャルでは、シスチン無添加溶液、シスチン添加pH4.7処理溶液及びシスチン添加pH7.5処理溶液いずれもモノマー含量が86〜87%であった。これら3種類の溶液をpH7.5にして、37℃で45分間放置したところ、シスチン無添加溶液はモノマー含量が73%まで低下したのに対して、シスチン添加pH4.7処理溶液は78%と若干の重合抑制が見られた。また、シスチン添加pH7.5処理溶液は87%と完全に重合を抑制した。
この結果より、シスチン添加時の反応pHは酸性側よりも中性側の方が良いことが分かった。
実施例2 無血清培養によるF(ab’)化GAH抗体の重合抑制(反応温度の影響)
ExCell325−PF培地を用いて、製造例1に従い得られた活性化処理後のGAHF(ab’)化抗体について、重合抑制を試みた。
濃度約5mg/mLになるように調製したF(ab’)化GAH抗体溶液に最終濃度で1mMになるようにシスチン溶液を加えた。このとき、シスチン溶液は0.5N塩酸にシスチンを40mMになるように溶解したものを使用した。
この溶液に4分の1容の1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を加え(最終pH7.5)、2つに分け、一方は37℃で3時間、他方は4℃で一昼夜放置した。それぞれをシスチン添加37℃処理溶液及びシスチン添加4℃処理溶液とした。
これらの2種類の溶液及びシスチン無添加溶液を分子量分画30Kカットの限外ろ過膜を用いて、シスチンを除去し、溶媒を20mM酢酸緩衝液(pH4.7)に置換した。この時点をイニシャルとして、ゲルろ過HPLC分析を行なった。次に、これら3種類の溶液に4分の1容の1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を加え(最終pH7.5)、37℃で45分間放置し、ゲルろ過HPLC分析を行なった。
(ゲルろ過HPLC条件)
実施例1と同じ。
結果を図2に示す。イニシャルでは、シスチン無添加溶液、シスチン添加37℃処理溶液及びシスチン添加4℃処理溶液いずれもモノマー含量が86〜87%であった。これらの溶液をpH7.5にして、37℃で45分間放置したところ、シスチン無添加溶液はモノマー含量が73%まで低下したのに対して、シスチン添加37℃処理溶液は87%、シスチン添加4℃処理溶液は86%といずれも完全に重合を抑制した。
この結果より、シスチン添加時の反応温度は37℃と4℃のいずれでも良いことが分かった。
実施例3 無血清培養によるF(ab’)化GAH抗体の重合抑制(シスチン濃度の影響)
ExCell325−PF培地を用いて、製造例1に従い得られた活性化処理後のGAHF(ab’)化抗体について、重合抑制を試みた。
濃度約5mg/mLになるように調製したF(ab’)化GAH抗体溶液に最終濃度で1mM又は0.5mMになるようにシスチン溶液を加えた。このとき、シスチン溶液は0.5N塩酸にシスチンを40mM又は20mMになるように溶解したものを使用した。
これらの溶液に4分の1容の1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を加え(最終pH7.5)、それぞれを1mM処理及び0.5mM処理とした。
これらの2種類の溶液及びシスチン無添加溶液を4℃で一昼夜放置し、その後、分子量分画30Kカットの限外ろ過膜を用いて、シスチンを除去し、溶媒を20mM酢酸緩衝液(pH4.7)に置換した。この時点をイニシャルとして、ゲルろ過HPLC分析を行なった。次に、これらの溶液に4分の1容の1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を加え(最終pH7.5)、37℃で45分間放置し、ゲルろ過HPLC分析を行なった。
(ゲルろ過HPLC条件)
実施例1と同じ。
結果を図3に示す。イニシャルでは、シスチン無添加溶液、シスチン1mM添加溶液はモノマー含量が86〜87%であったのに対し、シスチン0.5mM添加溶液ではモノマー含量が84%と少し低めであった。これらの溶液をpH7.5にして、37℃で45分間放置したところ、シスチン無添加溶液はモノマー含量が73%まで低下したのに対して、シスチン1mM添加溶液は86%、シスチン0.5mM添加溶液は84%といずれもイニシャルからの変化は無かった。
この結果より、シスチン添加濃度は1mMの方が0.5mMより若干重合抑制効果が高いことが分かった。
製造例2 無血清培養によるGAHホール抗体作成
(1)無血清培地によるGAHホール抗体の培地中への生産
無血清培地ExCell325−PF(JRH社)を30Lになるようにミリ−Q水に溶解し、4mMのグルタミン(SIGMA社)、1.6g/lの炭酸水素ナトリウム(インビトロジェン社)、10mg/lのインシュリン(SIGMA社)を溶解し0.22μmミリパック40フィルター(ミリポア社)で無菌ろ過を行い細胞培養培地を調整した。調整した細胞培地のうち4Lを予め高圧蒸気滅菌器(サクラ精機社)で滅菌しておいた50L培養槽(バイオット社)に無菌的に仕込み、培養制御装置(バイオット社)に接続した。
予め7L(ワーキングボリューム:6L)スピンナーフラスコ(Belco社)で無血清培地ExCell325−PFを使用して培養しておいた遺伝子組換GAH抗体産生CHO細胞1−6R(WO03/048357号公報実施例参照)を無菌的に50L培養槽に全量播種した。その後、1日後に無血清培地ExCell325−PFを5L、2日後に15L、4日後1Lを追加し培養を行った。
播種後307hrで培養を終了し、培養液を回収した。培養液は、プロスタック(ミリポア社)で細胞分離を行い、0.22μmミリパック40でろ過を行い約26Lの未精製バルクを得た。
(2)無血清培養により得られた未精製バルクからのGAHホール抗体の精製
(1)で得られた未精製バルクの内17Lを、XK16カラム(i.d.16mm、アマシャム・バイオサイエンス社製)にProsep−A樹脂(ミリポア社製)を14.3ml充填したカラムクロマトで12回に分けて精製を行い、約1.7gのGAHホール抗体を得た。
実施例4 GAHホール抗体の活性化処理および重合抑制処理
製造例2により取得したGAHホール抗体溶液のうち640mlを40mM塩化ナトリウム含有40mM酢酸−酢酸ナトリウム溶液(pH4.0)で、抗体濃度が1mg/mlとなるように希釈を行った。この抗体溶液に最終1.0M塩化ナトリウム、2mML−システイン、12mMアスコルビン酸を含む30mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)なる組成になる様に試薬を添加した。この液を5N水酸化ナトリウム水溶液でpH7.5に調製した後、室温にて穏やかに3時間攪拌を行い活性化反応を終了した。少量分取し、残りの抗体溶液に最終4mMシスチンとなるよう試薬を添加した。その後、5N水酸化ナトリウム水溶液でpH7.5に調製した後、室温にて穏やかに2時間攪拌を行い重合抑制処理を施した。その後6N塩酸でpH4.0に調製し、分画分子量30kDa cutの限外ろ過膜(Hydrosalt、ザルトリウス社)を用いて電気伝導度0.6S/m以下になるまで脱塩・濃縮を行った。活性化反応後分取した試料は、重合抑制処理を施さずに分画分子量30kDa cutの限外ろ過膜(ザルトコン、ザルトリウス社)で脱塩・濃縮を行った。
実施例5 GAHホール抗体のHPLCによる理化学分析
実施例4で得られたGAHホール抗体溶液を用いて陽イオン交換液体クロマトグラフ法を行い、重合抑制処理の前後でクロマトグラムを比較した。
操作条件:
検出器:紫外吸光光度計(測定波長280nm)
カラム:TSKgel CM−5PW(内径7.5mm×長さ7.5cm)東ソー社品
カラム温度:30℃付近の一定温度
移動相A:50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)
移動相B:50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)/0.5M塩化ナトリウム
移動相の送液:濃度勾配制御(以下、表1)
Figure 2004056872
流量:1.0mL/min
精製したGAHホール抗体について、活性化反応前、活性化反応終了後、重合抑制処理後、脱塩・濃縮後の試料から得られたクロマトグラムを比較した結果を図4〜図7に示した。
活性化前のクロマトは、図4に示す様にヘテロジェナイティに由来する数多くの分子種が存在し不活性型であるが、活性反応を施すと図5に示すように活性型GAHのクロマトとなる。その後、本発明の処理を施した後のクロマトでは図6に示す様に活性化反応後のクロマトとの違いが見られない。さらに、脱塩・濃縮処理を行っても図7に示すように変化がみられない。
これらの結果より、本発明の処理は、GAH抗体の活性に影響を与えないことがクロマトグラムの比較より解る。
実施例6 GAHホール抗体のゲルろ過HPLCによる重合量分析
実施例4で得られたGAHホール抗体溶液を用いてゲルろ過HPLC分析を行い、重合抑制処理の前後で抗体の単量体量を比較した。操作条件は、実施例1と同じである。
精製したGAHホール抗体について、本発明の処理を施したものと、施さなかったものについて活性化反応前、活性化反応終了後、重合抑制処理後、脱塩・濃縮後の試料から得られた結果を表2に示した。
Figure 2004056872
本発明の処理を施さなかった精製GAHホール抗体は、脱塩・濃縮工程で大量に重合体を形成する。一方本発明の処理を施した精製GAHホール抗体は、活性反応後より単量体の含量がわずかながらではあるが増加し、脱塩・濃縮工程で重合体を形成することはない。
この結果より、本発明の処理は、単量体の含量を高めると同時に重合体形成を抑制することが明らかになった。
実施例7 活性化反応および重合抑制処理(本発明の処理)後のホール抗体のペプシン消化によるF(ab’)化および精製
実施例4で得られた溶液のうち150mlを分取し、これにペプシン消化を行った。すなわちペプシン(SIGMA社)を1.2mg/g−GAHとなる様加えて、ボトルトップフィルター(コーニング・コースター社、0.22μm)で無菌濾過し、37℃で加温しながら穏やかに約19時間攪拌を行った。
ペプシン消化後陽イオン交換カラムクロマト法を用いてGAHF(ab’)化抗体を精製した。すなわち、XK16カラムに陽イオン交換樹脂SP−Sephrose HP(アマシャム・バイオサイエンス社)を15.3ml充填し、ペプシン消化後の抗体含有液を供した。その後、20mM NaCl含有40mM酢酸緩衝液(pH4.0)で洗浄を行い、塩濃度を徐々に高めながら、抗体のピークを分取した。流速は、4.17ml/minである。
その後、分画分子量30kDa cutザルトコンを用いて、5mMリン酸緩衝液(pH4.0)にバッファー置換を行い、pH7.0に調製した後、陰イオン交換カラムクロマト方を用いてGAHF(ab’)化抗体を精製した。すなわち、XK16カラムに陰イオン交換樹脂Q−Sephrose FF(アマシャム・バイオサイエンス社)を31ml充填し、バッファー置換後の抗体含有溶液を供し、抗体のピークを分取した。その後pHを4.0に調製し、分画分子量30kDa cutのザルトコンを用いて抗体濃度を約5mg/mlに調製し精製GAH F(ab’)化抗体を得た。
実施例8 GAH F(ab’)化抗体のHPLCによる理化学分析ならびに重合体量の測定
実施例7により得られたGAH F(ab’)化抗体を、TSKgel CM−5PW(内径7.5mm,長さ7.5cm;東ソー社品)に供して陽イオン交換液体クロマトグラフ法を行った。操作条件は実施例4に示したものと同じである。
結果を図8に示した。
この結果より、得られた抗体は活性型であり、精製工程を通じて本発明の処理が抗体活性に影響を及ぼさないことが確認された。
また、実施例7により得られたGAH F(ab’)化抗体を、ゲルろ過HPLC法を使用して単量体量の測定を行った。
操作条件は、実施例1と同じである。
この結果、単量体含量は93.8%であり、精製規格を充分に満足した抗体が得られたことが明らかとなった。さらに、精製工程全体に渡って本発明の処理が重合体の生成を抑制していることが確認され、精製収率の大幅な向上が達成されたことが明らかとなった。
本発明によれば、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護することによる、効率的で効果的なタンパク質の生成方法の確立と、該タンパク質を含む薬剤の提供が可能である。
なお、本出願は、日本特許出願 特願2002−370822号を優先権主張して出願されたものである。
【配列表】
Figure 2004056872
Figure 2004056872

Claims (21)

  1. 分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加して、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護する方法。
  2. 分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加して、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護することにより、タンパク質どうしのチオール基を介した重合反応を抑制する方法。
  3. 分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加して、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護することにより、タンパク質の修飾を抑制する方法。
  4. 分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加して、遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護することにより、タンパク質のチオール基とタンパク質の分子内又は分子間で形成されたジスルフィド結合との交換反応を抑制する方法。
  5. 分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物として、シスチン、ホモシスチン、リポ酸又は酸化型グルタチオンを添加することを特徴とする請求の範囲1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物として、シスチンを添加することを特徴とする請求の範囲1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 分子内にジスルフィド結合を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物と、同時に又は別々に、分子内にチオール基を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物を添加することを特徴とする遊離のシステイン残基を有するタンパク質のチオール基を保護する方法。
  8. 分子内にチオール基を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物として、システイン、ホモシステイン、グルタチオン又はジヒドロリポ酸を添加して処理することを特徴とする請求の範囲7に記載の方法。
  9. 分子内にチオール基を有し、かつ、タンパク質の活性に実質的な影響を及ぼさない化合物として、システインを添加して処理することを特徴とする請求の範囲7又は8に記載の方法。
  10. タンパク質が組換え体タンパク質であることを特徴とする請求の範囲1から9のいずれかに記載の方法。
  11. タンパク質が抗体であることを特徴とする請求の範囲1から9のいずれかに記載の方法。
  12. 抗体がF(ab’)化抗体であることを特徴とする請求の範囲11に記載の方法。
  13. 抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする請求の範囲11又は12に記載の方法。
  14. モノクローナル抗体が可変領域にチオール基を有することを特徴とする請求の範囲13に記載の方法。
  15. モノクローナル抗体が可変領域に遊離のシステインを有することを特徴とする請求の範囲13又は14のいずれかに記載の方法。
  16. モノクローナル抗体が重鎖の超可変領域に、配列表の配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を含み、軽鎖の超可変領域に、配列表の配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を含む請求の範囲13から15のいずれかに記載の方法。
  17. モノクローナル抗体が、配列表の配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列表の配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む請求の範囲13から16のいずれかに記載の方法。
  18. タンパク質が無血清培地で培養された細胞を使用して生産されたものであることを特徴とする請求の範囲1から17のいずれかに記載の方法。
  19. 請求の範囲18に記載の方法により得られるタンパク質。
  20. 請求の範囲19に記載のタンパク質を含有する医薬組成物。
  21. 抗腫瘍剤であることを特徴とする請求の範囲20に記載の医薬組成物。
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