JP2004248585A - 新規な癌精巣抗原ku−tes−1 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な癌抗原KU−TES−1およびその遺伝子、およびこれらの物質の癌免疫分野における利用などを提供すること。
【解決手段】ヒト由来の特定な塩基配列を含有するポリヌクレオチド、ヒト由来の特定なアミノ酸配列を含有するタンパク質、および当該ポリヌクレオチドやタンパク質を有効成分として含有する癌ワクチン等。
【選択図】 なし
【解決手段】ヒト由来の特定な塩基配列を含有するポリヌクレオチド、ヒト由来の特定なアミノ酸配列を含有するタンパク質、および当該ポリヌクレオチドやタンパク質を有効成分として含有する癌ワクチン等。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な癌精巣抗原(Cancer−Testis抗原、以下CT抗原と称する)KU−TES−1に関する。さらに詳しくは、本発明は、新規なCT抗原であるKU−TES−1およびその遺伝子の、癌免疫分野における利用などに関する。
【0002】
【従来の技術】
膵管癌は年々増加傾向にあるが、早期発見が困難である。治癒切除が施行された症例でも極めて高率に局所再発や肝転移を来し、遠隔成績は極めて不良である。早期発見と遠隔成績の向上のために、例えば術中照射、2チャンネル化学療法、膵液細胞診による上皮内微小浸潤癌の発見など精力的な診断治療技術の改良が進められているが、充分なものではない。既存の技術の更なる発展と共に、新たな治療法の開発が必要とされている。
【0003】
このような背景の中で、近年の分子生物学と免疫学の発展は、癌治療の主軸である外科療法・化学療法・放射線療法に加え新たな癌治療法としての免疫療法に科学的根拠を与えつつある。1991年、ベルギーLudwig研究所のBoonらは自己癌細胞株と癌反応性T細胞を用いたcDNA発現クローニング法によりCD8+T細胞が認識するヒトメラノーマ抗原MAGE1を単離した(非特許文献1を参照)。Boonの報告後CD8+T細胞の認識する抗原としてtyrosinase(非特許文献2を参照)、MART1/MelanA(非特許文献3を参照)、gp100(非特許文献4を参照)などの単離が行われた。しかし癌反応性T細胞や癌細胞株の確立はヒトメラノーマ以外の癌では極めて困難であり、この方法を他の癌種に適応拡大して抗原同定に至る例はごく少数であった。
【0004】
1995年、Preudschuhらは患者血清中抗体が認識する自己癌抗原を同定するautologous typing法にラムダファージcDNA発現クローニング法を導入したSEREX(serological identification of tumor antigens by cDNA expression cloning)法を施行し、患者血清中IgG抗体が認識する多数の癌抗原を単離した(参考文献5を参照)。方法論自体は自己免疫疾患の領域で自己抗原の同定に用いられていたもので決して斬新なものではない。その後様々な癌種でSEREX法が試みられ、膵管癌でもHsp105(非特許文献6および7を参照)やKU−PAN−1(赤田ら、投稿中)といった抗原が単離されている。SEREX単離抗原は、その原理からIgG抗体産生に関与するCD4+ヘルパーT細胞及びB細胞を認識させ活性化させる能力を有している。従ってヘルパーT細胞の動態はTh2細胞優位で、Th1細胞から誘導されるCD8+T細胞は逆に抑制されている可能性が示唆される。しかしCD8+T細胞の系で同定された癌抗原がSEREX法でも重複して単離されること(非特許文献8を参照)、又逆にSEREX法で単離された抗原NY−ESO−1は抗体産生とCD8+T細胞を同時に誘導し、正の相関があることが報告されている(非特許文献9を参照)。従って現在では、SEREX単離抗原は抗体産生とCD8+T細胞の両者の免疫応答を惹起する可能性があると考えられている(非特許文献10を参照)。
【0005】
これらSEREX単離抗原の中で、Cancer−Testis(CT)抗原は各種の癌組織、及び正常組織のうち精巣と一部卵巣・胎盤組織で発現が認められる抗原群である。CT抗原はSEREX法で比較的高率に検出され、正常精巣ではMHC class Iを発現しない精粗細胞・精母細胞に発現しており、癌特異的共通抗原となり免疫療法に応用できる可能性がある(非特許文献11、12、13、14および15を参照)。
【0006】
【非特許文献1】
Bruggen P. et al., Science, 254(5038):1643−1647(1991)
【非特許文献2】
Robbins P.F. et al., Cancer Res., 54(12):3124−3126(1994)
【非特許文献3】
Kawakami Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91(9):3515−3519(1994)
【非特許文献4】
Kawakami Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91(14):6458−6462(1994)
【非特許文献5】
Sahin U. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92(25):11810−11813 (1995)
【非特許文献6】
Nakatsura T. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 281(4):936−944(2001)
【非特許文献7】
Nakatsura T. et al., Eur. J. Immunol., 32(3):826−836 (2002)
【非特許文献8】
OLD L. J. et al., J. Exp. Med., 187(8):1163−1167(1998)
【非特許文献9】
Jager E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97(9):4760−4765(2000)
【非特許文献10】
Jager E. et al., J. Exp. Med., 187(2):265−270(1998)
【非特許文献11】
Tureci O. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(9):5211−5216(1998)
【非特許文献12】
Eynde B. J. et al., Curr. Opin. Immunol., 9(5):684−693(1997)
【非特許文献13】
Tureci O. et al., Int. J. Cancer, 77(1):19−23(1998)
【非特許文献14】
Zendman A. J. et al., Cancer Res., 59(24):6223−6229(1999)
【非特許文献15】
Scanlan M. J. et al., Cancer Lett., 150(2):155−164(2000)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新たな癌抗原であるKU−TES−1抗原およびその遺伝子の、癌免疫分野における利用などを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
我々は膵管癌の診断と治療に寄与する癌抗原を単離すべく、特にCT抗原の単離を目的として、正常精巣由来cDNAライブラリーと膵管癌患者血清を使用したSEREX法を施行した。
まず、精巣由来cDNAファージライブラリーを作製し、1名の膵癌患者血清を用いて約20万クローンをスクリーニングし7個の陽性クローンを得、4種類の遺伝子を同定した。RT−PCR法によりその発現を調べたところ、そのうちの1つである新規遺伝子KU−TES−1は精巣と数種類の癌細胞株・癌組織に発現が認められた。次に各種癌患者血清を用いて、KU−TES−1に対するIgG抗体の存在を調べたところ、複数の癌患者(膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌)の血清中にIgG抗体が認められた。
【0009】
以上のようにKU−TES−1はCT抗原としてのmRNA発現を示し、複数の癌患者血清中に当該KU−TES−1に対する IgG抗体が存在することから、癌抗原として少なくともCD4+T細胞に認識されることが明らかとなり、更にはCD8+T細胞にも認識されるものと考えられた。よって本発明のKU−TES−1は、新たな癌抗原として癌の診断及び治療に応用することができる。
本発明は、以上のような知見に基づき完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち本発明は、
(1) 以下の(a)、(b)、(c)、(d)または(e)のいずれかのポリヌクレオチド:
(a) 配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(b) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(c) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(d) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(e) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(2) 前記(1)記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、
(3) 前記(2)記載の発現ベクターによって形質転換された形質転換体、
(4) 前記(3)記載の形質転換体を培養し、発現される組換えタンパク質を回収することからなる、組換えタンパク質の生産方法、
(5) 前記(1)記載のポリヌクレオチドによりコードされるか、または前記(4)記載の生産方法により生産されるタンパク質、
(6) 以下の(a)、(b)または(c)のいずれかのタンパク質:
(a) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b) 前記(a)のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質、
(c) 前記(a)のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質、
(7) 前記(1)記載のポリヌクレオチド、前記(2)記載の発現ベクター、前記(3)記載の形質転換体、あるいは前記(5)または(6)記載のタンパク質を有効成分として含有する医薬、
(8) 癌ワクチンとして使用される、前記(7)記載の医薬、
(9) 前記(5)または(6)記載のタンパク質に特異的に結合する抗体、
(10) 前記(1)記載のポリヌクレオチドの塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる癌マーカー、
(11) 配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、前記(10)記載の癌マーカー、
(12) 前記(5)または(6)記載のタンパク質のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸を含有するポリペプチドからなる癌マーカー、
(13) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸を含有するポリペプチドからなる、前記(12)記載の癌マーカー、
(14) 前記(9)記載の抗体からなる癌マーカー、
(15) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体からなる、前記(14)記載の癌マーカー、
(16) 癌が膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌である、前記(10)〜(15)いずれか記載の癌マーカー、
(17) 前記(10)〜(16)いずれか記載の癌マーカーを含有してなる癌の診断薬、
(18) 前記(5)または(6)記載のタンパク質の部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチド、
(19) 前記(18)記載のペプチドを含有するペプチド、
(20) 前記(18)または(19)記載のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(21) 前記(20)記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、
(22) 前記(18)または(19)記載のペプチド、前記(20)記載のポリヌクレオチド、あるいは前記(21)記載の発現ベクターを有効成分として含有する医薬、ならびに
(23) 癌ワクチンとして使用される、前記(22)記載の医薬、に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
1)本発明のポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドとは、以下の(a)、(b)、(c)、(d)または(e)のいずれかのポリヌクレオチドを指す:
(a) 配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(b) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(c) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(d) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(e) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド。
【0012】
より具体的には、以下の(A)、(B)、(C)、(D)または(E)のいずれかのポリヌクレオチドが例示される:
(A) 配列番号:1に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(B) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(C) 前記(A)または(B)のポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(D) 前記(A)または(B)のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(E) 前記(A)または(B)のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド。
【0013】
本発明のポリヌクレオチドは、種々の細胞や組織、例えばヒト精巣由来のcDNAやmRNA、cRNA、ゲノムDNA、または合成DNAのいずれであっても良い。また本発明のポリヌクレオチドは1本鎖および2本鎖のいずれの形態もとることができる。
【0014】
ここで配列番号:1に記載の塩基配列は、ヒト精巣由来cDNAライブラリーを膵管癌患者血清でスクリーニングすることによりクローニングされたKU−TES−1遺伝子の塩基配列であり、配列番号:2に記載のアミノ酸配列は当該KU−TES−1のアミノ酸配列に該当する。
配列番号:3に記載の塩基配列はGenBank データベースにおいてAccession No. NM_173081(Accession No.BC0393212)として登録されている機能未知の遺伝子の塩基配列であり、配列番号:4に記載のアミノ酸配列は当該遺伝子のアミノ酸配列に該当する。
【0015】
配列番号:5に記載の塩基配列はGenBank データベースにおいてAccession No. XM_166109として登録されている機能未知の遺伝子の塩基配列であり、配列番号:6に記載のアミノ酸配列は当該遺伝子のアミノ酸配列に該当する。
これらAccession No. NM_173081およびAccession No. XM_166109で示されるタンパク質は、KU−TES−1のアミノ酸配列(配列番号2)の第391位までと同一の配列を有し、かつそのC末端側に新たな481アミノ酸残基を有するタンパク質であることから、KU−TES−1のスプライスバリアントであると考えられる(以下、これら配列番号:1、3および5に記載の塩基配列を含有する遺伝子をまとめて「KU−TES−1遺伝子」と称する場合がある)。
【0016】
前記(a)(前記(A))における配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチドとしては、配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
また、当該配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端側及び/又は3’末端側に他の塩基配列の付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドも挙げられる。当該ポリヌクレオチドは、配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質と同様の作用を有するタンパク質をコードするものであれば良い。
【0017】
前記(b)(前記(B))における配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドとしては、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
また、当該配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端側及び/又は3’末端側に他の塩基配列の付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドも挙げられる。当該ポリヌクレオチドは、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同様の作用を有するタンパク質をコードするものであれば良い。
【0018】
これら配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、あるいは配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドは、本明細書配列表の配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に開示されている塩基配列、あるいはAccession No. NM_173081(Accession No.BC0393212)またはAccession No. XM_166109において開示されている塩基配列の適当な部分をハイブリダイゼーションのプローブあるいはPCRのプライマーに用いて、例えばヒト精巣細胞株(Hs 1.Tes細胞(ATCC CRL−7002)、Hs 181.Tes細胞(ATCC CRL−7131)等)由来のcDNAライブラリーをスクリーニングすることなどによりクローニングすることができる。該クローニングは、例えばMolecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に従い、当業者ならば容易に行うことができる。
【0019】
前記(c)(前記(C))における「前記(a)または(b)((A)または(B))のポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、例えば前記(a)または(b)((A)または(B))のいずれかのポリヌクレオチドの塩基配列と約40%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列同一性を有する塩基配列を含有するポリヌクレオチドが挙げられる。具体的には、前記(a)または(b)((A)または(B))のいずれかのポリヌクレオチドの部分配列からなるポリヌクレオチドなどが挙げられる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えばMolecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に記載の方法に従って行うことができる。また市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
【0020】
ここで「ストリンジェントな条件」とは、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA)や前記Molecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。
ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、6×SSC(20×SSCは、333mM Sodium citrate、333mM NaClを示す)、0.5%SDSおよび50% ホルムアミドを含む溶液中で42℃にてハイブリダイズさせる条件、または6×SSCを含む(50%ホルムアミドは含まない)溶液中で65℃にてハイブリダイズさせる条件などが挙げられる。
またハイブリダイゼーション後の洗浄の条件としては、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。
【0021】
前記(d)(前記(D))における「前記(a)または(b)((A)または(B))のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチド」とは、例えば前記(a)または(b)((A)または(B))のいずれかのポリヌクレオチドの塩基配列と約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドが挙げられる。具体的には、前記(a)または(b)((A)または(B))のいずれかのポリヌクレオチドの部分配列からなるポリヌクレオチドなどが挙げられる。このような配列同一性を有するポリヌクレオチドは、前述のハイブリダイゼーション反応や通常のPCR反応により、または後述するポリヌクレオチドの改変(欠失、付加、置換)反応により作製することができる。
【0022】
前記(e)(前記(E))における「前記(a)または(b)((A)または(B))のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド」とは、人為的に作製したいわゆる改変タンパク質や、生体内に存在するアレル変異対等のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0023】
ここでタンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の活性(癌抗原としての活性)が保持される限り制限はない。このように活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個欠失、置換及び/又は付加されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内である。また置換されるアミノ酸は、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0024】
この改変タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、例えば、Molecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に記載の種々の方法、例えば部位特異的変異誘発やPCR法等によって製造することができる。また市販のキットを用いて、Gapped duplex法やKunkel法などの公知の方法に従って製造することもできる。
【0025】
本発明のポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質(以下本発明のタンパク質)が「癌抗原として作用する」という性質を有するポリヌクレオチドである。ここで「癌抗原として作用する」とは、本発明のタンパク質が、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質を有すること、すなわち本発明のタンパク質の刺激によりヘルパーT細胞が誘導されることを意味する。活性化されたヘルパーT細胞は、B細胞が抗体産生細胞に分化・成熟する過程を介助する(Charles A. Janeway, Jr.ら著、IMMUNO BIOLPGY FOURTH EDITION、CURRENT BIOLOGY PUBLICATIONS、P307〜339)。結果として、後述の実施例に示すように、本発明のタンパク質に対するIgG抗体が血清中に出現する。
活性化されたヘルパーT細胞は、CTLの分化の誘導や維持、およびマクロファージなどのエフェクター活性化等の作用を発揮し、抗腫瘍免疫応答に重要な役割を果たす。
【0026】
本発明のタンパク質がヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質を有することは、例えば末梢血単核球をin vitroで本発明のタンパク質で刺激して特異的なヘルパーT細胞を誘導することにより(Clin Exp Immunol 105(3):429−35、1996)、調べることができる。
【0027】
また前記「癌抗原として作用する」の範疇には、前記のようにヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質に加え、細胞障害性T細胞(cytotosic T lymphocyte(CTL)、CD8+T細胞)に認識される性質を有する場合も含まれる。ここでCTL(CD8+T細胞)に認識されるとは、本発明のタンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される、すなわち当該細胞がCTLに反応性を示す、換言すれば本発明のタンパク質若しくは該タンパク質に由来するペプチドがCTLを活性化する若しくはCTLを誘導するという性質を示す。ここで細胞とは、HLA抗原を発現する細胞であることが好ましい。
【0028】
本発明タンパク質のCTL誘導活性は、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法(例えば51Crリリースアッセイ(J.Immunol.,159:4753,1997)、LDHリリースアッセイ(LDH Cytotoxicity Detection Kit(タカラバイオ)、サイトカイン量の測定等)により容易に測定することができる。以下に具体的なアッセイ法を例示する。
【0029】
まず、アフリカミドリザル腎臓由来のCOS−7(ATCC CRL1651)や繊維芽細胞VA−13(理化学研究所細胞開発銀行)といった癌抗原タンパク質を発現していない細胞に対し、本発明タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターと、HLA抗原をコードするDNAを含有する発現ベクターとをトランスフェクトする。ここで用いるHLA抗原をコードするDNAとしては、例えばHLA−A24抗原をコードするDNA若しくはHLA−A2抗原をコードするDNAが挙げられる。HLA−A24抗原をコードするDNAとしてはHLA−A2402のcDNA(Cancer Res., 55: 4248−4252 (1995)、Genbank Accession No.M64740)が挙げられる。またHLA−A2抗原をコードするDNAとしてはHLA−A2のcDNA(Genbank Accession No.M84379)が挙げられる。
【0030】
前記トランスフェクトは、例えばリポフェクトアミン試薬(GIBCO BRL社製)を用いたリポフェクチン法などにより行うことができる。その後、用いたHLA抗原に拘束性のCTLを加えて作用させ、該CTLが反応(活性化)して産生する種々のサイトカイン、例えばIFN−γの量を、例えばELISA法などで測定することにより調べることができる。ここでCTLとしては、ヒトの末梢血リンパ球を本発明タンパク質(例えば配列番号2、4または6に記載のタンパク質)で刺激することにより調製されたCTLや、Int. J. Cancer, 39, 390−396, 1987, N. Eng. J. Med, 333, 1038−1044, 1995等に記載の方法により樹立したCTLを用いることができる。
また本発明のタンパク質は、例えばヒトモデル動物を用いたアッセイ(WO 02/47474 号公報、Int J. Cancer:100,565−570 (2002))に供することにより、in vivoでのCTL誘導活性を調べることができる。
【0031】
2)本発明の発現ベクターおよび形質転換体
前記本発明のポリヌクレオチドが2本鎖の場合、発現ベクターに挿入することにより、本発明のタンパク質を発現するための組換え発現ベクターを作製することができる。
【0032】
ここで用いる発現ベクターとしては、用いる宿主や目的等に応じて適宜選択することができ、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。
【0033】
例えば、宿主が大腸菌の場合、ベクターとしては、pUC118、pUC119、pBR322、pCR3等のプラスミドベクター、λZAPII、λgt11などのファージベクターが挙げられる。宿主が酵母の場合、ベクターとしては、pYES2、pYEUra3などが挙げられる。宿主が昆虫細胞の場合には、pAcSGHisNT−Aなどが挙げられる。宿主が動物細胞の場合には、pCEP4、pKCR、pCDM8、pGL2、pcDNA3.1、pRc/RSV、pRc/CMVなどのプラスミドベクターや、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターなどのウイルスベクターが挙げられる。
【0034】
前記ベクターは、発現誘導可能なプロモーター、シグナル配列をコードする遺伝子、選択用マーカー遺伝子、ターミネーターなどの因子を適宜有していても良い。
また、単離精製が容易になるように、チオレドキシン、Hisタグ、あるいはGST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)等との融合タンパク質として発現する配列が付加されていても良い。この場合、宿主細胞内で機能する適切なプロモーター(lac、tac、trc、trp、CMV、SV40初期プロモーターなど)を有するGST融合タンパクベクター(pGEX4Tなど)や、Myc、Hisなどのタグ配列を有するベクター(pcDNA3.1/Myc−Hisなど)、さらにはチオレドキシンおよびHisタグとの融合タンパク質を発現するベクター(pET32a)などを用いることができる。
【0035】
前記で作製された発現ベクターで宿主を形質転換することにより、当該発現ベクターを含有する形質転換細胞を作製することができる。
ここで用いられる宿主としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。大腸菌としては、E.coli K−12系統のHB101株、C600株、JM109株、DH5α株、AD494(DE3)株などが挙げられる。また酵母としては、サッカロミセス・セルビジエなどが挙げられる。動物細胞としては、L929細胞、BALB/c3T3細胞、C127細胞、CHO細胞、COS細胞、Vero細胞、Hela細胞、293−EBNA細胞などが挙げられる。昆虫細胞としてはsf9などが挙げられる。
【0036】
宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、前記宿主細胞に適合した通常の導入方法を用いれば良い。具体的にはリン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin; Gibco−BRL社)を用いる方法などが挙げられる。導入後、選択マーカーを含む通常の培地にて培養することにより、前記発現ベクターが宿主細胞中に導入された形質転換細胞を選択することができる。
【0037】
以上のようにして得られた形質転換細胞を好適な条件下で培養し続けることにより、本発明のタンパク質を製造することができる。得られたタンパク質は、一般的な生化学的精製手段により、さらに単離・精製することができる。ここで精製手段としては、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。また本発明のタンパク質を、前述のチオレドキシンやHisタグ、GST等との融合タンパク質として発現させた場合は、これら融合タンパク質やタグの性質を利用した精製法により単離・精製することができる。
【0038】
3)本発明のタンパク質
本発明のタンパク質とは、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるか、または本発明の形質転換体から前記手法により生産されるタンパク質である。本発明のタンパク質は、天然物に由来するタンパク質であってもよく、また組換えタンパク質であっても良い。
【0039】
具体的には以下の(a)、(b)または(c)のいずれかのタンパク質が挙げられる:
(a) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b) 前記(a)のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質、
(c) 前記(a)のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質。
【0040】
より具体的には、以下の(A)、(B)または(C)のいずれかのタンパク質が例示される:
(A) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(B) 前記(A)のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質、
(C) 前記(A)のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質。
【0041】
ここで配列番号:2に記載のアミノ酸配列は、ヒト精巣由来cDNAライブラリーを膵管癌患者血清でスクリーニングすることによりクローニングされたKU−TES−1遺伝子をコードするアミノ酸配列である。
配列番号:4に記載のアミノ酸配列は、GenBank データベースにおいてAccession No. NM_173081(Accession No.BC0393212)として登録されている機能未知の遺伝子をコードするアミノ酸配列である。
配列番号:6に記載のアミノ酸配列は、GenBank データベースにおいてAccession No. XM_166109として登録されている機能未知の遺伝子をコードするアミノ酸配列である。
これらAccession No. NM_173081およびAccession No. XM_166109で示されるタンパク質は、KU−TES−1のアミノ酸配列(配列番号2)の第391位までと同一の配列を有し、かつそのC末端側に新たな481アミノ酸残基を有するタンパク質であることから、KU−TES−1のスプライスバリアントであると考えられる(以下、これら配列番号:2、4および6に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質をまとめて「KU−TES−1」と称する場合がある)。
【0042】
前記(a)(前記(A))における配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。
また、当該配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の5’末端側及び/又は3’末端側に他のアミノ酸配列の付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質も挙げられる。当該タンパク質は、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と同様の作用を有するタンパク質であれば良い。
【0043】
前記(b)(前記(B))における「前記(a)(前記(A))のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質」とは、人為的に作製したいわゆる改変タンパク質や、生体内に存在するアレル変異対等のタンパク質を意味する。
ここでタンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、本発明タンパク質の活性(癌抗原としての活性)が保持される限り制限はない。このように活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個欠失、置換及び/又は付加されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内である。また置換されるアミノ酸は、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0044】
前記(c)(前記(C))における「前記(a)(前記(A))のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質」とは、例えば前記(a)(前記(A))のタンパク質のアミノ酸配列と約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質が挙げられる。具体的には、前記(a)(前記(A))のタンパク質の部分配列からなるタンパク質などが挙げられる。
【0045】
本発明のタンパク質は、癌抗原として作用するという性質を有する。当該「癌抗原として作用する」とは、本発明のタンパク質が、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質を有すること、すなわち本発明のタンパク質の刺激によりヘルパーT細胞が誘導されることを意味する。活性化されたヘルパーT細胞は、B細胞が抗体産生細胞に分化・成熟する過程を介助する(Charles A. Janeway, Jr.ら著、IMMUNO BIOLPGY FOURTH EDITION、CURRENT BIOLOGY PUBLICATIONS、P307〜339)。結果として、後述の実施例に示すように、本発明のタンパク質に対するIgG抗体が血清中に出現する。
活性化されたヘルパーT細胞は、CTLの分化の誘導や維持、およびマクロファージなどのエフェクター活性化等の作用を発揮し、抗腫瘍免疫応答に重要な役割を果たす。
【0046】
本発明のタンパク質がヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質を有することは、例えば末梢血単核球をin vitroで本発明のタンパク質で刺激して特異的なヘルパーT細胞を誘導することにより(Clin Exp Immunol 105(3):429−35、1996)、調べることができる。
【0047】
また前記「癌抗原として作用する」の範疇には、前記のようにヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質に加え、細胞障害性T細胞(cytotosic T lymphocyte(CTL)、CD8+T細胞)に認識される性質を有する場合も含まれる。ここでCTL(CD8+T細胞)に認識されるとは、本発明のタンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される、すなわち当該細胞がCTLに反応性を示す、換言すれば本発明のタンパク質若しくは該タンパク質に由来するペプチドがCTLを活性化する若しくはCTLを誘導するという性質を示す。ここで細胞とは、HLA抗原を発現する細胞であることが好ましい。
【0048】
このような本発明タンパク質のCTL誘導活性は、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法(例えば51Crリリースアッセイ(J.Immunol.,159:4753,1997)、LDHリリースアッセイ(LDH Cytotoxicity Detection Kit(タカラバイオ)、サイトカイン量の測定等)により容易に測定することができる。さらに本発明のタンパク質は、例えばヒトモデル動物を用いたアッセイ(WO 02/47474 号公報、Int J. Cancer:100,565−570 (2002))に供することにより、in vivoでのCTL誘導活性を調べることができる。これらの活性の測定法は前記「1)本発明のポリヌクレオチド」の項に記載したとおりである。
【0049】
本発明のタンパク質は、天然物(例えば精巣細胞株)から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、また前述したように本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターで宿主細胞を形質転換して作製された形質転換体を培養することによっても製造することができる。
【0050】
4)本発明のペプチド
本発明においてペプチドとは、本発明のタンパク質の部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識される癌抗原ペプチドである。すなわち、前記した本発明のタンパク質のアミノ酸配列の一部よりなるペプチドであって、かつ、該ペプチドとHLA抗原との結合複合体がCTLにより認識されるような、いわゆる癌抗原ペプチドであれば、本発明のタンパク質のアミノ酸配列中の如何なる位置に存する如何なる長さのペプチドであっても良い。
このような本発明のペプチドは、本発明のタンパク質の一部よりなる候補ペプチドを合成し、該候補ペプチドとHLA抗原との複合体がCTLにより認識されるか否か、すなわち候補ペプチドが癌抗原ペプチドとしての活性を有するか否かをアッセイすることにより、同定することができる。
【0051】
ここで、ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該公知方法としては文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。
【0052】
次に、本発明の癌抗原ペプチドの同定方法につき、以下に記述する。
HLA−A1, −A0201, −A0204, −A0205, −A0206, −A0207, −A11, −A24, −A31, −A6801, −B7, −B8, −B2705, −B37, −Cw0401, −Cw0602などのHLAの型については、該HLAに結合して提示される抗原ペプチドの配列の規則性(モチーフ)が判明している(例えばImmunogenetics,41:p178,1995などを参照のこと)。例えばHLA−A24のモチーフとしては、8〜11アミノ酸よりなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンであり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンとなることが知られている(J.Immunol.,152,p3913,1994、Immunogenetics,41:p178,1995、J.Immunol.,155:p4307,1994)。またHLA−A2のモチーフについては、以下の表1に示したモチーフが知られている(Immunogenetics,41,p178,1995、 J.Immunol.,155:p4749,1995)。
【0053】
【表1】
【0054】
さらに近年、HLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列を、インターネット上、NIHのBIMASのソフトを使用することにより検索することができる(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/ )。
ペプチドの長さとしては、各種HLA分子に結合している抗原ペプチドの解析により(Immunogenetics,41:178,1995)、通常8から14アミノ酸程度であることが明らかにされている(ただしHLA‐DR、‐DP、‐DQについては、14アミノ酸以上の長さの抗原ペプチドも認められる)。
【0055】
これらのモチーフに関わるペプチド部分を本発明のタンパク質のアミノ酸配列中から選び出すのは容易である。例えば、前記BIMASソフトでの検索により、HLA抗原に結合可能と予想される配列を容易に選び出すことができる。選び出された候補ペプチドを前述の方法にて合成し、該候補ペプチドとHLA抗原との複合体がCTLにより認識されるか否か、すなわち候補ペプチドが癌抗原ペプチドとしての活性を有するか否かを測定することにより、本発明のペプチドを同定することができる。
【0056】
本発明の癌抗原ペプチドの具体的な同定法としては、例えば J.Immunol.,154,p2257,1995に記載の方法が挙げられる。すなわち、候補ペプチドを提示すると考えられるタイプのHLA抗原が陽性のヒトから末梢血リンパ球を単離し、in vitroで該候補ペプチドを添加して刺激した場合に、該候補ペプチドをパルスしたHLA抗原陽性細胞を特異的に認識するCTLが誘導された場合は、該候補ペプチドが癌抗原ペプチドに成り得ることが示される。ここでCTLの誘導の有無は、例えば、抗原ペプチド提示細胞に反応してCTLが産生する種々のサイトカイン(例えばIFN−γ)の量を、例えばELISA法などによって測定することにより、調べることができる。また51Crで標識した抗原ペプチド提示細胞に対するCTLの傷害性を測定する方法(51Crリリースアッセイ、Int.J.Cancer,58:p317,1994)によっても調べることができる。
【0057】
さらに、候補ペプチドを提示すると考えられるタイプのHLA抗原のcDNAを発現する発現プラスミドを、例えばアフリカミドリザル腎臓由来のCOS−7(ATCC CRL1651)や繊維芽細胞VA−13(理化学研究所細胞開発銀行)に導入した細胞に対して候補ペプチドをパルスし、この細胞に対して、前記候補ペプチドを提示すると考えられるタイプのHLA抗原に拘束性のCTLを反応させ、該CTLが産生する種々のサイトカイン(例えばIFN−γ)の量を測定することによっても、調べることができる(J.Exp.Med.,187: 277,1998)。
【0058】
ここでHLA抗原としては、HLA−A24抗原若しくはHLA−A2抗原が挙げられる。HLA−A24拘束性の癌抗原ペプチドを選択する場合には、前記HLA抗原をコードするcDNAとしてはHLA−A2402のcDNA(Cancer Res., 55: 4248−4252 (1995)、Genbank Accession No.M64740)を用いることができる。またHLA−A2拘束性の癌抗原ペプチドを選択する場合は、前記HLA抗原をコードするcDNAとしてはHLA−A2のcDNA(Genbank Accession No.M84379)を用いることができる。
また前記CTLとしては、ヒトの末梢血リンパ球のペプチド刺激により調製される場合の他、Int. J. Cancer, 39, 390−396, 1987, N. Eng. J. Med, 333, 1038−1044, 1995等に記載の方法により樹立したCTLを用いることができる。
また本発明のペプチドは、例えばヒトモデル動物を用いたアッセイ(WO 02/47474 号公報、Int J. Cancer:100,565−570 (2002))に供することにより、in vivoでの活性を調べることができる。
【0059】
以上のような本発明のペプチドとして、具体的には、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなる本発明タンパク質の部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。より具体的には配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列を前記BIMASソフトに供して選択されるペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。好ましくは、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を前記BIMASソフトに供して選択されるペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。
【0060】
本発明のペプチドは、本発明のタンパク質のアミノ酸配列の一部からなるペプチド、より具体的には配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列の一部からなるペプチドのみならず、そのアミノ酸配列の一部を改変(欠失、置換及び/又は付加)したペプチド(以下、当該改変に係るペプチドを「改変ペプチド」と称する場合がある)であっても、HLA抗原と結合してCTLにより認識されるという性質を有する限り、本発明のペプチドの範疇に含まれる。すなわち、本発明タンパク質のアミノ酸配列、より具体的には配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列の一部からなる本発明のペプチドのアミノ酸配列に対して、1又はそれ以上のアミノ酸残基の改変を施した改変ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるという癌抗原ペプチドとしての活性を有するものは、本発明のペプチドの範疇に含まれる。
【0061】
ここで、アミノ酸残基の「改変」とは、アミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は付加(ペプチドのN末端、C末端へのアミノ酸の付加も含む)を意味し、好ましくはアミノ酸残基の置換が挙げられる。アミノ酸残基の置換に係る改変の場合、置換されるアミノ酸残基の数および位置は、癌抗原ペプチドとしての活性が維持される限り、任意であるが、前記したように通常、癌抗原ペプチドの長さが8〜14アミノ酸程度であることから、1個から数個の範囲が好ましい。
本発明の改変ペプチドの長さとしては、8〜14アミノ酸程度が好ましい(ただしHLA−DR、−DP、−DQについては、14アミノ酸以上の長さの場合もある。)
【0062】
先に記載したように、HLA−A1, −A0201, −A0204, −A0205, −A0206, −A0207, −A11, −A24, −A31, −A6801, −B7, −B8, −B2705, −B37, −Cw0401, −Cw0602などのHLAの型については、該HLAに結合して提示される抗原ペプチドの配列の規則性(モチーフ)が判明している。また前記したように、HLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列をインターネット上検索することができる(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/ )。従って、該モチーフ等に基づき、前記改変ペプチドを作製することが可能である。
【0063】
例えばHLA−A24に結合して提示される抗原ペプチドのモチーフとしては、前記したように、8〜11アミノ酸よりなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンであり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンであることが知られている(J.Immunol., 152:p3913,1994、Immunogenetics,41:p178,1995、J.Immunol.,155:p4307,1994)。またHLA−A2の場合は、前記の表1に記載のモチーフが知られている。またインターネット上でHLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列が示されており(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)、例えば前記モチーフ上とり得るアミノ酸に類似の性質を持つアミノ酸が許容される。従って、これらモチーフ上アミノ酸の置換が可能な位置(HLA−A24、HLA−A2においてはペプチドの第2位とC末端)にあるアミノ酸を他のアミノ酸(好ましくは前記インターネット上で結合可能と予想されているアミノ酸)に置換したアミノ酸配列を含むものであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるという活性を持つ改変ペプチドを挙げることができる。
【0064】
より好ましくは、該位置において、前記モチーフ上知られたアミノ酸残基のいずれかに置換したアミノ酸配列を含有するペプチドであって、かつ前記活性を有する改変ペプチドが挙げられる。
【0065】
本発明のペプチドには、さらに、前記本発明のペプチドを含有するペプチドも含まれる。
近年、複数のCTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結したペプチド(エピトープペプチド)が、効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1998, 161: 3186−3194には、癌抗原タンパク質PSA由来のHLA−A2, −A3, −A11, B53拘束性CTLエピトープを連結した約30merのペプチドが、イン・ビボでそれぞれのCTLエピトープに特異的なCTLを誘導したことが記載されている。
【0066】
またCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたペプチド(エピトープペプチド)により、効率的にCTLが誘導されることも示されている。ここでヘルパーエピトープとはCD4陽性T細胞を活性化させる作用を有するペプチドを指すものであり(Immunity., 1:751, 1994)、例えばB型肝炎ウイルス由来のHBVc128−140や破傷風毒素由来のTT947−967などが知られている。当該ヘルパーエピトープにより活性化されたCD4陽性T細胞は、CTLの分化の誘導や維持、およびマクロファージなどのエフェクター活性化などの作用を発揮するため、抗腫瘍免疫応答に重要であると考えられている。このようなヘルパーエピトープとCTLエピトープとを連列したペプチドの具体例として、例えばJournal of Immunology 1999, 162: 3915−3925には、HBV由来HLA−A2拘束性抗原ペプチド6種類、HLA−A11拘束性抗原ペプチド3種類、およびヘルパーエピトープより構成されるペプチドをコードするDNA(ミニジーン)が、イン・ビボでそれぞれのエピトープに対するCTLを効果的に誘導したことが記載されている。また実際に、CTLエピトープ(メラノーマ抗原gp100の第280位〜288位からなる癌抗原ペプチド)とヘルパーエピトープ(破傷風毒素由来Tヘルパーエピトープ)とを連結したペプチドが臨床試験に供されている(Clinical Cancer Res., 2001,7:3012−3024)。
【0067】
従って、前記本発明のペプチドを含む複数のエピトープを連結したペプチド(エピトープペプチド)であって、CTL誘導活性を有するペプチドも、本発明のペプチドの具体例として例示することができる。
ここで、本発明のペプチドに連結させるエピトープがCTLエピトープの場合、用いるCTLエピトープとしては、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列由来のHLA−A1, −A0201, −A0204, −A0205, −A0206, −A0207, −A11, −A24, −A31, −A6801, −B7, −B8, −B2705, −B37,−B55, −Cw0401, −Cw0602などに拘束性のCTLエピトープが挙げられる。また、他の癌抗原タンパク質由来のCTLエピトープも挙げられる。これらCTLエピトープは複数個連結することが可能であり、1つのCTLエピトープの長さとしては、各種HLA分子に結合している抗原ペプチドの解析により(Immunogenetics,41:178,1995)、8〜14アミノ酸程度を挙げることができる。
【0068】
また本発明のペプチドに連結させるエピトープがヘルパーエピトープの場合、用いるヘルパーエピトープとしては、前述のようなB型肝炎ウイルス由来のHBVc128−140や破傷風毒素由来のTT947−967などが挙げられる。また当該ヘルパーエピトープの長さとしては、13〜30アミノ酸程度、好ましくは13〜17アミノ酸程度を挙げることができる。
【0069】
このような複数のエピトープを連結させたペプチド(エピトープペプチド)は、前述のように一般的なペプチド合成法によって製造することができる。またこれら複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列情報に基づいて、通常のDNA合成および遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。すなわち、当該ポリヌクレオチドを周知の発現ベクターに挿入し、得られた組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換して作製された形質転換体を培養し、培養物より目的の複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドを回収することにより製造することができる。これらの手法は、前述のように文献(Molecular Cloning, T.Maniatis et al.,CSH Laboratory(1983)、DNA Cloning, DM.Glover, IRL PRESS(1985))に記載の方法などに準じて行うことができる。
【0070】
以上のようにして製造された複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドを、前述のin vitroアッセイや、WO 02/47474 号公報および Int J. Cancer:100,565−570 (2002)に記述のヒトモデル動物を用いたin vivoアッセイに供すること等によりCTL誘導活性を測定することができる。
【0071】
さらに、本発明のペプチドのN末端アミノ酸のアミノ基、またはC末端アミノ酸のカルボキシル基を修飾することも可能である。
ここでN末端アミノ酸のアミノ基の修飾基としては、例えば1〜3個の炭素数1から6のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アシル基が挙げられ、アシル基の具体例としては炭素数1から6のアルカノイル基、フェニル基で置換された炭素数1から6のアルカノイル基、炭素数5から7のシクロアルキル基で置換されたカルボニル基、炭素数1から6のアルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、フェニル基で置換されたアルコキシカルボニル基、炭素数5から7のシクロアルコキシで置換されたカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
C末端アミノ酸のカルボキシル基を修飾したペプチドとしては、例えばエステル体およびアミド体が挙げられ、エステル体の具体例としては、炭素数1から6のアルキルエステル、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキルエステル、炭素数5から7のシクロアルキルエステル等が挙げられ、アミド体の具体例としては、アミド、炭素数1から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。
【0072】
5)本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドの範疇には、さらに、前記本発明のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドも含まれる。
本発明のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもRNAの形態であっても良い。これら本発明のポリヌクレオチドは、本発明のペプチドのアミノ酸配列情報およびそれによりコードされるDNAの配列情報に基づき容易に製造することができる。具体的には、通常のDNA合成やPCRによる増幅などによって、製造することができる。
【0073】
本発明のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドは、具体的には、前記エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
前記ポリヌクレオチドは、1本鎖および2本鎖のいずれの形態もとることができる。本発明のポリヌクレオチドが2本鎖の場合、前記本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入することにより、本発明のペプチド(エピトープペプチド)を発現するための組換え発現ベクターを作製することができる。
ここで用いる発現ベクターや宿主細胞、宿主細胞の形質転換方法等については、前述の「2)本発明の発現ベクターおよび形質転換体」と同様である。
【0074】
6)本発明のタンパク質を有効成分とする医薬
本発明のタンパク質は、医薬の有効成分とすることができる。すなわち本発明のタンパク質を適当なキャリアーと組み合わせることにより、癌免疫療法における医薬の有効成分とすることができる。
本発明のタンパク質を有効成分として含有する医薬は、癌ワクチン、すなわちCTLの誘導剤として使用することができる。本発明のタンパク質により誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗癌作用を発揮することができる。従って本発明のタンパク質は、癌の治療または予防のための医薬の有効成分とすることができる。本発明のタンパク質を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、本発明のタンパク質を癌患者に投与することで、癌を治療または予防し得るものである。当該タンパク質を癌患者に投与すると、抗原提示細胞内に取り込まれ、その後、細胞内分解を受けて生じた癌抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に提示され、この複合体に特異的なCTLが体内で効率的に増殖し、癌細胞を破壊する。以上のようにして、癌の治療又は予防が達成される。
【0075】
本発明のタンパク質を有効成分とするCTLの誘導剤は、本発明のタンパク質陽性の如何なる癌患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば膵癌(膵管癌)、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等の予防または治療のために使用することができる。好ましくは、膵癌または子宮体癌の予防または治療のために使用することができる。
【0076】
本発明のタンパク質を有効成分として含有する癌ワクチンは、細胞性免疫が効果的に成立するように、医薬として許容されるキャリアー、例えば適当なアジュバントと混合して投与、又は併用して投与することができる。
アジュバントとしては、文献(Clin. Microbiol.Rev., 7:277−289, 1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分又はその誘導体、サイトカイン、植物由来成分又はその誘導体、海洋生物由来成分又はその誘導体、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルション製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μm のビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤、マイクロスフェアー製剤、マイクロカプセル製剤なども考えられる。
【0077】
前記において菌体由来成分又はその誘導体とは、具体的には、例えば▲1▼細菌の死菌、▲2▼細菌由来の細胞壁骨格(Cell Wall Skeleton, CWSと略する)、▲3▼菌体由来の特定の成分又はその誘導体等に分類される。ここで▲1▼細菌の死菌としては、例えば溶連菌粉末(例えばピシバニール;中外製薬株式会社)、死菌浮遊物カクテル(例えばブロンカスマ・ベルナ;三和化学研究所)、あるいはヒト型結核菌の死菌等が挙げられる。
【0078】
▲2▼細菌由来のCWSとしては、マイクバクテリア属由来のCWS(例えばマイコバクテリア属ウシ型結核菌であるBCG株のCWS)、ノカルディア属由来のCWS(例えばノカルディア・ノブラのCWS)、あるいはコリネバクテリア属由来のCWS等が挙げられる。
【0079】
▲3▼菌体由来の特定の成分又はその誘導体としては、例えば菌体由来多糖類であるヒト型結核菌由来多糖類成分(例えばアンサー;ゼリア新薬工業株式会社)や担子菌由来多糖類(例えばレンチナン;味の素、クレスチン;三共株式会社、担子菌カワラタケ)、またムラミルジペプチド(MDP)関連化合物、リポ多糖(LPS)、リピドA関連化合物(MPL)、糖脂質トレハロースジマイコレート(TDM)、細菌由来のDNA(例えばCpGオリゴヌクレオチド)、あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。
【0080】
これら菌体由来成分及びその誘導体は、既に市販されているものであればそれを入手するか、又は公知文献(例えばCancer Res.,33,2187−2195(1973)、J.Natl.Cancer Inst.,48,831−835(1972)、J.Bacteriol.,94,1736−1745(1967)、Gann,69,619−626(1978)、J.Bacteriol.,92,869−879(1966)、J.Natl.Cancer Inst.,52,95−101(1974))等に基き単離又は製造することが可能である。
【0081】
前記において「サイトカイン」とは、例えばIFN−α、IL−12、GM−CSF、IL−2、IFN−γ、IL−18、あるいはIL−15などが挙げられる。これらのサイトカインは、天然品であっても遺伝子組換え品であっても良い。これらのサイトカインは、既に市販されていればそれを入手して使用することができる。また遺伝子組換え品であれば、例えばGenBank、EMBL、あるいはDDBJ等のデータベースにおいて登録されている各塩基配列に基き、常法により所望の遺伝子をクローニングし、適当な発現ベクターに連結して作製された組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより、発現・生産することができる。
【0082】
前記において「植物由来成分又はその誘導体」とは、例えばサポニン由来成分であるQuil A(Accurate Chemical&Scientific Corp)、 QS−21(Aquila Biopharmaceuticals inc.)、あるいはグリチルリチン(SIGMA−ALDRICHなど)などが挙げられる。
【0083】
前記において「海洋生物由来成分又はその誘導体」とは、例えば海綿由来の糖脂質であるα−ガラクトシルセラミドなどが挙げられる。
【0084】
前記において油乳濁液(エマルション製剤)とは、例えば油中水型(w/o)エマルション製剤、水中油型(o/w)エマルション製剤、水中油中水型(w/o/w)エマルション製剤などが挙げられる。
【0085】
ここで油中水型(w/o)エマルション製剤は、有効成分を水の分散相に分散させた形態をとる。水中油型(o/w)エマルション製剤は、有効成分を水の分散媒に分散させた形態をとる。また水中油中水型(w/o/w)エマルション製剤は、有効成分を最内相の水の分散相に分散させた形態をとる。このようなエマルション製剤の調製は、例えば、特開平8−985号公報、特開平9−122476号公報等を参考にして行うことができる。
【0086】
前記においてリポソーム製剤とは、有効成分を脂質二重膜構造のリポソームで水相内または膜内に包み込んだ形の微粒子である。リポソームを作るための主要な脂質としては、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン等が挙げられ、これにジセチルホスフェート、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン等を加えてリポソームに荷電を与えて安定化させる。リポソームの調製方法としては、超音波法、エタノール注入法、エーテル注入法、逆相蒸発法、フレンチプレスエクストラクション法等が挙げられる。
【0087】
前記においてマイクロスフェアー製剤は、均質な高分子マトリックスから構成され、該マトリックス中に有効成分が分散された形の微粒子である。マトリックスの材料としては、アルブミン、ゼラチン、キチン、キトサン、デンプン、ポリ乳酸、ポリアルキルシアノアクリレート等の生分解性高分子が挙げられる。マイクロスフェアー製剤の調製方法としては公知の方法(Eur. J. Pharm. Biopharm. 50:129−146, 2000、Dev. Biol. Stand. 92:63−78, 1998、Pharm. Biotechnol. 10:1−43, 1997)等に従えばよく特に限定されない。
【0088】
前記においてマイクロカプセル製剤は、有効成分を芯物質として被膜物質で覆った形の微粒子である。被膜物質に用いられるコーティング材料としては、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、エチルセルロース、ゼラチン、ゼラチン・アラビアゴム、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース等の膜形成性高分子が挙げられる。マイクロカプセル製剤の調製方法は、コアセルベーション法、界面重合法等が挙げられる。
【0089】
投与方法としては、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与などが挙げられる。製剤中の本発明のタンパク質の投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは 0.001mg〜100mg、より好ましくは0.01mg〜10mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
【0090】
7)本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体を有効成分とする医薬
本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体は、医薬の有効成分とすることができる。すなわち本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体を適当なキャリアーと組み合わせることにより、癌免疫療法における医薬の有効成分とすることができる。
本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体を有効成分として含有する医薬は、癌ワクチン、すなわちCTLの誘導剤として使用することができる。本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体にもとづいて発現した本発明のタンパク質は、CTLを誘導し、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗癌作用を発揮することができる。従って本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体は、癌の治療または予防のための医薬の有効成分とすることができる。本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、例えばこれらの物質を癌患者に投与し、本発明のポリヌクレオチドから本発明のタンパク質を発現させることで、癌を治療または予防し得るものである。
【0091】
発現ベクターに組み込まれた本発明のポリヌクレオチドを以下の方法により癌患者に投与すると、抗原提示細胞内で本発明のタンパク質が高発現する。その後、細胞内分解を受けて生じた癌抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示されることにより、癌特異的CTLが体内で効率的に増殖し、癌細胞を破壊する。以上のようにして、癌の治療または予防が達成される。
【0092】
本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体を有効成分とするCTLの誘導剤は、本発明のタンパク質陽性の如何なる癌患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等の予防または治療のために使用することができる。好ましくは、膵癌または子宮体癌の予防または治療のために使用することができる。
【0093】
以下、本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込んで投与する形態が最も一般的であるため、当該発現ベクターを例にとり説明するが、当該形態に何ら限定されるものではない。
本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを投与し細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターによる方法およびその他の方法(日経サイエンス, 1994年4月号, 20−45頁、月刊薬事, 36(1), 23−48(1994)、実験医学増刊, 12(15), (1994)、およびこれらの引用文献等)のいずれの方法も適用することができる。
【0094】
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルス又はRNAウイルスに本発明のDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
【0095】
本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを実際に医薬として作用させるには、当該発現ベクターを直接体内に導入する in vivo法、およびヒトからある種の細胞を採集し体外で発現ベクターを該細胞に導入しその細胞を体内に戻す ex vivo法がある(日経サイエンス, 1994年4月号, 20−45頁、月刊薬事, 36(1), 23−48(1994)、実験医学増刊, 12(15), (1994)、およびこれらの引用文献等)。in vivo法がより好ましい。
【0096】
in vivo法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内等に投与することができる。in vivo法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には有効成分である本発明のポリヌクレオチド含有発現ベクターを含む注射剤等とされ、必要に応じて、医薬上許容されるキャリアー(担体)を加えてもよい。また、本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを含むリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
製剤中の本発明の発現ベクターの含量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常、発現ベクター中のポリヌクレオチドの含量として、0.0001mg〜100mg、好ましくは0.001mg〜10mgの本発明のポリヌクレオチドを、数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
【0097】
また近年、複数のCTLエピトープ(癌抗原ペプチド)を連結したエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいはCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが、in vivoで効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1999, 162: 3915−3925には、HBV由来HLA−A2拘束性抗原ペプチド6種類、HLA−A11拘束性抗原ペプチド3種類、およびヘルパーエピトープを連結したエピトープペプチドをコードするDNA(ミニジーン)が、イン・ビボでそれぞれのエピトープに対するCTLを効果的に誘導したことが記載されている。
【0098】
従って、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを1種または2種以上連結させることにより、また場合によっては他のペプチドをコードするポリヌクレオチドも連結させることにより作製されたポリヌクレオチドを、適当な発現ベクターに組み込むことにより、CTLの誘導剤の有効成分とすることができる。このようなCTLの誘導剤も、前記と同様の投与方法および投与形態をとることができる。
【0099】
8)本発明のペプチドを有効成分とする医薬
本発明のペプチドは、医薬の有効成分とすることができる。すなわち本発明のペプチドを適当なキャリアーと組み合わせることにより、癌免疫療法における医薬の有効成分とすることができる。
本発明のペプチドを有効成分として含有する医薬は、癌ワクチン、すなわちCTLの誘導剤として使用することができる。本発明のペプチドにより誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗癌作用を発揮することができる。従って本発明のペプチドは、癌の治療または予防のための医薬の有効成分とすることができる。本発明のペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤を癌患者に投与すると、抗原提示細胞のHLA抗原に本発明のペプチドが提示され、提示されたHLA抗原とペプチドとの結合複合体特異的CTLが増殖して癌細胞を破壊することができ、従って、患者の癌を治療又は予防することができる。
【0100】
本発明のペプチドを有効成分とするCTLの誘導剤は、本発明のタンパク質陽性の如何なる癌患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等の予防または治療のために使用することができる。好ましくは、膵癌または子宮体癌の予防または治療のために使用することができる。
【0101】
本発明のペプチドを有効成分とするCTLの誘導剤は、単一のCTLエピトープ(本発明のペプチド)を有効成分とするものであっても、また他のペプチド(CTLエピトープやヘルパーエピトープ)と連結したエピトープペプチドを有効成分とするものであっても良い。近年、複数のCTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結したエピトープペプチドが、イン・ビボで効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1998, 161: 3186−3194には、癌抗原タンパク質PSA由来のHLA−A2, −A3, −A11, B53拘束性CTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結した約30merのエピトープペプチドが、イン・ビボでそれぞれのCTLエピトープに特異的なCTLを誘導したことが記載されている。またCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドにより、効率的にCTLが誘導されることも示されている。このようなエピトープペプチドの形態で投与した場合、抗原提示細胞内に取り込まれ、その後、細胞内分解を受けて生じた個々の抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示され、この複合体に特異的なCTLが体内で効率的に増殖し、癌細胞を破壊する。このようにして癌の治療または予防が達成される。
【0102】
本発明のペプチドを有効成分とするCTLの誘導剤は、細胞性免疫が効果的に成立するように、医薬として許容されるキャリアー、例えば適当なアジュバントと混合して投与、又は併用して投与することができる。
アジュバントとしては、文献(Clin. Microbiol.Rev., 7:277−289, 1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分又はその誘導体、サイトカイン、植物由来成分又はその誘導体、海洋生物由来成分又はその誘導体、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルション製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μm のビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤、マイクロスフェアー製剤、マイクロカプセル製剤なども考えられる。これらアジュバントの具体例については、前記「6)本発明のタンパク質を有効成分とする医薬」の項を参照されたい。
【0103】
投与方法としては、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与などが挙げられる。製剤中の本発明のペプチドの投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは 0.001mg〜1000mg、より好ましくは0.1mg 〜10mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
【0104】
9)本発明の抗体
本発明において抗体とは、本発明のタンパク質に特異的に結合する性質を有する抗体である。本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、本発明のタンパク質を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよい。さらにこれら本発明タンパク質のアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
【0105】
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13、Antibodies; A Laboratory Manual, Lane, H, D.ら編, Cold Spring Harber Laboratory Press 出版 New York 1989)。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本発明タンパク質を用いて、あるいは常法に従ってこれら本発明タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本発明タンパク質、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0106】
抗体の作製に免疫抗原として使用される本発明タンパク質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号1,3または5)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、前記2)の項に記載したような当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
【0107】
具体的には、本発明タンパク質をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって、本発明抗体の製造のための免疫抗原としてのタンパク質を得ることができる。また、本発明タンパク質の部分ペプチドは、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号2,4および6)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
【0108】
かかるタンパク質またはペプチドに対する抗体の製造は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントが含まれる。
【0109】
以上のように本発明のタンパク質やその部分ペプチドを用いて常法により適宜動物を免疫することにより、本発明タンパク質を特異的に認識する抗体、さらにはその活性を中和する抗体が容易に作製できる。抗体の用途としては、アフィニティークロマトグラフィー、免疫学的診断等が挙げられる。免疫学的診断は、イムノブロット法、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光あるいは発光測定法等より適宜選択できる。このような免疫学的診断は、本発明タンパク質が発現している癌(膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等)の診断において有効である。
【0110】
10)癌マーカー
▲1▼本発明のポリヌクレオチドに関する癌マーカー
本発明において、配列番号:1(配列番号:3,5)に記載のKU−TES−1遺伝子が、CT抗原様の発現パターンを示す、すなわち癌において特異的に発現しているという知見を得た。よって、当該遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって、前記癌の罹患の有無や程度が特異的に検出でき、癌の診断を行うことができる。
【0111】
本発明のポリヌクレオチドは、従って、被験者におけるKU−TES−1遺伝子の発現の有無またはその程度を検出することによって、該被験者が癌に罹患しているか否かまたはその罹患の程度を診断することのできるツール(癌マーカー)として有用である。
【0112】
本発明の癌マーカーは、前記本発明ポリヌクレオチドの塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなることを特徴とするものである。
【0113】
具体的には、本発明の癌マーカーは、配列番号:1、3または5に記載の塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなるものを挙げることができる。
【0114】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、前記配列番号:1、3または5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、または該塩基配列における少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を含有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:TおよびG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0115】
ここで、正鎖側のポリヌクレオチドには、配列番号:1、3または5に記載の塩基配列、またはその部分配列を含有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
【0116】
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で癌マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で癌マーカーとして使用されてもよい。
【0117】
本発明の癌マーカーは、具体的には、前記配列番号:1、3または5に記載の塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。またこれら本発明遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列またはその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては、上記全長配列またはその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を含有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0118】
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法においては、本発明のKU−TES−1遺伝子、またはこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に検出できること、またRT−PCR法においては、本発明のKU−TES−1遺伝子、またはこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物または生成物がKU−TES−1遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
【0119】
本発明の癌マーカーは、例えば配列番号1、3または5に記載の塩基配列をもとに、例えばprimer 3( HYPERLINK http://www.genome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には前記本発明ポリヌクレオチドの塩基配列を primer 3またはベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマーまたはプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマーまたはプローブとして使用することができる。このような本発明の癌マーカーの具体例としては、例えば配列番号:9または10に記載のプライマーを挙げることができる。
【0120】
本発明の癌マーカーは、上述するように連続する少なくとも15塩基の長さを含有するものであればよいが、具体的にはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
【0121】
本発明において癌の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に癌が疑われる被験組織におけるKU−TES−1遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。この場合、上記本発明の癌マーカーは、KU−TES−1遺伝子の発現によって生じたRNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、または該RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。当該プライマーまたはプローブとしての利用を可能とするために、本発明の癌マーカーは放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識することができ、当該標識化されたポリヌクレオチドも本発明の癌マーカーの範疇に含まれる。
【0122】
本発明癌マーカーを癌の検出においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を含有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を含有するものが例示できる。
【0123】
本発明の癌マーカーは、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができる。
【0124】
本発明の癌マーカーは、癌の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。すなわち本発明の癌マーカーは膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等の癌の診断に有用であり、特に、膵癌または子宮体癌の診断に有用である。
具体的には、該癌マーカーを利用した癌の診断は、被験者における生体組織(癌が疑われる組織)と正常者における同様の組織におけるKU−TES−1遺伝子の遺伝子発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の組織と正常者の組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的にはKU−TES−1遺伝子は癌(膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌。特に膵癌または子宮体癌)で発現誘導を示すので、被験者の当該組織で発現しており、該発現量が正常者の対応組織の発現量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多ければ、被験者について癌の罹患が疑われる。
【0125】
▲2▼本発明のタンパク質またはポリペプチドに関する癌マーカー
本発明において、配列番号:2(配列番号:4,6)に記載のKU−TES−1(KU−TES−1タンパク)に対するIgG抗体が癌患者血清中に特異性を示して存在しているという知見を得た。よって、癌患者血清中における当該KU−TES−1に対する抗体の存在の有無を検出することによって、前記癌の罹患の有無が特異的に検出でき、癌の診断を行うことができる。
【0126】
本発明のタンパク質またそのは部分ペプチド(ポリペプチド)は、従って、被験者における抗KU−TES−1抗体の存在の有無またはその程度を検出することによって、該被験者が癌に罹患しているか否かまたはその罹患の程度を診断することのできるツール(癌マーカー)として有用である。
【0127】
本発明の癌マーカーは、本発明タンパク質のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸を含有するポリペプチドからなることを特徴とするものである。
当該癌マーカーは、本発明のタンパク質又はその部分ペプチド(ポリペプチド)に対する抗体を特異的に認識することのできるタンパク質またはポリペプチドであれば、如何なるものであっても良い。具体的には、本発明の癌マーカーは、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸を含有するポリペプチドからなるものを挙げることができる。より具体的には、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸以上のアミノ酸配列を含有するポリペプチドを挙げることができる。
前記癌マーカーの有効成分となるポリペプチドは、本発明タンパク質のアミノ酸配列の連続する8アミノ酸以上の部分に、さらにβ−galactosidaseのようなマーカータンパク質が融合されたものであっても良い。
【0128】
本発明の癌マーカーは、癌の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。すなわち本発明の癌マーカーは膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等の癌の診断に有用であり、特に、膵癌または子宮体癌の診断に有用である。
本発明のタンパク質やペプチド(ポリペプチド)を診断薬として用い、癌が疑われる患者から得た試料(例えば血液、癌が疑われる組織など)中の抗体の存在を検出することにより、癌を診断することができる。ここで用いる本発明タンパク質およびペプチド(ポリペプチド)の製造法については、前記3)および4)の項で述べたとおりである。
【0129】
具体的には、患者の血液(血清)を採取し、例えば本発明の癌マーカーを用いたウェスタンブロット法、ELISA法、イムノクロマトグラフィー法、ラテックス凝集法など公知の検出方法において、上記本発明タンパク質またはペプチドに対する抗体を検出することができる。
【0130】
癌の診断に際しては、被験者の血清における抗KU−TES−1抗体の量と正常者の血清における抗KU−TES−1抗体の量の違いを判定すればよい。この場合、抗体量の違いには、抗体のある/なし、あるいは抗体量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的にはKU−TES−1に対する抗体は癌(膵癌、大腸癌、子宮体癌または前立腺癌)患者の血清中で検出されるので、被験者の血液(血清)中に当該抗体が存在しており、この抗KU−TES−1抗体の量が正常者の抗KU−TES−1抗体量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多いことが判定されれば、癌の罹患が疑われる。
【0131】
また近年、抗原ペプチドとHLA抗原との複合体を用いて抗原特異的CTLを検出する新しい検出方法が確立された(Science,274:p94,1996)。本発明の癌抗原ペプチドとHLA抗原との複合体を当該検出方法に供し、癌抗原特異的CTLを検出することにより、癌を診断することができる。
具体的には、文献(Science,274:p94,1996)に記載の方法に従って蛍光標識したHLA抗原と本発明のペプチドとの複合体の4量体を作製し、これを用いて癌が疑われる患者の末梢血リンパ球中の抗原ペプチド特異的CTLをフローサイトメーターにより定量することにより、前記診断を行うことができる。
【0132】
▲3▼本発明の抗体に関する癌マーカー
本発明は癌マーカーとして、本発明のタンパク質又はその部分ペプチドを特異的に認識することのできる抗体を提供する。より具体的には、本発明は、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなる本発明のタンパク質またはその部分ペプチドを特異的に認識する抗体からなる癌マーカーを提供する。
【0133】
本発明においては、種々の癌組織および癌細胞において、本発明のKU−TES−1遺伝子が特異的に発現しているという知見を得た。またKU−TES−1タンパクに対するIgG抗体が癌患者血清中に特異性を示して存在しているという知見を得た。よってKU−TES−1タンパクの発現の有無やその発現の程度を検出することによって、癌の有無やその程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を行うことができる。
上記抗体は、従って、被験者におけるKU−TES−1タンパク質の発現の有無またはその程度を検出することによって、該被験者が癌に罹患しているか否かまたはその疾患の程度を診断することのできるツール(癌マーカー)として有用である。
【0134】
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、本発明タンパク質を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよい。さらにこれら本発明タンパク質のアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
これらの抗体は、前記「9)本発明の抗体」の項に記載した方法により製造することができる。
【0135】
本発明の抗体は、KU−TES−1に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現したKU−TES−1タンパク質を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内におけるKU−TES−1発現の有無を検出するためのプローブとして有用である。
【0136】
具体的には、癌が疑われる被験組織や血液をバイオプシ等で採取し、必要に応じそこから常法に従ってタンパク質を調製して、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、上記抗体を常法に従ってプローブとして使用することによってKU−TES−1を検出することができる。
【0137】
癌の診断に際しては、被験者組織におけるKU−TES−1タンパクの量と正常な対応組織におけるKU−TES−1タンパク量の違いを判定すればよい。この場合、タンパク量の違いには、タンパクのある/なし、あるいはタンパク量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的にはKU−TES−1遺伝子は癌で発現誘導を示すので、被験者組織で該遺伝子の発現産物(KU−TES−1)が存在しており、該量が正常な組織の発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多いことが判定されれば、癌の罹患が疑われる。
【0138】
▲4▼癌の検出方法(診断方法)
本発明は、前述した本発明癌マーカーを利用した癌の検出方法(診断方法)を提供するものである。
【0139】
具体的には、本発明の検出方法(診断方法)は、被験者の血液(血清)を採取するか、若しくは癌が疑われる被験組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこに含まれるKU−TES−1遺伝子の遺伝子発現量、これらの遺伝子に由来するKU−TES−1タンパク質量、当該KU−TES−1に対する抗体の量、若しくはKU−TES−1由来の癌抗原ペプチドとHLA抗原との複合体を認識するCTLの量を、検出・測定することにより、癌の罹患の有無またはその程度を診断するものである。また本発明の検出(診断)方法は、例えば癌患者において、癌の改善のために治療薬を投与した場合における、該疾患の改善の有無またはその程度を検出(診断)することもできる。さらに本発明の検出(診断)方法は、本発明のタンパク質、ペプチドまたはポリヌクレオチド(発現ベクター)を有効成分とする医薬の適応可能な癌患者の選択や、当該医薬による治療効果の判定などにも利用できる。
【0140】
本発明の検出方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の癌マーカーを接触させる工程、
(b) 生体試料中のKU−TES−1遺伝子発現レベル、KU−TES−1タンパク質量、抗KU−TES−1抗体量、またはKU−TES−1由来の癌抗原ペプチドとHLA抗原との複合体を認識するCTLの量を、上記癌マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の結果をもとに、癌の罹患を判断する工程。
【0141】
ここで用いられる生体試料としては、被験者の生体組織(癌が疑われる組織及びその周辺組織、または血液など)から調製される試料を挙げることができる。具体的には、該組織から調製されるRNA含有試料、若しくはそれからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む試料、上記組織から調製されるタンパク質を含む試料、上記組織から調製される抗体を含む試料、あるいは上記組織から調製される末梢血リンパ球を含む試料を挙げることができる。
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
【0142】
(▲4▼−1) 測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
測定対象物としてRNAを利用する場合、癌の検出は、具体的に下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと、前記本発明の癌マーカー(本発明のポリヌクレオチドの塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド)とを結合させる工程、
(b)該癌マーカーに結合した生体試料由来のRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記癌マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌の罹患を判断する工程。
【0143】
測定対象物としてRNAを利用する場合は、本発明の検出方法(診断方法)は、該RNA中のKU−TES−1遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、前述のポリヌクレオチドからなる本発明の癌マーカー(本発明のポリヌクレオチドの塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチド)をプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
【0144】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の上記癌マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中のKU−TES−1遺伝子の発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の癌マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された癌マーカー(DNA)とRNAとの二重鎖を、癌マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士フィルム社製)または蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて、該プロトコールに従って癌マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、癌マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
【0145】
RT−PCR法を利用する場合は、本発明の上記癌マーカーをプライマーとして用いることによって、RNA中のKU−TES−1遺伝子の発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的のKU−TES−1遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の癌マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した癌マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT−PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
【0146】
DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記癌マーカーをDNAプローブ(1本鎖または2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の癌マーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。
【0147】
(▲4▼−2) 測定対象の生体試料としてタンパク質を用いる場合
測定対象物としてタンパク質を用いる場合は、本発明の癌の検出方法(診断方法)は、生体試料中のKU−TES−1を検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質を含有する試料と抗体に関する本発明の癌マーカー(KU−TES−1を認識する抗体)とを結合させる工程、
(b)該癌マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質を、上記癌マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌の罹患を判断する工程。
【0148】
より具体的には、本発明の癌マーカーとして抗体(KU−TES−1を認識する抗体)を用いて、ウエスタンブロット法などの公知方法でKU−TES−1を検出、定量する方法を挙げることができる。
【0149】
ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明癌マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した標識抗体(一次抗体に結合する抗体)を用い、得られる標識化合物の放射性同位元素、蛍光物質などに由来するシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明癌マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0150】
(▲4▼−3)測定対象の生体試料として抗体を用いる場合
測定対象物としてタンパク質中に存在する抗体を用いる場合は、本発明の癌の検出方法(診断方法)は、生体試料中の抗KU−TES−1抗体を検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製された抗体を含有する試料(例えば血清)と、タンパク質またはペプチド(ポリペプチド)に関する本発明の癌マーカー(KU−TES−1抗体を認識するタンパク質またはポリペプチド)とを結合させる工程、
(b)該癌マーカーに結合した生体試料由来の抗体を、上記癌マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌の罹患を判断する工程。
【0151】
より具体的には、本発明の癌マーカーとして抗KU−TES−1抗体を認識するタンパク質またはペプチド(ポリペプチド)を用いて、ウエスタンブロット法、ELISA法、イムノクロマトグラフィー法、ラテックス凝集法などの公知方法で抗KU−TES−1抗体を検出、定量する方法を挙げることができる。
【0152】
ウエスタンブロット法は、例えば本発明の癌マーカーを固層に固定した後、生体試料中の抗KU−TES−1抗体を結合させ、125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した標識抗体(二次抗体)をさらに結合させ、得られる標識化合物の放射性同位元素、蛍光物質などに由来するシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで検出し、測定することによって実施できる。また、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0153】
ELISA法は、例えば96穴マイクロプレートに本発明の癌マーカーを固定した後、生体試料中の抗KU−TES−1抗体、酵素標識抗体を順次結合させ、抗原抗体結合物を生成させる。この結合物を基質液との酵素反応により発色させ、プレートリーダーで吸光度を測定することにより実施することができる。
【0154】
(▲4▼−4) 測定対象の生体試料として癌抗原特異的CTLを用いる場合
測定対象物として末梢血リンパ球中に存在する癌抗原特異的CTLを用いる場合は、本発明の癌の検出方法(診断方法)は、生体試料中のKU−TES−1特異的CTLを検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には、文献(Science,274:p94,1996)に記載の方法に従って蛍光標識したHLA抗原と本発明のペプチドとの複合体の4量体を作製し、これを用いて癌が疑われる患者の末梢血リンパ球中の抗原ペプチド特異的CTLをフローサイトメーターにより定量することにより行うことができる。
【0155】
(▲4▼−5)癌の診断
癌の診断は、例えば、被験者の血液や癌が疑われる被験組織におけるKU−TES−1遺伝子の遺伝子発現レベル、これらの遺伝子の発現産物であるKU−TES−1タンパク質の量、抗KU−TES−1抗体の量、またはKU−TES−1特異的CTLの量を測定することにより行うことができる。その際、場合によっては正常な対応組織における当該遺伝子発現レベルまたは当該タンパク質レベル等と比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
【0156】
ここで被験者の被験組織と正常な対応組織との遺伝子、タンパク質、抗体、またはCTLの量(レベル)の比較は、被験者の生体試料と正常者の生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。並行して行わない場合は、複数(少なくとも2つ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な組織を用いて均一な測定条件で測定して得られたKU−TES−1遺伝子の遺伝子発現レベル、KU−TES−1の量、抗KU−TES−1抗体の量、またはKU−TES−1特異的CTLの量の平均値または統計的中間値を、正常者の値として、比較に用いることができる。
【0157】
被験者が、癌であるかどうかの判断は、例えば該被験者の組織におけるKU−TES−1遺伝子の遺伝子発現レベル、KU−TES−1の量、抗KU−TES−1抗体の量、またはKU−TES−1特異的CTLの量が、正常者のそれらのレベルと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上多いことを指標として行うことができる。
【0158】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0159】
実施例1
精巣由来 cDNA ライブラリーの作製
前立腺癌の手術により摘出された精巣より患者のインフォームドコンセントを得て入手したヒト正常精巣組織から塩化セシウム密度勾配法にてトータルRNAを抽出した。Oligotex−dT 30 super mRNA Purification kit (宝酒造)にて2回精製してPoly (A)+RNAを抽出した。cDNAライブラリー作製には5μgのPoly (A)+RNAを使用した。First−strand合成にはXho I切断部位と5−methyl−CTPを持つOligodeoxythymidylate primerを使用した。cDNAは、EcoRIアダプターにライゲーションし、XhoIで消化した。このcDNA断片は直接バクテリオファージ発現ベクターであるλ ZAP II(Stratagene社)に挿入し、大腸菌にトランスフォームした。こうして作製されたライブラリーのプライマリーサイズは1.2×107であった。
【0160】
実施例2
膵管癌患者血清によるc DNA ライブラリーのスクリーニング
膵管癌患者よりインフォームドコンセントを得て血清を採取した。膵管癌患者血清1mlを5%スキムミルクで1:15に希釈し、大腸菌のライセートと一晩反応させた後、上清を5%スキムミルク添加Tris buffered Saline (TBS)、0.01%アジ化ナトリウムで1:200に希釈してインサートのないファージタンパク質を転写したニトロセルロース膜Hybond−C(アマシャム・ファルマシア社)と反応させた。この操作により血清中の抗大腸菌抗体と抗ファージ抗体を除去した。150mmのディシュ当たり約1.5×104個のファージを播き、6時間培養してプラークを発現させた後、isipropyl−β−D(−)−thiogalactpyranoside(IPTG)を吸収させたニトロセルロース膜を4時間反応させ、cDNA由来のリコンビナントタンパク質をβ−galactosidasaとの融合タンパク質として発現・転写した。このようにして作製したニトロセルロース膜と上記の吸収済み患者血清とを反応させた後、アルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgG−Fc抗体(Cappel社)を60分間反応させ、Nitro blue tetrazolium(Boehringer Mannheim社)と5−bromo−4−chloro−3−indolyl phosphate(Sigma社)にて発色させて陽性クローンを同定した。陽性クローンはディシュから分取し、更に90mmディシュ上で再度スクリーニングして単離した。
【0161】
こうして得られた単離抗原遺伝子クローンをKU−TES−1(別名TW12)と命名した。またKU−TES−1はT3センスプライマー(配列番号7)とT7アンチセンスプライマー(配列番号8)でEx Taq kit(宝酒造)を使用した35サイクルのPCRで増幅し、Big Dye Sequencing Ready Reaction kitとABI Prism310あるいは3100シークエンサー(ABI社)を使用して塩基配列を決定した。決定した塩基配列およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:1及び2に示した。
【0162】
実施例3
単離抗原遺伝子の癌組織、癌細胞での発現レベルの検討
KU−TES−1クローンに関して、RT−PCR法を用いてmRNA発現レベルを検討した。細胞株、癌組織からトータルRNAを塩化セシウム密度勾配法で抽出した。正常組織トータルRNAは、市販のもの(CLONTECH社)を使用した。5μgのトータルRNAを逆転写酵素M−MLV Reverse Transcriptase Rnase H(−) (Promega社)で処理してcDNAを調製した。cDNA0.5μgとセンスプライマー(配列番号9)とアンチセンスプライマー(配列番号10)を用い、Ex Taq kit(宝酒造)を使用して35サイクルのPCRで増幅した。増幅産物は電気泳動した後、増幅産物のバンドを検出した。コントロールとしてGAPDH遺伝子もPCRにて増幅して検出した。ヒト正常組織(脳、肺、胎盤、肝臓、胃、大腸、精巣、膵臓)、ヒト正常細胞株(線維芽細胞、メラノサイト、T細胞TIL1362、B細胞EB888)、ヒトグリオーマ細胞株U87MO、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562、ヒト腎細胞癌細胞株RCC−6、ヒト乳癌細胞株MIDA231、ヒト肺癌細胞株KIS、ヒト膵管癌細胞株(Panc1、PK8、PK59)、ヒト大腸癌細胞株(colo320、colo201、SW837)、ヒト肝細胞癌株(Li7、hLE、hLF、Alexander、HuH7)、ヒト肝芽腫細胞株HepG2、ヒト胃癌細胞株(MKN1、MKN7、MKN28、MKN74)、ヒト膵管癌組織(K2F、KYM、KYH、SAIと表記)、ヒト胃癌組織(IWAと表記)、ヒト子宮体癌組織(KIT、SHIと表記)、ヒト大腸癌組織(IWA2と表記)、ヒトメラノーマ組織(MEL1と表記)の各組織、細胞について検討を行った結果を図1に示した。その結果、正常組織では精巣で、また癌細胞株では膵管癌細胞株Panc1、腎細胞癌細胞株RCC−6、及び肝細胞癌細胞株hLFで発現が検出された。また癌患者の癌組織検体では、膵管癌組織2検体(K2F、KYM)と子宮体癌組織2検体(KIT、SHI)で発現が検出された。以上のようにKU−TES−1はCT抗原としての発現パターンを示すことが明らかとなった。
【0163】
さらにNorthern blot hybridization法によりKU−TES−1クローンの発現を解析した。トータルRNAは、上記のRT−PCR法で用いたものと同じものを用いた。10μgの各トータルRNAを1%アガロースゲルの電気泳動で展開した。RNAはニトロセルロース膜Hybond−XL(アマシャム・ファルマシア社)に転写した。前記RT−PCRでのPCR産物をHigh Prime DNA Labelling kit(Boehringer Mannheim社)を用いて32P標識し、プローブとした。プレハイブリダイゼーションは65℃、1時間で行い、プローブ22ngとのハイブリダイゼーションは、65℃、2時間行った。ハイブリダイゼーション液にはQuickHyb hybridization Solution (Stratagene社)を使用した。ハイブリダイゼーション後のニトロセルロース膜は室温で1%SDSを含む2×SSC液で5分間2回洗浄後、0.1%SDSを含む0.1×SSCで60℃、30分間2回洗浄した。BAS−2500あるいは5000(富士フィルム社)を用いてラジオアイソトープを検出した。
その結果、正常組織では精巣でのみmRNAの発現が認められ、その長さは約3kbpであった。また癌患者の癌組織検体では、膵管癌患者検体K2Fと子宮体癌患者検体SHIで発現が検出された。
【0164】
実施例4
癌患者血清中の KU−TES− 1がコードする蛋白質に対する抗体の検出
KU−TES−1の蛋白質に対するIgG抗体が癌患者に特異性を持って存在するか否かを検討するために、KU−TES−1のファージクローンを使用して血清スクリーニングを行った。各種血清は100倍に希釈し、抗大腸菌抗体と抗バクテリオファージ抗体の吸収を充分に行った後に使用した。陽性コントロールは、KU−TES−1の単離に用いた患者の血清を使用し、KU−TES−1クローンの挿入されたファージとインサートの挿入されていないファージとの発色反応のコントラスト差で判定した。検討には、健常人30名、膵管癌患者20名、腎細胞癌患者14名、食道癌患者9名、メラノーマ患者22名、前立腺癌患者10名、膀胱癌患者18名、大腸癌患者18名、子宮体癌患者12名からインフォームドコンセントを取得して採取した血清を用いた。更に膵管癌随伴性膵炎による膵組織破壊の影響を検討するため7名の急性膵炎後血清を加えた。結果を表2に示す。KU−TES−1の蛋白質に対する抗体は、膵管癌3名、大腸癌1名、子宮体癌2名、前立腺癌1名の血清中に存在が確認された。また、KU−TES−1の蛋白質に対する抗体は膵炎患者血清には検出されなかったが、健常人1名の血清中で検出された。
以上のようにKU−TES−1抗原に対するIgG抗体は、癌患者血清中に特異性を示して存在することが明らかとなった。
これらの結果から、新規遺伝子KU−TES−1は、癌抗原として作用していることが明らかとなった。
【0165】
【表2】
【0166】
実施例5
KU−TES− 1遺伝子とホモロジーを有する遺伝子の同定
データベース(BLAST Search)を用いてKU−TES−1遺伝子(配列番号1)のホモロジー検索を行った。その結果、機能未知の2つの遺伝子(Accession No. NM_173081、Accession No. XM_166109)と高い相同性が認められた。Accession No. NM_173081の塩基配列およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3及び4に示した。またAccession No. XM_166109の塩基配列およびアミノ酸配列を、それぞれ5及び6に示した。これらのAccession No.で示されるタンパク質は、KU−TES−1のアミノ酸配列(配列番号2)の第391位までと同一の配列を有し、かつそのC末端側に新たな481アミノ酸残基を有するタンパク質であった。この結果と先の実施例3の結果から、前記Accession No.で示されるタンパク質はKU−TES−1のスプライスバリアントであると考えられた。
【0167】
実施例3と同様のNorthern blot hybridizationを、プローブの濃度を変えて行った。ヒト正常精巣およびヒト膵管癌細胞株Panc1由来のトータルRNAに対してハイブリダイゼーションを行った結果、約3kbと約1.5kbの位置にバンドが検出され、これらは前記KU−TES−1およびそのスプライスバリアントに対応するものと考えられた。
【0168】
【発明の効果】
本発明により、新たな癌抗原であるKU−TES−1抗原およびその遺伝子、およびこれらの物質の癌免疫分野における利用などが提供される。本発明のKU−TES−1抗原およびその遺伝子は、多くの癌患者の処置および診断に利用することができる。
【0169】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】KU−TES−1抗原遺伝子のmRNAレベルをRT−PCR法にて検討した結果を示した図である。コントロールとしてGAPDH遺伝子もPCRにて増幅して検出した。ヒト正常組織(図中上段、左から脳(brain)、肺(lung)、胎盤(placenta)、肝臓(liver)、胃(stomach)、大腸(colon)、精巣(testis)、膵臓(pancreas))、ヒト正常細胞株(左から線維芽細胞(fibroblast)、メラノサイト、T細胞TIL1362、B細胞EB888)、ヒトグリオーマ細胞株U87MO、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562、ヒト腎細胞癌細胞株RCC−6、ヒト乳癌細胞株MIDA231、ヒト肺癌細胞株KIS、ヒト膵管癌細胞株(Panc−1、PK8、PK59)、ヒト大腸癌細胞株(colo320、colo201、SW837)、ヒト肝細胞癌株(Li7、hLE、hLF、Alexander、HuH7)、ヒト肝芽腫細胞株HepG2、ヒト胃癌細胞株(MKN1、MKN7、MKN28、MKN74)、ヒト膵管癌組織(K2F、KYM、KYH、SAIと表記)、ヒト胃癌組織(IWAと表記)、ヒト子宮体癌組織(KIT、SHIと表記)、ヒト大腸癌組織(IWA2と表記)、ヒトメラノーマ組織(MEL1と表記)の各組織、細胞について検討を行った。
【図2】KU−TES−1抗原遺伝子のmRNAをNorthern blot hybridizationにより検出した結果を示した図である。コントロールとしてGAPDH遺伝子も検出した。図中、AはKU−TES−1プローブ22ng/μlを用いた結果を、Bは同プローブ33ng/μl用いた結果を、またCはGAPDHプローブを用いた結果を示す。また図中、レーン1はヒト正常精巣由来のRNAを用いた結果を、レーン2はヒト膵管癌細胞株Panc1由来RNAを用いた結果を、またレーン3はネガティブコントロールの結果を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な癌精巣抗原(Cancer−Testis抗原、以下CT抗原と称する)KU−TES−1に関する。さらに詳しくは、本発明は、新規なCT抗原であるKU−TES−1およびその遺伝子の、癌免疫分野における利用などに関する。
【0002】
【従来の技術】
膵管癌は年々増加傾向にあるが、早期発見が困難である。治癒切除が施行された症例でも極めて高率に局所再発や肝転移を来し、遠隔成績は極めて不良である。早期発見と遠隔成績の向上のために、例えば術中照射、2チャンネル化学療法、膵液細胞診による上皮内微小浸潤癌の発見など精力的な診断治療技術の改良が進められているが、充分なものではない。既存の技術の更なる発展と共に、新たな治療法の開発が必要とされている。
【0003】
このような背景の中で、近年の分子生物学と免疫学の発展は、癌治療の主軸である外科療法・化学療法・放射線療法に加え新たな癌治療法としての免疫療法に科学的根拠を与えつつある。1991年、ベルギーLudwig研究所のBoonらは自己癌細胞株と癌反応性T細胞を用いたcDNA発現クローニング法によりCD8+T細胞が認識するヒトメラノーマ抗原MAGE1を単離した(非特許文献1を参照)。Boonの報告後CD8+T細胞の認識する抗原としてtyrosinase(非特許文献2を参照)、MART1/MelanA(非特許文献3を参照)、gp100(非特許文献4を参照)などの単離が行われた。しかし癌反応性T細胞や癌細胞株の確立はヒトメラノーマ以外の癌では極めて困難であり、この方法を他の癌種に適応拡大して抗原同定に至る例はごく少数であった。
【0004】
1995年、Preudschuhらは患者血清中抗体が認識する自己癌抗原を同定するautologous typing法にラムダファージcDNA発現クローニング法を導入したSEREX(serological identification of tumor antigens by cDNA expression cloning)法を施行し、患者血清中IgG抗体が認識する多数の癌抗原を単離した(参考文献5を参照)。方法論自体は自己免疫疾患の領域で自己抗原の同定に用いられていたもので決して斬新なものではない。その後様々な癌種でSEREX法が試みられ、膵管癌でもHsp105(非特許文献6および7を参照)やKU−PAN−1(赤田ら、投稿中)といった抗原が単離されている。SEREX単離抗原は、その原理からIgG抗体産生に関与するCD4+ヘルパーT細胞及びB細胞を認識させ活性化させる能力を有している。従ってヘルパーT細胞の動態はTh2細胞優位で、Th1細胞から誘導されるCD8+T細胞は逆に抑制されている可能性が示唆される。しかしCD8+T細胞の系で同定された癌抗原がSEREX法でも重複して単離されること(非特許文献8を参照)、又逆にSEREX法で単離された抗原NY−ESO−1は抗体産生とCD8+T細胞を同時に誘導し、正の相関があることが報告されている(非特許文献9を参照)。従って現在では、SEREX単離抗原は抗体産生とCD8+T細胞の両者の免疫応答を惹起する可能性があると考えられている(非特許文献10を参照)。
【0005】
これらSEREX単離抗原の中で、Cancer−Testis(CT)抗原は各種の癌組織、及び正常組織のうち精巣と一部卵巣・胎盤組織で発現が認められる抗原群である。CT抗原はSEREX法で比較的高率に検出され、正常精巣ではMHC class Iを発現しない精粗細胞・精母細胞に発現しており、癌特異的共通抗原となり免疫療法に応用できる可能性がある(非特許文献11、12、13、14および15を参照)。
【0006】
【非特許文献1】
Bruggen P. et al., Science, 254(5038):1643−1647(1991)
【非特許文献2】
Robbins P.F. et al., Cancer Res., 54(12):3124−3126(1994)
【非特許文献3】
Kawakami Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91(9):3515−3519(1994)
【非特許文献4】
Kawakami Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91(14):6458−6462(1994)
【非特許文献5】
Sahin U. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92(25):11810−11813 (1995)
【非特許文献6】
Nakatsura T. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 281(4):936−944(2001)
【非特許文献7】
Nakatsura T. et al., Eur. J. Immunol., 32(3):826−836 (2002)
【非特許文献8】
OLD L. J. et al., J. Exp. Med., 187(8):1163−1167(1998)
【非特許文献9】
Jager E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97(9):4760−4765(2000)
【非特許文献10】
Jager E. et al., J. Exp. Med., 187(2):265−270(1998)
【非特許文献11】
Tureci O. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(9):5211−5216(1998)
【非特許文献12】
Eynde B. J. et al., Curr. Opin. Immunol., 9(5):684−693(1997)
【非特許文献13】
Tureci O. et al., Int. J. Cancer, 77(1):19−23(1998)
【非特許文献14】
Zendman A. J. et al., Cancer Res., 59(24):6223−6229(1999)
【非特許文献15】
Scanlan M. J. et al., Cancer Lett., 150(2):155−164(2000)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新たな癌抗原であるKU−TES−1抗原およびその遺伝子の、癌免疫分野における利用などを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
我々は膵管癌の診断と治療に寄与する癌抗原を単離すべく、特にCT抗原の単離を目的として、正常精巣由来cDNAライブラリーと膵管癌患者血清を使用したSEREX法を施行した。
まず、精巣由来cDNAファージライブラリーを作製し、1名の膵癌患者血清を用いて約20万クローンをスクリーニングし7個の陽性クローンを得、4種類の遺伝子を同定した。RT−PCR法によりその発現を調べたところ、そのうちの1つである新規遺伝子KU−TES−1は精巣と数種類の癌細胞株・癌組織に発現が認められた。次に各種癌患者血清を用いて、KU−TES−1に対するIgG抗体の存在を調べたところ、複数の癌患者(膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌)の血清中にIgG抗体が認められた。
【0009】
以上のようにKU−TES−1はCT抗原としてのmRNA発現を示し、複数の癌患者血清中に当該KU−TES−1に対する IgG抗体が存在することから、癌抗原として少なくともCD4+T細胞に認識されることが明らかとなり、更にはCD8+T細胞にも認識されるものと考えられた。よって本発明のKU−TES−1は、新たな癌抗原として癌の診断及び治療に応用することができる。
本発明は、以上のような知見に基づき完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち本発明は、
(1) 以下の(a)、(b)、(c)、(d)または(e)のいずれかのポリヌクレオチド:
(a) 配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(b) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(c) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(d) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(e) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(2) 前記(1)記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、
(3) 前記(2)記載の発現ベクターによって形質転換された形質転換体、
(4) 前記(3)記載の形質転換体を培養し、発現される組換えタンパク質を回収することからなる、組換えタンパク質の生産方法、
(5) 前記(1)記載のポリヌクレオチドによりコードされるか、または前記(4)記載の生産方法により生産されるタンパク質、
(6) 以下の(a)、(b)または(c)のいずれかのタンパク質:
(a) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b) 前記(a)のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質、
(c) 前記(a)のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質、
(7) 前記(1)記載のポリヌクレオチド、前記(2)記載の発現ベクター、前記(3)記載の形質転換体、あるいは前記(5)または(6)記載のタンパク質を有効成分として含有する医薬、
(8) 癌ワクチンとして使用される、前記(7)記載の医薬、
(9) 前記(5)または(6)記載のタンパク質に特異的に結合する抗体、
(10) 前記(1)記載のポリヌクレオチドの塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる癌マーカー、
(11) 配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、前記(10)記載の癌マーカー、
(12) 前記(5)または(6)記載のタンパク質のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸を含有するポリペプチドからなる癌マーカー、
(13) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸を含有するポリペプチドからなる、前記(12)記載の癌マーカー、
(14) 前記(9)記載の抗体からなる癌マーカー、
(15) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体からなる、前記(14)記載の癌マーカー、
(16) 癌が膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌である、前記(10)〜(15)いずれか記載の癌マーカー、
(17) 前記(10)〜(16)いずれか記載の癌マーカーを含有してなる癌の診断薬、
(18) 前記(5)または(6)記載のタンパク質の部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチド、
(19) 前記(18)記載のペプチドを含有するペプチド、
(20) 前記(18)または(19)記載のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(21) 前記(20)記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、
(22) 前記(18)または(19)記載のペプチド、前記(20)記載のポリヌクレオチド、あるいは前記(21)記載の発現ベクターを有効成分として含有する医薬、ならびに
(23) 癌ワクチンとして使用される、前記(22)記載の医薬、に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
1)本発明のポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドとは、以下の(a)、(b)、(c)、(d)または(e)のいずれかのポリヌクレオチドを指す:
(a) 配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(b) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(c) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(d) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(e) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド。
【0012】
より具体的には、以下の(A)、(B)、(C)、(D)または(E)のいずれかのポリヌクレオチドが例示される:
(A) 配列番号:1に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(B) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(C) 前記(A)または(B)のポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(D) 前記(A)または(B)のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(E) 前記(A)または(B)のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド。
【0013】
本発明のポリヌクレオチドは、種々の細胞や組織、例えばヒト精巣由来のcDNAやmRNA、cRNA、ゲノムDNA、または合成DNAのいずれであっても良い。また本発明のポリヌクレオチドは1本鎖および2本鎖のいずれの形態もとることができる。
【0014】
ここで配列番号:1に記載の塩基配列は、ヒト精巣由来cDNAライブラリーを膵管癌患者血清でスクリーニングすることによりクローニングされたKU−TES−1遺伝子の塩基配列であり、配列番号:2に記載のアミノ酸配列は当該KU−TES−1のアミノ酸配列に該当する。
配列番号:3に記載の塩基配列はGenBank データベースにおいてAccession No. NM_173081(Accession No.BC0393212)として登録されている機能未知の遺伝子の塩基配列であり、配列番号:4に記載のアミノ酸配列は当該遺伝子のアミノ酸配列に該当する。
【0015】
配列番号:5に記載の塩基配列はGenBank データベースにおいてAccession No. XM_166109として登録されている機能未知の遺伝子の塩基配列であり、配列番号:6に記載のアミノ酸配列は当該遺伝子のアミノ酸配列に該当する。
これらAccession No. NM_173081およびAccession No. XM_166109で示されるタンパク質は、KU−TES−1のアミノ酸配列(配列番号2)の第391位までと同一の配列を有し、かつそのC末端側に新たな481アミノ酸残基を有するタンパク質であることから、KU−TES−1のスプライスバリアントであると考えられる(以下、これら配列番号:1、3および5に記載の塩基配列を含有する遺伝子をまとめて「KU−TES−1遺伝子」と称する場合がある)。
【0016】
前記(a)(前記(A))における配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチドとしては、配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
また、当該配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端側及び/又は3’末端側に他の塩基配列の付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドも挙げられる。当該ポリヌクレオチドは、配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質と同様の作用を有するタンパク質をコードするものであれば良い。
【0017】
前記(b)(前記(B))における配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドとしては、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
また、当該配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端側及び/又は3’末端側に他の塩基配列の付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドも挙げられる。当該ポリヌクレオチドは、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同様の作用を有するタンパク質をコードするものであれば良い。
【0018】
これら配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、あるいは配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドは、本明細書配列表の配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に開示されている塩基配列、あるいはAccession No. NM_173081(Accession No.BC0393212)またはAccession No. XM_166109において開示されている塩基配列の適当な部分をハイブリダイゼーションのプローブあるいはPCRのプライマーに用いて、例えばヒト精巣細胞株(Hs 1.Tes細胞(ATCC CRL−7002)、Hs 181.Tes細胞(ATCC CRL−7131)等)由来のcDNAライブラリーをスクリーニングすることなどによりクローニングすることができる。該クローニングは、例えばMolecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に従い、当業者ならば容易に行うことができる。
【0019】
前記(c)(前記(C))における「前記(a)または(b)((A)または(B))のポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、例えば前記(a)または(b)((A)または(B))のいずれかのポリヌクレオチドの塩基配列と約40%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列同一性を有する塩基配列を含有するポリヌクレオチドが挙げられる。具体的には、前記(a)または(b)((A)または(B))のいずれかのポリヌクレオチドの部分配列からなるポリヌクレオチドなどが挙げられる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えばMolecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に記載の方法に従って行うことができる。また市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
【0020】
ここで「ストリンジェントな条件」とは、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA)や前記Molecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。
ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、6×SSC(20×SSCは、333mM Sodium citrate、333mM NaClを示す)、0.5%SDSおよび50% ホルムアミドを含む溶液中で42℃にてハイブリダイズさせる条件、または6×SSCを含む(50%ホルムアミドは含まない)溶液中で65℃にてハイブリダイズさせる条件などが挙げられる。
またハイブリダイゼーション後の洗浄の条件としては、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。
【0021】
前記(d)(前記(D))における「前記(a)または(b)((A)または(B))のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチド」とは、例えば前記(a)または(b)((A)または(B))のいずれかのポリヌクレオチドの塩基配列と約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドが挙げられる。具体的には、前記(a)または(b)((A)または(B))のいずれかのポリヌクレオチドの部分配列からなるポリヌクレオチドなどが挙げられる。このような配列同一性を有するポリヌクレオチドは、前述のハイブリダイゼーション反応や通常のPCR反応により、または後述するポリヌクレオチドの改変(欠失、付加、置換)反応により作製することができる。
【0022】
前記(e)(前記(E))における「前記(a)または(b)((A)または(B))のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド」とは、人為的に作製したいわゆる改変タンパク質や、生体内に存在するアレル変異対等のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0023】
ここでタンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の活性(癌抗原としての活性)が保持される限り制限はない。このように活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個欠失、置換及び/又は付加されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内である。また置換されるアミノ酸は、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0024】
この改変タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、例えば、Molecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に記載の種々の方法、例えば部位特異的変異誘発やPCR法等によって製造することができる。また市販のキットを用いて、Gapped duplex法やKunkel法などの公知の方法に従って製造することもできる。
【0025】
本発明のポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質(以下本発明のタンパク質)が「癌抗原として作用する」という性質を有するポリヌクレオチドである。ここで「癌抗原として作用する」とは、本発明のタンパク質が、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質を有すること、すなわち本発明のタンパク質の刺激によりヘルパーT細胞が誘導されることを意味する。活性化されたヘルパーT細胞は、B細胞が抗体産生細胞に分化・成熟する過程を介助する(Charles A. Janeway, Jr.ら著、IMMUNO BIOLPGY FOURTH EDITION、CURRENT BIOLOGY PUBLICATIONS、P307〜339)。結果として、後述の実施例に示すように、本発明のタンパク質に対するIgG抗体が血清中に出現する。
活性化されたヘルパーT細胞は、CTLの分化の誘導や維持、およびマクロファージなどのエフェクター活性化等の作用を発揮し、抗腫瘍免疫応答に重要な役割を果たす。
【0026】
本発明のタンパク質がヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質を有することは、例えば末梢血単核球をin vitroで本発明のタンパク質で刺激して特異的なヘルパーT細胞を誘導することにより(Clin Exp Immunol 105(3):429−35、1996)、調べることができる。
【0027】
また前記「癌抗原として作用する」の範疇には、前記のようにヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質に加え、細胞障害性T細胞(cytotosic T lymphocyte(CTL)、CD8+T細胞)に認識される性質を有する場合も含まれる。ここでCTL(CD8+T細胞)に認識されるとは、本発明のタンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される、すなわち当該細胞がCTLに反応性を示す、換言すれば本発明のタンパク質若しくは該タンパク質に由来するペプチドがCTLを活性化する若しくはCTLを誘導するという性質を示す。ここで細胞とは、HLA抗原を発現する細胞であることが好ましい。
【0028】
本発明タンパク質のCTL誘導活性は、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法(例えば51Crリリースアッセイ(J.Immunol.,159:4753,1997)、LDHリリースアッセイ(LDH Cytotoxicity Detection Kit(タカラバイオ)、サイトカイン量の測定等)により容易に測定することができる。以下に具体的なアッセイ法を例示する。
【0029】
まず、アフリカミドリザル腎臓由来のCOS−7(ATCC CRL1651)や繊維芽細胞VA−13(理化学研究所細胞開発銀行)といった癌抗原タンパク質を発現していない細胞に対し、本発明タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターと、HLA抗原をコードするDNAを含有する発現ベクターとをトランスフェクトする。ここで用いるHLA抗原をコードするDNAとしては、例えばHLA−A24抗原をコードするDNA若しくはHLA−A2抗原をコードするDNAが挙げられる。HLA−A24抗原をコードするDNAとしてはHLA−A2402のcDNA(Cancer Res., 55: 4248−4252 (1995)、Genbank Accession No.M64740)が挙げられる。またHLA−A2抗原をコードするDNAとしてはHLA−A2のcDNA(Genbank Accession No.M84379)が挙げられる。
【0030】
前記トランスフェクトは、例えばリポフェクトアミン試薬(GIBCO BRL社製)を用いたリポフェクチン法などにより行うことができる。その後、用いたHLA抗原に拘束性のCTLを加えて作用させ、該CTLが反応(活性化)して産生する種々のサイトカイン、例えばIFN−γの量を、例えばELISA法などで測定することにより調べることができる。ここでCTLとしては、ヒトの末梢血リンパ球を本発明タンパク質(例えば配列番号2、4または6に記載のタンパク質)で刺激することにより調製されたCTLや、Int. J. Cancer, 39, 390−396, 1987, N. Eng. J. Med, 333, 1038−1044, 1995等に記載の方法により樹立したCTLを用いることができる。
また本発明のタンパク質は、例えばヒトモデル動物を用いたアッセイ(WO 02/47474 号公報、Int J. Cancer:100,565−570 (2002))に供することにより、in vivoでのCTL誘導活性を調べることができる。
【0031】
2)本発明の発現ベクターおよび形質転換体
前記本発明のポリヌクレオチドが2本鎖の場合、発現ベクターに挿入することにより、本発明のタンパク質を発現するための組換え発現ベクターを作製することができる。
【0032】
ここで用いる発現ベクターとしては、用いる宿主や目的等に応じて適宜選択することができ、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。
【0033】
例えば、宿主が大腸菌の場合、ベクターとしては、pUC118、pUC119、pBR322、pCR3等のプラスミドベクター、λZAPII、λgt11などのファージベクターが挙げられる。宿主が酵母の場合、ベクターとしては、pYES2、pYEUra3などが挙げられる。宿主が昆虫細胞の場合には、pAcSGHisNT−Aなどが挙げられる。宿主が動物細胞の場合には、pCEP4、pKCR、pCDM8、pGL2、pcDNA3.1、pRc/RSV、pRc/CMVなどのプラスミドベクターや、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターなどのウイルスベクターが挙げられる。
【0034】
前記ベクターは、発現誘導可能なプロモーター、シグナル配列をコードする遺伝子、選択用マーカー遺伝子、ターミネーターなどの因子を適宜有していても良い。
また、単離精製が容易になるように、チオレドキシン、Hisタグ、あるいはGST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)等との融合タンパク質として発現する配列が付加されていても良い。この場合、宿主細胞内で機能する適切なプロモーター(lac、tac、trc、trp、CMV、SV40初期プロモーターなど)を有するGST融合タンパクベクター(pGEX4Tなど)や、Myc、Hisなどのタグ配列を有するベクター(pcDNA3.1/Myc−Hisなど)、さらにはチオレドキシンおよびHisタグとの融合タンパク質を発現するベクター(pET32a)などを用いることができる。
【0035】
前記で作製された発現ベクターで宿主を形質転換することにより、当該発現ベクターを含有する形質転換細胞を作製することができる。
ここで用いられる宿主としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。大腸菌としては、E.coli K−12系統のHB101株、C600株、JM109株、DH5α株、AD494(DE3)株などが挙げられる。また酵母としては、サッカロミセス・セルビジエなどが挙げられる。動物細胞としては、L929細胞、BALB/c3T3細胞、C127細胞、CHO細胞、COS細胞、Vero細胞、Hela細胞、293−EBNA細胞などが挙げられる。昆虫細胞としてはsf9などが挙げられる。
【0036】
宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、前記宿主細胞に適合した通常の導入方法を用いれば良い。具体的にはリン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin; Gibco−BRL社)を用いる方法などが挙げられる。導入後、選択マーカーを含む通常の培地にて培養することにより、前記発現ベクターが宿主細胞中に導入された形質転換細胞を選択することができる。
【0037】
以上のようにして得られた形質転換細胞を好適な条件下で培養し続けることにより、本発明のタンパク質を製造することができる。得られたタンパク質は、一般的な生化学的精製手段により、さらに単離・精製することができる。ここで精製手段としては、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。また本発明のタンパク質を、前述のチオレドキシンやHisタグ、GST等との融合タンパク質として発現させた場合は、これら融合タンパク質やタグの性質を利用した精製法により単離・精製することができる。
【0038】
3)本発明のタンパク質
本発明のタンパク質とは、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるか、または本発明の形質転換体から前記手法により生産されるタンパク質である。本発明のタンパク質は、天然物に由来するタンパク質であってもよく、また組換えタンパク質であっても良い。
【0039】
具体的には以下の(a)、(b)または(c)のいずれかのタンパク質が挙げられる:
(a) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b) 前記(a)のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質、
(c) 前記(a)のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質。
【0040】
より具体的には、以下の(A)、(B)または(C)のいずれかのタンパク質が例示される:
(A) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(B) 前記(A)のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質、
(C) 前記(A)のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質。
【0041】
ここで配列番号:2に記載のアミノ酸配列は、ヒト精巣由来cDNAライブラリーを膵管癌患者血清でスクリーニングすることによりクローニングされたKU−TES−1遺伝子をコードするアミノ酸配列である。
配列番号:4に記載のアミノ酸配列は、GenBank データベースにおいてAccession No. NM_173081(Accession No.BC0393212)として登録されている機能未知の遺伝子をコードするアミノ酸配列である。
配列番号:6に記載のアミノ酸配列は、GenBank データベースにおいてAccession No. XM_166109として登録されている機能未知の遺伝子をコードするアミノ酸配列である。
これらAccession No. NM_173081およびAccession No. XM_166109で示されるタンパク質は、KU−TES−1のアミノ酸配列(配列番号2)の第391位までと同一の配列を有し、かつそのC末端側に新たな481アミノ酸残基を有するタンパク質であることから、KU−TES−1のスプライスバリアントであると考えられる(以下、これら配列番号:2、4および6に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質をまとめて「KU−TES−1」と称する場合がある)。
【0042】
前記(a)(前記(A))における配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。
また、当該配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の5’末端側及び/又は3’末端側に他のアミノ酸配列の付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質も挙げられる。当該タンパク質は、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と同様の作用を有するタンパク質であれば良い。
【0043】
前記(b)(前記(B))における「前記(a)(前記(A))のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質」とは、人為的に作製したいわゆる改変タンパク質や、生体内に存在するアレル変異対等のタンパク質を意味する。
ここでタンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、本発明タンパク質の活性(癌抗原としての活性)が保持される限り制限はない。このように活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個欠失、置換及び/又は付加されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内である。また置換されるアミノ酸は、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0044】
前記(c)(前記(C))における「前記(a)(前記(A))のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質」とは、例えば前記(a)(前記(A))のタンパク質のアミノ酸配列と約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質が挙げられる。具体的には、前記(a)(前記(A))のタンパク質の部分配列からなるタンパク質などが挙げられる。
【0045】
本発明のタンパク質は、癌抗原として作用するという性質を有する。当該「癌抗原として作用する」とは、本発明のタンパク質が、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質を有すること、すなわち本発明のタンパク質の刺激によりヘルパーT細胞が誘導されることを意味する。活性化されたヘルパーT細胞は、B細胞が抗体産生細胞に分化・成熟する過程を介助する(Charles A. Janeway, Jr.ら著、IMMUNO BIOLPGY FOURTH EDITION、CURRENT BIOLOGY PUBLICATIONS、P307〜339)。結果として、後述の実施例に示すように、本発明のタンパク質に対するIgG抗体が血清中に出現する。
活性化されたヘルパーT細胞は、CTLの分化の誘導や維持、およびマクロファージなどのエフェクター活性化等の作用を発揮し、抗腫瘍免疫応答に重要な役割を果たす。
【0046】
本発明のタンパク質がヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質を有することは、例えば末梢血単核球をin vitroで本発明のタンパク質で刺激して特異的なヘルパーT細胞を誘導することにより(Clin Exp Immunol 105(3):429−35、1996)、調べることができる。
【0047】
また前記「癌抗原として作用する」の範疇には、前記のようにヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に認識される性質に加え、細胞障害性T細胞(cytotosic T lymphocyte(CTL)、CD8+T細胞)に認識される性質を有する場合も含まれる。ここでCTL(CD8+T細胞)に認識されるとは、本発明のタンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される、すなわち当該細胞がCTLに反応性を示す、換言すれば本発明のタンパク質若しくは該タンパク質に由来するペプチドがCTLを活性化する若しくはCTLを誘導するという性質を示す。ここで細胞とは、HLA抗原を発現する細胞であることが好ましい。
【0048】
このような本発明タンパク質のCTL誘導活性は、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法(例えば51Crリリースアッセイ(J.Immunol.,159:4753,1997)、LDHリリースアッセイ(LDH Cytotoxicity Detection Kit(タカラバイオ)、サイトカイン量の測定等)により容易に測定することができる。さらに本発明のタンパク質は、例えばヒトモデル動物を用いたアッセイ(WO 02/47474 号公報、Int J. Cancer:100,565−570 (2002))に供することにより、in vivoでのCTL誘導活性を調べることができる。これらの活性の測定法は前記「1)本発明のポリヌクレオチド」の項に記載したとおりである。
【0049】
本発明のタンパク質は、天然物(例えば精巣細胞株)から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、また前述したように本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターで宿主細胞を形質転換して作製された形質転換体を培養することによっても製造することができる。
【0050】
4)本発明のペプチド
本発明においてペプチドとは、本発明のタンパク質の部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識される癌抗原ペプチドである。すなわち、前記した本発明のタンパク質のアミノ酸配列の一部よりなるペプチドであって、かつ、該ペプチドとHLA抗原との結合複合体がCTLにより認識されるような、いわゆる癌抗原ペプチドであれば、本発明のタンパク質のアミノ酸配列中の如何なる位置に存する如何なる長さのペプチドであっても良い。
このような本発明のペプチドは、本発明のタンパク質の一部よりなる候補ペプチドを合成し、該候補ペプチドとHLA抗原との複合体がCTLにより認識されるか否か、すなわち候補ペプチドが癌抗原ペプチドとしての活性を有するか否かをアッセイすることにより、同定することができる。
【0051】
ここで、ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該公知方法としては文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。
【0052】
次に、本発明の癌抗原ペプチドの同定方法につき、以下に記述する。
HLA−A1, −A0201, −A0204, −A0205, −A0206, −A0207, −A11, −A24, −A31, −A6801, −B7, −B8, −B2705, −B37, −Cw0401, −Cw0602などのHLAの型については、該HLAに結合して提示される抗原ペプチドの配列の規則性(モチーフ)が判明している(例えばImmunogenetics,41:p178,1995などを参照のこと)。例えばHLA−A24のモチーフとしては、8〜11アミノ酸よりなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンであり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンとなることが知られている(J.Immunol.,152,p3913,1994、Immunogenetics,41:p178,1995、J.Immunol.,155:p4307,1994)。またHLA−A2のモチーフについては、以下の表1に示したモチーフが知られている(Immunogenetics,41,p178,1995、 J.Immunol.,155:p4749,1995)。
【0053】
【表1】
【0054】
さらに近年、HLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列を、インターネット上、NIHのBIMASのソフトを使用することにより検索することができる(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/ )。
ペプチドの長さとしては、各種HLA分子に結合している抗原ペプチドの解析により(Immunogenetics,41:178,1995)、通常8から14アミノ酸程度であることが明らかにされている(ただしHLA‐DR、‐DP、‐DQについては、14アミノ酸以上の長さの抗原ペプチドも認められる)。
【0055】
これらのモチーフに関わるペプチド部分を本発明のタンパク質のアミノ酸配列中から選び出すのは容易である。例えば、前記BIMASソフトでの検索により、HLA抗原に結合可能と予想される配列を容易に選び出すことができる。選び出された候補ペプチドを前述の方法にて合成し、該候補ペプチドとHLA抗原との複合体がCTLにより認識されるか否か、すなわち候補ペプチドが癌抗原ペプチドとしての活性を有するか否かを測定することにより、本発明のペプチドを同定することができる。
【0056】
本発明の癌抗原ペプチドの具体的な同定法としては、例えば J.Immunol.,154,p2257,1995に記載の方法が挙げられる。すなわち、候補ペプチドを提示すると考えられるタイプのHLA抗原が陽性のヒトから末梢血リンパ球を単離し、in vitroで該候補ペプチドを添加して刺激した場合に、該候補ペプチドをパルスしたHLA抗原陽性細胞を特異的に認識するCTLが誘導された場合は、該候補ペプチドが癌抗原ペプチドに成り得ることが示される。ここでCTLの誘導の有無は、例えば、抗原ペプチド提示細胞に反応してCTLが産生する種々のサイトカイン(例えばIFN−γ)の量を、例えばELISA法などによって測定することにより、調べることができる。また51Crで標識した抗原ペプチド提示細胞に対するCTLの傷害性を測定する方法(51Crリリースアッセイ、Int.J.Cancer,58:p317,1994)によっても調べることができる。
【0057】
さらに、候補ペプチドを提示すると考えられるタイプのHLA抗原のcDNAを発現する発現プラスミドを、例えばアフリカミドリザル腎臓由来のCOS−7(ATCC CRL1651)や繊維芽細胞VA−13(理化学研究所細胞開発銀行)に導入した細胞に対して候補ペプチドをパルスし、この細胞に対して、前記候補ペプチドを提示すると考えられるタイプのHLA抗原に拘束性のCTLを反応させ、該CTLが産生する種々のサイトカイン(例えばIFN−γ)の量を測定することによっても、調べることができる(J.Exp.Med.,187: 277,1998)。
【0058】
ここでHLA抗原としては、HLA−A24抗原若しくはHLA−A2抗原が挙げられる。HLA−A24拘束性の癌抗原ペプチドを選択する場合には、前記HLA抗原をコードするcDNAとしてはHLA−A2402のcDNA(Cancer Res., 55: 4248−4252 (1995)、Genbank Accession No.M64740)を用いることができる。またHLA−A2拘束性の癌抗原ペプチドを選択する場合は、前記HLA抗原をコードするcDNAとしてはHLA−A2のcDNA(Genbank Accession No.M84379)を用いることができる。
また前記CTLとしては、ヒトの末梢血リンパ球のペプチド刺激により調製される場合の他、Int. J. Cancer, 39, 390−396, 1987, N. Eng. J. Med, 333, 1038−1044, 1995等に記載の方法により樹立したCTLを用いることができる。
また本発明のペプチドは、例えばヒトモデル動物を用いたアッセイ(WO 02/47474 号公報、Int J. Cancer:100,565−570 (2002))に供することにより、in vivoでの活性を調べることができる。
【0059】
以上のような本発明のペプチドとして、具体的には、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなる本発明タンパク質の部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。より具体的には配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列を前記BIMASソフトに供して選択されるペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。好ましくは、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を前記BIMASソフトに供して選択されるペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。
【0060】
本発明のペプチドは、本発明のタンパク質のアミノ酸配列の一部からなるペプチド、より具体的には配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列の一部からなるペプチドのみならず、そのアミノ酸配列の一部を改変(欠失、置換及び/又は付加)したペプチド(以下、当該改変に係るペプチドを「改変ペプチド」と称する場合がある)であっても、HLA抗原と結合してCTLにより認識されるという性質を有する限り、本発明のペプチドの範疇に含まれる。すなわち、本発明タンパク質のアミノ酸配列、より具体的には配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列の一部からなる本発明のペプチドのアミノ酸配列に対して、1又はそれ以上のアミノ酸残基の改変を施した改変ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるという癌抗原ペプチドとしての活性を有するものは、本発明のペプチドの範疇に含まれる。
【0061】
ここで、アミノ酸残基の「改変」とは、アミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は付加(ペプチドのN末端、C末端へのアミノ酸の付加も含む)を意味し、好ましくはアミノ酸残基の置換が挙げられる。アミノ酸残基の置換に係る改変の場合、置換されるアミノ酸残基の数および位置は、癌抗原ペプチドとしての活性が維持される限り、任意であるが、前記したように通常、癌抗原ペプチドの長さが8〜14アミノ酸程度であることから、1個から数個の範囲が好ましい。
本発明の改変ペプチドの長さとしては、8〜14アミノ酸程度が好ましい(ただしHLA−DR、−DP、−DQについては、14アミノ酸以上の長さの場合もある。)
【0062】
先に記載したように、HLA−A1, −A0201, −A0204, −A0205, −A0206, −A0207, −A11, −A24, −A31, −A6801, −B7, −B8, −B2705, −B37, −Cw0401, −Cw0602などのHLAの型については、該HLAに結合して提示される抗原ペプチドの配列の規則性(モチーフ)が判明している。また前記したように、HLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列をインターネット上検索することができる(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/ )。従って、該モチーフ等に基づき、前記改変ペプチドを作製することが可能である。
【0063】
例えばHLA−A24に結合して提示される抗原ペプチドのモチーフとしては、前記したように、8〜11アミノ酸よりなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンであり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンであることが知られている(J.Immunol., 152:p3913,1994、Immunogenetics,41:p178,1995、J.Immunol.,155:p4307,1994)。またHLA−A2の場合は、前記の表1に記載のモチーフが知られている。またインターネット上でHLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列が示されており(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)、例えば前記モチーフ上とり得るアミノ酸に類似の性質を持つアミノ酸が許容される。従って、これらモチーフ上アミノ酸の置換が可能な位置(HLA−A24、HLA−A2においてはペプチドの第2位とC末端)にあるアミノ酸を他のアミノ酸(好ましくは前記インターネット上で結合可能と予想されているアミノ酸)に置換したアミノ酸配列を含むものであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるという活性を持つ改変ペプチドを挙げることができる。
【0064】
より好ましくは、該位置において、前記モチーフ上知られたアミノ酸残基のいずれかに置換したアミノ酸配列を含有するペプチドであって、かつ前記活性を有する改変ペプチドが挙げられる。
【0065】
本発明のペプチドには、さらに、前記本発明のペプチドを含有するペプチドも含まれる。
近年、複数のCTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結したペプチド(エピトープペプチド)が、効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1998, 161: 3186−3194には、癌抗原タンパク質PSA由来のHLA−A2, −A3, −A11, B53拘束性CTLエピトープを連結した約30merのペプチドが、イン・ビボでそれぞれのCTLエピトープに特異的なCTLを誘導したことが記載されている。
【0066】
またCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたペプチド(エピトープペプチド)により、効率的にCTLが誘導されることも示されている。ここでヘルパーエピトープとはCD4陽性T細胞を活性化させる作用を有するペプチドを指すものであり(Immunity., 1:751, 1994)、例えばB型肝炎ウイルス由来のHBVc128−140や破傷風毒素由来のTT947−967などが知られている。当該ヘルパーエピトープにより活性化されたCD4陽性T細胞は、CTLの分化の誘導や維持、およびマクロファージなどのエフェクター活性化などの作用を発揮するため、抗腫瘍免疫応答に重要であると考えられている。このようなヘルパーエピトープとCTLエピトープとを連列したペプチドの具体例として、例えばJournal of Immunology 1999, 162: 3915−3925には、HBV由来HLA−A2拘束性抗原ペプチド6種類、HLA−A11拘束性抗原ペプチド3種類、およびヘルパーエピトープより構成されるペプチドをコードするDNA(ミニジーン)が、イン・ビボでそれぞれのエピトープに対するCTLを効果的に誘導したことが記載されている。また実際に、CTLエピトープ(メラノーマ抗原gp100の第280位〜288位からなる癌抗原ペプチド)とヘルパーエピトープ(破傷風毒素由来Tヘルパーエピトープ)とを連結したペプチドが臨床試験に供されている(Clinical Cancer Res., 2001,7:3012−3024)。
【0067】
従って、前記本発明のペプチドを含む複数のエピトープを連結したペプチド(エピトープペプチド)であって、CTL誘導活性を有するペプチドも、本発明のペプチドの具体例として例示することができる。
ここで、本発明のペプチドに連結させるエピトープがCTLエピトープの場合、用いるCTLエピトープとしては、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列由来のHLA−A1, −A0201, −A0204, −A0205, −A0206, −A0207, −A11, −A24, −A31, −A6801, −B7, −B8, −B2705, −B37,−B55, −Cw0401, −Cw0602などに拘束性のCTLエピトープが挙げられる。また、他の癌抗原タンパク質由来のCTLエピトープも挙げられる。これらCTLエピトープは複数個連結することが可能であり、1つのCTLエピトープの長さとしては、各種HLA分子に結合している抗原ペプチドの解析により(Immunogenetics,41:178,1995)、8〜14アミノ酸程度を挙げることができる。
【0068】
また本発明のペプチドに連結させるエピトープがヘルパーエピトープの場合、用いるヘルパーエピトープとしては、前述のようなB型肝炎ウイルス由来のHBVc128−140や破傷風毒素由来のTT947−967などが挙げられる。また当該ヘルパーエピトープの長さとしては、13〜30アミノ酸程度、好ましくは13〜17アミノ酸程度を挙げることができる。
【0069】
このような複数のエピトープを連結させたペプチド(エピトープペプチド)は、前述のように一般的なペプチド合成法によって製造することができる。またこれら複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列情報に基づいて、通常のDNA合成および遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。すなわち、当該ポリヌクレオチドを周知の発現ベクターに挿入し、得られた組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換して作製された形質転換体を培養し、培養物より目的の複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドを回収することにより製造することができる。これらの手法は、前述のように文献(Molecular Cloning, T.Maniatis et al.,CSH Laboratory(1983)、DNA Cloning, DM.Glover, IRL PRESS(1985))に記載の方法などに準じて行うことができる。
【0070】
以上のようにして製造された複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドを、前述のin vitroアッセイや、WO 02/47474 号公報および Int J. Cancer:100,565−570 (2002)に記述のヒトモデル動物を用いたin vivoアッセイに供すること等によりCTL誘導活性を測定することができる。
【0071】
さらに、本発明のペプチドのN末端アミノ酸のアミノ基、またはC末端アミノ酸のカルボキシル基を修飾することも可能である。
ここでN末端アミノ酸のアミノ基の修飾基としては、例えば1〜3個の炭素数1から6のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アシル基が挙げられ、アシル基の具体例としては炭素数1から6のアルカノイル基、フェニル基で置換された炭素数1から6のアルカノイル基、炭素数5から7のシクロアルキル基で置換されたカルボニル基、炭素数1から6のアルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、フェニル基で置換されたアルコキシカルボニル基、炭素数5から7のシクロアルコキシで置換されたカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
C末端アミノ酸のカルボキシル基を修飾したペプチドとしては、例えばエステル体およびアミド体が挙げられ、エステル体の具体例としては、炭素数1から6のアルキルエステル、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキルエステル、炭素数5から7のシクロアルキルエステル等が挙げられ、アミド体の具体例としては、アミド、炭素数1から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。
【0072】
5)本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドの範疇には、さらに、前記本発明のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドも含まれる。
本発明のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもRNAの形態であっても良い。これら本発明のポリヌクレオチドは、本発明のペプチドのアミノ酸配列情報およびそれによりコードされるDNAの配列情報に基づき容易に製造することができる。具体的には、通常のDNA合成やPCRによる増幅などによって、製造することができる。
【0073】
本発明のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドは、具体的には、前記エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
前記ポリヌクレオチドは、1本鎖および2本鎖のいずれの形態もとることができる。本発明のポリヌクレオチドが2本鎖の場合、前記本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入することにより、本発明のペプチド(エピトープペプチド)を発現するための組換え発現ベクターを作製することができる。
ここで用いる発現ベクターや宿主細胞、宿主細胞の形質転換方法等については、前述の「2)本発明の発現ベクターおよび形質転換体」と同様である。
【0074】
6)本発明のタンパク質を有効成分とする医薬
本発明のタンパク質は、医薬の有効成分とすることができる。すなわち本発明のタンパク質を適当なキャリアーと組み合わせることにより、癌免疫療法における医薬の有効成分とすることができる。
本発明のタンパク質を有効成分として含有する医薬は、癌ワクチン、すなわちCTLの誘導剤として使用することができる。本発明のタンパク質により誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗癌作用を発揮することができる。従って本発明のタンパク質は、癌の治療または予防のための医薬の有効成分とすることができる。本発明のタンパク質を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、本発明のタンパク質を癌患者に投与することで、癌を治療または予防し得るものである。当該タンパク質を癌患者に投与すると、抗原提示細胞内に取り込まれ、その後、細胞内分解を受けて生じた癌抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に提示され、この複合体に特異的なCTLが体内で効率的に増殖し、癌細胞を破壊する。以上のようにして、癌の治療又は予防が達成される。
【0075】
本発明のタンパク質を有効成分とするCTLの誘導剤は、本発明のタンパク質陽性の如何なる癌患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば膵癌(膵管癌)、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等の予防または治療のために使用することができる。好ましくは、膵癌または子宮体癌の予防または治療のために使用することができる。
【0076】
本発明のタンパク質を有効成分として含有する癌ワクチンは、細胞性免疫が効果的に成立するように、医薬として許容されるキャリアー、例えば適当なアジュバントと混合して投与、又は併用して投与することができる。
アジュバントとしては、文献(Clin. Microbiol.Rev., 7:277−289, 1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分又はその誘導体、サイトカイン、植物由来成分又はその誘導体、海洋生物由来成分又はその誘導体、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルション製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μm のビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤、マイクロスフェアー製剤、マイクロカプセル製剤なども考えられる。
【0077】
前記において菌体由来成分又はその誘導体とは、具体的には、例えば▲1▼細菌の死菌、▲2▼細菌由来の細胞壁骨格(Cell Wall Skeleton, CWSと略する)、▲3▼菌体由来の特定の成分又はその誘導体等に分類される。ここで▲1▼細菌の死菌としては、例えば溶連菌粉末(例えばピシバニール;中外製薬株式会社)、死菌浮遊物カクテル(例えばブロンカスマ・ベルナ;三和化学研究所)、あるいはヒト型結核菌の死菌等が挙げられる。
【0078】
▲2▼細菌由来のCWSとしては、マイクバクテリア属由来のCWS(例えばマイコバクテリア属ウシ型結核菌であるBCG株のCWS)、ノカルディア属由来のCWS(例えばノカルディア・ノブラのCWS)、あるいはコリネバクテリア属由来のCWS等が挙げられる。
【0079】
▲3▼菌体由来の特定の成分又はその誘導体としては、例えば菌体由来多糖類であるヒト型結核菌由来多糖類成分(例えばアンサー;ゼリア新薬工業株式会社)や担子菌由来多糖類(例えばレンチナン;味の素、クレスチン;三共株式会社、担子菌カワラタケ)、またムラミルジペプチド(MDP)関連化合物、リポ多糖(LPS)、リピドA関連化合物(MPL)、糖脂質トレハロースジマイコレート(TDM)、細菌由来のDNA(例えばCpGオリゴヌクレオチド)、あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。
【0080】
これら菌体由来成分及びその誘導体は、既に市販されているものであればそれを入手するか、又は公知文献(例えばCancer Res.,33,2187−2195(1973)、J.Natl.Cancer Inst.,48,831−835(1972)、J.Bacteriol.,94,1736−1745(1967)、Gann,69,619−626(1978)、J.Bacteriol.,92,869−879(1966)、J.Natl.Cancer Inst.,52,95−101(1974))等に基き単離又は製造することが可能である。
【0081】
前記において「サイトカイン」とは、例えばIFN−α、IL−12、GM−CSF、IL−2、IFN−γ、IL−18、あるいはIL−15などが挙げられる。これらのサイトカインは、天然品であっても遺伝子組換え品であっても良い。これらのサイトカインは、既に市販されていればそれを入手して使用することができる。また遺伝子組換え品であれば、例えばGenBank、EMBL、あるいはDDBJ等のデータベースにおいて登録されている各塩基配列に基き、常法により所望の遺伝子をクローニングし、適当な発現ベクターに連結して作製された組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより、発現・生産することができる。
【0082】
前記において「植物由来成分又はその誘導体」とは、例えばサポニン由来成分であるQuil A(Accurate Chemical&Scientific Corp)、 QS−21(Aquila Biopharmaceuticals inc.)、あるいはグリチルリチン(SIGMA−ALDRICHなど)などが挙げられる。
【0083】
前記において「海洋生物由来成分又はその誘導体」とは、例えば海綿由来の糖脂質であるα−ガラクトシルセラミドなどが挙げられる。
【0084】
前記において油乳濁液(エマルション製剤)とは、例えば油中水型(w/o)エマルション製剤、水中油型(o/w)エマルション製剤、水中油中水型(w/o/w)エマルション製剤などが挙げられる。
【0085】
ここで油中水型(w/o)エマルション製剤は、有効成分を水の分散相に分散させた形態をとる。水中油型(o/w)エマルション製剤は、有効成分を水の分散媒に分散させた形態をとる。また水中油中水型(w/o/w)エマルション製剤は、有効成分を最内相の水の分散相に分散させた形態をとる。このようなエマルション製剤の調製は、例えば、特開平8−985号公報、特開平9−122476号公報等を参考にして行うことができる。
【0086】
前記においてリポソーム製剤とは、有効成分を脂質二重膜構造のリポソームで水相内または膜内に包み込んだ形の微粒子である。リポソームを作るための主要な脂質としては、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン等が挙げられ、これにジセチルホスフェート、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン等を加えてリポソームに荷電を与えて安定化させる。リポソームの調製方法としては、超音波法、エタノール注入法、エーテル注入法、逆相蒸発法、フレンチプレスエクストラクション法等が挙げられる。
【0087】
前記においてマイクロスフェアー製剤は、均質な高分子マトリックスから構成され、該マトリックス中に有効成分が分散された形の微粒子である。マトリックスの材料としては、アルブミン、ゼラチン、キチン、キトサン、デンプン、ポリ乳酸、ポリアルキルシアノアクリレート等の生分解性高分子が挙げられる。マイクロスフェアー製剤の調製方法としては公知の方法(Eur. J. Pharm. Biopharm. 50:129−146, 2000、Dev. Biol. Stand. 92:63−78, 1998、Pharm. Biotechnol. 10:1−43, 1997)等に従えばよく特に限定されない。
【0088】
前記においてマイクロカプセル製剤は、有効成分を芯物質として被膜物質で覆った形の微粒子である。被膜物質に用いられるコーティング材料としては、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、エチルセルロース、ゼラチン、ゼラチン・アラビアゴム、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース等の膜形成性高分子が挙げられる。マイクロカプセル製剤の調製方法は、コアセルベーション法、界面重合法等が挙げられる。
【0089】
投与方法としては、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与などが挙げられる。製剤中の本発明のタンパク質の投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは 0.001mg〜100mg、より好ましくは0.01mg〜10mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
【0090】
7)本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体を有効成分とする医薬
本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体は、医薬の有効成分とすることができる。すなわち本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体を適当なキャリアーと組み合わせることにより、癌免疫療法における医薬の有効成分とすることができる。
本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体を有効成分として含有する医薬は、癌ワクチン、すなわちCTLの誘導剤として使用することができる。本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体にもとづいて発現した本発明のタンパク質は、CTLを誘導し、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗癌作用を発揮することができる。従って本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体は、癌の治療または予防のための医薬の有効成分とすることができる。本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、例えばこれらの物質を癌患者に投与し、本発明のポリヌクレオチドから本発明のタンパク質を発現させることで、癌を治療または予防し得るものである。
【0091】
発現ベクターに組み込まれた本発明のポリヌクレオチドを以下の方法により癌患者に投与すると、抗原提示細胞内で本発明のタンパク質が高発現する。その後、細胞内分解を受けて生じた癌抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示されることにより、癌特異的CTLが体内で効率的に増殖し、癌細胞を破壊する。以上のようにして、癌の治療または予防が達成される。
【0092】
本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは形質転換体を有効成分とするCTLの誘導剤は、本発明のタンパク質陽性の如何なる癌患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等の予防または治療のために使用することができる。好ましくは、膵癌または子宮体癌の予防または治療のために使用することができる。
【0093】
以下、本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込んで投与する形態が最も一般的であるため、当該発現ベクターを例にとり説明するが、当該形態に何ら限定されるものではない。
本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを投与し細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターによる方法およびその他の方法(日経サイエンス, 1994年4月号, 20−45頁、月刊薬事, 36(1), 23−48(1994)、実験医学増刊, 12(15), (1994)、およびこれらの引用文献等)のいずれの方法も適用することができる。
【0094】
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルス又はRNAウイルスに本発明のDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
【0095】
本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを実際に医薬として作用させるには、当該発現ベクターを直接体内に導入する in vivo法、およびヒトからある種の細胞を採集し体外で発現ベクターを該細胞に導入しその細胞を体内に戻す ex vivo法がある(日経サイエンス, 1994年4月号, 20−45頁、月刊薬事, 36(1), 23−48(1994)、実験医学増刊, 12(15), (1994)、およびこれらの引用文献等)。in vivo法がより好ましい。
【0096】
in vivo法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内等に投与することができる。in vivo法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には有効成分である本発明のポリヌクレオチド含有発現ベクターを含む注射剤等とされ、必要に応じて、医薬上許容されるキャリアー(担体)を加えてもよい。また、本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを含むリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
製剤中の本発明の発現ベクターの含量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常、発現ベクター中のポリヌクレオチドの含量として、0.0001mg〜100mg、好ましくは0.001mg〜10mgの本発明のポリヌクレオチドを、数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
【0097】
また近年、複数のCTLエピトープ(癌抗原ペプチド)を連結したエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいはCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが、in vivoで効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1999, 162: 3915−3925には、HBV由来HLA−A2拘束性抗原ペプチド6種類、HLA−A11拘束性抗原ペプチド3種類、およびヘルパーエピトープを連結したエピトープペプチドをコードするDNA(ミニジーン)が、イン・ビボでそれぞれのエピトープに対するCTLを効果的に誘導したことが記載されている。
【0098】
従って、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを1種または2種以上連結させることにより、また場合によっては他のペプチドをコードするポリヌクレオチドも連結させることにより作製されたポリヌクレオチドを、適当な発現ベクターに組み込むことにより、CTLの誘導剤の有効成分とすることができる。このようなCTLの誘導剤も、前記と同様の投与方法および投与形態をとることができる。
【0099】
8)本発明のペプチドを有効成分とする医薬
本発明のペプチドは、医薬の有効成分とすることができる。すなわち本発明のペプチドを適当なキャリアーと組み合わせることにより、癌免疫療法における医薬の有効成分とすることができる。
本発明のペプチドを有効成分として含有する医薬は、癌ワクチン、すなわちCTLの誘導剤として使用することができる。本発明のペプチドにより誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗癌作用を発揮することができる。従って本発明のペプチドは、癌の治療または予防のための医薬の有効成分とすることができる。本発明のペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤を癌患者に投与すると、抗原提示細胞のHLA抗原に本発明のペプチドが提示され、提示されたHLA抗原とペプチドとの結合複合体特異的CTLが増殖して癌細胞を破壊することができ、従って、患者の癌を治療又は予防することができる。
【0100】
本発明のペプチドを有効成分とするCTLの誘導剤は、本発明のタンパク質陽性の如何なる癌患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等の予防または治療のために使用することができる。好ましくは、膵癌または子宮体癌の予防または治療のために使用することができる。
【0101】
本発明のペプチドを有効成分とするCTLの誘導剤は、単一のCTLエピトープ(本発明のペプチド)を有効成分とするものであっても、また他のペプチド(CTLエピトープやヘルパーエピトープ)と連結したエピトープペプチドを有効成分とするものであっても良い。近年、複数のCTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結したエピトープペプチドが、イン・ビボで効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1998, 161: 3186−3194には、癌抗原タンパク質PSA由来のHLA−A2, −A3, −A11, B53拘束性CTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結した約30merのエピトープペプチドが、イン・ビボでそれぞれのCTLエピトープに特異的なCTLを誘導したことが記載されている。またCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドにより、効率的にCTLが誘導されることも示されている。このようなエピトープペプチドの形態で投与した場合、抗原提示細胞内に取り込まれ、その後、細胞内分解を受けて生じた個々の抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示され、この複合体に特異的なCTLが体内で効率的に増殖し、癌細胞を破壊する。このようにして癌の治療または予防が達成される。
【0102】
本発明のペプチドを有効成分とするCTLの誘導剤は、細胞性免疫が効果的に成立するように、医薬として許容されるキャリアー、例えば適当なアジュバントと混合して投与、又は併用して投与することができる。
アジュバントとしては、文献(Clin. Microbiol.Rev., 7:277−289, 1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分又はその誘導体、サイトカイン、植物由来成分又はその誘導体、海洋生物由来成分又はその誘導体、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルション製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μm のビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤、マイクロスフェアー製剤、マイクロカプセル製剤なども考えられる。これらアジュバントの具体例については、前記「6)本発明のタンパク質を有効成分とする医薬」の項を参照されたい。
【0103】
投与方法としては、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与などが挙げられる。製剤中の本発明のペプチドの投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは 0.001mg〜1000mg、より好ましくは0.1mg 〜10mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
【0104】
9)本発明の抗体
本発明において抗体とは、本発明のタンパク質に特異的に結合する性質を有する抗体である。本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、本発明のタンパク質を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよい。さらにこれら本発明タンパク質のアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
【0105】
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13、Antibodies; A Laboratory Manual, Lane, H, D.ら編, Cold Spring Harber Laboratory Press 出版 New York 1989)。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本発明タンパク質を用いて、あるいは常法に従ってこれら本発明タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本発明タンパク質、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0106】
抗体の作製に免疫抗原として使用される本発明タンパク質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号1,3または5)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、前記2)の項に記載したような当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
【0107】
具体的には、本発明タンパク質をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって、本発明抗体の製造のための免疫抗原としてのタンパク質を得ることができる。また、本発明タンパク質の部分ペプチドは、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号2,4および6)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
【0108】
かかるタンパク質またはペプチドに対する抗体の製造は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントが含まれる。
【0109】
以上のように本発明のタンパク質やその部分ペプチドを用いて常法により適宜動物を免疫することにより、本発明タンパク質を特異的に認識する抗体、さらにはその活性を中和する抗体が容易に作製できる。抗体の用途としては、アフィニティークロマトグラフィー、免疫学的診断等が挙げられる。免疫学的診断は、イムノブロット法、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光あるいは発光測定法等より適宜選択できる。このような免疫学的診断は、本発明タンパク質が発現している癌(膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等)の診断において有効である。
【0110】
10)癌マーカー
▲1▼本発明のポリヌクレオチドに関する癌マーカー
本発明において、配列番号:1(配列番号:3,5)に記載のKU−TES−1遺伝子が、CT抗原様の発現パターンを示す、すなわち癌において特異的に発現しているという知見を得た。よって、当該遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって、前記癌の罹患の有無や程度が特異的に検出でき、癌の診断を行うことができる。
【0111】
本発明のポリヌクレオチドは、従って、被験者におけるKU−TES−1遺伝子の発現の有無またはその程度を検出することによって、該被験者が癌に罹患しているか否かまたはその罹患の程度を診断することのできるツール(癌マーカー)として有用である。
【0112】
本発明の癌マーカーは、前記本発明ポリヌクレオチドの塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなることを特徴とするものである。
【0113】
具体的には、本発明の癌マーカーは、配列番号:1、3または5に記載の塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなるものを挙げることができる。
【0114】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、前記配列番号:1、3または5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、または該塩基配列における少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を含有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:TおよびG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0115】
ここで、正鎖側のポリヌクレオチドには、配列番号:1、3または5に記載の塩基配列、またはその部分配列を含有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
【0116】
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で癌マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で癌マーカーとして使用されてもよい。
【0117】
本発明の癌マーカーは、具体的には、前記配列番号:1、3または5に記載の塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。またこれら本発明遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列またはその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては、上記全長配列またはその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を含有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0118】
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法においては、本発明のKU−TES−1遺伝子、またはこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に検出できること、またRT−PCR法においては、本発明のKU−TES−1遺伝子、またはこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物または生成物がKU−TES−1遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
【0119】
本発明の癌マーカーは、例えば配列番号1、3または5に記載の塩基配列をもとに、例えばprimer 3( HYPERLINK http://www.genome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には前記本発明ポリヌクレオチドの塩基配列を primer 3またはベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマーまたはプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマーまたはプローブとして使用することができる。このような本発明の癌マーカーの具体例としては、例えば配列番号:9または10に記載のプライマーを挙げることができる。
【0120】
本発明の癌マーカーは、上述するように連続する少なくとも15塩基の長さを含有するものであればよいが、具体的にはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
【0121】
本発明において癌の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に癌が疑われる被験組織におけるKU−TES−1遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。この場合、上記本発明の癌マーカーは、KU−TES−1遺伝子の発現によって生じたRNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、または該RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。当該プライマーまたはプローブとしての利用を可能とするために、本発明の癌マーカーは放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識することができ、当該標識化されたポリヌクレオチドも本発明の癌マーカーの範疇に含まれる。
【0122】
本発明癌マーカーを癌の検出においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を含有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を含有するものが例示できる。
【0123】
本発明の癌マーカーは、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができる。
【0124】
本発明の癌マーカーは、癌の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。すなわち本発明の癌マーカーは膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等の癌の診断に有用であり、特に、膵癌または子宮体癌の診断に有用である。
具体的には、該癌マーカーを利用した癌の診断は、被験者における生体組織(癌が疑われる組織)と正常者における同様の組織におけるKU−TES−1遺伝子の遺伝子発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の組織と正常者の組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的にはKU−TES−1遺伝子は癌(膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌。特に膵癌または子宮体癌)で発現誘導を示すので、被験者の当該組織で発現しており、該発現量が正常者の対応組織の発現量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多ければ、被験者について癌の罹患が疑われる。
【0125】
▲2▼本発明のタンパク質またはポリペプチドに関する癌マーカー
本発明において、配列番号:2(配列番号:4,6)に記載のKU−TES−1(KU−TES−1タンパク)に対するIgG抗体が癌患者血清中に特異性を示して存在しているという知見を得た。よって、癌患者血清中における当該KU−TES−1に対する抗体の存在の有無を検出することによって、前記癌の罹患の有無が特異的に検出でき、癌の診断を行うことができる。
【0126】
本発明のタンパク質またそのは部分ペプチド(ポリペプチド)は、従って、被験者における抗KU−TES−1抗体の存在の有無またはその程度を検出することによって、該被験者が癌に罹患しているか否かまたはその罹患の程度を診断することのできるツール(癌マーカー)として有用である。
【0127】
本発明の癌マーカーは、本発明タンパク質のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸を含有するポリペプチドからなることを特徴とするものである。
当該癌マーカーは、本発明のタンパク質又はその部分ペプチド(ポリペプチド)に対する抗体を特異的に認識することのできるタンパク質またはポリペプチドであれば、如何なるものであっても良い。具体的には、本発明の癌マーカーは、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸を含有するポリペプチドからなるものを挙げることができる。より具体的には、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸以上のアミノ酸配列を含有するポリペプチドを挙げることができる。
前記癌マーカーの有効成分となるポリペプチドは、本発明タンパク質のアミノ酸配列の連続する8アミノ酸以上の部分に、さらにβ−galactosidaseのようなマーカータンパク質が融合されたものであっても良い。
【0128】
本発明の癌マーカーは、癌の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。すなわち本発明の癌マーカーは膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌等の癌の診断に有用であり、特に、膵癌または子宮体癌の診断に有用である。
本発明のタンパク質やペプチド(ポリペプチド)を診断薬として用い、癌が疑われる患者から得た試料(例えば血液、癌が疑われる組織など)中の抗体の存在を検出することにより、癌を診断することができる。ここで用いる本発明タンパク質およびペプチド(ポリペプチド)の製造法については、前記3)および4)の項で述べたとおりである。
【0129】
具体的には、患者の血液(血清)を採取し、例えば本発明の癌マーカーを用いたウェスタンブロット法、ELISA法、イムノクロマトグラフィー法、ラテックス凝集法など公知の検出方法において、上記本発明タンパク質またはペプチドに対する抗体を検出することができる。
【0130】
癌の診断に際しては、被験者の血清における抗KU−TES−1抗体の量と正常者の血清における抗KU−TES−1抗体の量の違いを判定すればよい。この場合、抗体量の違いには、抗体のある/なし、あるいは抗体量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的にはKU−TES−1に対する抗体は癌(膵癌、大腸癌、子宮体癌または前立腺癌)患者の血清中で検出されるので、被験者の血液(血清)中に当該抗体が存在しており、この抗KU−TES−1抗体の量が正常者の抗KU−TES−1抗体量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多いことが判定されれば、癌の罹患が疑われる。
【0131】
また近年、抗原ペプチドとHLA抗原との複合体を用いて抗原特異的CTLを検出する新しい検出方法が確立された(Science,274:p94,1996)。本発明の癌抗原ペプチドとHLA抗原との複合体を当該検出方法に供し、癌抗原特異的CTLを検出することにより、癌を診断することができる。
具体的には、文献(Science,274:p94,1996)に記載の方法に従って蛍光標識したHLA抗原と本発明のペプチドとの複合体の4量体を作製し、これを用いて癌が疑われる患者の末梢血リンパ球中の抗原ペプチド特異的CTLをフローサイトメーターにより定量することにより、前記診断を行うことができる。
【0132】
▲3▼本発明の抗体に関する癌マーカー
本発明は癌マーカーとして、本発明のタンパク質又はその部分ペプチドを特異的に認識することのできる抗体を提供する。より具体的には、本発明は、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなる本発明のタンパク質またはその部分ペプチドを特異的に認識する抗体からなる癌マーカーを提供する。
【0133】
本発明においては、種々の癌組織および癌細胞において、本発明のKU−TES−1遺伝子が特異的に発現しているという知見を得た。またKU−TES−1タンパクに対するIgG抗体が癌患者血清中に特異性を示して存在しているという知見を得た。よってKU−TES−1タンパクの発現の有無やその発現の程度を検出することによって、癌の有無やその程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を行うことができる。
上記抗体は、従って、被験者におけるKU−TES−1タンパク質の発現の有無またはその程度を検出することによって、該被験者が癌に罹患しているか否かまたはその疾患の程度を診断することのできるツール(癌マーカー)として有用である。
【0134】
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、本発明タンパク質を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよい。さらにこれら本発明タンパク質のアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
これらの抗体は、前記「9)本発明の抗体」の項に記載した方法により製造することができる。
【0135】
本発明の抗体は、KU−TES−1に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現したKU−TES−1タンパク質を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内におけるKU−TES−1発現の有無を検出するためのプローブとして有用である。
【0136】
具体的には、癌が疑われる被験組織や血液をバイオプシ等で採取し、必要に応じそこから常法に従ってタンパク質を調製して、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、上記抗体を常法に従ってプローブとして使用することによってKU−TES−1を検出することができる。
【0137】
癌の診断に際しては、被験者組織におけるKU−TES−1タンパクの量と正常な対応組織におけるKU−TES−1タンパク量の違いを判定すればよい。この場合、タンパク量の違いには、タンパクのある/なし、あるいはタンパク量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的にはKU−TES−1遺伝子は癌で発現誘導を示すので、被験者組織で該遺伝子の発現産物(KU−TES−1)が存在しており、該量が正常な組織の発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多いことが判定されれば、癌の罹患が疑われる。
【0138】
▲4▼癌の検出方法(診断方法)
本発明は、前述した本発明癌マーカーを利用した癌の検出方法(診断方法)を提供するものである。
【0139】
具体的には、本発明の検出方法(診断方法)は、被験者の血液(血清)を採取するか、若しくは癌が疑われる被験組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこに含まれるKU−TES−1遺伝子の遺伝子発現量、これらの遺伝子に由来するKU−TES−1タンパク質量、当該KU−TES−1に対する抗体の量、若しくはKU−TES−1由来の癌抗原ペプチドとHLA抗原との複合体を認識するCTLの量を、検出・測定することにより、癌の罹患の有無またはその程度を診断するものである。また本発明の検出(診断)方法は、例えば癌患者において、癌の改善のために治療薬を投与した場合における、該疾患の改善の有無またはその程度を検出(診断)することもできる。さらに本発明の検出(診断)方法は、本発明のタンパク質、ペプチドまたはポリヌクレオチド(発現ベクター)を有効成分とする医薬の適応可能な癌患者の選択や、当該医薬による治療効果の判定などにも利用できる。
【0140】
本発明の検出方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の癌マーカーを接触させる工程、
(b) 生体試料中のKU−TES−1遺伝子発現レベル、KU−TES−1タンパク質量、抗KU−TES−1抗体量、またはKU−TES−1由来の癌抗原ペプチドとHLA抗原との複合体を認識するCTLの量を、上記癌マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の結果をもとに、癌の罹患を判断する工程。
【0141】
ここで用いられる生体試料としては、被験者の生体組織(癌が疑われる組織及びその周辺組織、または血液など)から調製される試料を挙げることができる。具体的には、該組織から調製されるRNA含有試料、若しくはそれからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む試料、上記組織から調製されるタンパク質を含む試料、上記組織から調製される抗体を含む試料、あるいは上記組織から調製される末梢血リンパ球を含む試料を挙げることができる。
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
【0142】
(▲4▼−1) 測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
測定対象物としてRNAを利用する場合、癌の検出は、具体的に下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと、前記本発明の癌マーカー(本発明のポリヌクレオチドの塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド)とを結合させる工程、
(b)該癌マーカーに結合した生体試料由来のRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記癌マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌の罹患を判断する工程。
【0143】
測定対象物としてRNAを利用する場合は、本発明の検出方法(診断方法)は、該RNA中のKU−TES−1遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、前述のポリヌクレオチドからなる本発明の癌マーカー(本発明のポリヌクレオチドの塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチド)をプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
【0144】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の上記癌マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中のKU−TES−1遺伝子の発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の癌マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された癌マーカー(DNA)とRNAとの二重鎖を、癌マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士フィルム社製)または蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて、該プロトコールに従って癌マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、癌マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
【0145】
RT−PCR法を利用する場合は、本発明の上記癌マーカーをプライマーとして用いることによって、RNA中のKU−TES−1遺伝子の発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的のKU−TES−1遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の癌マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した癌マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT−PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
【0146】
DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記癌マーカーをDNAプローブ(1本鎖または2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の癌マーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。
【0147】
(▲4▼−2) 測定対象の生体試料としてタンパク質を用いる場合
測定対象物としてタンパク質を用いる場合は、本発明の癌の検出方法(診断方法)は、生体試料中のKU−TES−1を検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質を含有する試料と抗体に関する本発明の癌マーカー(KU−TES−1を認識する抗体)とを結合させる工程、
(b)該癌マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質を、上記癌マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌の罹患を判断する工程。
【0148】
より具体的には、本発明の癌マーカーとして抗体(KU−TES−1を認識する抗体)を用いて、ウエスタンブロット法などの公知方法でKU−TES−1を検出、定量する方法を挙げることができる。
【0149】
ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明癌マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した標識抗体(一次抗体に結合する抗体)を用い、得られる標識化合物の放射性同位元素、蛍光物質などに由来するシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明癌マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0150】
(▲4▼−3)測定対象の生体試料として抗体を用いる場合
測定対象物としてタンパク質中に存在する抗体を用いる場合は、本発明の癌の検出方法(診断方法)は、生体試料中の抗KU−TES−1抗体を検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製された抗体を含有する試料(例えば血清)と、タンパク質またはペプチド(ポリペプチド)に関する本発明の癌マーカー(KU−TES−1抗体を認識するタンパク質またはポリペプチド)とを結合させる工程、
(b)該癌マーカーに結合した生体試料由来の抗体を、上記癌マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌の罹患を判断する工程。
【0151】
より具体的には、本発明の癌マーカーとして抗KU−TES−1抗体を認識するタンパク質またはペプチド(ポリペプチド)を用いて、ウエスタンブロット法、ELISA法、イムノクロマトグラフィー法、ラテックス凝集法などの公知方法で抗KU−TES−1抗体を検出、定量する方法を挙げることができる。
【0152】
ウエスタンブロット法は、例えば本発明の癌マーカーを固層に固定した後、生体試料中の抗KU−TES−1抗体を結合させ、125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した標識抗体(二次抗体)をさらに結合させ、得られる標識化合物の放射性同位元素、蛍光物質などに由来するシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで検出し、測定することによって実施できる。また、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0153】
ELISA法は、例えば96穴マイクロプレートに本発明の癌マーカーを固定した後、生体試料中の抗KU−TES−1抗体、酵素標識抗体を順次結合させ、抗原抗体結合物を生成させる。この結合物を基質液との酵素反応により発色させ、プレートリーダーで吸光度を測定することにより実施することができる。
【0154】
(▲4▼−4) 測定対象の生体試料として癌抗原特異的CTLを用いる場合
測定対象物として末梢血リンパ球中に存在する癌抗原特異的CTLを用いる場合は、本発明の癌の検出方法(診断方法)は、生体試料中のKU−TES−1特異的CTLを検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には、文献(Science,274:p94,1996)に記載の方法に従って蛍光標識したHLA抗原と本発明のペプチドとの複合体の4量体を作製し、これを用いて癌が疑われる患者の末梢血リンパ球中の抗原ペプチド特異的CTLをフローサイトメーターにより定量することにより行うことができる。
【0155】
(▲4▼−5)癌の診断
癌の診断は、例えば、被験者の血液や癌が疑われる被験組織におけるKU−TES−1遺伝子の遺伝子発現レベル、これらの遺伝子の発現産物であるKU−TES−1タンパク質の量、抗KU−TES−1抗体の量、またはKU−TES−1特異的CTLの量を測定することにより行うことができる。その際、場合によっては正常な対応組織における当該遺伝子発現レベルまたは当該タンパク質レベル等と比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
【0156】
ここで被験者の被験組織と正常な対応組織との遺伝子、タンパク質、抗体、またはCTLの量(レベル)の比較は、被験者の生体試料と正常者の生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。並行して行わない場合は、複数(少なくとも2つ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な組織を用いて均一な測定条件で測定して得られたKU−TES−1遺伝子の遺伝子発現レベル、KU−TES−1の量、抗KU−TES−1抗体の量、またはKU−TES−1特異的CTLの量の平均値または統計的中間値を、正常者の値として、比較に用いることができる。
【0157】
被験者が、癌であるかどうかの判断は、例えば該被験者の組織におけるKU−TES−1遺伝子の遺伝子発現レベル、KU−TES−1の量、抗KU−TES−1抗体の量、またはKU−TES−1特異的CTLの量が、正常者のそれらのレベルと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上多いことを指標として行うことができる。
【0158】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0159】
実施例1
精巣由来 cDNA ライブラリーの作製
前立腺癌の手術により摘出された精巣より患者のインフォームドコンセントを得て入手したヒト正常精巣組織から塩化セシウム密度勾配法にてトータルRNAを抽出した。Oligotex−dT 30 super mRNA Purification kit (宝酒造)にて2回精製してPoly (A)+RNAを抽出した。cDNAライブラリー作製には5μgのPoly (A)+RNAを使用した。First−strand合成にはXho I切断部位と5−methyl−CTPを持つOligodeoxythymidylate primerを使用した。cDNAは、EcoRIアダプターにライゲーションし、XhoIで消化した。このcDNA断片は直接バクテリオファージ発現ベクターであるλ ZAP II(Stratagene社)に挿入し、大腸菌にトランスフォームした。こうして作製されたライブラリーのプライマリーサイズは1.2×107であった。
【0160】
実施例2
膵管癌患者血清によるc DNA ライブラリーのスクリーニング
膵管癌患者よりインフォームドコンセントを得て血清を採取した。膵管癌患者血清1mlを5%スキムミルクで1:15に希釈し、大腸菌のライセートと一晩反応させた後、上清を5%スキムミルク添加Tris buffered Saline (TBS)、0.01%アジ化ナトリウムで1:200に希釈してインサートのないファージタンパク質を転写したニトロセルロース膜Hybond−C(アマシャム・ファルマシア社)と反応させた。この操作により血清中の抗大腸菌抗体と抗ファージ抗体を除去した。150mmのディシュ当たり約1.5×104個のファージを播き、6時間培養してプラークを発現させた後、isipropyl−β−D(−)−thiogalactpyranoside(IPTG)を吸収させたニトロセルロース膜を4時間反応させ、cDNA由来のリコンビナントタンパク質をβ−galactosidasaとの融合タンパク質として発現・転写した。このようにして作製したニトロセルロース膜と上記の吸収済み患者血清とを反応させた後、アルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgG−Fc抗体(Cappel社)を60分間反応させ、Nitro blue tetrazolium(Boehringer Mannheim社)と5−bromo−4−chloro−3−indolyl phosphate(Sigma社)にて発色させて陽性クローンを同定した。陽性クローンはディシュから分取し、更に90mmディシュ上で再度スクリーニングして単離した。
【0161】
こうして得られた単離抗原遺伝子クローンをKU−TES−1(別名TW12)と命名した。またKU−TES−1はT3センスプライマー(配列番号7)とT7アンチセンスプライマー(配列番号8)でEx Taq kit(宝酒造)を使用した35サイクルのPCRで増幅し、Big Dye Sequencing Ready Reaction kitとABI Prism310あるいは3100シークエンサー(ABI社)を使用して塩基配列を決定した。決定した塩基配列およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:1及び2に示した。
【0162】
実施例3
単離抗原遺伝子の癌組織、癌細胞での発現レベルの検討
KU−TES−1クローンに関して、RT−PCR法を用いてmRNA発現レベルを検討した。細胞株、癌組織からトータルRNAを塩化セシウム密度勾配法で抽出した。正常組織トータルRNAは、市販のもの(CLONTECH社)を使用した。5μgのトータルRNAを逆転写酵素M−MLV Reverse Transcriptase Rnase H(−) (Promega社)で処理してcDNAを調製した。cDNA0.5μgとセンスプライマー(配列番号9)とアンチセンスプライマー(配列番号10)を用い、Ex Taq kit(宝酒造)を使用して35サイクルのPCRで増幅した。増幅産物は電気泳動した後、増幅産物のバンドを検出した。コントロールとしてGAPDH遺伝子もPCRにて増幅して検出した。ヒト正常組織(脳、肺、胎盤、肝臓、胃、大腸、精巣、膵臓)、ヒト正常細胞株(線維芽細胞、メラノサイト、T細胞TIL1362、B細胞EB888)、ヒトグリオーマ細胞株U87MO、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562、ヒト腎細胞癌細胞株RCC−6、ヒト乳癌細胞株MIDA231、ヒト肺癌細胞株KIS、ヒト膵管癌細胞株(Panc1、PK8、PK59)、ヒト大腸癌細胞株(colo320、colo201、SW837)、ヒト肝細胞癌株(Li7、hLE、hLF、Alexander、HuH7)、ヒト肝芽腫細胞株HepG2、ヒト胃癌細胞株(MKN1、MKN7、MKN28、MKN74)、ヒト膵管癌組織(K2F、KYM、KYH、SAIと表記)、ヒト胃癌組織(IWAと表記)、ヒト子宮体癌組織(KIT、SHIと表記)、ヒト大腸癌組織(IWA2と表記)、ヒトメラノーマ組織(MEL1と表記)の各組織、細胞について検討を行った結果を図1に示した。その結果、正常組織では精巣で、また癌細胞株では膵管癌細胞株Panc1、腎細胞癌細胞株RCC−6、及び肝細胞癌細胞株hLFで発現が検出された。また癌患者の癌組織検体では、膵管癌組織2検体(K2F、KYM)と子宮体癌組織2検体(KIT、SHI)で発現が検出された。以上のようにKU−TES−1はCT抗原としての発現パターンを示すことが明らかとなった。
【0163】
さらにNorthern blot hybridization法によりKU−TES−1クローンの発現を解析した。トータルRNAは、上記のRT−PCR法で用いたものと同じものを用いた。10μgの各トータルRNAを1%アガロースゲルの電気泳動で展開した。RNAはニトロセルロース膜Hybond−XL(アマシャム・ファルマシア社)に転写した。前記RT−PCRでのPCR産物をHigh Prime DNA Labelling kit(Boehringer Mannheim社)を用いて32P標識し、プローブとした。プレハイブリダイゼーションは65℃、1時間で行い、プローブ22ngとのハイブリダイゼーションは、65℃、2時間行った。ハイブリダイゼーション液にはQuickHyb hybridization Solution (Stratagene社)を使用した。ハイブリダイゼーション後のニトロセルロース膜は室温で1%SDSを含む2×SSC液で5分間2回洗浄後、0.1%SDSを含む0.1×SSCで60℃、30分間2回洗浄した。BAS−2500あるいは5000(富士フィルム社)を用いてラジオアイソトープを検出した。
その結果、正常組織では精巣でのみmRNAの発現が認められ、その長さは約3kbpであった。また癌患者の癌組織検体では、膵管癌患者検体K2Fと子宮体癌患者検体SHIで発現が検出された。
【0164】
実施例4
癌患者血清中の KU−TES− 1がコードする蛋白質に対する抗体の検出
KU−TES−1の蛋白質に対するIgG抗体が癌患者に特異性を持って存在するか否かを検討するために、KU−TES−1のファージクローンを使用して血清スクリーニングを行った。各種血清は100倍に希釈し、抗大腸菌抗体と抗バクテリオファージ抗体の吸収を充分に行った後に使用した。陽性コントロールは、KU−TES−1の単離に用いた患者の血清を使用し、KU−TES−1クローンの挿入されたファージとインサートの挿入されていないファージとの発色反応のコントラスト差で判定した。検討には、健常人30名、膵管癌患者20名、腎細胞癌患者14名、食道癌患者9名、メラノーマ患者22名、前立腺癌患者10名、膀胱癌患者18名、大腸癌患者18名、子宮体癌患者12名からインフォームドコンセントを取得して採取した血清を用いた。更に膵管癌随伴性膵炎による膵組織破壊の影響を検討するため7名の急性膵炎後血清を加えた。結果を表2に示す。KU−TES−1の蛋白質に対する抗体は、膵管癌3名、大腸癌1名、子宮体癌2名、前立腺癌1名の血清中に存在が確認された。また、KU−TES−1の蛋白質に対する抗体は膵炎患者血清には検出されなかったが、健常人1名の血清中で検出された。
以上のようにKU−TES−1抗原に対するIgG抗体は、癌患者血清中に特異性を示して存在することが明らかとなった。
これらの結果から、新規遺伝子KU−TES−1は、癌抗原として作用していることが明らかとなった。
【0165】
【表2】
【0166】
実施例5
KU−TES− 1遺伝子とホモロジーを有する遺伝子の同定
データベース(BLAST Search)を用いてKU−TES−1遺伝子(配列番号1)のホモロジー検索を行った。その結果、機能未知の2つの遺伝子(Accession No. NM_173081、Accession No. XM_166109)と高い相同性が認められた。Accession No. NM_173081の塩基配列およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3及び4に示した。またAccession No. XM_166109の塩基配列およびアミノ酸配列を、それぞれ5及び6に示した。これらのAccession No.で示されるタンパク質は、KU−TES−1のアミノ酸配列(配列番号2)の第391位までと同一の配列を有し、かつそのC末端側に新たな481アミノ酸残基を有するタンパク質であった。この結果と先の実施例3の結果から、前記Accession No.で示されるタンパク質はKU−TES−1のスプライスバリアントであると考えられた。
【0167】
実施例3と同様のNorthern blot hybridizationを、プローブの濃度を変えて行った。ヒト正常精巣およびヒト膵管癌細胞株Panc1由来のトータルRNAに対してハイブリダイゼーションを行った結果、約3kbと約1.5kbの位置にバンドが検出され、これらは前記KU−TES−1およびそのスプライスバリアントに対応するものと考えられた。
【0168】
【発明の効果】
本発明により、新たな癌抗原であるKU−TES−1抗原およびその遺伝子、およびこれらの物質の癌免疫分野における利用などが提供される。本発明のKU−TES−1抗原およびその遺伝子は、多くの癌患者の処置および診断に利用することができる。
【0169】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】KU−TES−1抗原遺伝子のmRNAレベルをRT−PCR法にて検討した結果を示した図である。コントロールとしてGAPDH遺伝子もPCRにて増幅して検出した。ヒト正常組織(図中上段、左から脳(brain)、肺(lung)、胎盤(placenta)、肝臓(liver)、胃(stomach)、大腸(colon)、精巣(testis)、膵臓(pancreas))、ヒト正常細胞株(左から線維芽細胞(fibroblast)、メラノサイト、T細胞TIL1362、B細胞EB888)、ヒトグリオーマ細胞株U87MO、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562、ヒト腎細胞癌細胞株RCC−6、ヒト乳癌細胞株MIDA231、ヒト肺癌細胞株KIS、ヒト膵管癌細胞株(Panc−1、PK8、PK59)、ヒト大腸癌細胞株(colo320、colo201、SW837)、ヒト肝細胞癌株(Li7、hLE、hLF、Alexander、HuH7)、ヒト肝芽腫細胞株HepG2、ヒト胃癌細胞株(MKN1、MKN7、MKN28、MKN74)、ヒト膵管癌組織(K2F、KYM、KYH、SAIと表記)、ヒト胃癌組織(IWAと表記)、ヒト子宮体癌組織(KIT、SHIと表記)、ヒト大腸癌組織(IWA2と表記)、ヒトメラノーマ組織(MEL1と表記)の各組織、細胞について検討を行った。
【図2】KU−TES−1抗原遺伝子のmRNAをNorthern blot hybridizationにより検出した結果を示した図である。コントロールとしてGAPDH遺伝子も検出した。図中、AはKU−TES−1プローブ22ng/μlを用いた結果を、Bは同プローブ33ng/μl用いた結果を、またCはGAPDHプローブを用いた結果を示す。また図中、レーン1はヒト正常精巣由来のRNAを用いた結果を、レーン2はヒト膵管癌細胞株Panc1由来RNAを用いた結果を、またレーン3はネガティブコントロールの結果を示す。
Claims (17)
- 以下の(a)、(b)、(c)、(d)または(e)のいずれかのポリヌクレオチド:
(a) 配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(b) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(c) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(d) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド、
(e) 前記(a)または(b)のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、かつ当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が癌抗原として作用するポリヌクレオチド。 - 請求項1記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター。
- 請求項2記載の発現ベクターによって形質転換された形質転換体。
- 請求項3記載の形質転換体を培養し、発現される組換えタンパク質を回収することからなる、組換えタンパク質の生産方法。
- 請求項1記載のポリヌクレオチドによりコードされるか、または請求項4記載の生産方法により生産されるタンパク質。
- 以下の(a)、(b)または(c)のいずれかのタンパク質:
(a) 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b) 前記(a)のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質、
(c) 前記(a)のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質が癌抗原として作用するタンパク質。 - 請求項1記載のポリヌクレオチド、請求項2記載の発現ベクター、請求項3記載の形質転換体、あるいは請求項5または6記載のタンパク質を有効成分として含有する医薬。
- 癌ワクチンとして使用される、請求項7記載の医薬。
- 請求項5または6記載のタンパク質に特異的に結合する抗体。
- 請求項1記載のポリヌクレオチドの塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる癌マーカー。
- 配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5に記載の塩基配列における連続する少なくとも15塩基を含有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、請求項10記載の癌マーカー。
- 請求項5または6記載のタンパク質のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸を含有するポリペプチドからなる癌マーカー。
- 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列における連続する少なくとも8アミノ酸を含有するポリペプチドからなる、請求項12記載の癌マーカー。
- 請求項9記載の抗体からなる癌マーカー。
- 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体からなる、請求項14記載の癌マーカー。
- 癌が膵癌、大腸癌、子宮体癌、前立腺癌、腎癌または肝癌である、請求項10〜15いずれか記載の癌マーカー。
- 請求項10〜16いずれか記載の癌マーカーを含有してなる癌の診断薬。
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