JPWO2003107073A1 - 光学ローパスフィルタ - Google Patents
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Abstract
光学ローパスフィルタ1は、水晶インゴット2を切断して形成される複屈折ウエハ31、32、33が重ね合わされた構成からなっている。複屈折ウエハ31は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して44.8度で切断して形成され、入射した光を水平方向に分離するウエハである。複屈折ウエハ32は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成され、入射した光を水平方向に対して+45度方向に分離するウエハである。複屈折ウエハ33は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成され、入射した光を水平方向に対して−45度方向に分離するウエハである。
Description
技術分野
本発明は、複屈折ウエハを用いた光学ローパスフィルタに関する。
背景技術
光学ローパスフィルタは、撮像素子が受光した時に発生する擬似信号を抑えるために光の映像周波数の高周波成分をカットするものであり、その特性は光を分離させる分離パターンによって決定される。
例えば、従来の光学ローパスフィルタに、日本特開2000−56268号公報に示された光学ローパスフィルタがある。
この光学ローパスフィルタは、光学軸が互いに異なる3枚の複屈折ウエハが重ね合わされてなる。この重ね合わされた3枚の複屈折ウエハが分割されて多数個のローパスフィルタが形成される。
具体的に、3枚の複屈折ウエハはいずれも、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度で切断して形成される。これら3枚の複屈折ウエハは、入射した光を水平方向に分離する水平方向複屈折ウエハと、入射した光を水平方向複屈折ウエハの分離方向に対して+45度方向に分離する+45度方向複屈折ウエハと、入射した光を水平方向複屈折ウエハの分離方向に対して−45度方向に分離する−45度方向複屈折ウエハからなり、これら水平方向複屈折板、+45度方向複屈折板、−45度方向複屈折板が順に重ね合わされて光学ローパスフィルタが形成される。
この光学ローパスフィルタに入射された光は、水平方向複屈折板により常光線と異常光線とに分離され、分離された常光線と異常光線とは、夫々±45度方向複屈折板により4点分離される。
このように光学ローパスフィルタを用いて入射光を4点分離することにより、CCD等の撮像素子に対する入力光を分離させて映像をぼかし、モアレ像を誘発する擬似信号を減衰させる。
ところで、現在、撮像素子のセルピッチは小さくなる傾向にある。すなわち、近年製造されるCCDにおいては、従来と同一サイズの設計でそのセルピッチを小さくして画素数を増加させる(例えば、200万画素から300万画素など)傾向がある。そのため、CCDのセルピッチの短縮に伴って光学ローパスフィルタにおける光の分離幅を短くする必要がある。
しかし、光学ローパスフィルタの分離幅を短くするためには、光学ローパスフィルタを構成する各複屈折板の厚さを薄くする必要がある。さらに、±45度方向複屈折ウエハはその厚みを水平方向複屈折ウエハの1/√2とする必要がある。そのため、±45度方向複屈折ウエハでは、より薄い厚みが求められており、研磨加工することが難しく、コストアップの要因となっている。
また、複屈折ウエハの組み合わせにおいて、実際には水晶インゴットがそれほど大きく成長しないことから、大型の±45度方向複屈折ウエハは得難い。また、一般的に、±45度方向複屈折ウエハは、光学軸に対して45度方向に延びる辺をもつ矩形状で1つの角が大きく欠けたものになってしまう。この場合、複屈折ウエハから多数個の矩形状の光学ローパスフィルタに分割する多数個取り工程において材料の損失が発生して効率が悪い。
そこで、上記課題を解決するために本発明は、複屈折ウエハの研磨加工を容易にする光学ローパスフィルタを提供することを目的とし、また、本発明は、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合を無くすまたは小さくして一回の生産で多数個生産し、生産コストを低減する光学ローパスフィルタを提供することを目的とする。
発明の開示
上記目的を達成するため本発明に係る光学ローパスフィルタは、水晶インゴットをその光学軸に対して角度をもって切断して形成された複屈折ウエハからなり、入射した光を分離する光学ローパスフィルタにおいて、前記複屈折ウエハは、前記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されたことを特徴とする。
本発明によれば、複屈折ウエハは、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、従来の切断角度が44.8度のものと同じ分離幅を得るために複屈折ウエハの厚みを厚くして、複屈折ウエハを研磨する際、複屈折ウエハが破損する等材料の損失を気にせずに容易に加工作業を行うことが可能となり、生産コストを低減することが可能となる。また、複屈折ウエハの切断角度を水晶インゴットの光学軸に対して44.8度より大きい角度にすることで、水晶インゴットがそれほど大きく成長していなくても、複屈折ウエハの面積を大きくすることが可能となり、その結果、複屈折ウエハの角が1つ欠けた場合であっても、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合が小さくなるので、多数個の光学ローパスフィルタに分割する際に形成される欠陥のある光学ローパスフィルタの数を抑えて生産コストを低減することが可能となる。
また、本発明によれば、複屈折ウエハは、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、複屈折ウエハの厚さを厚くすることが可能となり、厚さを予め設定する厚みに容易に調整することが可能となる。例えば、従来では、デジタルカメラ(撮像装置)に用いているCCDの画素数を200万画素から300万画素に増加させる場合、光学ローパスフィルタの厚さを変更させて、この変更によりデジタルカメラにおける光路長を変更させるなどデジタルカメラ自体の設計変更が必要であったが、本発明にかかる光学ローパスフィルタによれば、複屈折ウエハの切断角度を調整して、その厚さを従来のものと同一にすることが可能であるので、複屈折ウエハの寸法を設定するだけで、デジタルカメラにおける光路長を変更させる必要がなく、生産コストの低減を図ることが可能となる。
さらに、上記したように、光学ローパスフィルタを、CCDを備えたデジタルカメラなどの撮像装置に用いた場合、撮像装置自体の設計変更による生産コストの増加を防止するため、光学ローパスフィルタの厚さが予め設定されている。そこで、撮像装置に本発明にかかる光学ローパスフィルタを用いれば、複屈折ウエハが水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、光学ローパスフィルタの厚さを変更させずにその分離幅を短くすることが可能であり、CCDの画素数の増加に対応させることが可能となる。
具体的に、上記構成において、上記複屈折ウエハは複数枚重ね合わされるとともに分割されて多数個形成され、複数枚のうち少なくとも1枚の上記複屈折ウエハは、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されてもよい。または、上記構成において、上記複屈折ウエハは複数枚形成されるとともに、これら複数枚の複屈折ウエハを分割して夫々多数枚の複屈折板が形成され、別々の複屈折ウエハから形成された複数枚の複屈折板が重ね合わされてなり、複数枚のうち少なくとも1枚の上記複屈折ウエハは、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されてもよい。
また、上記構成において、重ね合わされた複数枚の上記複屈折ウエハには少なくとも、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度で切断して形成され、入射した光を水平方向もしくは垂直方向に分離する第1の複屈折ウエハと、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成され、入射した光を水平方向もしくは垂直方向に対して45度方向に分離する第2の複屈折ウエハとが含まれていてもよい。
この場合、水平方向もしくは垂直方向に対して45度方向に分離する第2の複屈折ウエハを厚くさせるので、通常、第1の複屈折ウエハの厚みより厚さが薄くなる第2の複屈折ウエハの厚みを厚くして、第2の複屈折ウエハを研磨する際、複屈折ウエハが破損するのを気にせずに容易に加工作業を行うことが可能となる。
上記構成において、重ね合わされた上記複屈折ウエハは1枚の第1の複屈折ウエハと2枚の第2の複屈折ウエハから構成され、上記第1の複屈折ウエハは、1つの対向する二辺が光学軸に平行である矩形状に形成されてなり、かつ、上記第2の複屈折ウエハは、5角形状であって、隣接する3つの角が略直角に形成されるとともにこの3つの角のうち中央の角に対向し光学軸に直交する辺が形成されてなってもよい。
また、上記構成において、上記水晶インゴットの光学軸に対して44.8度より大きい角度は、その光学軸に対して80度以下に設定されていることが好ましく、特に、69度に設定されていることが、光学ローパスフィルタの形成を容易にする上でより好ましい。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタ1は、第1図に示すような水晶インゴット2を切断して形成される複屈折ウエハ31、32、33が3枚重ね合わされた構成からなっている。
複屈折ウエハ31は、本発明でいう第1の複屈折ウエハであって、入射した光を水平方向に分離させるウエハである。この複屈折ウエハ31は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して44.8度で切断して形成され、第2図(a)に示すように、1つの対向する二辺4が光学軸Aに平行である矩形状に形成されている。
複屈折ウエハ32は、入射した光を水平方向に対して+45度方向に分離させるウエハである。この複屈折ウエハ32は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成され、第2図(b)に示すように、5角形状であって、隣接する3つの角5が直角に形成されるとともにこの3つの角5のうち中央の角5に対向し光学軸Aに直交する辺6が形成されている。
複屈折ウエハ33は、入射した光を水平方向に対して−45度方向に分離させるウエハである。この複屈折ウエハ33は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成され、第2図(c)に示すように、5角形状であって、隣接する3つの角5が直角に形成されるとともにこの3つの角5のうち中央の角5に対向し光学軸Aに直交する辺6が形成されている。
これら複屈折ウエハ32、33が本発明でいう第2の複屈折ウエハであり、これら複屈折ウエハ32、33を形成するための切断角度を光学軸Aに対して69度と設定しているが、この69度は以下に示す数式1から算出されている。また、この数式から算出された切断角度の特性を第3〜5図に示す。第3図は、切断角度と、d=589.3(nm)の時の係数(第4図参照)との関係を示した表であり、そのグラフを第4図に示す。また、第5図は、切断角度と、切断角度が44.8度の時との複屈折ウエハ32、33の厚み比との関係を示したグラフである。
(d:分離幅、ne=1.5534:異常光線の屈折率、no=1.5443:常光線の屈折率、θ:切断角度、t:複屈折ウエハの厚み)
この数式1から、複屈折ウエハ31、32、33の分離幅d(第7図参照)は、切断角度θと複屈折ウエハの厚みtとに関係付けられていることがわかる。本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ32、33を形成するための切断角度が光学軸Aに対して69度であるため、44.8度で切断する場合と比較してその分離幅dが短縮される。
次に、この光学ローパスフィルタ1の生産工程を、第2図を用いて以下に詳説する。
水晶インゴット2がその光学軸Aに対して44.8度で切断されて(第1図(a)参照)、第2図(a)に示す複屈折ウエハ31が形成される。次に、水晶インゴット2がその光学軸Aに対して69度で切断されて(第1図(b)参照)、第2図(b)および第2図(c)に示す複屈折ウエハ32、33が形成される。これら形成された複屈折ウエハ31、32、33は、複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33の順に重ね合わされて接合される。そして、接合された複屈折ウエハ31、32、33は、切断機器であるダイシングソーにより9個の矩形状になるよう分割ライン(第2図(d)参照)上で分割され、正常に動作可能な7個の光学ローパスフィルタ1が形成される。
形成された光学ローパスフィルタ1に入射された光は、複屈折ウエハ31から形成された水平方向複屈折板(図示省略)により常光線と異常光線とに分離され、分離された常光線と異常光線とは、夫々複屈折ウエハ32、33から形成された±45度方向複屈折板(図示省略)により4点分離される。
上記した生産工程により生産された光学ローパスフィルタ1は、例えば第6(a)図に示すようなデジタルカメラなどの撮像装置に用いられる。
この撮像装置には、第6(a)図に示すように、撮影の際取り込む光を集光するレンズ7と、レンズ7によって集光した光を複数の受光素子(図示省略)において受け、その光の情報をデジタルデータに変換するCCD8とが設けられている。そして、光学ローパスフィルタ1は、これらレンズ7とCCD8との間の光路(長さ1)中に設けられている。なお、この光学ローパスフィルタ1の光の入射面1aと射出面1bには、光の乱反射を防止するためにARコート(図示省略)が形成されている。
撮像装置では、光が外部からレンズ7に入射されて、レンズ7により集光される。そして、集光された光は、光学ローパスフィルタ1により分離されて、CCD8の各受光素子に入射される。
ところで、現在、CCD8のセルピッチは小さくなる傾向にある。すなわち、近年製造されるCCD8においては、従来と同一サイズの設計でそのセルピッチを小さくして画素数を増加させる(例えば、200万画素から300万画素など)傾向がある。そのため、CCD8のセルピッチの短縮に伴って光学ローパスフィルタにおける光の分離幅dを短くする必要があるが、上記した数式1からわかるように本発明の実施の形態にかかる複屈折ウエハ32、33を用いることで、分離幅dを短くすることができる。
また、従来の光学ローパスフィルタでは、CCD8の画素数を増加させるために、分離幅dを短くする複屈折板を用いている。そのため、光学ローパスフィルタの厚みが薄くなり、その結果、第6(a)図に示す光路長1が可変する。そのため、従来の光学ローパスフィルタでは、複屈折板にパスガラスなどを重ねあわせて光学ローパスフィルタの厚さを調整する。しかし、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタによれば、±45度方向複屈折板32a、33bの厚さが厚いため、これら±45度方向複屈折板32a、33bの厚さを予め設定した厚みに調整する。そのため、光路長1を可変させることはなく、分離幅dを短くしてCCD8の画素数の増加に対応させることができ、さらに、複屈折板以外のパスガラスなど他の媒体を用いなくてもよく生産コストの低減を図ることもできる。すなわち、例えば、CCD8の画素数を200万画素から300万画素に増加させる場合、デジタルカメラにおける光路長1を変更させるなどデジタルカメラ自体の設計変更を必要とするが、この光学ローパスフィルタ1によれば、±45度方向複屈折板32a、33bの厚さを予め設定した厚さに調整するだけでよく、生産コストの低減を図ることができる。
上記したように、この光学ローパスフィルタ1によれば、水平方向に対して±45度方向に分離する複屈折ウエハ32、33が、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成されるので、従来の切断角度が44.8度のものと同じ分離幅d(第7図参照)を得るために、通常、厚さが薄くなる複屈折ウエハ32、33の厚みを厚くして、複屈折ウエハ32、33を研磨する際、複屈折ウエハ32、33が破損する等材料の損失を気にせずに容易に加工作業を行うことができ、生産コストを低減することができる。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ32、33が、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成されるので、種水晶21から育成される水晶の厚みを薄くすることができる。例えば、本発明の実施の形態に示す複屈折ウエハ32、33を形成する水晶インゴット2の厚さを、種水晶21からみてtとする。次に、これら複屈折ウエハ32、33を、水晶インゴットをその光学軸に対して、従来通りの44、8度で切断して形成する場合、第8(b)図に示すように、水晶インゴット2’の厚さが種水晶21’からみてt’となる。この第8(b)図からも分かるように従来通りの44、8度で切断して形成する場合、水晶インゴット2’の厚さをtからt’に厚くする必要がある。そのため、本発明の実施の形態に示すような厚さtの水晶インゴット2から複屈折ウエハ32、33を形成する場合と、従来の水晶インゴット21’から複屈折ウエハ32’、33’を形成する場合と比較して、水晶インゴット2の育成時間を短縮させることができ、生産コストを低減させることができる。また、水晶インゴット2、2’は、第8図に示すように、育成されるにつれて有効長Y、Y’の長さが短くなる。そのため、本発明の実施の形態にかかる水晶インゴット2一つから69度で切断して形成される複屈折ウエハ32、33と、従来の水晶インゴット2’一つから44、8度で切断して形成される複屈折ウエハ32’、33’とを比較すると、本発明の実施の形態のほうが水晶インゴット2から形成される複屈折ウエハ32、33の枚数が多く、生産コストの点において好ましい。なお、厚さtの水晶インゴット2をその光学軸Aに対して44.8度で切断して複屈折ウエハ34を形成する場合、第8(a)図に示すように、その面積が小さくなるとともに、複屈折ウエハ34の1角が大きくかけてしまうので、複屈折ウエハ34から多くの複屈折板を形成することができず、生産効率の点において好ましくない。
また、複屈折ウエハ32、33の切断角度を水晶インゴット2の光学軸Aに対して69度にすることで、水晶インゴット2がそれほど大きく成長していなくても、複屈折ウエハ32、33の面積を大きくすることができるとともに、複屈折ウエハ32、33の角が1つ欠けた場合であっても、複屈折ウエハ32、33全体に対する欠けた部分の割合が小さくなるので、9個の光学ローパスフィルタ1に分割する際に形成される欠陥のある光学ローパスフィルタ11(第2図(d)参照)の数を2個に抑えて生産コストを低減することができる。
また、複屈折ウエハ32、33は、水晶インゴット2の光学軸Aに対して69度で切断して形成されているが、第3〜5図からわかるように、切断角度が69度であれば、切断角度が44.8度の時と比べて複屈折ウエハの厚みtを約1.501倍厚くすることができる。また、69度以外であっても、44.8度を超え、第5図に示すように急激に厚みが変化する臨界値である80度以下であればその切断角度を任意に設定してもよく、本発明の実施の形態と同様に切断角度が44.8度の時と比べて複屈折ウエハの厚みtが厚くなり本発明の実施の形態の効果が得られる。
なお、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタ1は、矩形状に形成されているが、これに限定されるものではなく、要求される形状に合わせて任意の形状に形成されてもよい。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ31に入射した光を水平方向に分離するウエハを用いているが、入射した光を垂直方向に分離するウエハを用いてもよい。この場合、複屈折ウエハ32は、入射した光を垂直方向に対して+45度方向に分離するウエハを用い、複屈折ウエハ33は、入射した光を垂直方向に対して−45度方向に分離するウエハを用いる。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33の順に重ね合わせて形成されているが、これに限定されるものではなく、その順は例えば、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33、複屈折ウエハ31の順であってもよく、複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ33、複屈折ウエハ32の順であってもよい。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハを3枚用いているが、その枚数は限定されるものではなく、例えば5枚等用途に合わせてその枚数を変更し、光の分離点の数を変更してもよい。また、複屈折ウエハ32、33は、±45度方向に光を分離させるが、これに限定されるものではなく、例えば±30度方向に光を分離させる等用途に合わせてその角度を変更してもよい。このように、任意の方向へ光を分離する複屈折ウエハを1枚から複数枚の任意の枚数を用いることで、光の分離点を2点から複数点の任意の点に変更することができ、その分離パターンも、例えば第9(a)〜(d)図に示すような様々なパターンを形成することができる。
また、本発明の実施の形態にかかる複屈折ウエハ32、33は、5角形状であるが、多角形であればその形状は任意の形状でよい。
また、複屈折ウエハを形成しやすくするために全ての複屈折ウエハが、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成されていてもよい。
また、本発明の実施の形態では、重ね合わせてなる複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33から9個の光学ローパスフィルタ1を形成したが、要求される寸法に合わせて光学ローパスフィルタの個数を任意に設定してもよい。
また、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタ1の生産工程は、以下に詳説する生産工程であってもよい。この生産工程から生産される光学ローパスフィルタ1は、上述した生産工程から生産される光学ローパスフィルタ1と同様の作用効果がある。
水晶インゴット2がその光学軸Aに対して44.8度で切断されて(第1図(a)参照)、第2図(a)に示す複屈折ウエハ31が形成される。次に、水晶インゴット2がその光学軸Aに対して69度で切断されて(第1図(b)参照)、第2図(b)および第2図(c)に示す複屈折ウエハ32、33が形成される。これら形成された複屈折ウエハ31、32、33は、ダイシングソーにより夫々分割ライン上で分割されて複屈折ウエハ31、32、33から夫々9枚の複屈折板(図示省略)が形成される。その後に、別々の複屈折ウエハ31、32、33から形成された夫々1枚ずつの複屈折板がその順に重ね合わさせて接合され、1個の光学ローパスフィルタ1が形成される。同様にして、残りの複屈折ウエハ31、32、33から形成された複屈折板から正常に動作可能な光学ローパスフィルタ1が形成される。
また、本発明の実施の形態では、光学ローパスフィルタ1をデジタルカメラなどの撮像装置に用いているが、その配置は第6(a)図に示す配置に限定されるものではなく、例えば、第6(b)図に示すような配置であってもよい。
この第6(b)図に示す光学ローパスフィルタ1では、−45度方向複屈折板33aがCCD8の光の入射面に接して設けられ、水平方向複屈折板31aと+45度方向複屈折板32aとがCCD8とレンズ7との光路(長さ1)中の中間あたりの位置に設けられている。なお、−45度方向複屈折板33aの入射面33aと、水平方向複屈折板31aの入射面31bと+45度方向複屈折板32aの射出面32cとにはARコート(図示省略)が形成されている。
このように、第6(b)図に示すように、光学ローパスフィルタ1の構成である複数の複屈折板を間を隔てて構成することにより、分離幅dを短くしてもよい。
なお、この図6(b)に示す光学ローパスフィルタ1では、−45度方向複屈折板33aがCCD8の光の入射面に接して設けられ、水平方向複屈折板31aと+45度方向複屈折板32aとがCCD8とレンズ7との光路中の中間あたりの位置に設けられているが、これに限定されるものではなく、光路中であれば、用途に合わせて、任意の方向へ光を分離する複屈折板を任意の位置に、任意の枚数で設けてもよい。
産業上の利用可能性
以上、説明したように、本発明にかかる光学ローパスフィルタによれば、複屈折ウエハの研磨加工を容易にし、かつ、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合を無くすまたは小さくして一回の生産で多数個生産し、生産コストを低減することができる。
すなわち、本発明によれば、複屈折ウエハが、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、従来の切断角度が44.8度のものと同じ分離幅を得るために複屈折ウエハの厚みを厚くして、複屈折ウエハを研磨する際、複屈折ウエハが破損する等材料の損失を気にせずに容易に加工作業を行うことができ、生産コストを低減することができる。また、複屈折ウエハの切断角度を水晶インゴットの光学軸に対して44.8度より大きい角度にすることで、水晶インゴットがそれほど大きく成長していなくても、複屈折ウエハの面積を大きくすることができ、その結果、複屈折ウエハの角が1つ欠けた場合であっても、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合が小さくなるので、多数個の光学ローパスフィルタに分割する際に形成される欠陥のある光学ローパスフィルタの数を抑えて生産コストを低減することができる。
また、本発明によれば、複屈折ウエハが、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、複屈折ウエハの厚さを厚くすることができ、厚さを予め設定する厚みに容易に調整することができる。例えば、従来では、デジタルカメラ(撮像装置)に用いているCCDの画素数を200万画素から300万画素に増加させる場合、光学ローパスフィルタの厚さを変更させて、この変更によりデジタルカメラにおける光路長を変更させるなどデジタルカメラ自体の設計変更が必要であったが、本発明にかかる光学ローパスフィルタによれば、複屈折ウエハの切断角度を調整して、その厚さを従来のものと同一にすることができるので、複屈折ウエハの寸法を設定するだけで、デジタルカメラにおける光路長を変更させる必要がなく、生産コストの低減を図ることができる。
さらに、上記したように、光学ローパスフィルタを、CCDを備えたデジタルカメラなどの撮像装置に用いた場合、撮像装置自体の設計変更による生産コストの増加を防止するため、光学ローパスフィルタの厚さが予め設定されている。そこで、撮像装置に本発明にかかる光学ローパスフィルタを用いれば、複屈折ウエハが水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、光学ローパスフィルタの厚さを変更させずにその分離幅を短くすることができ、CCDの画素数の増加に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1(a)図は、本発明の実施の形態にかかる、複屈折ウエハを形成するための切断角度が光学軸に対して44.8度である水晶インゴットの概略図であり、(b)図は、複屈折ウエハを形成するための切断角度が光学軸に対して69度である水晶インゴットの概略図である。
第2(a)図は、本発明の実施の形態にかかる、入射した光を水平方向に分離する複屈折ウエハの平面図であり、(b)図は、本発明の実施の形態にかかる、入射した光を水平方向に対して+45度方向に分離する複屈折ウエハの平面図であり、(c)図は、本発明の実施の形態にかかる、入射した光を水平方向に対して−45度方向に分離する複屈折ウエハであり、(d)図は、本発明の実施の形態にかかる、3枚の複屈折ウエハを重ね合わせた平面図である。
第3図は、本発明の実施の形態にかかる、切断角度と、d=589.3(nm)の時の係数(第4図参照)との関係を示した表である。
第4図は、本発明の実施の形態にかかる、切断角度と、d=589.3(nm)の時の係数との関係を示したグラフである。
第5図は、本発明の実施の形態にかかる、切断角度と、切断角度が44.8度の時との複屈折ウエハ32、33の厚み比との関係を示したグラフである。
第6(a)図は、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタを設けた撮像装置の光路における構成部材の配置図であり、(b)図は、他の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタを設けた撮像装置の光路における構成部材の配置図である。
第7図は、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタを通過した光の分離パターンを示した図である。
第8(a)、(b)図は、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタと従来の光学ローパスフィルタとを比較するために、それぞれが形成される夫々の水晶インゴットの厚さ及び有効長を示した図である。
第9図は、第7図に示す分離パターンとは異なる本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタを通過した光の他の分離パターンを示した図である。
本発明は、複屈折ウエハを用いた光学ローパスフィルタに関する。
背景技術
光学ローパスフィルタは、撮像素子が受光した時に発生する擬似信号を抑えるために光の映像周波数の高周波成分をカットするものであり、その特性は光を分離させる分離パターンによって決定される。
例えば、従来の光学ローパスフィルタに、日本特開2000−56268号公報に示された光学ローパスフィルタがある。
この光学ローパスフィルタは、光学軸が互いに異なる3枚の複屈折ウエハが重ね合わされてなる。この重ね合わされた3枚の複屈折ウエハが分割されて多数個のローパスフィルタが形成される。
具体的に、3枚の複屈折ウエハはいずれも、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度で切断して形成される。これら3枚の複屈折ウエハは、入射した光を水平方向に分離する水平方向複屈折ウエハと、入射した光を水平方向複屈折ウエハの分離方向に対して+45度方向に分離する+45度方向複屈折ウエハと、入射した光を水平方向複屈折ウエハの分離方向に対して−45度方向に分離する−45度方向複屈折ウエハからなり、これら水平方向複屈折板、+45度方向複屈折板、−45度方向複屈折板が順に重ね合わされて光学ローパスフィルタが形成される。
この光学ローパスフィルタに入射された光は、水平方向複屈折板により常光線と異常光線とに分離され、分離された常光線と異常光線とは、夫々±45度方向複屈折板により4点分離される。
このように光学ローパスフィルタを用いて入射光を4点分離することにより、CCD等の撮像素子に対する入力光を分離させて映像をぼかし、モアレ像を誘発する擬似信号を減衰させる。
ところで、現在、撮像素子のセルピッチは小さくなる傾向にある。すなわち、近年製造されるCCDにおいては、従来と同一サイズの設計でそのセルピッチを小さくして画素数を増加させる(例えば、200万画素から300万画素など)傾向がある。そのため、CCDのセルピッチの短縮に伴って光学ローパスフィルタにおける光の分離幅を短くする必要がある。
しかし、光学ローパスフィルタの分離幅を短くするためには、光学ローパスフィルタを構成する各複屈折板の厚さを薄くする必要がある。さらに、±45度方向複屈折ウエハはその厚みを水平方向複屈折ウエハの1/√2とする必要がある。そのため、±45度方向複屈折ウエハでは、より薄い厚みが求められており、研磨加工することが難しく、コストアップの要因となっている。
また、複屈折ウエハの組み合わせにおいて、実際には水晶インゴットがそれほど大きく成長しないことから、大型の±45度方向複屈折ウエハは得難い。また、一般的に、±45度方向複屈折ウエハは、光学軸に対して45度方向に延びる辺をもつ矩形状で1つの角が大きく欠けたものになってしまう。この場合、複屈折ウエハから多数個の矩形状の光学ローパスフィルタに分割する多数個取り工程において材料の損失が発生して効率が悪い。
そこで、上記課題を解決するために本発明は、複屈折ウエハの研磨加工を容易にする光学ローパスフィルタを提供することを目的とし、また、本発明は、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合を無くすまたは小さくして一回の生産で多数個生産し、生産コストを低減する光学ローパスフィルタを提供することを目的とする。
発明の開示
上記目的を達成するため本発明に係る光学ローパスフィルタは、水晶インゴットをその光学軸に対して角度をもって切断して形成された複屈折ウエハからなり、入射した光を分離する光学ローパスフィルタにおいて、前記複屈折ウエハは、前記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されたことを特徴とする。
本発明によれば、複屈折ウエハは、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、従来の切断角度が44.8度のものと同じ分離幅を得るために複屈折ウエハの厚みを厚くして、複屈折ウエハを研磨する際、複屈折ウエハが破損する等材料の損失を気にせずに容易に加工作業を行うことが可能となり、生産コストを低減することが可能となる。また、複屈折ウエハの切断角度を水晶インゴットの光学軸に対して44.8度より大きい角度にすることで、水晶インゴットがそれほど大きく成長していなくても、複屈折ウエハの面積を大きくすることが可能となり、その結果、複屈折ウエハの角が1つ欠けた場合であっても、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合が小さくなるので、多数個の光学ローパスフィルタに分割する際に形成される欠陥のある光学ローパスフィルタの数を抑えて生産コストを低減することが可能となる。
また、本発明によれば、複屈折ウエハは、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、複屈折ウエハの厚さを厚くすることが可能となり、厚さを予め設定する厚みに容易に調整することが可能となる。例えば、従来では、デジタルカメラ(撮像装置)に用いているCCDの画素数を200万画素から300万画素に増加させる場合、光学ローパスフィルタの厚さを変更させて、この変更によりデジタルカメラにおける光路長を変更させるなどデジタルカメラ自体の設計変更が必要であったが、本発明にかかる光学ローパスフィルタによれば、複屈折ウエハの切断角度を調整して、その厚さを従来のものと同一にすることが可能であるので、複屈折ウエハの寸法を設定するだけで、デジタルカメラにおける光路長を変更させる必要がなく、生産コストの低減を図ることが可能となる。
さらに、上記したように、光学ローパスフィルタを、CCDを備えたデジタルカメラなどの撮像装置に用いた場合、撮像装置自体の設計変更による生産コストの増加を防止するため、光学ローパスフィルタの厚さが予め設定されている。そこで、撮像装置に本発明にかかる光学ローパスフィルタを用いれば、複屈折ウエハが水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、光学ローパスフィルタの厚さを変更させずにその分離幅を短くすることが可能であり、CCDの画素数の増加に対応させることが可能となる。
具体的に、上記構成において、上記複屈折ウエハは複数枚重ね合わされるとともに分割されて多数個形成され、複数枚のうち少なくとも1枚の上記複屈折ウエハは、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されてもよい。または、上記構成において、上記複屈折ウエハは複数枚形成されるとともに、これら複数枚の複屈折ウエハを分割して夫々多数枚の複屈折板が形成され、別々の複屈折ウエハから形成された複数枚の複屈折板が重ね合わされてなり、複数枚のうち少なくとも1枚の上記複屈折ウエハは、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されてもよい。
また、上記構成において、重ね合わされた複数枚の上記複屈折ウエハには少なくとも、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度で切断して形成され、入射した光を水平方向もしくは垂直方向に分離する第1の複屈折ウエハと、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成され、入射した光を水平方向もしくは垂直方向に対して45度方向に分離する第2の複屈折ウエハとが含まれていてもよい。
この場合、水平方向もしくは垂直方向に対して45度方向に分離する第2の複屈折ウエハを厚くさせるので、通常、第1の複屈折ウエハの厚みより厚さが薄くなる第2の複屈折ウエハの厚みを厚くして、第2の複屈折ウエハを研磨する際、複屈折ウエハが破損するのを気にせずに容易に加工作業を行うことが可能となる。
上記構成において、重ね合わされた上記複屈折ウエハは1枚の第1の複屈折ウエハと2枚の第2の複屈折ウエハから構成され、上記第1の複屈折ウエハは、1つの対向する二辺が光学軸に平行である矩形状に形成されてなり、かつ、上記第2の複屈折ウエハは、5角形状であって、隣接する3つの角が略直角に形成されるとともにこの3つの角のうち中央の角に対向し光学軸に直交する辺が形成されてなってもよい。
また、上記構成において、上記水晶インゴットの光学軸に対して44.8度より大きい角度は、その光学軸に対して80度以下に設定されていることが好ましく、特に、69度に設定されていることが、光学ローパスフィルタの形成を容易にする上でより好ましい。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタ1は、第1図に示すような水晶インゴット2を切断して形成される複屈折ウエハ31、32、33が3枚重ね合わされた構成からなっている。
複屈折ウエハ31は、本発明でいう第1の複屈折ウエハであって、入射した光を水平方向に分離させるウエハである。この複屈折ウエハ31は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して44.8度で切断して形成され、第2図(a)に示すように、1つの対向する二辺4が光学軸Aに平行である矩形状に形成されている。
複屈折ウエハ32は、入射した光を水平方向に対して+45度方向に分離させるウエハである。この複屈折ウエハ32は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成され、第2図(b)に示すように、5角形状であって、隣接する3つの角5が直角に形成されるとともにこの3つの角5のうち中央の角5に対向し光学軸Aに直交する辺6が形成されている。
複屈折ウエハ33は、入射した光を水平方向に対して−45度方向に分離させるウエハである。この複屈折ウエハ33は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成され、第2図(c)に示すように、5角形状であって、隣接する3つの角5が直角に形成されるとともにこの3つの角5のうち中央の角5に対向し光学軸Aに直交する辺6が形成されている。
これら複屈折ウエハ32、33が本発明でいう第2の複屈折ウエハであり、これら複屈折ウエハ32、33を形成するための切断角度を光学軸Aに対して69度と設定しているが、この69度は以下に示す数式1から算出されている。また、この数式から算出された切断角度の特性を第3〜5図に示す。第3図は、切断角度と、d=589.3(nm)の時の係数(第4図参照)との関係を示した表であり、そのグラフを第4図に示す。また、第5図は、切断角度と、切断角度が44.8度の時との複屈折ウエハ32、33の厚み比との関係を示したグラフである。
(d:分離幅、ne=1.5534:異常光線の屈折率、no=1.5443:常光線の屈折率、θ:切断角度、t:複屈折ウエハの厚み)
この数式1から、複屈折ウエハ31、32、33の分離幅d(第7図参照)は、切断角度θと複屈折ウエハの厚みtとに関係付けられていることがわかる。本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ32、33を形成するための切断角度が光学軸Aに対して69度であるため、44.8度で切断する場合と比較してその分離幅dが短縮される。
次に、この光学ローパスフィルタ1の生産工程を、第2図を用いて以下に詳説する。
水晶インゴット2がその光学軸Aに対して44.8度で切断されて(第1図(a)参照)、第2図(a)に示す複屈折ウエハ31が形成される。次に、水晶インゴット2がその光学軸Aに対して69度で切断されて(第1図(b)参照)、第2図(b)および第2図(c)に示す複屈折ウエハ32、33が形成される。これら形成された複屈折ウエハ31、32、33は、複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33の順に重ね合わされて接合される。そして、接合された複屈折ウエハ31、32、33は、切断機器であるダイシングソーにより9個の矩形状になるよう分割ライン(第2図(d)参照)上で分割され、正常に動作可能な7個の光学ローパスフィルタ1が形成される。
形成された光学ローパスフィルタ1に入射された光は、複屈折ウエハ31から形成された水平方向複屈折板(図示省略)により常光線と異常光線とに分離され、分離された常光線と異常光線とは、夫々複屈折ウエハ32、33から形成された±45度方向複屈折板(図示省略)により4点分離される。
上記した生産工程により生産された光学ローパスフィルタ1は、例えば第6(a)図に示すようなデジタルカメラなどの撮像装置に用いられる。
この撮像装置には、第6(a)図に示すように、撮影の際取り込む光を集光するレンズ7と、レンズ7によって集光した光を複数の受光素子(図示省略)において受け、その光の情報をデジタルデータに変換するCCD8とが設けられている。そして、光学ローパスフィルタ1は、これらレンズ7とCCD8との間の光路(長さ1)中に設けられている。なお、この光学ローパスフィルタ1の光の入射面1aと射出面1bには、光の乱反射を防止するためにARコート(図示省略)が形成されている。
撮像装置では、光が外部からレンズ7に入射されて、レンズ7により集光される。そして、集光された光は、光学ローパスフィルタ1により分離されて、CCD8の各受光素子に入射される。
ところで、現在、CCD8のセルピッチは小さくなる傾向にある。すなわち、近年製造されるCCD8においては、従来と同一サイズの設計でそのセルピッチを小さくして画素数を増加させる(例えば、200万画素から300万画素など)傾向がある。そのため、CCD8のセルピッチの短縮に伴って光学ローパスフィルタにおける光の分離幅dを短くする必要があるが、上記した数式1からわかるように本発明の実施の形態にかかる複屈折ウエハ32、33を用いることで、分離幅dを短くすることができる。
また、従来の光学ローパスフィルタでは、CCD8の画素数を増加させるために、分離幅dを短くする複屈折板を用いている。そのため、光学ローパスフィルタの厚みが薄くなり、その結果、第6(a)図に示す光路長1が可変する。そのため、従来の光学ローパスフィルタでは、複屈折板にパスガラスなどを重ねあわせて光学ローパスフィルタの厚さを調整する。しかし、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタによれば、±45度方向複屈折板32a、33bの厚さが厚いため、これら±45度方向複屈折板32a、33bの厚さを予め設定した厚みに調整する。そのため、光路長1を可変させることはなく、分離幅dを短くしてCCD8の画素数の増加に対応させることができ、さらに、複屈折板以外のパスガラスなど他の媒体を用いなくてもよく生産コストの低減を図ることもできる。すなわち、例えば、CCD8の画素数を200万画素から300万画素に増加させる場合、デジタルカメラにおける光路長1を変更させるなどデジタルカメラ自体の設計変更を必要とするが、この光学ローパスフィルタ1によれば、±45度方向複屈折板32a、33bの厚さを予め設定した厚さに調整するだけでよく、生産コストの低減を図ることができる。
上記したように、この光学ローパスフィルタ1によれば、水平方向に対して±45度方向に分離する複屈折ウエハ32、33が、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成されるので、従来の切断角度が44.8度のものと同じ分離幅d(第7図参照)を得るために、通常、厚さが薄くなる複屈折ウエハ32、33の厚みを厚くして、複屈折ウエハ32、33を研磨する際、複屈折ウエハ32、33が破損する等材料の損失を気にせずに容易に加工作業を行うことができ、生産コストを低減することができる。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ32、33が、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成されるので、種水晶21から育成される水晶の厚みを薄くすることができる。例えば、本発明の実施の形態に示す複屈折ウエハ32、33を形成する水晶インゴット2の厚さを、種水晶21からみてtとする。次に、これら複屈折ウエハ32、33を、水晶インゴットをその光学軸に対して、従来通りの44、8度で切断して形成する場合、第8(b)図に示すように、水晶インゴット2’の厚さが種水晶21’からみてt’となる。この第8(b)図からも分かるように従来通りの44、8度で切断して形成する場合、水晶インゴット2’の厚さをtからt’に厚くする必要がある。そのため、本発明の実施の形態に示すような厚さtの水晶インゴット2から複屈折ウエハ32、33を形成する場合と、従来の水晶インゴット21’から複屈折ウエハ32’、33’を形成する場合と比較して、水晶インゴット2の育成時間を短縮させることができ、生産コストを低減させることができる。また、水晶インゴット2、2’は、第8図に示すように、育成されるにつれて有効長Y、Y’の長さが短くなる。そのため、本発明の実施の形態にかかる水晶インゴット2一つから69度で切断して形成される複屈折ウエハ32、33と、従来の水晶インゴット2’一つから44、8度で切断して形成される複屈折ウエハ32’、33’とを比較すると、本発明の実施の形態のほうが水晶インゴット2から形成される複屈折ウエハ32、33の枚数が多く、生産コストの点において好ましい。なお、厚さtの水晶インゴット2をその光学軸Aに対して44.8度で切断して複屈折ウエハ34を形成する場合、第8(a)図に示すように、その面積が小さくなるとともに、複屈折ウエハ34の1角が大きくかけてしまうので、複屈折ウエハ34から多くの複屈折板を形成することができず、生産効率の点において好ましくない。
また、複屈折ウエハ32、33の切断角度を水晶インゴット2の光学軸Aに対して69度にすることで、水晶インゴット2がそれほど大きく成長していなくても、複屈折ウエハ32、33の面積を大きくすることができるとともに、複屈折ウエハ32、33の角が1つ欠けた場合であっても、複屈折ウエハ32、33全体に対する欠けた部分の割合が小さくなるので、9個の光学ローパスフィルタ1に分割する際に形成される欠陥のある光学ローパスフィルタ11(第2図(d)参照)の数を2個に抑えて生産コストを低減することができる。
また、複屈折ウエハ32、33は、水晶インゴット2の光学軸Aに対して69度で切断して形成されているが、第3〜5図からわかるように、切断角度が69度であれば、切断角度が44.8度の時と比べて複屈折ウエハの厚みtを約1.501倍厚くすることができる。また、69度以外であっても、44.8度を超え、第5図に示すように急激に厚みが変化する臨界値である80度以下であればその切断角度を任意に設定してもよく、本発明の実施の形態と同様に切断角度が44.8度の時と比べて複屈折ウエハの厚みtが厚くなり本発明の実施の形態の効果が得られる。
なお、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタ1は、矩形状に形成されているが、これに限定されるものではなく、要求される形状に合わせて任意の形状に形成されてもよい。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ31に入射した光を水平方向に分離するウエハを用いているが、入射した光を垂直方向に分離するウエハを用いてもよい。この場合、複屈折ウエハ32は、入射した光を垂直方向に対して+45度方向に分離するウエハを用い、複屈折ウエハ33は、入射した光を垂直方向に対して−45度方向に分離するウエハを用いる。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33の順に重ね合わせて形成されているが、これに限定されるものではなく、その順は例えば、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33、複屈折ウエハ31の順であってもよく、複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ33、複屈折ウエハ32の順であってもよい。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハを3枚用いているが、その枚数は限定されるものではなく、例えば5枚等用途に合わせてその枚数を変更し、光の分離点の数を変更してもよい。また、複屈折ウエハ32、33は、±45度方向に光を分離させるが、これに限定されるものではなく、例えば±30度方向に光を分離させる等用途に合わせてその角度を変更してもよい。このように、任意の方向へ光を分離する複屈折ウエハを1枚から複数枚の任意の枚数を用いることで、光の分離点を2点から複数点の任意の点に変更することができ、その分離パターンも、例えば第9(a)〜(d)図に示すような様々なパターンを形成することができる。
また、本発明の実施の形態にかかる複屈折ウエハ32、33は、5角形状であるが、多角形であればその形状は任意の形状でよい。
また、複屈折ウエハを形成しやすくするために全ての複屈折ウエハが、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成されていてもよい。
また、本発明の実施の形態では、重ね合わせてなる複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33から9個の光学ローパスフィルタ1を形成したが、要求される寸法に合わせて光学ローパスフィルタの個数を任意に設定してもよい。
また、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタ1の生産工程は、以下に詳説する生産工程であってもよい。この生産工程から生産される光学ローパスフィルタ1は、上述した生産工程から生産される光学ローパスフィルタ1と同様の作用効果がある。
水晶インゴット2がその光学軸Aに対して44.8度で切断されて(第1図(a)参照)、第2図(a)に示す複屈折ウエハ31が形成される。次に、水晶インゴット2がその光学軸Aに対して69度で切断されて(第1図(b)参照)、第2図(b)および第2図(c)に示す複屈折ウエハ32、33が形成される。これら形成された複屈折ウエハ31、32、33は、ダイシングソーにより夫々分割ライン上で分割されて複屈折ウエハ31、32、33から夫々9枚の複屈折板(図示省略)が形成される。その後に、別々の複屈折ウエハ31、32、33から形成された夫々1枚ずつの複屈折板がその順に重ね合わさせて接合され、1個の光学ローパスフィルタ1が形成される。同様にして、残りの複屈折ウエハ31、32、33から形成された複屈折板から正常に動作可能な光学ローパスフィルタ1が形成される。
また、本発明の実施の形態では、光学ローパスフィルタ1をデジタルカメラなどの撮像装置に用いているが、その配置は第6(a)図に示す配置に限定されるものではなく、例えば、第6(b)図に示すような配置であってもよい。
この第6(b)図に示す光学ローパスフィルタ1では、−45度方向複屈折板33aがCCD8の光の入射面に接して設けられ、水平方向複屈折板31aと+45度方向複屈折板32aとがCCD8とレンズ7との光路(長さ1)中の中間あたりの位置に設けられている。なお、−45度方向複屈折板33aの入射面33aと、水平方向複屈折板31aの入射面31bと+45度方向複屈折板32aの射出面32cとにはARコート(図示省略)が形成されている。
このように、第6(b)図に示すように、光学ローパスフィルタ1の構成である複数の複屈折板を間を隔てて構成することにより、分離幅dを短くしてもよい。
なお、この図6(b)に示す光学ローパスフィルタ1では、−45度方向複屈折板33aがCCD8の光の入射面に接して設けられ、水平方向複屈折板31aと+45度方向複屈折板32aとがCCD8とレンズ7との光路中の中間あたりの位置に設けられているが、これに限定されるものではなく、光路中であれば、用途に合わせて、任意の方向へ光を分離する複屈折板を任意の位置に、任意の枚数で設けてもよい。
産業上の利用可能性
以上、説明したように、本発明にかかる光学ローパスフィルタによれば、複屈折ウエハの研磨加工を容易にし、かつ、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合を無くすまたは小さくして一回の生産で多数個生産し、生産コストを低減することができる。
すなわち、本発明によれば、複屈折ウエハが、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、従来の切断角度が44.8度のものと同じ分離幅を得るために複屈折ウエハの厚みを厚くして、複屈折ウエハを研磨する際、複屈折ウエハが破損する等材料の損失を気にせずに容易に加工作業を行うことができ、生産コストを低減することができる。また、複屈折ウエハの切断角度を水晶インゴットの光学軸に対して44.8度より大きい角度にすることで、水晶インゴットがそれほど大きく成長していなくても、複屈折ウエハの面積を大きくすることができ、その結果、複屈折ウエハの角が1つ欠けた場合であっても、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合が小さくなるので、多数個の光学ローパスフィルタに分割する際に形成される欠陥のある光学ローパスフィルタの数を抑えて生産コストを低減することができる。
また、本発明によれば、複屈折ウエハが、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、複屈折ウエハの厚さを厚くすることができ、厚さを予め設定する厚みに容易に調整することができる。例えば、従来では、デジタルカメラ(撮像装置)に用いているCCDの画素数を200万画素から300万画素に増加させる場合、光学ローパスフィルタの厚さを変更させて、この変更によりデジタルカメラにおける光路長を変更させるなどデジタルカメラ自体の設計変更が必要であったが、本発明にかかる光学ローパスフィルタによれば、複屈折ウエハの切断角度を調整して、その厚さを従来のものと同一にすることができるので、複屈折ウエハの寸法を設定するだけで、デジタルカメラにおける光路長を変更させる必要がなく、生産コストの低減を図ることができる。
さらに、上記したように、光学ローパスフィルタを、CCDを備えたデジタルカメラなどの撮像装置に用いた場合、撮像装置自体の設計変更による生産コストの増加を防止するため、光学ローパスフィルタの厚さが予め設定されている。そこで、撮像装置に本発明にかかる光学ローパスフィルタを用いれば、複屈折ウエハが水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、光学ローパスフィルタの厚さを変更させずにその分離幅を短くすることができ、CCDの画素数の増加に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1(a)図は、本発明の実施の形態にかかる、複屈折ウエハを形成するための切断角度が光学軸に対して44.8度である水晶インゴットの概略図であり、(b)図は、複屈折ウエハを形成するための切断角度が光学軸に対して69度である水晶インゴットの概略図である。
第2(a)図は、本発明の実施の形態にかかる、入射した光を水平方向に分離する複屈折ウエハの平面図であり、(b)図は、本発明の実施の形態にかかる、入射した光を水平方向に対して+45度方向に分離する複屈折ウエハの平面図であり、(c)図は、本発明の実施の形態にかかる、入射した光を水平方向に対して−45度方向に分離する複屈折ウエハであり、(d)図は、本発明の実施の形態にかかる、3枚の複屈折ウエハを重ね合わせた平面図である。
第3図は、本発明の実施の形態にかかる、切断角度と、d=589.3(nm)の時の係数(第4図参照)との関係を示した表である。
第4図は、本発明の実施の形態にかかる、切断角度と、d=589.3(nm)の時の係数との関係を示したグラフである。
第5図は、本発明の実施の形態にかかる、切断角度と、切断角度が44.8度の時との複屈折ウエハ32、33の厚み比との関係を示したグラフである。
第6(a)図は、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタを設けた撮像装置の光路における構成部材の配置図であり、(b)図は、他の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタを設けた撮像装置の光路における構成部材の配置図である。
第7図は、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタを通過した光の分離パターンを示した図である。
第8(a)、(b)図は、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタと従来の光学ローパスフィルタとを比較するために、それぞれが形成される夫々の水晶インゴットの厚さ及び有効長を示した図である。
第9図は、第7図に示す分離パターンとは異なる本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタを通過した光の他の分離パターンを示した図である。
本発明は、複屈折ウエハを用いた光学ローパスフィルタに関する。
光学ローパスフィルタは、撮像素子が受光した時に発生する擬似信号を抑えるために光の映像周波数の高周波成分をカットするものであり、その特性は光を分離させる分離パターンによって決定される。
例えば、従来の光学ローパスフィルタに、下記する特許文献1に示された光学ローパスフィルタがある。
この光学ローパスフィルタは、光学軸が互いに異なる3枚の複屈折ウエハが重ね合わされてなる。この重ね合わされた3枚の複屈折ウエハが分割されて多数個のローパスフィルタが形成される。
この光学ローパスフィルタは、光学軸が互いに異なる3枚の複屈折ウエハが重ね合わされてなる。この重ね合わされた3枚の複屈折ウエハが分割されて多数個のローパスフィルタが形成される。
具体的に、3枚の複屈折ウエハはいずれも、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度で切断して形成される。これら3枚の複屈折ウエハは、入射した光を水平方向に分離する水平方向複屈折ウエハと、入射した光を水平方向複屈折ウエハの分離方向に対して+45度方向に分離する+45度方向複屈折ウエハと、入射した光を水平方向複屈折ウエハの分離方向に対して−45度方向に分離する−45度方向複屈折ウエハからなり、これら水平方向複屈折板、+45度方向複屈折板、−45度方向複屈折板が順に重ね合わされて光学ローパスフィルタが形成される。
この光学ローパスフィルタに入射された光は、水平方向複屈折板により常光線と異常光線とに分離され、分離された常光線と異常光線とは、夫々±45度方向複屈折板により4点分離される。
このように光学ローパスフィルタを用いて入射光を4点分離することにより、CCD等の撮像素子に対する入力光を分離させて映像をぼかし、モアレ像を誘発する擬似信号を減衰させる。
特開2000−56268号公報
ところで、現在、撮像素子のセルピッチは小さくなる傾向にある。すなわち、近年製造されるCCDにおいては、従来と同一サイズの設計でそのセルピッチを小さくして画素数を増加させる(例えば、200万画素から300万画素など)傾向がある。そのため、CCDのセルピッチの短縮に伴って光学ローパスフィルタにおける光の分離幅を短くする必要がある。
しかし、光学ローパスフィルタの分離幅を短くするためには、光学ローパスフィルタを構成する各複屈折板の厚さを薄くする必要がある。さらに、±45度方向複屈折ウエハはその厚みを水平方向複屈折ウエハの1/√2とする必要がある。そのため、±45度方向複屈折ウエハでは、より薄い厚みが求められており、研磨加工することが難しく、コストアップの要因となっている。
また、複屈折ウエハの組み合わせにおいて、実際には水晶インゴットがそれほど大きく成長しないことから、大型の±45度方向複屈折ウエハは得難い。また、一般的に、±45度方向複屈折ウエハは、光学軸に対して45度方向に延びる辺をもつ矩形状で1つの角が大きく欠けたものになってしまう。この場合、複屈折ウエハから多数個の矩形状の光学ローパスフィルタに分割する多数個取り工程において材料の損失が発生して効率が悪い。
そこで、上記課題を解決するために本発明は、複屈折ウエハの研磨加工を容易にする光学ローパスフィルタを提供することを目的とし、また、本発明は、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合を無くすまたは小さくして一回の生産で多数個生産し、生産コストを低減する光学ローパスフィルタを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため本発明に係る光学ローパスフィルタは、水晶インゴットをその光学軸に対して角度をもって切断して形成された複屈折ウエハからなり、入射した光を分離する光学ローパスフィルタにおいて、前記複屈折ウエハは、前記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されたことを特徴とする。
本発明によれば、複屈折ウエハは、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、従来の切断角度が44.8度のものと同じ分離幅を得るために複屈折ウエハの厚みを厚くして、複屈折ウエハを研磨する際、複屈折ウエハが破損する等材料の損失を気にせずに容易に加工作業を行うことが可能となり、生産コストを低減することが可能となる。また、複屈折ウエハの切断角度を水晶インゴットの光学軸に対して44.8度より大きい角度にすることで、水晶インゴットがそれほど大きく成長していなくても、複屈折ウエハの面積を大きくすることが可能となり、その結果、複屈折ウエハの角が1つ欠けた場合であっても、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合が小さくなるので、多数個の光学ローパスフィルタに分割する際に形成される欠陥のある光学ローパスフィルタの数を抑えて生産コストを低減することが可能となる。
また、本発明によれば、複屈折ウエハは、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、複屈折ウエハの厚さを厚くすることが可能となり、厚さを予め設定する厚みに容易に調整することが可能となる。例えば、従来では、デジタルカメラ(撮像装置)に用いているCCDの画素数を200万画素から300万画素に増加させる場合、光学ローパスフィルタの厚さを変更させて、この変更によりデジタルカメラにおける光路長を変更させるなどデジタルカメラ自体の設計変更が必要であったが、本発明にかかる光学ローパスフィルタによれば、複屈折ウエハの切断角度を調整して、その厚さを従来のものと同一にすることが可能であるので、複屈折ウエハの寸法を設定するだけで、デジタルカメラにおける光路長を変更させる必要がなく、生産コストの低減を図ることが可能となる。
さらに、上記したように、光学ローパスフィルタを、CCDを備えたデジタルカメラなどの撮像装置に用いた場合、撮像装置自体の設計変更による生産コストの増加を防止するため、光学ローパスフィルタの厚さが予め設定されている。そこで、撮像装置に本発明にかかる光学ローパスフィルタを用いれば、複屈折ウエハが水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、光学ローパスフィルタの厚さを変更させずにその分離幅を短くすることが可能であり、CCDの画素数の増加に対応させることが可能となる。
具体的に、上記構成において、上記複屈折ウエハは複数枚重ね合わされるとともに分割されて多数個形成され、複数枚のうち少なくとも1枚の上記複屈折ウエハは、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されてもよい。または、上記構成において、上記複屈折ウエハは複数枚形成されるとともに、これら複数枚の複屈折ウエハを分割して夫々多数枚の複屈折板が形成され、別々の複屈折ウエハから形成された複数枚の複屈折板が重ね合わされてなり、複数枚のうち少なくとも1枚の上記複屈折ウエハは、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されてもよい。
また、上記構成において、重ね合わされた複数枚の上記複屈折ウエハには少なくとも、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度で切断して形成され、入射した光を水平方向もしくは垂直方向に分離する第1の複屈折ウエハと、上記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成され、入射した光を水平方向もしくは垂直方向に対して45度方向に分離する第2の複屈折ウエハとが含まれていてもよい。
この場合、水平方向もしくは垂直方向に対して45度方向に分離する第2の複屈折ウエハを厚くさせるので、通常、第1の複屈折ウエハの厚みより厚さが薄くなる第2の複屈折ウエハの厚みを厚くして、第2の複屈折ウエハを研磨する際、複屈折ウエハが破損するのを気にせずに容易に加工作業を行うことが可能となる。
上記構成において、重ね合わされた上記複屈折ウエハは1枚の第1の複屈折ウエハと2枚の第2の複屈折ウエハから構成され、上記第1の複屈折ウエハは、1つの対向する二辺が光学軸に平行である矩形状に形成されてなり、かつ、上記第2の複屈折ウエハは、5角形状であって、隣接する3つの角が略直角に形成されるとともにこの3つの角のうち中央の角に対向し光学軸に直交する辺が形成されてなってもよい。
また、上記構成において、上記水晶インゴットの光学軸に対して44.8度より大きい角度は、その光学軸に対して80度以下に設定されていることが好ましく、特に、69度に設定されていることが、光学ローパスフィルタの形成を容易にする上でより好ましい。
本発明によれば、複屈折ウエハの研磨加工を容易にすることが可能となる。また、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合を無くすまたは小さくして一回の生産で多数個生産させ、生産コストを低減させることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタ1は、図1に示すような水晶インゴット2を切断して形成される複屈折ウエハ31、32、33が3枚重ね合わされた構成からなっている。
複屈折ウエハ31は、本発明でいう第1の複屈折ウエハであって、入射した光を水平方向に分離させるウエハである。この複屈折ウエハ31は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して44.8度で切断して形成され、図2(a)に示すように、1つの対向する二辺4が光学軸Aに平行である矩形状に形成されている。
複屈折ウエハ32は、入射した光を水平方向に対して+45度方向に分離させるウエハである。この複屈折ウエハ32は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成され、図2(b)に示すように、5角形状であって、隣接する3つの角5が直角に形成されるとともにこの3つの角5のうち中央の角5に対向し光学軸Aに直交する辺6が形成されている。
複屈折ウエハ33は、入射した光を水平方向に対して−45度方向に分離させるウエハである。この複屈折ウエハ33は、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成され、図2(c)に示すように、5角形状であって、隣接する3つの角5が直角に形成されるとともにこの3つの角5のうち中央の角5に対向し光学軸Aに直交する辺6が形成されている。
これら複屈折ウエハ32、33が本発明でいう第2の複屈折ウエハであり、これら複屈折ウエハ32、33を形成するための切断角度を光学軸Aに対して69度と設定しているが、この69度は以下に示す数式1から算出されている。また、この数式から算出された切断角度の特性を図3〜5に示す。図3は、切断角度と、d=589.3(nm)の時の係数(図4参照)との関係を示した表であり、そのグラフを図4に示す。また、図5は、切断角度と、切断角度が44.8度の時との複屈折ウエハ32、33の厚み比との関係を示したグラフである。
<数式1>
(d:分離幅、ne=1.5534:異常光線の屈折率、no=1.5443:常光線の屈折率、θ:切断角度、t:複屈折ウエハの厚み)
この数式1から、複屈折ウエハ31、32、33の分離幅d(図7参照)は、切断角度θと複屈折ウエハの厚みtとに関係付けられていることがわかる。本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ32、33を形成するための切断角度が光学軸Aに対して69度であるため、44.8度で切断する場合と比較してその分離幅dが短縮される。
<数式1>
(d:分離幅、ne=1.5534:異常光線の屈折率、no=1.5443:常光線の屈折率、θ:切断角度、t:複屈折ウエハの厚み)
この数式1から、複屈折ウエハ31、32、33の分離幅d(図7参照)は、切断角度θと複屈折ウエハの厚みtとに関係付けられていることがわかる。本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ32、33を形成するための切断角度が光学軸Aに対して69度であるため、44.8度で切断する場合と比較してその分離幅dが短縮される。
次に、この光学ローパスフィルタ1の生産工程を、図2を用いて以下に詳説する。
水晶インゴット2がその光学軸Aに対して44.8度で切断されて(図1(a)参照)、図2(a)に示す複屈折ウエハ31が形成される。次に、水晶インゴット2がその光学軸Aに対して69度で切断されて(図1(b)参照)、図2(b)および図2(c)に示す複屈折ウエハ32、33が形成される。これら形成された複屈折ウエハ31、32、33は、複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33の順に重ね合わされて接合される。そして、接合された複屈折ウエハ31、32、33は、切断機器であるダイシングソーにより9個の矩形状になるよう分割ライン(図2(d)参照)上で分割され、正常に動作可能な7個の光学ローパスフィルタ1が形成される。
形成された光学ローパスフィルタ1に入射された光は、複屈折ウエハ31から形成された水平方向複屈折板(図示省略)により常光線と異常光線とに分離され、分離された常光線と異常光線とは、夫々複屈折ウエハ32、33から形成された±45度方向複屈折板(図示省略)により4点分離される。
上記した生産工程により生産された光学ローパスフィルタ1は、例えば図6(a)に示すようなデジタルカメラなどの撮像装置に用いられる。
この撮像装置には、図6(a)に示すように、撮影の際取り込む光を集光するレンズ7と、レンズ7によって集光した光を複数の受光素子(図示省略)において受け、その光の情報をデジタルデータに変換するCCD8とが設けられている。そして、光学ローパスフィルタ1は、これらレンズ7とCCD8との間の光路(長さl)中に設けられている。なお、この光学ローパスフィルタ1の光の入射面1aと射出面1bには、光の乱反射を防止するためにARコート(図示省略)が形成されている。
撮像装置では、光が外部からレンズ7に入射されて、レンズ7により集光される。そして、集光された光は、光学ローパスフィルタ1により分離されて、CCD8の各受光素子に入射される。
ところで、現在、CCD8のセルピッチは小さくなる傾向にある。すなわち、近年製造されるCCD8においては、従来と同一サイズの設計でそのセルピッチを小さくして画素数を増加させる(例えば、200万画素から300万画素など)傾向がある。そのため、CCD8のセルピッチの短縮に伴って光学ローパスフィルタにおける光の分離幅dを短くする必要があるが、上記した数式1からわかるように本発明の実施の形態にかかる複屈折ウエハ32、33を用いることで、分離幅dを短くすることができる。
また、従来の光学ローパスフィルタでは、CCD8の画素数を増加させるために、分離幅dを短くする複屈折板を用いている。そのため、光学ローパスフィルタの厚みが薄くなり、その結果、図6(a)に示す光路長lが可変する。そのため、従来の光学ローパスフィルタでは、複屈折板にパスガラスなどを重ねあわせて光学ローパスフィルタの厚さを調整する。しかし、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタによれば、±45度方向複屈折板32a、33bの厚さが厚いため、これら±45度方向複屈折板32a、33bの厚さを予め設定した厚みに調整する。そのため、光路長lを可変させることはなく、分離幅dを短くしてCCD8の画素数の増加に対応させることができ、さらに、複屈折板以外のパスガラスなど他の媒体を用いなくてもよく生産コストの低減を図ることもできる。すなわち、例えば、CCD8の画素数を200万画素から300万画素に増加させる場合、デジタルカメラにおける光路長lを変更させるなどデジタルカメラ自体の設計変更を必要とするが、この光学ローパスフィルタ1によれば、±45度方向複屈折板32a、33bの厚さを予め設定した厚さに調整するだけでよく、生産コストの低減を図ることができる。
上記したように、この光学ローパスフィルタ1によれば、水平方向に対して±45度方向に分離する複屈折ウエハ32、33が、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成されるので、従来の切断角度が44.8度のものと同じ分離幅d(図7参照)を得るために、通常、厚さが薄くなる複屈折ウエハ32、33の厚みを厚くして、複屈折ウエハ32、33を研磨する際、複屈折ウエハ32、33が破損する等材料の損失を気にせずに容易に加工作業を行うことができ、生産コストを低減することができる。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ32、33が、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成されるので、種水晶21から育成される水晶の厚みを薄くすることができる。例えば、本発明の実施の形態に示す複屈折ウエハ32、33を形成する水晶インゴット2の厚さを、種水晶21からみてtとする。次に、これら複屈折ウエハ32、33を、水晶インゴットをその光学軸に対して、従来通りの44、8度で切断して形成する場合、図8(b)に示すように、水晶インゴット2’の厚さが種水晶21’からみてt’となる。この図8(b)からも分かるように従来通りの44、8度で切断して形成する場合、水晶インゴット2’の厚さをtからt’に厚くする必要がある。そのため、本発明の実施の形態に示すような厚さtの水晶インゴット2から複屈折ウエハ32、33を形成する場合と、従来の水晶インゴット21’から複屈折ウエハ32’、33’を形成する場合と比較して、水晶インゴット2の育成時間を短縮させることができ、生産コストを低減させることができる。また、水晶インゴット2、2’は、図8に示すように、育成されるにつれて有効長Y、Y’の長さが短くなる。そのため、本発明の実施の形態にかかる水晶インゴット2一つから69度で切断して形成される複屈折ウエハ32、33と、従来の水晶インゴット2’一つから44、8度で切断して形成される複屈折ウエハ32’、33’とを比較すると、本発明の実施の形態のほうが水晶インゴット2から形成される複屈折ウエハ32、33の枚数が多く、生産コストの点において好ましい。なお、厚さtの水晶インゴット2をその光学軸Aに対して44.8度で切断して複屈折ウエハ34を形成する場合、図8(a)に示すように、その面積が小さくなるとともに、複屈折ウエハ34の1角が大きくかけてしまうので、複屈折ウエハ34から多くの複屈折板を形成することができず、生産効率の点において好ましくない。
また、複屈折ウエハ32、33の切断角度を水晶インゴット2の光学軸Aに対して69度にすることで、水晶インゴット2がそれほど大きく成長していなくても、複屈折ウエハ32、33の面積を大きくすることができるとともに、複屈折ウエハ32、33の角が1つ欠けた場合であっても、複屈折ウエハ32、33全体に対する欠けた部分の割合が小さくなるので、9個の光学ローパスフィルタ1に分割する際に形成される欠陥のある光学ローパスフィルタ11(図2(d)参照)の数を2個に抑えて生産コストを低減することができる。
また、複屈折ウエハ32、33は、水晶インゴット2の光学軸Aに対して69度で切断して形成されているが、図3〜5からわかるように、切断角度が69度であれば、切断角度が44.8度の時と比べて複屈折ウエハの厚みtを約1.501倍厚くすることができる。また、69度以外であっても、44.8度を超え、図5に示すように急激に厚みが変化する臨界値である80度以下であればその切断角度を任意に設定してもよく、本発明の実施の形態と同様に切断角度が44.8度の時と比べて複屈折ウエハの厚みtが厚くなり本発明の実施の形態の効果が得られる。
なお、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタ1は、矩形状に形成されているが、これに限定されるものではなく、要求される形状に合わせて任意の形状に形成されてもよい。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ31に入射した光を水平方向に分離するウエハを用いているが、入射した光を垂直方向に分離するウエハを用いてもよい。この場合、複屈折ウエハ32は、入射した光を垂直方向に対して+45度方向に分離するウエハを用い、複屈折ウエハ33は、入射した光を垂直方向に対して−45度方向に分離するウエハを用いる。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33の順に重ね合わせて形成されているが、これに限定されるものではなく、その順は例えば、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33、複屈折ウエハ31の順であってもよく、複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ33、複屈折ウエハ32の順であってもよい。
また、本発明の実施の形態では、複屈折ウエハを3枚用いているが、その枚数は限定されるものではなく、例えば5枚等用途に合わせてその枚数を変更し、光の分離点の数を変更してもよい。また、複屈折ウエハ32、33は、±45度方向に光を分離させるが、これに限定されるものではなく、例えば±30度方向に光を分離させる等用途に合わせてその角度を変更してもよい。このように、任意の方向へ光を分離する複屈折ウエハを1枚から複数枚の任意の枚数を用いることで、光の分離点を2点から複数点の任意の点に変更することができ、その分離パターンも、例えば図9(a)〜(d)に示すような様々なパターンを形成することができる。
また、本発明の実施の形態にかかる複屈折ウエハ32、33は、5角形状であるが、多角形であればその形状は任意の形状でよい。
また、複屈折ウエハを形成しやすくするために全ての複屈折ウエハが、水晶インゴット2をその光学軸Aに対して69度で切断して形成されていてもよい。
また、本発明の実施の形態では、重ね合わせてなる複屈折ウエハ31、複屈折ウエハ32、複屈折ウエハ33から9個の光学ローパスフィルタ1を形成したが、要求される寸法に合わせて光学ローパスフィルタの個数を任意に設定してもよい。
また、本発明の実施の形態にかかる光学ローパスフィルタ1の生産工程は、以下に詳説する生産工程であってもよい。この生産工程から生産される光学ローパスフィルタ1は、上述した生産工程から生産される光学ローパスフィルタ1と同様の作用効果がある。
水晶インゴット2がその光学軸Aに対して44.8度で切断されて(図1(a)参照)、図2(a)に示す複屈折ウエハ31が形成される。次に、水晶インゴット2がその光学軸Aに対して69度で切断されて(図1(b)参照)、図2(b)および図2(c)に示す複屈折ウエハ32、33が形成される。これら形成された複屈折ウエハ31、32、33は、ダイシングソーにより夫々分割ライン上で分割されて複屈折ウエハ31、32、33から夫々9枚の複屈折板(図示省略)が形成される。その後に、別々の複屈折ウエハ31、32、33から形成された夫々1枚ずつの複屈折板がその順に重ね合わさせて接合され、1個の光学ローパスフィルタ1が形成される。同様にして、残りの複屈折ウエハ31、32、33から形成された複屈折板から正常に動作可能な光学ローパスフィルタ1が形成される。
また、本発明の実施の形態では、光学ローパスフィルタ1をデジタルカメラなどの撮像装置に用いているが、その配置は図6(a)に示す配置に限定されるものではなく、例えば、図6(b)に示すような配置であってもよい。
この図6(b)に示す光学ローパスフィルタ1では、−45度方向複屈折板33aがCCD8の光の入射面に接して設けられ、水平方向複屈折板31aと+45度方向複屈折板32aとがCCD8とレンズ7との光路(長さl)中の中間あたりの位置に設けられている。なお、−45度方向複屈折板33aの入射面33aと、水平方向複屈折板31aの入射面31bと+45度方向複屈折板32aの射出面32cとにはARコート(図示省略)が形成されている。
このように、図6(b)に示すように、光学ローパスフィルタ1の構成である複数の複屈折板を間を隔てて構成することにより、分離幅dを短くしてもよい。
なお、この図6(b)に示す光学ローパスフィルタ1では、−45度方向複屈折板33aがCCD8の光の入射面に接して設けられ、水平方向複屈折板31aと+45度方向複屈折板32aとがCCD8とレンズ7との光路中の中間あたりの位置に設けられているが、これに限定されるものではなく、光路中であれば、用途に合わせて、任意の方向へ光を分離する複屈折板を任意の位置に、任意の枚数で設けてもよい。
以上、説明したように、本発明にかかる光学ローパスフィルタによれば、複屈折ウエハの研磨加工を容易にし、かつ、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合を無くすまたは小さくして一回の生産で多数個生産し、生産コストを低減するのに好ましい。
すなわち、本発明によれば、複屈折ウエハが、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、従来の切断角度が44.8度のものと同じ分離幅を得るために複屈折ウエハの厚みを厚くして、複屈折ウエハを研磨する際、複屈折ウエハが破損する等材料の損失を気にせずに容易に加工作業を行うことができ、生産コストを低減することができる。また、複屈折ウエハの切断角度を水晶インゴットの光学軸に対して44.8度より大きい角度にすることで、水晶インゴットがそれほど大きく成長していなくても、複屈折ウエハの面積を大きくすることができ、その結果、複屈折ウエハの角が1つ欠けた場合であっても、複屈折ウエハ全体に対する欠けた部分の割合が小さくなるので、多数個の光学ローパスフィルタに分割する際に形成される欠陥のある光学ローパスフィルタの数を抑えて生産コストを低減することができる。
また、本発明によれば、複屈折ウエハが、水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、複屈折ウエハの厚さを厚くすることができ、厚さを予め設定する厚みに容易に調整することができる。例えば、従来では、デジタルカメラ(撮像装置)に用いているCCDの画素数を200万画素から300万画素に増加させる場合、光学ローパスフィルタの厚さを変更させて、この変更によりデジタルカメラにおける光路長を変更させるなどデジタルカメラ自体の設計変更が必要であったが、本発明にかかる光学ローパスフィルタによれば、複屈折ウエハの切断角度を調整して、その厚さを従来のものと同一にすることができるので、複屈折ウエハの寸法を設定するだけで、デジタルカメラにおける光路長を変更させる必要がなく、生産コストの低減を図ることができる。
さらに、上記したように、光学ローパスフィルタを、CCDを備えたデジタルカメラなどの撮像装置に用いた場合、撮像装置自体の設計変更による生産コストの増加を防止するため、光学ローパスフィルタの厚さが予め設定されている。そこで、撮像装置に本発明にかかる光学ローパスフィルタを用いれば、複屈折ウエハが水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されるので、光学ローパスフィルタの厚さを変更させずにその分離幅を短くすることができ、CCDの画素数の増加に対応させることができる。
1 光学ローパスフィルタ
2 水晶インゴット
31 複屈折ウエハ(第1の複屈折ウエハ)
32、33 複屈折ウエハ(第2の複屈折ウエハ)
3 二辺
5 3つの角
6 光学軸に直交する辺
A 光学軸
d 分離幅
2 水晶インゴット
31 複屈折ウエハ(第1の複屈折ウエハ)
32、33 複屈折ウエハ(第2の複屈折ウエハ)
3 二辺
5 3つの角
6 光学軸に直交する辺
A 光学軸
d 分離幅
Claims (6)
- 水晶インゴットをその光学軸に対して角度をもって切断して形成された複屈折ウエハからなり、入射した光を分離する光学ローパスフィルタにおいて、
前記複屈折ウエハは、前記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されたことを特徴とする光学ローパスフィルタ。 - 請求項1に記載の光学ローパスフィルタにおいて、
前記複屈折ウエハは複数枚重ね合わされるとともに分割されて多数個形成され、
複数枚のうち少なくとも1枚の前記複屈折ウエハは、前記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されたことを特徴とする光学ローパスフィルタ。 - 請求項1に記載の光学ローパスフィルタにおいて、
前記複屈折ウエハは複数枚形成されるとともに、これら複数枚の複屈折ウエハを分割して夫々多数枚の複屈折板が形成され、別々の複屈折ウエハから形成された複数枚の複屈折板が重ね合わされてなり、
複数枚のうち少なくとも1枚の前記複屈折ウエハは、前記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成されたことを特徴とする光学ローパスフィルタ。 - 請求項2乃至3のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、
重ね合わされた複数枚の前記複屈折ウエハには少なくとも、前記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度で切断して形成され、入射した光を水平方向もしくは垂直方向に分離する第1の複屈折ウエハと、前記水晶インゴットをその光学軸に対して44.8度より大きい角度で切断して形成され、入射した光を水平方向もしくは垂直方向に対して45度方向に分離する第2の複屈折ウエハとが含まれたことを特徴とする光学ローパスフィルタ。 - 請求項4に記載の光学ローパスフィルタにおいて、
重ね合わされた前記複屈折ウエハは1枚の第1の複屈折ウエハと2枚の第2の複屈折ウエハから構成され、前記第1の複屈折ウエハは、1つの対向する二辺が光学軸に平行である矩形状に形成されてなり、かつ、前記第2の複屈折ウエハは、5角形状であって、隣接する3つの角が略直角に形成されるとともにこの3つの角のうち中央の角に対向し光学軸に直交する辺が形成されてなることを特徴とする光学ローパスフィルタ。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、
前記水晶インゴットの光学軸に対して44.8度より大きい角度は、その光学軸に対して80度以下に設定されていることを特徴とする光学ローパスフィルタ。
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