JPWO2003091166A1 - 有機化合物含有排水の処理方法および装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、排水中の有機化合物を電気分解処理する方法に関し、特に、有害で悪臭を放つ副生成物を発生させることなく、有機化合物を二酸化炭素や水等の無機化合物まで、実用的規模で分解処理することができる方法に関する。また、本発明は、有機化合物である有機性懸濁物(SS)含有排水中から有機性懸濁物を予め除去する必要なく、排水に含まれる溶解性有機物を有機性懸濁物と共に酸化分解処理することにより、排水中の全有機炭素濃度(TOC)及び化学的酸素消費量(COD)を低減することができる処理方法および装置に関する。さらに、本発明は、有機化合物である有機窒素化合物を含有する排水中から、該有機化合物を窒素ガスや炭酸ガスあるいは水等の無害な無機化合物まで、実用的規模で分解処理することができる処理方法に関する。
技術背景
工場排水、畜産排水、生活排水、その他各種の排水中には、環境を汚染する可能性のある物質として、ジメチルスルホキシド、脂肪族アルコール、芳香族アルコールなどの有機化合物の他、有機窒素化合物、有機性懸濁物などが含まれている。
なかでも工場排水については、上記の有機化合物を排出が許容されるレベルまで低減する必要がある。特に、有機化合物有機窒素化合物は、水中に放出されると富栄養化の原因となり、大気中に放出されるとそれ自体有害であるばかりか、光化学反応に関与して二次的複合汚染現象の一因となる。この有機窒素化合物の排出源は、例えば、家畜、家禽、魚類等の飼料製造、食料品製造における原料として使用する蛋白質等に由来するものや、各種の化学品や薬剤等の製造工程からの製品漏洩分や副生成物あるいは原料等に由来するもの等がある。
また、生物処理および物理化学処理においては、処理すべき排水に有機性懸濁物が含まれている場合、処理装置に対して有機性懸濁物含有水を直接通液することができない。そのため、生物処理または物理化学処理によって有機性懸濁物含有水を処理する場合には、有機性懸濁物成分を除去するために、濾過、凝集沈殿等の前処理を行わなければならず、濾過槽、凝集沈殿槽などの大型の付帯設備を設置するためのコストが嵩んでしまっていた。更に、濾過槽、凝集沈殿槽などによって除去した有機性懸濁物を産業廃棄物として処理するためのコストも嵩んでしまっていた。
この排水中の有機化合物の低減方法としては、活性汚泥法等の生物分解処理方法、オゾン酸化による処理方法、電気化学的な処理方法、その他各種の処理方法があるが、電気化学的な処理方法は、生物分解処理方法やオゾン酸化方法等に比べて、操作性が容易であるのみならず、使用装置をコンパクト化できたり、処理時間が短い等の利点がある。
このような観点から、従来、白金、酸化鉛、酸化すず等の様々な陽極材料を活用した電気分解処理方法が開発されている。
しかし、工場排水は、強い腐食性を有する化合物を含んでいる場合も多く、上記の白金や酸化鉛等の陽極材料は、これら腐食性の化合物により、容易に腐食されてしまう。
しかも、白金電極の場合は、電気分解処理時の電流密度を0.1A/cm2程度にすれば、安定して電気分解処理が行えるが、電気分解処理効率を高めるために、0.2A/cm2以上の高い電流密度にすると、電極の劣化が大幅に進行し、電極の寿命が短くなる。
一方、ダイヤモンドは、化学的安定性が高く、ホウ素や窒素をドープすることによって導電性を示すことから、排水の電気分解処理用の電極材料として期待されている。
藤嶋らの論文(Electrochemistry,Vol.67(1999)389)によれば、ホウ素をドープしたダイヤモンド電極は、電位窓が極めて広く、腐食性の強い水溶液中においても安定して動作することが報告されている。
また、藤嶋らの論文(Jornal of Electroanalytical Chemistry,Vol.396(1995)233)において、NOxがダイヤモンド電極で効率よくアンモニアに還元されることが報告されている。
さらに、特開平7−299467号公報には、ホウ素をドープしたダイヤモンド電極を陽極に用い、有機化合物を酸化分解できることが開示されている。さらにまた、特開平7−241549号公報には、有機性懸濁物含有水を処理するときに濾過により有機性懸濁物成分を除去することが開示されている。
しかし、上記のようなダイヤモンド電極を使用し、電流密度を高くして、工場排水等を実用的規模で処理する技術に関しては、未だ十分な報告はない。一方、通液線速度を高める場合には、電解反応により酸素や水素が多量に発生し、これら気体成分が電解反応槽内に滞留すると、排水とダイヤモンド電極との接触を妨害し、電流効率を悪化させるばかりでなく、局部的に電流密度か極端に大きくなって、基板上に形成されて電極を構成しているダイヤモンド薄膜が、当該基板から剥離するという問題もあった。
また、白金などの金属電極を利用した電気分解処理においては、処理すべき排水に有機性懸濁物が含まれている場合、有機性懸濁物含有水を直接電気分解処理すると、白金などの金属電極に有機性懸濁物が付着してしまい、その結果、極間電圧が上昇してエネルギ効率が大幅に低下すると共に、溶解性有機物の除去効率が低下してしまっていた。更に、転極を繰り返すことにより、電極の活性低下が急激に進んでしまい、その結果、装置の寿命が大幅に短くなるおそれがあった。従って、従来の有機性懸濁物含有水の電気分解処理においては、まず、排水中の有機性懸濁物が濾過、凝集沈殿などの前処理によって除去され、次いで、排水が電気分解処理されていた。
さらに、特開平7−299467号公報に記載された処理装置および方法は、例えばハロゲン化銀写真要素の処理に用いる数多くの異なる溶液に対して適用されているものの、有機性懸濁物に対しては適用されていない。詳細には、特開平7−299467号公報には、電気分解酸化を受けやすい溶質を含有する任意の溶液に対してダイヤモンド電極を用いた電気分解処理を適用しうる点が開示されている。このように、従来の電気分解酸化処理では、懸濁物を予め除去し、溶質のみを処理するというのが常識であった。当然ながら、特開平7−299467号公報には、排水中の有機性懸濁物を前処理によって除去することなく有機性懸濁物含有水に対してダイヤモンド電極を用いた電気分解処理を直接適用する点については開示も示唆もされていない。従って、従来においては、特開平7−299467号公報に記載された発明に基づいてダイヤモンド電極を用いた電気分解処理を有機性懸濁物含有水に対して直接適用することは常識外の発想であり、当業者にとって容易ではなかった。つまり、従来においては、有機性懸濁物を前処理によって排水から除去することなく有機性懸濁物含有水に対してダイヤモンド電極を用いた電気分解処理を直接適用することは容易ではなかった。
ところで、陰極および陽極にダイヤモンド電極を使用した場合の電気分解処理では、有機窒素化合物は、陽極でNOxあるいは硝酸イオンに酸化され、陰極でアンモニアに還元される。このアンモニアは、陽極で、再び硝酸イオンに酸化され、最終的には、窒素ガスとして系外に排出される。このように、陽極と陰極で酸化と還元を繰り返すため、処理効率が悪く、有機窒素化合物含有排水の実用的な処理技術の開発が急務となっている。
発明の目的
本発明は、以上の諸点を踏まえ、工場排水、その他各種の排水中に含まれる有機化合物を、ダイヤモンド電極を使用して電気分解処理するに際し、有害で悪臭を放つ副生成物を生じることなく無害な無機化合物にまで分解でき、しかも実用的規模で実施することができる方法を提供することを目的とする。また、本発明は、排水に含まれる有機性懸濁物を予め除去する必要なく、排水に含まれる溶解性有機物を有機性懸濁物と共に酸化分解処理することにより、排水中の溶解性有機物および有機性懸濁物を同時に分解除去し、排水中の全有機炭素濃度(TOC)及び化学的酸素消費量(COD)を低減することができる処理方法および装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、工場排水等に含まれる有機窒素化合物を、ダイヤモンド電極を使用して電気分解処理するに際し、高い効率で、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無害な無機化合物にまで分解除去することができる処理方法を提供することを目的とする。
発明の概要
請求項1に記載された本発明の第一の有機化合物含有排水の処理方法は、有機化合物含有排水中の有機化合物を少なくとも陽極にダイヤモンド電極を用いて電気化学的に無害化する方法であって、電流密度を0.5〜10A/cm2とし、かつ通液線速度を200〜10,000m/hrにする方法である。
また、請求項2に記載された本発明の第二の有機化合物含有排水の処理方法は、有機化合物含有排水中の有機化合物を電気化学的に無害化する方法であって、少なくとも陽極にダイヤモンド電極を用い、かつ前記排水のpHをアルカリ性に調整する方法である。
さらに、請求項3に記載された本発明の第三の有機化合物含有排水の処理方法は、有機化合物として有機性懸濁物を含有する有機化合物含有排水中の有機化合物を電気化学的に無害化する方法であって、少なくとも陽極にダイヤモンド電極を用い、前記有機性懸濁物を電気分解処理する方法である。
請求項4に記載された本発明の処理方法は、前記請求項1乃至3の各方法において、陽極および陰極の両方にダイヤモンド電極を用いて転極を行う方法である。
さらにまた、請求項5に記載された本発明の第四の有機化合物含有排水の処理方法は、有機化合物として有機窒素化合物を含有する有機化合物含有排水中の有機化合物を電気化学的に無害化する方法であって、陰極と陽極にダイヤモンド電極を用いた1段目の電気分解処理を行った後、陰極にダイヤモンド電極を用い、陽極に金属電極を用いた2段目の電気分解処理を行う方法である。
請求項6に記載された本発明の処理方法は、前記請求項5において、1段目の電気分解処理を行う際に、有機化合物含有排水に硫酸イオンを添加する方法である。
請求項7に記載された本発明の処理方法は、前記請求項5又は6において、2段目の電気分解処理を行う際に、1段目の電気分解処理後の排水に塩化物イオンを添加する方法である。
また、請求項8に記載された本発明の処理方法は、前記請求項2乃至7のいずれか1項において、前記電気分解処理におけるダイヤモンド電極表面の電流密度を0.001〜10A/cm2とし、通液線速度を10〜10,000m/hとしてダイヤモンド電極による電気分解処理を行う方法である。
請求項9に記載された本発明の処理方法は、前記請求項2乃至8のいずれか1項において、前記電気分解処理におけるダイヤモンド電極表面の電流密度を0.5〜10A/cm2とし、かつ通液線速度を200〜10,000m/hにする方法である。
請求項10に記載された本発明の処理方法は、前記請求項1乃至9のいずれか1項において、前記電気分解処理における通液線速度を、下式1の関係式を満たすように制御する方法である。
式1:通液線速度(m/hr)≧400×(電流密度(A/cm2)−0.5)+200
請求項11に記載された本発明の処理方法は、前記請求項1乃至10のいずれか1項において、前記電気分解処理における通液線速度を、下式2の関係式を満たすように制御する方法である。
式2:通液線速度(m/hr)≧1000×(電流密度(A/cm2)−0.5)+200
そして、請求項12に記載された本発明の有機化合物含有排水の処理装置は、有機化合物として有機性懸濁物を含有する有機化合物含有排水中の該有機性懸濁物を電気分解処理するためのダイヤモンド電極を具備するものである。
請求項13に記載された有機化合物含有排水の処理装置は、前記請求項12において、ダイヤモンド電極表面の電流密度を0.001〜10A/cm2とし、通液線速度を10〜10,000m/hとしてダイヤモンド電極による電気分解処理を行うものである。
請求項14に記載された有機化合物含有排水の処理装置は、前記請求項12または13において、陽極および陰極の両方にダイヤモンド電極を用いて転極を行うものである。
発明の実施の形態
以下、本発明の第一〜第四の有機化合物含有排水の処理方法および装置について詳細に説明する。
第一の有機化合物含有排水の処理方法
まず、本発明の第一の有機化合物含有排水の処理方法について説明する。
本発明の第一の処理方法における処理対象としての有機化合物の種類は、特に制限せず、電気化学的な処理で二酸化炭素や水等の無機化合物にまで分解するものであれば、どのようなものであってもよい。
また、このような有機化合物の濃度も、特に制限せず、どのような濃度であってもよく、場合によっては、第一の処理方法で処理するに先立ち、濃縮しておいてもよい。なお、ダイヤモンド電極の電気分解効率等の面からは、有機化合物の濃度は、0.5〜20g/リットル(以下、リットルを「L」、ミリリットルを「mL」と記す)程度が好ましい。
本発明の第一の処理方法における電流密度は、0.5〜10A/cm2とするが、0.5A/cm2未満であると、電流効率の良いダイヤモンド電極を使用しても、工場等の大量排水を所定の有機化合物のレベルまで実用的規模で電気分解処理するためには、ある程度大きな電極面積を必要とし、電解反応槽を大容量にしなければならず、装置コストやランニングコストが膨大となる。
一方、10A/cm2を超えると、極間電圧が増大し、熱エネルギーに消費されてしまうため、不経済となるのみならず、ダイヤモンド電極の耐久性の点からも好ましくない。
通液線速度は、電流密度の増大に伴って大きくすることが好ましく、上記の電流密度の範囲内において、全有機炭素(TOC)除去率を、3時間以内で、70%以上とするためと、電解反応によって生成するガス成分を液流に伴わせて効率良く除去するためには、200m/hr以上とすることが重要である。
なお、通液線速度の上限は、特に制限しないが、あまり高速であると、液中の有機化合物とダイヤモンド電極の接触が不充分となって、有機化合物の電気分解反応が良好に進行しないことがあるため、10,000m/hr程度が限度である。
また、通液線速度は、下式1の関係式を満たすように制御することが好ましい。
式1:通液線速度(m/hr)≧400×(電流密度(A/cm2)−0.5)+200
すなわち、図1の通液線速度と電流密度との関係を示すグラフにおいて、実線で示している下側の直線上と、この直線より上方の領域になるように制御する。
この下側の直線より下方の領域であると、電解反応によってガスが大量に生成し、このガス成分が反応槽内に滞留して、電流効率が悪化するだけでなく、電流密度が局部的に大きくなり、ダイヤモンド電極薄膜が基板から剥離すると言う問題が生じる。
より好ましくは、下式2の関係式を満たすように制御することである。
式2:通液線速度(m/hr)≧1000×(電流密度(A/cm2)−0.5)+200
すなわち、図1の破線で示している上側の直線上と、この直線より上方の領域になるように制御することであり、このように制御することにより、一層良好な効果を得ることができる。
上記の電流密度と通液線速度との関係を満たす限りにおいて、第一の処理方法では、極めて高い効率で排水中の有機化合物を、電気化学的に酸化分解することができる。
このとき、ダイヤモンド電極を少なくとも陽極にして水を電気分解すると、通常、ヒドロキシラジカルが多量に発生し、このヒドロキシラジカルによる有機化合物の間接酸化分解効果をも生じることができる。
このヒドロキシラジカルの発生は、他の電極材料に比して、ダイヤモンド電極が優れており、特に、排水のpHをアルカリ性に調整することで、当該排水中のOH−イオン濃度が増加し、中性の場合に比して、ヒドロキシラジカルの発生が増大する。
ヒドロキシラジカルが高効率で発生することにより、当該ラジカルによる有機化合物の酸化分解効率が増大し、この酸化分解がダイヤモンド電極による有機化合物の電気分解に相乗して、排水中の有機化合物の分解効率が飛躍的に向上する。
上記の条件で排水を電気化学的に処理する際に使用するダイヤモンド電極は、Nb,Ta,Ti,Mo,W,Zr等の導電性金属材料を基板とし、これら基板の表面に導電性ダイヤモンド薄膜を析出させたものや、シリコンウエハ等の半導体材料を基板とし、このウエハ表面に導電性ダイヤモンド薄膜を合成させたもの、あるいは基板を用いない条件で板状に析出合成した導電性多結晶ダイヤモンドを挙げることができる。
なお、導電性ダイヤモンド薄膜は、ダイヤモンド薄膜の調製の際にボロン又は窒素の所定量をドープして導電性を付与したものであり、ボロンをドープしたものが一般的である。
これらのドープ量は、少なすぎればドープする技術的意義が発現せず、多すぎてもドープ効果は飽和するため、ダイヤモンド薄膜の炭素量に対し50〜10,000ppmの範囲内のものが適している。
本発明において、ダイヤモンド電極は、一般には板状のものを使用するが、網目構造物を板状にしたもの等をも使用することができる。
また、炭素粉末、その他の粉末状の材料の表面を、導電性ダイヤモンド薄膜で覆ったものを電極として使用することもできる。この粉末状のダイヤモンド電極を使用する場合は、例えば、粉末状ダイヤモンド電極を電解液に分散させ、これを流動させて流動床を構成し、この流動床を陽極として作用させればよい。
さらに、上記の基板を多孔質体としたもの、あるいは合成樹脂等からなる多孔質体に、導電性ダイヤモンド粉末を担持させて、高表面積を有する電極としたものを使用することもでき、この高表面積を有する電極で固定床を構成し、この固定床を陽極として作用させればよい。ダイヤモンド電極としては、結晶質である必要はなく、非晶質のものであってもよい。
なお、第一の処理方法では、陰極にも以上のようなダイヤモンド電極を用いることもでき、この場合は、陰・陽極を一定の周期で転極しながら、電気分解処理を行うようにしてもい。
上記のようなダイヤモンド電極は、他の電極材料に比して、電位窓が極めて広く、上記した条件において、水の電気分解による水素や酸素の発生を抑えながら、目的の有機化合物のみを効率的に分解処理することができる。
なお、電解反応槽内における液温度は、特に限定しないが、低温すぎると、有機化合物の電気分解が良好に進行せず、逆に高温すぎると、排水と電極表面との接触を阻害するガス成分の生成が多くなるため、第一の処理方法では、10〜95℃程度とすることが望ましい。
この第一の処理方法では、工場排水等中の有機化合物を、電流効率が良好であるため接触面積が少なくて済み使用装置を小型化できるのみならず、化学的安定性にも優れるため酸やアルカリによる腐食の懸念のないダイヤモンド電極を用い、かつ上記した電流密度と通液線速度との関係を満たすることで、極めて効果的に電気分解処理することができる。
この結果として、工場排水等を、コンパクトな装置で、かつ実用的規模で、電気化学的に処理し、該排水中の有機化合物を、有害で悪臭を放つ副生成物を生じることなく、二酸化炭素や水等の無害な無機化合物にまで、極めて容易に分解することができる。
また、本発明の第一の処理方法では、有機化合物を含む排水を、ダイヤモンド電極を用い、上記の条件て電気分解処理するに際して、有機化合物の電気分解で生成するガス成分を分離除去しながら、電気分解処理することもできる。
ガス成分の分離除去は、どのような方法によってもよく、例えば、通常の気液分離装置をそのまま使用して行う方法であってもよいし、あるいは上方に気相部(空間部)を備え頂部にガス抜き部(ガス抜き管、ガス抜き口等)を備えた電解反応槽を使用する等の方法で行うことができる。
すなわち、水中の気泡は、容易に浮上して気相に移行するため、電気分解処理で生成する炭酸ガスや窒素ガス等のガス成分は、上方に気相部を形成して下方の液相部と容易に分離し、また酸素や水素は、上記の電流密度と通液線速度の条件を満たす限りその発生は抑制されるが、万一発生したとしても、炭酸ガス等と共に浮上して気相部に移行したり、あるいは液流に同伴されて反応槽外に抜き出されるため、反応槽内に滞留して電流効率の悪化を引き起こすようなことはなく、電気分解反応を進行させることができる。
このように、上記のようなガス抜き部や気相部を備えた電解反応槽等を用いることでも、電気分解処理で生成するガス成分を、水と容易に分離することができる。
また、第一の処理方法では、電解反応槽を複数使用して、有機化合物を含む排水を電気分解処理することもできる。
このときの電解反応槽の配置態様は、直列配置、並列配置、これらの組み合わせ配置であってよく、有機化合物を確実に電気分解処理するには直列配置が適しており、また大容量の排水を一度に処理する場合であって、しかも有機化合物を確実に電気分解処理するには、並列配置と直列配置の組み合わせが適している。
例えば、図2に示すように、3つの電解反応槽1,2,3を直列に配置し、この直列配置をA列,B列,C列の3つの列に配置し、1つの排水貯槽4からA〜C各列の第一段目の電解反応槽1,1,1に送液し、第二段目、第三段目の電解反応槽2,2,2,3,3,3と順次送液して電気分解処理し、1つの処理済水槽5に集液するような態様が挙げられる。
この態様において、各電解反応槽1,1,1のそれぞれが上記の電流密度、通液線速度の条件を満たしていることが重要である。
さらに、上記のガス成分の分離と、複数の電解反応槽での電気分解とを組み合わせて、有機化合物含有排水の電気分解処理を行うこともできる。
このとき、複数の電解反応槽のうちの少なくとも1の電解反応槽の出口水、あるいは最終段の電解反応槽を除く各電解反応槽出口水を、上記の気液分離装置や上方に気相部を備え頂部にガス抜き部を備えた受液槽を使用する等して気液分離した後、後続の電解反応槽に通液処理したり、あるいは少なくとも1の電解反応槽や最終段の電解反応槽を除く各電解反応槽を上記のような上方に気相部を備え頂部にガス抜き部を備えたものとして、電解反応槽自体で気液分離を行う等の手法が採用できる。
例えば、図3に示すように、2つの電解反応槽1,2を直列に配置し、第一段目の電解反応槽1と第二段目の電解反応槽2の間に、上方に気相部を備え頂部にガス抜き部6′を備えた受液槽6を配置して、排水貯槽4内の排水を第一段目の電解反応槽1に導き、第一段目の電気分解処理を行った後、受液槽6に導入し、第一段目の電気分解反応で生成したガス成分をここで分離してガス抜き部6′から系外に抜き出す。
ガス成分が分離された液相部は、第二段目の電解反応槽2に導かれ、第二段目の電気分解処理が行われた後、処理済水槽5に貯留される。
この態様においても、第一段目,第二段目の電解反応槽1,2のそれぞれが上記の電流密度、通液線速度の条件を満たしていることが重要である。
あるいは、図4に示すように、第一段目の電解反応槽11自体を、上方に気相部を備え頂部にガス抜き部11′を備えたものとし、排水貯槽4内の排水を第一段目の電解反応槽11に導き、第一段目の電気分解反応で生成するガス成分を分離除去しつつ、第一段目の電気分解処理を行った後、第二段目の電解反応槽2に導き、第二段目の電気分解処理を行った後、処理済水槽5に貯留するようにしてもよい。
第二の有機化合物含有排水の処理方法
次に、本発明の第二の有機化合物含有排水の処理方法について説明する。この第二の処理方法は、少なくとも陽極にダイヤモンド電極を用い、かつ前記排水のpHをアルカリ性に調整することを特徴とする。ここで、処理対象となる有機化合物の種類及び濃度は、特に制限されず、前述した第一の処理方法と同じである。また、その分解機構についても前述した第一の処理方法と同じである。
第二の処理方法では、処理排水のpH値がアルカリ性であれば特に制限はないが、pH8〜14が好ましく、特にpH9〜13が好ましい。
pH8未満では、ヒドロキシラジカルの発生効果が少なくなり、当該ラジカルによる有機化合物の酸化分解効率が増大せず、pH14でこの効果は飽和する。
排水のpHの調整は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の添加、あるいは高pH排水の添加等により行うことができる。
アルカリ金属やアルカリ土類金属の添加は、通常、これら金属の水酸化物や炭酸塩等の化合物を、そのまま添加したり、あるいは予め水溶液にしておいて添加したりする等の手法が採用できる。
添加する箇所は、電解反応槽での電気分解処理を、上記のpH条件で行うことが重要であるため、電解反応槽の入口の上流側であればどこでもよく、例えば、電解反応槽の直前、排水の貯留設備等がある場合にはその貯留タンク、あるいは排水を循環処理するような場合には電解反応槽の出口部であってもよい。
どこで添加するにしても、電解反応槽内のpHが上記条件となっているか否かを測定しつつ行うことが好ましい。
上記のpHの排水を電気化学的に処理する際に使用するダイヤモンド電極は、前述した第一の処理方法と同じものを用いることができる。また、同様に陰極にもダイヤモンド電極を用い、陰・陽極を一定の周期で転極しながら、電気分解処理を行うようにしてもい。
このとき、ダイヤモンド電極表面の電流密度は0.001〜10A/cm2とし、通液線速度は10〜10,000m/hrとして、有機化合物を含む排水をダイヤモンド電極面と平行方向に通液して接触処理することが、高効率で、有機化合物を電気分解する上で好ましい。
電流密度が0.001A/cm2未満であると、ダイヤモンド電極の電流効率は良好であるとは言え、工場等の大量排水を所定の有機化合物のレベルまで実用的規模で電気分解処理するためには、ある程度大きな電極面積を必要とし、電解反応槽を大容量にしなければならず、装置コストやランニングコストが膨大となる。
逆に、10A/cm2を超えると、極間電圧が増大し、熱エネルギーに消費されてしまうため、不経済となるのみならず、ダイヤモンド電極の耐久性の点からも好ましくない。
また、排水の通液速度を線速度(LV)で10〜10,000m/hrとするのは、通液速度が10,000m/hrより速いと、排水と電極表面との接触時間を十分に取ることができず、有機化合物の電気分解を十分に進行させることができなくなり、通液速度が10m/hrより遅いと、十分な効果が発揮できず、排水の処理効率が極端に低下してしまう。
特に、前述した第一の処理方法と同じ理由により、電流密度を0.5〜10A/cm2とし、通液線速度を200〜10,000m/hrとすることが好ましく、これらに加えて前記式1、式2の関係式を充足することが好ましい。
なお、電解反応槽内における液温度は、特に限定しないが、低温すぎると、有機化合物の電気分解が良好に進行せず、逆に高温すぎると、排水と電極表面との接触を阻害するガス成分の生成が多くなるため、第二の処理方法では10〜95℃程度とすることが望ましい。
このような本発明の第二の処理方法では、工場排水等中の有機化合物を、電流効率が良好であるため接触面積が少なくて済み使用装置を小型化できるのみならず、化学的安定性にも優れるため酸やアルカリによる腐食の懸念のない、ダイヤモンド電極を用い、かつ上記排水中のpHをアルカリ性にすることで、極めて効果的に電気分解処理することができる。
この結果として、工場排水等を、コンパクトな装置で、かつ実用的規模で、電気化学的に処理し、該排水中の有機化合物を、有害で悪臭を放つ副生成物を生じることなく、二酸化炭素や水等の無害な無機化合物にまで、極めて容易に分解することができる。
第三の有機化合物含有排水の処理方法
次に本発明の第三の有機化合物含有排水の処理方法及び装置について説明する。この第三の処理方法は、処理対象となる有機化合物含有排水が有機性懸濁物を含有する排水であることを特徴とするものであるが、その分解機構については前述した第一の処理方法と同じである。また、本発明の有機性懸濁物を含有する有機化合物含有排水を処理する装置は、有機性懸濁物を電気分解処理するためのダイヤモンド電極が処理装置に設けられているものであり、陽極にダイヤモンド電極が用いられているか、あるいは陽極および陰極の両方にダイヤモンド電極を用い転極可能としたものである。
このような有機化合物含有排水処理装置及びこれを用いた処理方法においては、排水中の有機性懸濁物を濾過、凝集沈殿などの前処理によって除去する必要なく、有機性懸濁物を含有する排水が処理装置に対して直接通液することができ、排水中の有機性懸濁物が溶解性有機物と共にダイヤモンド電極によって同時に電気化学的に酸化分解されて除去される。
このような第三の処理方法及びこれにかかる装置に用いられるダイヤモンド電極としては、前述した第一の処理方法と同じものを用いることができる。
このダイヤモンド電極は、従来の白金などの金属電極に比べて電位窓が極めて広く、水の電気分解による水素発生や酸素発生を抑制しつつ、オゾン、ヒドロキシラジカル等の強力な酸化剤を生成しながら酸化分解すべき有機有害物質のみを効率的に酸化分解処理することができる。つまり、ダイヤモンド電極によって有機性懸濁物含有水を電気分解処理すると、排水中の有機性懸濁物が溶解性有機物に分解され、更に電気分解処理を続けることにより、溶解性有機物が分解除去される。すなわち、排水中の有機性懸濁物は、従来のように前処理により除去されて汚泥として排出されるのではなく、排水中の溶解性有機物と共に同時に分解除去される。
このとき、ダイヤモンド電極表面の電流密度は0.001〜10A/cm2とし、通液線速度は10〜10,000m/hrとして、有機性懸濁物を含む排水をダイヤモンド電極面と平行方向に通液して接触処理することが、高効率で、有機化合物を電気分解する上で好ましい。ここで、電流密度及び通液線速度の範囲については、前述した第二の処理方法と同じ理由である。
特に、前述した第一の処理方法と同じ理由により、電流密度を0.5〜10A/cm2とし、通液線速度を200〜10,000m/hrとすることが好ましく、これらに加えて前記式1、式2の関係式を充足することが好ましい。
なお、電解反応槽内における液温度は、特に限定しないが、低温すぎると、有機化合物の電気分解が良好に進行せず、逆に高温すぎると、排水と電極表面との接触を阻害するガス成分の生成が多くなるため、第三の処理方法では、10〜95℃程度とすることが望ましい。
本発明の第三の処理方法では、有機性懸濁物を含有する排水中の全有機炭素濃度(TOC)および化学的酸素消費量(COD)を高効率で除去することができ、従来の白金系電極を用いた電気分解処理に比べ、電解効率を向上させることができ、必要な電極面積を小さくすることができ、電解反応装置全体を小型化することができ、経済的メリットが大きい。特に陽極および陰極の両方にダイヤモンド電極を用いて転極を行うことにより、有機性懸濁物および溶解性有機物の高効率除去を持続することができる。
第四の有機化合物含有排水の処理方法
さらに、本発明の第四の有機化合物含有排水の処理方法について説明する。この第四の処理方法は、処理対象となる有機化合物含有排水が有機窒素化合物を含有する排水であり、陰極と陽極にダイヤモンド電極を用いた1段目の電気分解処理を行った後、陰極にダイヤモンド電極を用い、陽極に金属電極を用いた2段目の電気分解処理を行うことを特徴とする。
このとき、1段目の電気分解処理を行う際に、有機窒素化合物含有排水に硫酸イオンを添加してもよいし、これに代えて、あるいはこれと共に、2段目の電気分解処理を行う際に、1段目の電気分解処理後の排水に塩化物イオンを添加してもよい。
第四の処理方法における処理対象としての有機窒素化合物の種類は、窒素を含有する有機化合物であれば特に制限されず、電気分解処理で炭酸ガス、窒素、水等の無機化合物にまで分解するものであれば、どのようなものであってもよい。また、このような有機窒素化合物の濃度も、特に制限されず、どのような濃度であってもよく、場合によっては、本処理方法で処理するに先立ち、濃縮しておいてもよい。なお、本処理方法における2段階処理における電解効率等の面からは、有機窒素化合物の濃度は、0.5〜20g/リットル(以下、リットルを「L」、ミリリットルを「mL」と記す)程度が好ましい。
第四の処理方法では、1段目において主として全有機炭素(TOC)を低減し、2段目において全有機窒素(T−N)を低減する。
この1段目の電気分解処理は、陰・陽両極にダイヤモンド電極を使用して行う。
前記のように、陰極と陽極にダイヤモンド電極を使用する場合、有機窒素化合物は、陽極でNOxや硝酸イオンに酸化され、陰極でアンモニアに還元され、このアンモニアは、陽極で再び硝酸イオンに酸化されると言うように、両極間で酸化と還元を繰り返すが、本処理方法では、陰極で生成したアンモニアが陽極で再酸化される前に、2段目の電気分解処理に移送させることで、陽極での再酸化を防いでいる。
このとき、硫酸イオン(SO4 −2)を含む電解質物質が存在すると、ダイヤモンド電極の陽極側で、過硫酸(S2O8 −2)の生成やオゾンの生成が進行し、これらによる酸化分解効果が相乗されて、より強力な酸化分解効果を得ることができる。
この硫酸イオンを含む電解質物質としては、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属等の硫酸塩であってもよいし、その他の硫酸イオンを生じる化合物があってもよく、これらは単独で用いてもよいし、適宜の組み合わせによる2種以上を混合して用いることもできる。
これらの硫酸イオンを含む電解質物質は、第四の処理方法の処理対象である有機窒素化合物含有排水中に存在しているものであってもよいし、外部から導入するものであってもよい。
1段目の電気分解処理時における硫酸イオン濃度は、特に制限しないが、低すぎれば、硫酸イオンによる上記の作用・効果が発現せず、逆に高すぎても、硫酸イオンによる上記の作用・効果が飽和するばかりか、硫酸イオンを含む電解質物質自体の処理も必要となって処理効率が低下するため、第四の処理方法では、1〜100g/L程度とすることが適している。
また1段目の電気分解処理は、電流密度0.1〜10A/cm2、通液線速度200〜10,000m/hrで行うことが好ましい。電流密度が0.1A/cm2未満であると、大量の有機窒素化合物含有排水を所定の該化合物レベルまで電気分解処理するのに、電極面積を大きくしなければならず、大容量の電解反応層を必要とし、10A/cm2を超えると、極間電圧が増大し、熱エネルギーに消費されるのみならず、ダイヤモンド電極の耐久性の点からも好ましくない。
通液線速度は、電流密度の増大に伴って大きくすることが好ましく、上記の電流密度の範囲内において、TOC除去率を、3時間以内で、70%以上とするためと、電解反応によって生成するガス成分を液流に伴わせて効率良く除去するためには、200m/hr以上とすることが重要であり、10,000m/hrまでの範囲で処理するのが望ましい。
特に、前述した第一の処理方法と同じ理由により、電流密度を0.5〜10A/cm2とし、通液線速度を200〜10,000m/hrとすることが好ましく、これらに加えて前記式1、式2の関係式を充足することが好ましい。
なお、1段目の電気分解処理の際の液温度は、特に限定しないが、低温すぎると、有機窒素化合物の電解反応が良好に進行せず、逆に高温すぎると、排水と電極表面との接触を阻害するガス成分の生成が多くなるため、第四の処理方法では、10〜95℃程度とすることが望ましい。
以上のような1段目の電気分解処理で、主としてTOCが低減された排水は、2段目の電気分解処理に付される。
この2段目の電気分解処理は、陰極にダイヤモンド電極を使用し、陽極に金属電極を使用して行う。
この金属電極としては、白金電極、パラジウム電極、ロジウム電極、金電極、銀電極、イリジウム電極、これらの合金製の電極等を用いることができる。
また、これらの金属(合金)電極上にlrO2を分散担持した電極を用いることもできる。
2段目の電気分解処理は、1段目でTOCが低減された排水を、上記のような金属電極を使用した陽極と、ダイヤモンド電極を使用した陰極とで電気分解処理し、該排水のT−Nを低減させる。
このとき、排水中に塩化物イオン(Cl−1,ClO−1等)が存在すると、陽極で次亜塩素酸イオンが生成するが、この次亜塩素酸イオンは、硝酸イオンがダイヤモンド陰極で還元されて生じるアンモニアと反応して窒素ガスを生成し、系外に抜けるため、高い処理効率でT−Nの低減を達成することができる。
なお、ダイヤモンド電極を陽極に使用すると、酸化力が強すぎて、塩化物イオンが過塩素酸まで酸化してしまうため、このような反応は生成しない。
この塩化物イオンを含む電解質物質としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム等が好ましく使用でき、これらは単独で用いてもよいし、適宜の組み合わせによる2種以上を混合して用いることもできる。
これらの塩化物イオンを含む電解質物質は、本処理方法の処理対象である有機窒素化合物含有排水中に存在しているものであってもよいし、外部から導入するものであってもよい。
2段目の電気分解処理時における塩化物イオン濃度は、特に制限しないが、第四の処理方法は500〜12,000mg/L程度が好ましい。
塩化物イオンは上記のように電流効率を高める作用をなすものであるため、陰極に電流効率の高いダイヤモンド電極を用いる本処理方法では、あまり高濃度でなくてもよく、陰・陽両極に白金電極を用いる従来の電気分解処理では効率が悪くなる濃度である12,000mg/L以下でも、良好な電流効率を得ることができる一方で、500mg/L未満では、排水中のT−Nを電気分解処理で低減するのに十分な電流効率を得ることができない場合もある。
2段目の電気分解処理は、電流密度0.1〜10A/cm2、通液線速度200〜10,000m/hrで行うことが好ましい。
電流密度が0.1A/cm2未満であると、T−Nを所定のレベルまで電気分解処理するのに、電極面積を大きくしなければならず、大容量の電解反応層を必要とし、10A/cm2を超えると、極間電圧が増大し、熱エネルギーに消費されるのみならず、陰極のダイヤモンド電極や陽極の白金電極等の耐久性の点からも好ましくない。
通液線速度は、電流密度の増大に伴って大きくすることが好ましく、上記の電流密度の範囲内において、T−N除去率を、3時間以内で、70%以上とするためと、電解反応によって生成するガス成分を液流に伴わせて効率良く除去するためには、200m/hr以上とすることが重要であり、10,000m/hrまでの範囲で処理するのが望ましい。
特に、前述した第一の処理方法と同じ理由により、電流密度を0.5〜10A/cm2とし、通液線速度を200〜10,000m/hrとすることが好ましく、これらに加えて前記式1、式2の関係式を充足することが好ましい。
2段目の電気分解処理の際の液温度も、特に限定しないが、低温すぎると、T−Nの低減反応が良好に進行せず、逆に高温すぎると、排水と電極表面との接触を阻害するガス成分の生成が多くなるため、上記の1段目の電気分解処理の際と同じ10〜95℃程度とすることが望ましい。
以上の1段目,2段目の電気分解処理で使用するダイヤモンド電極としては、前述した第一の処理方法で用いたものと同じものを用いることができる。
この第四の処理方法では、上述した1段目、2段目の電気分解処理は、図5に示すように、1段目の電解反応槽1と2段目の電解反応槽2を直列配置して連続処理してもよいし、図6に示すように、1段目の電解反応槽1と2段目の電解反応槽2の間に貯槽3を設け、1段目の電気分解処理後の排水をこの貯槽3に一旦貯留しておき、この貯槽3内の液を2段目の電気分解処理に付すと言うバッチ方式での処理としてもよい。
なお、図5,図6において、4は処理対象である排水の貯槽、5は2段目の電気分解処理後の水を貯留するための槽である。
さらに、本処理方法では、図5,図6に示す1段目,2段目の電解反応槽1,2のそれぞれを複数使用することもでき、このときの各電解反応槽の配置態様は、直列配置、並列配置、これらの組み合わせ配置であってよく、有機窒素化合物含有排水を確実に電気分解処理するには直列配置が適しており、また大容量の排水を一度に処理する場合であって、しかも有機窒素化合物含有排水を確実に電気分解処理するには、並列配置と直列配置の組み合わせが適している。
例えば、図7に示すように、1段目の電気分解処理を行うための3つの電解反応槽11,12,13を直列に配置し、この直列配置をA列,B列,C列の3つの列に並列に配置し、1つの排水貯槽4からA〜C各列の第一の電解反応槽11,11,11に送液し、第二、第三の電解反応槽12,12,12,13,13,13と順次送液して1段目の電気分解処理を行い、1つの貯槽3に集液する。
この後、上記と同じ態様で直列配置(21,22,23)と、並列配置(A,B,C列)をした2段目の電気分解処理を行うため電解反応槽の、A〜C各列の第一の電解反応槽21,21,21に、上記の貯槽3から送液し、第二、第三の電解反応槽12,22,22,23,23,23と順次送液して2段目の電気分解処理を行い、1つの槽5に集液する。
この態様において、各電解反応槽11,12,13のそれぞれが上記の1段目の電気分解処理の条件を満たし、また電解反応槽21,22,23のそれぞれが上記の1段目の電気分解処理の条件を満たしていることが好適である。
第四の処理方法では、工場排水等中の有機窒素化合物含有排水を、電流効率が良好であるため接触面積が少なくて済み使用装置を小型化できるのみならず、化学的安定性にも優れるため酸やアルカリによる腐食の懸念のない、ダイヤモンド電極を陰・陽両極に用いた1段目の電気分解処理に付すことで、極めて効率的にTOCを低減することができる。
この腐食性のTOCが低減された排水を、陽極には金属電極を用い、陰極のみにダイヤモンド電極を用いた2段目の電気分解処理に付すことで、T−Nを効率的に低減することができる。
この結果として、工場排水等を、コンパクトな装置で、しかも装置コストを低額に抑え、かつ実用的規模で、電気化学的に処理し、該排水中の有機窒素化合物を、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無害な無機化合物にまで、極めて容易に分解することができる。
実施例
第一の処理方法
実施例1
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶ダイヤモンド電極板(5×5×0.05cm)2枚を陰・陽両極にそれぞれ用い、極間距離を1cmに設定して、電解反応槽を構成した。
一方、有機化合物としてジメチルスルホキシド(DMSO)を含む排水(TOC:710mg/L)1.5Lを準備し、この排水に硫酸ナトリウム14,200mg/Lを添加し、貯槽に貯留した。
上記ダイヤモンド電極への投入電気量を電流密度が1A/cm2となるように設定し、この電解反応槽に、上記貯槽内の排水を、送液ポンプの吐出量を通液線速度が1500m/hrとなるように調整して導入し、当該電解反応槽の出口水を取り出し、上記貯槽に戻す操作を行って、循環処理した。
このとき、貯槽内は、スターラにより攪拌した。
上記のようにして循環処理を3時間継続して行った後、電解反応槽出口水の水を採取し、全有機体炭素(TOC)の分析を行った。
この結果は、表1に示す通りであり、TOCが効率良く分解除去できることが確認できた。
比較例1
通液線速度を100m/hrにする以外は、実施例1と同様にして3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、表2に示す通りであり、TOCの分解除去効率は50%程度に止まっているばかりか、電気分解処理後にはダイヤモンド膜が剥離している箇所が観察された。
実施例2
有機化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドラジドを含む排水(TOC:770mg/L)3Lを用い、電流密度を2A/cm2、通液線速度を2600m/hrにし、実施例1と同様にして3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、表3に示す通りであり、実施例1と同様に、TOCが効率良く分解除去できることが確認できた。
比較例2
通液線速度を500m/hrにする以外は、実施例2と同様にして3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、表4に示す通りであり、TOCの分解除去効率は50%程度に止まっているばかりか、電気分解処理後にはダイヤモンド膜が剥離している箇所が観察された。
第二の処理方法
実施例3
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶ダイヤモンド電極板(5×5×0.05cm)2枚を陰・陽両極にそれぞれ用い、極間距離を1cmに設定して、電解反応槽を構成した。
一方、有機化合物としてジメチルスルホキシド(DMSO)を含む排水(DMSO:2300mg/L,TOC:710mg/L)300mLを準備し、この排水に水酸化ナトリウム4,000mg/Lを添加してpHを12に調整して、貯槽に貯留した。
上記ダイヤモンド電極への投入電気量を電流密度が0.2A/cm2(2000A/m2)となるように設定し、この電解反応槽に、上記貯槽内の排水を、送液ポンプの吐出量を通液線速度が100m/hr(流速833mL/min)となるように調整して導入し、当該電解反応槽の出口水を取り出し、上記貯槽に戻す操作を行って、循環処理した。
このとき、貯槽内は、スターラにより攪拌した。
上記のようにして循環処理を3時間継続して行った後、電解反応槽出口水の水を採取し、全有機体炭素(TOC)の分析を行った。
この結果は、表5に示す通りであり、TOCが効率良く分解除去できることが確認できた。
比較例3
水酸化ナトリウムに代えて、塩化ナトリウム6,000mg/Lを添加し、pH調整は行わなかった(pH6.8)以外は、実施例3と同様にして3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、表6に示す通りであり、TOCの分解除去効果が著しく低下していることが確認された。
実施例4
有機化合物としてジオキサンを含む排水(ジオキサン:600mg/L,TOC:313mg/L)600mLを用いる以外は、実施例3と同様にして3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、表7に示す通りであり、実施例3と同様に、TOCが効率良く分解除去できることが確認できた。
比較例4
水酸化ナトリウムに代えて、塩化ナトリウム6,000mg/Lを添加し、pH調整は行わなかった(pH6.7)以外は、実施例4と同様にして3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、表8に示す通りであり、TOCの分解除去効果が著しく低下していることが確認された。
実施例5
実施例3で用いたダイヤモンド電極より寸法の小さいダイヤモンド電極(2×2.5×0.05cm)2枚を陰・陽両極にそれぞれ用い、極間距離を1cmに設定して、電解反応槽を構成した。
電流密度を1A/cm2、(10,000A/m2)、通液線速度を1,000m/hr(流速3300mL/min)とする以外は、実施例3と同様にして3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、表9に示す通りであり、TOCの分解除去効果が実施例3より良好であることが確認され、電解反応槽をよりコンパクト化できることが確認された。
実施例6
実施例5と同じ電解反応槽を構成し、実施例5と同じ電流密度および通液線速度とする以外は、実施例4と同様にして3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、表10に示す通りであり、TOCの分解除去効果が実施例4より良好であることが確認され、電解反応槽をよりコンパクト化できることが確認された。
第三の処理方法
実施例7
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶導電性ダイヤモンド板(5cm×5cm×0.05cm)2枚を電極に用い、極間距離1cmに設定して電解反応槽とした。電解質として硫酸ナトリウムを14,000mg/L添加した有機性懸濁物(SS)含有排水(SS=720mg/L、TOC=1894mg/L、CODcr=8240mg/L)500mLを電解貯槽に入れて、スターラで攪拌した状態で送液ポンプを用いて、電解反応槽に500ml/minの流速で循環処理した(通液線速度60m/h)。電解反応槽の投入電気量は電流密度が0.1A/cm2(1000A/m2)となるように設定した。電気分解処理を6時間継続して、電解反応槽出口水の水を採取してTOC、SS、CODcrおよび濁度の分析を行ったところ表11の結果を得た。第三の処理方法によって、有機性懸濁物と共にTOCとCODcrを効率良く除去できることが確認できた。
比較例5
実施例7で用いた導電性ダイヤモンド板の代わりに白金めっきしたチタン板(5cm×5cm×0.3cm)2枚を電極とし、他は実施例7と同じ条件で電気分解処理を行った。電解は実施例7と同様に6時間継続したが、表12の分析結果に示すように、電極上へのSSの付着が起こるばかりか、TOCおよびCODcrの低減効果もないことがわかった。
実施例8
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶導電性ダイヤモンド板(5cm×5cm×0.05cm)2枚を電極に用い、極間距離5mmに設定して電解反応槽とした。電解質として硫酸ナトリウムを14,000mg/L添加した有機性懸濁物(SS)含有排水(SS=720mg/L、TOC=1894mg/L、CODcr=8240mg/L)500mLを電解貯槽に入れて、スターラで攪拌した状態で送液ポンプを用いて、電解反応槽に3L/minの流速で循環処理した(通液線速度720m/h)。電解反応槽の投入電気量は電流密度が0.1A/cm2(1000A/m2)となるように設定した。電気分解処理を5時間継続して、電解反応槽出口水の水を採取してTOC、SS、CODcrおよび濁度の分析を行ったところ表13の結果を得た。この実施例8から通液線速度を実施例7より大きくとることで、実施例7より短時間で処理を終えることができることが確認できた。
実施例9
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した円板状の積層状多結晶導電性ダイヤモンド板(直径10cm×0.05cm)2枚を電極に用い、極間距離5mmに設定して電解反応槽とした。電解質として硫酸ナトリウムを14,000mg/Lを添加した有機性懸濁物(SS)含有排水(SS=120mg/L、TOC=950mg/L、CODcr=3240mg/L)6Lを電解貯槽に入れて、スターラで攪拌した状態で送液ポンプを用いて、電解反応槽に5L/minの流速で循環処理した(通液線速度600m/h)。電解反応槽の投入電気量は電流密度が0.5A/cm2(5000A/m2)となるように設定した。電気分解処理を6時間継続して、電解反応槽出口水の水を採取してTOC、SS、CODcrおよび濁度の分析を行ったところ表14の結果を得た。
比較例6
実施例9で用いた導電性ダイヤモンド板の代わりに白金めっきした円板状のチタン板(直径10cm×0.3cm)2枚を電極とした以外は、実施例9と同条件で電気分解処理を行った。電解は実施例9と同様に6時間継続したが、表15の分析結果に示すように、電極上へのSSの付着がおこるばかりか、TOCおよびCODcrの低減効果はないことがわかった。
実施例10
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した円板状の積層状多結晶導電性ダイヤモンド板(直径10cm×0.05cm)2枚を電極に用い、極間距離5mmに設定して電解反応槽とした。電解質として硫酸ナトリウムを14,000mg/Lを添加した有機性懸濁物(SS)含有排水(SS=120mg/L、TOC=950mg/L、CODcr=3240mg/L)6Lを電解貯槽に入れて、スターラで攪拌した状態で送液ポンプを用いて、電解反応槽に10L/minの流速で循環処理した(通液線速度1,200m/h)。電解反応槽の投入電気量は電流密度が0.5A/cm2(5000A/m2)となるように設定した。電気分解処理を6時間継続して、電解反応槽出口水の水を採取してTOC、SS、CODcrおよび濁度の分析を行ったところ表16の結果を得た。通液線速度を大きくとることで、電気分解処理効果は、実施例9よりも改善されていることがわかる。
第四の処理方法
実施例11
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶ダイヤモンド電極板(5×5×0.05cm)2枚を陰・陽両極にそれぞれ用い、極間距離を1cmに設定して、1段目の電気分解処理を行う電解反応槽を構成した。
一方、有機窒素化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含有する排水(TOC:770mg/L,T−N:230mg/L)300mLに、硫酸ナトリウム14,200mg/Lを添加して、貯槽に貯留した。
上記ダイヤモンド電極への投入電気量を、電流密度が0.2A/cm2(2000A/m2)となるように設定し、この電解反応槽内に、上記貯槽内をスターラで攪拌しながら、該貯槽内の排水を、送液ポンプにより通液線速度200m/hで導入し、電解反応槽のオーバーフロー分を貯槽に戻す操作を行って、循環処理した。
上記のようにして循環処理を3時間継続して行った後、電解反応槽出口水を探取し、全有機体炭素(TOC)と全有機体窒素(T−N)の分析を行った。
この結果は、表17に示す通りであり、TOCが効率良く分解除去できることが確認できた。
次に、上記の1段目の電解反応槽で使用したものと同様のダイヤモンド電極を陰極に用い、陽極に、板状体のチタン表面に白金をメッキした電極(5×5×0.3cm)(以下、チタン−白金電極と記す)を用いた2段目の電気分解処理を行う電解反応槽を構成し、この電解反応槽で、上記の1段目の電気分解処理で3時間の継続処理を行った後の排水について、次の要領で2段目の電気分解処理を行った。
上記の1段目の電気分解処理を行った後の排水に、6,000mg/Lの塩化ナトリウムを添加し、陰・陽両極への投入電気量は電流密度が0.2A/cm2(2000A/m2)となるように設定した以外は、上記の1段目の電気分解処理と同様にして循環処理を1時間継続して行った。
電解反応槽出口水の水を採取し、全有機体窒素(T−N)の分析を行った。
この結果は、表18に示す通りであり、1段目の電気分解処理で十分に分解除去できなかったT−Nが効率良く分解除去できることが確認できた。
比較例7
1段目の電気分解処理のみを4時間継続して行う以外は、実施例11と同様にして循環処理を行った。
この結果は、表19に示す通りであり、TOCは実施例11と同様に分解除去できるものの、T−Nの除去率は40%程度であった。
実施例12
有機窒素化合物としてジメチルイミダゾリジノンを含む排水(TOC:526mg/L、T−N:246mg/L)300mLを用いる以外は、実施例11の1段目の電気分解処理と同様にして3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、表20に示す通りであり、実施例11の1段目の電気分解処理と同様に、TOCが効率良く分解除去できることが確認できた。
次に、上記の排水を実施例11の2段目の電気分解処理と同様にして、2段目の電気分解処理に付し、電解反応槽出口水を採取し、全有機体窒素(T−N)の分析を行った。
この結果は、表21に示す通りであり、1段目の電気分解処理で十分に分解除去できなかったT−Nが効率良く分解除去できることが確認できた。
比較例8
1段目の電気分解処理のみを4時間継続して行う以外は、実施例12と同様にして循環処理を行った。
この結果は、表22に示す通りであり、TOCは実施例12と同様に分解除去できるものの、T−Nの除去率は40%程度であった。
実施例13
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶ダイヤモンド電極板(直径10cm×厚さ0.05cm)2枚を陰極と陽極にそれぞれ用い、極間距離を5mmに設定して、1段目の電気分解処理を行う電気分解処理槽を構成した。
一方、有機窒素化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含有する排水(TOC:1000mg/L、T−N:290mg/L)4Lに、硫酸ナトリウム14,200mg/Lを添加して、貯槽にいれた。
上記ダイヤモンド電極への投入電気量を、電流密度が0.5A/cm2(5000A/m2)となるように設定して、この電解反応槽内に上記貯槽内の排水をスターラによって攪拌しながら、排水を送液ポンプによって通液線速度が2000m/hになるように導入して循環処理を行った。この循環処理を6時間継続して、電解反応槽出口水を採取して、全有機性炭素(TOC)および全窒素濃度(T−N)を測定した。この結果は、表23の通りであり、TOCが効率良く分解除去できることが確認できた。
次に、上記1段目の電解反応槽で使用したものと同様のダイヤモンド電極を陰極に用いて、陽極に白金メッキしたチタン板(直径10cm×0.05cm)を用いた2段目の電気分解処理を行う電解反応槽を構成し、この電解反応槽で上記1段目の排水について、さらに、次の要領で2段目の電気分解処理を行った。
1段目の電気分解処理を行った排水に6000mg/Lの塩化ナトリウムを添加し、投入電気量は電流密度が0.5A/cm2(5000A/m2)となるように設定した以外は、上記1段目の電気分解処理と同様に循環処理を2時間継続して行った。
電解反応槽出口の水を採取して、全窒素濃度(T−N)の分析を行った。この結果は表24に示す通りであり、1段目の電気分解処理で十分に除去できなかったT−Nが効率よく分解除去できることが確認できた。
産業上の利用可能性
本発明の第一及び第二の有機化合物含有排水の処理方法によれば、工場排水等中の有機化合物を、有害で悪臭等を放つ副生成物を生じることなく、二酸化炭素や水等の無害な無機化合物にまで、容易に分解することができる。また、電流効率が良好なダイヤモンド電極を用いるため、使用装置をコンパクト化でき、しかもダイヤモンド電極は、化学的安定性にも優れるため、電極の寿命が長期化し、工場排水等を、経済的に、かつ実用的規模で、電気分解処理することができる。
また、本発明の第三の有機化合物含有排水の処理方法及びこれに係る装置によれば、有機性懸濁物の処理コストを抑制しつつ、有機性懸濁物含有水を電気分解処理するときにエネルギ効率が大幅に低下し、装置の寿命が大幅に短くなってしまうのを抑制することができる。詳細には、排水に含まれる有機性懸濁物を予め除去する必要なく、排水に含まれる溶解性有機物を有機性懸濁物と共に酸化分解処理することにより、排水中の溶解性有機物および有機性懸濁物を同時に分解除去し、排水中の全有機炭素濃度(TOC)及び化学的酸素消費量(COD)を低減することができる。
さらに、本発明の第四の有機化合物含有排水の処理方法によれば、工場排水等中の有機窒素化合物を、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無害な無機化合物にまで、容易に分解することができる。また、有機窒素化合物を多量に含む排水を、化学的安定性にも優れ、かつ電流効率が良好なダイヤモンド電極を陰・陽両極に用いる1段目の電気分解処理で電気化学的に処理した後、陰極のみにダイヤモンド電極を用いる2段目の電気分解処理で電気化学的に処理するため、全体の使用装置をコンパクト化、かつ低廉化することができるのみならず、電極の寿命を長期化することもでき、工場排水等を、経済的に、かつ実用的規模で、電気分解処理することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第一の処理方法における排水の電気分解槽への通液線速度と、当該電解槽内のダイヤモンド電極の電流密度との関係を示すグラフである。
図2は、前記第一の処理方法を実施するのに適した装置構成例を説明するための図である。
図3は、前記第一の処理方法を実施するのに適した他の装置構成例を説明するための図である。
図4は、前記第一の処理方法を実施するのに適した更に他の装置構成例を説明するための図である。
図5は、本発明の第四の処理方法を実施するのに適した装置構成例を説明するための図である。
図6は、前記第四の処理方法を実施するのに適した他の装置構成例を説明するための図である。
図7は、前記第四の処理方法を実施するのに適したさらに他の装置構成例を説明するための図である。
図1〜図4において、1,2,3,11は電解反応槽、4は排水貯槽、5は処理済水貯槽、6は受液槽、6′,11′はガス抜き部であり、図5〜図7において、1,11,12,13は1段目の電気分解処理を行うための電解反応槽、2,21,22,23は2段目の電気分解処理を行うための電解反応槽、3は貯槽、4は処理対象排水の貯槽、5は処理済水貯槽である。
Claims (14)
- 有機化合物含有排水中の有機化合物を少なくとも陽極にダイヤモンド電極を用いて電気化学的に無害化する方法であって、
電流密度を0.5〜10A/cm2とし、かつ通液線速度を200〜10,000m/hrにすることを特徴とする有機化合物含有排水の処理方法。 - 有機化合物含有排水中の有機化合物を電気化学的に無害化する方法であって、少なくとも陽極にダイヤモンド電極を用い、かつ前記排水のpHをアルカリ性に調整することを特徴とする有機化合物含有排水の処理方法。
- 有機化合物として有機性懸濁物を含有する有機化合物含有排水中の有機化合物を電気化学的に無害化する方法であって、少なくとも陽極にダイヤモンド電極を用い、前記有機性懸濁物を電気分解処理することを特徴とする有機化合物含有排水の処理方法。
- 陽極および陰極の両方にダイヤモンド電極を用いて転極を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の有機化合物含有排水の処理方法。
- 有機化合物として有機窒素化合物を含有する有機化合物含有排水中の有機化合物を電気化学的に無害化する方法であって、陰極と陽極にダイヤモンド電極を用いた1段目の電気分解処理を行った後、陰極にダイヤモンド電極を用い、陽極に金属電極を用いた2段目の電気分解処理を行うことを特徴とする有機化合物含有排水の処理方法。
- 1段目の電気分解処理を行う際に、有機化合物含有排水に硫酸イオンを添加することを特徴とする請求項5記載の有機化合物含有排水の処理方法。
- 2段目の電気分解処理を行う際に、1段目の電気分解処理後の排水に塩化物イオンを添加することを特徴とする請求項5または6記載の有機化合物含有排水の処理方法。
- 前記電気分解処理におけるダイヤモンド電極表面の電流密度を0.001〜10A/cm2とし、通液線速度を10〜10,000m/hとしてダイヤモンド電極による電気分解処理を行うことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項記載の有機化合物含有排水の処理方法。
- 前記電気分解処理におけるダイヤモンド電極表面の電流密度を0.5〜10A/cm2とし、かつ通液線速度を200〜10,000m/hにすることを特徴とする2乃至8のいずれか1項記載の有機化合物含有排水の処理方法。
- 前記電気分解処理における通液線速度を、下式1の関係式を満たすように制御することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の有機化合物含有排水の処理方法。
式1:通液線速度(m/hr)≧400×(電流密度(A/cm2)−0.5)+200 - 前記電気分解処理における通液線速度を、下式2の関係式を満たすように制御することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか記載の有機化合物含有排水の処理方法。
式2:通液線速度(m/hr)≧1000×(電流密度(A/cm2)−0.5)+200 - 有機化合物として有機性懸濁物を含有する有機化合物含有排水中の該有機性懸濁物を電気分解処理するためのダイヤモンド電極を具備することを特徴とする有機化合物含有排水の処理装置。
- ダイヤモンド電極表面の電流密度を0.001〜10A/cm2とし、通液線速度を10〜10,000m/hとしてダイヤモンド電極による電気分解処理を行うことを特徴とする請求項12に記載の有機化合物含有排水の処理装置。
- 陽極および陰極の両方にダイヤモンド電極を用いて転極を行うことを特徴とする請求項12又は13に記載の有機化合物含有排水の処理装置。
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