JP2000135090A - ヒトH37タンパク質と、このタンパク質をコードする cDNA - Google Patents
ヒトH37タンパク質と、このタンパク質をコードする cDNAInfo
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Abstract
の活性制御サブユニットであるヒトH37タンパク質
と、このタンパク質をコードするヒト遺伝子およびその
cDNA、H37タンパク質に対する抗体、並びにこれ
らの遺伝子工学材料や抗体を用いてヒト細胞の増殖を制
御する方法の提供。 【解決手段】 特定の2種類の中のいずれかのアミノ酸
配列を有するヒトH37タンパク質、上記のヒトH37
タンパク質をコードするヒト遺伝子、このヒト遺伝子の
cDNAであって、特定の2種類の中のいずれかの塩基
配列を有するcDNA、これらcDNAの一部配列から
なるDNA断片、上記cDNAを保有する組換えベクタ
ー、ヒトH37タンパク質に対する抗体、並びに上記D
NAまたは抗体を細胞内に導入することによる細胞増殖
制御方法。
Description
パク質と、このタンパク質をコードするcDNAに関す
るものである。さらに詳しくは、この出願は、ヒト細胞
の複製を制御するタンパク質Cdc7の活性制御サブユニ
ットであるヒトH37タンパク質と、このタンパク質を
コードするヒト遺伝子およびそのcDNA、H37タン
パク質に対する抗体、並びにこれらの遺伝子工学材料や
抗体を用いてヒト細胞の増殖を制御する方法に関するも
のである。
因子が細胞表面の受容体に結合し、細胞内に増殖にシグ
ナルが伝達されることによって開始される。従って、培
養細胞の増殖を人為的に誘導するためには、細胞培地に
増殖因子を過剰量添加したり、あるいはその細胞が本来
は持っていない受容体を細胞表面に発現させ、その受容
体に特異的な因子を培地に添加する方法等がとられてき
た。また、細胞増殖を抑制するためには、受容体タンパ
ク質に対する抗体や拮抗分子等を培地に添加し、受容体
への増殖因子の結合を阻害する方法等が採用されてき
た。
増殖シグナルが発せられた細胞は、そのゲノムDNAを
複製し、娘細胞に均等に配分したのち分裂するというサ
イクルを繰り返す。このサイクルを、特に真核生物につ
いては「細胞周期」という。細胞周期は基本的に4期間
に区分されている。すなわち、染色体DNAが複製する
S期、複製した染色体が紡錘体によって分裂したのち細
胞質が分裂するM期、M期が終わりS期が始まるまでの
G1期、そしてS期が完了してM期が始まるまでのG2
期である。特にG1期からS期への移行は厳密に制御さ
れており、DNA複製はS期において1回だけ生じるよ
うになっている。
胞での研究からサイクリン依存性キナーゼがその進行に
重要な役割を果たしていることが証明されいる(Nature
292:558-560, 1981; Cell 66:731-742, 1991; Nature
349:338-393, 1991; Science257:1958-1961, 1992; Bio
essays 17:471, 1995)。また、酵母における遺伝学的
解析からは、S期の開始時(G1−S移行)には別のセ
リン/スレオニンキナーゼが重要な役割を果たしている
ことが明らかになっている。すなわち、細胞分裂周期変
異株の一つとして単離されたcdc7変異(J. Mol. Biol.
59:183-194, 1971)において、Cdc7タンパク質キナー
ゼは染色体DNAの複製の開始直前に機能すること、そ
してS期を通じて各複製起点の活性化に必要とされてい
ることが明らかになってきた(Mol. Cell. Biol. 6:159
0-1598, 1986; Genes Dev. 15:480-490, 1998; Genes D
ev. 15:491-501, 1998)。また、Cdc7のキナーゼ活性
は制御サブユニットであるDbf4の存在に依存すること
も明らかにされている(Genetics 131:21-29, 1992; Mo
l. Cell. Biol. 13:2899-2908, 1993 )。Dbf4の発現
は周期的であって、転写レベルおよび翻訳後レベルの両
方で制御されており(Exp. Cell Res. 180:419-428, 19
89)、G1−S境界期におけるCdc7キナーゼ活性の増
加の少なくとも一部はDbf4の発現がG1後期に増加す
ることによって説明されている(Mol. Cell. Biol. 13:
2899-2908, 1993; Exp. Cell Res. 180:419-428, 1989
)。さらに、Dbf4は細胞内で複製起点と相互に作用
する(Science 265:1243-1246, 1994 )ことから、Cdc
7は複製起点上に形成される複製装置を直接的に活性化
することによりS期開始の引き金になっていると考えら
れている。
れまでに酵母Cdc7に類似したキナーゼを分裂酵母、ア
フリカツメガエル、マウスおよびヒトから単離し、真核
細胞の染色体複製は種差を超えて共通に保存されたこの
キナーゼファミリーを含む機構によって制御されている
ことを指摘している(J. Biol. Chem. 273:23248-2325
7, 1998; EMBO J. 16:4340-4351, 1997; EMBO J. 14:30
94-3104, 1995)。
よび高等真核生物における知見から、細胞内のCdc7キ
ナーゼ活性をコントロールすることによって、増殖因子
/受容体結合の操作による従来方法とは全く別の手続に
よる細胞増殖の人為的制御が可能になるものと期待され
る。
た、ヒトのCdc7ホモログの候補であるhuCdc7を動物
細胞で増産させても、あるいは昆虫細胞で発現させても
それ単独ではほとんどキナーゼ活性を示さないことを見
出している。そこで、ヒトCdc7の制御サブユニットの
存在を想定し、ヒトcDNAライブラリーを探索した結
果、huCdc7に結合してそのキナーゼ活性を制御する新
規なタンパク質をコードするcDNAを単離することに
成功し、このcDNAにコードされたタンパク質をH3
7タンパク質と命名した。
されたこの新規タンパク質H37を産業上利用可能な形
態として提供することを課題としている。またこの出願
は、このタンパク質をコードするヒト遺伝子、この遺伝
子のcDNAおよびタンパク質に対する抗体等の遺伝子
操作材料を提供することを課題としている。
料を用いてヒト細胞の増殖を人的に制御する方法を提供
することを課題としてもいる。
を解決する発明として、配列番号1または2のアミノ酸
配列を有するヒトH37タンパク質を提供する。また、
この出願は、配列番号1または2のアミノ酸配列におけ
る1もしくは複数のアミノ酸残基が、欠失、置換もしく
は付加されたアミノ酸配列を有するヒトH37タンパク
質を提供する。
ンパク質をコードするヒト遺伝子、このヒト遺伝子のc
DNAであって、配列番号3または4の塩基配列を有す
るcDNA、およびこれらcDNAのの一部配列からな
るDNA断片を提供する。さらにまたこの出願は、上記
cDNAを保有する組換えベクター、およびヒトH37
タンパク質に対する抗体を提供する。
はその部分的あるいは一部を改変し変異を導入したDN
A断片を発現制御配列とともに細胞内に導入することを
特徴とする細胞の増殖促進方法、ならびに前記抗体を細
胞内に導入することを特徴とする細胞の増殖抑制方法を
提供する。以下、この発明の実施の形態について詳しく
説明する。
は、配列番号1のアミノ酸配列を有し、配列番号3に塩
基配列を示したcDNAの 518から2541番目までの配列
領域にコードされているタンパク質分子である。この発
明のH37タンパク質はまた、配列番号2のアミノ酸配
列を有し、配列番号4のcDNAにおける 518から1222
番目までの配列領域にコードされているタンパク質であ
る。配列番号3および4は同一のゲノム遺伝子から転写
されたmRNAを鋳型とするcDNAであるが、配列番
号4のcDNAは、配列番号3とは別のスプライシング
フォームであり、配列番号3の1199-1259 番目までが欠
失している。
すなわちヒトの臓器、細胞株などから単離する方法、こ
の発明によって提供されるアミノ酸配列に基づき化学合
成によってペプチドを調製する方法、あるいはこの発明
によって提供されるcDNA断片を用いて組換えDNA
技術で生産する方法などにより取得することができる。
例えば、組換えDNA技術によってH37タンパク質を
取得する場合には、この発明のcDNA断片を有するベ
クターからインビトロ転写によってRNAを調製し、こ
れを鋳型としてインビトロ翻訳を行なうことによりイン
ビトロで発現できる。また翻訳領域を公知の方法により
適当な発現ベクターに組換えてやれば、大腸菌、枯草
菌、酵母、動物細胞等で、cDNAがコードするH37
タンパク質を大量に発現させることができる。
などの微生物で発現させる場合には、微生物中で複製可
能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、c
DNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発
現ベクターに、この発明のcDNAの翻訳領域を挿入結
合して組換えた発現ベクターを作成し、この発現ベクタ
ーで宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体
を培養してやれば、cDNAがコードしているH37タ
ンパク質を微生物内で大量生産することができる。ある
いは、他の蛋白質との融合蛋白質として発現させること
もできる。得られた融合蛋白質を適当なプロテアーゼで
切断することによって、cDNAがコードするタンパク
質部分のみを取得することもできる。
胞で発現させる場合には、この発明のcDNAの翻訳領
域を、動物細胞用プロモーター、スプライシング領域、
ポリ(A) 付加部位等を有する動物細胞用発現ベクターに
組換え、動物細胞内に導入してやれば、この発明のH3
7タンパク質を動物細胞内で発現できる。以上のとおり
の方法によって得られるヒトH37タンパク質は、例え
ば、細胞内のhuCdc7のキナーゼ活性を阻害することに
よって細胞の増殖を抑制するための抗体作成のための抗
原として使用することができる。
は、後記する実施例において実証されているように、構
造上はこれまでに明らかにされているサイクリンとはほ
とんど類似性を持たないが、その発現が細胞周期によっ
て制御されること、またhuCdc7触媒サブユニットに結
合してそのキナーゼ活性を活性化するという点で、huC
dc7キナーゼのサイクリン様構成因子とみなすことがで
きる。従って、H37タンパク質は増殖因子によって誘
導される細胞増殖のためのシグナル伝達経路において非
常に重要な標的因子と考えられることから、H37タン
パク質の発現あるいはその活性がG1−S期の細胞周期
のシグナルによってどのように制御されているかを明ら
かにすることが、動物細胞における細胞複製の細胞周期
制御の分子機構を明らかにする上で大きな新しい知見を
提供するものと期待される。
列番号1または2で表されるアミノ酸配列のいかなる部
分アミノ酸配列を含むペプチド断片(5アミノ酸残基以
上)も含まれる。これらのペプチド断片もまた抗体を作
製するための抗原として用いることができる。この発明
の遺伝子は、上記ヒトH37タンパク質をコードするヒ
トの遺伝子であって、例えば、この発明のcDNAまた
はその一部配列をプローブとして、既存のゲノムライブ
ラリーから単離することができる。
4で表される塩基配列を有することを特徴とするもので
あり、例えばヒト細胞由来cDNAライブラリーからク
ローン化することができる。cDNAはヒト細胞から抽
出したポリ(A)+ RNAを鋳型として合成する。ヒト細
胞としては、人体から手術などによって摘出されたもの
でも培養細胞でも良い。cDNAは、岡山−Berg法(Ok
ayama, H. and Berg,P., Mol. Cell. Biol., 2:161-17
0, 1982 )、Gubler−Hoffman 法(Gubler, U.and Hoff
man. J. Gene, 25:263-269, 1983 )、キャッピング法
〔Kato, S. etal., Gene, 150:243-250, 1994)などの
公知の方法を用いて作製することができる。
び腎臓以外のいかなる組織でも発現しているので、配列
番号3または4に記載のcDNAの塩基配列に基づいて
合成したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ヒト細
胞から作製したヒトcDNAライブラリーをスクリーニ
ングすることにより、この発明のcDNAと同一のクロ
ーンを容易に得ることができる。あるいは、これらのオ
リゴヌクレオチドをプライマーとして、ポリメラーゼ連
鎖反応(PCR)法を用いて、目的cDNAを合成する
こともできる。
繁に認められる。従って配列番号3または4において、
1または複数個のヌクレオチドの付加、欠失および/ま
たは他のヌクレオチドによる置換がなされているcDN
Aもこの発明に含まれる。同様に、これらの変更によっ
て生じる1または複数個のアミノ酸残基の付加、欠失お
よび/または他のアミノ酸残基による置換がなされてい
るタンパク質も、配列番号1または2で表されるアミノ
酸配列を有するタンパク質の活性を有する限り、この発
明に含まれる。また、人為的に1または複数個のアミノ
酸残基の付加、欠失および/または他のアミノ酸残基に
よる置換を導入した変異タンパク質もこの発明に含まれ
る。
たは4で表される塩基配列のいかなる部分塩基配列を含
むcDNA断片(10bp以上)、あるいはそれらのア
ンチセンス鎖からなるDNA断片も含まれる。この発明
のヒトH37タンパク質に対する抗体は、タンパク質そ
れ自体、またはその部分ペプチドを抗原として、公知の
方法により、ポリクローナル抗体またはモノクローナル
抗体として得ることができる。
3または4の塩基配列を有するcDNA、もしくはそれ
らの一部配列からなるDNA断片(例えば後記実施例3
に示したように、C端側の419 個のアミノ酸配列領域を
コードするDNA断片)とその発現制御配列(動物細胞
用プロモーターおよび/またはエンハンサー配列)から
なる組換えDNAを動物細胞に導入し、配列番号1また
は2のアミノ酸配列を有するH37タンパク質を細胞核
内で過剰発現させることによって行うことができる。組
換えDNAの細胞内への導入は公知の方法により行うこ
とができる。例えばリン酸カルシウム法、リポソームや
赤血球ゴーストを用いる方法、エレクトロポレーション
法、レトロウイルスやアデノウイルスをベクターとして
用いる方法、ガラスピペットによる微量注入法等であ
る。このような細胞増殖の促進は、例えば、ヒト疾患の
治療に有用な幹細胞を大量に取得するために有用であ
る。すなわち、血液幹細胞や神経幹細胞など、他種類の
細胞に分化する幹細胞は、ヒトの身体を構成する多くの
タンパク質を作り出すことができるため、白血病等の疾
患において幹細胞の移植は極めて重要な治療手段であ
る。しかしながら、幹細胞を分化させることなしに自己
増殖させる液性因子は同定されていないため、治療に必
要な量の幹細胞を調製することは容易ではなかった。こ
の発明の方法は、幹細胞内の増殖プログラムを操作する
ことによって試験管内で無制限に細胞を自己複製、自己
増殖させることを可能にする。また、このような試験内
での細胞増殖促進は、ex vivo 方式による遺伝子治療の
ための遺伝子導入用細胞を大量に調製するためにも有用
である。
体を細胞内に注入することによって行うことができる。
あるいは、細胞内在性のH37タンパク質遺伝子の発現
を阻害することによっても行うことができる。例えば、
遺伝子の転写産物に対するアンチセンス配列またはリボ
ザイム配列をコードするDNAを細胞内に導入する方法
等である。このような細胞増殖の抑制は、例えば癌細胞
の過剰増殖を抑制するための新たな手段を提供するもの
と期待される。
具体的に説明するが、この発明はこれらの例に限定され
るものではない。 実施例1:HeLa細胞のcDNAライブラリーをpG
AD−GHベクターを用いて作成し、huCdc7が Gal4
のDNA結合ドメインに融合された組換えプラスミドを
保有する酵母CG1945株に各ベクターを導入した。約3
×105 個の形質転換体酵母をスクリーニングした結
果、ベータガラクトシダーゼが陽性のクローンを5個得
た。インサートのDNA塩基配列を決定し、データベー
スを検索た結果、これらは全て新しいcDNAであっ
た。そのうち3クローンは同一のものであり、配列番号
1の塩基配列を有していた。このcDNAをH37と命
名した。他の2つは単独のクローンであり、それぞれH
1およびH18と命名した。
タンパク質とhuCdc7との相互作用を動物細胞における
増産系を用いてさらに検討した。すなわち、myc エピト
ープで標識したH1、H18およびH37のそれぞれの
発現プラスミドを全長huCdc7発現プラスミドとともに
動物細胞Cos7にトランスフェクションした。結果は図
1に示したとおりである。huCdc7に対する抗体による
免疫沈降によってH37タンパク質は共沈殿されたが、
H1およびH18タンパク質は共沈殿されなかった(図
1:上段レーン2−4)。逆に、myc抗体を用いた免疫
沈降により、huCdc7は myc標識のH37を共発現して
いる細胞においてのみ共沈殿された(図1:下段レーン
4)。この結果から、H37cDNAのみがhuCdc7と
効率よく相互作用するタンパク質をコードしていること
が確認された。
て調べるために、H37のN端およびC端領域に対する
抗体(抗H37N抗体、抗H37C抗体)をそれぞれ作
成した。さらに、H37のC端オリゴペプチドに対する
抗体(抗H37Cpep 抗体)およびhuCdc7のC端オリ
ゴペプチドに対する抗体(抗huCdc7Cpep 抗体)も作
成した。そして、各抗体と細胞内における内在性huCdc
7およびH37との会合を測定した。結果は図2に示し
たとおりである。すなわち、H37に対する抗体はいず
れもCos細胞で発現した90kDa のmyc 標識H37タンパ
ク質と特異的に反応した(図2:レーン1−4)。アフ
ィニティ精製した抗ペプチド抗体を用いてヒトCEM細
胞から調製した複合体を共沈殿することができた。huC
dc7およびH37免疫沈殿物中にいずれもhuCdc7が含
まれていることが抗huCdc7Cpep 抗体を用いた免疫ブ
ロットにより確認された(図2:レーン5および7)。
このH37とhuCdc7との相互作用は、抗体作成の抗原
として用いたペプチドと抗体とを予めpre-incubationす
ることによって完全に消失した(図2:レーン8)。H
eLa細胞の抽出液においては、Cdc7抗体およびH3
7抗体はいずれも、H37抗体と特異的に反応する80kD
a の1本のポリペプチドを共沈殿することができた(図
2:レーン9−13)。
7タンパク質が複合体として細胞内に存在していること
が判明した。 実施例2 H37タンパク質がhuCdc7を活性化する能力があるか
否かを調べるために、myc 標識したH37と野生型ある
いはキナーゼ失活型のhuCdc7をCos細胞で発現させて
得たhuCdc7/H37キナーゼ複合体を、huCdc7抗体
またはmyc 抗体で免疫沈殿し、続いてGST−MCM3
融合タンパク質を基質として用いて、invitro のキナー
ゼ反応を測定した。結果は図3および図4に示したとお
りである。野生型のhuCdc7の存在下では、huCdc7抗
体の免疫沈降物およびmyc 抗体の免疫沈降物の両方にお
いてMCM3タンパク質の効率のよいリン酸化観察され
た(図3:レーン2および7)。さらに、もう2本のリ
ン酸化タンパク質が観察され、それらはトランスフェク
ションされたhuCdc7および mycH37であると同定さ
れた(データ示さず)。これらのリン酸化はキナーゼ失
活型のhuCdc7では全く検出されないことから、huCdc
7のキナーゼ活性がこれらのリン酸化に作用しているこ
とが確認された。ただし、キナーゼ失活型のhuCdc7も
H37タンパク質と複合体を形成することができる(図
3:レーン3および8、図4:レーン2および4)。さ
らにタンパクゲル電気泳動上でのH37タンパク質の移
動度は野生型huCdc7が共発現されている場合は遅くな
り、複数のバンドとして検出されたが、この移動度の変
化はキナーゼ失活型huCdc7では観察されなかった(図
4:レーン1および3)。移動度が遅くなっているバン
ドは脱リン酸化酵素処理により消失することから、それ
らは過リン酸化されたH37タンパク質であることが確
認された(データ示さず)。また、昆虫細胞においてhu
Cdc7とH37タンパク質を共発現することにより、M
CM2およびMCM3タンパク質を効率よくリン酸化す
ることのできる極めて強いキナーゼ活性を再構成するこ
とができた(データ示さず)。
7キナーゼを活性化し、さらにH37タンパク質自身が
huCdc7によりリン酸化されることを示している。ま
た、これらの実験条件下では、huCdc7触媒サブユニッ
トのみが発現された場合には、内在性のH37タンパク
質のレベルが低すぎるためにキナーゼ活性は僅かであっ
た(図3:レーン4および9)。これらの事実から、H
37タンパク質がhuCdc7の制御細胞ユニットをコード
し、そのキナーゼ活性を特異的に活性化していることが
確認された。 実施例3 H37タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)を検討
した。その結果、図5および図6に示したように、出芽
酵母Dbf4と33%の相同性を有するアミノ酸配列領域
が見出された。この保存ドメイン(H37モチーフC)
は、ラット、ショウジョウバエおよび分裂酵母で同定さ
れたH37類似遺伝子にも存在する(図6)。また、H
37のもう一つのアミノ酸領域(H37モチーフN)は
ラットおよびショウジョウバエのH37類似遺伝子に保
存されていた。ただし、このH37モチーフNは出芽酵
母のDbf4タンパク質には保存されていなかった(図
6)。
ンパク質上の領域を決定するために、図7に示したよう
な一連のH37N端およびC端欠失変異を作成し、各々
をGal4活性化ドメインとの融合タンパク質として酵母
内で発現させて、それぞれの欠失変異体とhuCdc7との
相互作用をtwo-hybridアッセイで検討した。結果は図8
に示したとおりである。N端の欠失の結果、N端255 ア
ミノ酸を削除してもhuCdc7との相互作用には影響を与
えなかった(ΔN2)。しかしながら、さらにN端50
アミノ酸を削除してH37モチーフCを欠失させるとhu
Cdc7との相互作用は完全に失われた(ΔN3)。
ミノ酸を削除しただけでhuCdc7との結合能力が約60
%まで低下した(ΔC)。さらに、243 あるいは369 ア
ミノ酸をC端から欠失させると(ΔP2およびΔB)、
相互作用は全長クローンの約10%までに低下した。N
端の235 アミノ酸のみを含むΔP1はhuCdc7と相互作
用しなかった。ただし、ΔBとΔN2に共通に存在する
50アミノ酸はhuCdc7との効率のよい相互作用のため
には充分ではなかった(データ示さず)。
Cdc7 とともにCOS7細胞内に共発現し、huCdc7 タ
ンパク質と複合体を形成するかを抗体共沈法により確認
した。その結果、two-hybrid assayの結果と同様に、全
長H37タンパク質の他に、deltaB、deltaN2 のH37
欠失誘導体のみがhuCdc7 と複合体を形成することが明
らかにされた(図9)。
タンパク質とhuCdc7触媒サブユニットとの相互作用に
必須であること、しかしそれのみでは充分ではないこと
を示している。出芽酵母においては、H37モチーフC
を含む領域がCdc7との結合に充分であるということが
既に報告されている(Mol. Cell. Biol. 15:6775-6782,
1996 )。さらに、これらの欠失変異を用いてin vitro
キナーゼ反応を行った結果、Dbf4モチーフCを含むC
端の419 アミノ酸のみでリン酸化活性で充分であること
が判明した(データ示さず)。 実施例4 種々のヒト組織および癌細胞におけるH37mRNAの
発現パターンをノーザンブロットにより検討した。結果
は図10a、bに示したとおりである。H37cDNA
特異的プローブにより、脳と腎臓以外の全ての組織にお
いて、また全ての癌細胞において、2.5kbの転写産物
が検出された。このことは、huCdc7のmRNAは脳と
腎臓においても比較的高い発現が観察されること(EMBO
J. 16:4340-4351, 1997)とは対照的であった。検査し
た組織の中では、H37mRNAの発現が最も高かった
のは睾丸、次いで胸腺であり、この両組織はhuCdc7触
媒サブユニットの発現が特に高い組織でもあることが発
明者等によって報告されている(EMBO J. 16:4340-435
1, 1997)。また、睾丸においては6kbと4kbの2本の
別のRNAバンドも検出された(図10a)が、これら
の転写産物の正体は不明である。さらに、H37mRN
Aは、肺癌細胞A549 を除いたほとんど全ての癌細胞に
おいて極めて高いレベルで発現していることが確認され
た(図10b)。このことは、活発な増殖能を有する細
胞でもH37タンパク質の重要な役割を示している。 実施例5 H37の発現が細胞周期によって制御されているかどう
かを検討するため、ヒト正常線維芽細胞WI38細胞を血
清飢餓によりG0期に同調させ(図11)、トータルR
NAを血清添加後の種々の時間に調整し、ノーザンブロ
ットでH37mRNAのレベルを検討した。結果は図1
2に示したとおりである。H37mRNAレベルは、休
止期の細胞では低く、細胞がG1−S境界に近づくに従
って徐々に増加していき、血清添加後20時間で最大に
達した。この図12に示した発現パターンは、増殖刺激
によって誘導されることが知られているhuCdc6の転写
産物の発現パターン(Mol. Cell. Biol. 15:4215-4224,
1995; Proc. Natl. Acad.Sci. USA 94:142-147, 1997
)に似ている。
調べるために、エルトリエーション法によりヒトCEM
細胞を各細胞周期に分画し(図13)、ノーザンブロッ
トを行った(図14)。その結果、H37mRNAはG
1期には低く、G1後期からS期にかけて上昇し、S期
の間は高く維持され、G2期にやや減少するがまだ高く
維持されていることが示された。また、ノコダゾールに
よりHeLa細胞をG2後期に停止させ、同調的に細胞周期
を移行させた実験(図15)においてもH37mRNA
はG2からG1への移行に従って減少し、S期への移行
の際に再び上昇することが示された(図16)。Cdc6
の発現も同様にG1からS期への移行に伴って上昇する
が、S期が進行するにつれて減少し、G2期には低く抑
えられる点がH37とは異なる。この結果は、H37m
RNAの発現は進行する細胞周期のなかでも変動し、そ
れが機能すると考えられるS 期に最大になることを示
す。
胞内におけるH37タンパク質の細胞内局在を測定し
た。2種類のH37特異的抗体を用いて間接蛍光抗体法
を行った結果、HeLa細胞とWI38細胞の両方におい
て、内在性H37タンパク質は核内に非常に明確な数々
のスポットとして観察された(図17)。これらの結果
および発明者らがすでに報告しているhuCdc7触媒サブ
ユニットの核内局在(EMBO J. 16:4340-4351, 1997)と
あわせて、huCdc7/H37複合体は核に局在するキナ
ーゼであり、その制御細胞ユニットは細胞周期のシグナ
ルに依存して発現していることが確認された。 実施例6 細胞周期のG1−S移行における内在性H37タンパク
質の機能を抗体微量注入法により検討した。H37タン
パク質のN端305アミノ酸に対する抗体(抗H37N
抗体)およびC端のオリゴペプチドに対する抗体(抗H
37Cpep 抗体)をアフィニティ精製し、これらの抗体
をヒト唇由来の正常線維芽細胞(KD細胞)に微量注入
した。KD細胞は予め血清飢餓によってG0期に停止さ
せておき、血清再添加によって同調的に細胞周期へと進
行させたものを使用した。ヌクレオチド誘導体であっ
て、細胞内に取り込まれるBrdU陽性の細胞数を測定す
ることにより、どれくらいの画分の細胞が決定添加後の
種々の時期にS期に存在するかを調べた。結果は図18
に示したとおりである。細胞は血清添加後約18時間で
DNA合成を始め、24時間後にはほぼ90%の細胞が
S期に入っていることを確認した。
後期の状態である血清添加後12時間の時点で抗体を微
注入し、ほぼ完全にS期に入ったと考えられる26時間
後の時点で細胞を固定してBrdU陽性細胞を計測した。
結果は図19に示したとおりである。抗H37N抗体を
微注入した細胞の70%がS期に移行することができな
かったのに対し、コントロール抗体による影響はほとん
ど見られなかった。また、抗H37Cpep 抗体の微注入
によっても抗H37N抗体と同等あるいはそれ以上のS
期移行阻害効果が観察された。しかも、抗H37Cpep
抗体作成のための抗原であるペプチドと抗H37Cpep
抗体とを同時に細胞内に微注入した場合には、70%以
上の細胞がS期に移行することができた。
ある。抗体は細胞がG1中期から後期にある段階で微注
入されており、この時期にはH37タンパク質の発現は
低いと考えられる。微注入された抗体は、新しく合成さ
れたH37タンパク質に効率よく結合し、その結果、H
37タンパク質の核内への移行を阻害すると考えられ
る。これらの結果は、H37の機能、すなわちhuCdc7
/H37複合体の機能が動物細胞のS期進行に要求され
ることを強く示唆する。
よって、ヒト細胞の複製を制御するタンパク質Cdc7の
活性制御サブユニットであるヒトH37タンパク質と、
このタンパク質をコードするヒト遺伝子およびそのcD
NA、H37タンパク質に対する抗体、並びにこれらの
遺伝子工学材料や抗体を用いてヒト細胞の増殖を制御す
る方法が提供される。これによって、各種のヒト疾患の
治療に用いられる幹細胞等の必要量を調整することが可
能となり、あるいは癌細胞の増殖抑制のための新規な手
段を開発することが可能となる。
疫沈降を測定したウェスタンブロッティングの結果であ
る。レーン1−4:免疫沈降物、レーン5−7:細胞総
抽出液、上段および中段:huCdc7抗体No.1により免疫
沈降したもの、下段:myc 抗体により免疫沈降したも
の。抽出液は、huCdc7とH1(レーン2、5)、H1
8(レーン3、6)H37(レーン4、7)またはhuC
dc7のみ(レーン1)をトランスフェクションしたCos
7細胞から作成した。ウェスタンブロッティングは、抗
myc 抗体(上段)または抗huCdc7抗体No.1(中段およ
び下段)を用いて行った。
る内在性huCdc7とH37との会合を測定したウェスタ
ンブロッティングの結果である。myc 標識したH37を
トランスフェクションしたCos7から作成した核抽出液
を、抗H37C抗体(レーン1)、抗H37N抗体(レ
ーン2)、抗H37Cpep 抗体(レーン3)あるいは抗
myc 抗体(レーン4)によりブロットした。矢印は、my
c タグに加えて5'非コード領域に由来する63アミノ酸
を含んでいるH37タンパク質の位置を示している。C
EM細胞から作成した抽出液を抗huCdc7C-pep抗体
(レーン5、6)、あるいは抗H37C-pep抗体(レー
ン7、8)により免疫沈降し、タンパクゲル電気泳動し
たのち、huCdc7モノクローナル抗体(4A8)を用い
てブロットした。−と+は、免疫沈降の際にそれぞれの
抗原が存在するか否かを示している。レーン9−13は
HeLa細胞の核抽出液のウェスタンブロッティングで
あり、抗huCdc7抗体No.1(レーン9)、抗huCdc7モ
ノクローナル抗体4A8(レーン10)、抗H37C抗
体(レーン11)、抗H37N抗体(レーン12)、抗
H37C-pep抗体(レーン13)を用いている。
myc 抗体(レーン6−10)を用いてmyc 標識H37の
み(レーン1、6)、myc 標識H37と野生型huCdc7
(レーン2、7)、myc 標識H37とキナーゼ失活型hu
Cdc7(レーン3、8)をトランスフェクションしたC
os7細胞の抽出液から免疫沈降を行った結果を示す。コ
ントロールとして野生型huCdc7のみ(レーン4、9)
およびキナーゼ失活型huCdc7(レーン5、10)も同
様に測定した。
7の電気泳動上での移動度の変化である。野生型または
キナーゼ失活型のhuCdc7をmyc 標識H37とともに発
現しているCos7細胞から抽出液を作製し、抗huCdc7
抗体No.1(レーン1、2)または抗myc 抗体(レーン
3、4)で免疫沈降し、抗myc 抗体(上段)または抗hu
Cdc7抗体(下段)でブロットした。試料は8%SDS
−PAGEタンパクゲルに流した。
ミノ酸配列である。
の保存領域のアミノ酸配列の比較である。Dbf4上の両
向きの矢印で示された領域は、Cdc7との相互作用に充
分であると報告されている領域である。H37上の両向
き矢印で示された領域は、それぞれhuCdc7との相互作
用に必須である(しかし充分ではない)領域と、huCdc
7キナーゼ活性の促進に充分な領域を示す。
模式図である。それぞれのバー端部の数字は欠失の端の
アミノ酸番号(配列番号1に対応)を示す。斜線領域は
Dbf4モチーフCを示す。
ッセイにおけるlacZ活性を示す。
OS7細胞内に共発現し、huCdc7タンパク質と複合体
を形成するかを抗体共沈法により検討した結果を示す。
ザン解析の結果であり、bは種々の癌細胞でのH37m
RNA発現のノザン解析の結果である。
より増殖刺激し、様々な時間経過においてそのDNA含
量をFACSで解析した結果を示す。
37およびhuCdc6の発現をノザン解析した結果(上
段)と、それぞれのmRNAの相対的発現量を示したグ
ラフ図(中、下段)である。
の各細胞周期分画を示したグラフ図である。
n Eの発現をノザン解析した結果(上段)と、それぞれ
のmRNAの相対的発現量を示したグラフ図(中、下
段)である。
止させ、同調的に細胞周期を移行させた場合のDNA含
量をFACSで解析した結果を示す。
よびCyclin Eの発現をノザン解析した結果(上段)
と、それぞれのmRNAの相対的発現量を示したグラフ
図(中、下段)である。
析結果を示す。使用した抗体は、抗H37C抗体
(A)、抗H37N抗体(C)、コントロール抗体
(E)、B、D、FはDAPI染色像である。
誘導の時間的変化をBrdU取り込み量を指標として調べ
た結果を示す。
加後12時間の時点で各抗体を微注入し、さらに16時
間後にBrdU取り込み量を測定して計測したDNA合成
を行っている細胞の割合を示す。
C-pepとペプチドの混合物を微注入された細胞を例示し
た顕微鏡写真である。取り込まれたBrdU(上段)、注
入された抗体(中段)、細胞(下段)を示す。
Claims (17)
- 【請求項1】 配列番号1のアミノ酸配列を有するヒト
H37タンパク質。 - 【請求項2】 配列番号1のアミノ酸配列における1も
しくは複数のアミノ酸残基が、欠失、置換もしくは付加
されたアミノ酸配列を有するヒトH37タンパク質。 - 【請求項3】 配列番号2のアミノ酸配列を有するヒト
H37タンパク質。 - 【請求項4】 配列番号2のアミノ酸配列における1も
しくは複数のアミノ酸残基が、欠失、置換もしくは付加
されたアミノ酸配列を有するヒトH37タンパク質。 - 【請求項5】 請求項1また2のヒトH37タンパク質
をコードするヒト遺伝子。 - 【請求項6】 請求項5のヒト遺伝子のcDNAであっ
て、配列番号3の塩基配列を有するcDNA、または配
列番号3の塩基配列における1もしくは複数の塩基が欠
失、置換もしくは付加された塩基配列を有するcDN
A。 - 【請求項7】 請求項5のヒト遺伝子のcDNAであっ
て、配列番号4の塩基配列を有するcDNA、または配
列番号4の塩基配列における1もしくは複数の塩基が欠
失、置換もしくは付加された塩基配列を有するcDN
A。 - 【請求項8】 請求項6のcDNAの一部配列からなる
DNA断片。 - 【請求項9】 請求項7のcDNAの一部配列からなる
DNA断片。 - 【請求項10】 請求項6のcDNAを保有する組み換
えベクター。 - 【請求項11】 請求項7のcDNAを保有する組み換
えベクター。 - 【請求項12】 請求項1または2のヒトH37タンパ
ク質に対する抗体。 - 【請求項13】 請求項3または4のヒトH37タンパ
ク質に対する抗体。 - 【請求項14】 請求項6のcDNAまたは請求項8の
DNA断片を発現制御配列とともに細胞内に導入するこ
とを特徴とする細胞の増殖促進方法。 - 【請求項15】 請求項7のcDNAまたは請求項9の
DNA断片を発現制御配列とともに細胞内に導入するこ
とを特徴とする細胞の増殖制御方法。 - 【請求項16】 請求項10の抗体を細胞内に導入する
ことを特徴とする細胞の増殖抑制方法。 - 【請求項17】 請求項11の抗体を細胞内に導入する
ことを特徴とする細胞の増殖抑制方法。
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