JP4721903B2 - 新規腫瘍抗原蛋白質及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、腫瘍抗原タンパク質および該タンパク質由来のペプチドの、癌免疫分野における利用に関する。更に本発明は、癌疾患の診断に有用な疾患マーカー、該疾患マーカーを利用して、癌疾患の予防、改善または治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法、および該方法によって得られる物質を有効成分とする癌疾患の予防、改善または治療薬に関する。
癌の治療法は、大きく「局所療法」と「全身療法」に分けることができる。局所療法は「手術療法」と「放射線療法」があり、全身療法は抗癌剤、ホルモン剤などの薬剤を、内服や静脈内注射などで投与する薬物療法が主体になる。現状では、局所療法による治療で40%前後が治癒し、7〜10%で何らかの形で抗癌剤の寄与により治癒している。つまり約50%の人は手術療法、放射線療法あるいは化学療法で治癒可能であるが、それ以外は治らないというのが現状であり、今後残り50%の人の治療を目的として、大きく2種の対策が急務であると考えられる。
一つは早期発見により局所治療で治療できる割合を増加させる。もう一方は、新しい治療法を開発し、全身療法で治療できる割合を増加させることである。そこで、早期発見のため、現在用いられている癌マーカー以上に特異性を有した各種癌特異的な癌マーカーの開発が望まれる。
新しい治療法としては、近年これまでの抗癌剤で認められた骨髄抑制に代表される重篤な副作用を持たない治療薬として、新しいコンセプトを有した分子標的治療薬が多く開発、上市されている。乳癌で高発現するHer2分子に対する抗体薬であるハーセプチン、また肺癌で高発現する上皮成長因子受容体(EGF−R)のチロシンキナーゼ阻害剤であるイレッサ等がある。その効果は顕著であり、強い抗腫瘍効果が報告されている。
しかしながら、従来の抗癌剤で認められる骨髄抑制等の副作用は認められないようであるが、当初期待されていたほど有害事象が少なくなく、また間質性肺炎など重篤な副作用が報告されていることから、分子標的治療薬とはいえ、未だ満足できる薬剤が無いのが現状であり、新たな癌特異的な分子を標的とした薬剤、あるいは新たな治療法の研究、開発が望まれている。
一方、新たな治療法として、近年生体の免疫力を利用した癌免疫療法の研究・開発が活発に進められている。生体による腫瘍の排除には、免疫系、特に自己の腫瘍細胞を認識する細胞傷害性T細胞(CTL)が重要な役割を果たしており、CTLは、T細胞受容体(TCR)を用いて、腫瘍抗原ペプチドと呼ばれるペプチドと主要組織適合遺伝子複合体クラスI抗原(MHCクラスI抗原、ヒトの場合はHLA抗原と呼ばれる)との複合体を認識することにより、自己の腫瘍細胞を攻撃していることが知られている。
この腫瘍抗原ペプチドあるいは腫瘍抗原タンパク質をいわゆる癌ワクチンとして利用することにより、腫瘍患者の体内の腫瘍特異的CTLを増強させる治療法が可能となった。
腫瘍抗原タンパク質としては、1991年にT.Boonらが初めてMAGEと名付けたタンパク質をヒトメラノーマ細胞から同定した(Science,254:1643,1991)。その後、いくつかの腫瘍抗原タンパク質が、主にメラノーマ細胞から同定されている。
腫瘍抗原タンパク質や腫瘍抗原ペプチドを腫瘍の治療や診断に応用するために、メラノーマに比べて発生頻度が圧倒的に高い腺癌(肺癌等)などに幅広く適応可能な新たな腫瘍抗原タンパク質および腫瘍抗原ペプチドの同定が望まれている状況にある。
尚、ASKは、出芽酵母で同定されたDbf4のヒトホモログであり、ヒトCdc7を用いたtwo−hybrid法によりヒトCdc7に結合する分子としてクローニングされた。ASKの発現は白血病、バーキットリンパ腫、大腸癌、メラノーマ由来の細胞株で高発現が報告されている(Kumagai,H.ら、Mol.Cell.Biol.,19,5083−5095,(1999))。
GPR87はEST(expressed sequence tag)あるいはgenome database searchによりクローニングされたGPCR(G蛋白共役型受容体;G−protein coupled receptor)であるが、そのリガンドを含め、生理的機能については不明である。
CKS1は、p27Kip1のユビキチン化を担う酵素(SCFSkp2複合体ユビキチンリガーゼ(E3))の構成因子の1種であるSkp2に結合し、p27Kip1とSkp2との結合能力を高めることが示されている(Ganoth,D.ら、Nature Cell Biol.,3,321−324,(2001))。またCKS1ノックアウトマウス(Spruck,C.ら、Mol.Cell,7,639−650,(2001))ではp27Kip1が異常に蓄積していること等から、p27Kip1のユビキチン化による分解調節において重要な制御分子であると考えられている。CKS1の癌細胞増殖との直接的な関連性については何も知られていない。
MELKをコードするMELK(maternal embryonic leucine zipper kinase)遺伝子はマウス未受精卵と着床前の胚の間で発現のパターンの異なる遺伝子として同定されると共に、骨髄性白血病細胞株におけるランダムシークエンスによってもクローニングされた(Nagase,T.ら、DNA Res.,3,17−24.(1996))。MELK遺伝子は、その配列よりleucine zipperモチーフ及びserine/threonine kinaseドメインを有することが示されているが、機能については何も知られていない。
STK12をコードするSTK12遺伝子は結腸癌で高発現するkinaseとしてPCRスクリーニング法を用いて同定された(Bischoff,J.R.ら、EMBO J.,17,3052−3065.(1998))。STK12遺伝子はchromosome instabilityに関与し、また細胞内でのSTK12遺伝子の高発現はchromosome number instabilityを引き起こすと共に、in vivoにおいて造腫瘍性を上昇させ、癌細胞形質への関与が示唆されている(Ota,T.ら、Cancer Res.,62,5168−5177,(2002))。しかしSTK12の癌細胞増殖への影響等については何も知られていない。
TTK(あるいはESK)遺伝子はMPS1(Monopolar Spindle 1)familyのヒトMPS1遺伝子としてクローニングされたが、もともと分裂酵母のMPS1遺伝子は、分裂酵母のmutant phenotypeを用いた解析により、細胞周期のspindle pole body(centrosome)の複製に関与する分子としてクローニングされたものである(Winey,M.ら、J.Cell Biol.,114,745−754.(1991))。ヒトMPS1を用いた検討では、microtubule depolymerizationに対するcheckpoint arrestに関与する可能性が示されているが、癌疾患との関連性については何も知られていない。
本発明は、癌疾患の診断および治療に有用な疾患マーカー、該疾患マーカーを利用した癌疾患の検出方法(遺伝子診断方法)、該疾患の予防、改善または治療に有効な薬物をスクリーニングする方法、並びに該疾患の予防、改善または治療に有効な薬物を提供することを目的とする。
更に本発明は、該疾患マーカーに係る物質(タンパク質)およびそれら由来の部分ペプチドの、癌免疫分野における利用を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行っていたところ、正常の組織における発現量に比して癌組織における発現量および/あるいは発現頻度が有意に促進されている遺伝子を同定した。
また、本発明者は、これら遺伝子がコードするタンパク質を調べ、Activator of S−phase kinase(以下、本明細書において「ASK」という。)、CDC2−associated protein CKS1(以下、本明細書において「CKS1」という。)、maternal emnryonic leucine zipper kinase(以下、本明細書において「MELK」という。)、serine/threonine protein kinase 12(以下、本明細書において「STK12」という。)、TTK protein kinase(以下、本明細書において「TTK」という。)、G protein−coupled receptor 87(以下、本明細書において「GPR87」という。)であることを見出した。
更に、本発明者は、癌細胞株における上記遺伝子の発現を抑制することにより癌細胞株の増殖が抑制されることを明らかにした。
また、上記遺伝子がコードするタンパク由来のペプチドが、IN VIVOでペプチド特異的細胞傷害性T細胞誘導能を有することを見出した。
これらのことから、本発明者は、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子、若しくはこれらの発現産物(タンパク質)が癌疾患患者に特異的に見いだされる癌疾患の疾患マーカーで癌細胞増殖に必要な分子であること、およびこれらの発現産物(タンパク質)が新規な腫瘍抗原タンパク質としての活性を有し、これら腫瘍抗原タンパク質由来のペプチドが腫瘍抗原ペプチドとしての活性を有するとの確信を得た。
上記遺伝子の発現抑制や、当該遺伝子によりコードされる蛋白質(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87)の発現抑制や機能(活性)抑制を指標としたスクリーニング系は、新たなメカニズムに基づく癌疾患の予防、改善または治療薬の探索に有効である。
さらに、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87、若しくはこれらタンパク質由来のペプチドは癌ワクチンとして用いることができ、肺癌等の腫瘍に対して予防、治療または改善効果を発揮するため有用である。これらの腫瘍抗原は癌細胞増殖に必要な分子であることから、癌細胞の免疫逃避による抗原の発現欠失を生じる可能性が低い、より有望な抗原として用いることが可能である。
本発明は、以上のような知見を基礎として完成されたものである。
本発明の要旨は、下記に掲げるものである。
(1)ASK(activator of S−phase kinase)遺伝子、CKS1(CDC2−associated protein kinase)遺伝子、MELK(maternal embryonic leucine zipper kinase)遺伝子、STK12(serine/threonine protein kinase 12)遺伝子、TTK(TTK protein kinase)遺伝子またはGPR87(G protein−coupled receptor 87)遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチドおよび/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドである癌疾患の疾患マーカー、
(2)癌疾患の検出においてプローブまたはプライマーとして使用される前記(1)に記載の疾患マーカー、
(3)下記の工程(a)、(b)および(c)を含む癌疾患の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドと前記(1)または(2)に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌疾患の罹患を判断する工程、
(4)工程(c)における癌疾患の罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として行われるものである前記(3)に記載の癌疾患の検出方法、
(5)ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を認識する抗体を含有する、癌疾患の疾患マーカー、
(6)癌疾患の検出においてプローブとして使用される前記(5)に記載の疾患マーカー、
(7)下記の工程(a)、(b)および(c)を含む癌疾患の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と前記(5)または(6)に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来の蛋白質またはその部分ペプチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌疾患の罹患を判断する工程、
(8)工程(c)における癌疾患の罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として行われるものである前記(7)に記載の癌疾患の検出方法、
(9)下記の工程(a)、(b)および(c)を含む、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞の、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現量を減少させる被験物質を選択する工程、
(10)下記の工程(a)、(b)および(c)を含むASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの発現量を低下させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかを発現可能な細胞または該細胞から調製した細胞画分とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞または細胞画分におけるASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞もしくは細胞画分における上記既タンパク質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現量を低下させる被験物質を選択する工程、
(11)下記の工程(a)、(b)および(c)を含む、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの活性(機能)を阻害する活性を有する物質をスクリーニングする方法:
(a)被験物質をASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかに接触させる工程、(b)上記(a)の工程に起因して生じるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの活性(機能)を測定し、該活性(機能)を、被験物質を接触させない場合の既タンパク質の活性(機能)と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの活性(機能)の低下をもたらす被験物質を選択する工程、
(12)次の工程(a)、(b)及び(c)を含むTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体のkinase活性を抑制する物質をスクリーニングする方法:
(a)被験物質の存在下で、TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体、基質及びATPを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程、
(13)基質がmyeline basic proteinまたはpoly(tyr−Glu)peptideである、TTKのkinase活性を抑制する物質をスクリーニングする前記(12)記載の方法、
(14)基質がhistone H3あるいはこれに由来するペプチドである、STK12のkinase活性を抑制する物質をスクリーニングする前記(12)記載の方法、
(15)基質がmyeline basic proteinである、MELKのkinase活性を抑制する物質をスクリーニングする前記(12)記載の方法、
(16)基質がMCMである、Cdc7/ASK複合体のkinase活性を抑制する物質をスクリーニングする前記(12)記載の方法、
(17)CKS1の活性がE3/CKS1複合体による基質のユビキチン化活性である、前記(11)記載のスクリーニング方法、
(18)次の工程(a)、(b)及び(c)を含むGPR87の活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質の存在下でGPR87およびGTPを接触させる工程、
(b)上記反応の結果生じるGTP結合量を測定し、当該結合量を、被験物質非存在下で上記(a)の反応を行って生じるGTP結合量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、GTP結合量の減少をもたらす被験物質を選択する工程、
(19)次の工程(a)、(b)及び(c)を含むGPR87の活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)GPR87と被験物質を接触させる工程、
(b)上記の反応の結果生じるGPCRを介した生理活性を測定し、当該生理活性を、被験物質非存在下でのGPCRを介した生理活性と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、GPCRを介した生理活性を低下させる被験物質を選択する工程、
(20)癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、前記(9)乃至(19)のいずれかに記載のスクリーニング方法、
(21)ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子のいずれかの発現を抑制する物質を有効成分とする癌疾患の予防、改善または治療剤、
(22)ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子のいずれかの発現を抑制する物質が、前記(9)記載のスクリーニング法により得られるものである、癌疾患の予防、改善または治療剤、
(23)ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの発現量、機能または活性を抑制する物質が、前記(9)乃至(19)のいずれかに記載のスクリーニング法により得られるものである、前記(22)記載の癌疾患の予防、改善または治療剤、
(24)ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、
(25)配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:34または配列番号:36に記載のポリヌクレオチド配列を含有する、前記(24)記載のアンチセンスポリヌクレオチド、
(26)ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかを有効成分として含有する細胞傷害性T細胞(以下、CTL)の誘導剤、
(27)ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチド、
(28)HLA抗原がHLA−A24である、前記(27)記載のペプチド、
(29)配列番号:37〜配列番号:225のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有する、前記(28)記載のペプチド、
(30)配列番号:39、75、95、131、157、161、165、192、194、195、210および222〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有する、前記(29)記載のペプチド、
(31)配列番号:37〜配列番号:225のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換したアミノ酸配列を含有するペプチド、
(32)配列番号:39、75、95、131、157、161、165、192、194、195、210および222〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換したアミノ酸配列を含有する、前記(31)記載のペプチド、
(33)前記(27)〜(32)のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤、
(34)配列番号:13〜18いずれかに記載のアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸を含有してなる、CTLの誘導剤、
(35)前記(27)〜(32)のいずれかに記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する核酸、
(36)前記(35)記載の核酸を含有してなるCTLの誘導剤、
(37)以下の(a)〜(d):
(a)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b)上記(a)記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸、
(c)前記(27)〜(32)のいずれかに記載のペプチド、および
(d)上記(c)記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する核酸、のいずれかと、抗原提示能を有する細胞とをイン・ビトロで接触させることを特徴とする、抗原提示細胞の製造方法、
(38)前記37記載の製造方法により製造される抗原提示細胞、
(39)以下の(a)〜(d):
(a)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b)上記(a)記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸、
(c)前記(27)〜(32)のいずれかに記載のペプチド、および
(d)上記(c)記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する核酸、のいずれかと、末梢血リンパ球とをイン・ビトロで接触させることを特徴とする、CTLの誘導方法、
(40)前記(39)記載の誘導方法により誘導されるCTL、
(41)前記(27)〜(32)のいずれかに記載のペプチドに特異的に結合する抗体。
上記のように、本発明によれば、癌疾患の疾患マーカー、該疾患の検出系、ASK遺伝子、GPR87遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子およびTTK遺伝子のいずれかの遺伝子発現を抑制する物質のスクリーニング系、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの発現、機能若しくは活性を抑制する物質のスクリーニング系、およびこれらの物質を有効成分とする癌疾患の予防、改善および治療剤が提供される。
更に、本発明によれば、ASK、GPR87、CKS1、MELK、STK12およびTTK、及びこれらに由来するペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤が提供される。
本発明は、前述するようにASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子が、癌疾患の患者組織において発現量および/あるいは発現頻度が有意に上昇し、しかも、これらの遺伝子の発現を抑制することにより癌細胞増殖が抑制されることを見出したことに基づくものである。
従って、これらの遺伝子及びその発現産物[タンパク質、(ポリ)(オリゴ)ペプチド]は癌疾患の解明、診断、予防及び治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床学上、有用な情報や手段を得ることができる。さらに、個体(生体組織)における、上記遺伝子の発現またはその発現産物の検出、または該遺伝子の変異またはその発現不全の検出は、癌疾患の解明や診断に有効に利用することができる。
また、これらの遺伝子及びその発現産物並びにそれらからの派生物(例えば、遺伝子断片、抗体など)は、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制する物質、およびASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の発現量、機能若しくは活性を抑制する物質のスクリーニングに有用であり、該スクリーニングによって得られる物質は、癌疾患の予防、改善及び治療薬として有効である。さらに、これらの遺伝子のアンチセンス核酸(アンチセンスポリヌクレオチド)及びsiRNAは、癌疾患の予防、改善及び治療薬として有用である。
更に、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87、及びこれら由来のペプチドは、CTL誘導剤として用いることができるので、癌疾患の予防、改善及び治療薬と
して有用である。
図1は、実施例8において使用したsiRNAのトランスフェクション効率を検討した結果である。各ヒト肺癌細胞株(HOP62、HOP92、PC−8、11−18)細胞の位相差顕微鏡による明視野の像(Phase−contrast)と蛍光顕微鏡による暗視野の像(Fluorescence)、及び位相差と蛍光を重ね合わせた像(Merge)をそれぞれ左より右の順に示した。
図2は、実施例14において使用した腫瘍抗原ペプチドのペプチド特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能を検討した結果である。横軸に評価した腫瘍抗原ペプチド(カッコ内はペプチド配列の1残基目のアミノ酸配列番号)を、縦軸にスポット数/2×10cellsを示す。
Peptide(+):ペプチド添加群、Peptide(−):ペプチド非添加群
図3は、図2と同様実施例14において使用した腫瘍抗原ペプチドのペプチド特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能を検討した結果である。横軸に評価した腫瘍抗原ペプチド(カッコ内はペプチド配列の1残基目のアミノ酸配列番号)を、縦軸にスポット数/2×10cellsを示す。
以下、本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC−IUB Communication on Biological Nomenclature,Eur.J.Biochem.,138:9(1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)および当該分野における慣用記号に従う。
本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖という各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
また当該「遺伝子」または「DNA」には、配列番号:1〜12のいずれかで示される特定塩基配列の「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば同族体(ホモログやスプライスバリアントなど)、変異体及び誘導体)をコードする「遺伝子」または「DNA」が包含される。かかる同族体、変異体または誘導体をコードする「遺伝子」または「DNA」としては、具体的には、後述の(1−1)項に記載のストリンジェントな条件下で、前記の配列番号:1〜12のいずれかに示される特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「遺伝子」または「DNA」を挙げることができる。
例えばヒト由来のタンパク質のホモログをコードする遺伝子としては、当該タンパク質をコードするヒト遺伝子に対応するマウスやラットなど他生物種の遺伝子が例示できる。これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877,1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E−valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他生物種遺伝子とヒト遺伝子との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、ヒト遺伝子に該当するマウスやラットなど他生物種の遺伝子を選抜することができる。なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
従って本明細書において「ASK遺伝子」または「ASKのDNA」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号1)で示されるヒトASK遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:1に記載のヒトASK遺伝子(GenBank Accession No.NM_006716)や、そのマウスホモログである配列番号:7に記載のマウスASK遺伝子(GenBank Accession No.NM_013726)などが包含される。
また本明細書において「CKS1遺伝子」または「CKS1のDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号2)で示されるヒトCKS1遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:2に記載のヒトCKS1遺伝子(GenBank Accession No.NM_001826)や、そのマウスホモログである配列番号:8に記載のマウスCKS1遺伝子(GenBank Accession No.NM_016904)などが包含される。
また本明細書において「MELK遺伝子」または「MELKのDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号3)で示されるヒトMELK遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:3に記載のヒトMELK遺伝子(GenBank Accession No.NM_014791)や、そのマウスホモログである配列番号:9に記載のマウスMELK遺伝子(GenBank Accession No.NM_010790)などが包含される。
また本明細書において「STK12遺伝子」または「STK12のDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号4)で示されるヒトSTK12遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:4に記載のヒトSTK12遺伝子(GenBank Accession No.NM_004217)や、そのマウスホモログである配列番号:10に記載のマウスSTK12遺伝子(GenBank Accession No.U69107)などが包含される。
また本明細書において「TTK遺伝子」または「TTKのDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号5)で示されるヒトTTK遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:5に記載のヒトTTK遺伝子(GenBank Accession No.NM_03318)や、そのマウスホモログである配列番号:11に記載のマウスTTK遺伝子(GenBank Accession No.M86377)などが包含される。
また本明細書において「GPR87遺伝子」または「GPR87のDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号6)で示されるヒトGPR87遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:6に記載のヒトGPR87遺伝子(GenBank Accession No.NM_023915)や、そのマウスホモログである配列番号:12に記載のマウスGPR87遺伝子(GenBank Accession No.NM_032399)などが包含される。
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNAおよびDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNAおよび合成のRNAのいずれもが含まれる。
本明細書において「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」には、配列番号:13〜24のいずれかで示される特定のアミノ酸配列の「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等であることを限度として、同族体(ホモログやスプライスバリアント)、変異体、誘導体およびアミノ酸修飾体などが包含される。ここでホモログとしては、ヒトのタンパク質に該当するマウスやラットなど他生物種のタンパク質が例示でき、これらはHomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子(ホモログ)の塩基配列から演繹的に同定することができる。また、上記変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加および挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、かかる変異体としては、変異のないタンパク質または(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。またアミノ酸修飾体には、天然に存在するアミノ酸修飾体、天然に存在しないアミノ酸修飾体が包含され、具体的にはアミノ酸のリン酸化体が挙げられる。
従って本明細書において「ASKタンパク質」または「ASK」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号13)で示されるヒトASKや、その同族体、変異体、誘導体及びアミノ酸修飾体(Mol.Cell.Biol.,20,5010−5018(2000)、J.Biol.Chem.,276,993−998(2001))などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:13に記載のヒトASK(GenBank Accession No.NP_006707)や、そのマウスホモログである配列番号:19に記載のマウスASK(GenBank Accession No.NP_038754)などが包含される。
また本明細書において「CKS1タンパク質」または「CKS1」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号14)で示されるヒトCKS1や、その同族体、変異体、誘導体及びアミノ酸修飾体(Mol.Cell.Biol.,20,5010−5018(2000)、J.Biol.Chem.,276,993−998(2001))などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:14に記載のヒトCKS1(GenBank Accession No.NP_001817)や、そのマウスホモログである配列番号:20に記載のマウスCKS1(GenBank Accession No.NP_058600)などが包含される。
また本明細書において「MELKタンパク質」または「MELK」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号15)で示されるヒトMELKや、その同族体、変異体、誘導体及びアミノ酸修飾体(Mol.Cell.Biol.,20,5010−5018(2000)、J.Biol.Chem.,276,993−998(2001))などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:l5に記載のヒトMELK(GenBank Accession No.NP_055606)や、そのマウスホモログである配列番号:21に記載のマウスMELK(GenBank Accession No.NP_034920)などが包含される。
また本明細書において「STK12タンパク質」または「STK12」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号16)で示されるヒトSTK12や、その同族体、変異体、誘導体及びアミノ酸修飾体(Mol.Cell.Biol.,20,5010−5018(2000)、J.Biol.Chem.,276,993−998(2001))などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:16に記載のヒトSTK12(GenBank Accession No.NP_004208)や、そのマウスホモログである配列番号:22に記載のマウスSTK12(GenBank Accession No.070126,AAC12683)などが包含される。
また本明細書において「TTKタンパク質」または「TTK」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号17)で示されるヒトTTKや、その同族体、変異体、誘導体及びアミノ酸修飾体(Mol.Cell.Biol.,20,5010−5018(2000)、J.Biol.Chem.,276,993−998(2001))などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:17に記載のヒトTTK(GenBank Accession No.NP_003309)や、そのマウスホモログである配列番号:23に記載のマウスTTK(GenBank Accession No.AAA37578)などが包含される。
また本明細書において「GPR87タンパク質」または「GPR87」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号18)で示されるヒトGPR87や、その同族体、変異体、誘導体及びアミノ酸修飾体(Mol.Cell.Biol.,20,5010−5018(2000)、J.Biol.Chem.,276,993−998(2001))などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:18に記載のヒトGPR87(GenBank Accession No.NP_076404)や、そのマウスホモログである配列番号:24に記載のマウスGPR87(GenBank Accession No.NP_115775)などが包含される。
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、およびFabフラグメント、Fab発現ライブラリーなどによって生成されるフラグメントのような抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
さらに本明細書において「疾患マーカー」とは、癌疾患の罹患の有無もしくは罹患の程度若しくは改善の有無や改善の程度を診断するために、また癌疾患の予防、改善または治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接または間接的に利用されるものをいう。これには、癌疾患の罹患に関連して生体内での発現が変動する遺伝子またはタンパク質を特異的に認識するか、またはこれらと結合することのできる、(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドまたは抗体が包含される。これらの(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドおよび抗体は、上記性質に基づいて、生体内、組織や細胞内などで発現した上記遺伝子およびタンパク質を検出するためのプローブとして、また(オリゴ)ヌクレオチドは生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
本明細書において「癌疾患」とは、例えば、肺腺癌、肺扁平上皮癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌および胃癌を挙げることができるがこれに限定されない。好ましくは、肺腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌、膵臓癌、より好ましくは、肺腺癌、肺扁平上皮癌などの肺癌である。
さらに本明細書において診断対象となる「生体組織」とは、癌疾患に伴い、本発明のASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子が発現上昇する組織を指す。具体的には、肺、乳、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、前立腺及び胃などを指す。
本発明は前述するように、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87をコードする遺伝子が、正常の組織における発現量に比して癌組織における発現量および/あるいは発現頻度が有意に促進されており、更に、これら遺伝子の発現を抑制することにより癌細胞株の増殖が抑制されることを見いだしたことに基づくものである。
従って、これらの遺伝子およびその発現産物〔タンパク質、(ポリ)(オリゴ)ペプチド〕は、癌疾患の解明、診断、予防および治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床上、有用な情報や手段を得ることができる。また、これらの遺伝子およびその発現産物並びにそれらからの派生物(例えばペプチド、抗体など)は、上記癌疾患の治療、並びに該治療に有効に用いられる薬剤の開発に好適に利用することができる。更に上記遺伝子の発現又はその発現産物の検出、または該遺伝子の変異又はその発現不全の検出は癌疾患の解明や診断に有効に利用することができる。
以下、これらのポリヌクレオチド、並びにこれらの発現産物やそれらの派生物について、具体的な用途を説明する。
(1)癌疾患の疾患マーカーおよびその応用
(1−1)ポリヌクレオチド
前述のようにヒト由来のASK遺伝子は公知の遺伝子であり、その取得方法についてもKumagai,H.ら、Mol.Cell.Biol.,19,5083−5095,(1999)に記載されるように公知である。
また、ヒト由来のCKS1遺伝子も公知の遺伝子であり、その取得方法についてもRichardson,H.E.ら、Genes Dev.,4,1332−1344,(1990)に記載されるように公知である。
ヒト由来のMELK遺伝子も公知の遺伝子であり、その取得方法についてもNagase,T.ら、DNA Res.,3,17−24.(1996)に記載されるように公知である。
ヒト由来のSTK12遺伝子も公知の遺伝子であり、その取得方法についてもBischoff,J.R.ら、EMBO J.,17,3052−3065.(1998)に記載されるように公知である。
ヒト由来のTTK遺伝子も公知の遺伝子であり、その取得方法についてもLindberg,R.A.ら、Oncogene,8,351−359.(1993).並びにMills,G.B.ら、J.Biol.Chem.,267,16000−16006.(1992)に記載されるように公知である。
ヒト由来のGPR87遺伝子も公知の遺伝子であり、その取得方法についてもWittenberger T.ら、J.Mol.Biol.,307(3),799−813.(2001)、並びにLee D.K.ら、Gene,275(1),83−91.(2001)に記載されるように公知である。
本発明は、前述するように、癌疾患に罹患した患者の組織においては、正常な組織に比して、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現量および/または発現頻度が特異的に増大するという知見を発端に、これら遺伝子の発現の有無や発現の程度を検出することによって、上記癌疾患の罹患の有無、罹患の程度、回復の程度などが特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。
すなわち、本発明は、被験者における上記遺伝子の発現の有無またはその程度を検出することによって、被験者について癌疾患の罹患の有無又は罹患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用なポリヌクレオチドを提供するものである。
また、上記のポリヌクレオチドは、後述の(3−1)項に記載するような癌疾患の予防、改善または治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
本発明の疾患マーカーは、前記ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチドおよび/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなることを特徴とするものである。
具体的には、本発明の疾患マーカーは、配列番号1または配列番号7に記載のASK遺伝子の塩基配列、配列番号2または配列番号8に記載のCKS1遺伝子の塩基配列、配列番号3または配列番号9に記載のMELK遺伝子の塩基配列、配列番号4または配列番号10に記載のSTK12遺伝子の塩基配列、配列番号5または配列番号11に記載のTTK遺伝子の塩基配列、または配列番号6または配列番号12に記載のGPR87遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなるものを挙げることができる。
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、上記各配列番号に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、または該塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:TおよびG:Cといった塩基対関係に基づき、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイスすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel(1987,Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology,Vol.152,Academic Press,San Diego CA)に示されるように、複合体或いはプローブと結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えば、ハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件としては「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件としては「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
また、正鎖側のポリヌクレオチドには、前記ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列、またはその部分配列を有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
上記正鎖のポリヌクレオチドおよび相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
本発明の癌疾患の疾患マーカーは、具体的にはASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。また、ASK遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチド、CKS1遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチド、MELK遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチド、STK12遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチド、TTK遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチド、またはGPR87遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列もしくはその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては、上記全長配列もしくはその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法においては、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子、GPR87遺伝子またはこれらの遺伝子に由来するポリヌクレオチドが特異的に検出できること、またRT−PCR法においては、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子、GPR87遺伝子またはこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それらに限定されず、当業者が上記検出物または生成物がこれらの遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
本発明疾患マーカーは、例えば配列番号1で示されるASK遺伝子、配列番号2で示されるCKS1遺伝子、配列番号3で示されるMELK遺伝子、配列番号4示されるSTK12遺伝子、配列番号5示されるTTK遺伝子、または配列番号6示されるGPR87遺伝子の塩基配列をもとに、例えばprimer 3(http://www.genome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には前記ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列をprimer 3またはベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマーまたはプローブの候補配列、もしくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマーまたはプローブとして使用することができる。
本発明で用いる疾患マーカーは、上述するように連続する少なくとも15塩基の長さを有するものであればよく、具体的にはマーカーの用途に応じて、その長さを適宜選択し設定することができる。
(1−2)プローブまたはプライマーとしてのポリヌクレオチド
本発明において癌疾患の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に肺、胃、乳、前立腺、肝、腎、卵巣、膵組織等におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子の少なくとも1つの発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。この場合、上記本発明の疾患マーカーは、上記各遺伝子の発現によって生じたRNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、または該RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
上記疾患マーカーを癌疾患の検出(遺伝子診断)においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp−100bp、好ましくは15bp−50bp、より好ましくは15bp−35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp−全配列の塩基数、好ましくは15bp−1kb、より好ましくは100bp−1kbの塩基長を有するものが例示できる。
本発明疾患マーカーは、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダーゼーション法などの、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができる。これによって癌疾患に関連するASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することができる。
なお、測定対象とする試料は、使用する検出法の種類に応じて適宜選択することができる。該試料は、例えば、被験者の肺組織などの一部をバイオプシなどで採取し、そこから常法に従って調製したtotal RNAであってもよいし、該RNAをもとにして調製される各種のポリヌクレオチドであってもよい。
また、生体組織におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現レベルは、DNAチップを利用して検出あるいは定量することができる。この場合、本発明疾患マーカーは当該DNAチップのプローブとして使用することができる(例えば、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A,B,C,D,Eの場合、25bpの長さのポリヌクレオチドプローブとして用いられる)。本発明の疾患マーカーをプローブとするDNAチップを、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNAまたはRNAとハイブリダイズさせることにより、本発明疾患マーカー(プローブ)と標識DNAまたはRNAとの複合体が形成される。該複合体を、該標識DNAまたはRNAの標識を指標として検出することにより、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)が評価できる。
上記DNAチップは、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子と結合し得る1種または2種以上の本発明疾患マーカーを含んでいればよい。複数の疾患マーカーを含むDNAチップの利用によれば、ひとつの生体試料について、同時に複数の遺伝子の発現の有無または発現レベルの評価が可能である。
本発明の疾患マーカーは、癌疾患の診断、検出(罹患の有無、罹患の程度の診断)に有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用した癌疾患の診断は、被験者の生体組織と正常者の生体組織におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の生体組織と正常者の生体組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が1.5倍以上、好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的には、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子は、癌疾患患者において特異的な発現量および/または発現頻度の上昇が認められるので、被験者の生体組織において発現されており、該発現量が正常者の生体組織における発現量と比べて1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上多ければ、該被験者について癌疾患の罹患が疑われる。
(1−3)抗体
本発明は、癌疾患の疾患マーカーとしてのASK遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ASK」または「ASKタンパク質」ともいう)、CKS1遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「CSK1」または「CSK1タンパク質」ともいう)、MELK遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「MELK」または「MELKタンパク質」ともいう)、STK12遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「STK12」または「STK12タンパク質」ともいう)、TTK遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「TTK」または「TTKタンパク質」ともいう)、またはGPR87遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「GPR87」または「GPR87タンパク質」ともいう)を特異的に認識することができる抗体を提供する。
当該抗体として、具体的には、配列番号13または配列番号19に記載のアミノ酸配列を有するASKタンパク質、配列番号14または配列番号20に記載のアミノ酸配列を有するCKS1タンパク質、配列番号15または配列番号21に記載のアミノ酸配列を有するMELKタンパク質、配列番号16または配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するSTK12タンパク質、配列番号17または配列番号23に記載のアミノ酸配列を有するTTKタンパク質、または配列番号18または配列番号24に記載のアミノ酸配列を有するGPR87タンパク質を特異的に認識することのできる抗体を挙げることができる。
本発明は、前述するように、癌疾患の患者のガン組織において、正常な細胞や組織に比して、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子が特異的に発現量および/または発現頻度が上昇しているという知見を発端に、これらのタンパク発現の有無や発現の程度を検出することによって上記癌疾患の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。
上記抗体は、従って、被験者における上記タンパク質の発現の有無またはその程度を検出することによって、該被験者が癌疾患に罹患しているか否か、またはその疾患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用である。
また上記抗体は、後述の(3−2)項に記載するような癌疾患の予防、改善または治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
前記のように、ヒト由来のASKは公知のタンパク質であり、その取得方法についてもKumagai,H.ら、Mol.Cell.Biol.,19,5083−5095,(1999)に記載されるように公知である。
またヒト由来のCKS1は公知のタンパク質であり、その取得方法についてもRichardson,H.E.ら、Genes Dev.,4,1332−1344,(1990)に記載されるように公知である。
ヒト由来のMELKは公知のタンパク質であり、その取得方法についてもNagase,T.ら、DNA Res.,3,17−24.(1996)に記載されるように公知である。
ヒト由来のSTK12は公知のタンパク質であり、その取得方法についてもBischoff,J.R.ら、EMBO J.,17,3052−3065.(1998)に記載されるように公知である。
ヒト由来のTTKは公知のタンパク質であり、その取得方法についてもLindberg,R.A.ら、Oncogene,8,351−359(1993).並びにMills,G.B.ら、J.Biol.Chem.,267,16000−16006(1992)に記載されるように公知である。
ヒト由来のGPR87は公知のタンパク質であり、その取得方法についてもWittenberger T.ら、J.Mol.Biol.,2001,307(3),799−813、並びにLee D.K.ら、Gene,2001,275(1):83−91に記載されるように公知である。
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよく、更には当該タンパク質を構成するアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、更に好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明抗体も、これらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.12−11.13)。具体的には、ポリクローナル抗体は、常法に従って大腸菌などで発現し精製したASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87タンパク質を用いて、あるいは常法に従って当該ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎などの非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体は、常法に従って大腸菌などで発現し精製したASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウスなどの非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.4−11.11)。
抗体の作製に免疫抗原として使用されるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87タンパク質は、本発明により提供される配列番号:1〜12のいずれかの遺伝子配列情報に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、文献記載の方法(Molecular Cloning,T.Maniatis et al.,CSH Laboratory(1983),DNA Cloning,DM.Glover,IRL PRESS(1985))などに準じて行うことができる。
具体的には、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって、本発明抗体の製造のための免疫抗原としてのタンパク質を得ることができる。また、これらのASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の部分ペプチドは、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号:13〜24)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
なお、本発明のASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87には、配列番号:13〜24のいずれかに示す各アミノ酸配列に関わるタンパク質のみならず、その相同物も包含される。該相同物としては、上記遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列において、1もしくは複数(通常数個)のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、それぞれのタンパク質の公知の機能と同等の免疫学的活性を有するタンパク質を挙げることができる。
ここで、同等の免疫学的活性を有するタンパク質としては、適当な動物あるいはその細胞において特定の免疫反応を誘発し、かつASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87に対する抗体と特異的に結合する能力を有するタンパク質を挙げることができる。
なお、タンパク質におけるアミノ酸の変異数および変異部位は、その免疫学的活性が保持される限り制限はない。免疫学的活性を消失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwaret用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られるタンパク質が、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87と同等の免疫学的活性を保持している限り、特に制限されない。この置換されるアミノ酸は、タンパク質の構造保持の観点から、アミノ酸の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、両親媒性などにおいて置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、PheおよびTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnおよびGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、AspおよびGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、ArgおよびHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
本発明の抗体は、また、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってもよい。かかる抗体誘導のために用いられるオリゴペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、各々対応する上記タンパク質と同様の免疫原特性を有するものであることが望ましい。好ましくはこの免疫原特性を有し、且つASK、CKS1、MELK、TK12、TTKまたはGPR87のアミノ酸配列において、少なくとも連続する8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるオリゴペプチドを例示することができる。
かかるオリゴペプチドに対する抗体の製造は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントが含まれる。
また、既に市販されている抗体である、抗MELK抗体(Goat anti−Human KIAA0175 KInase,Serotec Ltd.)、抗STK12抗体(Rabbit anti−Aurora−B,Zymed Laboratories Inc.)、または抗TTK抗体(Mouse anti−Mps1,Zymed Laboratories Inc.)などを、本発明抗体として用いることもできる。
本発明抗体は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記タンパク質(その相同物を含む)を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内におけるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の発現の有無およびその発現の程度を検出するためのプローブとして有用である。
具体的には、患者の生体組織(肺、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、胃など)の一部をバイオプシなどで採取し、そこから常法に従って調製した組織抽出物やタンパク質を用いて、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、本発明抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって、ASK、CKS1、MELK、TK12、TTKまたはGPR87を検出することができる。
癌疾患の診断に際しては、被験者の組織などに存在するASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれか少なくとも1つの量と、正常者の組織に存在する当該タンパク質の量と対比して、その違いを判定すればよい。この場合、タンパク質の量の違いには、タンパク質のある/なしと共に、タンパク質の量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的には、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子は癌組織において有意な発現量および/または発現頻度の上昇を示すので、被験者の組織に該遺伝子の発現産物が存在しており、該存在量が正常な組織における発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多いことが判定されれば癌疾患の罹患が疑われる。
(2)癌疾患の検出方法(診断方法)
本発明は、前述した本発明疾患マーカーを利用した癌疾患の検出方法(診断方法)を提供する。
具体的には、本発明の検出方法は、被験者の生体試料、例えば、肺、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、胃などの組織の一部を、バイオプシなどで採取し、そこに含まれる癌疾患に関連するASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子のうち少なくとも1つの発現レベル(発現量)、または該遺伝子に由来するタンパク質であるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のうち少なくとも1のタンパク質を検出、測定することにより、癌疾患の罹患の有無またはその程度を検出(診断)するものである。また、本発明の検出(診断)方法は、例えば癌疾患患者において、該疾患の改善のために治療薬などを投与した場合における、該疾患の改善の有無またはその程度を検出(診断)することもできる。
本発明の検出方法は、次の(a)、(b)および(c)の工程を含むものである:
(a)被験者の生体試料と本発明疾患マーカーを接触させる工程、
(b)生体試料中のMELK遺伝子、TTK遺伝子、STK12遺伝子、ASK遺伝子、CKS1遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベル、あるいはMELK、TTK、STK12、ASK、CKS1またはGPR87のタンパク質の量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の結果をもとに、癌疾患の罹患を判断する工程。
ここで用いられる生体試料は、被験者の生体組織(肺、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、胃など)から調製される試料を挙げることができる。具体的には、該組織から調製されるRNA含有試料、もしくはそれらから更に調製されるポリヌクレオチドを含む試料、または上記組織から調製されるタンパク質を含む試料を挙げることができる。これらのRNA、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を含む試料は、例えば被験者の生体組織の一部をバイオプシなどで採取後、常法に従って調製することができる。
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
(2−1)測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
測定対象物としてRNAを利用する場合、癌疾患の検出は、具体的に下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれらから転写された相補的ポリヌクレオチドと、前記本発明の疾患マーカー(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド)とを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌疾患の罹患を判断する工程。
測定対象物としてRNAを利用する場合、本発明検出方法(診断方法)は、該RNA中のASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、前述のポリヌクレオチドからなる本発明疾患マーカー(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチドおよび/またはその相補的なポリヌクレオチド)をプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
ノーザンブロット法を利用する場合、本発明疾患マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中の、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、まず本発明疾患マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)、蛍光物質などで標識する。次いで、得られる標識疾患マーカーを常法に従ってナイロンメンブレンなどにトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせる。その後、形成された標識疾患マーカー(DNA)とRNAとの二重鎖を、該標識疾患マーカーの標識物(RI、蛍光物質など)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士フィルム社製)、蛍光検出器などで検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System(Amersham Pharamcia Biotech社製)を用いて、該プロトコールに従って疾患マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、疾患マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を採用することもできる。
RT−PCR法を利用する場合、本発明疾患マーカーをプライマーとして用いて、RNA中の、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、まず被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製し、これを鋳型として標的のASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の疾患マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせる。その後、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する。増幅された二本鎖DNAの検出には、予めRI、蛍光物質などで標識しておいたプライマーを用いて上記PCRを行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンプレンなどにトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT−PCRR eagents(Applied Biosystems社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
DNAチップ解析を利用する場合、本発明疾患マーカーをDNAプローブ(1本鎖または2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAをハイブリダイズさせ、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明疾患マーカーから調製される標識プロープと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベルを検出、測定可能なDNAチップを用いることもできる。かかるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現レベルを検出、測定することができるDNAチップとしては、例えばAffymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A,B,C,D,Eを挙げることができる。かかるDNAチップを用いた、被験者RNA中のASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定については、実施例に詳述する。
(2−2)測定対象の生体試料としてタンパク質を用いる場合
測定対象としてタンパク質を用いる場合、本発明検出(診断)方法は、生体試料中のASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を検出し、その量(レベル)を測定することによって実施される。具体的には、下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる。
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と抗体に関する本発明の疾患マーカー(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を認識する抗体)とを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌疾患の罹患を判断する工程。
より具体的には、抗体に関する本発明の疾患マーカーとして抗体(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を認識する抗体)を用いて、ウエスタンブロット法などの公知方法で、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を検出、定量する方法を挙げることができる。
ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーである上記抗体を用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質などで標識した標識抗体(一次抗体に結合する標識抗体)を用い、得られる標識結合物の放射性同位元素、蛍光物質などに由来するシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で測定することもできる。
なお、上記において測定対象とするASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の機能又は活性は既に知られており、該タンパク質の量と機能/活性とは一定の相関関係を有している。従って、上記タンパク質の量の測定に代えて、該タンパク質の機能又は活性の測定を行うことによっても、本発明の癌疾患の検出(診断)を実施することができる。すなわち、本発明は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の機能又は活性を指標として、これを公知の方法(具体的には後述の(3−3)項を参照)に従って測定、評価することからなる、癌疾患の検出(診断)方法をも包含する。
(2−3)癌疾患の診断
癌疾患の診断は、被験者の生体組織(肺、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、胃など)におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベル、もしくはASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87タンパク質の量、機能もしくは活性(以下これらをあわせて「タンパク質レベル」ということがある)を、対応する正常な組織における当該遺伝子発現レベルまたは当該タンパク質レベルと比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
この場合、正常な組織などから採取、調製した生体試料(RNAまたはタンパク質)が必要であるが、これは癌疾患に罹患していない人の組織あるいは癌疾患に罹患している人の非癌部正常組織などをバイオプシなどで採取したり、死後に本人の同意に基づいて採取された組織から得ることができる。なお、ここで「癌疾患に罹患していない人」とは、少なくとも癌疾患の自覚症状がなく、好ましくは他の検査方法、例えばX線検査などによる検査の結果、癌疾患でないと診断された人をいう。なお、当該「癌疾患に罹患していない人」を、以下、本明細書では単に正常者という場合もある。
被験者の生体組織と正常な生体組織(癌疾患に罹患していない人の生体組織あるいは癌疾患に罹患している人の非癌部正常組織)との遺伝子発現レベルまたはタンパク質レベルの比較は、被験者の生体試料と正常者の生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。また、並行して行わなくても、複数(少なくとも2、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な生体組織を用いて均一な測定条件で測定して得られたASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベル、もしくはASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87タンパク質レベルの平均値または統計的中間値を、正常者の遺伝子発現レベルもしくはタンパク質の量として比較に用いることができる。
被験者が、癌疾患であるかどうかの判断は、該被験者の組織におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベル、またはその発現産物であるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87のタンパク質レベルが、正常者のそれらと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上多いことを指標として行うことができる。被験者の遺伝子発現レベルまたはタンパク質レベルが正常者のそれらのレベルに比べて多ければ、該被験者は癌疾患であると判断できるか、該疾患の罹患が疑われる。
より具体的には、被験者の肺、腎臓、肝臓、卵巣または胃の組織において、上記遺伝子のうちMELK遺伝子の遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量が、正常な対応する組織に比べて多い場合、癌疾患が疑われる。TTK遺伝子の遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量が、被験者の肺、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臟または胃の組織において、正常な対応する組織に比べて多い場合は癌疾患が疑われる。STK12遺伝子の遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量が、被験者の肺、肝臓、卵巣または胃の組織において、正常な対応する組織に比べて多い場合は癌疾患が疑われる。ASK遺伝子の遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量が、被験者の肺、直腸の組織において、正常な対応する組織に比べて多い場合は癌疾患が疑われる。CKS1遺伝子の遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量が、被験者の肺、卵巣の組織において、正常な対応する組織に比べて多い場合は癌疾患が疑われる。GPR87遺伝子の遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量が、被験者の肺、卵巣、膵臓の組織において、正常な対応する組織に比べて多い場合は癌疾患が疑われる。
(3)候補薬のスクリーニング方法
(3−1)遺伝子発現レベルを指標とするスクリーニング方法
本発明は、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現を抑制する物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む:
(a)被験物質とASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、内在性および外来性を問わず、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかを発現可能な細胞を挙げることができる。ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現は、公知のノーザンブロット法やRT−PCR法にてこれらの遺伝子発現を検出することにより、容易に確認することができる。当該細胞としては、例えば、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかが発現し得る肺、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓または胃の組織から取得される細胞、またはこれらの組織に由来する細胞等を挙げることができる。具体的には、ヒト肺癌細胞株であるHOP62細胞(Natinal Cancer Institute)、HOP92細胞(Natinal Cancer Institute)、PC−8細胞および11−18細胞(東北大学加齢医学研究所細胞株:Cat.No.TKG0177)などを挙げることができる。
なお、本発明スクリーニング法に用いられる細胞には、細胞の集合体である組織も含まれる。
本発明のスクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子又はGPR87遺伝子のアンチセンスポリヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞および/または組織と接触させることにより行われる。被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物、およびこれらの混合物などが挙げられるが、これに制限されない。
また、本発明スクリーニングに際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかを発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
実施例に示すように、癌疾患に罹患した患者の癌組織では、対応する正常な組織に比して、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子の発現レベルおよび/または発現頻度の上昇(遺伝子発現の誘導・増大)が認められる。また、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子の発現を抑制することにより癌細胞株の増殖が抑制される。これらの知見から、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子の発現レベルの上昇は癌疾患と因果関係があると考えられる。そのため、本発明スクリーニング方法には、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベルを指標として、その発現を抑制する物質(発現レベルを正常レベルに戻す物質)を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、癌疾患の予防、改善乃至治療薬の有効成分となる候補物質を提供することができる。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現を抑制する物質を探索することによって、癌疾患の予防薬、改善薬又は治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
候補物質の選別は、具体的には、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかが発現している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における上記各遺伝子の発現レベルが、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなることを持って、行うことができる。
より具体的には、例えば、ヒト肺癌細胞株であるHOP62細胞、HOP92細胞、PC−8細胞または11−18細胞を用いて癌疾患の予防薬、改善薬又は治療薬の有効成分となる候補物質をスクリーニングするには、被験物質を加え、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベルの減少を指標として候補物質を選別することができる。
このような本発明のスクリーニング方法における遺伝子の発現レベルの検出および定量は、前述した細胞から調製したRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドと、本発明疾患マーカーとを用いて、前記(2−1)項に記述したように、ノーザンブロット法、RT−PCR法など公知の方法、DNAチップなどを利用する方法などに従って実施できる。指標とする遺伝子発現レベルの低下(抑制・減少)の程度は、被験物質(候補物質)を添加した細胞におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現が、被験物質(候補物質)を添加しない対照細胞での発現量と比較して、10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の低下(抑制・減少)を例示することができる。
またASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベルの検出および定量は、当該遺伝子の発現を制御する遺伝子領域(発現制御領域)に、例えばルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来のタンパク質の活性を測定することによっても実施できる。本発明のASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現抑制物質のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含されるものである。この意味において、請求項9、請求項20および請求項21に記載の「ASK遺伝子」、「CKS1遺伝子」、「MELK遺伝子」、「STK12遺伝子」、「TTK遺伝子」及び「GPR87遺伝子」の概念には、該遺伝子の発現制御領域とマーカー遺伝子との融合遺伝子が含まれる。
上記マーカー遺伝子としては、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が好ましい。具体的には、上記ルシフェラーゼ遺伝子、分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、エクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子を例示できる。
また、ここでASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子又はGPR87遺伝子の発現制御領域は、例えば(i)5’−RACE法(例えば、5’ full Race Core Kit(宝酒造社製)等を用いて実施される)、オリゴキャップ法、S1プライマーマッピング等の通常の方法により、5’末端を決定するステップ;(ii)Genome Walker Kit(クローンテック社製)等を用いて5’−上流領域を取得し、得られた上流領域について、プロモーター活性を測定するステップ;を含む手法等により同定することができる。なお、ASK遺伝子の発現調節に関してはYamada M.ら、J.Biol.Chem.,277(31),27668−27681.(2002)などに記載されている。また融合遺伝子の作成、およびマーカー遺伝子由来の活性測定は、公知の方法で行うことができる。
本発明スクリーニング方法により選択される物質は、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現抑制剤として位置づけることができる。これらの物質は、生体内においてASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの発現を抑制・減少することによって、癌疾患を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となる。
(3−2)タンパク質の発現量を指標とするスクリーニング方法
本発明は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現量を抑制する物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明スクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む:
(a)被験物質とASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現量を抑制する被験物質を選択する工程。
本発明スクリーニングに用いられる細胞は、内在性および外来性を問わず、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかを発現し、発現産物としてのASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかを有する細胞を挙げることができる。ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現は、遺伝子産物であるタンパク質を公知のウエスタン法にて検出することにより、容易に確認することができる。該細胞としては、具体的には、前記(3−1)項に記載した肺癌細胞株であるHOP62細胞、HOP92細胞、PC−8細胞または11−18細胞などが挙げられる。また当該細胞には、細胞に由来する各種の画分を意味し、これには、例えば、細胞膜画分、細胞質画分、細胞核画分などが含まれる。
実施例に示すように、癌疾患に罹患した患者の癌組織では、正常な組織に比して、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現及び/または発現頻度の上昇が観察される。また、癌細胞株においてASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制すると癌細胞株増殖抑制が認められる。これらの知見から、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK又はGPR87の発現量は、癌疾患と因果関係があると考えられる。よって本発明スクリーニング方法には、このASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかのタンパク発現レベルを指標として、該タンパク質の発現量を低下させる物質(発現レベルを正常に戻す物質)を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、癌疾患の緩和/抑制作用を有する(癌疾患に対して、改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかのタンパク発現量を低下させる物質を探索することによって、癌疾患の予防薬、改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
候補物質の選別は、具体的には、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかを発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞におけるASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかのタンパク量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して低くなることを指標として行うことができる。
より具体的には、例えば、ヒト肺癌細胞株であるHOP62細胞、HOP92細胞、PC−8細胞または11−18細胞を用いて候補物質をスクリーニングするには、被験物質を加え、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及び/又はGPR87のタンパク産生量(レベル)を比較し、その産生量(レベル)の減少を指標として候補物質を選別することができる。
本発明のスクリーニング方法にかかるASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの産生量は、前述したように、例えば、本発明疾患マーカーとして抗体(例えばヒトASKタンパク質又はそのホモログ、ヒトCKS1タンパク質又はそのホモログ、ヒトMELKタンパク質又はそのホモログ、ヒトSTK12タンパク質又はそのホモログ、ヒトTTKタンパク質又はそのホモログあるいはヒトGPR87タンパク質又はそのホモログを認識する抗体)を用いたウエスタンブロット法などの公知方法に従って定量できる。ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質などで標識した一次抗体に結合する抗体を用いて標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System(Amersham Pharmacia Biotech社製)を利用して、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で測定することもできる。
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子又はGPR87遺伝子のアンチセンスポリヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞または細胞画分と接触させることにより行われる。被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
(3−3)タンパク質の活性(機能)を阻害する物質のスクリーニング方法
本発明は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の活性(機能)を抑制する物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質をASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87に接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の活性(機能)を測定し、該活性(機能)を被験物質を接触させない場合のASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の活性(機能)と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の活性(機能)の低下をもたらす被験物質を選択する工程。
本発明のスクリーニング方法においては、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の公知の機能・活性に基づく如何なる機能・活性測定方法をも利用することができる。すなわち、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の公知の機能・活性測定系に被験物質を添加し、当該ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の公知の機能・活性を抑制・阻害する被験物質を、癌(悪性腫瘍)に対して予防、改善/治療効果を有する候補物質として選択するスクリーニング方法であれば、本発明のスクリーニング方法の範疇に含まれる。
前記本発明のスクリーニングは、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させることにより行うことができる。ここでASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を含む水溶液としては、例えばASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を含む通常の水溶液の他、これらのタンパク質を含む細胞溶解液、細胞破砕液、核抽出液あるいは細胞の培養上清などを例示することができる。
また、本発明のスクリーニング方法に用いられる細胞としては、内在性及び外来性を問わず、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を発現し得る細胞を挙げることができる。該細胞としては、具体的には、前記(3−1)項に示されるような、本発明遺伝子を発現するヒト及びその他の動物由来の癌組織初代培養細胞若しくは株化細胞などを用いることができる。また、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換細胞も用いることができる。該形質転換に用いられる宿主細胞としては、例えばCOS、CHO、Sf9などの周知の細胞が挙げられる。また細胞画分とは、上記細胞に由来する各種の画分を意味し、これには、例えば細胞膜画分、細胞質画分、細胞核画分などが含まれる。
前記スクリーニングにおいて用いられるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87は、いずれも公知のタンパク質であり、前述したように、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号:1〜12)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換細胞の培養、および必要に応じて培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning,T.Maniatis et al.,CSH Laboratory(1983),DNA Cloning,DM.Glover,IRL PRESS(1985))などに準じて行うことができる。
実施例に示すように、癌(悪性腫瘍)に罹患した患者の癌組織では、正常な対応する組織に比して、特異的にASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現上昇および/または発現頻度上昇が認められる。またASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制することにより癌細胞株増殖が抑制される。これらの知見から、これらの遺伝子の発現産物(タンパク質)の機能(活性)亢進は、癌(悪性腫瘍)細胞増殖と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、これらASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の機能(活性)を指標として、該タンパク質の機能(活性)を抑制する物質を探索する方法が包含される。本発明スクリーニング方法によれば、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の機能または活性を抑制する物質を探索でき、かくして癌(悪性腫瘍)細胞増殖の緩和/抑制作用を有する(癌に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質が提供される。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の機能または活性を抑制する物質を探索することによって、癌(悪性腫瘍)の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸、ペプチド、蛋白質(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)を上記水溶液、細胞または細胞画分と接触させることにより行われる。被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
以下、本発明の各タンパク質の機能または活性に基づくスクリーニング方法について、具体的に例示する。
(3−3−1)TTK、STK12、MELKおよびASKの機能(活性)に基づくスクリーニング方法
TTK、STK12及びMELKはいずれもkinaseファミリーに属することが知られている(Winey,M.ら、Oncogene,21,6161−6169.(1991),Bischoff,J.R.ら、Trends Cell Biol.,9,454−459.(1999),Heyer,B.S.ら、Mol.Reprod.Dev.,47,148−156.(1997).)。従って、これらTTK、STK12またはMELKの公知の機能または活性の低下をもたらす被験物質(候補物質)のスクリーニングは、TTK、STK12またはMELKのkinase活性により生じた基質のリン酸化量を指標にして行うことができる。また、ASKにおいても、Cdc7/ASK複合体がkinase活性を示すため、Cdc7/ASK複合体のkinase活性を指標としてスクリーニングをすることができる。候補物質は、例えば、被験物質(候補物質)の存在下でTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体に、基質とATPとを反応させて生じた基質のリン酸化量が、被験物質(候補物質)の非存在下で反応させて生じた基質のリン酸化量に比して減少する(低下する)場合に、選択することができる。
TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体のkinase活性に基づく本発明のスクリーニング方法としては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体、基質及びATPを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程。
ここで用いられるTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体としては、(i)TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体の精製物(単離物)、(ii)TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体を含有する細胞あるいは該細胞画分、を例示することができる。(ii)のTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体を含有する細胞としては、例えば、TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体を天然に発現している細胞、あるいはTTK遺伝子、STK12遺伝子、MELK遺伝子またはCdc7/ASK複合体遺伝子を細胞に導入して作製した形質転換細胞などを挙げることができるが、TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体が基質特異的な明確なkinase活性を有さない場合には、精製物(単離物)を用いるのが望ましい。
前記形質転換細胞は、Molecular Cloning 2nd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に従い、当業者にとって公知の方法で調製することができる。例えば、TTK遺伝子、STK12遺伝子、MELKまたはCdc7/ASK複合体遺伝子をpcDNA3.1誘導体(インビトロジェン社)、FLAG expression vector(シグマアルドリッチ社)、pGEX vector(アマシャムバイオサイエンス社)などの公知のTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体のみを発現可能なベクターあるいは、精製物(単離物)精製用のタグとの融合蛋白を発現可能な発現ベクターに挿入する。その後、適当な宿主に導入し、培養することにより、導入したTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体のDNAに対応するタンパク質を発現させた形質転換細胞を作製することができる。宿主としては、例えば、一般的に広く普及している、CHO細胞、C127細胞、BHK21細胞、COS細胞などを挙げることができるが、これらに限定されず、酵母、細菌、昆虫細胞などを用いるてもよい。またタグとしては、例えば、Mycタグ、Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグなどの従来公知のタグを挙げることができる。
TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体のcDNAを有する発現ベクターの宿主細胞への導入方法としては、公知の発現ベクターの宿主細胞への導入方法であれば、どのような方法でもよく、例えばリン酸カルシウム法(J.Virol.,52,456−467(1973))、LT−1(Panvera社製)を用いる方法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin;インビトロジェン社製)を用いる方法などが挙げられる。
前記TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体を天然に発現する細胞、あるいはTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体を発現する形質転換細胞は、そのままスクリーニングに用いることができるが、これらの細胞から単離、精製されたTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体の精製物(単離物)をスクリーニングに用いることもできる。TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体の精製物(単離物)を得るためには、公知の一般的な方法でTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体を単離、精製すればよい。例えば、細胞に溶解液を添加して細胞を可溶化後、ホモジナイズし、遠心分離することによりkinaseを含有する可溶化画分(上清)を得る。この得られた可溶化画分を、前記kinase特異的抗体あるいは融合蛋白のタグ部分を特異的に認識する抗体を結合させたカラム、ビーズ等により常法で単離、精製することができる。
本発明スクリーニングで用いられる基質としては、公知の酵素特異的基質、MBP(myelin basic protein)、またはペプチド等を挙げることができる。例えば、TTKであればmyeline basic protein、STK12であればhiston H3あるいはこれに由来するペプチド、MELKであればmyelin basic protein、Cdc7/ASK複合体であればMCM等を挙げることができる。または前記TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体と同様の手法で調製された形質転換細胞から、常法により組換えタンパクを回収することにより得ることもできる。
これら基質は、未標識で用いても良いし、任意の標識物質で標識されたものを用いることもできる。
基質を未標識で用いる場合には、トレーサーとしてγ32P−ATPあるいはγ33P−ATPを用いることもできる。ここで標識物質として、放射性同位体(32P、33P等)、蛍光物質(Chromagen社NorthernLight(登録商標)、StarBright(登録商標)、Green Fluorophore Protein Labeling Kit等)およびビオチン(Pierce社EZ−Link Biotinylation Kits等)などを例示することができる。
TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体のkinase活性の測定は、TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体を含有する水溶液(通常緩衝液が用いられる)に、10−3〜10−10Mの適当な濃度に調製した被験化合物溶液(通常溶媒には水もしくは緩衝液が用いられるが、溶解度に応じてエタノールやDMSOを添加することもできる)を加えた後、基質(特異的基質蛋白質あるいはペプチド)、0.1mMγ32P−ATP、0.1mM ATP、10mM Mg(C、8mM Mops,pH7.0、0.2mM EDTAを加え、反応(通常、30℃で10分〜1時間)させる。その後、上清をphosphocellulose paperにスポットし、50mMリン酸で数回洗浄後乾燥させ、放射活性を測定することにより、リン酸化された基質量を計測することができる。
上記の数値を、被験化合物の代わりに溶媒をブランクとして用いて実施した場合の値(対照リン酸化量)と比較することにより、被験化合物が、前記kinaseのkinase活性を阻害するか否かを評価することができる。すなわち候補物質のスクリーニングは、被験物質存在下でのリン酸化基質量が、被験物質非存在下でのリン酸化基質量に比して、減少するか否かを指標にして行うことができる。
阻害率(%)については、例えば、以下の式:
{1−(被験物質を添加した場合の本発明タンパク質による基質のリン酸化量)/(被験物質非添加時における本発明タンパク質による基質のリン酸化量)}X100
で算出することによって求めることができる。
以下に、更に具体的なTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体のkinase活性に基づく本発明のスクリーニング方法を例示する。
TTKの有するkinase活性に基づく本発明のスクリーニングとしては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、TTKを発現する細胞又は該細胞から精製したTTK蛋白、放射線標識したATPおよび基質を接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程。
ここでTTKの基質としてはmyeline basic proteinまたはpoly(tyr−Glu)peptideなどを挙げることができる。
STK12の有するkinase活性に基づく本発明のスクリーニングとしては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、STK12を発現する細胞又は該細胞から精製したSTK12蛋白、放射線標識したATPおよび基質を接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程。
ここでSTK12の基質としてはhistone H3あるいはこれに由来するペプチドなどを挙げることができる。
MELKの有するkinase活性に基づく本発明のスクリーニングとしては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、MELKを発現する細胞又は該細胞から精製したMELK蛋白、放射線標識したATPおよび基質を接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程。
ここでMELKの基質としてはmyeline basic protein等を挙げることができる。
ASKの有するkinase活性に基づく本発明のスクリーニングとしては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、Cdc7/ASK複合体を発現する細胞又は該細胞から精製したCdc7/ASK複合体蛋白、放射線標識したATPおよび基質を接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で上記(a)の反応を行って生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程。
ここでCdc7/ASK複合体の基質としてはMCM等を挙げることができる。
(3−3−2)CKS1の機能(活性)に基づくスクリーニング
CKS1については、E3/CKS1複合体がp27Kip1をユビキチン化する性質が知れられている。そのため、CKS1の公知の機能(活性)の低下をもたらす被験物質(候補物質)のスクリーニングは、E3/CKS1複合体が基質p27Kip1をユビキチン化する性質を利用して行うことができる。
従って、本発明のスクリーニングは、E3/CKS1複合体の基質p27Kip1に対するユビキチン化活性を被験物質(候補物質)が阻害(抑制)するか否かを測定することによって行うことができ、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、E3/CKS1複合体を発現する細胞から精製したE3/CKS1複合体蛋白と放射線標識した基質p27Kip1及び、その他のユビキチン化に必要な分子とを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるユビキチン化基質p27Kip1量を測定し、当該ユビキチン化基質量を、被験物質非存在下で上記(a)の反応を行って生じるユビキチン化基質量と比較する工程、
(c)上記(b)の結果に基づいて、対照ユビキチン化基質量に比してユビキチン化基質量を低下させる被験物質を選択する工程。
E3/CKS1複合体による基質p27Kip1のユビキチン化活性の測定は、例えば、Sitry,D.ら、J.Biol.Chem.,277,42233−42240,2002に記載の方法を参考にして行うことができる。
本発明スクリーニングで用いるE3/CKS1複合体各分子は、精製物(単離物)であることが望ましい。当該E3/CKS1複合体を天然に発現している細胞、あるいは当該E3/CKS1複合体をコードする遺伝子を細胞に導入して作製した形質転換細胞から前述の公知の方法で精製することができる。
前記形質転換細胞は、Molecular Cloning 2nd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に従い、当業者にとって公知の方法で調製することができる。例えば、前記E3/CKS1複合体の各因子のcDNAをpcDNA3.1誘導体(インビトロジェン社)、FLAG expression vector(シグマアルドリッチ社)、pGEX vector(アマシャムバイオサイエンス社)などの公知の前記E3/CKS1複合体各因子蛋白のみを発現可能なベクターあるいは、精製物(単離物)精製用のタグとの融合蛋白を発現可能な発現ベクターに挿入する。その後、適当な宿主に導入し、培養することにより、導入した受容体のDNAに対応するタンパク質を発現させた形質転換細胞を作製することができる。宿主としては、一般的に広く普及している、CHO細胞、C127細胞、BHK21細胞、COS細胞などを用いることができるが、これに限定されることなく、酵母、細菌、昆虫細胞などを用いることもできる。またタグとしては、例えばMycタグ、Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグなどの従来公知のタグを挙げることができる。
E3/CKS1複合体各因子タンパク質のcDNAを有する発現ベクターの宿主細胞への導入方法としては、公知の発現ベクターの宿主細胞への導入方法であれば、どのような方法でもよく、例えばリン酸カルシウム法(J.Virol.,52,456−467(1973))、LT−1(Panvera社製)を用いる方法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin;インビトロジェン社製)を用いる方法などが挙げられる。
前記E3/CKS1複合体各因子を天然に発現する細胞、またはE3/CKS1複合体各因子を発現する形質転換細胞よりE3/CKS1複合体の精製物(単離物)を得るには、前述のように公知の常法で精製することができる。
本発明スクリーニングで用いられる基質も、前記E3/CKS1複合体と同様の手法で調製された形質転換細胞から、常法により組換えタンパクを回収することにより得ることができる。これら基質は、任意の標識物質で標識されたものを用いることができる。標識物質としては、放射性同位体(35S等)、蛍光物質(Chromagen社NorthernLight(登録商標)、StarBright(登録商標)、Green Fluorophore Protein Labeling Kit等)などを例示することができる。
(3−3−3)GPR87の機能(活性)に基くスクリーニング方法
本発明タンパク質のうち、GPR87はGPCR(G蛋白共役型受容体;G−protein coupled receptor)であることが知られているが(Wittenberger T.ら、J.Mol.Biol.,2001,307(3):799−813、Lee D.K.ら、Gene,2001,275(1):83−91)、現在そのリガンドは不明である。
そのため、本発明タンパク質GPR87の機能または活性の低下をもたらす被験物質(候補物質)のスクリーニング方法としては、例えば、具体的にはGPR87とGTPとの結合活性に基づくスクリーニング、又はGPR87のGPCRとしての生理活性に基づくスクリーニングを挙げることができる。
GPR87とGTPとの結合活性に基づくスクリーニングは、GPR87がGDP存在下でGTPアナログであるGTPγSと結合する性質を利用して行うことが出来る。すなわち本発明のスクリーニングは、GPR87とGTPγSとの結合(より具体的には、GPR87とGタンパク質との複合体とGTPγSとの結合)を被験物質が阻害(抑制)するか否かを測定することによって行うことができ、例えば次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)GPR87、被験物質およびGTPγSを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるGTPγS結合量を測定し、当該結合量を、被験物質非存在下でGPR87、PGTPγSを接触させることによって得られるGTPγS結合量と比較する工程、及び
(c)上記(b)の結果に基づいて、対照結合量に比してGTPγS結合量を低下させる被験物質を選択する工程。
本発明タンパク質GPR87のリガンドが不明であるが、GPR87およびGタンパク質の融合タンパク質を発現させた形質転換細胞、GPCRにmutaionを入れた形質転換細胞、あるいはGPR87を過剰発現させた形質転換細胞等を用いることにより、リガンド非存在下でスクリーニングを実施することができる。具体的には、Methods in Enzymology.343:260−73,2002,J Biol Chem,276:35883−90,2001に記載された方法に従って実施することができる。ここで用いられるGタンパク質は、通常Gタンパク質のαサブユニットであり、4種類のクラス(αS、αi/0、αq、α12)が挙げられる。具体的なGタンパク質としては、GqファミリーのGα16、GiファミリーのGαi2、GSファミリーのGαS2が挙げられる。すなわち、それぞれのGタンパク質とGPR87との融合タンパク質を発現させ、細胞内cAMPを上昇させる活性等のGPCRの活性化に伴う生理活性を測定することによって、最もスクリーニングに適したGタンパク質を選択することができる。
すなわち、当業者に公知の方法を用いて、前記GPCRの発現ベクターを作製し、CHO−K1細胞・HEK293細胞等に過剰発現させた形質転換細胞を準備する。ここで、必要に応じて、Gタンパク質の発現ベクターを共発現させることもできる。次に、前記細胞から遠心分離等の操作により、調製した細胞膜画分を、適当な緩衝液などの溶媒中で、被験物質とともに混合し、一定時間(例えば、30分〜2時間)インキュベートする。更に、[35S]−GTPγSを混合し、一定時間(例えば、30分〜2時間)インキュベート後に、グラスフィルター上で緩衝液で洗浄することにより結合反応を終了させた後、フィルター上の放射活性を測定することにより、前記GPCRとGタンパク質との複合体に結合した[35S]−GTPγS量を算出することができる。候補物質のスクリーニングは、被験物質存在下での[35S]−GTPγS結合量が、被験物質非存在下での[35S]−GTPγS結合量に比して、減少するか否かを指標にして行うことができる。
なお、GPR87のGPCRとしての生理活性に基づくスクリーニングとしては、GPR87およびGタンパク質の融合タンパク質を発現させた形質転換細胞、GPCRにmutaionをいれた形質転換細胞、あるいは過剰発現させた形質転換細胞等を用いることにより、リガンド非存在下でスクリーニングを実施することができる。
ここで用いられるGタンパク質は、通常Gタンパク質のαサブユニットであり、4種類のクラス(αS、αi/0、αq、α12)が挙げられる。具体的なGタンパク質としては、GqファミリーのGα16、GiファミリーのGαi2、GSファミリーのGαS2が挙げられる。すなわち、それぞれのGタンパク質とGPR87との融合タンパク質を発現させ、細胞内cAMPを上昇させる活性等のGPCRの活性化に伴う生理活性を測定することによって、最もスクリーニングに適したGタンパク質を選択することができる。
例えばGPR87のGPCRとしての生理活性に基づくスクリーニングとしては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)GPR87と被験物質とを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるGPCRを介した生理活性を測定し、当該生理活性を、被験物質非存在下のGPCRを介した生理活性と比較する工程、
(c)上記(b)の結果に基づいて、対照生理活性に比して生理活性を低下させる被験物質を選択する工程。
なお、GPR87はGPCRであるため、GPCRを介した生理活性である、例えばアラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内カルシウムイオン濃度、細胞内cAMP濃度、細胞内cGMP濃度、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化またはc−fos活性化などを指標としてスクリーニングを実施することができる。
該生理活性は、公知の方法、または市販の測定用キットを用いて測定することができる。すなわち、GPR87を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。新鮮な培地、あるいは細胞毒性を示さない適当なバッファーに交換し、被験化合物を添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出、あるいは上清液を回収して生成した産物をそれぞれ該当する方法に従って定量する。生理活性の指標とする物質(例えばアラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって測定不能な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を併用することもできる。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の産生量を増大させて、感度良く測定することもできる。
具体的な測定手順としては、Fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて、細胞内カルシウム濃度の変動を検出することなどが挙げられる。GPR87が、Gq蛋白ではなくGs蛋白もしくはGi蛋白と共役して存在する場合でも、そのシグナルをGqタイプのシグナルに変換し、細胞内カルシウムイオン量を測定することにより、スクリーニングを行うことができる。具体的には、該スクリーニング方法は、以下の1)〜3)の工程からなるものである。
1)GPR87遺伝子の発現ベクターと、Gq蛋白、もしくはGqs5蛋白(Gqs5とは、C末端に、Gs蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白を意味する。)、もしくはGqi5蛋白(Gqi5とは、C末端に、Gi蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白を意味する。)の発現ベクターを作製する。ここで、細胞株としては、CHO−K1細胞等を用いることができ、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine(Invitrogen社)等を用いて共導入することができる。
2)次に該細胞を、probenecid(色素を細胞内に保持するために、multiple drug−resistance pumpの阻害剤として用いる。)、およびFluo−3 AM(Molecular Probe社)等のカルシウムイオンによって蛍光活性を示す色素を含むF12培養培地中で、CO2インキュベーターにて一定時間(例えば30分〜2時間)培養する。
3)被験物質をprobenecidを含むHBSS等の培養培地に溶解した溶液を、添加し、2分後までFLIPRにて計測する。検出は、488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したFluo−3の蛍光を500−560nmの波長でとらえることによって行う。
候補物質の選択は、被験物質の存在下におけるカルシウムイオン量が、被験物質非存在下におけるカルシウムイオン量に比して減少するか否かを指標にして行うことができる。
また、GPR87にリガンドが結合して生じるシグナル伝達により活性化されるcAMPのcAMP応答性エレメント(CRE)の下流にルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、成長ホルモン、GFPなどのレポーター遺伝子を連結し、レポータージーンアッセイでスクリーニングを行うこともできる。該スクリーニング方法は、以下の1)〜3)の工程からなるものである。
1)GPR87遺伝子(GPR87およびGタンパク質の融合遺伝子、GPCRにmutaionをいれた遺伝子等)の発現ベクターと、Gタンパク(Gs、Gi)の発現ベクター、およびcAMP応答性エレメント(CRE)の下流にルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、成長ホルモン、GFPなどのレポーター遺伝子を連結した遺伝子を作製する。ここで、細胞株としては、CHO−K1細胞等を用いることができ、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine(Invitrogen社)等を用いて共導入することができる。また、前記Gタンパクを発現している細胞を用いる場合は、前記GPCRの遺伝子発現ベクターおよびレポーターベクターのみを導入する。
2)次に該細胞を、適当な培地中で、CO2インキュベーターにて一定時間(例えば4〜8時間)培養する。
3)培地交換後、被験物質を適当な培養培地に溶解した溶液を添加し、一定時間(4時間〜24時間)後、公知の常法にてレポーター活性を測定する。例えばルシフェラーゼの場合は、細胞溶解液で細胞を溶かし、その一部分を用いてルシフェラーゼ基質溶液(プロメガ社Luciferase assay system等)と反応させた際の発光をルミノメーターで測定する。
候補物質の選択は、被験物質の存在下におけるレポーター活性が、被験物質非存在下におけるレポーター活性に比して減少するか否かを指標にして行うことができる。
上記(3−l)乃至(3−3−3)に記載する本発明スクリーニング方法によって選別された候補物質は、さらに癌疾患モデル動物を用いた薬効試験、安全性試験、癌疾患患者への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的な癌疾患改善または治療薬を取得することができる。このようにして選別された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
なお、上記(3−1)乃至(3−3−3)に記載する本発明スクリーニング方法は、癌疾患の改善又は治療薬の候補物質を選別するのみならず、癌疾患の改善又は治療薬(候補薬)が、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制するか否か、あるいはASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の発現若しくは機能・活性を抑制するか否かを評価、確認するためにも用いることができる。すなわち、本発明のスクリーニング方法の範疇には、候補物質の探索のみならず、このような評価あるいは確認を目的とするものも含まれる。
(4)本発明のアンチセンスポリヌクレオチド
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するものであり、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスポリヌクレオチドであってもよく、アンチセンスRNA、アンチセンスDNAなどが含まれる。
ここで、実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。特に、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドが好適である。
具体的には、配列番号:1〜12のいずれかに記載の塩基配列に相補的な、もしくは実質的に相補的な配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチドなどが挙げられる。
アンチセンスポリヌクレオチドは通常、10〜1000個程度、好ましくは15〜500個程度、更に好ましくは16〜30個程度の塩基から構成される。ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンスDNAを構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換されていてもよい。これらのアンチセンスポリヌクレオチドは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
かかるアンチセンスポリヌクレオチドは、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいは該RNAとの相互作用を介してASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を調節・制御することができる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、生体内および生体外で本発明のタンパク質遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。タンパク質遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどは、好ましい対象領域として選択しうるが、タンパク質遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関係については、目的核酸が対象領域とハイブリダイズすることができる場合は、その目的核酸は、当該対象領域のポリヌクレオチドに対して「アンチセンス」であるということができる。
アンチセンスポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、RNA、DNAまたは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては、核酸の硫黄誘導体、チオホスフェート誘導体、ポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものなどが挙げられる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、例えば、以下のように設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンスポリヌクレオチドをより安定なものにする、アンチセンスポリヌクレオチドの細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、また、もし毒性があるような場合はアンチセンスポリヌクレオチドの毒性をより小さなものにする。このような修飾は、例えばPharm Tech Japan,8巻,247頁または395頁,1992年、Antisense Research and Applications,CRC Press,1993年などで数多く報告されている。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適合した、付加された形態で供与されてもよい。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。アンチセンスポリヌクレオチドの阻害活性は、本発明のスクリーニング方法を用いて調べることができる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、前述のように2本鎖であってもよく、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87をコードするRNAに結合し、該RNAを破壊またはその機能を抑制するものであればよい。すなわち、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87をコードするRNAの一部とそれに相補的なRNAを含有する2本鎖RNA等も本発明のアンチセンスポリヌクレオチドに含まれる。該2本鎖RNAとしては、例えば、配列番号25と配列番号26、配列番号27と配列番号28、配列番号29と配列番号30、配列番号31と配列番号32、あるいは配列番号33と配列番号34からなる2本鎖RNAを挙げることができる。
(5)癌疾患の改善・治療剤
本発明は、癌疾患の改善および治療剤を提供するものである。
本発明は、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子、GPR87遺伝子、およびこれらの遺伝子にコードされるタンパク質が、癌疾患と関連しているという新たな知見から、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制する物質、あるいはASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の発現若しくは機能(活性)を抑制する物質が、上記疾患の改善又は治療に有効であるという考えに基づくものである。すなわち、本発明の癌疾患の改善・治療剤はASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制する物質、あるいはASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87のタンパク質発現若しくは機能(活性)を抑制する物質を有効成分とするものである。
当該有効成分となるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現抑制物質、あるいはASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の発現若しくは機能(活性)阻害物質は、上記の本発明スクリーニング方法を利用して選別されたもののみならず、この選別された物質に関する情報に基づいて常法に従って化学・生化学的手法により、もしくは工業的に製造されたものであってもよい。
当該有効成分は、そのままもしくは自体公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)、慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)などに応じて経口投与または非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できない。通常、1日投与用量として、数mg−2g程度、好ましくは数十mg程度を、1日1回投与することもでき、また数回に分けて投与することができる。
また、上記有効成分物質がDNAによりコードされるものである場合は、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。
更に、上記有効成分物質が本発明のアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、そのままもしくは遺伝子治療用ベクターにこれを組込むことにより、遺伝子治療を行うこともできる。これらの場合も、遺伝子治療用組成物の投与量、投与方法は患者の体重、年齢、症状などにより変動し、当業者であれば適宜選択することが可能である。
上記アンチセンスポリヌクレオチドを利用する遺伝子治療につき詳述すれば、該遺伝子治療は、通常のこの種の遺伝子治療と同様にして、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体を直接患者の体内に投与することにより目的遺伝子の発現を制御する方法、もしくはアンチセンスRNAを患者の標的細胞に導入することにより該細胞による目的遺伝子の発現を制御する方法により実施できる。
アンチセンスポリヌクレオチドまたはその化学的修飾体は、細胞内でセンス鎖mRNAに結合して、目的遺伝子の発現、即ちASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の発現を制御することができ、かくしてASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の機能(活性)を制御することができる。
アンチセンスポリヌクレオチドまたはその化学的修飾体を直接生体内に投与する方法において、用いられるアンチセンスポリヌクレオチドまたはその化学修飾体は、好ましくは10〜1000塩基、さらに好ましくは15〜500塩基、最も好ましくは16〜30塩基の長さを有するものとすればよい。その投与に当たり、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体は、通常慣用される安定化剤、緩衝液、溶媒などを用いて製剤化され得る。
アンチセンスRNAを患者の標的細胞に導入する方法において、用いられるアンチセンスRNAは、好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、さらに好ましくは16塩基以上の長さを有するものとすればよい。また、この方法は、生体内の細胞にアンチセンス遺伝子を導入するin vivo法および一旦体外に取り出した細胞にアンチセンス遺伝子を導入し、該細胞を体内に戻すex vivo法を包含する(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、月刊薬事,36(1),23−48(1994)、実験医学増刊,12(15),全頁(1994)など参照)。この内ではin vivo法が好ましく、これには、ウイルス的導入法(組換えウイルスを用いる方法)と非ウイルス的導入法がある(前記各文献参照)。
上記組換えウイルスを用いる方法としては、例えばレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルスなどのウイルスゲノムに本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを組込んで生体内に導入する方法が挙げられる。この中では、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスなどを用いる方法が特に好ましい。非ウイルス的導入法としては、リポソーム法、リポフェクチン法などが挙げられ、特にリポソーム法が好ましい。他の非ウイルス的導入法としては、例えばマイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法なども挙げられる。
遺伝子治療用製剤組成物は、上述したアンチセンスポリヌクレオチドまたはその化学修飾体、これらを含む組換えウイルスおよびこれらウイルスが導入された感染細胞などを有効成分とするものである。該組成物の患者への投与形態、投与経路などは、治療目的とする疾患、症状などに応じて適宜決定できる。例えば注射剤などの適当な投与形態で、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することができ、また患者の疾患対象部位に直接投与、導入することもできる。in vivo法を採用する場合、遺伝子治療用組成物は、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを含む注射剤などの投与形態の他に、例えば本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターをリポソームまたは膜融合リポソームに包埋した形態(センダイウイルス(HVJ)−リポソームなど)とすることができる。これらのリポソーム製剤形態には、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤などが含まれる。また、遺伝子治療用組成物は、上記本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを含有するベクターを導入されたウイルスで感染された細胞培養液の形態とすることもできる。これら各種形態の製剤中の有効成分の投与量は、治療目的である疾患の程度、患者の年齢、体重などにより適宜調節することができる。通常、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87遺伝子に対するアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、患者成人1人当たり約0.0001−100mg、好ましくは約0.001−10mgが数日ないし数カ月に1回投与される量とすればよい。アンチセンスポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの場合は、レトロウイルス力価として、1日患者体重1kg当たり約1×10pfu−1×1015pfuとなる量範囲から選ぶことができる。アンチセンスポリヌクレオチドを導入した細胞の場合は、1×10細胞/body−1×1015細胞/body程度を投与すればよい。
さらに、本発明は、(i)本発明のタンパク質をコードするRNAの一部とそれに相補的なRNAを含有する二重鎖RNA、(ii)前記二重鎖RNAを含有してなる医薬、(iii)本発明のタンパク質をコードするRNAの一部を含有するリボザイム、(iv)前記リボザイムを含有してなる医薬、(v)前記リボザイムをコードする遺伝子(DNA)を含有する発現ベクターなども提供する。上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様に、二重鎖RNA、リボザイムなども、本発明のDNAから転写されるRNAを破壊またはその機能を抑制することができる。本発明のタンパク質AまたはそれをコードするDNAの機能を抑制することができる二重鎖RNA、リボザイムなどは、例えば、癌疾患(例えば肺癌など)などの予防・治療剤などとして使用することができる。
二重鎖RNAは、公知の方法(例、Nature,411巻,494頁,2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。リボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine,7巻,221頁,2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、公知のリボザイムの配列の一部を本発明のタンパク質をコードするRNAの一部に置換することによって製造することができる。本発明のタンパク質をコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得るコンセンサス配列NUX(式中、Nはすべての塩基を、XはG以外の塩基を示す)の近傍の配列などが挙げられる。上記の二重鎖RNAまたはリボザイムを上記予防・治療剤として使用する場合、アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。また、前記(v)の発現ベクターは、公知の遺伝子治療法などと同様に用い、上記予防・治療剤として使用する。
(6)本発明の腫瘍抗原タンパク質
本発明は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87(以下、本発明の腫瘍抗原タンパク質と称する場合がある)を有効成分として含有する細胞傷害性T細胞(以下、CTL)の誘導剤を提供する。具体的には、配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するCTLの誘導剤を提供する。本発明のCTLの誘導剤の有効成分である腫瘍抗原タンパク質は、天然物(例えば肺癌細胞株)に由来するタンパク質であってもよく、また組換えタンパク質であっても良い。
前記において「配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質(配列番号:l3〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質)」とは、具体的には、配列番号:l3〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、または配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有し、そのN末端側及び/又はC末端側に他のアミノ酸配列の付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質などが挙げられる。
また前記において「配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質」とは、具体的には以下の(a)〜(c)に挙げるタンパク質が挙げられる:
(a)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質、
(b)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質、
(c)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質。
好ましくは、配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。当該配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなるタンパク質としては、以下の(a’)〜(c’)に挙げるタンパク質が挙げられる:
(a’)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質、
(b’)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質、
(c’)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質。
前記(a)における「配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質」とは、人為的に作製したいわゆる改変タンパク質や、生体内に存在するアレル変異体等のタンパク質を意味する。
ここでタンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、本発明タンパク質の活性が保持される限り制限はない。このように活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個欠失、置換及び/又は付加されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内である。また置換されるアミノ酸は、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
前記(b)における「配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質」とは、例えば配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質が挙げられる。具体的には、配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列の部分配列からなるタンパク質などが挙げられる。
ここで「配列同一性」とは、2つのタンパク質問の、配列の同一性及び相同性をいう。当該「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のタンパク質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673−4680(1994))を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX−MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
前記(c)における「配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、例えば配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約40%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列同一性を有する塩基配列を含有するポリヌクレオチドが挙げられる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えばMolecular Cloning 2nd Edt.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に記載の方法に従って行うことができる。また市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
ここで「ストリンジェントな条件」とは、前述の(1)項に記載の条件である。
本発明の腫瘍抗原タンパク質は、配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同質の活性を有する。ここで実質的に同質の活性とは、本発明の腫瘍抗原タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される、すなわち当該細胞がCTLに反応性を示す、換言すれば本発明の腫瘍抗原タンパク質若しくは該タンパク質に由来する抗原ペプチドがCTLを活性化する若しくはCTLを誘導するという性質を示す。
前記において細胞とは、HLA抗原を発現する細胞であることが好ましい。従って前記実質的に同質の活性とは、より具体的には、例えばHLA−A24等のHLA抗原を発現する細胞において本発明の腫瘍抗原タンパク質を発現させることにより、本発明タンパク質由来の抗原ペプチドとHLA抗原との複合体が細胞表面に提示され、その結果、当該細胞がCTLに認識される、すなわちCTLが活性化される(CTLが誘導される)という性質を指す。
このような本発明タンパク質の性質は、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法(例えば51Crリリースアッセイ(J.Immunol.,159:4753,1997)、LDHリリースアッセイ(LDH Cytotoxicity Detection Kit(タカラバイオ)、サイトカイン量の測定等)により容易に測定することができる。以下に具体的なアッセイ法を例示する。
まず、293−EBNA細胞(Invitrogen社)等の宿主細胞に対し、本発明タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターと、HLA抗原をコードするDNAを含有する発現ベクターとをトランスフェクトする。ここで用いるHLA抗原をコードするDNAとしては、例えばHLA−A24抗原をコードするDNA挙げられる。HLA−A24抗原をコードするDNAとしてはHLA−A2402のcDNA(Cancer Res.,55:4248−4252(1995)、Genbank Accession No.M64740)が挙げられる。
前記トランスフェクトは、例えばリポフェクトアミン試薬(GIBCO BRL社製)を用いたリポフェクチン法などにより行うことができる。その後、用いたHLA抗原に拘束性のCTLを加えて作用させ、該CTLが反応(活性化)して産生する種々のサイトカイン、例えばIFN−γの量を、例えばELISA法などで測定することにより調べることができる。ここでCTLとしては、ヒトの末梢血リンパ球を配列番号:13〜18のいずれかに記載の本発明タンパク質で刺激することにより調製されたCTLや、Int.J.Cancer,39,390−396,1987,N.Eng.J.Med,333,1038−1044,1995等に記載の方法により樹立したCTLを用いることができる。
また本発明の腫瘍抗原タンパク質は、例えばヒトモデル動物を用いたアッセイ(WO 02/47474号公報、Int J.Cancer:100,565−570(2002))に供することにより、in vivoでのCTL誘導活性を調べることができる。
本発明の腫瘍抗原タンパク質は、天然物(例えば骨肉種細胞株、腎癌細胞株など)から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、また後述する本発明の腫瘍抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸を含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。
(7)本発明のペプチド
本発明は、前記本発明の腫瘍抗原タンパク質の部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識される腫瘍抗原ペプチド(以下、本発明のペプチドと称する場合がある)を有効成分として含有するCTLの誘導剤を提供する。具体的には、本発明のCTLの誘導剤の有効成分であるペプチドは、本発明の腫瘍抗原タンパク質のアミノ酸配列の一部よりなるペプチドであって、かつ、該ペプチドとHLA抗原との結合複合体がCTLにより認識されるようなペプチドであれば、本発明の腫瘍抗原タンパク質のアミノ酸配列中の如何なる位置に存する如何なる長さのペプチドであっても良い。
このような本発明のペプチドは、本発明の腫瘍抗原タンパク質の一部よりなる候補ペプチドを合成し、該候補ペプチドとHLA抗原との複合体がCTLにより認識されるか否か、すなわち候補ペプチドが腫瘍抗原ペプチドとしての活性を有するか否かをアッセイすることにより、同定することができる。
ここで、ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該公知方法としては文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。
次に、本発明の腫瘍抗原ペプチドの同定方法につき、以下に記述する。
HLA−A1,−A0201,−A0204,−A0205,−A0206,−A0207,−A11,−A24,−A31,−A6801,−B7,−B8,−B2705,−B37,−Cw0401,−Cw0602などのHLAの型については、該HLAに結合して提示される抗原ペプチドの配列の規則性(モチーフ)が判明している(例えばImmunogenetics,41:p178,1995などを参照のこと)。例えばHLA−A24のモチーフとしては、8〜11アミノ酸よりなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンであり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンとなることが知られている(J.Immunol.,152,p3913,1994、Immunogenetics,41:p178,1995、J.Immunol.,155:p4307,1994)。またHLA−A2のモチーフについては、以下の表1に示したモチーフが知られている(Immunogenetics,41,p178,1995、J.Immunol.,155:p4749,1995)。
Figure 0004721903
さらに近年、HLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列を、インターネット上、NIHのBIMASのソフトを使用することにより検索することができる(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)。
ペプチドの長さとしては、各種HLA分子に結合している抗原ペプチドの解析により(Immunogenetics,41:178,1995)、通常8〜14アミノ酸程度であることが明らかにされている(ただしHLA−DR、−DP、−DQについては、14アミノ酸以上の長さの抗原ペプチドも認められる)。
これらのモチーフに関わるペプチド部分を本発明の腫瘍抗原タンパク質のアミノ酸配列中から選び出すのは容易である。例えば、前記BIMASソフトでの検索により、HLA抗原に結合可能と予想される配列を容易に選び出すことができる。選び出された候補ペプチドを前述の方法にて合成し、該候補ペプチドがHLA抗原と結合してCTLにより認識されるか否か、すなわち候補ペプチドが腫瘍抗原ペプチドとしての活性を有するか否かを測定することにより、本発明のペプチドを同定することができる。
本発明の腫瘍抗原ペプチドの具体的な同定法としては、例えばJ.Immunol.,154,p2257,1995に記載の方法が挙げられる。すなわち、候補ペプチドを提示すると考えられるタイプのHLA抗原が陽性のヒトから末梢血リンパ球を単離し、in vitroで該候補ペプチドを添加して刺激した場合に、該候補ペプチドをパルスしたHLA抗原陽性細胞を特異的に認識するCTLが誘導された場合は、該候補ペプチドが腫瘍抗原ペプチドに成り得ることが示される。ここでCTLの誘導の有無は、例えば、抗原ペプチド提示細胞に反応してCTLが産生する種々のサイトカイン(例えばIFN−γ)の量を、例えばELISA法、ELISPOT法などによって測定することにより、調べることができる。また51Crで標識した抗原ペプチド提示細胞に対するCTLの傷害性を測定する方法(51Crリリースアッセイ、Int.J.Cancer,58:p317,1994)によっても調べることができる。
さらに、候補ペプチドを提示すると考えられるタイプのHLA抗原をコードするcDNAを発現する発現プラスミドを、例えば293−EBNA細胞(Invitrogen社)に導入した細胞に対して候補ペプチドをパルスし、この細胞に対して、前記候補ペプチドを提示すると考えられるタイプのHLA抗原に拘束性のCTLを反応させ、該CTLが産生する種々のサイトカイン(例えばIFN−γ)の量を測定することによっても、調べることができる(J.Exp.Med.,187:277,1998)。
ここでHLA抗原としては、HLA−A24抗原が挙げられる。HLA−A24拘束性の腫瘍抗原ペプチドを選択する場合には、前記HLA抗原をコードするcDNAとしてはHLA−A2402のcDNA(Cancer Res.,55:4248−4252(1995)、Genbank Accession No.M64740)を用いることができる。
また前記CTLとしては、ヒトの末梢血リンパ球のペプチド刺激により調製される場合の他、Int.J.Cancer,39,390−396,1987,N.Eng.J.Med,333,1038−1044,1995等に記載の方法により樹立したCTLを用いることができる。
また本発明のペプチドは、例えばヒトモデル動物を用いたアッセイ(WO 02/47474号公報、Int J.Cancer:100,565−570(2002))に供することにより、in vivoでの活性を調べることができる。
以上のような本発明のペプチドの具体例としては、配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる本発明腫瘍抗原タンパク質の部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。また、本発明のペプチドが結合するHLA抗原の観点からは、HLA−A24抗原に結合する本発明のペプチドを挙げることができる。
より具体的には、例えばHLA−A24結合性の腫瘍抗原ペプチドとしては、以下の表2(ASKの部分ペプチド)、表3(CKS1の部分ペプチド)、表4(MELKの部分ペプチド)、表5(STK12の部分ペプチド)、表6(TTKの部分ペプチド)および表7(GPR87の部分ペプチド)に記載のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号:37〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチド)であって、HLA−A24抗原に結合してCTLに認識されるペプチドが挙げられる。
Figure 0004721903
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本発明においては、前記の如き配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなるペプチドのみならず、配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する本発明タンパク質の一部からなるペプチドも、HLA抗原と結合してCTLにより認識されるという性質を有する限り、本発明のペプチドの範疇に含まれる。すなわち、本発明タンパク質のアミノ酸配列、より具体的には配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなる本発明のペプチドのアミノ酸配列に対して、1又はそれ以上のアミノ酸残基の改変を施した改変ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるという腫瘍抗原ペプチドとしての活性を有するものも、本発明のペプチドの範疇に含まれる。
ここで、アミノ酸残基の「改変」とは、アミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は付加(ペプチドのN末端、C末端へのアミノ酸の付加も含む)を意味し、好ましくはアミノ酸残基の置換が挙げられる。アミノ酸残基の置換に係る改変の場合、置換されるアミノ酸残基の数および位置は、腫瘍抗原ペプチドとしての活性が維持される限り、任意であるが、前記したように通常、腫瘍抗原ペプチドの長さが8〜14アミノ酸程度であることから、1個から数個の範囲が好ましい。
本発明の改変ペプチドの長さとしては、8〜14アミノ酸程度が好ましい(ただしHLA−DR、−DP、−DQについては、14アミノ酸以上の長さの場合もある。)
先に記載したように、HLA−A1,−A0201,−A0204,−A0205,−A0206,−A0207,−A11,−A24,−A31,−A6801,−B7,−B8,−B2705,−B37,−Cw0401,−Cw0602などのHLAの型については、該HLAに結合して提示される抗原ペプチドの配列の規則性(モチーフ)が判明している。また前記したように、HLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列をインターネット上検索することができる(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)。従って、該モチーフ等に基づき、前記改変ペプチドを作製することが可能である。
例えばHLA−A24に結合して提示される抗原ペプチドのモチーフとしては、前記したように、8〜11アミノ酸よりなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンであり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンであることが知られている(J.Immunol.,152:p3913,1994、Immunogenetics,41:p178,1995、J.Immunol.,155:p4307,1994)。またHLA−A2の場合は、前記の表1に記載のモチーフが知られている。またインターネット上でHLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列が示されており(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)、例えば前記モチーフ上とり得るアミノ酸に類似の性質を持つアミノ酸が許容される。従って、これらモチーフ上アミノ酸の置換が可能な位置(HLA−A24、HLA−A2においてはペプチドの第2位とC末端)にあるアミノ酸を他のアミノ酸(好ましくは前記インターネット上で結合可能と予想されているアミノ酸)に置換したアミノ酸配列を含むものであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるという活性を持つ改変ペプチドを挙げることができる。
より好ましくは、該位置において、前記モチーフ上知られたアミノ酸残基のいずれかに置換したアミノ酸配列を含有するペプチドであって、かつ前記活性を有する改変ペプチドが挙げられる。すなわち配列番号:37〜225に示されるようなHLA−A24結合性のペプチドの場合、その第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換した改変ペプチドであって、かつ前記活性を有する改変ペプチドが挙げられる。このうち第2位のアミノ酸をチロシンに置換したペプチドがより好ましい。
さらに、本発明のペプチドのN末端アミノ酸のアミノ基、またはC末端アミノ酸のカルボキシル基を修飾することも可能であり、このような修飾に係るペプチドも本発明のペプチドの範疇に含まれる。
ここでN末端アミノ酸のアミノ基の修飾基としては、例えば1〜3個の炭素数1から6のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アシル基が挙げられ、アシル基の具体例としては炭素数1から6のアルカノイル基、フェニル基で置換された炭素数1から6のアルカノイル基、炭素数5から7のシクロアルキル基で置換されたカルボニル基、炭素数1から6のアルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、フェニル基で置換されたアルコキシカルボニル基、炭素数5から7のシクロアルコキシで置換されたカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
C末端アミノ酸のカルボキシル基を修飾したペプチドとしては、例えばエステル体およびアミド体が挙げられ、エステル体の具体例としては、炭素数1から6のアルキルエステル、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキルエステル、炭素数5から7のシクロアルキルエステル等が挙げられ、アミド体の具体例としては、アミド、炭素数1から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。
(8)本発明の腫瘍抗原タンパク質またはペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびそれを含有する核酸
本発明のCTLの誘導剤に含有される核酸(以下、本発明の核酸と称する場合がある)は、前記(6)記載の本発明の腫瘍抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下、本発明のポリヌクレオチドと称する場合がある)を含有する。
本発明のポリヌクレオチドは、種々の細胞や組織、例えば骨肉種や腎癌等に由来する細胞や組織のcDNAやmRNA、cRNA、ゲノムDNA、または合成DNAのいずれであっても良い。また1本鎖、2本鎖のいずれの形態であっても良い。
本発明のポリヌクレオチドを含有する核酸は、1本鎖および2本鎖のいずれの形態もとることができる。本発明のポリヌクレオチドが2本鎖の場合、前記本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入することにより、本発明のタンパク質を発現するための組換え発現ベクターを作製することができる。すなわち本発明の核酸の範疇には、本発明の2本鎖型ポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入して作製された組換え発現ベクターも含まれる。
ここで用いる発現ベクターとしては、用いる宿主や目的等に応じて適宜選択することができ、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。
例えば、宿主が大腸菌の場合、ベクターとしては、pUC118、pUC119、pBR322、pCR3等のプラスミドベクター、λZAPII、λgt11などのファージベクターが挙げられる。宿主が酵母の場合、ベクターとしては、pYES2、pYEUra3などが挙げられる。宿主が昆虫細胞の場合には、pAcSGHisNT−Aなどが挙げられる。宿主が動物細胞の場合には、pCEP4、pKCR、pCDM8、pGL2、pcDNA3.1、pRC/RSV、pRc/CMVなどのプラスミドベクターや、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターなどのウイルスベクターが挙げられる。
前記ベクターは、発現誘導可能なプロモーター、シグナル配列をコードする遺伝子、選択用マーカー遺伝子、ターミネーターなどの因子を適宜有していても良い。
また、単離精製が容易になるように、チオレドキシン、Hisタグ、あるいはGST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)等との融合タンパク質として発現する配列が付加されていても良い。この場合、宿主細胞内で機能する適切なプロモーター(lac、tac、trc、trp、CMV、SV40初期プロモーターなど)を有するGST融合タンパクベクター(pGEX4Tなど)や、Myc、Hisなどのタグ配列を有するベクター(pcDNA3.1/Myc−Hisなど)、さらにはチオレドキシンおよびHisタグとの融合タンパク質を発現するベクター(pET32a)などを用いることができる。
前記で作製された発現ベクターで宿主を形質転換することにより、当該発現ベクターを含有する形質転換細胞を作製することができる。
ここで用いられる宿主としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。大腸菌としては、E.coli K−12系統のHB101株、C600株、JM109株、DH5α株、AD494(DE3)株などが挙げられる。また酵母としては、サッカロミセス・セルビジエなどが挙げられる。動物細胞としては、L929細胞、BALB/c3T3細胞、C127細胞、CHO細胞、COS細胞、Vero細胞、Hela細胞、293−EBNA細胞などが挙げられる。昆虫細胞としてはsf9などが挙げられる。
宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、前記宿主細胞に適合した通常の導入方法を用いれば良い。具体的にはリン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin;Gibco−BRL社)を用いる方法などが挙げられる。導入後、選択マーカーを含む通常の培地にて培養することにより、前記発現ベクターが宿主細胞中に導入された形質転換細胞を選択することができる。
以上のようにして得られた形質転換細胞を好適な条件下で培養し続けることにより、本発明のタンパク質を製造することができる。得られたタンパク質は、一般的な生化学的精製手段により、さらに単離・精製することができる。ここで精製手段としては、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。また本発明のタンパク質を、前述のチオレドキシンやHisタグ、GST等との融合タンパク質として発現させた場合は、これら融合タンパク質やタグの性質を利用した精製法により単離・精製することができる。
本発明の核酸の範疇には、前記(7)記載の本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する核酸も含まれる。
本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもRNAの形態であっても良い。これら本発明のポリヌクレオチドは、本発明のペプチドのアミノ酸配列情報およびそれによりコードされるDNAの配列情報に基づき容易に製造することができる。具体的には、通常のDNA合成やPCRによる増幅などによって、製造することができる。
本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、具体的には、前記エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する核酸は、1本鎖および2本鎖のいずれの形態もとることができる。本発明のポリヌクレオチドが2本鎖の場合、前記本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入することにより、本発明のペプチド(エピトープペプチド)を発現するための組換え発現ベクターを作製することができる。
ここで用いる発現ベクターや宿主細胞、宿主細胞の形質転換方法等については、前述の記載と同様である。
(9)本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分とするCTLの誘導剤
本発明は、本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分として含有するCTLの誘導剤を提供する。
本発明の腫瘍抗原タンパク質を含有する細胞はCTLに認識されるという特徴を有する。すなわち本発明の腫瘍抗原タンパク質はCTLの誘導剤である。誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗腫瘍作用を発揮することができる。従って本発明の腫瘍抗原タンパク質は、腫瘍の治療または予防のための医薬(癌ワクチン)の有効成分とすることができる。本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、本発明の腫瘍抗原タンパク質を腫瘍患者に投与することで、腫瘍を治療または予防し得るものである。当該タンパク質を腫瘍患者に投与すると、抗原提示細胞内に取り込まれ、その後、細胞内分解を受けて生じた腫瘍抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に提示され、この複合体に特異的なCTLが体内で効率的に増殖し、腫瘍細胞を破壊する。以上のようにして、腫瘍の治療又は予防が達成される。
本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分とするCTLの誘導剤は、配列番号:13〜18に記載のASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87陽性の如何なる腫瘍患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌などの癌(腫瘍)の予防または治療のために使用することができる。
本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、細胞性免疫が効果的に成立するように、医薬として許容されるキャリアー、例えば適当なアジュバントと混合して投与、又は併用して投与することができる。
アジュバントとしては、文献(Clin.Microbiol.Rev.,7:277−289,1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分又はその誘導体、サイトカイン、植物由来成分又はその誘導体、海洋生物由来成分又はその誘導体、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルション製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤、マイクロスフェアー製剤、マイクロカプセル製剤なども考えられる。
前記において菌体由来成分又はその誘導体とは、具体的には、例えば(i)細菌の死菌、(ii)細菌由来の細胞壁骨格(Cell Wall Skeleton,CWSと略する)、(iii)菌体由来の特定の成分又はその誘導体等に分類される。
ここで(i)細菌の死菌としては、例えば溶連菌粉末(例えばピシバニール;中外製薬株式会社)、死菌浮遊物カクテル(例えばブロンカスマ・ベルナ;三和化学研究所)、あるいはヒト型結核菌の死菌等が挙げられる。
(ii)細菌由来のCWSとしては、マイクバクテリア属由来のCWS(例えばマイコバクテリア属ウシ型結核菌であるBCG株のCWS)、ノカルディア属由来のCWS(例えばノカルディア・ノブラのCWS)、あるいはコリネバクテリア属由来のCWS等が挙げられる。
(iii)菌体由来の特定の成分又はその誘導体としては、例えば菌体由来多糖類であるヒト型結核菌由来多糖類成分(例えばアンサー;ゼリア新薬工業株式会社)や担子菌由来多糖類(例えばレンチナン;味の素、クレスチン;三共株式会社、担子菌カワラタケ)、またムラミルジペプチド(MDP)関連化合物、リポ多糖(LPS)、リピドA関連化合物(MPL)、糖脂質トレハロースジマイコレート(TDM)、細菌由来のDNA(例えばCpGオリゴヌクレオチド)、あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。
これら菌体由来成分及びその誘導体は、既に市販されているものであればそれを入手するか、又は公知文献(例えばCancer Res.,33,2187−2195(1973)、J.Natl.Cancer Inst.,48,831−835(1972)、J.Bacteriol.,94,1736−1745(1967)、Gann,69,619−626(1978)、J.Bacteriol.,92,869−879(1966)、J.Natl.Cancer Inst.,52,95−101(1974))等に基き単離又は製造することが可能である。
前記において「サイトカイン」とは、例えばIFN−α、IL−12、GM−CSF、IL−2、IFN−γ、IL−18、あるいはIL−15などが挙げられる。これらのサイトカインは、天然品であっても遺伝子組換え品であっても良い。これらのサイトカインは、既に市販されていればそれを入手して使用することができる。また遺伝子組換え品であれば、例えばGenBank、EMBL、あるいはDDBJ等のデータベースにおいて登録されている各塩基配列に基き、常法により所望の遺伝子をクローニングし、適当な発現ベクターに連結して作製された組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより、発現・生産することができる。
前記において「植物由来成分又はその誘導体」とは、例えばサポニン由来成分であるQuil A(Accurate Chemical&Scientific Corp)、QS−21(Aquila Biopharmaceuticals inc.)、あるいはグリチルリチン(SIGMA−ALDRICHなど)などが挙げられる。
前記において「海洋生物由来成分又はその誘導体」とは、例えば海綿由来の糖脂質であるα−ガラクトシルセラミドなどが挙げられる。
前記において油乳濁液(エマルション製剤)とは、例えば油中水型(w/o)エマルション製剤、水中油型(o/w)エマルション製剤、水中油中水型(w/o/w)エマルション製剤などが挙げられる。
ここで油中水型(w/o)エマルション製剤は、有効成分を水の分散相に分散させた形態をとる。水中油型(o/w)エマルション製剤は、有効成分を水の分散媒に分散させた形態をとる。また水中油中水型(w/o/w)エマルション製剤は、有効成分を最内相の水の分散相に分散させた形態をとる。このようなエマルション製剤の調製は、例えば、特開平8−985号公報、特開平9−122476号公報等を参考にして行うことができる。
前記においてリポソーム製剤とは、有効成分を脂質二重膜構造のリポソームで水相内または膜内に包み込んだ形の微粒子である。リポソームを作るための主要な脂質としては、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン等が挙げられ、これにジセチルホスフェート、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン等を加えてリポソームに荷電を与えて安定化させる。リポソームの調製方法としては、超音波法、エタノール注入法、エーテル注入法、逆相蒸発法、フレンチプレスエクストラクション法等が挙げられる。
前記においてマイクロスフェアー製剤は、均質な高分子マトリックスから構成され、該マトリックス中に有効成分が分散された形の微粒子である。マトリックスの材料としては、アルブミン、ゼラチン、キチン、キトサン、デンプン、ポリ乳酸、ポリアルキルシアノアクリレート等の生分解性高分子が挙げられる。マイクロスフェアー製剤の調製方法としては公知の方法(Eur.J.Pharm.Biopharm.50:129−146,2000、Dev.Biol.Stand.92:63−78,1998、Pharm.Biotechnol.10:1−43,1997)等に従えばよく特に限定されない。
前記においてマイクロカプセル製剤は、有効成分を芯物質として被膜物質で覆った形の微粒子である。被膜物質に用いられるコーティング材料としては、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、エチルセルロース、ゼラチン、ゼラチン・アラビアゴム、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース等の膜形成性高分子が挙げられる。マイクロカプセル製剤の調製方法は、コアセルベーション法、界面重合法等が挙げられる。
投与方法としては、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与などが挙げられる。製剤中の本発明の腫瘍抗原タンパク質の投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg〜100mg、より好ましくは0.01mg〜10mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
(10)本発明のペプチドを有効成分とするCTLの誘導剤
本発明は、本発明のペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤を提供する。
本発明のペプチドはCTL誘導活性を有するCTLの誘導剤である。誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗腫瘍作用を発揮することができる。従って本発明のペプチドは、腫瘍の治療または予防のための医薬の有効成分とすることができる。本発明のペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤を腫瘍患者に投与すると、抗原提示細胞のHLA抗原に本発明のペプチドが提示され、提示されたHLA抗原とペプチドとの結合複合体特異的CTLが増殖して腫瘍細胞を破壊することができ、従って、患者の腫瘍を治療又は予防することができる。
本発明のペプチドを有効成分とするCTLの誘導剤は、配列番号:13〜18いずれかに記載のASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87タンパク陽性の如何なる腫瘍患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌などの癌(腫瘍)の予防または治療のために使用することができる。
本発明のペプチドを有効成分とするCTLの誘導剤は、細胞性免疫が効果的に成立するように、医薬として許容されるキャリアー、例えば適当なアジュバントと混合して投与、又は併用して投与することができる。
アジュバントとしては、文献(Clin.Microbiol.Rev.,7:277−289,1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分又はその誘導体、サイトカイン、植物由来成分又はその誘導体、海洋生物由来成分又はその誘導体、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルション製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤、マイクロスフェアー製剤、マイクロカプセル製剤なども考えられる。これらアジュバントの具体例については、前記「(9)本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分とするCTLの誘導剤」の項を参照されたい。
投与方法としては、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与などが挙げられる。製剤中の本発明のペプチドの投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg〜1000mg、より好ましくは0.1mg〜10mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
(11)本発明の核酸を有効成分とするCTLの誘導剤
本発明の核酸を発現させた細胞は、CTLに認識されるという特徴を有する。すなわち本発明の核酸はCTLの誘導剤である。誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗腫瘍作用を発揮することができる。従って本発明の核酸は、腫瘍の治療または予防のための医薬の有効成分とすることができる。本発明の核酸を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、例えば、本発明の核酸を腫瘍患者に投与し発現させることで、腫瘍を治療または予防し得るものである。
例えば発現ベクターに組み込まれた本発明の核酸を以下の方法により腫瘍患者に投与すると、抗原提示細胞内で腫瘍抗原タンパク質が高発現する。その後、細胞内分解を受けて生じた腫瘍抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示されることにより、腫瘍特異的CTLが体内で効率的に増殖し、腫瘍細胞を破壊する。以上のようにして、腫瘍の治療または予防が達成される。
本発明の核酸を有効成分とするCTLの誘導剤は、配列番号:1に記載のASK遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるASK陽性の如何なる腫瘍患者、配列番号:2に記載のCKS1遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるCKS1陽性の如何なる腫瘍患者、配列番号:3に記載のMELK遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるMELK陽性の如何なる腫瘍患者、配列番号:4に記載のSTK12遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるSTK12陽性の如何なる腫瘍患者、配列番号:5に記載のTTK遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるTTK陽性の如何なる腫瘍患者、または配列番号:6に記載のGPR87遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるGPR87陽性の如何なる腫瘍患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば肺癌または腎癌などの癌(悪性腫瘍)の予防または治療のために使用することができる。
本発明の核酸を投与し細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターによる方法およびその他の方法(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、月刊薬事,36(1),23−48(1994)、実験医学増刊,12(15),(1994)、およびこれらの引用文献等)のいずれの方法も適用することができる。
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルス又はRNAウイルスに本発明のDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
本発明の核酸を実際に医薬として作用させるには、当該核酸を直接体内に導入するin vivo法、およびヒトからある種の細胞を採集し体外で核酸を該細胞に導入しその細胞を体内に戻すex vivo法がある(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、月刊薬事,36(1),23−48(1994)、実験医学増刊,12(15),(1994)、およびこれらの引用文献等)。in vivo法がより好ましい。
in vivo法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内等に投与することができる。in vivo法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には有効成分である本発明の核酸を含有する注射剤等とされ、必要に応じて、医薬上許容されるキャリアー(担体)を加えてもよい。また、本発明の核酸を含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
製剤中の本発明の核酸の含量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常、核酸中のポリヌクレオチドの含量として、0.0001mg〜100mg、好ましくは0.001mg〜10mgの本発明の核酸を、数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
また近年、複数のCTLエピトープ(腫瘍抗原ペプチド)を連結したエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいはCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが、in vivoで効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1999,162:3915−3925には、HBV由来HLA−A2拘束性抗原ペプチド6種類、HLA−A11拘束性抗原ペプチド3種類、およびヘルパーエピトープを連結したエピトープペプチドをコードするDNA(ミニジーン)が、イン・ビボでそれぞれのエピトープに対するCTLを効果的に誘導したことが記載されている。
従って、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを1種または2種以上連結させることにより、また場合によっては他のペプチドをコードするポリヌクレオチドも連結させることにより作製されたポリヌクレオチドを、適当な発現ベクターに組み込むことにより、CTLの誘導剤の有効成分とすることができる。このようなCTLの誘導剤も、前記と同様の投与方法および投与形態をとることができる。
(12)本発明の抗原提示細胞
前記した本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸は、腫瘍患者の治療において、以下のようにイン・ビトロで利用することができる。すなわち本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸のいずれかと抗原提示能を有する細胞とをイン・ビトロで接触させることにより、抗原提示細胞を作製することができる。具体的には本発明は、腫瘍患者由来の単離された抗原提示能を有する細胞と、本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸のいずれかとをイン・ビトロで接触させることにより、当該細胞の細胞表面にHLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を提示させた抗原提示細胞、およびその製造方法を提供するものである。
ここで「抗原提示能を有する細胞」とは、本発明のペプチドを提示することの可能なHLA抗原を細胞表面に発現する細胞であれば特に限定されないが、特に抗原提示能が高いとされる樹状細胞が好ましい。
また、前記抗原提示能を有する細胞から本発明の抗原提示細胞を調製するために添加される物質としては、本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸のいずれであっても良い。
本発明の抗原提示細胞は、腫瘍患者から抗原提示能を有する細胞を単離し、該細胞に本発明のタンパク質またはペプチドをイン・ビトロでパルスして、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を提示させることにより得られる(Cancer Immunol.Immunother.,46:82,1998、J.Immunol.,158,p1796,1997、Cancer Res.,59,p1184,1999)。樹状細胞を用いる場合は、例えば、腫瘍患者の末梢血からフィコール法によりリンパ球を分離し、その後非付着細胞を除き、付着細胞をGM−CSFおよびIL−4存在下で培養して樹状細胞を誘導し、当該樹状細胞を本発明のタンパク質またはペプチドと共に培養してパルスすることなどにより、本発明の抗原提示細胞を調製することができる。
また、前記抗原提示能を有する細胞に本発明の核酸を導入することにより本発明の抗原提示細胞を調製する場合は、当該核酸は、DNAの形態であっても、RNAの形態であっても良い。具体的には、DNAの場合はCancer Res.,56:p5672,1996やJ.Immunol.,161:p5607,1998などを参考にして行うことができ、またRNAの場合はJ.Exp.Med.,184:p465,1996などを参考にして行うことができる。
前記抗原提示細胞はCTLの誘導剤の有効成分とすることができる。当該抗原提示細胞を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、抗原提示細胞を安定に維持するために、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培地等を含むことが好ましい。投与方法としては、静脈内投与、皮下投与、皮内投与が挙げられる。このような抗原提示細胞を有効成分として含有してなるCTLの誘導剤を患者の体内に戻すことにより、本発明のASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87陽性の患者の体内で効率良く特異的なCTLが誘導され、腫瘍を治療することができる。
(13)本発明のCTL
本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸は、腫瘍患者の治療において、以下のようにイン・ビトロで利用することができる。すなわち本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸のいずれかと末梢血リンパ球とをイン・ビトロで接触させることにより、CTLを誘導することができる。具体的には本発明は、腫瘍患者由来の末梢血リンパ球と、本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸のいずれかとをイン・ビトロで接触させることにより誘導されたCTL、およびその誘導方法を提供するものである。
例えばメラノーマにおいては、患者本人の腫瘍内浸潤T細胞を体外で大量に培養して、これを患者に戻す養子免疫療法に治療効果が認められている(J.Natl.Cancer.Inst.,86:1159、1994)。またマウスのメラノーマにおいては、脾細胞をイン・ビトロで腫瘍抗原ペプチドTRP−2で刺激し、腫瘍抗原ペプチドに特異的なCTLを増殖させ、該CTLをメラノーマ移植マウスに投与することにより、転移抑制が認められている(J.Exp.Med.,185:453,1997)。これは、抗原提示細胞のHLA抗原と腫瘍抗原ペプチドとの複合体を特異的に認識するCTLをイン・ビトロで増殖させた結果に基づくものである。従って、本発明のタンパク質、ペプチドまたは核酸を用いて、イン・ビトロで患者末梢血リンパ球を刺激して腫瘍特異的CTLを増やした後、このCTLを患者に戻す治療法は有用であると考えられる。
当該CTLは腫瘍の治療剤または予防剤の有効成分とすることができる。該治療剤または予防剤は、CTLを安定に維持するために、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培地等を含むことが好ましい。投与方法としては、静脈内投与、皮下投与、皮内投与が挙げられる。このようなCTLを有効成分として含有してなる腫瘍の治療または予防剤を患者の体内に戻すことにより、本発明のPBF陽性の患者の体内でCTLによる腫瘍細胞の傷害作用が促進され、腫瘍細胞を破壊することにより、腫瘍を治療することができる。
(14)本発明のペプチドに対する抗体
本発明は、本発明のペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、本発明のペプチドを免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またモノクローナル抗体であっても良い。
本発明の抗体は前記のように本発明のペプチドに特異的に結合するものであれば特に制限されないが、具体的には、配列番号:37〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチドに特異的に結合する抗体を挙げることができる。
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.12〜11.13、Antibodies;A Laboratory Manual,Lane,H,D.ら編,Cold Spring Harber Laboratory Press 出版 New York 1989)。
具体的には、本発明のペプチド(例えば配列番号:37〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチド)を免疫原として用い、家兎等の非ヒト動物を免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、本発明のペプチド(例えば配列番号:37〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチド)をマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.4〜11.11)。
本発明のペプチドに対する抗体の作製は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントなどがある。
以上のように本発明のペプチドを用いて常法により適宜動物を免疫することにより、ペプチドを認識する抗体、さらにはその活性を中和する抗体が容易に作製できる。抗体の用途としては、アフィニティークロマトグラフィー、免疫学的診断等が挙げられる。免疫学的診断は、イムノブロット法、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光あるいは発光測定法等より適宜選択できる。このような免疫学的診断は、本発明のASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子が発現している癌、例えば肺癌や腎癌等の癌(悪性腫瘍)の診断において有効である。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
[実施例1]
ヒト組織サンプル及び、ヒト癌細胞株からのトータルRNAの調製
以下のヒトの主要臓器由来癌・正常組織サンプル、肺腺癌組織57サンプル、肺正常組織(肺腺癌患者由来)48サンプル、肺扁平上皮癌組織49サンプル、肺正常組織(肺扁平上皮癌患者由来)19サンプル、結腸癌組織117サンプル、結腸正常組織(結腸癌患者由来)119サンプル、直腸癌組織46サンプル、直腸正常組織(直腸癌患者由来)34サンプル、胃癌組織40サンプル、胃正常組織(胃癌患者由来)14サンプル、乳癌組織241サンプル、乳正常組織(乳癌患者由来)46サンプル、卵巣癌組織37サンプル、卵巣正常組織(卵巣癌患者由来)5サンプル、前立腺癌組織91サンプル、前立腺正常組織(前立腺癌患者由来)53サンプル、肝癌組織20サンプル、肝正常組織(肝癌患者由来)8サンプル、腎癌組織91サンプル、腎正常組織(腎癌患者由来)67サンプル、膵癌組織57サンプル、膵正常組織(膵癌患者由来)16サンプルから、それぞれ常法に従いトータルRNAを調製した。更に下記実施例 に用いる癌細胞株の遺伝子発現量解析のため、4種の肺癌細胞株、HOP92、HOP62、11−18、PC−8より上記と同様トータルRNAを調製した。
[実施例2]
DNAチップ解析
実施例1に示したサンプルより調製したtotal RNAを用いて、DNAチップ解析を行った。なお、DNAチップ解析はAffymetrix社Gene Chip Human Genome U133セットを用いて行った。具体的には、解析は、(1)total RNAからcDNAの調製、(2)該cDNAからラベル化cRNAの調製、(3)ラベル化cRNAのフラグメント化、(4)フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、(5)プローブアレイの染色、(6)プローブアレイのスキャン、及び(7)遺伝子発現解析、の手順で行った。
(1)total RNAからcDNAの調製
実施例1で得られた各total RNA 10μgとT7−(dT)24プライマー(Amersham社製)100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco−BRL社製)に含まれる5×First Strand cDNA Buffer 4μL、該キットに含まれる0.1M DTT(dithiothreitol)2μL、該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、42℃で2分間加熱した。更に、該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400のを添加し、42℃で1時間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、DEPC処理水(ナカライテスク社製)滅菌蒸留水91μL、該キットに含まれる5×Second Strand Reaction Buffor 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、該キットに含まれるE.coli DNA Ligase 1μL(10U)、該キットに含まれるE.coli DNA Polymerase I 4μL(40U)、該キットに含まれるE.coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、16℃で2時間反応させた。次いで、該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、16℃で5分間反応させた後、0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Light(エッペンドルフ社製)に移し、室温で14,000rpm、2分間遠心分離した後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに移した。得られた溶液に、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL、エタノール362.5μLを加えて混合した後、4℃で14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、作製したcDNAを含むペレットを得た。その後、該ペレットに80%エタノール0.5mLを添加し、4℃で14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨てた。再度同様の操作を行った後、該ペレットを乾燥させ、DEPC処理水12μLに溶解した。以上の操作により実施例1で調製した各トータルRNAから、各cDNAを取得した。
(2)cDNAからラベル化cRNAの調製
各cDNA榕液5μLに、DEPC処理水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10×HY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10×Biotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10×DTT 4μL、該キットに含まれる10×RNase Inhibitor Mix 4μL、該キットに含まれる20×T7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(GIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
(3)ラベル化cRNAのフラグメント化
各ラベル化cRNA 20μgを含む溶液に、5×Fragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、500mM酢酸カリウム(Sigma社製)、150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを加えた反応液40μLを、94℃で35分間加熱した後、氷中に置いた。これによって、ラベル化cRNAをフラグメント化した。
(4)フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ
各フラグメント化cRNA 40μLに、5nM Control Oligo B2(Amersham社製)4μL、100×Control cRNA Cocktail 4μL、Herring sperm DNA(Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)200μg、2×MES Hybridization Buffer(200mM MES、2M[Na],40mM EDTA、0.02% Tween20(Pierce社製)、pH6.5〜6.7)200μL、及びDEPC処理水144μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られた各ハイブリカクテルを99℃で5分間加熱し、更に45℃で5分間加熱した。加熱後、室温で14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
一方、1×MESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたHuman genome U133プローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン内で、45℃、60rpmで10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼーションバッファーを除去してプローブアレイを調製した。上記で得られたハイブリカクテル上清200μLを該プローブアレイにそれぞれ添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpmで16時間回転させ、フラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを得た。
(5)プローブアレイの染色
上記で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイそれぞれからハイブリカクテルを回収除去した後、Non−Stringent Wash Buffer(6×SSPE(20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20、0.005%Antifoam0−30(Sigma社製))で満たした。次にNon−Stringent Wash BufferおよびStringent Wash Buffer(100mM MES、0.1M NaCl、0.01%Tween20)をセットしたGeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置にフラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを装着した。その後染色プロトコールEuKGE−WS2に従って、1次染色液(10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin(SAPE)(MolecuLar Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)、2次染色液(100μg/mL Goat IgG(Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti−Streptavidinantibody(Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)により染色した。
(6)プローブアレイのスキャン、及び(7)遺伝子発現量解析
染色した各プローブアレイをHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、染色パターンを読み取った。染色パターンをもとにGeneChip Workstation System(Affymetrix社製)によってプローブアレイ上の遺伝子の発現を解析した。次に、解析プロトコールに従ってNormalizationを行ったのち、各サンプルにおける各プローブ(各遺伝子)の発現量(average difference)及び発現の有無を算出した。同一のプローブにつき、サンプルの種類ごとに遺伝子発現量の平均値を求め、さらに各サンプル種類間における発現量、発現頻度の変化率を求めた。
[実施例3]
発現変動解析
各種主要臓器(肺、結腸、直腸、胃、乳、前立腺、肝、腎、卵巣、膵)由来の正常組織に比較し、癌組織で発現量・発現頻度が増加している遺伝子を、以下のようにして選択した。
DNAチップ解析による遺伝子発現の解析結果から、各種正常組織に比べて対応する癌組織で発現量・発現頻度が増加しているプローブセットのうち、多くの癌組織特異的発現量・発現頻度の上昇の認められたプローブを選択した。次にこれら選択されたプローブの対応遺伝子を調べ、これらの遺伝子の中から、さらに薬剤ターゲットとなる機能を有する遺伝子を選別した。その結果、MELK遺伝子、TTK遺伝子、STK12遺伝子、ASK遺伝子、CKS1B遺伝子、GPR87遺伝子の計6遺伝子が選択された。
Figure 0004721903
Figure 0004721903
表8中、Human U133プローブ名はHuman Genome U133 Chipにおけるプローブ名、Accession NoはGenBankデータベースにおけるアクセッション番号を示している。また表8中、数値は各種癌の対応する正常組織に対する発現変動倍率を示し、Human Genome U133 Chipで解析した各種正常組織の遺伝子発現量を1とした場合における同組織由来の癌組織での遺伝子発現量を示した。
なお、表9の数値は、各種癌・正常組織での各遺伝子の発現頻度(%)を示している。
以上のように、選別された前記6個の遺伝子は、各種主要臓器由来正常組織と比較して、対応する癌組織で特異的に発現量及び、発現頻度が上昇する遺伝子であった。従ってこれら6遺伝子およびその発現産物(タンパク質)は、癌に関する疾患マーカーとして応用可能であると考えられた。また、これらの遺伝子またはその発現産物(タンパク質)を用いることによって、癌細胞増殖を緩和、抑制する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能であると考えられた。
更には、これら癌特異的発現遺伝子の産物は、腫瘍抗原タンパク質を有効成分とするCTLの誘導剤としても用いることが可能であると考えられた。
[実施例4]
標的遺伝子配列特異的siRNA(small interfering RNA)を用いた癌細胞増殖との関連性検討
上記同定した6種の癌特異的発現遺伝子の癌細胞増殖との関連性を直接的に解析するために各遺伝子配列特異的siRNAを設計・作製後、各遺伝子が高発現する癌細胞株に遺伝子導入することで標的遺伝子mRNAの発現を抑制し、導入後5日後の細胞増殖能への影響を検討することで、各遺伝子の癌細胞増殖との関連の有無を解析した。
[実施例5]
標的遺伝子配列特異的siRNA(small interfering RNA)の設計、及び作製
表8に示す6種の各遺伝子について、1種の特異的なsiRNA配列を設定し、sense鎖とantisense鎖により二本鎖が形成されたsiRNAをPROLIGO社より購入した。作製した各siRNAの配列を表10に示した。各siRNA名は、遺伝子の略号を用いて示した。
Figure 0004721903
[実施例6]
ヒト肺癌細胞株の培養
HOP62、HOP92、PC−8、および11−18の4種のヒト肺癌細胞株は、10% Fetal Bovine Serum(Invitrogen社)及びペニシリン・ストレプトマイシン(それぞれ50U/ml・50μg/ml;Invitrogen社)を含むRPMI 1640培地(Invitrogen社)を用いて培養した。
[実施例7]
ヒト肺癌細胞株における各遺伝子の発現変動解析
前記HOP62細胞、HOP92細胞、PC−8細胞および11−18細胞の4種のヒト肺癌細胞株について、表11で示した対応する遺伝子に関し、実施例1および実施例2で記載のDNAチップ解析による遺伝子発現の解析結果を基に、各細胞株の肺正常組織に対する発現変動倍率を解析した。Human Genome U133 Chipで解析した肺正常組織の遺伝子発現量を1とした場合における各肺癌細胞株での遺伝子発現量を表11に示した。各遺伝子について、対応する細胞株での高発現を確認した。
[実施例8]
標的遺伝子配列特異的siRNAの各種癌細胞株への遺伝子導入
トランスフェクションする前日にペニシリン・ストレプトマイシン不含の培地で24ウェルプレートの1ウェルあたり、HOP62を0.5 x 10個、HOP92を0.75 x 10個(あるいは0.5 x 10個)、PC−8を0.4 x 10個、そして11−18を1.5 x 10個の細胞数で培養した。トランスフェクションの当日にペニシリン・ストレプトマイシン不含の0.3mlの各細胞に対応する培地に交換し、GeneSilencer siRNA Transfection Reagent(Gene Therapy Systems社)を用いて、製品の説明書に従い、実施例5で示した各遺伝子特異的siRNAをトランスフェクションした。ただし、無血清培地は、OptiMEM(Invitrogen社)を使用し、1ウェルあたり20μMのsiRNAを3μl使用した。ネガティブコントロールとして、Scramble II(Dharmacon Research社)、Control(non−silencing)siRNA(Qiagen−Xeragon社)およびSilencer Negative Control #1 siRNA(Ambion社)の3種のsiRNA中の1種を各検討について使用した。
[実施例9]
トランスフェクション効率解析(蛍光顕微鏡観察法を用いて)
siRNAの各ヒト肺癌細胞株(HOP62、HOP92、PC−8、11−18)に対する遺伝子導入効率を確認する目的で、Fluorescein Labeled Luciferase GL2 Duplex(Dharmacon Research社)を各細胞株に実施例8記載と同様な条件でトランスフェクションした。トランスフェクションして24時間後に10%中性ホルマリンを用いて室温で10分間固定した。蛍光顕微鏡観察法はZeiss Axiovert 135(Zeiss社)を使用し、写真はHamamatsu Color Chilled 3CCD Camera C5810を用いて撮影した。画像処理はAdobe Photoshop 6.0(Adobe Systems社)を使用した。図1に各細胞の位相差顕微鏡による明視野の像と蛍光顕微鏡による暗視野の像、及び位相差と蛍光を重ね合わせた像をそれぞれ左より右の順に示した。いずれの細胞株においても、高い割合の細胞で蛍光が認めら、少なくとも50%以上のトランスフェクション効率が得られることが示された。
[実施例10]
癌細胞増殖測定
実施例8で示した各遺伝子特異的siRNAの各ヒト肺癌細胞株へのトランスフェクション5日後に、10%アラマーブルー(TREK Diagnostic Systems社)を含む各細胞株の対応する培地に交換し、45分−2時間、37℃でインキュベーションし、蛍光プレートリーダーFluoroskan Asent(Labsystems社)で蛍光強度を測定し、細胞増殖能を評価した。
[実施例11]
癌細胞増殖能変動解析
実施例3にて同定した各遺伝子について、その特異的siRNAを遺伝子導入した肺癌細胞株の増殖能をsiRNA未処理の細胞の増殖能を100%として計算した。表11では、各遺伝子についてsiRNAを導入した高発現する細胞株名、及びその細胞株での各遺伝子の肺正常組織に対する発現変動倍率を示した。また実施例8に示した陰性対照のsiRNAによる各癌細胞株増殖への影響を同様に発現変動倍率で示した。
Figure 0004721903
その結果、各遺伝子について、これを高発現する細胞株においてsiRNA(配列番号:25〜36)を用いてその発現を抑制してその活性を抑制すると、6種の遺伝子共に癌細胞株の増殖抑制が観察された。
これらの結果により、同定した6遺伝子またはその発現産物(タンパク質)を用いることによって、癌細胞増殖を緩和、抑制する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能であることが強く示された。
また、この同定した6種の遺伝子に対する阻害剤スクリーニングにより得られる阻害物質は、この遺伝子の発現が癌特異的発現を示すことから、癌細胞選択的な増殖阻害剤となりえる可能性が考えられた。
[実施例12]
腫瘍抗原由来ペプチドによるCTL誘導
ペプチドでCTLを誘導し、そのCTLの活性を評価する方法は、既知のヒトモデル動物を用いたアッセイ方法等に準じて行うことが出来る(WO 02/47474号公報、Int J.Cancer:100,565−570(2002))。例えば、癌抗原由来のペプチドを適当な剤形を用いて、ヒトHLAを発現したトランスジェニックマウスに投与し、約1週間後に脾臓細胞、あるいはその他のリンパ系組織を得る。得られた細胞を、投与したものと同様のペプチドでin vitroで抗原刺激を行い、更に約5日間培養する。得られた細胞をCTL画分とし、51Cr等の放射性物質、あるいはその他の非放射性物質で標識した標的細胞(投与ペプチドが結合するHLAを発現し、更に投与ペプチドをコードする癌抗原、あるいは投与ペプチドを発現する細胞、あるいはペプチドを事前に添加した細胞)と共培養し、CTLによる標的細胞の破壊を培養上清中の放射性物質、非放射性物質の量で測定、CTLの活性を評価する。
なお、CTLの活性については、CTL細胞が標的細胞と反応した結果、培養上清中に産生するIFNγをELISA法あるいはELISPOT法にて測定することで評価することも可能である。
[実施例13]
候補ペプチドの選択および合成
(1)候補ペプチドの選択
HLA分子に結合して提示される抗原ペプチドの配列には規則性(モチーフ)があり、HLA−A24の場合、8〜11アミノ酸よりなるペプチドの第2位のアミノ酸がチロシン、フェニルアラニン、メチオニン又はトリプトファンであり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン又はメチオニンであることが知られている(Immunogenetics,41:178,1995、J.Immunol.,152:3913,1994、J.Immunol.,155:4307,1994)。このようなモチーフに従い、本発明の腫瘍抗原タンパク質6種のアミノ酸配列(配列番号:13〜配列番号:18)から、HLA−A24結合モチーフを有する8〜11アミノ酸よりなるペプチド部分を選択した。これらペプチドのアミノ酸配列を、配列番号:37〜配列番号:225に示す。
(2)ペプチド合成
前記のペプチド(配列番号:37〜配列番号:225)のうち、6種の腫瘍抗原タンパクについて各1種以上のペプチド、すなわち配列番号:39、75、95、131、157、161、165、192、194、195、210、222〜225に示されるペプチドを、Fmoc法にて合成した。
ここで、配列番号:39に示されるペプチドはASK由来の腫瘍抗原ペプチド、配列番号:75に示されるペプチドはCKS1由来の腫瘍抗原ペプチド、配列番号:95,222−225に示されるペプチドはMELK由来の腫瘍抗原ペプチド、配列番号:131に示されるペプチドはSTK12由来の腫瘍抗原ペプチド、配列番号:157,161,165に示されるペプチドはTTK由来の腫瘍抗原ペプチド、配列番号:192,194,195,210に示されるペプチドはGPR87由来の腫瘍抗原ペプチドである。
[実施例14]
CTL誘導能の検討
上記ペプチドが腫瘍抗原ペプチドであるか否かの同定は、HLA−A2402/Kbトランスジェニックマウスを用いて行った。当該トランスジェニックマウスの作製およびイン・ビボ免疫原性の測定については、WO 02/47474号公報およびInt J.Cancer:100,565−570(2002)に詳細に記述されており、当該文献に記載の方法を参考に実施した。すなわち、上記ペプチドを適当な剤形を用いてHLA−A2402/Kbトランスジェニックマウスに投与し、1週間後に脾臓細胞を得た。得られた細胞を投与したものと同一のペプチドでin vitroで抗原刺激を行った。そして約16時間後に得られた細胞をCTL画分とし、IFNγを産生する細胞数をELISPOT法を用いて測定し、抗原特異的なCTL誘導活性の有無を評価した。
(1)ペプチドの薬剤調製と投与
各合成ペプチド(配列番号:39、75、95、131、157、161、165、192、194、195、210、222〜225)をそれぞれ40mg/mlにDMSOにて調整し、さらに生理食塩水で2.4mg/mlにそれぞれ希釈した。次に、ガラスシリンジを用いて、1.27倍量のフロイントの不完全アジュバント(ISA51)と混合することによりwater−in−oilエマルションを作製し、200μlの当該薬剤をHLA−A2402/Kbトランスジェニックマウスの尾底部の皮下に免疫した。
(2)脾細胞の調製
免疫7日後に脾臓を摘出し、スライドガラスのフロスト部分にて擦り破壊し、脾細胞を回収・調製した。ACKバッファー(0.15M NHCl、10mM KHCO、0.1mM EDTA,pH7.2−7.4)にて溶血処理した2×10cells/ml濃度の脾細胞を、事前に準備したELISPOTのプレートに100μl/well(2×10cells)でTriplicateで添加した。ペプチド添加群については5μg/mlのペプチド濃度となるよう投与ペプチドと同一のペプチドを添加し、未添加群には培地のみを添加し、37℃,5% COで約16時間培養した。この際の培地として、RPMI−1640培地に10%FCS、抗生剤を加えたものを用いた。
(3)IFNγ ELISPOTアッセイ
市販のMouse IFNγ ELISPOTキット(Mouse IFN gamma ELISPOT Set,Catalogue No.BD−551083,BD Pharmingen社)を用いて実施した。添付のマニュアルに従い実施し、結果のスポット数/wellはKS Elispot Reader Compact(Carl Zeiss社)を用いて測定した。ペプチド特異性を検討するため、CTL反応時にペプチドを添加した群(Peptide(+))と、ペプチド非添加群(Peptide(−))で、それぞれのIFNγ産生細胞数を評価した。
結果を図1および図2に示す。縦軸はスポット数(IFNγを産生する細胞数)/2×10cellsを示しており、横軸には用いた腫瘍抗原ペプチドを示している。なお図において腫瘍抗原ペプチドは、由来する腫瘍抗原タンパク名で記載しており、カッコ内はペプチド配列の1残基目のアミノ酸配列番号を示している。そのため、例えば、配列番号39に示されるASK由来の腫瘍抗原ペプチドであれば、ASK(228)と表示している。
図1および図2に示されるように、6種のタンパク(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK、GPR87)について各1種以上の部分ペプチド、合計15種のペプチドのいずれによってもペプチド特異的CTLが誘導されたため、これらのペプチドは腫瘍抗原ペプチドであることが明らかになった。
以上のように、6種のタンパク(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK、GPR87)は腫瘍抗原タンパクであり、これらの部分ペプチドは腫瘍抗原ペプチドであることが判明した。
本発明によって、癌疾患で発現量および/または発現頻度が特異的に増大している遺伝子(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子)が明らかとなった。かかる遺伝子は癌疾患の遺伝子診断に用いられるマーカー遺伝子(プローブ、プライマー)として有用である。
また、上記遺伝子(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子)の発現を抑制すると、癌細胞増殖が抑制されることより、これら遺伝子の発現の抑制、またはこれらの遺伝子がコードするタンパク質の発現や機能(活性)の抑制を指標とすることによって、癌疾患の治療薬となりえる候補薬をスクリーニングし選別することが可能である。
更に本発明により、タンパク質(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87)を新規腫瘍抗原と利用することができ、これら腫瘍抗原タンパク質由来の腫瘍抗原ペプチドも提供される。これらはCTLの誘導剤として癌免疫分野において利用することができる。
配列番号:25に記載の塩基配列はMELK senseである。
配列番号:26に記載の塩基配列はMELK antisenseである。
配列番号:27に記載の塩基配列はTTK senseである。
配列番号:28に記載の塩基配列はTTK antisenseである。
配列番号:29に記載の塩基配列はSTK12 senseである。
配列番号:30に記載の塩基配列はSTK12 antisenseである。
配列番号:31に記載の塩基配列はASK senseである。
配列番号:32に記載の塩基配列はASK antisenseである。
配列番号:33に記載の塩基配列はCKS1 senseである。
配列番号:34に記載の塩基配列はCKS1 antisenseである。
配列番号:35に記載の塩基配列はGPR87 senseである。
配列番号:36に記載の塩基配列はGPR87 antisenseである。

Claims (10)

  1. 配列番号:192、194、195及び210のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤。
  2. 配列番号:192、194、195及び210のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換したアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤。
  3. 以下の(a)又は):
    (a)配列番号:192、194、195及び210のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチド;
    (b)配列番号:192、194、195及び210のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換したアミノ酸配列からなるペプチド;
    と、抗原提示能を有する細胞とをイン・ビトロで接触させることを特徴とする、抗原提示細胞の製造方法。
  4. 請求項記載の製造方法により製造される抗原提示細胞。
  5. 以下の(a)又は):
    (a)配列番号:192、194、195及び210のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチド;
    (b)配列番号:192、194、195及び210のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換したアミノ酸配列からなるペプチド;
    と、末梢血リンパ球とをイン・ビトロで接触させることを特徴とする、CTLの誘導方法。
  6. 請求項記載の誘導方法により誘導されるCTL。
  7. 下記の工程(a)、(b)および(c)を含む、癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分を探索する方法:
    (a)被験物質とGPR87遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
    (b)被験物質を接触させた細胞の、GPR87遺伝子の遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるGPR87遺伝子の発現量と比較する工程、および
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、GPR87遺伝子の遺伝子発現量を減少させる被験物質を、癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分の候補物質として選択する工程。
  8. 下記の工程(a)、(b)および(c)を含む癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分を探索する方法:
    (a)被験物質とGPR87を発現可能な細胞または該細胞から調製した細胞画分とを接触させる工程、
    (b)被験物質を接触させた細胞または該細胞から調製した細胞画分におけるGPR87の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞もしくは細胞画分におけるGPR87の発現量と比較する工程、および
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、GPR87の発現量を低下させる被験物質を、癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分の候補物質として選択する工程。
  9. 次の工程(a)、(b)及び(c)を含む癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分を探索する方法:
    (a)被験物質の存在下でGPR87およびGTPを接触させる工程、
    (b)上記反応の結果生じるGTP結合量を測定し、当該結合量を、被験物質非存在下で上記(a)の反応を行って生じるGTP結合量と比較する工程、および
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、GTP結合量の減少をもたらす被験物質を、癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分の候補物質として選択する工程。
  10. 次の工程(a)、(b)及び(c)を含む癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分を探索する方法:
    (a)GPR87と被験物質を接触させる工程、
    (b)上記の反応の結果生じるGPCRを介した生理活性を測定し、当該生理活性を、被験物質非存在下でのGPCRを介した生理活性と比較する工程、および
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、GPCRを介した生理活性を低下させる被験物質を、癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分の候補物質として選択する工程。
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