JP4231284B2 - Syt−ssx改変ペプチド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、SYT−SSX由来の改変ペプチドに関する。より詳細には、本発明は、SYT−SSXに由来し、HLA−A24抗原に拘束性の改変型腫瘍抗原ペプチド、および当該ペプチドの癌ワクチンとしての使用などに関する。
【0002】
【従来の技術】
生体による腫瘍(癌)の排除には、免疫系、特にT細胞が重要な役割を果たしていることが知られている。実際、ヒトの腫瘍局所には腫瘍細胞に対して傷害活性を示すリンパ球の浸潤が認められ(非特許文献1を参照)、メラノーマからは自己の腫瘍細胞を認識する細胞傷害性T細胞(以下、CTLという)が比較的容易に分離されている(非特許文献2、3および4を参照)。また、該CTLの移入によるメラノーマ治療の臨床結果からも、腫瘍排除におけるT細胞の重要性が示唆されている(非特許文献5を参照)。
【0003】
自己の腫瘍細胞を攻撃するCTLが標的とする分子については長い間不明であったが、最近の免疫学および分子生物学の進歩により次第に明らかになってきた。すなわちCTLは、T細胞受容体(TCR)を用いて、腫瘍抗原ペプチドと呼ばれるペプチドと主要組織適合遺伝子複合体クラスI抗原(MHCクラスI抗原、HLA抗原とも呼ばれる)との複合体を認識することにより、自己の腫瘍細胞を攻撃していることが明らかとなった。
【0004】
腫瘍抗原ペプチドは、腫瘍に特有のタンパク質、すなわち腫瘍抗原タンパク質が細胞内で合成された後、プロテアソームにより細胞内で分解されることによって生成される。生成された腫瘍抗原ペプチドは、小胞体内でMHCクラスI抗原(HLA抗原)と結合して複合体を形成し、細胞表面に運ばれて抗原提示される。この抗原提示された複合体を腫瘍特異的なCTLが認識し、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗腫瘍効果を示す。このような一連の作用の解明に伴い、腫瘍抗原タンパク質または腫瘍抗原ペプチドをいわゆる癌ワクチンとして利用することにより、腫瘍患者の体内の腫瘍特異的CTLを増強させる治療法が可能となった。
【0005】
腫瘍抗原タンパク質としては、1991年にT.Boonらが初めてMAGEと名付けたタンパク質をヒトメラノーマ細胞から同定した(非特許文献6を参照)。その後、いくつかの腫瘍抗原タンパク質が、主にメラノーマ細胞から同定されている。メラノーマ抗原としては、メラノサイト組織特異的タンパク質であるgp100(非特許文献7を参照)、MART−1(非特許文献8を参照)、チロシナーゼ(非特許文献9を参照)などのメラノソームタンパク質、メラノーマだけでなく各種腫瘍細胞と正常精巣細胞に発現するMAGE関連タンパク質群(非特許文献10を参照)、腫瘍特異的なアミノ酸変異を持つβ−カテニン(非特許文献11を参照)、CDK4(非特許文献12を参照)などが同定されている。また、メラノーマ以外の腫瘍抗原タンパク質としては、HER2/neu(非特許文献13を参照)、p53 (変異型) (非特許文献14を参照)などの腫瘍遺伝子産物、CEA(非特許文献15を参照)、PSA(非特許文献16を参照)などの腫瘍マーカー、HPV(非特許文献17を参照)、EBV(非特許文献18を参照)などのウイルスタンパク質などが同定されている。これらについては、総説(非特許文献19、20および21を参照)の記述に詳しい。
【0006】
ところで滑膜肉腫には特定の染色体転座が存在することが知られている。滑膜肉腫の染色体転座では、18番染色体上のSYT遺伝子とX染色体上のSSX遺伝子とが融合した転座遺伝子SYT-SSXが形成される。この転座遺伝子SYT-SSXは、SYTタンパク質(387アミノ酸)のC末端側の8アミノ酸が、SSXタンパク質(188アミノ酸)のC末端側の78アミノ酸で置換されたキメラタンパク質(457アミノ酸)をコードしている(非特許文献22および23を参照)。
【0007】
SYT遺伝子は正常組織で発現するが、SSX遺伝子は一部の悪性腫瘍(非特許文献24、25および26を参照)と精巣でのみ発現する。一方、転座遺伝子SYT-SSXは、同じ滑膜肉腫患者の体内でも正常細胞では発現しないが、滑膜肉腫の90%以上で特異的に発現することが知られている(非特許文献22および27を参照)。従って、転座遺伝子SYT-SSXの転座部位からSSX側の遺伝子がコードするポリペプチド鎖は滑膜肉腫に特異的なアミノ酸配列であると考えられる。
【0008】
本発明者らは、SYT-SSXの転座領域より、HLA-A24と結合することが予想されるペプチドを合成し、末梢血からペプチド刺激によるCTLの誘導を試み、ペプチドSS393(Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Lys;配列番号:1)が良好なCTL誘導活性を有することを報告している(非特許文献28を参照)。
【0009】
【非特許文献1】
Arch.Surg.,126:200 ,1990
【非特許文献2】
Immunol.Today,8:385 ,1987
【非特許文献3】
J.Immunol.,138:989 ,1987
【非特許文献4】
Int.J.Cancer,52:52,1992
【非特許文献5】
J.Natl.Cancer.Inst.,86:1159,1994
【非特許文献6】
Science ,254:1643,1991
【非特許文献7】
J.Exp.Med.,179:1005,1994
【非特許文献8】
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:3515,1994
【非特許文献9】
J.Exp.Med.,178:489,1993
【非特許文献10】
J.Exp.Med.,179:921,1994
【非特許文献11】
J.Exp.Med.,183:1185,1996
【非特許文献12】
Science ,269 :1281,1995
【非特許文献13】
J.Exp.Med.,181:2109,1995
【非特許文献14】
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:14704,1996
【非特許文献15】
J.Natl.Cancer.Inst. ,87:982,1995
【非特許文献16】
J.Natl.Cancer.Inst.,89:293,1997
【非特許文献17】
J.Immunol.,154:5934,1995
【非特許文献18】
Int.Immunol.,7:653 ,1995
【非特許文献19】
Immunol.Today,18:267,1997
【非特許文献20】
J.Exp.Med.,183:725 ,1996
【非特許文献21】
Curr.Opin.Immunol.,8:628 ,1996
【非特許文献22】
Nature Genet., 7:502-508, 1994
【非特許文献23】
EMBO J., 14:2333-2340, 1995
【非特許文献24】
Int.J.Cancer, 77:19-23, 1998
【非特許文献25】
Cancer Res., 60: 1654-1662, 2000
【非特許文献26】
Hum.Mol.Genet., 4: 1097-1099, 1995
【非特許文献27】
Hum. Mol. Genet. 6:1549, 1997
【非特許文献28】
J. Immunol., 169:1611, 2002
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、SYT-SSX由来のペプチドSS393(Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Lys;配列番号:1)の第9位のアミノ酸残基を特定のアミノ酸残基に置換した新規な改変ペプチド、および当該改変ペプチドの癌ワクチンとしての使用などを提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述のようにペプチドSS393は良好なCTL誘導能を有するペプチドである。本発明者らは、当該SS393よりさらにHLA-A24抗原への結合親和性が高く、癌ワクチンとして臨床適用可能なペプチドを見出すべく種々検討を行った。その結果、SS393(Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Lys;配列番号:1)の第9位のアミノ酸残基(Lys)をロイシン(Leu)、フェニルアラニン(phe)、イソロイシン(Ile)またはトリプトファン(Trp)に置換することにより、HLA-A24抗原への結合親和性が劇的に向上し、良好なCTL誘導活性を示すことを見出した。
本発明は、以上のような知見に基づき完成するに至ったものである。
【0012】
即ち本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 以下のアミノ酸配列:
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Leu(配列番号:2)、
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Phe(配列番号:3)、
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)、および
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Trp(配列番号:5)
のなかから選ばれるいずれかの配列を含むアミノ酸配列を有するペプチド、
(2) 9〜100アミノ酸からなる、前記(1)記載のペプチド、
(3) 9〜50アミノ酸からなる、前記(1)記載のペプチド、
(4) 配列番号:2、3、4および5のなかから選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる、前記(1)記載のペプチド、
(5) 前記(1)〜(4)いずれか記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(6) 前記(5)記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、
(7) 前記(6)記載の発現ベクターを含有する細胞、
(8) 前記(7)記載の細胞を、ペプチドの発現可能な条件下で培養することを特徴とする、前記(1)〜(4)いずれか記載のペプチドの製造方法、
(9) 前記(1)〜(4)いずれか記載のペプチドに特異的に結合する抗体、
(10) 前記(1)〜(4)いずれか記載のペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドとHLA−A24抗原との複合体が提示されている抗原提示細胞、
(11) 配列番号:2、3、4および5のなかから選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドとHLA−A24抗原との複合体が提示されている、前記(10)記載の抗原提示細胞、
(12) 前記(1)〜(4)いずれか記載のペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドとHLA−A24抗原との複合体を認識する細胞傷害性T細胞、
(13) 配列番号:2、3、4および5のなかから選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドとHLA−A24抗原との複合体を認識する、前記(12)記載の細胞傷害性T細胞、
(14) 前記(1)〜(4)いずれか記載のペプチド、前記(5)記載のポリヌクレオチド、前記(6)記載の発現ベクター、前記(7)記載の細胞、前記(10)または(11)記載の抗原提示細胞、あるいは前記(12)または(13)記載の細胞傷害性T細胞と、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物、
(15) 癌ワクチンとして使用される、前記(14)記載の医薬組成物、
(16) 前記(1)〜(4)いずれか記載のペプチドを含有してなる腫瘍の診断薬、
(17) 前記(1)〜(4)いずれか記載のペプチドとHLA−A24抗原との結合複合体の4量体を含有してなる、前記(16)記載の腫瘍の診断薬、ならびに
(18) 前記(9)記載の抗体を含有してなる腫瘍の診断薬。
【0013】
【発明の実施の形態】
(I)本発明のペプチド
本発明のペプチドとは、SYT-SSX(Nature Genet., 7:502-508, 1994、EMBO J., 14:2333-2340, 1995、NCBIデータベースAccession No.X79200、NM_005637)由来のペプチドであるSS393(Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Lys;配列番号:1)の第9位のアミノ酸残基が特定のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むペプチドであり、HLA-A24拘束性のCTL誘導活性を有するものである。
【0014】
具体的には本発明のペプチドは、以下のアミノ酸配列:
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Leu(配列番号:2)、
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Phe(配列番号:3)、
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)、および
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Trp(配列番号:5)
のなかから選ばれるいずれかの配列を含むアミノ酸配列を有する。
【0015】
このうちGly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Phe(配列番号:3)を含むアミノ酸配列を有するペプチドおよびGly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有するペプチドが好ましく、Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有するペプチドがより好ましい。
【0016】
本発明のペプチドは、本発明ペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドが抗原提示細胞に提示され、CTLを誘導するという特性を有する限り、何ら制限されないが、その長さは通常連続する9〜100アミノ酸であり、より好ましくは連続する9〜50アミノ酸である。ここに、腫瘍抗原ペプチドとは、抗原提示細胞に提示される、CTL誘導活性を導くペプチドとして定義される。
【0017】
本発明ペプチドは、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて合成することができる。合成方法としては、文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis ),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2 ,Academic Press Inc. ,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。
【0018】
また本発明のペプチドは、本発明ペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列情報に基づいて、通常のDNA合成および遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。当該DNA合成や各種プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収などの操作は、当業者に周知の方法、文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al.,CSH Laboratory(1983)、DNA Cloning, DM.Glover, IRL PRESS(1985))、あるいは後述の(II)項に記載の方法などに準じて行うことができる。
【0019】
本発明のペプチドは、抗原提示細胞内にて要すればプロセッシングを受け、生じた腫瘍抗原ペプチドが抗原提示細胞に提示され、HLA-A24抗原拘束性にCTLを誘導するという特性を有するものである。当該腫瘍抗原ペプチドとしての特性は、例えば、 J.Immunol.,154,p2257,1995に記載の測定方法により調べることができる。具体的には、HLA-A24抗原陽性のヒトから末梢血リンパ球を単離し、イン・ビトロで本発明のペプチドを添加して刺激した場合に、該ペプチドをパルスしたHLA-A24陽性細胞を特異的に認識するCTLが誘導されることにより、測定することができる。ここでCTLの誘導の有無は、例えば、抗原ペプチド提示細胞に反応してCTLが産生したIFN-γの量を酵素免疫測定法(ELISA)により測定することによって調べることができる。
【0020】
また、51Crで標識した抗原ペプチド提示細胞に対するCTLの傷害性を測定する方法(51Crリリースアッセイ、Int.J.Cancer,58:p317,1994 )によっても調べることができる。また、HLA-A24のcDNA(Cancer Res.,55:4248-4252 (1995)、Genbank Accession No.M64740)を発現する発現プラスミドを、例えばCOS-7細胞(ATCC No. CRL1651)やVA-13細胞(理化学研究所細胞銀行)に導入した細胞に対して本発明のペプチドをパルスし、この細胞に対して、前記で調製したCTLなどを反応させ、該CTLが産生する種々のサイトカイン(例えばIFN-γやTNF-α)の量を測定することによっても、調べることができる。
さらに、WO 02/47474 号公報および Int J. Cancer:100,565-570 (2002)に記述されたHLA-A24モデルマウスを用いることによっても調べることができる。
以下、ここで述べたような測定法を「腫瘍抗原ペプチドの測定法」と称することもある。
【0021】
以下、本発明のペプチドについてより詳細に説明する。
本発明は前述のように、SYT-SSX由来のペプチドであるSS393(配列番号:1)の第9位のリジンをロイシン、フェニルアラニン、イソロイシンまたはトリプトファンに置換した置換型ペプチド(配列番号:2〜5)が、オリジナルのペプチドSS393よりも高いHLA-A24結合親和性を有し、よって良好なCTL誘導活性を有するという新たな知見を得たことに基づく。これら置換型ペプチドのいずれかを含有する本発明のペプチドは、癌免疫療法におけるCTL誘導剤の有効成分として、また癌ワクチンの有効成分として有用である。
【0022】
本発明のペプチドとして、より具体的には以下の(1-1)〜(1-3)に挙げるペプチドを例示することができる。
【0023】
(1-1) 配列番号:2〜5のなかから選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド
配列番号:2〜5のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドの具体例として、以下に示す腫瘍抗原ペプチドを例示することができる:
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Leu(配列番号:2)からなる腫瘍抗原ペプチド、
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Phe(配列番号:3)からなる腫瘍抗原ペプチド、
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)からなる腫瘍抗原ペプチド、および
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Trp(配列番号:5)からなる腫瘍抗原ペプチド。
【0024】
このうちGly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Phe(配列番号:3)からなる腫瘍抗原ペプチドおよびGly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)からなる腫瘍抗原ペプチドが好ましく、Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)からなる腫瘍抗原ペプチドがより好ましい。これらのペプチドは、前述のように一般的なペプチド合成法によって製造することができる。また、前記「腫瘍抗原ペプチドの測定法」等によりCTL誘導活性を測定することができる。
【0025】
(1-2) 配列番号:2〜5のいずれかの配列を含むアミノ酸配列を有するエピトープペプチド
近年、複数のCTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結したペプチド(エピトープペプチド)が、効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1998, 161: 3186-3194には、腫瘍抗原タンパク質PSA由来のHLA-A2, -A3, -A11, B53拘束性CTLエピトープを連結した約30merのペプチドが、イン・ビボでそれぞれのCTLエピトープに特異的なCTLを誘導したことが記載されている。
【0026】
またCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたペプチド(エピトープペプチド)により、効率的にCTLが誘導されることも示されている。ここでヘルパーエピトープとはCD4陽性T細胞を活性化させる作用を有するペプチドを指すものであり(Immunity., 1:751, 1994)、例えばB型肝炎ウイルス由来のHBVc128−140や破傷風毒素由来のTT947−967などが知られている。当該ヘルパーエピトープにより活性化されたCD4陽性T細胞は、CTLの分化の誘導や維持、およびマクロファージなどのエフェクター活性化などの作用を発揮するため、抗腫瘍免疫応答に重要であると考えられている。このようなヘルパーエピトープとCTLエピトープとを連列したペプチドの具体例として、例えばJournal of Immunology 1999, 162: 3915-3925には、HBV由来HLA-A2拘束性抗原ペプチド6種類、HLA-A11拘束性抗原ペプチド3種類、およびヘルパーエピトープより構成されるペプチドをコードするDNA(ミニジーン)が、イン・ビボでそれぞれのエピトープに対するCTLを効果的に誘導したことが記載されている。また実際に、CTLエピトープ(メラノーマ抗原gp100の第280位〜288位からなる腫瘍抗原ペプチド)とヘルパーエピトープ(破傷風毒素由来Tヘルパーエピトープ)とを連結したペプチドが臨床試験に供されている(Clinical Cancer Res., 2001,7:3012-3024)。
【0027】
従って、前記(1-1)に記述したような本発明の腫瘍抗原ペプチドを含む複数のエピトープを連結したペプチド(エピトープペプチド)であってイン・ビボでCTL誘導活性を有するペプチドも、本発明のペプチドの具体例として例示することができる。
ここで、本発明の腫瘍抗原ペプチドに連結させるエピトープがCTLエピトープの場合、用いるCTLエピトープとしては、SYT-SSX由来のHLA-A1, -A0201, -A0204, -A0205, -A0206, -A0207, -A11, -A24, -A31, -A6801, -B7, -B8, -B2705, -B37, -Cw0401, -Cw0602などに拘束性のCTLエピトープが挙げられる。これらCTLエピトープは複数個連結することが可能であり、1つのCTLエピトープの長さとしては、各種HLA分子に結合している抗原ペプチドの解析により(Immunogenetics,41:178,1995)、8〜14アミノ酸程度を挙げることができる。
【0028】
また本発明の腫瘍抗原ペプチドに連結させるエピトープがヘルパーエピトープの場合、用いるヘルパーエピトープとしては、前述のようなB型肝炎ウイルス由来のHBVc128−140や破傷風毒素由来のTT947−967などが挙げられる。また当該ヘルパーエピトープの長さとしては、13〜30アミノ酸程度、好ましくは13〜17アミノ酸程度を挙げることができる。
【0029】
本発明のエピトープペプチドとして、より具体的には、例えば配列番号:2〜5のいずれかのアミノ酸配列の1種または2種以上(好ましくは配列番号:4のアミノ酸配列を含む)とヘルパーエピトープとを連結させたペプチドを挙げることができる。より具体的には、例えば配列番号:2〜5のいずれかのアミノ酸配列の1種または2種以上(好ましくは配列番号:4のアミノ酸配列を含む)と破傷風毒素由来のヘルパーペプチド(例えばPhe Asn Asn Phe Thr Val Ser Phe Trp Leu Arg Val Pro Lys Val Ser Ala Ser His Leu Glu;配列番号:7)とを連結させたペプチドや、配列番号:2〜5のいずれかのアミノ酸配列の1種または2種以上(好ましくは配列番号:4のアミノ酸配列を含む)とAla Gln Tyr Ile Lys Ala Asn Ser Lys Phe Ile Gly Ile Thr Glu Leu(配列番号:8、Clinical Cancer Res., 2001,7:3012-3024)とを連結させたペプチドなどが挙げられる。
【0030】
このような複数のエピトープを連結させたペプチド(エピトープペプチド)は、前述のように一般的なペプチド合成法によって製造することができる。またこれら複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列情報に基づいて、通常のDNA合成および遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。すなわち、当該ポリヌクレオチドを周知の発現ベクターに挿入し、得られた組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換して作製された形質転換体を培養し、培養物より目的の複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドを回収することにより製造することができる。これらの手法は、前述のように文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al.,CSH Laboratory(1983)、DNA Cloning, DM.Glover, IRL PRESS(1985))や後述の(II)項に記載の方法などに準じて行うことができる。
【0031】
以上のようにして製造された複数のエピトープを連結させたエピトープペプチドを前記「腫瘍抗原ペプチドの測定法」に供すること等によりCTL誘導活性を測定することができる。
【0032】
(1-3) 配列番号:2〜5のいずれかの配列を含むアミノ酸配列からなり、N末端アミノ酸のアミノ基またはC末端アミノ酸のカルボキシル基が修飾されたペプチド前記(1-1)〜(1-2)に例示したような本発明のペプチドのN末端アミノ酸のアミノ基、またはC末端アミノ酸のカルボキシル基を修飾することも可能である。
【0033】
ここでN末端アミノ酸のアミノ基の修飾基としては、例えば1〜3個の炭素数1から6のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アシル基が挙げられ、アシル基の具体例としては炭素数1から6のアルカノイル基、フェニル基で置換された炭素数1から6のアルカノイル基、炭素数5から7のシクロアルキル基で置換されたカルボニル基、炭素数1から6のアルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、フェニル基で置換されたアルコキシカルボニル基、炭素数5から7のシクロアルコキシで置換されたカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
C末端アミノ酸のカルボキシル基を修飾したペプチドとしては、例えばエステル体およびアミド体が挙げられ、エステル体の具体例としては、炭素数1から6のアルキルエステル、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキルエステル、炭素数5から7のシクロアルキルエステル等が挙げられ、アミド体の具体例としては、アミド、炭素数1から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。
【0034】
以上のような本発明のペプチドは、例えば、▲1▼後述するCTLの誘導剤、癌ワクチンの有効成分として、また▲2▼後述する抗原提示細胞の作製において、有効に用いることができる。
【0035】
(II)本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターおよび形質転換細胞
本発明はまた、前記本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもRNAの形態であっても良い。これら本発明のポリヌクレオチドは、本発明のペプチドのアミノ酸配列情報およびそれによりコードされるDNAの配列情報に基づき容易に製造することができる。具体的には、通常のDNA合成やPCRによる増幅などによって、製造することができる。
【0036】
このような本発明のポリヌクレオチドとしては、以下に示すポリヌクレオチドが例示される:
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Leu(配列番号:2)を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Phe(配列番号:3)を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Trp(配列番号:5)を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0037】
このうちGly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Phe(配列番号:3)を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびGly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドが好ましく、Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドがより好ましい。
【0038】
具体的には、例えば前記(1-2)に記述したような配列番号:2〜5のいずれかのアミノ酸配列を有するエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。より具体的には、例えば配列番号:2〜5のいずれかのアミノ酸配列の1種または2種以上(好ましくは配列番号:4のアミノ酸配列を含む)とヘルパーペプチドとを連結させたペプチドをコードするポリヌクレオチドを挙げることができ、例えば配列番号:2〜5のいずれかのアミノ酸配列の1種または2種以上(好ましくは配列番号:4のアミノ酸配列を含む)と破傷風毒素由来のヘルパーペプチド(例えばPhe Asn Asn Phe Thr Val Ser Phe Trp Leu Arg Val Pro Lys Val Ser Ala Ser His Leu Glu;配列番号:7)とを連結させたペプチドをコードするポリヌクレオチドや、配列番号:3〜7のいずれかのアミノ酸配列の1種または2種以上(好ましくは配列番号:4のアミノ酸配列を含む)とAla Gln Tyr Ile Lys Ala Asn Ser Lys Phe Ile Gly Ile Thr Glu Leu(配列番号:8、Clinical Cancer Res., 2001,7:3012-3024)とを連結させたペプチドをコードするポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0039】
前記で作製された本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込むことにより、本発明のペプチドを発現するための組換え発現ベクターを作製することができる。
ここで用いる発現ベクターとしては、用いる宿主や目的等に応じて適宜選択することができ、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。
【0040】
例えば、宿主が大腸菌の場合、ベクターとしては、pUC118、pUC119、pBR322、pCR3等のプラスミドベクター、λZAPII、λgt11などのファージベクターが挙げられる。宿主が酵母の場合、ベクターとしては、pYES2、pYEUra3などが挙げられる。宿主が昆虫細胞の場合には、pAcSGHisNT-Aなどが挙げられる。宿主が動物細胞の場合には、pKCR、pCDM8、pGL2、pcDNA3.1、pRc/RSV、pRc/CMVなどのプラスミドベクターや、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターなどのウイルスベクターが挙げられる。
【0041】
前記ベクターは、発現誘導可能なプロモーター、シグナル配列をコードする遺伝子、選択用マーカー遺伝子、ターミネーターなどの因子を適宜有していても良い。
また、単離精製が容易になるように、チオレドキシン、Hisタグ、あるいはGST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)等との融合タンパク質として発現する配列が付加されていても良い。この場合、宿主細胞内で機能する適切なプロモーター(lac、tac、trc、trp、CMV、SV40初期プロモーターなど)を有するGST融合タンパクベクター(pGEX4Tなど)や、Myc、Hisなどのタグ配列を有するベクター(pcDNA3.1/Myc-Hisなど)、さらにはチオレドキシンおよびHisタグとの融合タンパク質を発現するベクター(pET32a)などを用いることができる。
【0042】
以上のような本発明のポリヌクレオチドまたはそれを含有する発現ベクターを前記「腫瘍抗原ペプチドの測定法」に供することによりCTL誘導活性を測定することができる。また以下に挙げる方法によっても測定することができる。
すなわちまず、COS-7細胞(ATCC CRL1651)やVA-13細胞(理化学研究所細胞開発銀行)といった細胞に対し、本発明のポリヌクレオチドを有する発現ベクターと、HLA-A24抗原をコードするcDNA(Cancer Res.,55:4248-4252(1995)、Genbank Accession No.M64740)を有する発現ベクターとをダブルトランスフェクトする。該トランスフェクトは、例えばリポフェクトアミン試薬(GIBCO BRL社製)を用いたリポフェクチン法などにより行うことができる。その後、HLA-A24に拘束性のCTLを加えて作用させ、該CTLが反応して産生する種々のサイトカイン(例えばIFN-γ、TNF-α)の量を、例えばELISA法や TNF releaseアッセイ法などで測定することによって、本発明のポリヌクレオチドがCTL誘導活性を有するか否かを調べることができる。
本発明のポリヌクレオチドまたはそれを含有する発現ベクターは、例えば、▲1▼後述する本発明のペプチドの製造において、▲2▼後述する遺伝子治療において、また▲3▼後述する抗原提示細胞の作製において、有効に用いることができる。
【0043】
前記で作製された発現ベクターで宿主を形質転換することにより、当該発現ベクターを含有する形質転換細胞を作製することができる。
ここで用いられる宿主としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。大腸菌としては、E.coli K-12系統のHB101株、C600株、JM109株、DH5α株、AD494(DE3)株などが挙げられる。また酵母としては、サッカロミセス・セルビジエなどが挙げられる。動物細胞としては、L929細胞、BALB/c3T3細胞、C127細胞、CHO細胞、COS細胞、Vero細胞、Hela細胞などが挙げられる。昆虫細胞としてはsf9などが挙げられる。
【0044】
宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、前記宿主細胞に適合した通常の導入方法を用いれば良い。具体的にはリン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin; Gibco-BRL社)を用いる方法などが挙げられる。導入後、選択マーカーを含む通常の培地にて培養することにより、前記発現ベクターが宿主細胞中に導入された形質転換細胞を選択することができる。
【0045】
以上のようにして得られた形質転換細胞を好適な条件下で培養し続けることにより、本発明のペプチドを製造することができる。得られたポリペプチドは、一般的な生化学的精製手段により、さらに単離・精製することができる。ここで精製手段としては、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。また本発明のポリぺプチドを、前述のチオレドキシンやHisタグ、GST等との融合タンパク質として発現させた場合は、これら融合タンパク質やタグの性質を利用した精製法により単離・精製することができる。
【0046】
(III)本発明の抗体
本発明は、本発明のペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、本発明のペプチドを免疫原とするポリクローナル抗体であっても、またモノクローナル抗体であっても良い。
本発明の抗体は前記のように本発明のペプチドに特異的に結合するものであれば特に制限されないが、具体的には、配列番号:2〜5のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチドに特異的に結合する抗体を挙げることができる。
【0047】
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13、Antibodies; A Laboratory Manual, Lane, H, D.ら編, Cold Spring Harber Laboratory Press 出版 New York 1989)。
【0048】
具体的には、本発明のペプチド(例えば配列番号:2〜5のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチド)を免疫原として用い、家兎等の非ヒト動物を免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、本発明のペプチド(例えば配列番号:2〜5のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチド)をマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0049】
本発明のペプチドに対する抗体の作製は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム-パルヴムなどのヒトアジュバントなどがある。
【0050】
以上のように本発明のペプチドを用いて常法により適宜動物を免疫することにより、ペプチドを認識する抗体、さらにはその活性を中和する抗体が容易に作製できる。抗体の用途としては、アフィニティークロマトグラフィー、免疫学的診断等が挙げられる。免疫学的診断は、イムノブロット法、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光あるいは発光測定法等より適宜選択できる。このような免疫学的診断は、SYT-SSX遺伝子が発現している腫瘍、すなわち滑膜肉腫等の診断において有効である。
【0051】
(IV)本発明の抗原提示細胞
本発明は、本発明のペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドとHLA-A24抗原との複合体が提示されている抗原提示細胞を提供する。具体的には、本発明は、配列番号:2〜5のなかから選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドとHLA-A24抗原との複合体が提示されている抗原提示細胞を提供する。
本発明の抗原提示細胞は、好ましくは配列番号:3または4のアミノ酸配列からなるペプチドとHLA-A24抗原との複合体が提示されている抗原提示細胞であり、より好ましくは配列番号: 4のアミノ酸配列からなるペプチドとHLA-A24抗原との複合体が提示されている抗原提示細胞である。
【0052】
後述の実施例において、本発明のペプチドによりCTL誘導活性が認められたが、これは、本発明のペプチドを抗原提示用細胞にパルスすることにより、本発明のペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドとHLA-A24抗原との複合体の提示された抗原提示細胞が生じ、そして、この抗原提示細胞を特異的に認識するCTLが誘導されたことを示すものである。このような、HLA-A24抗原と本発明のペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドとの複合体の提示された抗原提示細胞は、後述する細胞療法(DC療法)において有効に用いられる。
【0053】
細胞療法(DC療法)において用いられる抗原提示細胞は、腫瘍患者から抗原提示能を有する細胞を単離し、この細胞に本発明のペプチドを体外でパルスするか、または本発明のポリヌクレオチドやそれを含有する発現ベクターを細胞内に導入して、HLA-A24抗原と本発明のペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドとの複合体を細胞表面に提示させることにより作製される。ここで「抗原提示能を有する細胞」とは、本発明のペプチドを提示可能なHLA-A24抗原を細胞表面に発現している細胞であれば特に限定されないが、抗原提示能が高いとされている樹状細胞が好ましい。
また、前記抗原提示能を有する細胞にパルスされるものとしては、本発明のペプチドであっても良いし、また本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドやそれを含有する発現ベクターであっても良い。
【0054】
本発明の抗原提示細胞は、例えば腫瘍患者から抗原提示能を有する細胞を単離し、該細胞に本発明のペプチド(例えば配列番号:2〜5のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチド)を体外でパルスし、HLA-A24抗原と本発明のペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドとの複合体を作製することにより得られる(Cancer Immunol.Immunother.,46:82,1998、J.Immunol.,158:p1796,1997、Cancer Res.,59:p1184,1999)。樹状細胞を用いる場合は、例えば、腫瘍患者の末梢血からフィコール法によりリンパ球を分離し、その後非付着細胞を除き、付着細胞をGM-CSFおよびIL-4存在下で培養して樹状細胞を誘導し、当該樹状細胞を本発明のペプチドと共に培養してパルスすることなどにより、本発明の抗原提示細胞を調製することができる。
【0055】
また、前記抗原提示能を有する細胞に本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば配列番号:2〜5のいずれかに記載の配列を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド)あるいはそれを含有する発現ベクターを導入することにより本発明の抗原提示細胞を調製する場合は、当該ポリヌクレオチドがDNAの場合は Cancer Res.,56:p5672,1996や J.Immunol.,161: p5607,1998などを参考にして行うことができる。また、DNAのみならずRNAの形態でも同様に抗原提示細胞を調製することができ、この場合は、 J.Exp.Med., 184: p465,1996などを参考できる。
以上のようにして作製された本発明の抗原提示細胞は、後述するCTLの誘導剤、癌ワクチンの有効成分として、細胞療法(DC療法)において有効に用いられる。
【0056】
(V)本発明のCTL
本発明は、本発明のペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドとHLA-A24抗原との複合体を認識するCTLを提供する。具体的には、本発明は、配列番号:2〜5のなかから選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドとHLA-A24抗原との複合体を認識するCTLを提供する。
本発明のCTLは、好ましくは配列番号:3または4のアミノ酸配列からなるペプチドとHLA-A24抗原との複合体を認識するCTLであり、より好ましくは配列番号: 4のアミノ酸配列からなるペプチドとHLA-A24抗原との複合体を認識するCTLである。
【0057】
後述の実施例において、本発明のペプチドによりCTL誘導活性が認められた。これは、これは、本発明のペプチドを抗原提示用細胞にパルスすることにより、本発明のペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドとHLA-A24抗原との複合体の提示された抗原提示細胞が生じ、そして、この抗原提示細胞を特異的に認識するCTLが誘導されたことを示すものである。このような、HLA-A24抗原と本発明のペプチド由来の腫瘍抗原ペプチドとの複合体を特異的に認識するCTLは、後述する養子免疫療法において有効に用いられる。
【0058】
養子免疫療法において用いられるCTLは、患者の末梢血リンパ球を単離し、これを本発明のペプチド(例えば配列番号:2〜5のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチド)、あるいは本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば配列番号:2〜5のいずれかに記載の配列を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド)やそれを含有する発現ベクターでイン・ビトロで刺激する等により作製される(Journal of Experimental Medicine 1999, 190: 1669)。
【0059】
以上のようにして作製された本発明のCTLは、癌ワクチンの有効成分として、養子免疫療法において有効に用いられる。
【0060】
(VI)癌ワクチンとしての医薬組成物
以上に記載した本発明のペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の発現ベクター、本発明の抗原提示細胞、および本発明のCTLは、それぞれの物質に応じた適切な形態とすることにより、CTLの誘導剤、すなわち癌ワクチンの有効成分とすることができる。以下、具体的に説明する。
【0061】
(6-1) 本発明のペプチドを有効成分とする癌ワクチン
本発明のペプチドは、CTLの誘導能を有するものであり、誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗腫瘍作用を発揮することができる。従って本発明のペプチドは、腫瘍の治療または予防のための癌ワクチンの有効成分とすることができる。すなわち本発明は、本発明のペプチドを有効成分として含有する癌ワクチン(癌ワクチンとしての医薬組成物)を提供する。本発明の癌ワクチンの有効成分となるペプチドとしては、配列番号:3または4に記載のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有するペプチドが好ましく、配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有するペプチドがより好ましい。
【0062】
本発明の癌ワクチンをHLA-A24陽性かつSYT-SSX陽性の患者に投与すると、抗原提示細胞のHLA-A24抗原にペプチド(例えば配列番号:2〜5のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチド)が提示され、提示されたHLA-A24抗原複合体特異的CTLが増殖して腫瘍細胞を破壊することができ、従って、腫瘍の治療または予防が可能となる。本発明の癌ワクチンは、SYT-SSX遺伝子の発現レベルの上昇を伴う腫瘍、例えば滑膜肉腫等の予防または治療のために使用することができる。
よって、本発明は別の態様として、本発明の癌ワクチンの有効量をHLA-A24陽性かつSYT-SSX陽性の患者に投与することにより、腫瘍を治療または予防するための方法を提供する。
【0063】
本発明のペプチドを有効成分とする癌ワクチンは、単一のCTLエピトープ(例えば配列番号:2〜5のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチド)を有効成分とするものであっても、また他のペプチド(CTLエピトープやヘルパーエピトープ)と連結したエピトープペプチドを有効成分とするものであっても良い。すなわち近年、複数のCTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結したエピトープペプチドが、イン・ビボで効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1998, 161: 3186-3194には、腫瘍抗原タンパク質PSA由来のHLA-A2, -A3, -A11, B53拘束性CTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結した約30merのエピトープペプチドが、イン・ビボでそれぞれのCTLエピトープに特異的なCTLを誘導したことが記載されている。またCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドにより、効率的にCTLが誘導されることも示されている。このようなエピトープペプチドの形態で投与した場合、抗原提示細胞内に取り込まれ、その後、細胞内分解を受けて生じた個々の抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示され、この複合体に特異的なCTLが体内で効率的に増殖し、腫瘍細胞を破壊する。このようにして腫瘍の治療または予防が達成される。
【0064】
また本発明のペプチドを有効成分とする癌ワクチンは、細胞性免疫が効果的に成立するように、医薬として許容されるキャリアー、例えば適当なアジュバントとともに投与したり、粒子状の剤型にして投与することができる。アジュバントとしては、文献(Clin. Microbiol.Rev., 7:277-289, 1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分、サイトカイン、植物由来成分、海洋生物由来成分、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルジョン製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μm のビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤なども考えられる。
【0065】
投与方法としては、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与などが挙げられる。製剤中の本発明のペプチドの投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは 0.001mg〜1000mg、より好ましくは0.1mg 〜10mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
【0066】
(6-2) 本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド、または発現ベクターを有効成分とするDNAワクチン
前記本発明のペプチドのみならず、当該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびそれを含有する発現ベクターもまた、腫瘍の治療または予防のためのDNAワクチンの有効成分とすることができる。すなわち本発明は、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド、または当該ポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを有効成分として含有する癌ワクチン(癌ワクチンとしての医薬組成物)を提供する。本発明の癌ワクチンの有効成分となるポリヌクレオチドとしては、配列番号:3または4に記載のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドが好ましく、配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドがより好ましい。
【0067】
また、本発明は別の態様として、本発明のDNAワクチンの有効量をHLA-A24陽性かつSYT-SSX陽性の患者に投与することにより、腫瘍を治療または予防するための方法を提供する。
【0068】
近年、複数のCTLエピトープ(抗原ペプチド)を連結したエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいはCTLエピトープとヘルパーエピトープとを連結させたエピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドが、in vivoで効率的にCTL誘導活性を有することが示されている。例えばJournal of Immunology 1999, 162: 3915-3925には、HBV由来HLA-A2拘束性抗原ペプチド6種類、HLA-A11拘束性抗原ペプチド3種類、およびヘルパーエピトープを連結したエピトープペプチドをコードするDNA(ミニジーン)が、イン・ビボでそれぞれのエピトープに対するCTLを効果的に誘導したことが記載されている。
【0069】
従って、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを1種または2種以上連結させることにより、また場合によっては他のペプチドをコードするポリヌクレオチドも連結させることにより作製されたポリヌクレオチドを、適当な発現ベクターに組み込むことにより、癌ワクチンの有効成分とすることができる。
【0070】
本発明のポリヌクレオチドを癌ワクチン(DNAワクチン)の有効成分として適用する際には、以下の方法が使用され得る。
すなわち、本発明のポリヌクレオチドを細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターによる方法およびその他の方法(日経サイエンス, 1994年4月号, 20-45頁、月刊薬事, 36(1), 23-48(1994)、実験医学増刊, 12(15), (1994)、およびこれらの引用文献等)のいずれの方法も適用することができる。
【0071】
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルスまたはRNAウイルスに本発明のDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
【0072】
本発明のポリヌクレオチドを実際に医薬として作用させるには、当該ポリヌクレオチドを直接体内に導入する in vivo法、およびヒトからある種の細胞を採集し体外でDNAを該細胞に導入しその細胞を体内に戻す ex vivo法がある(日経サイエンス, 1994年4月号, 20-45頁、月刊薬事, 36(1), 23-48(1994)、実験医学増刊, 12(15), (1994)、およびこれらの引用文献等)。in vivo法がより好ましい。
【0073】
in vivo法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内等に投与することができる。in vivo法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には有効成分である本発明のポリヌクレオチドを含有する注射剤等とされ、必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。また、本発明のポリヌクレオチドを含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)-リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
製剤中の本発明のポリヌクレオチドの含量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常、0.0001mg〜100mg、好ましくは0.001mg〜10mgの本発明のポリヌクレオチドを、数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
【0074】
以上のような本発明のポリヌクレオチドの腫瘍患者への投与により、抗原提示細胞内で当該ポリヌクレオチドに対応するポリペプチドが高発現する。その後、細胞内分解を受けて生じた個々の腫瘍抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示され、この複合体特異的なCTLが体内で効率的に増殖し、腫瘍細胞を破壊する。以上のようにして、腫瘍の治療または予防が達成される。本発明のポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを有効成分とする癌ワクチンは、SYT-SSX遺伝子の発現レベルの上昇を伴う腫瘍、例えば滑膜肉腫等の予防または治療のために使用することができる。
【0075】
(6-3) 本発明の抗原提示細胞を有効成分とする癌ワクチン
本発明は、本発明の抗原提示細胞を有効成分とする癌ワクチンを提供する。
近年、腫瘍患者の末梢血からリンパ球を分離し、その中から樹状細胞を誘導し、イン・ビトロでペプチド等をパルスして調製した抗原提示細胞を皮下投与などにより患者に戻す細胞療法(DC療法)が報告されている (Cancer Immunol.Immunother.,46:82,1998、J.Immunol.,158:p1796,1997、Cancer Res.,59:p1184,1999、Cancer Res.,56:p5672,1996、J.Immunol.,161: p5607,1998、J.Exp.Med., 184: p465,1996)。従って前記本発明の抗原提示細胞を、細胞療法における癌ワクチンの有効成分として使用することができる。
【0076】
本発明の抗原提示細胞を有効成分とする癌ワクチンは、抗原提示細胞を安定に維持するために、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培地等を含むことが好ましい。投与方法としては、静脈内投与、皮下投与、皮内投与が挙げられる。また投与量は、前記文献記載の投与量が例示される。
前記癌ワクチンを患者の体内に戻すことにより、HLA-A24陽性かつSYT-SSX陽性の患者の体内で効率良く特異的なCTLが誘導され、腫瘍を治療または予防することができる。本発明の抗原提示細胞を有効成分とする癌ワクチンは、SYT-SSX遺伝子の発現レベルの上昇を伴う腫瘍、例えば滑膜肉腫等の予防または治療のために使用することができる。
【0077】
(6-4) 本発明のCTLを有効成分とする癌ワクチン
本発明は、本発明のCTLを有効成分とする癌ワクチン(癌ワクチンとしての医薬組成物)を提供する。本発明のCTLは、以下の養子免疫療法において有効に用いられる。
【0078】
メラノーマにおいて、患者本人の腫瘍内浸潤T細胞を体外で大量に培養し、これを患者に戻す養子免疫療法に治療効果が認められている(J. Natl. Cancer. Inst., 86: 1159, 1994)。またマウスのメラノーマでは、脾細胞をイン・ビトロで腫瘍抗原ペプチドTRP−2で刺激し、腫瘍抗原ペプチドに特異的なCTLを増殖させ、該CTLをメラノーマ移植マウスに投与することにより、転移抑制が認められている(J.Exp.Med.,185:453,1997 )。これは、抗原提示細胞のHLA抗原と腫瘍抗原ペプチドとの複合体を特異的に認識するCTLをイン・ビトロで増殖させた結果に基づくものである。従って、本発明のペプチドあるいは本発明のポリヌクレオチドや発現ベクターを用いて、イン・ビトロで患者末梢血リンパ球を刺激して腫瘍特異的CTLを増やした後、このCTLを患者に戻す治療法は有用であると考えられる。従って前記本発明のCTLを、養子免疫療法における癌ワクチンの有効成分として使用することができる。
【0079】
本発明のCTLを有効成分とする癌ワクチンは、CTLを安定に維持するために、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培地等を含むことが好ましい。投与方法としては、静脈内投与、皮下投与、皮内投与が挙げられる。また投与量としては、前記文献記載の投与量が例示される。
前記癌ワクチンを患者の体内に戻すことにより、HLA-A24陽性かつSYT-SSX陽性の患者の体内でCTLによる腫瘍細胞の傷害作用が促進され、腫瘍細胞を破壊することにより、腫瘍を治療することができる。本発明のCTLを有効成分とする癌ワクチンは、SYT-SSX遺伝子の発現レベルの上昇を伴う腫瘍、例えば滑膜肉腫等の予防または治療のために使用することができる。
【0080】
(VII)本発明の診断薬
本発明は、本発明のペプチドを含有してなる腫瘍の診断薬を提供する。
近年、抗原ペプチドとHLA抗原との複合体を用いて抗原特異的CTLを検出する新しい検出方法が確立されている(Science,274:p94,1996)。SYT-SSXは、滑膜肉腫の90%以上で特異的に発現することが知られており(Nature Genet., 7:502-508, 1994、Hum. Mol. Genet. 6:1549, 1997)、さらに本発明において、配列番号:2〜5に記載のペプチドがHLA-A24抗原に対する高い結合親和性を有することが明らかとなった。よって本発明のペプチドとHLA抗原との複合体を当該検出方法に供し、腫瘍抗原特異的CTLを検出することにより、腫瘍の早期発見、再発、転移を診断することができる。また本発明のペプチド等を有効成分とする医薬の適応可能な腫瘍患者の選択や、当該医薬による治療効果の判定などにも利用できる。すなわち本発明においては、本発明のペプチドを有効成分の一部として含有する、腫瘍の診断薬を提供するものである。
【0081】
具体的には、文献(Science,274:p94,1996)に記載の方法に従って蛍光標識したHLA-A24抗原と本発明ペプチドとの複合体の4量体を作製し、これを用いて腫瘍が疑われる患者の末梢血リンパ球中の抗原ペプチド特異的CTLをフローサイトメーターにより定量することにより、前記診断を行うことができる。
【0082】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0083】
実施例1
改変ペプチドの HLA-A*2402 への結合親和性の検討
ペプチドSS393(Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Lys;配列番号:1)と、SS393のC末端のLysをLeuに置換したペプチドSS393K9L(Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Leu;配列番号:2)、Pheに置換したペプチドSS393K9F(Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Phe;配列番号:3)、Ileに置換したペプチドSS393K9I(Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile;配列番号:4)、およびTrpに置換したペプチドSS393K9W(Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Trp;配列番号:5)の4種類の改変ペプチド、およびEBウイルス由来のペプチド(Thr Tyr Gly Pro Val Phe Met Ser Leu;配列番号:6)は、アミノ酸合成機を用いてF-moc法で合成した。
【0084】
これらのペプチドのHLA-*A2402(HLA-A24の一種)への結合親和性の測定は、文献(J. Immunol. 164:2565, 2000)に記載の方法に従い実施した。MHCクラスI分子を発現していないマウスリンパ腫由来の細胞株RMA-SにHLA-*A2402とH-2KbのキメラMHCの遺伝子(国際公開第WO02/47474号パンフレット)を安定的に導入した細胞株RMA-S-A*2402細胞を26℃で18時間培養した。RMA-S-A*2402細胞をPBS溶液で洗浄後、3μL/mLのヒトβ2-ミクログロブリンと100μL/mLの各種ペプチドを含有する培養液OPTI-MEM(Invitrogen社)に懸濁して26℃で3時間、37℃で3時間培養した。この細胞をPBS溶液で洗浄後、抗HLA-A24抗体により4℃で30分間処理した。さらに細胞をPBS溶液で洗浄後、フィコエリスリン(PE)標識した抗マウスIgG抗体により4℃で30分間処理した。細胞を洗浄後、1%ホルマリンを含むPBS溶液1mLに懸濁して固定した。細胞はフローサイトメーター装置FACScan(BDバイオサイエンス社)で測定し、平均蛍光強度によりペプチドの結合親和性を求めた。上記の6種類のペプチドの結合親和性を測定した結果を図1に示した。
【0085】
文献(J. Immunol. 158:3325, 1997)でHLA-A24に結合することが報告されているEBウイルス由来のペプチドは強い結合能を示した。SS393のペプチドに比較して、C末端のLysを置換したSS393K9L、SS393K9F、SS393K9IおよびSS393K9Wの改変ペプチドは非常に高い結合能を示した。特に結合能が高かったのはSS393K9Iであった。以上のように改変によりHLA-A*2402への結合親和性が向上したことが明らかとなった。
【0086】
実施例2
改変ペプチド SS393K9I によるヒト末梢血単核球からの CTL 誘導
文献(J. Immunol. 169:1611, 2002)と同様の方法で行った。HLA-A*2402陽性の滑膜肉腫患者から比重遠心法により末梢血を分離し、AIM-V培養液(Invitrogen社)を用いて培養した。24時間後、非接着性の細胞を回収して、100U/mLのIL-2を含んだAIM-Vを用いて培養した。抗原提示細胞調製のため、接着性の細胞は、1000U/mLのIL-4と1000U/mLのGM-CSFを含むAIM-V培養液で5日間培養した後、10μMのペプチドSS393K9I(配列番号:4)を添加して1日間培養し、さらに10ng/mLのTNFと1000U/mLのIFN-αを加えて培養した。非接着性の細胞からCD8陽性T細胞を抗CD8抗体結合マグネチックビーズで分離し、上記のペプチドをパルスした抗原提示細胞とともに培養した。CD8陽性T細胞を分離した残りの非接着性細胞は、1μg/mLのPHAと100U/mLのIL-2を含むAIM-V培地で3日間培養した後、PHAを除いた培地で4日間培養し、2回目、3回目のペプチド刺激用の抗原提示用細胞としてストックした。ペプチド刺激をしたCD8陽性T細胞に対しては、1回目のペプチド刺激から7日後と14日後に、ストックの抗原提示用細胞にペプチドSS393K9Iを2時間パルスし、5000radでX線照射した細胞を添加して2回目、3回目のペプチド刺激を行った。3回目の刺激から1週間後のT細胞の細胞傷害活性を51Crリリースアッセイにより測定した。標的細胞として、HLA-A*2402遺伝子をT2細胞(ATCC株番号CRL-1992)に安定的に導入したT2-A*2402細胞、HLA-A*2402とSYT-SSXが陽性の滑膜肉腫由来細胞株のFuji細胞(Acta. Pathol. Jpn. 40:486, 1990)および HS-SY-II細胞(Lab. Invest. 67:498, 1992)、HLA-A*2402とSYT-SSXが陰性の滑膜肉腫由来細胞株 SW982(ATCC株番号HTB-93)および慢性骨髄性白血病由来細胞株K562(ATCC株番号CCL-243)を用いた。
【0087】
標的細胞は、100μCiの51Crで1時間ラベルした。T2-A*2402細胞にペプチドをパルスした標的細胞は、10μMのペプチドで一晩培養した後に51Crでラベルした。5×103個の標的細胞に対して、3倍、10倍、または30倍のエフェクター細胞(ペプチド刺激したT細胞)を添加し、4時間培養して細胞傷害活性を測定した。結果を図2に示した。ペプチドSS393K9Iで刺激したT細胞は、SS393K9IをパルスしたT2-A*2402細胞を傷害したが、ペプチドをパルスしていないT2-A*2402細胞を傷害しなかった。このことから、改変ペプチドSS393K9Iの刺激により、ペプチドSS393K9Iを認識するCTLが誘導されていることが明らかとなった。また、ペプチドSS393K9Iで刺激したT細胞は、改変前の天然型ペプチドSS393をパルスしたT2-A*2402細胞、HLA-A*2402とSYT-SSXが陽性の滑膜肉腫由来細胞株のFuji細胞およびHS-SY-II細胞を傷害したことから、改変ペプチドSS393K9Iが誘導したCTLは、ペプチドSS393K9IのみならずペプチドSS393も認識することが示された。
【0088】
実施例3
改変ペプチド SS393K9F によるヒト末梢血単核球からの CTL 誘導
実施例2と同様の方法により、ペプチドSS393K9F(配列番号:3)でヒト末梢血単核球からのCTL誘導を試みた。結果を図3に示した。ペプチドSS393K9Fで刺激したT細胞は、ペプチドをパルスしていないT2-A*2402細胞よりもSS393K9FをパルスしたT2-A*2402細胞を強く傷害した。また、ペプチドSS393K9Iで刺激したT細胞は、HLA-A*2402とSYT-SSXが陽性の滑膜肉腫由来細胞株のFuji細胞およびHS-SY-II細胞を傷害したことから、ペプチドSS393K9Iのみならず癌細胞株が提示するペプチドSS393も認識することが示された。
【0089】
【発明の効果】
本発明により、SYT−SSX由来のペプチドSS393の第9位のアミノ酸残基を特定のアミノ酸残基に置換した新規な改変ペプチド、当該改変ペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはこれらペプチドやポリヌクレオチドをin vivoまたはin vitroで利用した癌ワクチンなどが提供される。本発明の癌ワクチンは、滑膜肉腫等に罹患した多くの腫瘍患者を処置することができるといった利点を有する。
【0090】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、SS393のC末端のLysをLeuに置換したペプチドSS393K9L(図中K9L)、Pheに置換したペプチドSS393K9F(図中K9F)、Ileに置換したペプチドSS393K9I(図中K9I)、およびTrpに置換したペプチドSS393K9W(図中K9W)の4種類の改変ペプチドと、改変前のペプチドSS393(図中SS393)および陽性コントロールであるEBウイルス由来ペプチド(図中EBV)の、HLA-A*2402への結合親和性を示したグラフである。図中、縦軸は平均蛍光強度(結合親和性)を示す。
【図2】図2は、改変ペプチドSS393K9Iによるヒト末梢血単核球からのCTL誘導活性を、51Crリリースアッセイにより測定した結果を示したグラフである。図中、縦軸はCTLによる細胞傷害活性(% specific lysis)を示す。また図中、T2-A24ペプチド(-)はペプチドをパルスしていないT2-A*2402細胞を標的細胞として用いた結果を、T2-A24SS393はペプチドSS393をパルスしたT2-A*2402細胞を標的細胞として用いた結果を、T2-A24K9IはペプチドSS393K9IをパルスしたT2-A*2402細胞を標的細胞として用いた結果を示す。また図中、FujiおよびHS-SYIIは、HLA-A*2402とSYT-SSXが陽性の滑膜肉腫由来細胞株を示す。また図中、SW982およびK562は、それぞれHLA-A*2402とSYT-SSXが陰性の滑膜肉腫由来細胞株および慢性骨髄性白血病由来細胞株を示す。灰色棒はE/T比が30:1の結果を、黒棒は10:1の結果を、白棒は3:1の結果を示す。
【図3】図3は、改変ペプチドSS393K9Fによるヒト末梢血単核球からのCTL誘導活性を、51Crリリースアッセイにより測定した結果を示したグラフである。図中縦軸、T2-A24ペプチド(-)、Fuji、HS-SYIIおよびSW982は、図2におけると同義である。また図中、T2-A24K9FはペプチドSS393K9FをパルスしたT2-A*2402細胞を標的細胞として用いた結果を示す。灰色棒はE/T比が30:1の結果を、黒棒は10:1の結果を、白棒は3:1の結果を示す。
Claims (11)
- 以下のアミノ酸配列:
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Leu(配列番号:2)、
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Phe(配列番号:3)、
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Ile(配列番号:4)、および
Gly Tyr Asp Gln Ile Met Pro Lys Trp(配列番号:5)
のなかから選ばれるいずれかの配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド。 - 配列番号:2、3、4および5のなかから選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項1記載のペプチド。
- 請求項1または2記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
- 請求項3記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター。
- 請求項4記載の発現ベクターを含有する細胞。
- 請求項5記載の細胞を、ペプチドの発現可能な条件下で培養することを特徴とする、請求項1または2記載のペプチドの製造方法。
- 請求項1記載のペプチドを含む腫瘍抗原ペプチドとHLA−A24抗原との複合体が提示されている抗原提示細胞。
- 配列番号:2、3、4および5のなかから選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドとHLA−A24抗原との複合体が提示されている、請求項7記載の抗原提示細胞。
- 請求項1または2記載のペプチド、請求項3記載のポリヌクレオチド、請求項4記載の発現ベクター、請求項5記載の細胞、あるいは請求項7または8記載の抗原提示細胞と、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物。
- 癌ワクチンとして使用される、請求項9記載の医薬組成物。
- 請求項1または2記載のペプチドを含有してなる腫瘍の診断薬。
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