JPWO2004031388A1 - 転写調節に関与する因子 - Google Patents

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Abstract

HDARTは、HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)に結合しリプレッサーとして機能する。また、HDARTは、核内レセプターの転写コアクチベーターとして機能するSkipと直接結合し、核内レセプターの転写を抑制する。さらに、HDARTは核内レセプターの転写コリプレッサーの1つであり、HDACと結合しHDACのヒストン脱アセチル化により強力に転写を抑制し得る。一方、HDARTのドミナントネガティブペプチドも得られ、このペプチドは完全長のHDARTたんぱく質とは逆に転写を活性化することをも確認した。特にこのペプチドによるレチノイン酸レセプターの転写活性化能はall−trans Retinoic Acid(ATRA)を上回る活性を有していた。

Description

本発明は転写調節因子等に関し、特に、核内ホルモンレセプターに起因した転写を調節し得る因子、ペプチドに関する。
ホルモンや脂溶性ビタミンなどは生物の恒常性の維持、エネルギー代謝、分化、成長などに重要な役割を果たしている。これらホルモン等のレセプターは核内に存在する転写調節因子であり、クロマチンDNAの特定部位に結合して、遺伝子の転写反応を調節する。多くの場合、ホルモン等のリガンドがレセプターに結合していない場合には、転写が抑制され、レセプターにリガンドが結合するとクロマチン構造の変化などにより転写が活性化される。この核内レセプターから転写装置に至る経路にはコアクチベーターやコリプレッサーと呼ばれる多くの因子が複合体を形成して働いていることが報告されている。リガンドが結合していないレセプターにはヒストン脱アセチル化酵素を含むコリプレッサー複合体が結合して遺伝子発現を抑制し、一方、リガンドが結合することによりレセプターの構造が変化すると、コリプレッサー複合体が離れて代わりにヒストンアセチル化酵素を含むコアクチベーター複合体がリクルートされる。このようなコアクチベーターの一例としてはSkip(Ski相互作用タンパク質、N−CoA62とも称されている)があり、いくつかの核内レセプター(例えば、ビタミン3レセプター、レチノイン酸レセプター、エストロゲンレセプター、およびグルコマルチコイドレセプター)と直接結合して、これら核内レセプターが媒介する遺伝子発現を増強し得る(Baudino,T.A.,Kraichely,D.M.,Jefcoat,S.C.,Jr.,Winchester,S.K.,Partridge,N.C.,and Mac Donald,P.N.(1998)J Biol Chem 273(26),16434−41、MacDonald,P.N.,Baudino,T.A.,Tokumaru,H.,Dowd,D.R.,and Zhang,C.(2001)Steroids 66(3−5),171−6.)。
上述したように、核内レセプターを介した転写の制御メカニズムの概要は明らかにされつつあるが、そのメカニズムにどのような因子が関与するかの解明は残されている。そこで、本発明は、転写調節因子、特に核内レセプターの転写調節にも関与し得る新たな因子を提供することを目的とする。
本願発明者らは、ショウジョウバエのcrn(crooked neck)遺伝子のヒトホモログのクローニングおよびその機能解析の研究を通して、このヒトホモログが核内レセプターを介した転写調節に関与することを見出した。なお、このショウジョウバエcrn遺伝子自体は、胚形成の早期段階で最大の発現レベルになる遺伝子であり、この遺伝子の不活性化は、胚形成の欠陥をひき起こし、主に神経系の発達に影響を及ぼすことが報告されている(Zhang,K.,Smouse,D.,and Perrimon,N.(1991)Genes Dev 5(6),1080−91)。crnタンパク質の1つの独特な特徴は、縦列に方向付けられたテトラトリコペプチド反復(TPR)の16のコピーが存在することである。TPRは、さまざまなタンパク質で見出され、進化中に広まった同義性の34アミノ酸反復モチーフである。TPRタンパク質が関与するプロセスとしては、細胞サイクル制御、転写抑制、ストレス応答、タンパク質キナーゼ抑制、およびタンパク質輸送が含まれる(Lamb,J.R.,Tugendreich,S.,and Hieter,P.(1995)Trends Biochem Sci 20(7),257−9)。
上記crn遺伝子のヒトホモログには、コピー数において15と異なるが上記ショウジョウバエcrn遺伝子と同様に多数のTPRが存在する。本願発明者らがクローニングしたヒトcrn遺伝子は既に報告されている転写に関連した転写共役DNA修復に関与するタンパク質(XAB2)をコードした遺伝子(Yoshimichiら、Jounal.Biol.Chem.275:34931−34937)と一致するものであるが、本願発明者らは、本遺伝子産物が転写抑制に関与することを新たに見出した。特に、本遺伝子産物は、HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)に結合しリプレッサーとして機能することから、本明細書では「HDART(aHDACssociatedepressorPR)」タンパク質と称する。また、本願発明者らは、HDARTが、上述した核内レセプターの転写コアクチベーターとして機能するSkipと直接結合し、核内レセプターの転写を抑制することも見出した。さらに、HDARTが核内レセプターの転写コリプレッサーの1つであり、HDACと結合しHDACのヒストン脱アセチル化により強力に転写を抑制し得ることも明らかにした。一方、HDARTのドミナントネガティブペプチドも得られ、このペプチドは全長HDARTとは逆に転写を活性化することをも確認した。すなわち、本願発明は、HDARTの新たに解明した種々の機能に基づくものであり、具体的には、以下の通りである。
(1)本発明は転写抑制因子をコードしたDNAであって、(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしたDNA、または、(B)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAである。
(2)本発明は転写抑制因子をコードしたDNAであって、(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしたDNA、または(B)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAである。
(3)本発明は上記(1)または(2)に記載のDNAによりコードされた転写抑制因子である。
(4)本発明は核内ホルモンレセプターに起因した転写を抑制し得る上記(3)記載の転写抑制因子である。
(5)本発明は転写を活性化し得るペプチドをコードしたDNAであって、
(A)配列番号2における1から179位のアミノ酸配列からなるペプチドをコードしたDNA、または(B)配列番号1における1から537塩基までの塩基配列からなるDNAである。
(6)本発明は転写を活性化し得るペプチドをコードしたDNAであって、(A)配列番号2における1から179位のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するペプチドをコードしたDNA、または(B)配列番号1における1から537塩基までの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAである。
(7)本発明は上記(5)または(6)記載のDNAによりコードされた転写活性化ペプチドである。
(8)本発明は上記(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載のDNAのうち、少なくとも15ヌクレオチド長を有するDNAである。
(9)本発明は上記(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載のDNAが挿入されたベクターである。
(10)本発明は上記(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載のDNAまたは上記(9)に記載のベクターを保持する宿主細胞である。
(11)本発明は上記(3)に記載の因子または上記(7)に記載のペプチドに結合し得る抗体である。
(12)本発明は上記(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載のDNAとハイブリダイズし、少なくとも10ヌクレオチド長を有する、オリゴヌクレオチドプローブである。
(13)本発明は以下の(A)〜(D)のいずれかが固定された基板である。
(A)上記(12)に記載のオリゴヌクレオチドプローブ
(B)上記(3)または(4)に記載の転写抑制因子、もしくは該因子の部分ペプチド
(C)上記(7)に記載の転写活性化ペプチド、もしくは該ベプチドの部分ペプチド
(D)上記(11)に記載の抗体
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書において予め用いる略語を説明する:HAT(ヒストンアセチルトランスフェラーゼまたはヒストンアセチル化酵素)、HDAC(ヒストンデアセチラーゼまたはヒストン脱アセチル化酵素)、DAPI(4′,6−ジアミジノ2−フェニルインドール)、RAR(レチノイン酸レセプター)、GR(グルココルチコイドレセプター)、DBD(DNA結合ドメイン)、AD(活性化ドメイン)、ATRA(all−trans Retinoic Acid:全トランスレチノイン酸)。
本発明は、転写調節に関する因子に関する。この転写調節因子には、転写を抑制する因子と、活性化する因子が含まれる。まず、転写抑制因子について説明する。本発明の転写抑制因子を例示すればHDARTであり、HDARTのアミノ酸配列は、配列番号2からなる。但し、本発明の転写抑制因子は配列番号2に記載のHDARTに限定されず、転写抑制活性を有する範囲で、配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質、さらには、HDARTをコードしたDNA(配列番号1)とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAによりコードされたタンパク質をも包含される。
上記HDARTタンパク質は、ヒト細胞の核内で発現していることから、ヒト細胞核より得ることができる。この原料となるヒト細胞は、特に限定はないが、一例を挙げればHDARTを内在的に発現していることが明らかである293細胞を用いることができる。
また、アミノ酸置換等を有するHDART類似タンパク質の調製は、例えば、公知の技術であるファージライブラリースクリーニング技術(Molecular Cloning3rd Ed,Chapter 2,pp.2.1−2.117)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Molecular Cloning 3rd Ed,Chapter 8,pp.8.1−8.126)技術を利用して実施することができる。具体的には、HDARTをコードしたDNA(配列番号1)またはその一部をプローブやプライマーとして、配列番号1とホモロジーを備えたDNAを得て、このDNAを基にタンパク質を生成することにより得ることができる。ここで得られるタンパク質は、通常、HDARTとアミノ酸配列において高いホモロジーを有する。この高いホモロジーは、少なくとも40%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは少なくとも97%以上(例えば、98から99%)の塩基配列の一致を意味する。
また、上記「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、当業者であれば適宜選択することができる。一例としては、25%ホルムアミド、より厳しい条件では50%ホルムアミド、4×SSC、50mM Hepes pH7.0、10×デンハルト溶液、20μg/ml変性サケ精子DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃で一晩プレハイブリダイゼーションを行った後、標識したプローブを添加し、42℃で一晩保温することによりハイブリダイゼーションを実施することが挙げられる。その後の洗浄における洗浄液および温度条件は、1xSSC、0.1%SDS、37℃程度で、より厳しい条件としては、0.5xSSC、0.1% SDS、42℃程度で、さらに厳しい条件では、0.2xSSC、0.1% SDS、65℃程度で実施することができる。これらSSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、適宜改変することは可能である。
配列のホモロジーは、BLASTn(核酸レベル)やBLASTx(アミノ酸レベル)のプログラム(Altschul et al.J.Mol.Biol.215:403−410,1990)を利用して決定することができる。該プログラムは、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc.Natl.Acad.Sei.USA 87:2264−2268,1990、Proc.Natl.Acad.Sei.USA 90:5873−5877,1993)に基づいている。BLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=50、wordlength=3とする。また、Gapped BLASTプログラムを用いて、アミノ酸配列を解析する場合は、Altschulら(Nucleic.Acids.Res.25:3389−3402,1997)に記載されているように行うことができる。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
配列番号2に記載の配列を人為的に改変する場合には、一般的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内であると考えられるが、転写抑制活性を維持し得る範囲内であれば上記改変割合を超えてアミノ酸配列を置換等してもよい。この人為的にアミノ酸配列を改変する手法は、例えば、公知の手法であるdeletion−mutant作製方法、PCR法、site−directed mutagenesisなどにより実行することができる。なお、ここで改変されたタンパク質が、HDARTと同様に、転写抑制活性を有するか否かは、後述する実施例に記載されているような種々のレポーター解析法などを用いて転写抑制能を解析し決定することができる。
上記HDARTまたはこれに類似したタンパク質は、上述した通り転写抑制活性を有するため、この機能を利用して所望の転写装置に組合せて所望の遣伝子の転写を抑制することができる。この転写装置は、in vitro転写系、in vivo転写系のいずれでもよい。また、HDARTの転写抑制能は自律的であることから、本発明の転写抑制因子は単独で用いて転写を抑制させ得る。但し、この場合、HDARTはDNA結合能を有しないため、好ましくは、DNA結合領域を融合させた融合タンパク質として用いることがよい。また、HDARTはHDACと結合能を有し、HDARTはHDACをリクルートしてヒストン脱アセチル化活性により強力に転写を抑制し得る。そのため、本発明の転写抑制因子は、HDACと共に用いて、あるいはHDACを誘導することにより転写を抑制することもできる。なお、HDACにはタイプI(HDAC1,HDAC2,HDAC3)とタイプII(HDAC4,HDAC5,HDAC6,HDAC7,HDAC8)が存在することが知られている。本発明のHDARTはHDAC2、HDAC5、HDAC7、HDAC8等と結合するものと考えられることから、本発明においては、HDAC2、HDAC5、HDAC7、HDAC8を好適に使用することができるが、これらのHDACに特に限定されるものではなく、タイプIまたはIIに属するいずれのHDACを用いることが可能である。
また、HDARTは核内レセプターの転写を抑制し得ることから、本発明の転写抑制因子により抑制し得る転写装置としては、好適には核内レセプターを介した転写装置を挙げることができる。この核内レセプターとしては、レチノイン酸レセプター、グルココルチコイドレセプターを好適に挙げることができ、また、本発明の因子が転写抑制し得る範囲でレチノインXレセプター、ビタミンDレセプター、アンドロゲンレセプター、エストロゲンレセプター、チロイドホルモンレセプターなどのホルモンや脂溶性ビタミンなどに対する核内レセプターなどを含めることができる。そのため、本発明の転写抑制因子は、このような核内レセプターからの転写の不調節、特に過剰に転写が促進されることが起因した疾患の治療に役立ち得る。特に、後述する実施例で示すように、HDARTはレチノイン酸レセプターの転写を抑制し、さらには、このレチノン酸レセプターの転写により誘導する分化をも抑制することが明らかになっているため、レチノン酸レセプターの転写による分化亢進が起因した疾患の治療薬として本転写抑制因子を応用してもよい。
本発明は上記転写抑制因子をコードしたDNAに関する。このDNAとしては、例えば配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAを挙げることができるが、これに限定されるものではなく、上述した配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードしたDNA、配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしたDNA、および配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAなどが包含される。
上記DNAは、配列番号1に記載のDNAまたはその一部をプローブまたはプライマーとして用い、例えば、ヒト細胞(一例を挙げれば、後述する実施例1に示したように、ヒト膵臓の小島細胞)のcDNAライブラリーなどからハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により得ることができる。他の方法としては、ヒト細胞のmRNAを鋳型に用い、配列番号1に記載のDNAの一部をプライマーとしてRT−PCR(Molecular Cloning 3rd Ed,Chapter 8,Protocol 8,pp.8.46−8.53)により得ることもできる。なお、ここでは、ヒト細胞を例に挙げたが、それ以外の哺乳動物細胞、真核細胞などを用いて調製してもよい。また、DNAを単離するためのハイブリダイゼーション条件は、上述した通りである。
上記DNAをクローニングする方法以外にも、DNA合成機により配列番号1に記載のDNAとその相補鎖とをそれぞれ合成し、アニーリングさせて生成してもよい。
上記DNAは転写抑制因子をコードしていることから、この転写抑制因子を生産するツールとして、または細胞や個体内に導入して転写抑制因子を発現させるツールとして用いることができる。このような目的で用いる場合には、上記DNAを発現ベクターなどに組み込むことが好ましい。発現ベクターは、タンパク質生産に用いる翻訳系により、あるいは導入する細胞により適宜選択することができる。
上記DNAが組込まれたベクターを用いて転写抑制因子を生産するためには、先ず、上記ベクターを宿主細胞に導入し、この宿主細胞を培養する。これにより、宿主細胞内では上記転写抑制因子が生産される。ここでベクターを細胞に導入する手法は、用いる細胞に応じて適宜選択することができる。例えば、ウイルスベクターやファージを介した生物学的な手法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法などの化学的な手法、ジーンガン、エレクトロポーレション法などの物理的な手法などを用いることができる。宿主細胞において生産されたタンパク質は、必要に応じて、精製(例えば、アフィニティー精製など)を行った上で使用することができる。
上記DNAが組み込まれた発現ベクターはまた、細胞内あるいは個体内の所望の転写を抑制する目的で用いることができる。すなわち、この発現ベクターを細胞または個体内に導入し上記転写抑制因子を発現させることにより、所望の転写系を抑制することができる。特に、HDARTは自律的な転写抑制能を有するため、本発明の転写抑制因子は単独でも転写抑制活性を発揮し得る。但し、HDART自身はDNA結合能を有しないため、好ましくは、本転写抑制因子は、所望の遺伝子の制御領域のDNAに結合し得るDNA結合領域との融合タンパク質として発現させることがよい。これに、標的となる遺伝子の転写を抑制することが可能となる。また、本転写抑制因子はHDACと結合能を有することから、本転写抑制因子を発現させることにより、HDACをリクルートさせて転写をさらに強く抑制し得る。
また、本発明のDNAにコードされた転写抑制因子は核内レセプターの転写を効果的に抑制し得ることから、これら核内レセプターの転写亢進に起因した疾患の治療用組成物として、本DNAが組み込まれたベクターを応用してもよい。こうした治療目的のベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、EBウイルスベクター、パピローマウイルスベクター、フォーミーウイルスベクターなどのウイルスベクターなどが挙げられる。
本発明は転写調節因子のうち、上記とは反対に転写を活性化し得るペプチドにも関する。HDARTは全長であれば、転写抑制因子として機能するが、HDARTのドミナントネガティブペプチドは、逆に転写活性化因子として機能する。このドミナントネガティブペプチドを例示すると、N末端の4つのTPR(以下、「N4TPR」と省略する)をコードしているペプチド、すなわち、配列番号2における1から179位のアミノ酸配列からペプチドを挙げることができるが、これに限定されず転写活性化能を有する範囲で、配列番号2における1から179位のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するペプチドを含めることができる。
上記ドミナントネガティブペプチドの調製は、配列番号1のうち1から537までの塩基配列からなるDNAを基にペプチドを合成することにより調整することができる。また、このペプチドとアミノ酸配列において置換等を有するペプチドの合成は、上記配列番号1のうち1から537までの塩基配列に変異(置換、欠失、挿入および/または付加)を加えコドンを変えたDNAを基にペプチド合成することにより調製することができる。
上記ペプチドは、転写活性化能を有するため、所望の転写系の転写を促進させるために用いることができる。特に、実施例に示した通り、HDARTのN4TPRは核内レセプターの転写を活性化することから、これら核内レセプターの転写を促進させるために用いることができる。この核内レセプターとして、好適には、Skipが作用する核内レセプター、例えば、レチノイン酸レセプター、グルココルチコイドレセプター、ビタミンDレセプター、エストロゲンレセプターを挙げることができる。また、本発明のペプチドが転写活性化し得る範囲でレチノインXレセプター、アンドロゲンレセプター、チロイドホルモンレセプターなどのホルモンや脂溶性ビタミンなどに対する核内レセプターなどを含めてもよい。
上記N4TPRによるレチノイン酸レセプターの転写活性化能は、ATRAによる転写活性化能よりも高いことが後述する実施例で示されている。そのため、現在、ATRAによるレチノイン酸レセプターの転写活性化による白血病などの悪性腫瘍の分化誘導療法が行われている。さらに、ビタミンAやATRAを含むその誘導体は、白血病以外にも肝細胞癌(Okuno,M.et al.,(2002)Front Biosci 7,204−18)、卵巣癌(Zhang D.et al.,(2000)J Cell Physiol 185(1),1−20)、甲状腺癌(Schmutzler C.and Kohrle J.(2000)Thyroid 10(5),393−406)、皮膚癌(Niles R.M.(2000)Nutrition 16(11−12),1084−9)、膵癌(Riecken E.O.and Rosewicz S.(1999)10 Suppl 4,197−200)等で治療に使用され始めており、このATRAに代えて又はATRAと組合せて、本ペプチドを用いることができる。
本発明は、上記転写活性化能を有するペプチドをコードしたDNAに関する。このDNAとしては、具体的には、配列番号2における1から179位のアミノ酸配列からなるペプチドをコードしたDNA、一例としては、配列番号1から537塩基までの塩基配列からのDNAを挙げることができるが、これに限定されるものではなく、転写活性化能を有する範囲で、配列番号2における1から179位のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するペプチドをコードしたDNA、または配列番号1における1から537塩基までの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを含めることができる。
上記転写活性化ペプチドをコードしたDNAは、上述した転写抑制因子をコードしたDNAを得た後、例えば、C末端側を欠失させることに調製することができる。または、DNA合成機により合成し調製してもよい。
上記DNAは、上記転写活性化ペプチドを生産するため、または、細胞または個体内に導入して上記転写活性化ペプチドを発現させる目的で用いることができる。ペプチドを生産する目的で上記DNAを用いる場合には、発現ベクターに組み込むことが望ましい。この場合の発現ベクターは、ペプチドを生産するための転写・翻訳系によって適宜選択することができる。この転写・翻訳系は、in vitro、in vivoのいずれでもよい。In vivo系の場合には、上記DNAが組み込まれた発現ベクターを細胞に導入し、細胞を培養することにより、細胞内で上記転写活性化ペプチドが生産される。細胞への導入方法などについては上述と同様である。
上記DNAを細胞または個体内に導入して上記転写活性化ペプチドを発現させる目的で用いる場合には、上記DNAを直接、細胞内等に導入し一時的に発現または染色体に挿入させて安定的に発現させてもよく、また、発現ベクターに組み込んで細胞等に導入してもよい。
上述した通り、転写活性化ペプチドは、ATRAのように悪性腫瘍の分化誘導療法に応用し得るため、転写活性化ペプチドを直接用いる代わりに、本DNAを患者に注入等し上記転写活性化ペプチドを発現させて、上記治療方法に利用してもよい。このような目的で使用するためには、上記DNAを所望の組織または細胞に該DNAを運搬するためのベクターに組み込み使用することが好ましい。こうした治療目的のベクターとしては、上述したレトロウイルスベクター等のウイルスベクターを用いることができる。
以上の通り、本発明の転写抑制因子をコードしたDNAは、N末端側をコードしたDNAに短くすることにより上記転写活性化ペプチドをコードしたDNAに改変し得る。これ以外にも、上記転写抑制因子をコードしたDNAまたは転写活性化ペプチドをコードしたDNAはさらに短い一部フラグメントとしても、ハイブリダイゼーション用プローブ、PCRプライマーまたはリボザイム誘導体として利用することができる。これら目的で上記DNAの一部を用いる場合には、プローブ等としての特異性を保持できる長さ、例えば、15ヌクレオチド長を有していることが好ましい。本発明は、本発明のDNA(例えば、配列番号1に記載のDNA等)とハイブリダイズし、少なくとも10ヌクレオチド長を有するオリゴヌクレオチドプローブを提供する。例えば、こうしたポリヌクレオチドとしては、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖と特異的にハイブリダイズするものが挙げられる。ここで、「特異的にハイブリダイズする」とは、ハイブリダイゼーションにおいて、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションが有意に生じないことを意味する。上記プローブ、プライマーは、転写抑制因子等をコードしたDNAのクローニング等に利用することができる。
本発明はまた、上記転写抑制因子または転写活性化ペプチドに結合し得る抗体に関する。本発明の抗体は、上記転写抑制因子または転写活性化ペプチドと特異的に結合し得るものであれは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよい。ポリクローナル抗体は、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドを必要に応じてフロイントアジュバント等と混合し、周知の方法によりウサギ、ヤギ、モルモットなどの非ヒト動物を免疫し、抗体価が上昇したことを確認した上で免疫動物の末梢血から血清を回収することにより調製することができる。一方、モノクローナル抗体はまた、上記転写抑制因子もしくは転写活性化ペプチドまたはその部分ペプチドを用い、周知の方法によりマウスなどの動物を免疫し、抗体価が上昇した免疫動物の脾臓またはリンパ節を採取し、これら組織中の抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させハイブリドーマを調製する。ハイブリドーマから産生される抗体を培養上清から回収することにより得ることができる。
これら抗体は、上記転写抑制因子または転写活性化ペプチドをアフィニティー精製する際等に利用することができる他、種々の細胞内における転写抑制因子の発現量を免疫学的に解析するなどの目的で、または転写抑制因子を阻害する目的で利用してもよい。
また本発明は、本発明の上記オリゴヌクレオチドが固定された基板を提供する。該基板をバイオチップとすることにより、例えば、被検生物(細胞)における本発明のDNAの発現状態を解析することが可能である。
好ましい態様においては、まず、被検生物(細胞)から本発明のDNA(例えば、配列番号1に記載のDNA、またはその部分DNA領域)を増幅する。次いで、該DNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された基板を用意する。次いで、該DNAと該基板を接触させる。さらに、基板に固定されたヌクレオチドプローブにハイブリダイズしたDNAを検出することにより、本発明のDNAの発現状態を解析することができる。
このような方法としては、DNAアレイ法が例示できる。被検生物(細胞)からのDNA試料の調製は、当業者に周知の方法で行うことができる。該DNA試料の調製の好ましい態様においては、細胞から抽出した染色体DNAを基に調製することができる。染色体DNAから本方法のDNA試料を調製するには、例えば本発明のDNAにハイブリダイズするプライマーを用いて、染色体DNAを鋳型としたPCR等によって本発明のDNAを調製することも可能である。調製したDNA試料には、必要に応じて、当業者に周知の方法によって検出のための標識を施すことができる。
本発明において「基板」とは、ヌクレオチドを固定することが可能な板状の材料を意味し、通常、チップとも呼ばれる。本発明においてヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが含まれる。本発明の基板は、ヌクレオチドを固定することが可能であれば特に制限はないが、一般にDNAアレイ技術で使用される基板を好適に用いることができる。
一般にDNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性(non−porous)の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性(porous)の膜、例えばニトロセルロースメンブレムを使用することができる。
本発明において、ヌクレオチドの固定(アレイ)方法として、Affymetrix社開発によるオリゴヌクレオチドを基本としたアレイが例示できる。オリゴヌクレオチドのアレイにおいて、オリゴヌクレオチドは通常インサイチュ(in situ)で合成される。例えば、photolithographicの技術(Affymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット(Rosetta Inpharmatics社)技術等によるオリゴヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。
基板に固定するヌクレオチドプローブは、本発明のDNAを検出することができるものであれば、特に制限されない。即ち該プローブは、例えば、配列番号1に記載のDNAと特異的にハイブリダイズするようなプローブである。特異的なハイブリダイズが可能であれば、ヌクレオチドプローブは、本発明のDNAに対し、完全に相補的である必要はない。
本発明において基板に結合させるヌクレオチドプローブの長さは、オリゴヌクレオチドを固定する場合は、通常10〜100ベースであり、好ましくは10〜50ベースであり、さらに好ましくは15〜25ベースである。
本発明においては、次いで、DNA試料と該基板を接触させる。本工程により、上記ヌクレオチドプローブに対し、DNA試料をハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さ等の諸要因により変動しうるが、一般的に当業者に周知の方法により行うことができる。
本発明においては、次いで、該DNA試料と基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの有無または強度を検出する。この検出は、例えば、蛍光シグナルをスキャナー等によって読み取ることによって行うことができる。尚、DNAアレイにおいては、一般的にスライドガラスに固定したDNAをプローブといい、一方溶液中のラベルしたDNAをターゲットという。従って、基板に固定された上記ヌクレオチドを、本明細書においてヌクレオチドプローブと記載する。本方法においては、必要に応じて、検出したハイブリダイズの強度を対照と比較する。上記方法としては、例えば、DNAアレイ法(SNP遺伝子変異の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、p128−135、Nature Genetics(1999)22:164−167)等が挙げられ、当業者においては、公知の文献等を参照して、適宜、実施することができる。
また本発明は、本発明のタンパク質もしくは該タンパク質の部分断片が固定された基板を提供する。該基板をバイオチップとすることにより、例えば、本発明のタンパク質と結合する分子の探索、またはHDAC阻害化合物のスクリーニング等を行うことが可能である。
一般的に、タンパク質を基板へ固定させたものを、プロテインチップと呼ぶ。その原理はDNAチップと同様、スライドガラスや膜の上にタンパク質を高密度に固定し、それらと相互作用する蛋白質や核酸などを検出する。
本発明のHDARTタンパク質は、種々のHDACタンパク質と結合することから、HDAC阻害化合物のスクリーニングに応用することができる。より具体的には、本発明のHDARTタンパク質を固相表面に固定することにより、一つの面に種々のHDACを結合させることができる。この固相表面に種々の化合物を結合させ、HDAC活性を計測することにより、HDAC阻害化合物をスクリーニングすることができる。
上記スクリーニングによって取得されるHDAC阻害化合物の例としては、癌の分化誘導療法で薬剤として用いられるトリコスタチンAを示すことができる。
また、本発明の抗体が固定された基板をバイオチップとすることも可能である。高純度で分離精製された抗体をチップ表面に固定化することにより高密度化が可能である。
本発明の好ましい態様においては、基板上にサンプルをスポットした後、スポット表面に対して親和性を示さないタンパク質やその他の夾雑物を洗浄することにより、溶出させることができる。その後の検出の工程は、当業者においては、基板の種類等を考慮し、適宜、公知の方法で、上記親和性の有無(強弱)を検出することができる。一例を示せば、洗浄後の上記基板へ、エネルギー吸収分子(EAM)を添加し、乾燥後、質量分析計(TOF−MS)装置にかけることにより、スポット表面に結合していたタンパク質の分子量スペクトルを測定することができる。
また、任意のDNA、もしくはペプチドの基板への固定は、当業者においては、公知の方法によって適宜実施することができる。
図1は、HDARTはTPR(etra tricoeptideepeat)タンパク質であり、その構成および類縁の遺伝子との関係を示す。HDART一次構造の概略的構成を示し、TPR、酸性領域、Skip相互作用領域およびCRN相同性領域を示している。
図2は、ヒトHDARTとヒトCRNとの間のCRN相同性領域の比較を示す図である。
図3は、HDART/CRNタンパク質間の系統樹を示す図である。この系統樹は、GENETYX−MACプログラムを用いて構築した(ソフトウェア開発)。
図4は、外来または内在HDARTと外来Skipと相互作用を免疫沈降解析により同定した結果を示す写真である。
(A)外来HDARTと外来Skipとの相互作用を解析した結果を示す。レーン1はGFP−HDARTのみ、レーン4はFlag−Skipのみ、またはレーン2,3はその両方を293細胞内で発現させた。レーン5は、何もベクターを導入していないコントロールの細胞である。また、レーン1、2、4および5は、抗−Flag抗体により、レーン3は対照マウスIgGにより免疫沈降させたサンプルである。上部2つのパネルは、発現された各タンパク質の発現を示し、下部2つのパネルは免疫沈降物を示している。なお、それぞれ上段は抗GFP抗体、下段は抗Flag抗体で免疫ブロットした結果を示す。
(B)内在HDARTと外来Skipとの相互作用を解析した結果を示す。内在にHDARTを保持する293細胞にFlag−Skip(レーン1)またはFlag−ルシフェラーゼ(レーン2)を導入後、細胞抽出液を抗Flag抗体で免疫沈降させた。何もベクターを導入していないコントロール実験も並行させた(レーン3)。細胞内でのHDARTタンパク質の発現状況(上部パネル)、免疫沈降したFlag(中央パネル)、またはHDART(下部パネル)をパネル左「WB」として示す抗体を用いた免疫ブロッティングにより同定した。
図5は、Skip、HDART両タンパク質上の相互作用領域の同定結果を示す。
(A)Skip上のHDART結合領域部位のマッピング。プラス(+)は、酵母ツーハイブリッドシステムにおけるβ−ガラクトシダーゼ活性に基づき、相互作用が検出されたことを示す。プラスの数は、その相互作用の相対的強度を表わす。NHR結合:核ホルモン受容体結合ドメイン、TA;トランス活性化ドメイン。
(B)HDART上のSkip結合領域のマッピング。記号は上述と同様である。
図6は、核内ホルモン(レチノイン酸またはグルココルチコイド)による転写活性化をHDARTが抑制することを示すグラフである。
(A)HDARTによるレチノイン酸で活性化された転写の濃度依存的抑圧結果を示す。リガンドの不在下で空ベクター(1.0μg)を導入した際のCAT活性を基準として、補正されたCAT活性を表わした。3回の反復実験平均および、エラーバーはS.D.を示す。
(B)HDARTによるグルココルチコイド活性化を受けた転写の濃度依存的に抑圧結果を示す。
図7は、HDARTの細胞内局在を示す写真である。
(A)内因性HDARTタンパク質の局在化。左側パネルは抗HDART抗体(上段)または免疫前血清(下段)を用いた免疫蛍光染色結果を、右側パネルは左側パネルと対応した視野におけるDAPI染色結果を示す。
(B)生存細胞中のHDARTの局在化。Hela細胞にGFP−HDART発現ベクター(左上)またはGFP発現ベクター(左下)を導入後のGFPによる蛍光発光を観察した結果、およびHoechest33342染料を用い核を視覚化した結果(右上)を示す。
図8は、HDARTの自律的なプロモータ抑制活性を示す。
(A)Gal4リポーター(ルシフェラーゼ)プラスミドを保持するNIH3T3細胞に異なる量のGal4 DBD−HDART発現プラスミド(0、0.1、0.3、0.5μg)を導入した際のプロモータ抑制活性を検討した結果を示す。空ベクターのみ導入した際のルシフェラーゼ活性を基準(100%)として、補正済みルシフェラーゼ値を表した。3回の反復実験結果の平均で示し、エラーバーはS.D.を示す。
(B)U−20S細胞を用いた結果を示す。
図9は、HDARTとHDACとの直接的な相互作用を示す写真である。
(A)HDARTとHDACとの相互作用。293細胞にGFP−HDART発現ベクターとFlag−HDACs発現ベクター((レーン1;HDAC1、レーン3;HDAC3、レーン4;HDAC4、レーン5;HDAC6)とをコトランスフェクションした後、抗FLAG抗体で免疫沈降および表示された抗体(抗Flag抗体または抗GFP抗体)により免疫ブロッティングを行った結果を示す(それぞれ中央パネル、下部パネル)。なお、レーン2はGFP−HDARTのみが導入されたサンプルである。また、上部パネルは免疫沈降前のサンプルを用いてGFP−HDARTタンパク質の発現を確認した結果を示す。
(B)HDARTとHDAC3との直接的相互作用を示す結果である。
図10は、HDARTの抑制は2種のHDAC阻害物質(トリコスタチンA、酪酸ナトリウム)によりそれぞれHDARTの抑制が阻害されたことを示す(C、D)。
図11は、HDARTのN末端における4つのTPR(N4TPR)のドミナントネガティブ効果を示す図および写真である。
(A)N4TPRによる内因性HDARTとSkipと相互作用の阻害。Flag−SkipとGFP(レーン1)またはGFP−N4TPR(レーン2)とがトランスフェクションされた293細胞の細胞抽出液を抗Flag抗体で免疫沈降させ、この沈降産物をSDS−PAGEで分離した結果を示す。下方の3つのパネルは、それぞれ免疫沈降されたSkip(上段)、内因性HDART(中央)およびN4TPR(下段)を示す。免疫沈降前のHDARTタンパク質の発現は最上の一つのパネルに示されている。
(B)レチノイン酸レセプターに起因した転写をN4TPRによって活性化することを示すグラフである。
(C)グルココルチコイドに起因した転写をN4TPRによって活性化することを示すグラフである。
図12は、MM−1−19−P細胞内でのレチノイン酸による分化誘発をHDARTが阻害することを示す図および写真である。HDART発現ベクターまたは空ベクターを導入したMM−1−19−P細胞をATRA(2μM)存在下、非存在下での分化誘発を解析した。形質移入された細胞を同定するため、上記ベクターとともにGFPベクターをコトランスフェクションした。GFPによる緑色螢光発光を標準的顕微鏡写真により撮影した写真(A、B、C、D)、および位相差顕微鏡下で撮影した写真(E、F)を示す。
(A)ATRA(−)かつ空ベクター導入サンプル、(B)ATRA(+)かつ空ベクター導入サンプル、(C)ATRA(−)かつHDART発現ベクター、(D)ATRA(+)かつHDART発現ベクター、(E)(C)と同一視野の位相差写真、(F)(D)と同一視野の位相差写真。パネルFにおいて、黒色矢印ヘッドは未分化GFP陽性細胞を表わし、白色矢印ヘッドは分化された細胞を表わす。(G)グラフは、GFP陽性細胞中形態学的に分化した細胞の百万率を示す。4つの独立した実験からの結果は、平均およびS.D.(エラーバー)として提示されている(MockおよびATRA(+)でのHDARTの間でP<1%,スチューデントのtテスト)。
以下、本発明について、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]ヒトHDARTのクローニング
BLASTデータベースを用いてショウジョウバエcrn遺伝子のヒトホモログを検索したところ、膵臓の小島mRNA由来ヒトEST(expressed sequence tag)クローン#52930が上記crn遺伝子と高い相同性を有することが示された。このクローンw52930の完全な配列を定法に従い決定した。また更に5’−RACE法(5’−rapid amplification of cDNA ends strategy)により、本遺伝子は、そのcDNAの完全長が2660塩基からなり、一つの長い読み枠を備えていることを同定した。なお、ここで同定したタンパク質は、後述するようにHDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)に結合しリプレッサーとして機能することから、「HDART(aHDACssociatedepressorPR)」タンパク質と称する。HDARTは855アミノ酸をコードした高度に保存されたTPRタンパク質である(図1)。DNA配列から推定されるHDARTタンパク質は、ヒトCRNタンパク質と明らかに類似していることが示されている。特に、HDARTタンパク質の262残基から779残基の領域は、HDARTとヒトCRNタンパク質とで高度に保存されている(図1、2)。数種の種族間でのこのタンパク質の遺伝解析ではこれらは遺伝子ファミリーを形成していることを示した(図3)。
[実施例2]HDARTと転写コアクチベーターSkipとの直接的な相互作用
HDART上に存在するいくつかのTPR領域に着目し、これらTPRを介してHDARTと相互作用し得るタンパク質が存在するかを解析することとした。
このHDARTと結合するタンパク質の単離のために、酵母ツーハイブリットシステムを用いた。具体的には、酵母MATCHMAKERツーハイブリッド解析キット(Clontech)を用いて実施した。pAS−1ベクター(Clontech)内でGal4 DNA結合ドメインと読み枠を合わせるようにHDARTのORF全長を挿入した。このbait plasmidは、HeLa cDNAライブラリー(Clontech)がサブクローニングされたpACT2 prey plasmidと共に、サッカロマイセルセルビジエ(Saccharomyces cerevisiae)Y190に形質転換した。両プラスミドが導入されたクローンのスクリーニングは、キットに添付されたプロトコルに従って実施した。このようにして、約1×10をクローンした結果、数個のクローンを単離した。これらクローンを解析した結果、一つはSkipと一致していた。
哺乳動物細胞内でのHDARTとSkipとの相互作用を免疫沈降解析により確認した。この確認のために、先ず、Flag−Skip融合タンパク質を発現するFlag−Skip発現ベクターおよびGFP−HDART融合タンパク質を発現するGFP−HDART発現ベクターと(図4A)をHEK293細胞にEffecteneキット(QIAGEN)を用いてトランスフェクションした。なお、対照実験として、Flag−Skip発現ベクターのみ、GFP−HDART発現ベクターのみを同細胞に、同条件でトランスフェクションを行った。
トランスフェクションの24時間後、氷上で30分間、10μlのプロテアーゼ阻害物質カクテル(Sigma#p8340)100μlを含有するNonidetP−40緩衝液(50mMトリスHCl(pH7.6)、150mM NaCl、5mM EDTA、0.5%Nonidet P−40、1mM PMSF)中で細胞溶解することによって、細胞抽出物(1mg)を調製した。この抽出物をタンパク質A/Gセファロースビーズ40μlとともに30分間4℃でインキュベートすることによって、予備的に清澄化した。次に、清澄した上清抽出物を1時間抗Flag抗体または陰性対照のマウスIgG抗体(2μg)と共にインキュベートし、その後、40μlのタンパク質A/Gセファロースビーズを用いて30分間沈降させた。免疫沈降物を4回Nonidet P−40緩衝液で洗浄した。結合したタンパク質をSDSローディングバッファ中でA/Gセファロースビーズから溶出させ、溶出液をSDS−PAGEで展開した。展開後、メンブレンに転写し、メンブレンを定法に従い免疫ブロットを実施した。この免疫ブロット用の抗体としては、抗FLAG抗体M2(Sigma)および抗GFPモノクローナル抗体クローン1E4(MBL)を用いた。
上記免疫沈降解析の結果を図4Aに示す。図において上部2つのパネルは、各タンパク質の発現結果を示し、下部2つのパネルは免疫沈降物を示している。図4Aに示されている通り、上記両複合タンパク質が発現している場合のみ、抗Flag抗体によりGFP−HDARTタンパク質がFlag−Skip融合タンパク質と共に免疫沈降した(レーン2)。FLAG−Skipが発現していない条件では、抗FLAG抗体によりGFP−HDARTの沈殿はみられず(レーン1)、また、陰性対照の抗体を用いた場合も同様に沈殿は観察されなかった(レーン3)。この結果は、HDARTとSkipとがin vivoにおいて特異的に相互作用することを示唆している。
さらに、内在HDARTと外来から導入したSkipとの相互作用を解析した。293細胞(HDARTが高発現している細胞)にFlag−Skip発現ベクター、またはFlag−ルシフェラーゼ発現ベクターをトランスフェクションし、上述と同様の方法でトランスフェクションから24時間後に細胞抽出液を調整した。この細胞抽出液を抗Flag抗体とインキュベートし免疫沈降を行った。免疫複合体または免疫沈降前の細胞抽出液をSDS−PAGEで展開し、メンブレンに転写した。この同一のメンブレンを抗HDART抗体または抗Flag抗体とを用いて免疫ブロッティングを実施した。その結果を図4Bに示す。なお、図4Bにおいて、上部パネルは細胞抽出液を抗HDART抗体で免疫ブロットした結果を、中央パネルは抗Flag抗体を用いて免疫沈降後に抗Flag抗体で免疫ブロットした結果を、下部パネルは抗Flag抗体を用いて免疫沈降後に抗HDART抗体で免疫ブロットした結果を示す。
図4Bに示されているように、Flag−Skipが発現している条件においてのみ、抗Flag抗体でHDARTが共沈殿し(図4B、レーン1)、Flag−Lucタンパク質が発現している条件(レーン2)および何もトランスフェクションされていない親の293クローンでは(レーン3)、HDARTの共沈殿は見られなかった。
[実施例3]HDARTとSkipとの結合領域
HDARTとの相互作用に関与するSkip上の領域をマッピングするために、Skip(N−末端領域(コドン1−220)、核内ホルモン結合領域(NHR bindng、コドン221−388)、トランスアクティベーション領域(TA、コドン438−536))上の様々な領域を欠失させた欠失変異シリーズを作成し、上記実施例2に記載したGal4 DBD−HDARTを用いた酵母ツーハイブリッド解析によりHDARTと変異Skipとの相互作用を解析した。解析結果を図5Aに示す。図5Aの右に示された「+」記号はβ−ガラクトシダーゼ活性のフィルターリフト解析により相互作用が検出されたことを示し、「+」数はその相互作用の相対的強度を示す。
「−」記号は相互作用が検出されなかったことを示す。
図5Aに示すように、二つの異なる領域がHDARTとの相互作用に関与することを発見した。これら領域は、一つが97−119残基内であり、もう一つは220−437残基内であった。Skipのトランスアクティベーション領域はHDARTとの結合活性には、ほとんど関与しないことが示された。同様のアプローチをHDART上でのSkipとの相互作用に関与する領域を解析するために実施した。すなわち、Gal4DBD−HDARTのさまざまな欠失突然変異体を作製し、これをGal4AD−Skipと作用させた際のガラクトシダーゼ活性を解析した。この解析結果を図5Bに示す。4つのTPRを含むN末端領域(1−179残基)はSkipとの相互作用に必要十分であることが示された(図5B)。したがって、HDARTはN末端の4つのTPR領域を介してSkipと直接相互作用する。
[実施例4]HDARTによる核内レセプターに起因した遣伝子の転写抑制
上記実施例においてHDARTがSkipと相互作用し得ることが示されたことから、次に、核内レセプターに起因した転写経路に対するHDARTの機能的な役割を解析した。先ず、レチノイン酸レセプターによる転写制御に対するHDARTの作用を解析した。この目的のため、CAT解析をレチノイドレスポンスエレメント(retinoid response element)の下流にチミジンキナーゼ最小プロモータ(pTREpal−tata)とCAT遺伝子を組み込んだRAR(retinoid acid receptor)レポータープラスミドを用いて、CAT解析を行った。
具体的には、HepG2細胞にRARレポータープラスミドと同時に、HDARTを定常的に発現するpcDNA3−HDARTをEffecteneキット(QIAGEN)によりトランスフェクションした。なお、pcDNA3−HDART発現ベクターの導入量を変えて0、0.5、1.0μgとし、各々のトランスフェクションのDNA量を同一にするためにpcDNAの空のベクターで1μgになるように調整した。トランスフェクション後、ATRA(10−8M)の存在下または非存在下で生育させ、その際のCAT活性を測定した。測定結果(図6)は、ATRA不存在下での空ベクター1.0μgを導入したCAT活性を基準にして補正した値を表わした。また、3回の実験結果の平均およびエラーバーにより標準偏差を示す。
図6Aに示すように、CAT活性は空のベクター(pcDNA)が導入された細胞ではATRAにより5倍上昇した。しかしながら、このATRAで誘導されたCAT活性はHDARTにより濃度依存的に抑制された。
さらにグルココルチコイドレセプター(GR)による転写制御に対するHDARTの作用はGR陽性Hela細胞内でGRレポータープラスミドを用いて解析した。グルココルチコイド応答性ブロモータの転写活性化は、HeLa細胞および10−8Mのデキサメタゾンを代りに使用した点を除いて上記レチノイン酸レセプターに対する実験と同様に行った。測定結果の表示も上記と同様に行った。
HDARTの共発現は、RAR(レチノイン酸レセプター)起因トランスアクティベーションで観察された抑制と同程度で、グルココルチコイドに応答したレポーター遺伝子の活性化を抑制した(図6B)。これらの結果は、HDARTが核内レセプターによって活性化された転写を選択的に抑制することを示している。
[実施例5]細胞核内におけるHDARTの局在
HDARTが転写制御に直接関与することが示されたため、HDARTは細胞の核内に局在することが予想される。そのため、HDART組換えタンパク質に対するポリクローナル抗体を作製し、これを免疫蛍光実験によりHDARTの細胞内の局在を解析することとした。
ポリクローナル抗体の作製は、先ず、大腸菌中でHis−HDART(アミノ酸残基296−431)の融合タンパク質として産生させ、Hisと親和性があるNi−NTA樹脂(QIAGEN)で精製した。次に、このHis−HDARTタンパク質をウサギに免疫し、得られた抗HDART抗血清を、ProtOnキット1(MPS)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによりさらに精製した。ここで精製されたウサギ抗HDART抗体を、内在的にHDARTを保持するHela細胞とインキュベートし、その後、PE(Phycoerythrin)融合抗ウサギ抗体とインキュベートして、免疫螢光染色を行った。なお、コントロール実験として、ウサギ抗HDART抗体に代えて免疫前のウサギ血清を用いて同様の操作を実行した。また、核の所在を明確にするために、DAPI染色も行った。
図7Aに示されているように、抗HDART抗体を用いた免疫蛍光染色像は、DAPI染色像と一致した。一方、免疫前血清では、核は染色されなかった。これら結果より、HDARTはHela細胞の核内に優勢的に局在していることが示された(図7)。
また、生存している細胞でのHDARTの局在を解析した。Hela細胞にGFPまたはGFP−HDART発現ベクターをトランスフェクションし、24時間後にGFPによる蛍光発光を検出した。また、GFP−HDART細胞については、核を視覚化するためにHoechest33342染料を用いてインキュベーションを行った。
図7Bに示すように、GFP−HDARTベクターをトランスフェクションした細胞では、Hoechest33342染料(右上パネル)で視覚化された核がGFPにより蛍光発光していることが確認された(左上パネル)。特に、GFP−HDARTは、既に報告されているSkip分子の核スペックルパターン(17)と部分的に類似のパターンを示した。類似の結果はHT1080細胞および293細胞においても観察された(図示せず)。
[実施例6]HDARTによる自律的な抑制機能
HDARTがより直接的な抑制に関与すると仮定した場合、自律的な抑制機能を持つであろうことが予想された。この予想を確認するために、HDARTをDNAに接続させるために完全長のHDART cDNAをGal4 DNA結合領域(GAL4DBD:GAL4DNAとの結合領域のみを持ち、転写制御領域を持たない領域)に融合させ、NIH3T3細胞内でGAL4プロモータからの転写を調節し得るかを解析した。
具体的には、Gal4レポータープラスミド(pGal4−Luciferase)が予め導入されたNIH3T3細胞に、HDART全長タンパク質とGal4 DBDとの融合タンパク質を発現するGal4 DBD−HDARTプラスミドを導入量を変えて(0、0.1、0.3、0.5μg)トランスフェクションした。なお、トランスフェクションに用いるトータルDNA量を揃えるために、各々のトランスフェクションにおいてGal4 DBDの空のベクターを用いて発現ベクターの量を0.5μgに調整した。トランスフェクション24時間後に、プロモータからのレポーター遺伝子の発現活性(ルシフェラーゼ活性)を解析した。各サンプルのルシフェラーゼ活性は、空のベクターのみ導入した際のルシフェラーゼ活性を基準(100%)として補正した値で表した(図8)。なお、解析結果は3回の実験結果の平均で示し、また、標準偏差をエラーバーにより示した(図8A)。また、Gal4 DBD−HDART(導入量0または0.5μg)を用いて別の細胞U−20S細胞においても同様の解析を行った(図8B)。
HDARTはNIH−3T3細胞内におけるプロモータ活性を濃度依存的に著しく抑制し、最も高い濃度(0.5μg)ではルシフェラーゼの発現を80%低下させた(図8A)。類似の結果はU−20S細胞でも観察された(図8B)。これら結果より、HDARTそれ自身で自律的な転写抑制作用を有していることが示された。
また、GAL4 DNA結合領域をもたないHDARTの場合には、ルシフェラーゼの発現抑制は全く示されなかった(図示せず)。このことは、HDARTそれ自身ではプロモータ領域のDNAへの結合活性を有していないと考えられる。
[実施例7]HDARTに起因した抑制メカニズム
急性の転写調節は、HAT(ヒストンアセチル化酵素)による活性化およびHDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)による抑制が関与するメカニズムを介したコアヒストンのアセチル化の状態により制御されていることが報告されている。HDARTが起因する遺伝子抑制のメカニズムを明らかにするために、このHDARTの機能がHDACとの複合体形成を介して発揮されるか否かをFlag−HDAC発現ベクターを用いた免疫沈降解析により調べた。
異なるタイプのHDAC(1,3,4または6)を発現し得るFlag−HDACs発現ベクターとGFP−HDART発現ベクターとを実施例2と同様に293細胞にコトランスフェクションし、トランスフェクション24時間後に細胞抽出液を調整した。各細胞抽出液を抗Flag抗体とインキュベートして免疫沈降を行った。免疫沈降産物をSDS−PAGEにより分離し、分離したパターンをメンブレンに転写後、抗Flag抗体または抗GFP抗体を用いて免疫ブロッティングを行った。参照として、各細胞におけるGFP−HDARTタンパク質の発現を確認するために、免疫沈降前の各試料を同様にSDS−PAGEで展開し、抗GFP抗体を用いた免疫ブロッティングを実行した。なお、図9Aにおいて、上部パネルに免疫沈降前のGFP−HDARTタンパク質の発現結果を示し、中央パネルは免疫沈降産物を抗Flag抗体で免疫ブロッティングした結果を示し、さらに、下部パネルは免疫沈降産物を抗GFP抗体で免疫ブロッティングした結果を示す。また、HDACの種類は図左から次の通り:レーン1;HDAC1、レーン3;HDAC3、レーン4;HDAC4、レーン5;HDAC6である。なお、レーン2はGFP−HDARTのみを発現させたサンプルである。
図9Aに示すように、Flag−HDAC発現ベクターとGFP−HDART発現ベクターとがコトランスフェクションされた293細胞由来の抽出液では、抗FLAG抗体によってGFP−HDARTが免疫沈降したことが確認された(下部パネル、左よりレーン1,3,4,5)。しかし、FLAG−HDAC非存在下(Flag−HDAC発現ベクターが導入されていない株)では、抗FLAG抗体を添加してもGFP−HDARTの沈降は見られなかった(下部パネル、レーン2)。従って、抗FLAG抗体によるGFP−HDARTの沈殿は、Flag−HDACとGFP−HDARTとの特異的な相互作用によることが示された。また、HDARTはタイプI(HDAC1および3)とタイプII(HDAC4および6)の両タイプのHDACと相互作用することも示された。
さらに、HDARTとHDAC3との直接的な相互作用をGSTプルダウン解析により調べた。GSTプルダウン解析は基本的に既知の方法に従って実施した(Tzamarias,D.,and Struhl,K.(1995)Genes Dev 9(7),821−31.)。TNT(登録商標)in vitro転写・翻訳システム(Promega)を用い、35S−メチオニン存在下でHDAC3のin vitro翻訳を行った。GSTタンパク質またはGST−HDART融合タンパク質は、それぞれ大腸菌内で発現させ、GST結合緩衝液(50mM トリス−HCl、200mM LiCl、0.5% NP40、5mM EDTA、1mM PMSF)中、グルタチオンセファロースを用いて精製した。GST結合緩衝液1ml中GST−HDART融合タンパク質または対照GSTタンパク質(約1μg)と35S−放射線標識iv vitro翻訳産物(10μl)とを含有した結合反応液を調製した。この反応液を振とうしながら4℃、1時間インキュベートした後、セファロース−GSTタンパク質複合体をGST結合緩衝液で5回洗浄した。GSTタンパク質に結合したタンパク質をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)含有サンプル緩衝液中で沸とうさせることにより溶出させ、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。GST融合タンパク質が同等に泳動されていることをクーマシーブリリアントブルー染色により確認し、さらにオートラジオグラフィにより35S−放射線標識されたHDACを検出した。
図9Bに示されているように、In vitroで翻訳されたHDAC3は、単なるGSTタンパク質とは結合せずプルダウンさせることができなかったが、GST−HDART融合タンパク質を用いることによりプルダウンされることが示された(図9B)。また図には示されていないがHDAC1でもまた同様の結果が示された。このことから、このHDARTとHDACとの相互作用は直接的であることが示唆された。
さらにHDARTの転写抑制作用に対するHDACの脱アセチル化活性への影響を解析するために、HDACを特異的に阻害するトリコスタチンA(TSA)存在下で、実施例4と同様にCATレポーター解析を行った(図10CおよびD)。但し、本実施例では、一定量のpcDNA3−HDART発現ベクター(1μg)を用い(図10中「HDART+」)、またリガンド(ATRAまたはデキサメタゾン)と共に100nM TSAまたは1mA酪酸ナトリウムを添加した。
図10C、Dに示すように、リガンドのみでは対応するプロモータからのリポーター遣伝子の発現は上昇し、そこにHDARTを発現させると、発現活性が抑制された。さらにトリコスタチンAが添加されると、HDARTによる発現抑制が完全に中和された。同一の結果がもう一つのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、酪酸ナトリウム(Buty)を添加した場合にも観察された。これら結果は、HDARTによる転写抑制が脱アセチル化酵素活性を介して発揮していることを裏付けている。
[実施例8]HDART−Skip相互作用によるリガンド非結合型レセプター(unliganded receptor)の能動抑制
RARおよびTRは、in vivo(Baniahmad,A.,Kohne,A.C.,and Renkawitz,R.(1992)Embo J 11(3),1015−23)およびin vitro(Fondell,J.D.,Roy,A.L.,and Roeder,R.G.(1993)Genes Dev 7(7B),1400−10.)においてリガンド非存在下で遺伝子活性化を抑制する。このことから、これを能動抑制(active repression)と称している。また、Skipはリガンド非依存的にNHRと相互作用する(MacDonald,P.N.,Baudino,T.A.,Tokumaru,H.,Dowd,D.R.,and Zhang,C.(2001)Steroids 66(3−5),171−6.)。そのため、これら抑制効果およびSkipとの生理的な関与により、HDART−Skip複合体がリガンド非結合型レセプター上に存在する可能性、また、この相互作用がレセプターの能動抑制に関与する可能性が示唆された。これら可能性を明らかにするために、HDARTのドミナントネガティブ株を過剰発現させ、その際のRARに起因した転写に対する影響を調べた。実施例2に示した通りHDARTにおけるN末端の4つのTPR(N4TPR)はSkip結合領域であるため、この領域の発現が内在HDARTとSkipとの相互作用を阻止することでHDARTの天然の機能を阻害してドミナントネガティブとして機能することが予想されたため、本実施例ではN4TPRをドミナントネガティブ候補として用いた。
293細胞にFlag−SkipおよびGFPまたはGFPでタグ付けされたN4TPRをトランスフェクションした。トランスフエクション24時間後に細胞抽出物を調製し、抗Flag抗体で免疫沈降させた。免疫沈降物をSDS−PAGE上で分離した。また、免疫沈降前の内在性HDARTの発現を確認するために、免疫沈降前の細胞抽出液も同様にSDS−PAGEで分離した。分離後のパターンをメンブレンに転写した。そして、Flag−Skipの発現については抗FLAG抗体を用い、GFPおよびGFP−N4TPRの発現については抗GFP抗体を用い、さらに、内在HDARTの発現については抗HDART抗体を用いて、それぞれ検出した(図11A)。なお、図11Aにおいて、下方の3つのパネルは、それぞれ免疫沈降されたSkip(下部上)、内因性HDART(下部中央)およびN4TPR(下部下)を示し、上部の一枚のパネルには、免疫沈降前の内因性HDARTタンパク質の発現を示す。
図11Aに示されているように、N4TPRの発現は、N4TPRを発現していない対照(GFPのみ、レーン1)に比べてSkipと共沈殿したHDARTの量を減少させた(下部中央パネル、レーン2)。一方、N4TPRの過剰発現は、N4TPRとSkipとの相互作用が増加し、共沈殿したSkipの量を著しく上昇させた(レーン2、lower bottom panel)。コントロールのタンパク質(GFP)の発現はHDARTとSkipとの相互作用に対して影響はなかった(レーン1)。この結果は、N4TPRがHDARTに代わってSkipと相互作用するドミナントネガティブタンパク質として作用することを示している。
次に、N4TPRの過剰発現がRARまたはグルココルチコイド応答性プロモータからの転写に与える影響を調べた。なお、ここでは、GFP−N4TPR発現ベクター(0、0.3、0.5μg)を用いた点を除いて、上記実施例4に記載したレポーター解析と同様の方法により検討した。
結果は図11B、Cに示した通り、リガンド非存在下でN4TPRを制限して発現させることにより(導入量0.3μg)、RARおよびグルココルチコイド応答性プロモータからの転写活性をリガンド存在下で誘導した転写活性の程度(グレーカラム)まで増加させた。N4TPRの最も高い発現レベルでは(導入量住0.5μg)、リガンド非存在下で転写活性を強く増加(〜約20倍)させた。これらの結果はHDARTがRARやグルココルチコイドレセプターなど核内ホルモンレセプターの能動抑制にとって必要であることを示唆している。
[実施例9]レチノイン酸誘導による黄紋筋筋腫由来細胞株(rhabdomyosarcoma cell line)の筋組織への分化をHDARTの過剰発現により阻害
ATRA(All−trans retinoic acid)は、腫瘍細胞分化の重要な誘導剤であることが知られている(20−22)。ヒト黄紋筋筋腫由来細胞株MM−1−19−Pは主に小さな多角形の細胞から構成され、最終的にレチノイン酸を備えた筋管様の巨大細胞に分化する。核内ホルモンレセプターに起因した反応におけるHDARTの生理学的な役割を明らかにするために、ATRAによるMM−1−19−Pの筋組織の分化に対してHDART発現が与える影響を解析した。
100mMのペトリ皿上にMM−1−19−P細胞を植えつけ、この細胞に0.4μgのpGFPベクターと2μgのpcDNA3(空ベクター)またはpcDNA3−HDART(HDART発現ベクター)とをコトランスフェクションした。トランスフェクションから24時間後に、培地をATRA含有(2μM)または非含有の新鮮な培地と交換した。48時間の誘導後、細胞が筋管様の巨大細胞を示す細長い紡錘細胞へと変化した時点で、形態学的に分化したものとして細胞を評価した。すべての実験を4回反復し、GFPについて陽性と評価済みの細胞の数をカウントした。結果を図12に示す。なお、図12において、GFPの緑色螢光の標準的顕微鏡写真をパネルA、B、C、Dに、位相差顕微鏡写真をパネルE、Fに示す。また、(A)はATRA非処理かつ空ベクター導入細胞、(B)ATRA処理かつ空ベクター導入細胞、(C)ATRA非処理かつHDART発現ベクター導入細胞、(D)ATRA処理かつHDART発現ベクター導入細胞、(E)上記(C)と同一条件の細胞、(F)上記(D)と同一条件の細胞を示す。また、パネルFでは、黒色矢印は、未分化GFP陽性細胞を表わし、白色矢印は分化された細胞を指す。(G)グラフは、GFP陽性細胞中の形態学的に分化された細胞の百分率を4回の独立した実験結果の平均で示し、また標準偏差はエラーバーで示されている(空ベクターかつATRA(+)とHDART発現ベクターとの間でP<1%,スチューデントのtテスト)。
各実験において、GFP陽性細胞数は30〜70であった。空ベクターを導入しATRA処理した細胞では、GFP陽性の細胞数はATRAの細胞毒性効果のため30%未満であったが、一方、HDART発現ベクターを導入した細胞では、ATRA処理群、非処理群とでGFP陽性の細胞数は同じであった。
空のベクターが導入された細胞の多くは、ATRA処理によって、筋管様の巨大細胞の出現で示されるように筋組織に分化した(図12B、図12G)。また、空のベクターが導入された細胞では、ATRA処理による表現型の変化の程度はGFP陽性および陰性の細胞の双方で同一であった。しかしながら、HDARTが導入された細胞では、GFP陽性細胞はATRA処理を行っても表現型の変化はほとんどないが(図12D中黒色矢印、図12G)、一方のGFP陰性細胞では特徴的な筋管様巨大細胞が観察された(図12F中白色矢印)。この結果は、HDARTの発現がレチノイン酸による分化を抑制することを示している。そして、この結果はレポーター解析においてHDARTがRARによる転写活性化を抑制した結果と一致する。これらの結果はHDARTが少なくともレチノイン酸レセプターにおける生理学的な転写のコリプレッサーであることを示している。
産業上の利用の可能性
上述した通り、本発明の転写抑制因子は、自律的に転写を抑制し、特に、核内レセプターの転写を抑制するため、所望の転写系に作用させ、該転写系の転写を抑制する目的で用いることができる。また、本発明の転写抑制因子はHDACと結合能を有し、このHDACのヒストン脱アセチル化活性を介して転写抑制能を発揮し得る。したがって、本発明の転写抑制因子を用いてHDACをリクルートさせ、HDACの作用によって転写抑制を行うこともできる。本発明の転写抑制因子のこのような作用は、例えば核内レセプターの転写亢進が起因している疾患に応用し得るものであり、こうした疾患の治療薬として本転写抑制因子が有益となる。
また、上記転写抑制因子のドミナントネガティブペプチドは、転写活性化因子として機能する。したがって、このドミナントネガティブペプチドは、転写を促進させるために用いることができる。このドミナントネガティブペプチドもまた、核内レセプターの転写に作用し、その転写を逆に促進させる。そのため、核内レセプターの転写促進物質として本ペプチドが有益となる。特に、HDARTのN末端側の4つのTPR(N4TPR)は、ATRAに比してレチノイン酸レセプターの転写活性化能が高いため、現在ATRAが用いられている疾患治療(例えば、悪性腫瘍の分化誘導療法など)において、ATRAに代えてまたはATRAと共に本ペプチドを治療薬として応用し得る。
【配列表】
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【書類名】 明細書
【技術分野】
【0001】
本発明は転写調節因子等に関し、特に、核内ホルモンレセプターに起因した転写を調節し得る因子、ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
ホルモンや脂溶性ビタミンなどは生物の恒常性の維持、エネルギー代謝、分化、成長などに重要な役割を果たしている。これらホルモン等のレセプターは核内に存在する転写調節因子であり、クロマチンDNAの特定部位に結合して、遺伝子の転写反応を調節する。
【0003】
多くの場合、ホルモン等のリガンドがレセプターに結合していない場合には、転写が抑制され、レセプターにリガンドが結合するとクロマチン構造の変化などにより転写が活性化される。この核内レセプターから転写装置に至る経路にはコアクチベーターやコリプレッサーと呼ばれる多くの因子が複合体を形成して働いていることが報告されている。
【0004】
リガンドが結合していないレセプターにはヒストン脱アセチル化酵素を含むコリプレッサー複合体が結合して遺伝子発現を抑制し、一方、リガンドが結合することによりレセプターの構造が変化すると、コリプレッサー複合体が離れて代わりにヒストンアセチル化酵素を含むコアクチベーター複合体がリクルートされる。
【0005】
このようなコアクチベーターの一例としてはSkip(Ski相互作用タンパク質、N-CoA62とも称されている)があり、いくつかの核内レセプター(例えば、ビタミン3レセプター、レチノイン酸レセプター、エストロゲンレセプター、およびグルココルチコイドレセプター)と直接結合して、これら核内レセプターが媒介する遺伝子発現を増強し得る(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】
Baudino, T. A., Kraichely, D. M., Jefcoat, S. C., Jr., Winchester, S. K., Partridge, N. C., and MacDonald, P. N. (1998) J Biol Chem 273(26), 16434-41、MacDonald, P. N., Baudino, T. A., Tokumaru, H., Dowd, D. R., and Zhang, C. (2001) Steroids 66(3-5), 171-6.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、核内レセプターを介した転写の制御メカニズムの概要は明らかにされつつあるが、そのメカニズムにどのような因子が関与するかの解明は残されている。そこで、本発明は、転写調節因子、特に核内レセプターの転写調節にも関与し得る新たな因子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、ショウジョウバエのcrn(crooked neck)遺伝子のヒトホモログのクローニングおよびその機能解析の研究を通して、このヒトホモログが核内レセプターを介した転写調節に関与することを見出した。
【0008】
なお、このショウジョウバエcrn遺伝子自体は、胚形成の早期段階で最大の発現レベルになる遺伝子であり、この遺伝子の不活性化は、胚形成の欠陥をひき起こし、主に神経系の発達に影響を及ぼすことが報告されている(Zhang, K., Smouse, D., and Perrimon, N. (1991) Genes Dev 5(6), 1080-91)。
【0009】
crnタンパク質の1つの独特な特徴は、縦列に方向付けられたテトラトリコペプチド反復(TPR)の16のコピーが存在することである。TPRは、さまざまなタンパク質で見出され、進化中に広まった同義性の34アミノ酸反復モチーフである。TPRタンパク質が関与するプロセスとしては、細胞サイクル制御、転写抑制、ストレス応答、タンパク質キナーゼ抑制、およびタンパク質輸送が含まれる(Lamb, J. R., Tugendreich, S., and Hieter, P. (1995) Trends Biochem Sci 20(7), 257-9)。
【0010】
上記crn遺伝子のヒトホモログには、コピー数において15と異なるが上記ショウジョウバエcrn遺伝子と同様に多数のTPRが存在する。本願発明者らがクローニングしたヒトcrn遺伝子は既に報告されている転写に関連した転写共役DNA修復に関与するタンパク質(XAB2)をコードした遺伝子(Yoshimichiら、Jounal. Biol. Chem. 275:34931-34937)と一致するものであるが、本願発明者らは、本遺伝子産物が転写抑制に関与することを新たに見出した。特に、本遺伝子産物は、HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)に結合しリプレッサーとして機能することから、本明細書では「HDART(a HDAC associated repressor TPR)」タンパク質と称する。
【0011】
また、本願発明者らは、HDARTが、上述した核内レセプターの転写コアクチベーターとして機能するSkipと直接結合し、核内レセプターの転写を抑制することも見出した。さらに、HDARTが核内レセプターの転写コリプレッサーの1つであり、HDACと結合しHDACのヒストン脱アセチル化により強力に転写を抑制し得ることも明らかにした。一方、HDARTのドミナントネガティブペプチドも得られ、このペプチドは全長HDARTとは逆に転写を活性化することをも確認した。
【0012】
すなわち、本願発明は、HDARTの新たに解明した種々の機能に基づくものであり、具体的には、以下の通りである。
(1)本発明は転写抑制因子をコードしたDNAであって、(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしたDNA、または、(B)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAである。
(2)本発明は転写抑制因子をコードしたDNAであって、(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしたDNA、または(B)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAである。
(3)本発明は上記(1)または(2)に記載のDNAによりコードされた転写抑制因子である。
(4)本発明は核内ホルモンレセプターに起因した転写を抑制し得る上記(3)記載の転写抑制因子である。
(5)本発明は転写を活性化し得るペプチドをコードしたDNAであって、(A)配列番号2における1から179位のアミノ酸配列からなるペプチドをコードしたDNA、または(B)配列番号1における1から537塩基までの塩基配列からなるDNAである。
(6)本発明は転写を活性化し得るペプチドをコードしたDNAであって、(A)配列番号2における1から179位のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するペプチドをコードしたDNA、または(B) 配列番号1における1から537塩基までの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAである。
(7)本発明は上記(5)または(6)記載のDNAによりコードされた転写活性化ペプチドである。
(8)本発明は上記(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載のDNAのうち、少なくとも15ヌクレオチド長を有するDNAである。
(9)本発明は上記(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載のDNA が挿入されたベクターである。
(10)本発明は上記(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載のDNAまたは上記(9)に記載のベクターを保持する宿主細胞である。
(11)本発明は上記(3)に記載の因子または上記(7)に記載のペプチドに結合し得る抗体である。
(12)本発明は上記(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載のDNAとハイブリダイズし、少なくとも10ヌクレオチド長を有する、オリゴヌクレオチドプローブである。
(13)本発明は以下の(A)〜(D)のいずれかが固定された基板である。
(A)上記(12)に記載のオリゴヌクレオチドプローブ
(B)上記(3)または(4)に記載の転写抑制因子、もしくは該因子の部分ペプチド
(C)上記(7)に記載の転写活性化ペプチド、もしくは該ペプチドの部分ペプチド
(D)上記(11)に記載の抗体
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書において予め用いる略語を説明する:HAT(ヒストンアセチルトランスフェラーゼまたはヒストンアセチル化酵素)、HDAC(ヒストンデアセチラーゼまたはヒストン脱アセチル化酵素)、DAPI(4′,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)、RAR(レチノイン酸レセプター)、GR(グルココルチコイドレセプター)、DBD(DNA結合ドメイン)、AD(活性化ドメイン)、ATRA(all-trans Retinoic Acid:全トランスレチノイン酸)。
【0014】
本発明は、転写調節に関する因子に関する。この転写調節因子には、転写を抑制する因子と、活性化する因子が含まれる。まず、転写抑制因子について説明する。本発明の転写抑制因子を例示すればHDARTであり、HDARTのアミノ酸配列は、配列番号2からなる。但し、本発明の転写抑制因子は配列番号2に記載のHDARTに限定されず、転写抑制活性を有する範囲で、配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質、さらには、HDARTをコードしたDNA(配列番号1)とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAによりコードされたタンパク質をも包含される。
【0015】
上記HDARTタンパク質は、ヒト細胞の核内で発現していることから、ヒト細胞核より得ることができる。この原料となるヒト細胞は、特に限定はないが、一例を挙げればHDARTを内在的に発現していることが明らかである293細胞を用いることができる。
【0016】
また、アミノ酸置換等を有するHDART類似タンパク質の調製は、例えば、公知の技術であるファージライブラリースクリーニング技術(Molecular Cloning 3rd Ed, Chapter 2, pp. 2.1-2.117)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Molecular Cloning 3rd Ed, Chapter 8, pp. 8.1-8.126)技術を利用して実施することができる。具体的には、HDARTをコードしたDNA(配列番号1)またはその一部をプローブやプライマーとして、配列番号1とホモロジーを備えたDNAを得て、このDNAを基にタンパク質を生成することにより得ることができる。ここで得られるタンパク質は、通常、HDARTとアミノ酸配列において高いホモロジーを有する。この高いホモロジーは、少なくとも40%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは少なくとも97%以上(例えば、98から99%)の塩基配列の一致を意味する。
【0017】
また、上記「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、当業者であれば適宜選択することができる。一例としては、25%ホルムアミド、より厳しい条件では50%ホルムアミド、4×SSC、50mM Hepes pH7.0、10×デンハルト溶液、20μg/ml変性サケ精子DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃で一晩プレハイブリダイゼーションを行った後、標識したプローブを添加し、42℃で一晩保温することによりハイブリダイゼーションを実施することが挙げられる。その後の洗浄における洗浄液および温度条件は、1xSSC、0.1% SDS、37℃程度で、より厳しい条件としては、0.5xSSC、0.1% SDS、42℃程度で、さらに厳しい条件では、0.2xSSC、0.1% SDS、65℃程度で実施することができる。これらSSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、適宜改変することは可能である。
【0018】
配列のホモロジーは、BLASTn(核酸レベル)やBLASTx(アミノ酸レベル)のプログラム(Altschul et al. J. Mol. Biol.215:403-410, 1990)を利用して決定することができる。該プログラムは、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sei. USA 87:2264-2268, 1990、Proc.Natl. Acad. Sei. USA 90:5873-5877, 1993)に基づいている。BLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore = 100、wordlength = 12とする。また、BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore = 50、wordlength = 3とする。また、Gapped BLASTプログラムを用いて、アミノ酸配列を解析する場合は、Altschulら(Nucleic. Acids. Res.25:3389-3402, 1997)に記載されているように行うことができる。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
【0019】
配列番号2に記載の配列を人為的に改変する場合には、一般的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内であると考えられるが、転写抑制活性を維持し得る範囲内であれば上記改変割合を超えてアミノ酸配列を置換等してもよい。この人為的にアミノ酸配列を改変する手法は、例えば、公知の手法であるdeletion-mutant 作製方法、PCR法、site-directed mutagenesisなどにより実行することができる。なお、ここで改変されたタンパク質が、HDARTと同様に、転写抑制活性を有するか否かは、後述する実施例に記載されているような種々のレポーター解析法などを用いて転写抑制能を解析し決定することができる。
【0020】
上記HDARTまたはこれに類似したタンパク質は、上述した通り転写抑制活性を有するため、この機能を利用して所望の転写装置に組合せて所望の遺伝子の転写を抑制することができる。この転写装置は、in vitro転写系、in vivo転写系のいずれでもよい。また、HDARTの転写抑制能は自律的であることから、本発明の転写抑制因子は単独で用いて転写を抑制させ得る。但し、この場合、HDARTはDNA結合能を有しないため、好ましくは、DNA結合領域を融合させた融合タンパク質として用いることがよい。また、HDARTはHDACと結合能を有し、HDARTはHDACをリクルートしてヒストン脱アセチル化活性により強力に転写を抑制し得る。そのため、本発明の転写抑制因子は、HDACと共に用いて、あるいはHDACを誘導することにより転写を抑制することもできる。なお、HDACにはタイプI(HDAC1, HDAC2, HDAC3)とタイプII(HDAC4, HDAC5, HDAC6, HDAC7, HDAC8)が存在することが知られている。本発明のHDARTはHDAC2、HDAC5、HDAC7、HDAC8等と結合するものと考えられることから、本発明においては、HDAC2、HDAC5、HDAC7、HDAC8を好適に使用することができるが、これらのHDACに特に限定されるものではなく、タイプIまたはIIに属するいずれのHDACを用いることが可能である。
【0021】
また、HDARTは核内レセプターの転写を抑制し得ることから、本発明の転写抑制因子により抑制し得る転写装置としては、好適には核内レセプターを介した転写装置を挙げることができる。この核内レセプターとしては、レチノイン酸レセプター、グルココルチコイドレセプターを好適に挙げることができ、また、本発明の因子が転写抑制し得る範囲でレチノインXレセプター、ビタミンDレセプター、アンドロゲンレセプター、エストロゲンレセプター、チロイドホルモンレセプターなどのホルモンや脂溶性ビタミンなどに対する核内レセプターなどを含めることができる。そのため、本発明の転写抑制因子は、このような核内レセプターからの転写の不調節、特に過剰に転写が促進されることが起因した疾患の治療に役立ち得る。特に、後述する実施例で示すように、HDARTはレチノイン酸レセプターの転写を抑制し、さらには、このレチノン酸レセプターの転写により誘導する分化をも抑制することが明らかになっているため、レチノン酸レセプターの転写による分化亢進が起因した疾患の治療薬として本転写抑制因子を応用してもよい。
【0022】
本発明は上記転写抑制因子をコードしたDNAに関する。このDNAとしては、例えば配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAを挙げることができるが、これに限定されるものではなく、上述した配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードしたDNA、配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしたDNA、および配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAなどが包含される。
【0023】
上記DNAは、配列番号1に記載のDNAまたはその一部をプローブまたはプライマーとして用い、例えば、ヒト細胞(一例を挙げれば、後述する実施例1に示したように、ヒト膵臓の小島細胞)のcDNAライブラリーなどからハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により得ることができる。他の方法としては、ヒト細胞のmRNAを鋳型に用い、配列番号1に記載のDNAの一部をプライマーとしてRT-PCR(Molecular Cloning 3rd Ed, Chapter 8, Protocol 8, pp. 8.46-8.53)により得ることもできる。なお、ここでは、ヒト細胞を例に挙げたが、それ以外の哺乳動物細胞、真核細胞などを用いて調製してもよい。また、DNAを単離するためのハイブリダイゼーション条件は、上述した通りである。
【0024】
上記DNAをクローニングする方法以外にも、DNA合成機により配列番号1に記載のDNAとその相補鎖とをそれぞれ合成し、アニーリングさせて生成してもよい。
【0025】
上記DNAは転写抑制因子をコードしていることから、この転写抑制因子を生産するツールとして、または細胞や個体内に導入して転写抑制因子を発現させるツールとして用いることができる。このような目的で用いる場合には、上記DNAを発現ベクターなどに組み込むことが好ましい。発現ベクターは、タンパク質生産に用いる翻訳系により、あるいは導入する細胞により適宜選択することができる。
【0026】
上記DNAが組込まれたベクターを用いて転写抑制因子を生産するためには、先ず、上記ベクターを宿主細胞に導入し、この宿主細胞を培養する。これにより、宿主細胞内では上記転写抑制因子が生産される。ここでベクターを細胞に導入する手法は、用いる細胞に応じて適宜選択することができる。例えば、ウイルスベクターやファージを介した生物学的な手法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法などの化学的な手法、ジーンガン、エレクトロポレーション法などの物理的な手法などを用いることができる。宿主細胞において生産されたタンパク質は、必要に応じて、精製(例えば、アフィニティー精製など)を行った上で使用することができる。
【0027】
上記DNAが組み込まれた発現ベクターはまた、細胞内あるいは個体内の所望の転写を抑制する目的で用いることができる。すなわち、この発現ベクターを細胞または個体内に導入し上記転写抑制因子を発現させることにより、所望の転写系を抑制することができる。特に、HDARTは自律的な転写抑制能を有するため、本発明の転写抑制因子は単独でも転写抑制活性を発揮し得る。但し、HDART自身はDNA結合能を有しないため、好ましくは、本転写抑制因子は、所望の遺伝子の制御領域のDNAに結合し得るDNA結合領域との融合タンパク質として発現させることがよい。これに、標的となる遺伝子の転写を抑制することが可能となる。また、本転写抑制因子はHDACと結合能を有することから、本転写抑制因子を発現させることにより、HDACをリクルートさせて転写をさらに強く抑制し得る。
【0028】
また、本発明のDNAにコードされた転写抑制因子は核内レセプターの転写を効果的に抑制し得ることから、これら核内レセプターの転写亢進に起因した疾患の治療用組成物として、本DNAが組み込まれたベクターを応用してもよい。こうした治療目的のベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、EBウイルスベクター、パピローマウイルスベクター、フォーミーウイルスベクターなどのウイルスベクターなどが挙げられる。
【0029】
本発明は転写調節因子のうち、上記とは反対に転写を活性化し得るペプチドにも関する。HDARTは全長であれば、転写抑制因子として機能するが、HDARTのドミナントネガティブペプチドは、逆に転写活性化因子として機能する。このドミナントネガティブペプチドを例示すると、N末端の4つのTPR(以下、「N4TPR」と省略する)をコードしているペプチド、すなわち、配列番号2における1から179位のアミノ酸配列からペプチドを挙げることができるが、これに限定されず転写活性化能を有する範囲で、配列番号2における1から179位のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するペプチドを含めることができる。
【0030】
上記ドミナントネガティブペプチドの調製は、配列番号1のうち1から537までの塩基配列からなるDNAを基にペプチドを合成することに行うことができる。また、このペプチドとアミノ酸配列において置換等を有するペプチドの合成は、上記配列番号1のうち1から537までの塩基配列に変異(置換、欠失、挿入および/または付加)を加えコドンを変えたDNAを基にペプチド合成することにより調製することができる。
【0031】
上記ペプチドは、転写活性化能を有するため、所望の転写系の転写を促進させるために用いることができる。特に、実施例に示した通り、HDARTのN4TPRは核内レセプターの転写を活性化することから、これら核内レセプターの転写を促進させるために用いることができる。この核内レセプターとして、好適には、Skipが作用する核内レセプター、例えば、レチノイン酸レセプター、グルココルチコイドレセプター、ビタミンDレセプター、エストロゲンレセプターを挙げることができる。また、本発明のペプチドが転写活性化し得る範囲でレチノインXレセプター、アンドロゲンレセプター、チロイドホルモンレセプターなどのホルモンや脂溶性ビタミンなどに対する核内レセプターなどを含めてもよい。
【0032】
上記N4TPRによるレチノイン酸レセプターの転写活性化能は、ATRAによる転写活性化能よりも高いことが後述する実施例で示されている。そのため、現在、ATRAによるレチノイン酸レセプターの転写活性化による白血病などの悪性腫瘍の分化誘導療法が行われている。さらに、ビタミンAやATRAを含むその誘導体は、白血病以外にも肝細胞癌(Okuno, M. et al., (2002) Front Biosci 7, 204-18)、卵巣癌(Zhang D. et al., (2000) J Cell Physiol 185(1), 1-20)、甲状腺癌(Schmutzler C. and Kohrle J. (2000) Thyroid 10(5), 393-406)、皮膚癌(Niles R. M. (2000) Nutrition 16(11-12), 1084-9)、膵癌(Riecken E. O. and Rosewicz S. (1999) 10 Suppl 4, 197-200)等で治療に使用され始めており、このATRAに代えて又はATRAと組合せて、本ペプチドを用いることができる。
【0033】
本発明は、上記転写活性化能を有するペプチドをコードしたDNAに関する。このDNAとしては、具体的には、配列番号2における1から179位のアミノ酸配列からなるペプチドをコードしたDNA、一例としては、配列番号1から537塩基までの塩基配列からのDNAを挙げることができるが、これに限定されるものではなく、転写活性化能を有する範囲で、配列番号2における1から179位のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するペプチドをコードしたDNA、または配列番号1における1から537塩基までの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを含めることができる。
【0034】
上記転写活性化ペプチドをコードしたDNAは、上述した転写抑制因子をコードしたDNAを得た後、例えば、C末端側を欠失させることに調製することができる。または、DNA合成機により合成し調製してもよい。
【0035】
上記DNAは、上記転写活性化ペプチドを生産するため、または、細胞または個体内に導入して上記転写活性化ペプチドを発現させる目的で用いることができる。ペプチドを生産する目的で上記DNAを用いる場合には、発現ベクターに組み込むことが望ましい。この場合の発現ベクターは、ペプチドを生産するための転写・翻訳系によって適宜選択することができる。この転写・翻訳系は、in vitro、in vivoのいずれでもよい。In vivo系の場合には、上記DNAが組み込まれた発現ベクターを細胞に導入し、細胞を培養することにより、細胞内で上記転写活性化ペプチドが生産される。細胞への導入方法などについては上述と同様である。
【0036】
上記DNAを細胞または個体内に導入して上記転写活性化ペプチドを発現させる目的で用いる場合には、上記DNAを直接、細胞内等に導入し一時的に発現または染色体に挿入させて安定的に発現させてもよく、また、発現ベクターに組み込んで細胞等に導入してもよい。
【0037】
上述した通り、転写活性化ペプチドは、ATRAのように悪性腫瘍の分化誘導療法に応用し得るため、転写活性化ペプチドを直接用いる代わりに、本DNAを患者に注入等し上記転写活性化ペプチドを発現させて、上記治療方法に利用してもよい。このような目的で使用するためには、上記DNAを所望の組織または細胞に該DNAを運搬するためのベクターに組み込み使用することが好ましい。こうした治療目的のベクターとしては、上述したレトロウイルスベクター等のウイルスベクターを用いることができる。
【0038】
以上の通り、本発明の転写抑制因子をコードしたDNAは、N末端側をコードしたDNAに短くすることにより上記転写活性化ペプチドをコードしたDNAに改変し得る。これ以外にも、上記転写抑制因子をコードしたDNAまたは転写活性化ペプチドをコードしたDNAはさらに短い一部フラグメントとしても、ハイブリダイゼーション用プローブ、PCRプライマーまたはリボザイム誘導体として利用することができる。これら目的で上記DNAの一部を用いる場合には、プローブ等としての特異性を保持できる長さ、例えば、15ヌクレオチド長を有していることが好ましい。本発明は、本発明のDNA(例えば、配列番号1に記載のDNA等)とハイブリダイズし、少なくとも10ヌクレオチド長を有するオリゴヌクレオチドプローブを提供する。例えば、こうしたポリヌクレオチドとしては、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖と特異的にハイブリダイズするものが挙げられる。ここで、「特異的にハイブリダイズする」とは、ハイブリダイゼーションにおいて、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションが有意に生じないことを意味する。上記プローブ、プライマーは、転写抑制因子等をコードしたDNAのクローニング等に利用することができる。
【0039】
本発明はまた、上記転写抑制因子または転写活性化ペプチドに結合し得る抗体に関する。本発明の抗体は、上記転写抑制因子または転写活性化ペプチドと特異的に結合し得るものであれは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよい。ポリクローナル抗体は、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドを必要に応じてフロイントアジュバント等と混合し、周知の方法によりウサギ、ヤギ、モルモットなどの非ヒト動物を免疫し、抗体価が上昇したことを確認した上で免疫動物の末梢血から血清を回収することにより調製することができる。一方、モノクローナル抗体はまた、上記転写抑制因子もしくは転写活性化ペプチドまたはその部分ペプチドを用い、周知の方法によりマウスなどの動物を免疫し、抗体価が上昇した免疫動物の脾臓またはリンパ節を採取し、これら組織中の抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させハイブリドーマを調製する。ハイブリドーマから産生される抗体を培養上清から回収することにより得ることができる。
【0040】
これら抗体は、上記転写抑制因子または転写活性化ペプチドをアフィニティー精製する際等に利用することができる他、種々の細胞内における転写抑制因子の発現量を免疫学的に解析するなどの目的で、または転写抑制因子を阻害する目的で利用してもよい。
【0041】
また本発明は、本発明の上記オリゴヌクレオチドが固定された基板を提供する。該基板をバイオチップとすることにより、例えば、被検生物(細胞)における本発明のDNAの発現状態を解析することが可能である。
【0042】
好ましい態様においては、まず、被検生物(細胞)から本発明のDNA(例えば、配列番号1に記載のDNA、またはその部分DNA領域)を増幅する。次いで、該DNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された基板を用意する。次いで、該DNAと該基板を接触させる。さらに、基板に固定されたヌクレオチドプローブにハイブリダイズしたDNAを検出することにより、本発明のDNAの発現状態を解析することができる。
【0043】
このような方法としては、DNAアレイ法が例示できる。被検生物(細胞)からのDNA試料の調製は、当業者に周知の方法で行うことができる。該DNA試料の調製の好ましい態様においては、細胞から抽出した染色体DNAを基に調製することができる。染色体DNAから本方法のDNA試料を調製するには、例えば本発明のDNAにハイブリダイズするプライマーを用いて、染色体DNAを鋳型としたPCR等によって本発明のDNAを調製することも可能である。調製したDNA試料には、必要に応じて、当業者に周知の方法によって検出のための標識を施すことができる。
【0044】
本発明において「基板」とは、ヌクレオチドを固定することが可能な板状の材料を意味し、通常、チップとも呼ばれる。本発明においてヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが含まれる。本発明の基板は、ヌクレオチドを固定することが可能であれば特に制限はないが、一般にDNAアレイ技術で使用される基板を好適に用いることができる。
【0045】
一般にDNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性(non- porous)の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性(porous)の膜、例えばニトロセルロースメンブレムを使用することができる。
【0046】
本発明において、ヌクレオチドの固定(アレイ)方法として、Affymetrix社開発によるオリゴヌクレオチドを基本としたアレイが例示できる。オリゴヌクレオチドのアレイにおいて、オリゴヌクレオチドは通常インサイチュ(in situ)で合成される。例えば、photolithographicの技術(Affymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット(Rosetta Inpharmatics社)技術等によるオリゴヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。
【0047】
基板に固定するヌクレオチドプローブは、本発明のDNAを検出することができるものであれば、特に制限されない。即ち該プローブは、例えば、配列番号1に記載のDNAと特異的にハイブリダイズするようなプローブである。特異的なハイブリダイズが可能であれば、ヌクレオチドプローブは、本発明のDNAに対し、完全に相補的である必要はない。
【0048】
本発明において基板に結合させるヌクレオチドプローブの長さは、オリゴヌクレオチドを固定する場合は、通常10〜100ベースであり、好ましくは10〜50ベースであり、さらに好ましくは15〜25ベースである。
【0049】
本発明においては、次いで、DNA試料と該基板を接触させる。本工程により、上記ヌクレオチドプローブに対し、DNA試料をハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さ等の諸要因により変動しうるが、一般的に当業者に周知の方法により行うことができる。
【0050】
本発明においては、次いで、該DNA試料と基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの有無または強度を検出する。この検出は、例えば、蛍光シグナルをスキャナー等によって読み取ることによって行うことができる。尚、DNAアレイにおいては、一般的にスライドガラスに固定したDNAをプローブといい、一方溶液中のラベルしたDNAをターゲットという。従って、基板に固定された上記ヌクレオチドを、本明細書においてヌクレオチドプローブと記載する。本方法においては、必要に応じて、検出したハイブリダイズの強度を対照と比較する。上記方法としては、例えば、DNAアレイ法(SNP遺伝子変異の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、p128-135、Nature Genetics(1999)22:164-167)等が挙げられ、当業者においては、公知の文献等を参照して、適宜、実施することができる。
【0051】
また、本発明は、本発明のタンパク質もしくは該タンパク質の部分断片が固定された基板を提供する。該基板をバイオチップとすることにより、例えば、本発明のタンパク質と結合する分子の探索、またはHDAC阻害化合物のスクリーニング等を行うことが可能である。
【0052】
一般的に、タンパク質を基板へ固定させたものを、プロテインチップと呼ぶ。その原理はDNAチップと同様、スライドガラスや膜の上にタンパク質を高密度に固定し、それらと相互作用する蛋白質や核酸などを検出する。
【0053】
本発明のHDARTタンパク質は、種々のHDACタンパク質と結合することから、HDAC阻害化合物のスクリーニングに応用することができる。より具体的には、本発明のHDARTタンパク質を固相表面に固定することにより、一つの面に種々のHDACを結合させることができる。この固相表面に種々の化合物を結合させ、HDAC活性を計測することにより、HDAC阻害化合物をスクリーニングすることができる。
【0054】
上記スクリーニングによって取得されるHDAC阻害化合物の例としては、癌の分化誘導療法で薬剤として用いられるトリコスタチンAを示すことができる。また、本発明の抗体が固定された基板をバイオチップとすることも可能である。高純度で分離精製された抗体をチップ表面に固定化することにより高密度化が可能である。
【0055】
本発明の好ましい態様においては、基板上にサンプルをスポットした後、スポット表面に対して親和性を示さないタンパク質やその他の夾雑物を洗浄することにより、溶出させることができる。その後の検出の工程は、当業者においては、基板の種類等を考慮し、適宜、公知の方法で、上記親和性の有無(強弱)を検出することができる。一例を示せば、洗浄後の上記基板へ、エネルギー吸収分子(EAM)を添加し、乾燥後、質量分析計(TOF-MS)装置にかけることにより、スポット表面に結合していたタンパク質の分子量スペクトルを測定することができる。また、任意のDNA、もしくはペプチドの基板への固定は、当業者においては、公知の方法によって適宜実施することができる。
【実施例1】
【0056】
<ヒトHDARTのクローニング>
BLASTデータベースを用いてショウジョウバエcrn遺伝子のヒトホモログを検索したところ、膵臓の小島mRNA由来ヒトEST(expressed sequence tag)クローン#52930が上記crn遺伝子と高い相同性を有することが示された。このクローン#52930の完全な配列を定法に従い決定した。また更に5'-RACE法(5'-rapid amplification of cDNA ends strategy)により、本遺伝子は、そのcDNAの完全長が2660塩基からなり、一つの長い読み枠を備えていることを同定した。なお、ここで同定したタンパク質は、後述するようにHDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)に結合しリプレッサーとして機能することから、「HDART(a HDAC associated repressor TPR)」タンパク質と称する。HDARTは855アミノ酸をコードした高度に保存されたTPRタンパク質である(図1)。DNA配列から推定されるHDARTタンパク質は、ヒトCRNタンパク質と明らかに類似していることが示されている。特に、HDARTタンパク質の262残基から779残基の領域は、HDARTとヒトCRNタンパク質とで高度に保存されている(図1、2)。数種の種族間でのこのタンパク質の遺伝解析ではこれらは遺伝子ファミリーを形成していることを示した(図3)。
【実施例2】
【0057】
<HDARTと転写コアクチベーターSkipとの直接的な相互作用>
HDART上に存在するいくつかのTPR領域に着目し、これらTPRを介してHDARTと相互作用し得るタンパク質が存在するかを解析することとした。
【0058】
このHDARTと結合するタンパク質の単離のために、酵母ツーハイブリットシステムを用いた。具体的には、酵母MATCHMAKERツーハイブリッド解析キット(Clontech)を用いて実施した。pAS-1ベクター(Clontech)内でGal4 DNA結合ドメインと読み枠を合わせるようにHDARTのORF全長を挿入した。このbait plasmidは、HeLa cDNAライブラリー(Clontech)がサブクローニングされたpACT2 prey plasmidと共に、サッカロマイセスセルビジエ(Saccharomyces cerevisiae)Y190に形質転換した。両プラスミドが導入されたクローンのスクリーニングは、キットに添付されたプロトコルに従って実施した。このようにして、約1×10をクローンした結果、数個のクローンを単離した。これらクローンを解析した結果、一つはSkipと一致していた。
【0059】
哺乳動物細胞内でのHDARTとSkipとの相互作用を免疫沈降解析により確認した。この確認のために、先ず、Flag-Skip融合タンパク質を発現するFlag-Skip発現ベクターおよびGFP-HDART融合タンパク質を発現するGFP-HDART発現ベクターと(図4A)をHEK293細胞にEffecteneキット(QIAGEN)を用いてトランスフェクションした。なお、対照実験として、Flag-Skip発現ベクターのみ、GFP-HDART発現ベクターのみを同細胞に、同条件でトランスフェクションを行った。
【0060】
トランスフェクションの24時間後、氷上で30分間、10μlのプロテアーゼ阻害物質カクテル(Sigma #p8340)100μlを含有するNonidetP−40緩衝液(50mM トリスHCl(pH7.6)、150mM NaCl、5mM EDTA、0.5% Nonidet P-40、1mM PMSF)中で細胞溶解することによって、細胞抽出物(1mg)を調製した。この抽出物をタンパク質A/Gセファロースビーズ40μlとともに30分間4℃でインキュベートすることによって、予備的に清澄化した。次に、清澄した上清抽出物を1時間抗Flag抗体または陰性対照のマウスIgG抗体(2μg)と共にインキュベートし、その後、40μlのタンパク質A/Gセファロースビーズを用いて30分間沈降させた。免疫沈降物を4回Nonidet P-40緩衝液で洗浄した。結合したタンパク質をSDSローディングバッファ中でA/Gセファロースビーズから溶出させ、溶出液をSDS−PAGEで展開した。展開後、メンブレンに転写し、メンブレンを定法に従い免疫ブロットを実施した。この免疫ブロット用の抗体としては、抗Flag抗体M2(Sigma)および抗GFPモノクローナル抗体クローン1E4(MBL)を用いた。
【0061】
上記免疫沈降解析の結果を図4Aに示す。図において上部2つのパネルは、各タンパク質の発現結果を示し、下部2つのパネルは免疫沈降物を示している。
【0062】
図4Aに示されている通り、上記両複合タンパク質が発現している場合のみ、抗Flag抗体によりGFP-HDARTタンパク質がFlag-Skip融合タンパク質と共に免疫沈降した(レーン2)。Flag-Skipが発現していない条件では、抗Flag抗体によりGFP-HDARTの沈殿はみられず(レーン1)、また、陰性対照の抗体を用いた場合も同様に沈殿は観察されなかった(レーン3)。この結果は、HDARTとSkipとがin vivoにおいて特異的に相互作用することを示唆している。
【0063】
さらに、内在HDARTと外来から導入したSkipとの相互作用を解析した。293細胞(HDARTが高発現している細胞)にFlag−Skip発現ベクター、またはFlag−ルシフェラーゼ発現ベクターをトランスフェクションし、上述と同様の方法でトランスフェクションから24時間後に細胞抽出液を調製した。この細胞抽出液を抗Flag抗体とインキュベートし免疫沈降を行った。免疫複合体または免疫沈降前の細胞抽出液をSDS-PAGEで展開し、メンブレンに転写した。この同一のメンブレンを、抗HDART抗体または抗Flag抗体を用いて免疫ブロッティングを実施した。その結果を図4Bに示す。なお、図4Bにおいて、上部パネルは細胞抽出液を抗HDART抗体で免疫ブロットした結果を、中央パネルは抗Flag抗体を用いて免疫沈降後に抗Flag抗体で免疫ブロットした結果を、下部パネルは抗Flag抗体を用いて免疫沈降後に抗HDART抗体で免疫ブロットした結果を示す。
【0064】
図4Bに示されているように、Flag-Skipが発現している条件においてのみ、抗Flag抗体でHDARTが共沈殿し(図4B、レーン1)、Flag-Lucタンパク質が発現している条件(レーン2)および何もトランスフェクションされていない親の293クローンでは(レーン3)、HDARTの共沈殿は見られなかった。
【実施例3】
【0065】
<HDARTとSkipとの結合領域>
HDARTとの相互作用に関与するSkip上の領域をマッピングするために、Skip(N-末端領域(コドン1-220)、核内ホルモン結合領域(NHR bindng、コドン221-388)、トランスアクティベーション領域(TA、コドン438-536))上の様々な領域を欠失させた欠失変異シリーズを作成し、上記実施例2に記載したGal4 DBD−HDARTを用いた酵母ツーハイブリッド解析によりHDARTと変異Skipとの相互作用を解析した。解析結果を図5Aに示す。図5Aの右に示された「+」記号はβ−ガラクトシダーゼ活性のフィルターリフト解析により相互作用が検出されたことを示し、「+」数はその相互作用の相対的強度を示す。「−」記号は相互作用が検出されなかったことを示す。
【0066】
図5Aに示すように、二つの異なる領域がHDARTとの相互作用に関与することを発見した。これら領域は、一つが97-119残基内であり、もう一つは220-437残基内であった。Skipのトランスアクティベーション領域はHDARTとの結合活性には、ほとんど関与しないことが示された。同様のアプローチをHDART上でのSkipとの相互作用に関与する領域を解析するために実施した。すなわち、Gal4 DBD-HDARTのさまざまな欠失突然変異体を作製し、これをGal4AD−Skipと作用させた際のガラクトシダーゼ活性を解析した。この解析結果を図5Bに示す。4つのTPRを含むN末端領域(1-179残基)はSkipとの相互作用に必要十分であることが示された(図5B)。したがって、HDARTはN末端の4つのTPR領域を介してSkipと直接相互作用する。
【実施例4】
【0067】
<HDARTによる核内レセプターに起因した遺伝子の転写抑制>
上記実施例においてHDARTがSkipと相互作用し得ることが示されたことから、次に、核内レセプターに起因した転写経路に対するHDARTの機能的な役割を解析した。先ず、レチノイン酸レセプターによる転写制御に対するHDARTの作用を解析した。この目的のため、CAT解析をレチノイドレスポンスエレメント(retinoid response element)の下流にチミジンキナーゼ最小プロモータ(pTREpal-tata)とCAT遺伝子を組み込んだRAR(retionicacid receptor)レポータープラスミドを用いて、CAT解析を行った。
【0068】
具体的には、HepG2細胞にRARレポータープラスミドと同時に、HDARTを定常的に発現するpcDNA3-HDARTをEffecteneキット(QIAGEN)によりトランスフェクションした。なお、pcDNA3-HDART発現ベクターの導入量を変えて0、0.5、1.0μgとし、各々のトランスフェクションのDNA量を同一にするためにpcDNAの空のベクターで1μgになるように調製した。トランスフェクション後、ATRA(10−8M)の存在下または非存在下で生育させ、その際のCAT活性を測定した。測定結果(図6)は、ATRA不存在下での空ベクター1.0μgを導入したCAT活性を基準にして補正した値を表わした。また、3回の実験結果の平均およびエラーバーにより標準偏差を示す。
【0069】
図6Aに示すように、CAT活性は空のベクター(pcDNA)が導入された細胞ではATRAにより5倍上昇した。しかしながら、このATRAで誘導されたCAT活性はHDARTにより濃度依存的に抑制された。
【0070】
さらにグルココルチコイドレセプター(GR)による転写制御に対するHDARTの作用はGR陽性Hela細胞内でGRレポータープラスミドを用いて解析した。グルココルチコイド応答性プロモータの転写活性化は、HeLa細胞および10−8Mのデキサメタゾンを代りに使用した点を除いて上記レチノイン酸レセプターに対する実験と同様に行った。測定結果の表示も上記と同様に行った。
【0071】
HDARTの共発現は、RAR(レチノイン酸レセプター)起因トランスアクティベーションで観察された抑制と同程度で、グルココルチコイドに応答したレポーター遺伝子の活性化を抑制した(図6B)。これらの結果は、HDARTが核内レセプターによって活性化された転写を選択的に抑制することを示している。
【実施例5】
【0072】
<細胞核内におけるHDARTの局在>
HDARTが転写制御に直接関与することが示されたため、HDARTは細胞の核内に局在することが予想される。そのため、HDART組換えタンパク質に対するポリクローナル抗体を作製し、これを免疫蛍光実験によりHDARTの細胞内の局在を解析することとした。
【0073】
ポリクローナル抗体の作製は、先ず、大腸菌中でHis-HDART(アミノ酸残基296-431)の融合タンパク質として産生させ、Hisと親和性があるNi-NTA樹脂(QIAGEN)で精製した。次に、このHis−HDARTタンパク質をウサギに免疫し、得られた抗HDART抗血清を、ProtOnキット1(MPS)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによりさらに精製した。ここで精製されたウサギ抗HDART抗体を、内在的にHDARTを保持するHela細胞とインキュベートし、その後、PE(Phycoerythrin)融合抗ウサギ抗体とインキュベートして、免疫螢光染色を行った。なお、コントロール実験として、ウサギ抗HDART抗体に代えて免疫前のウサギ血清を用いて同様の操作を実行した。また、核の所在を明確にするために、DAPI染色も行った。
【0074】
図7Aに示されているように、抗HDART抗体を用いた免疫蛍光染色像は、DAPI染色像と一致した。一方、免疫前血清では、核は染色されなかった。これら結果より、HDARTはHela細胞の核内に優勢的に局在していることが示された(図7)。
【0075】
また、生存している細胞でのHDARTの局在を解析した。Hela細胞にGFPまたはGFP-HDART発現ベクターをトランスフェクションし、24時間後にGFPによる蛍光発光を検出した。また、GFP−HDART細胞については、核を視覚化するためにHoechest33342染料を用いてインキュベーションを行った。
【0076】
図7Bに示すように、GFP-HDARTベクターをトランスフェクションした細胞では、Hoechest33342染料(右上パネル)で視覚化された核がGFPにより蛍光発光していることが確認された(左上パネル)。特に、GFP-HDARTは、既に報告されているSkip分子の核スペックルパターン(17)と部分的に類似のパターンを示した。類似の結果はHT1080細胞および293細胞においても観察された(図示せず)。
【実施例6】
【0077】
<HDARTによる自律的な抑制機能>
HDARTがより直接的な抑制に関与すると仮定した場合、自律的な抑制機能を持つであろうことが予想された。この予想を確認するために、HDARTをDNAに接続させるために完全長のHDART cDNAをGal4 DNA結合領域(GAL4DBD:GAL4DNAとの結合領域のみを持ち、転写制御領域を持たない領域)に融合させ、NIH3T3細胞内でGAL4プロモータからの転写を調節し得るかを解析した。
【0078】
具体的には、Gal4レポータープラスミド(pGal4−Luciferase)が予め導入されたNIH3T3細胞に、HDART全長タンパク質とGal4 DBDとの融合タンパク質を発現するGal4 DBD-HDARTプラスミドを、導入量を変えて(0、0.1、0.3、0.5μg)トランスフェクションした。なお、トランスフェクションに用いるトータルDNA量を揃えるために、各々のトランスフェクションにおいてGal4 DBDの空のベクターを用いて発現ベクターの量を0.5μgに調製した。トランスフェクション24時間後に、プロモータからのレポーター遺伝子の発現活性(ルシフェラーゼ活性)を解析した。各サンプルのルシフェラーゼ活性は、空のベクターのみ導入した際のルシフェラーゼ活性を基準(100%)として補正した値で表した(図8)。なお、解析結果は3回の実験結果の平均で示し、また、標準偏差をエラーバーにより示した(図8A)。また、Gal4 DBD-HDART(導入量0または0.5μg)を用いて別の細胞U-2OS細胞においても同様の解析を行った(図8B)。
【0079】
HDARTはNIH-3T3細胞内におけるプロモータ活性を濃度依存的に著しく抑制し、最も高い濃度(0.5μg)ではルシフェラーゼの発現を80%低下させた(図8A)。類似の結果はU-2OS細胞でも観察された(図8B)。これら結果より、HDARTそれ自身で自律的な転写抑制作用を有していることが示された。
【0080】
また、Gal4 DNA結合領域をもたないHDARTの場合には、ルシフェラーゼの発現抑制は全く示されなかった(図示せず)。このことは、HDARTそれ自身ではプロモータ領域のDNAへの結合活性を有していないと考えられる。
【実施例7】
【0081】
<HDARTに起因した抑制メカニズム>
急性の転写調節は、HAT(ヒストンアセチル化酵素)による活性化およびHDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)による抑制が関与するメカニズムを介したコアヒストンのアセチル化の状態により制御されていることが報告されている。HDARTが起因する遺伝子抑制のメカニズムを明らかにするために、このHDARTの機能がHDACとの複合体形成を介して発揮されるか否かをFlag-HDAC発現ベクターを用いた免疫沈降解析により調べた。
【0082】
異なるタイプのHDAC(1,3,4または6)を発現し得るFlag-HDACs発現ベクターとGFP-HDART発現ベクターとを実施例2と同様に293細胞にコトランスフェクションし、トランスフェクション24時間後に細胞抽出液を調製した。各細胞抽出液を抗Flag抗体とインキュベートして免疫沈降を行った。免疫沈降産物をSDS-PAGEにより分離し、分離したパターンをメンブレンに転写後、抗Flag抗体または抗GFP抗体を用いて免疫ブロッティングを行った。参照として、各細胞におけるGFP-HDARTタンパク質の発現を確認するために、免疫沈降前の各試料を同様にSDS-PAGEで展開し、抗GFP抗体を用いた免疫ブロッティングを実行した。
【0083】
なお、図9Aにおいて、上部パネルに免疫沈降前のGFP-HDARTタンパク質の発現結果を示し、中央パネルは免疫沈降産物を抗Flag抗体で免疫ブロッティングした結果を示し、さらに、下部パネルは免疫沈降産物を抗GFP抗体で免疫ブロッティングした結果を示す。また、HDACの種類は図左から次の通り:レーン1;HDAC1、レーン3;HDAC3、レーン4;HDAC4、レーン5;HDAC6である。なお、レーン2はGFP−HDARTのみを発現させたサンプルである。
【0084】
図9Aに示すように、Flag-HDAC発現ベクターとGFP-HDART発現ベクターとがコトランスフェクションされた293細胞由来の抽出液では、抗Flag抗体によってGFP-HDARTが免疫沈降したことが確認された(下部パネル、左よりレーン1,3,4,5)。しかし、Flag-HDAC非存在下(Flag-HDAC発現ベクターが導入されていない株)では、抗Flag抗体を添加してもGFP-HDARTの沈降は見られなかった(下部パネル、レーン2)。従って、抗flag抗体によるGFP-HDARTの沈殿は、Flag-HDACとGFP-HDARTとの特異的な相互作用によることが示された。また、HDARTはタイプI(HDAC1および3)とタイプII(HDAC4および6)の両タイプのHDACと相互作用することも示された。
【0085】
さらに、HDARTとHDAC3との直接的な相互作用をGSTプルダウン解析により調べた。GSTプルダウン解析は基本的に既知の方法に従って実施した(Tzamarias, D., and Struhl, K. (1995) Genes Dev 9(7), 821-31.)。TNT(登録商標) in vitro転写・翻訳システム(Promega)を用い、35S−メチオニン存在下でHDAC3のin vitro翻訳を行った。GSTタンパク質またはGST−HDART融合タンパク質は、それぞれ大腸菌内で発現させ、GST結合緩衝液(50mMトリス−HCl、200mM LiCl、0.5% NP40、5mM EDTA、1mM PMSF)中、グルタチオンセファロースを用いて精製した。GST結合緩衝液1ml中GST−HDART融合タンパク質または対照GSTタンパク質(約1μg)と35S−放射線標識in vitro翻訳産物(10μl)とを含有した結合反応液を調製した。この反応液を振とうしながら4℃、1時間インキュベートした後、セファロース-GSTタンパク質複合体をGST結合緩衝液で5回洗浄した。GSTタンパク質に結合したタンパク質をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)含有サンプル緩衝液中で沸とうさせることにより溶出させ、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。GST融合タンパク質が同等に泳動されていることをクーマシーブリリアントブルー染色により確認し、さらにオートラジオグラフィにより35S−放射線標識されたHDACを検出した。
【0086】
図9Bに示されているように、In vitro で翻訳されたHDAC3は、単なるGSTタンパク質とは結合せずプルダウンさせることができなかったが、GST−HDART融合タンパク質を用いることによりプルダウンされることが示された(図9B)。また図には示されていないがHDAC1でもまた同様の結果が示された。このことから、このHDARTとHDACとの相互作用は直接的であることが示唆された。
【0087】
さらにHDARTの転写抑制作用に対するHDACの脱アセチル化活性への影響を解析するために、HDACを特異的に阻害するトリコスタチンA(TSA)存在下で、実施例4と同様にCATレポーター解析を行った(図10CおよびD)。但し、本実施例では、一定量のpcDNA3−HDART発現ベクター(1μg)を用い(図10中「HDART+」)、またリガンド(ATRAまたはデキサメタゾン)と共に100nM TSAまたは1mA酪酸ナトリウムを添加した。
【0088】
図10C、Dに示すように、リガンドのみでは対応するプロモータからのリポーター遺伝子の発現は上昇し、そこにHDARTを発現させると、発現活性が抑制された。さらにトリコスタチンAが添加されると、HDARTによる発現抑制が完全に中和された。同一の結果がもう一つのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、酪酸ナトリウム(Buty)を添加した場合にも観察された。これら結果は、HDARTによる転写抑制が脱アセチル化酵素活性を介して発揮していることを裏付けている。
【実施例8】
【0089】
<HDART-Skip相互作用によるリガンド非結合型レセプター(unliganded receptor)の能動抑制>
RARおよびTRは、in vivo(Baniahmad, A., Kohne, A. C., and Renkawitz, R. (1992) Embo J 11(3), 1015-23)およびin vitro(Fondell, J. D., Roy, A. L., and Roeder, R. G. (1993) Genes Dev 7(7B), 1400-10.)においてリガンド非存在下で遺伝子活性化を抑制する。このことから、これを能動抑制(active repression)と称している。また、Skipはリガンド非依存的にNHRと相互作用する(MacDonald, P. N., Baudino, T. A., Tokumaru, H., Dowd, D. R., and Zhang, C. (2001) Steroids 66(3-5), 171-6.)。そのため、これら抑制効果およびSkipとの生理的な関与により、HDART-Skip複合体がリガンド非結合型レセプター上に存在する可能性、また、この相互作用がレセプターの能動抑制に関与する可能性が示唆された。これらの可能性を明らかにするために、HDARTのドミナントネガティブ株を過剰発現させ、その際のRARに起因した転写に対する影響を調べた。実施例2に示した通りHDARTにおけるN末端の4つのTPR(N4TPR)はSkip結合領域であるため、この領域の発現が内在HDARTとSkipとの相互作用を阻止することでHDARTの天然の機能を阻害してドミナントネガティブとして機能することが予想されたため、本実施例ではN4TPRをドミナントネガティブ候補として用いた。
【0090】
293細胞にFlag−SkipおよびGFPまたはGFPでタグ付けされたN4TPRをトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に細胞抽出物を調製し、抗Flag抗体で免疫沈降させた。免疫沈降物をSDS-PAGE上で分離した。また、免疫沈降前の内在性HDARTの発現を確認するために、免疫沈降前の細胞抽出液も同様にSDS-PAGEで分離した。分離後のパターンをメンブレンに転写した。そして、Flag-Skipの発現については抗Flag抗体を用い、GFPおよびGFP-N4TPRの発現については抗GFP抗体を用い、さらに、内在HDARTの発現については抗HDART抗体を用いて、それぞれ検出した(図11A)。なお、図11Aにおいて、下方の3つのパネルは、それぞれ免疫沈降されたSkip(下部上)、内因性HDART(下部中央)およびN4TPR(下部下)を示し、上部の一枚のパネルには、免疫沈降前の内因性HDARTタンパク質の発現を示す。
【0091】
図11Aに示されているように、N4TPRの発現は、N4TPRを発現していない対照(GFPのみ、レーン1)に比べてSkipと共沈殿したHDARTの量を減少させた(下部中央パネル、レーン2)。一方、N4TPRの過剰発現は、N4TPRとSkipとの相互作用が増加し、共沈殿したSkipの量を著しく上昇させた(レーン2、lower bottom panel)。コントロールのタンパク質(GFP)の発現はHDARTとSkipとの相互作用に対して影響はなかった(レーン1)。この結果は、N4TPRがHDARTに代わってSkipと相互作用するドミナントネガティブタンパク質として作用することを示している。
【0092】
次に、N4TPRの過剰発現がRARまたはグルココルチコイド応答性プロモータからの転写に与える影響を調べた。なお、ここでは、GFP−N4TPR発現ベクター(0、0.3、0.5μg)を用いた点を除いて、上記実施例4に記載したレポーター解析と同様の方法により検討した。
【0093】
結果は図11B、Cに示した通り、リガンド非存在下でN4TPRを制限して発現させることにより(導入量0.3μg)、RARおよびグルココルチコイド応答性プロモータからの転写活性をリガンド存在下で誘導した転写活性の程度(グレーカラム)まで増加させた。N4TPRの最も高い発現レベルでは(導入量0.5μg)、リガンド非存在下で転写活性を強く増加(〜約20倍)させた。これらの結果はHDARTがRARやグルココルチコイドレセプターなど核内ホルモンレセプターの能動抑制にとって必要であることを示唆している。
【実施例9】
【0094】
<レチノイン酸誘導による黄紋筋筋腫由来細胞株(rhabdomyosarcoma cell line)の筋組織への分化をHDARTの過剰発現により阻害>
ATRA(All-trans retinoic acid)は、腫瘍細胞分化の重要な誘導剤であることが知られている(20−22)。ヒト黄紋筋筋腫由来細胞株MM-1-19-Pは主に小さな多角形の細胞から構成され、最終的にレチノイン酸を備えた筋管様の巨大細胞に分化する。核内ホルモンレセプターに起因した反応におけるHDARTの生理学的な役割を明らかにするために、ATRAによるMM-1-19-Pの筋組織の分化に対してHDART発現が与える影響を解析した。
【0095】
100mMのペトリ皿上にMM-1-19-P細胞を植えつけ、この細胞に0.4μgのpGFPベクターと2μgのpcDNA3(空ベクター)またはpcDNA3-HDART(HDART発現ベクター)とをコトランスフェクションした。トランスフェクションから24時間後に、培地をATRA含有(2μM)または非含有の新鮮な培地と交換した。48時間の誘導後、細胞が筋管様の巨大細胞を示す細長い紡錘細胞へと変化した時点で、形態学的に分化したものとして細胞を評価した。すべての実験を4回反復し、GFPについて陽性と評価済みの細胞の数をカウントした。結果を図12に示す。なお、図12において、GFPの緑色螢光の標準的顕微鏡写真をパネルA、B、C、Dに、位相差顕微鏡写真をパネルE、Fに示す。また、(A)はATRA非処理かつ空ベクター導入細胞、(B)ATRA処理かつ空ベクター導入細胞、(C)ATRA非処理かつHDART発現ベクター導入細胞、(D)ATRA処理かつHDART発現ベクター導入細胞、(E)上記(C)と同一条件の細胞、(F)上記(D)と同一条件の細胞を示す。また、パネルFでは、黒色矢印は、未分化GFP陽性細胞を表わし、白色矢印は分化された細胞を指す。(G)グラフは、GFP陽性細胞中の形態学的に分化された細胞の百分率を4回の独立した実験結果の平均で示し、また標準偏差はエラーバーで示されている(空ベクターかつATRA(+)とHDART発現ベクターとの間でP<1%,スチューデントのtテスト)。
【0096】
各実験において、GFP陽性細胞数は30〜70であった。空ベクターを導入しATRA処理した細胞では、GFP陽性の細胞数はATRAの細胞毒性効果のため30%未満であったが、一方、HDART発現ベクターを導入した細胞では、ATRA処理群、非処理群とでGFP陽性の細胞数は同じであった。
【0097】
空のベクターが導入された細胞の多くは、ATRA処理によって、筋管様の巨大細胞の出現で示されるように筋組織に分化した(図12B、図12G)。また、空のベクターが導入された細胞では、ATRA処理による表現型の変化の程度はGFP陽性および陰性の細胞の双方で同一であった。しかしながら、HDARTが導入された細胞では、GFP陽性細胞はATRA処理を行っても表現型の変化はほとんどないが(図12D中黒色矢印、図12G)、一方のGFP陰性細胞では特徴的な筋管様巨大細胞が観察された(図12F中白色矢印)。この結果は、HDARTの発現がレチノイン酸による分化を抑制することを示している。そして、この結果はレポーター解析においてHDARTがRARによる転写活性化を抑制した結果と一致する。これらの結果はHDARTが少なくともレチノイン酸レセプターにおける生理学的な転写のコリプレッサーであることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0098】
上述した通り、本発明の転写抑制因子は、自律的に転写を抑制し、特に、核内レセプターの転写を抑制するため、所望の転写系に作用させ、該転写系の転写を抑制する目的で用いることができる。また、本発明の転写抑制因子はHDACと結合能を有し、このHDACのヒストン脱アセチル化活性を介して転写抑制能を発揮し得る。したがって、本発明の転写抑制因子を用いてHDACをリクルートさせ、HDACの作用によって転写抑制を行うこともできる。本発明の転写抑制因子のこのような作用は、例えば核内レセプターの転写亢進が起因している疾患に応用し得るものであり、こうした疾患の治療薬として本転写抑制因子が有益となる。
【0099】
また、上記転写抑制因子のドミナントネガティブペプチドは、転写活性化因子として機能する。したがって、このドミナントネガティブペプチドは、転写を促進させるために用いることができる。このドミナントネガティブペプチドもまた、核内レセプターの転写に作用し、その転写を逆に促進させる。そのため、核内レセプターの転写促進物質として本ペプチドが有益となる。特に、HDARTのN末端側の4つのTPR(N4TPR)は、ATRAに比してレチノイン酸レセプターの転写活性化能が高いため、現在ATRAが用いられている疾患治療(例えば、悪性腫瘍の分化誘導療法など)において、ATRAに代えてまたはATRAと共に本ペプチドを治療薬として応用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】
図1は、HDARTはTPR(Tetra trico peptide repeat)タンパク質であり、その構成および類縁の遺伝子との関係を示す。HDART一次構造の概略的構成を示し、TPR、酸性領域、Skip相互作用領域およびCRN相同性領域を示している。
【図2】
図2は、ヒトHDARTとヒトCRNとの間のCRN相同性領域の比較を示す図である。
【図3】
図3は、HDART/CRNタンパク質間の系統樹を示す図である。この系統樹は、GENETYX-MACプログラムを用いて構築した(ソフトウェア開発)。
【図4】
図4は、外来または内在HDARTと外来Skipと相互作用を免疫沈降解析により同定した結果を示す写真である。
(A)外来HDARTと外来Skipとの相互作用を解析した結果を示す。レーン1はGFP−HDARTのみ、レーン4はFlag−Skipのみ、またはレーン2,3はその両方を293細胞内で発現させた。レーン5は、何もベクターを導入していないコントロールの細胞である。また、レーン1、2、4および5は、抗−Flag抗体により、レーン3は対照マウスIgGにより免疫沈降させたサンプルである。上部2つのパネルは、発現された各タンパク質の発現を示し、下部2つのパネルは免疫沈降物を示している。なお、それぞれ上段は抗GFP抗体、下段は抗Flag抗体で免疫ブロットした結果を示す。
(B)内在HDARTと外来Skipとの相互作用を解析した結果を示す。内在にHDARTを保持する293細胞にFlag−Skip(レーン1)またはFlag−ルシフェラーゼ(レーン2)を導入後、細胞抽出液を抗Flag抗体で免疫沈降させた。何もベクターを導入していないコントロール実験も並行させた(レーン3)。細胞内でのHDARTタンパク質の発現状況(上部パネル)、免疫沈降したFlag(中央パネル)、またはHDART(下部パネル)をパネル左「WB」として示す抗体を用いた免疫ブロッティングにより同定した。
【図5】
図5は、Skip、HDART両タンパク質上の相互作用領域の同定結果を示す。
(A)Skip上のHDART結合領域部位のマッピング。プラス(+)は、酵母ツーハイブリッドシステムにおけるβ−ガラクトシダーゼ活性に基づき、相互作用が検出されたことを示す。プラスの数は、その相互作用の相対的強度を表わす。NHR結合:核ホルモン受容体結合ドメイン、TA;トランス活性化ドメイン。
(B)HDART上のSkip結合領域のマッピング。記号は上述と同様である。
【図6】
図6は、核内ホルモン(レチノイン酸またはグルココルチコイド)による転写活性化をHDARTが抑制することを示すグラフである。
(A)HDARTによるレチノイン酸で活性化された転写の濃度依存的抑圧結果を示す。リガンドの不在下で空ベクター(1.0μg)を導入した際のCAT活性を基準として、補正されたCAT活性を表わした。3回の反復実験平均および、エラーバーはS.D.を示す。
(B)HDARTによるグルココルチコイド活性化を受けた転写の濃度依存的に抑圧結果を示す。
【図7】
図7は、HDARTの細胞内局在を示す写真である。
(A)内因性HDARTタンパク質の局在化。左側パネルは抗HDART抗体(上段)または免疫前血清(下段)を用いた免疫蛍光染色結果を、右側パネルは左側パネルと対応した視野におけるDAPI染色結果を示す。
(B)生存細胞中のHDARTの局在化。Hela細胞にGFP−HDART発現ベクター(左上)またはGFP発現ベクター(左下)を導入後のGFPによる蛍光発光を観察した結果、およびHoechst33342染料を用いて核を視覚化した結果(右上)を示す。
【図8】
図8は、HDARTの自律的なプロモータ抑制活性を示す。
(A)Gal4リポーター(ルシフェラーゼ)プラスミドを保持するNIH3T3細胞に異なる量のGal4 DBD-HDART発現プラスミド(0、0.1、0.3、0.5μg)を導入した際のプロモータ抑制活性を検討した結果を示す。空ベクターのみ導入した際のルシフェラーゼ活性を基準(100%)として、補正済みルシフェラーゼ値を表した。3回の反復実験結果の平均で示し、エラーバーはS.D.を示す。
(B)U-20S細胞を用いた結果を示す。
【図9】
図9は、HDARTとHDACとの直接的な相互作用を示す写真である。
(A)HDARTとHDACとの相互作用。293細胞にGFP-HDART発現ベクターとFlag-HDACs発現ベクター((レーン1;HDAC1、レーン3;HDAC3、レーン4;HDAC4、レーン5;HDAC6)とをコトランスフェクションした後、抗Flag抗体で免疫沈降および表示された抗体(抗Flag抗体または抗GFP抗体)により免疫ブロッティングを行った結果を示す(それぞれ中央パネル、下部パネル)。なお、レーン2はGFP−HDARTのみが導入されたサンプルである。また、上部パネルは免疫沈降前のサンプルを用いてGFP-HDARTタンパク質の発現を確認した結果を示す。
(B)HDARTとHDAC3との直接的相互作用を示す結果である。
【図10】
図10は、HDARTの抑制は2種のHDAC阻害物質(トリコスタチンA、酪酸ナトリウム)によりそれぞれHDARTの抑制が阻害されたことを示す(C、D)。
【図11】
図11は、HDARTのN末端における4つのTPR(N4TPR)のドミナントネガティブ効果を示す図および写真である。
(A)N4TPRによる内因性HDARTとSkipと相互作用の阻害。Flag−SkipとGFP(レーン1)またはGFP-N4TPR(レーン2)とがトランスフェクションされた293細胞の細胞抽出液を抗Flag抗体で免疫沈降させ、この沈降産物をSDS―PAGEで分離した結果を示す。下方の3つのパネルは、それぞれ免疫沈降されたSkip(上段)、内因性HDART(中央)およびN4TPR(下段)を示す。免疫沈降前のHDARTタンパク質の発現は最上の一つのパネルに示されている。
(B)レチノイン酸レセプターに起因した転写をN4TPRによって活性化することを示すグラフである。
(C)グルココルチコイドに起因した転写をN4TPRによって活性化することを示すグラフである。
【図12】
図12は、MM-1-19-P細胞内でのレチノイン酸による分化誘発をHDARTが阻害することを示す図および写真である。HDART発現ベクターまたは空ベクターを導入したMM-1-19-P細胞をATRA(2μM)存在下、非存在下での分化誘発を解析した。形質移入された細胞を同定するため、上記ベクターとともにGFPベクターをコトランスフェクションした。GFPによる緑色螢光発光を標準的顕微鏡写真により撮影した写真(A、B、C、D)、および位相差顕微鏡下で撮影した写真(E、F)を示す。
(A)ATRA(−)かつ空ベクター導入サンプル、(B)ATRA(+)かつ空ベクター導入サンプル、(C)ATRA(−)かつHDART発現ベクター、(D)ATRA(+)かつHDART発現ベクター、(E)(C)と同一視野の位相差写真、(F)(D)と同一視野の位相差写真。パネルFにおいて、黒色矢印ヘッドは未分化GFP陽性細胞を表わし、白色矢印ヘッドは分化された細胞を表わす。(G)グラフは、GFP陽性細胞中形態学的に分化した細胞の百万率を示す。4つの独立した実験からの結果は、平均およびS.D.(エラーバー)として提示されている(MockおよびATRA(+)でのHDARTの間でP<1%,スチューデントのtテスト)。
【配列表】
SEQUENCE LISTING
<110> MIZUTANI, Shuki
YAMADA, Takayuki
<120> Transcription regulating factors
<130> SEN-A0122P
<140>
<141>
<150> JP 2002-217233
<151> 2002-07-25
<160> 2
<210> 1
<211> 2684
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<220>
<221> CDS
<222> (37)..(2601)
<400> 1
agcgcgcgac tctcctgtac ctgggcatcc agaaaa atg gtg gtg atg gcg cga 54
Met Val Val Met Ala Arg
1 5

ctt tcg cgg ccc gag cgg ccg gac ctt gtc ttc gag gaa gag gac ctc 102
Leu Ser Arg Pro Glu Arg Pro Asp Leu Val Phe Glu Glu Glu Asp Leu
10 15 20

ccc tat gag gag gaa atc atg cgg aac caa ttc tct gtc aaa tgc tgg 150
Pro Tyr Glu Glu Glu Ile Met Arg Asn Gln Phe Ser Val Lys Cys Trp
25 30 35

ctt cgc tac atc gag ttc aaa cag ggc gcc ccg aag ccc agg ctc aat 198
Leu Arg Tyr Ile Glu Phe Lys Gln Gly Ala Pro Lys Pro Arg Leu Asn
40 45 50

cag cta tac gag cgg gca ctc aag ctg ctg ccc tgc agc tac aaa ctc 246
Gln Leu Tyr Glu Arg Ala Leu Lys Leu Leu Pro Cys Ser Tyr Lys Leu
55 60 65 70

tgg tac cga tac ctg aag gcg cgt cgg gca cag gtg aag cat cgc tgt 294
Trp Tyr Arg Tyr Leu Lys Ala Arg Arg Ala Gln Val Lys His Arg Cys
75 80 85

gtg acc gac cct gcc tat gaa gat gtc aac aac tgt cat gag agg gcc 342
Val Thr Asp Pro Ala Tyr Glu Asp Val Asn Asn Cys His Glu Arg Ala
90 95 100

ttt gtg ttc atg cac aag atg cct cgt ctg tgg cta gat tac tgc cag 390
Phe Val Phe Met His Lys Met Pro Arg Leu Trp Leu Asp Tyr Cys Gln
105 110 115

ttc ctc atg gac cag ggg cgc gtc aca cac acc cgc cgc acc ttc gac 438
Phe Leu Met Asp Gln Gly Arg Val Thr His Thr Arg Arg Thr Phe Asp
120 125 130

cgt gcc ctc cgg gca ctg ccc atc acg cag cac tct cga att tgg ccc 486
Arg Ala Leu Arg Ala Leu Pro Ile Thr Gln His Ser Arg Ile Trp Pro
135 140 145 150

ctg tat ctg cgc ttc ctg cgc tca cac cca ctg cct gag aca gct gtg 534
Leu Tyr Leu Arg Phe Leu Arg Ser His Pro Leu Pro Glu Thr Ala Val
155 160 165

cga ggc tat cgg cgc ttc ctc aag ctg agt cct gag agt gca gag gag 582
Arg Gly Tyr Arg Arg Phe Leu Lys Leu Ser Pro Glu Ser Ala Glu Glu
170 175 180

tac att gag tac ctc aag tca agt gac cgg ctg gat gag gcc gcc cag 630
Tyr Ile Glu Tyr Leu Lys Ser Ser Asp Arg Leu Asp Glu Ala Ala Gln
185 190 195

cgc ctg gcc acc gtg gtg aac gac gag cgt ttc gtg tct aag gcc ggc 678
Arg Leu Ala Thr Val Val Asn Asp Glu Arg Phe Val Ser Lys Ala Gly
200 205 210

aag tcc aac tac cag ctg tgg cac gag ctg tgc gac ctc atc tcc cag 726
Lys Ser Asn Tyr Gln Leu Trp His Glu Leu Cys Asp Leu Ile Ser Gln
215 220 225 230

aat ccg gac aag gta cag tcc ctc aat gtg gac gcc atc atc cgc ggg 774
Asn Pro Asp Lys Val Gln Ser Leu Asn Val Asp Ala Ile Ile Arg Gly
235 240 245

ggc ctc acc cgc ttc acc gac cag ctg ggc aag ctc tgg tgt tct ctc 822
Gly Leu Thr Arg Phe Thr Asp Gln Leu Gly Lys Leu Trp Cys Ser Leu
250 255 260

gcc gac tac tac atc cgc agc ggc cat ttc gag aag gct cgg gac gtg 870
Ala Asp Tyr Tyr Ile Arg Ser Gly His Phe Glu Lys Ala Arg Asp Val
265 270 275

tac gag gag gcc atc cgg aca gtg atg acc gtg cgg gac ttc aca cag 918
Tyr Glu Glu Ala Ile Arg Thr Val Met Thr Val Arg Asp Phe Thr Gln
280 285 290

gtg ttt gac agc tac gcc cag ttc gag gag agc atg atc gct gca aag 966
Val Phe Asp Ser Tyr Ala Gln Phe Glu Glu Ser Met Ile Ala Ala Lys
295 300 305 310

atg gag acc gcc tcg gag ctg ggg cgc gag gag gag gat gat gtg gac 1014
Met Glu Thr Ala Ser Glu Leu Gly Arg Glu Glu Glu Asp Asp Val Asp
315 320 325

ctg gag ctg cgc ctg gcc cgc ttc gag cag ctc atc agc cgg cgg ccc 1062
Leu Glu Leu Arg Leu Ala Arg Phe Glu Gln Leu Ile Ser Arg Arg Pro
330 335 340

ctg ctc ctc aac agc gtc ttg ctg cgc caa aac cca cac cac gtg cac 1110
Leu Leu Leu Asn Ser Val Leu Leu Arg Gln Asn Pro His His Val His
345 350 355

gag tgg cac aag cgt gtc gcc ctg cac cag ggc cgc ccc cgg gag atc 1158
Glu Trp His Lys Arg Val Ala Leu His Gln Gly Arg Pro Arg Glu Ile
360 365 370

atc aac acc tac aca gag gct gtg cag acg gtg gac ccc ttc aag gcc 1206
Ile Asn Thr Tyr Thr Glu Ala Val Gln Thr Val Asp Pro Phe Lys Ala
375 380 385 390

aca ggc aag ccc cac act ctg tgg gtg gcg ttt gcc aag ttt tat gag 1254
Thr Gly Lys Pro His Thr Leu Trp Val Ala Phe Ala Lys Phe Tyr Glu
395 400 405

gac aac gga cag ctg gac gat gcc cgt gtc atc ctg gag aag gcc acc 1302
Asp Asn Gly Gln Leu Asp Asp Ala Arg Val Ile Leu Glu Lys Ala Thr
410 415 420

aag gtg aac ttc aag cag gtg gat gac ctg gca agc gtg tgg tgt cag 1350
Lys Val Asn Phe Lys Gln Val Asp Asp Leu Ala Ser Val Trp Cys Gln
425 430 435

tgc gga gag ctg gag ctc cga cac gag aac tac gat gag gcc ttg cgg 1398
Cys Gly Glu Leu Glu Leu Arg His Glu Asn Tyr Asp Glu Ala Leu Arg
440 445 450

ctg ctg cga aag gcc acg gcg ctg cct gcc cgc cgg gcc gag tac ttt 1446
Leu Leu Arg Lys Ala Thr Ala Leu Pro Ala Arg Arg Ala Glu Tyr Phe
455 460 465 470

gat ggt tca gag ccc gtg cag aac cgc gtg tac aag tca ctg aag gtc 1494
Asp Gly Ser Glu Pro Val Gln Asn Arg Val Tyr Lys Ser Leu LysVal
475 480 485

tgg tcc atg ctc gcc gac ctg gag gag agc ctc ggc acc ttc cag tcc 1542
Trp Ser Met Leu Ala Asp Leu Glu Glu Ser Leu Gly Thr Phe Gln Ser
490 495 500

acc aag gcc gtg tac gac cgc atc ctg gac ctg cgt atc gca aca ccc 1590
Thr Lys Ala Val Tyr Asp Arg Ile Leu Asp Leu Arg Ile Ala Thr Pro
505 510 515

cag atc gtc atc aac tat gcc atg ttc ctg gag gag cac aag tac ttc 1638
Gln Ile Val Ile Asn Tyr Ala Met Phe Leu Glu Glu His Lys Tyr Phe
520 525 530

gag gag agc ttc aag gcg tac gag cgc ggc atc tcg ctg ttc aag tgg 1686
Glu Glu Ser Phe Lys Ala Tyr Glu Arg Gly Ile Ser Leu Phe Lys Trp
535 540 545 550

ccc aac gtg tcc gac atc tgg agc acc tac ctg acc aaa ttc att gcc 1734
Pro Asn Val Ser Asp Ile Trp Ser Thr Tyr Leu Thr Lys Phe Ile Ala
555 560 565

cgc tat ggg ggc cgc aag ctg gag cgg gca cgg gac ctg ttt gaa cag 1782
Arg Tyr Gly Gly Arg Lys Leu Glu Arg Ala Arg Asp Leu Phe Glu Gln
570 575 580

gct ctg gac ggc tgc ccc cca aaa tat gcc aag acc ttg tac ctg ctg 1830
Ala Leu Asp Gly Cys Pro Pro Lys Tyr Ala Lys Thr Leu Tyr Leu Leu
585 590 595

tac gca cag ctg gag gag gag tgg ggc ctg gcc cgg cat gcc atg gcc 1878
Tyr Ala Gln Leu Glu Glu Glu Trp Gly Leu Ala Arg His Ala Met Ala
600 605 610

gtg tac gag cgt gcc acc agg gcc gtg gag ccc gcc cag cag tat gac 1926
Val Tyr Glu Arg Ala Thr Arg Ala Val Glu Pro Ala Gln Gln Tyr Asp
615 620 625 630

atg ttc aac atc tac atc aag cgg gcg gcc gag atc tat ggg gtc acc 1974
Met Phe Asn Ile Tyr Ile Lys Arg Ala Ala Glu Ile Tyr Gly Val Thr
635 640 645

cac acc cgc ggc atc tac cag aag gcc att gag gtg ctg tcg gac gag 2022
His Thr Arg Gly Ile Tyr Gln Lys Ala Ile Glu Val Leu Ser Asp Glu
650 655 660

cac gcg cgt gag atg tgc ctg cgg ttt gca gac atg gag tgc aag ctc 2070
His Ala Arg Glu Met Cys Leu Arg Phe Ala Asp Met Glu Cys Lys Leu
665 670 675

ggg gag att gac cgc gcc cgg gcc atc tac agc ttc tgc tcc cag atc 2118
Gly Glu Ile Asp Arg Ala Arg Ala Ile Tyr Ser Phe Cys Ser Gln Ile
680 685 690

tgt gac ccc cgg acg acc ggc gcg ttc tgg cag acg tgg aag gac ttt 2166
Cys Asp Pro Arg Thr Thr Gly Ala Phe Trp Gln Thr Trp Lys Asp Phe
695 700 705 710

gag gtc cgg cat ggc aat gag gac acc atc aag gaa atg ctg cgt atc 2214
Glu Val Arg His Gly Asn Glu Asp Thr Ile Lys Glu Met Leu Arg Ile
715 720 725

cgg cgc agc gtg cag gcc acg tac aac acg cag gtc aac ttc atg gcc 2262
Arg Arg Ser Val Gln Ala Thr Tyr Asn Thr Gln Val Asn Phe Met Ala
730 735 740

tcg cag atg ctc aag gtc tcg ggc agt gcc acg ggc acc gtg tct gac 2310
Ser Gln Met Leu Lys Val Ser Gly Ser Ala Thr Gly Thr Val Ser Asp
745 750 755

ctg gcc cct ggg cag agt ggc atg gac gac atg aag ctg ctg gaa cag 2358
Leu Ala Pro Gly Gln Ser Gly Met Asp Asp Met Lys Leu Leu Glu Gln
760 765 770

cgg gca gag cag ctg gcg gct gag gcg gag cgt gac cag ccc ttg cgc 2406
Arg Ala Glu Gln Leu Ala Ala Glu Ala Glu Arg Asp Gln Pro Leu Arg
775 780 785 790

gcc cag agc aag atc ctg ttc gtg agg agt gac gcc tcc cgg gag gag 2454
Ala Gln Ser Lys Ile Leu Phe Val Arg Ser Asp Ala Ser Arg Glu Glu
795 800 805

ctg gca gag ctg gca cag cag gtc aac ccc gag gag atc cag ctg ggc 2502
Leu Ala Glu Leu Ala Gln Gln Val Asn Pro Glu Glu Ile Gln Leu Gly
810 815 820

gag gac gag gac gag gac gag atg gac ctg gag ccc aac gag gtt cgg 2550
Glu Asp Glu Asp Glu Asp Glu Met Asp Leu Glu Pro Asn Glu Val Arg
825 830 835

ctg gag cag cag agc gtg cca gcc gca gtg ttt ggg agc ctg aag gaa 2598
Leu Glu Gln Gln Ser Val Pro Ala Ala Val Phe Gly Ser Leu Lys Glu
840 845 850

gac tgacccgtcc ctcccccatc ccccctcccc accccctccc caatacagct 2651
Asp
855

acgtttgtac aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaa 2684


<210> 2
<211> 855
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 2
Met Val Val Met Ala Arg Leu Ser Arg Pro Glu Arg Pro Asp Leu Val
1 5 10 15

Phe Glu Glu Glu Asp Leu Pro Tyr Glu Glu Glu Ile Met Arg Asn Gln
20 25 30

Phe Ser Val Lys Cys Trp Leu Arg Tyr Ile Glu Phe LysGln Gly Ala
35 40 45

Pro Lys Pro Arg Leu Asn Gln Leu Tyr Glu Arg Ala Leu Lys Leu Leu
50 55 60

Pro Cys Ser Tyr Lys Leu Trp Tyr Arg Tyr Leu Lys Ala Arg Arg Ala
65 70 75 80

Gln Val Lys His Arg Cys Val Thr Asp Pro Ala Tyr Glu Asp Val Asn
85 90 95

Asn Cys His Glu Arg Ala Phe Val Phe Met His Lys Met Pro Arg Leu
100 105 110

Trp Leu Asp Tyr Cys Gln Phe Leu Met Asp Gln Gly Arg Val Thr His
115 120 125

Thr Arg Arg Thr Phe Asp Arg Ala Leu Arg Ala Leu Pro Ile Thr Gln
130 135 140

His Ser Arg Ile Trp Pro Leu Tyr Leu Arg Phe Leu Arg Ser His Pro
145 150 155 160

Leu Pro Glu Thr Ala Val Arg Gly Tyr Arg Arg Phe Leu Lys Leu Ser
165 170 175

Pro Glu Ser Ala Glu Glu Tyr Ile Glu Tyr Leu Lys Ser Ser Asp Arg
180 185 190

Leu Asp Glu Ala Ala Gln Arg Leu Ala Thr Val Val Asn Asp Glu Arg
195 200 205

Phe Val Ser Lys Ala Gly Lys Ser Asn Tyr Gln Leu Trp His Glu Leu
210 215 220

Cys Asp Leu Ile Ser Gln Asn Pro Asp Lys Val Gln Ser Leu Asn Val
225 230 235 240

Asp Ala Ile Ile Arg Gly Gly Leu Thr Arg Phe Thr Asp Gln Leu Gly
245 250 255

Lys Leu Trp Cys Ser Leu Ala Asp Tyr Tyr Ile Arg Ser Gly His Phe
260 265 270

Glu Lys Ala Arg Asp Val Tyr Glu Glu Ala Ile Arg Thr Val Met Thr
275 280 285

Val Arg Asp Phe Thr Gln Val Phe Asp Ser Tyr Ala Gln Phe Glu Glu
290 295 300

Ser Met Ile Ala Ala Lys Met Glu Thr Ala Ser Glu Leu Gly Arg Glu
305 310 315 320

Glu Glu Asp Asp Val Asp Leu Glu Leu Arg Leu Ala Arg Phe Glu Gln
325 330 335

Leu Ile Ser Arg Arg Pro Leu Leu Leu Asn Ser Val Leu Leu Arg Gln
340 345 350

Asn Pro His His Val His Glu Trp His Lys Arg Val Ala Leu His Gln
355 360 365

Gly Arg Pro Arg Glu Ile Ile Asn Thr Tyr Thr Glu Ala Val Gln Thr
370 375 380

Val Asp Pro Phe Lys Ala Thr Gly Lys Pro His Thr Leu Trp Val Ala
385 390 395 400

Phe Ala Lys Phe Tyr Glu Asp Asn Gly Gln Leu Asp Asp Ala Arg Val
405 410 415

Ile Leu Glu Lys Ala Thr Lys Val Asn Phe Lys Gln Val Asp Asp Leu
420 425 430

Ala Ser Val Trp Cys Gln Cys Gly Glu Leu Glu Leu Arg His Glu Asn
435 440 445

Tyr Asp Glu Ala Leu Arg Leu Leu Arg Lys Ala Thr Ala Leu Pro Ala
450 455 460

Arg Arg Ala Glu Tyr Phe Asp Gly Ser Glu Pro Val Gln Asn Arg Val
465 470 475 480

Tyr Lys Ser Leu Lys Val Trp Ser Met Leu Ala Asp Leu Glu Glu Ser
485 490 495

Leu Gly Thr Phe Gln Ser Thr Lys Ala Val Tyr Asp Arg Ile Leu Asp
500 505 510

Leu Arg Ile Ala Thr Pro Gln Ile Val Ile Asn Tyr Ala Met Phe Leu
515 520 525

Glu Glu His Lys Tyr Phe Glu Glu Ser Phe Lys Ala Tyr Glu Arg Gly
530 535 540

Ile Ser Leu Phe Lys Trp Pro Asn Val Ser Asp Ile Trp Ser Thr Tyr
545 550 555 560

Leu Thr Lys Phe Ile Ala Arg Tyr Gly Gly Arg Lys Leu Glu Arg Ala
565 570 575

Arg Asp Leu Phe Glu Gln Ala Leu Asp Gly Cys Pro Pro Lys Tyr Ala
580 585 590

Lys Thr Leu Tyr Leu Leu Tyr Ala Gln Leu Glu Glu Glu Trp Gly Leu
595 600 605

Ala Arg His Ala Met Ala Val Tyr Glu Arg Ala Thr Arg Ala Val Glu
610 615 620

Pro Ala Gln Gln Tyr Asp Met Phe Asn Ile Tyr Ile Lys Arg Ala Ala
625 630 635 640

Glu Ile Tyr Gly Val Thr His Thr Arg Gly Ile Tyr Gln Lys Ala Ile
645 650 655

Glu Val Leu Ser Asp Glu His Ala Arg Glu Met Cys Leu Arg Phe Ala
660 665 670

Asp Met Glu Cys Lys Leu Gly Glu Ile Asp Arg Ala Arg Ala Ile Tyr
675 680 685

Ser Phe Cys Ser Gln Ile Cys Asp Pro Arg Thr Thr Gly Ala Phe Trp
690 695 700

Gln Thr Trp Lys Asp Phe Glu Val Arg His Gly Asn Glu Asp Thr Ile
705 710 715 720

Lys Glu Met Leu Arg Ile Arg Arg Ser Val Gln Ala Thr Tyr Asn Thr
725 730 735

Gln Val Asn Phe Met Ala Ser Gln Met Leu Lys Val Ser Gly Ser Ala
740 745 750

Thr Gly Thr Val Ser Asp Leu Ala Pro Gly Gln Ser Gly Met Asp Asp
755 760 765

Met Lys Leu Leu Glu Gln Arg Ala Glu Gln Leu Ala Ala Glu Ala Glu
770 775 780

Arg Asp Gln Pro Leu Arg Ala Gln Ser Lys Ile Leu Phe Val Arg Ser
785 790 795 800

Asp Ala Ser Arg Glu Glu Leu Ala Glu Leu Ala Gln Gln Val Asn Pro
805 810 815

Glu Glu Ile Gln Leu Gly Glu Asp Glu Asp Glu Asp Glu Met Asp Leu
820 825 830

Glu Pro Asn Glu Val Arg Leu Glu Gln Gln Ser Val Pro Ala Ala Val
835 840 845

Phe Gly Ser Leu Lys Glu Asp
850 855

Claims (13)

  1. 転写抑制因子をコードしたDNAであって、
    (A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしたDNA、または、
    (B)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA。
  2. 転写抑制因子をコードしたDNAであって、
    (A)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしたDNA、または
    (B)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
  3. 請求項1または2に記載のDNAによりコードされた転写抑制因子。
  4. 核内ホルモンレセプターに起因した転写を抑制し得る請求項3記載の転写抑制因子。
  5. 転写を活性化し得るペプチドをコードしたDNAであって、
    (A)配列番号2における1から179位のアミノ酸配列からなるペプチドをコードしたDNA、または
    (B)配列番号1における1から537塩基までの塩基配列からなるDNA。
  6. 転写を活性化し得るペプチドをコードしたDNAであって、
    (A)配列番号2における1から179位のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するペプチドをコードしたDNA、または
    (B)配列番号1における1から537塩基までの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
  7. 請求項5または6に記載のDNAによりコードされた転写活性化ペプチド。
  8. 請求項1、2、5または6のいずれかに記載のDNAのうち、少なくとも15ヌクレオチド長を有するDNA
  9. 請求項1、2、5または6のいずれがに記載のDNAが挿入されたベクター。
  10. 請求項1、2、5または6のいずれかに記載のDNAまたは請求項9に記載のベクターを保持する宿主細胞。
  11. 請求項3に記載の因子または請求項7に記載のペプチドに結合し得る抗体。
  12. 請求項1、2、5または6のいずれかに記載のDNAとハイブリダイズし、少なくとも10ヌクレオチド長を有する、オリゴヌクレオチドプローブ。
  13. 以下の(A)〜(D)のいずれかが固定された基板。
    (A)請求項12に記載のオリゴヌクレオチドプローブ
    (B)請求項3または4に記載の転写抑制因子、もしくは該因子の部分ペプチド
    (C)請求項7に記載の転写活性化ペプチド、もしくは該ペプチドの部分ペプチド
    (D)請求項11に記載の抗体
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