明 細 書 有機化合物含有排水の処理方法および装置 技術分野
本発明は、 排水中の有機化合物を電気分解処理する方法に関し、 特に、 有害で 悪臭を放つ副生成物を発生させることなく、 有機化合物を二酸化炭素や水等の無 機化合物まで、 実用的規模で分解処理することができる方法に関する。 また、 本 発明は、 有機化合物である有機性懸濁物 (S S ) 含有排水中から有機性懸濁物を 予め除去する必要なく、 排水に含まれる溶解性有機物を有機性懸濁物と共に酸化 分解処理することにより、 排水中の全有機炭素濃度 (T O C) 及び化学的酸素消 費量 (C O D ) を低減することができる処理方法および装置に関する。 さらに、 本発明は、 有機化合物である有機窒素化合物を含有する排水中から、 該有機化合 物を窒素ガスや炭酸ガスあるいは水等の無害な無機化合物まで、 実用的規模で分 解処理することができる処理方法に関する。 技術背景
工場排水、 畜産排水、 生活排水、 その他各種の排水中には、 環境を汚染する可 能性のある物質として、 ジメチルスルホキシド、 脂肪族アルコール、 芳香族アル コールなどの有機化合物の他、 有機窒素化合物、 有機性懸濁物などが含まれてい る。
なかでも工場排水については、 上記の有機化合物を排出が許容されるレベルま で低減する必要がある。 特に、 有機化合物有機窒素化合物は、 水中に放出される と富栄養化の原因となリ、 大気中に放出されるとそれ自体有害であるばかリか、 光化学反応に関与して二次的複合汚染現象の一因となる。 この有機窒素化合物の 排出源は、 例えば、 家畜、 家禽、 魚類等の飼料製造、 食料品製造における原料と して使用する蛋白質等に由来するものや、 各種の化学品や薬剤等の製造工程から の製品漏洩分や副生成物あるいは原料等に由来するもの等がある。
また、 生物処理および物理化学処理においては、 処理すべき排水に有機性懸濁
物が含まれている場合、 処理装置に対して有機性懸濁物含有水を直接通液するこ とができない。 そのため、 生物処理または物理化学処理によって有機性懸濁物含 有水を処理する場合には、 有機性懸濁物成分を除去するために、 濾過、 凝集沈殿 等の前処理を行わなければならず、 濾過槽、 凝集沈殿槽などの大型の付帯設備を 設置するためのコストが嵩んでしまっていた。 更に、 濾過槽、 凝集沈殿槽などに よって除去した有機性懸濁物を産業廃棄物として処理するためのコス卜も嵩んで しまっていた。
この排水中の有機化合物の低減方法としては、 活性汚泥法等の生物分解処理方 法、 オゾン酸化による処理方法、 電気化学的な処理方法、 その他各種の処理方法 があるが、 電気化学的な処理方法は、 生物分解処理方法やオゾン酸化方法等に比 ベて、 操作性が容易であるのみならず、 使用装置をコンパクト化できたり、 処理 時間が短い等の利点がある。
このような観点から、 従来、 白金、 酸化鉛、 酸化すず等の様々な陽極材料を活 用した電気分解処理方法が開発されている。
し力、し、 工場排水は、 強い腐食性を有する化合物を含んでいる場合も多く、 上 記の白金や酸化鉛等の陽極材料は、 これら腐食性の化合物により、 容易に腐食さ れてしまう。
しかも、 白金電極の場合は、 電気分解処理時の電流密度を 0. 1 AZcm2程 度にすれば、 安定して電気分解処理が行えるが、 電気分解処理効率を高めるため に、 0. 2 AZ cm 2以上の高い電流密度にすると、 電極の劣化が大幅に進行し 、 電極の寿命が短くなる。
—方、 ダイヤモンドは、 化学的安定性が高く、 ホウ素や窒素をドープすること によって導電性を示すことから、 排水の電気分解処理用の電極材料として期待さ れている。
藤嶋らの論文 (E l e c t r o c h em i s t r y, Vo l . 67 (1 999 ) 389) によれば、 ホウ素をドープしたダイヤモンド電極は、 電位窓が極めて 広く、 腐食性の強い水溶液中においても安定して動作することが報告されている また、 藤山鳥らの論文 ( J 0 r n a I o f E l e c t r o a n a l y t i c
a I C h e m i s t r y , V o l . 3 9 6 ( 1 9 9 5 ) 2 3 3 ) において、 N O xがダイヤモンド電極で効率よくアンモニアに還元されることが報告されてい る。
さらに、 特開平 7— 2 9 9 4 6 7号公報には、 ホウ素をドープしたダイヤモン ド電極を陽極に用い、 有機化合物を酸化分解できることが開示されている。 さら にまた、 特開平 7— 2 4 1 5 4 9号公報には、 有機性懸濁物含有水を処理すると きに濾過により有機性懸濁物成分を除去することが開示されている。
し力、し、 上記のようなダイヤモンド電極を使用し、 電流密度を高くして、 工場 排水等を実用的規模で処理する技術に関しては、 未だ十分な報告はない。 一方、 通液線速度を高める場合には、 電解反応により酸素や水素が多量に発生し、 これ ら気体成分が電解反応槽内に滞留すると、 排水とダイヤモンド電極との接触を妨 害し、 電流効率を悪化させるばかりでなく、 局部的に電流密度か極端に大きくな つて、 基板上に形成されて電極を構成しているダイヤモンド薄膜が、 当該基板か ら剥離するという問題もあった。
また、 白金などの金属電極を利用した電気分解処理においては、 処理すべき排 水に有機性懸濁物が含まれている場合、 有機性懸濁物含有水を直接電気分解処理 すると、 白金などの金属電極に有機性懸濁物が付着してしまい、 その結果、 極間 電圧が上昇してエネルギ効率が大幅に低下すると共に、 溶解性有機物の除去効率 が低下してしまっていた。 更に、 転極を繰り返すことにより、 電極の活性低下が 急激に進んでしまい、 その結果、 装置の寿命が大幅に短くなるおそれがあった。 従って、 従来の有機性懸濁物含有水の電気分解処理においては、 まず、 排水中の 有機性懸濁物が濾過、 凝集沈殿などの前処理によって除去され、 次いで、 排水が 電気分解処理されていた。
さらに、 特開平 7— 2 9 9 4 6 7号公報に記載された処理装置および方法は、 例えばハロゲン化銀写真要素の処理に用いる数多くの異なる溶液に対して適用さ れているものの、 有機性懸濁物に対しては適用されていない。 詳細には、 特開平 7 - 2 9 9 4 6 7号公報には、 電気分解酸化を受けやすい溶質を含有する任意の 溶液に対してダイヤモンド電極を用いた電気分解処理を適用しうる点が開示され ている。 このように、 従来の電気分解酸化処理では、 懸濁物を予め除去し、 溶質
のみを処理するというのが常識であった。 当然ながら、 特開平 7— 2 9 9 4 6 7 号公報には、 排水中の有機性懸濁物を前処理によって除去することなく有機性懸 濁物含有水に対してダイヤモンド電極を用いた電気分解処理を直接適用する点に ついては開示も示唆もされていない。 従って、 従来においては、 特開平 7— 2 9 9 4 6 7号公報に記載された発明に基づいてダイヤモンド電極を用いた電気分解 処理を有機性懸濁物含有水に対して直接適用することは常識外の発想であり、 当 業者にとって容易ではなかった。 つまり、 従来においては、 有機性懸濁物を前処 理によつて排水から除去することなく有機性懸濁物含有水に対してダイャモンド 電極を用いた電気分解処理を直接適用することは容易ではなかった。
ところで、 陰極および陽極にダイヤモンド電極を使用した場合の電気分解処理 では、 有機窒素化合物は、 陽極で N O Xあるいは硝酸イオンに酸化され、 陰極で アンモニアに還元される。 このアンモニアは、 陽極で、 再び硝酸イオンに酸化さ れ、 最終的には、 窒素ガスとして系外に排出される。 このように、 陽極と陰極で 酸化と還元を繰り返すため、 処理効率が悪く、 有機窒素化合物含有排水の実用的 な処理技術の開発が急務となっている。
発明の目的
本発明は、 以上の諸点を踏まえ、 工場排水、 その他各種の排水中に含まれる有 機化合物を、 ダイヤモンド電極を使用して電気分解処理するに際し、 有害で悪臭 を放つ副生成物を生じることなく無害な無機化合物にまで分解でき、 しかも実用 的規模で実施することができる方法を提供することを目的とする。 また、 本発明 は、 排水に含まれる有機性懸濁物を予め除去する必要なく、 排水に含まれる溶解 性有機物を有機性懸濁物と共に酸化分解処理することにより、 排水中の溶解性有 機物および有機性懸濁物を同時に分解除去し、 排水中の全有機炭素濃度 (T O C ) 及び化学的酸素消費量 (C O D ) を低減することができる処理方法および装置 を提供することを目的とする。 さらに、 本発明は、 工場排水等に含まれる有機窒 素化合物を、 ダイヤモンド電極を使用して電気分解処理するに際し、 高い効率で 、 炭酸ガス、 窒素ガス、 水等の無害な無機化合物にまで分解除去することができ る処理方法を提供することを目的とする。
発明の概要
請求項 1に記載された本発明の第一の有機化合物含有排水の処理方法は、 有機 化合物含有排水中の有機化合物を少なくとも陽極にダイヤモンド電極を用いて電 気化学的に無害化する方法であって、 電流密度を 0. 5〜1 O A/ c m2とし、 かつ通液線速度を 2 0 0〜1 0, O O O mZ h rにする方法である。
また、 請求項 2に記載された本発明の第二の有機化合物含有排水の処理方法は 、 有機化合物含有排水中の有機化合物を電気化学的に無害化する方法であって、 少なくとも陽極にダイヤモンド電極を用い、 かつ前記排水の p Hをアル力リ性に 調整する方法である。
さらに、 請求項 3に記載された本発明の第三の有機化合物含有排水の処理方法 は、 有機化合物として有機性懸濁物を含有する有機化合物含有排水中の有機化合 物を電気化学的に無害化する方法であって、 少なくとも陽極にダイヤモンド電極 を用い、 前記有機性懸濁物を電気分解処理する方法である。
請求項 4に記載された本発明の処理方法は、 前記請求項 1乃至 3の各方法にお いて、 陽極および陰極の両方にダイヤモンド電極を用いて転極を行う方法である o
さらにまた、 請求項 5に記載された本発明の第四の有機化合物含有排水の処理 方法は、 有機化合物として有機窒素化合物を含有する有機化合物含有排水中の有 機化合物を電気化学的に無害化する方法であって、 陰極と陽極にダイヤモンド電 極を用いた 1段目の電気分解処理を行った後、 陰極にダイヤモンド電極を用い、 陽極に金属電極を用いた 2段目の電気分解処理を行う方法である。
請求項 6に記載された本発明の処理方法は、 前記請求項 5において、 1段目の 電気分解処理を行う際に、 有機化合物含有排水に硫酸イオンを添加する方法であ る。
請求項 7に記載された本発明の処理方法は、 前記請求項 5又は 6において、 2 段目の電気分解処理を行う際に、 1段目の電気分解処理後の排水に塩化物イオン を添加する方法である。
また、 請求項 8に記載された本発明の処理方法は、 前記請求項 2乃至 7のいず れか 1項において、 前記電気分解処理におけるダイヤモンド電極表面の電流密度 夯 0. 0 0 1〜 1 0 AZ c m2とし、 通液線速度を 1 0〜1 0, 0 0 O mZ hと
してダイヤモンド電極による電気分解処理を行う方法である。
請求項 9に記載された本発明の処理方法は、 前記請求項 2乃至 8のいずれか 1 項において、 前記電気分解処理におけるダイヤモンド電極表面の電流密度を 0. 5〜1 OAZcm2とし、 かつ通液線速度を 200〜10, OOOm/hにする 方法である。
請求項 10に記載された本発明の処理方法は、 前記請求項 1乃至 9のいずれか 1項において、 前記電気分解処理における通液線速度を、 下式 1の関係式を満た すように制御する方法である。
式 1 :通液線速度 (mZh r ) ≥400x (電流密度 (AZcm2) -0. 5 ) +200
請求項 1 1に記載された本発明の処理方法は、 前記請求項 1乃至 10のいずれ か 1項において、 前記電気分解処理における通液線速度を、 下式 2の関係式を満 たすように制御する方法である。
式 2 :通液線速度 (mZh r ) ≥1 OOOx (電流密度 (AZcm2) —0. 5) +200
そして、 請求項 1 2に記載された本発明の有機化合物含有排水の処理装置は、 有機化合物として有機性懸濁物を含有する有機化合物含有排水中の該有機性懸濁 物を電気分解処理するためのダイヤモンド電極を具備するものである。
請求項 1 3に記載された有機化合物含有排水の処理装置は、 前記請求項 1 2に おいて、 ダイヤモンド電極表面の電流密度を 0. 001〜1 OAZcm2とし、 通液線速度を 1 0~10, 00 Om/hとしてダイヤモンド電極による電気分解 処理を行うものである。
請求項 1 4に記載された有機化合物含有排水の処理装置は、 前記請求項 1 2ま たは 1 3において、 陽極および陰極の両方にダイヤモンド電極を用いて転極を行 うものである。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の第一の処理方法における排水の電気分解槽への通液線速度と 、 当該電解槽内のダイヤモンド電極の電流密度との関係を示すグラフである。
図 2は、 前記第一の処理方法を実施するのに適した装置構成例を説明するため の図である。
図 3は、 前記第一の処理方法を実施するのに適した他の装置構成例を説明する ための図である。
図 4は、 前記第一の処理方法を実施するのに適した更に他の装置構成例を説明 するための図である。
図 5は、 本発明の第四の処理方法を実施するのに適した装置構成例を説明する ための図である。
図 6は、 前記第四の処理方法を実施するのに適した他の装置構成例を説明する ための図である。
図 7は、 前記第四の処理方法を実施するのに適したさらに他の装置構成例を説 明するための図である。
図 1〜図 4において、 1, 2, 3, 1 1は電解反応槽、 4は排水貯槽、 5は処 理済水貯槽、 6は受液槽、 6 ' , 1 1 ' はガス抜き部であり、 図 5〜図 7におい て、 1, 1 1, 1 2, 1 3は 1段目の電気分解処理を行うための電解反応槽、 2 , 2 1, 2 2, 2 3は 2段目の電気分解処理を行うための電解反応槽、 3は貯槽 、 4は処理対象排水の貯槽、 5は処理済水貯槽である。 発明の実施の形態
以下、 本発明の第一〜第四の有機化合物含有排水の処理方法および装置につい て詳細に説明する。
第一の有機化合物含有排水の処理方法
まず、 本発明の第一の有機化合物含有排水の処理方法について説明する。 本発明の第一の処理方法における処理対象としての有機化合物の種類は、 特に 制限せず、 電気化学的な処理で二酸化炭素や水等の無機化合物にまで分解するも のであれば、 どのようなものであってもよい。
また、 このような有機化合物の濃度も、 特に制限せず、 どのような濃度であつ てもよく、 場合によっては、 第一の処理方法で処理するに先立ち、 濃縮しておい てもよい。 なお、 ダイヤモンド電極の電気分解効率等の面からは、 有機化合物の
濃度は、 0. 5〜20 リットル (以下、 リットルを 「し」 、 ミリリットルを 「mLj と記す) 程度が好ましい。
本発明の第一の処理方法における電流密度は、 0. 5〜1 0AZcm2とする が、 0. 5 AZ cm2未満であると、 電流効率の良いダイヤモンド電極を使用し ても、 工場等の大量排水を所定の有機化合物のレベルまで実用的規模で電気分解 処理するためには、 ある程度大きな電極面積を必要とし、 電解反応槽を大容量に しなければならず、 装置コス卜やランニングコス卜が膨大となる。
—方、 1 OA/cm2を超えると、 極間電圧が増大し、 熱エネルギーに消費さ れてしまうため、 不経済となるのみならず、 ダイヤモンド電極の耐久性の点から も好ましくない。
通液線速度は、 電流密度の増大に伴って大きくすることが好ましく、 上記の電 流密度の範囲内において、 全有機炭素 (TOC) 除去率を、 3時間以内で、 70 %以上とするためと、 電解反応によつて生成するガス成分を液流に伴わせて効率 良く除去するためには、 200m/h r以上とすることが重要である。
なお、 通液線速度の上限は、 特に制限しないが、 あまり高速であると、 液中の 有機化合物とダイヤモンド電極の接触が不充分となって、 有機化合物の電気分解 反応が良好に進行しないことがあるため、 10, OOOmZh r程度が限度であ る。
また、 通液線速度は、 下式 1の関係式を満たすように制御することが好ましい o
式 1 :通液線速度 (mZh r ) ≥400x (電流密度 (A/cm2)一 0. 5 ) +200
すなわち、 図 1の通液線速度と電流密度との関係を示すグラフにおいて、 実線 で示している下側の直線上と、 この直線よリ上方の領域になるように制御する。 この下側の直線より下方の領域であると、 電解反応によってガスが大量に生成 し、 このガス成分が反応槽内に滞留して、 電流効率が悪化するだけでなく、 電流 密度が局部的に大きくなリ、 ダイヤモンド電極薄膜が基板から剥離すると言う問 題が生じる。
よリ好ましくは、 下式 2の関係式を満たすように制御することである。
式 2 :通液線速度 (mZ h r ) ≥1 O O O x (電流密度 (A/ c m2) — 0. 5 ) + 2 0 0
すなわち、 図 1の破線で示している上側の直線上と、 この直線より上方の領域 になるように制御することであり、 このように制御することにより、 一層良好な 効果を得ることができる。
上記の電流密度と通液線速度との関係を満たす限りにおいて、 第一の処理方法 では、 極めて高い効率で排水中の有機化合物を、 電気化学的に酸化分解すること ができる。
このとき、 ダイヤモンド電極を少なくとも陽極にして水を電気分解すると、 通 常、 ヒドロキシラジカルが多量に発生し、 このヒドロキシラジカルによる有機化 合物の間接酸化分解効果をも生じることができる。
このヒドロキシラジカルの発生は、 他の電極材料に比して、 ダイヤモンド電極 が優れておリ、 特に、 排水の p Hをアルカリ性に調整することで、 当該排水中の O H—イオン濃度が増加し、 中性の場合に比して、 ヒドロキシラジカルの発生が 増大する。
ヒドロキシラジカルが高効率で発生することにより、 当該ラジカルによる有機 化合物の酸化分解効率が増大し、 この酸化分解がダイヤモンド電極による有機化 合物の電気分解に相乗して、 排水中の有機化合物の分解効率が飛躍的に向上する 上記の条件で排水を電気化学的に処理する際に使用するダイヤモンド電極は、 N b, T a, T i, M o , W, Z r等の導電性金属材料を基板とし、 これら基板 の表面に導電性ダイヤモンド薄膜を析出させたものや、 シリコンウェハ等の半導 体材料を基板とし、 このウェハ表面に導電性ダイヤモンド薄膜を合成させたもの 、 あるいは基板を用いない条件で板状に析出合成した導電性多結晶ダイヤモンド を挙げることができる。
なお、 導電性ダイヤモンド薄膜は、 ダイヤモンド薄膜の調製の際にボロン又は 窒素の所定量をドープして導電性を付与したものであり、 ボロンをドープしたも のが一般的である。
これらのドープ量は、 少なすぎればドープする技術的意義が発現せず、 多すぎ
てもドープ効果は飽和するため、 ダイヤモンド薄膜の炭素量に対し 5 0〜1 0, 0 0 0 p p mの範囲内のものが適している。
本発明において、 ダイヤモンド電極は、 一般には板状のものを使用するが、 網 目構造物を板状にしたもの等をも使用することができる。
また、 炭素粉末、 その他の粉末状の材料の表面を、 導電性ダイヤモンド薄膜で 覆ったものを電極として使用することもできる。 この粉末状のダイャモンド電極 を使用する場合は、 例えば、 粉末状ダイヤモンド電極を電解液に分散させ、 これ を流動させて流動床を構成し、 この流動床を陽極として作用させればよい。 さらに、 上記の基板を多孔質体としたもの、 あるいは合成樹脂等からなる多孔 質体に、 導電性ダイヤモンド粉末を担持させて、 高表面積を有する電極としたも のを使用することもでき、 この高表面積を有する電極で固定床を構成し、 この固 定床を陽極として作用させればよい。 ダイヤモンド電極としては、 結晶質である 必要はなく、 非晶質のものであってもよい。
なお、 第一の処理方法では、 陰極にも以上のようなダイヤモンド電極を用いる こともでき、 この場合は、 陰■陽極を一定の周期で転極しながら、 電気分解処理 を行うようにしてもし、。
上記のようなダイヤモンド電極は、 他の電極材料に比して、 電位窓が極めて広 く、 上記した条件において、 水の電気分解による水素や酸素の発生を抑えながら 、 目的の有機化合物のみを効率的に分解処理することができる。
なお、 電解反応槽内における液温度は、 特に限定しないが、 低温すぎると、 有 機化合物の電気分解が良好に進行せず、 逆に高温すぎると、 排水と電極表面との 接触を阻害するガス成分の生成が多くなるため、 第一の処理方法では、 1 0〜9 5 °C程度とすることが望ましい。
この第一の処理方法では、 工場排水等中の有機化合物を、 電流効率が良好であ るため接触面積が少なくて済み使用装置を小型化できるのみならず、 化学的安定 性にも優れるため酸やアル力リによる腐食の懸念のないダイヤモンド電極を用い 、 かつ上記した電流密度と通液線速度との関係を満たすることで、 極めて効果的 に電気分解処理することができる。
この結果として、 工場排水等を、 コンパクトな装置で、 かつ実用的規模で、 電
気化学的に処理し、 該排水中の有機化合物を、 有害で悪臭を放つ副生成物を生じ ることなく、 二酸化炭素や水等の無害な無機化合物にまで、 極めて容易に分解す ることができる。
また、 本発明の第一の処理方法では、 有機化合物を含む排水を、 ダイヤモンド 電極を用い、 上記の条件て電気分解処理するに際して、 有機化合物の電気分解で 生成するガス成分を分離除去しながら、 電気分解処理することもできる。
ガス成分の分離除去は、 どのような方法によってもよく、 例えば、 通常の気液 分離装置をそのまま使用して行う方法であってもよいし、 あるいは上方に気相部 (空間部) を備え頂部にガス抜き部 (ガス抜き管、 ガス抜き口等) を備えた電解 反応槽を使用する等の方法で行うことができる。
すなわち、 水中の気泡は、 容易に浮上して気相に移行するため、 電気分解処理 で生成する炭酸ガスや窒素ガス等のガス成分は、 上方に気相部を形成して下方の 液相部と容易に分離し、 また酸素や水素は、 上記の電流密度と通液線速度の条件 を満たす限りその発生は抑制されるが、 万一発生したとしても、 炭酸ガス等と共 に浮上して気相部に移行したり、 あるいは液流に同伴されて反応槽外に抜き出さ れるため、 反応槽内に滞留して電流効率の悪化を引き起こすようなことはなく、 電気分解反応を進行させることができる。
このように、 上記のようなガス抜き部や気相部を備えた電解反応槽等を用いる ことでも、 電気分解処理で生成するガス成分を、 水と容易に分離することができ る。
また、 第一の処理方法では、 電解反応槽を複数使用して、 有機化合物を含む排 水を電気分解処理することもできる。
このときの電解反応槽の配置態様は、 直列配置、 並列配置、 これらの組み合わ せ配置であってよく、 有機化合物を確実に電気分解処理するには直列配置が適し ており、 また大容量の排水を一度に処理する場合であって、 しかも有機化合物を 確実に電気分解処理するには、 並列配置と直列配置の組み合わせが適している。 例えば、 図 2に示すように、 3つの電解反応槽 1, 2, 3を直列に配置し、 こ の直列配置を A列, B列, C列の 3つの列に配置し、 1つの排水貯槽 4から A~ C各列の第一段目の電解反応槽 1, 1, 1に送液し、 第二段目、 第三段目の電解
反応槽 2, 2, 2, 3, 3, 3と順次送液して電気分解処理し、 1つの処理済水 槽 5に集液するような態様が挙げられる。
この態様において、 各電解反応槽 1, 1, 1のそれぞれが上記の電流密度、 通 液線速度の条件を満たしていることが重要である。
さらに、 上記のガス成分の分離と、 複数の電解反応槽での電気分解とを組み合 わせて、 有機化合物含有排水の電気分解処理を行うこともできる。
このとき、 複数の電解反応槽のうちの少なくとも 1の電解反応槽の出口水、 あ るいは最終段の電解反応槽を除く各電解反応槽出口水を、 上記の気液分離装置や 上方に気相部を備え頂部にガス抜き部を備えた受液槽を使用する等して気液分離 した後、 後続の電解反応槽に通液処理したリ、 あるいは少なくとも 1の電解反応 槽ゃ最終段の電解反応槽を除く各電解反応槽を上記のような上方に気相部を備え 頂部にガス抜き部を備えたものとして、 電解反応槽自体で気液分離を行う等の手 法が採用できる。
例えば、 図 3に示すように、 2つの電解反応槽 1, 2を直列に配置し、 第一段 目の電解反応槽 1と第二段目の電解反応槽 2の間に、 上方に気相部を備え頂部に ガス抜き部 6 ' を備えた受液槽 6を配置して、 排水貯槽 4内の排水を第一段目の 電解反応槽 1に導き、 第一段目の電気分解処理を行った後、 受液槽 6に導入し、 第一段目の電気分解反応で生成したガス成分をここで分離してガス抜き部 6 ' か ら系外に抜き出す。
ガス成分が分離された液相部は、 第二段目の電解反応槽 2に導かれ、 第二段目 の電気分解処理が行われた後、 処理済水槽 5に貯留される。
この態様においても、 第一段目, 第二段目の電解反応槽 1, 2のそれぞれが上 記の電流密度、 通液線速度の条件を満たしていることが重要である。
あるいは、 図 4に示すように、 第一段目の電解反応槽 1 1自体を、 上方に気相 部を備え頂部にガス抜き部 1 1 ' を備えたものとし、 排水貯槽 4内の排水を第一 段目の電解反応槽 1 1に導き、 第一段目の電気分解反応で生成するガス成分を分 離除去しつつ、 第一段目の電気分解処理を行った後、 第二段目の電解反応槽 2に 導き、 第二段目の電気分解処理を行った後、 処理済水槽 5に貯留するようにして もよい。
第二の有機化合物含有排水の処理方法
次に、 本発明の第二の有機化合物含有排水の処理方法について説明する。 この 第二の処理方法は、 少なくとも陽極にダイヤモンド電極を用い、 かつ前記排水の p Hをアルカリ性に調整することを特徴とする。 ここで、 処理対象となる有機化 合物の種類及び濃度は、 特に制限されず、 前述した第一の処理方法と同じである 。 また、 その分解機構についても前述した第一の処理方法と同じである。
第二の処理方法では、 処理排水の p H値がアル力リ性であれば特に制限はない が、 p H 8〜 1 4が好ましく、 特に p H 9 ~ 1 3が好ましい。
p H 8未満では、 ヒドロキシラジカルの発生効果が少なくなリ、 当該ラジカル による有機化合物の酸化分解効率が増大せず、 p H 1 4でこの効果は飽和する。 排水の p Hの調整は、 アルカリ金属やアルカリ土類金属の添加、 あるいは高 p H排水の添加等により行うことができる。
アルカリ金属やアルカリ土類金属の添加は、 通常、 これら金属の水酸化物や炭 酸塩等の化合物を、 そのまま添加したり、 あるいは予め水溶液にしておいて添加 したりする等の手法が採用できる。
添加する箇所は、 電解反応槽での電気分解処理を、 上記の p H条件で行うこと が重要であるため、 電解反応槽の入口の上流側であればどこでもよく、 例えば、 電解反応槽の直前、 排水の貯留設備等がある場合にはその貯留タンク、 あるいは 排水を循環処理するような場合には電解反応槽の出口部であってもよい。
どこで添加するにしても、 電解反応槽内の p Hが上記条件となっているか否か を測定しつつ行うことが好ましい。
上記の p Hの排水を電気化学的に処理する際に使用するダイヤモンド電極は、 前述した第一の処理方法と同じものを用いることができる。 また、 同様に陰極に もダイヤモンド電極を用い、 陰■陽極を一定の周期で転極しながら、 電気分解処 理を行うようにしてもい。
このとき、 ダイヤモンド電極表面の電流密度は 0 . 0 0 1〜1 0 A/ c m 2と し、 通液線速度は 1 0〜1 0, 0 0 0 m/ h rとして、 有機化合物を含む排水を ダイヤモンド電極面と平行方向に通液して接触処理することが、 高効率で、 有機 化合物を電気分解する上で好ましい。
電流密度が 0. 001 AZcm2未満であると、 ダイヤモンド電極の電流効率 は良好であるとは言え、 工場等の大量排水を所定の有機化合物のレベルまで実用 的規模で電気分解処理するためには、 ある程度大きな電極面積を必要とし、 電解 反応槽を大容量にしなければならず、 装置コストゃランニングコス卜が膨大とな る。
逆に、 1 OAZcm2を超えると、 極間電圧が増大し、 熱エネルギーに消費さ れてしまうため、 不経済となるのみならず、 ダイヤモンド電極の耐久性の点から も好ましくない。
また、 排水の通液速度を線速度 (LV) で 10〜10, OOOm/h rとする のは、 通液速度が 10, OOOmZh rより速いと、 排水と電極表面との接触時 間を十分に取ることができず、 有機化合物の電気分解を十分に進行させることが できなくなり、 通液速度が 1 OmZh rより遅いと、 十分な効果が発揮できず、 排水の処理効率が極端に低下してしまう。
特に、 前述した第一の処理方法と同じ理由により、 電流密度を 0. 5〜1 OA /cm2とし、 通液線速度を 200〜10, 000 mZ h rとすることが好まし く、 これらに加えて前記式 1、 式 2の関係式を充足することが好ましい。
なお、 電解反応槽内における液温度は、 特に限定しないが、 低温すぎると、 有 機化合物の電気分解が良好に進行せず、 逆に高温すぎると、 排水と電極表面との 接触を阻害するガス成分の生成が多くなるため、 第二の処理方法では 10〜95 °G程度とすることが望ましい。
このような本発明の第二の処理方法では、 工場排水等中の有機化合物を、 電流 効率が良好であるため接触面積が少なくて済み使用装置を小型化できるのみなら ず、 化学的安定性にも優れるため酸やアルカリによる腐食の懸念のない、 ダイヤ モンド電極を用い、 かつ上記排水中の p Hをアルカリ性にすることで、 極めて効 果的に電気分解処理することができる。
この結果として、 工場排水等を、 コンパク卜な装置で、 かつ実用的規模で、 電 気化学的に処理し、 該排水中の有機化合物を、 有害で悪臭を放つ副生成物を生じ ることなく、 二酸化炭素や水等の無害な無機化合物にまで、 極めて容易に分解す ることができる。
第三の有機化合物含有排水の処理方法
次に本発明の第三の有機化合物含有排水の処理方法及び装置について説明する 。 この第三の処理方法は、 処理対象となる有機化合物含有排水が有機性懸濁物を 含有する排水であることを特徴とするものであるが、 その分解機構については前 述した第一の処理方法と同じである。 また、 本発明の有機性懸濁物を含有する有 機化合物含有排水を処理する装置は、 有機性懸濁物を電気分解処理するためのダ ィャモンド電極が処理装置に設けられているものであり、 陽極にダイヤモンド電 極が用いられているか、 あるいは陽極および陰極の両方にダイヤモンド電極を用 い転極可能としたものである。
このような有機化合物含有排水処理装置及びこれを用いた処理方法においては 、 排水中の有機性懸濁物を濾過、 凝集沈殿などの前処理によって除去する必要な く、 有機性懸濁物を含有する排水が処理装置に対して直接通液することができ、 排水中の有機性懸濁物が溶解性有機物と共にダイヤモンド電極によって同時に電 気化学的に酸化分解されて除去される。
このような第三の処理方法及びこれにかかる装置に用いられるダイヤモンド電 極としては、 前述した第一の処理方法と同じものを用いることができる。
このダイヤモンド電極は、 従来の白金などの金属電極に比べて電位窓が極めて 広く、 水の電気分解による水素発生や酸素発生を抑制しつつ、 オゾン、 ヒドロキ シラジカル等の強力な酸化剤を生成しながら酸化分解すべき有機有害物質のみを 効率的に酸化分解処理することができる。 つまり、 ダイヤモンド電極によって有 機性懸濁物含有水を電気分解処理すると、 排水中の有機性懸濁物が溶解性有機物 に分解され、 更に電気分解処理を続けることにより、 溶解性有機物が分解除去さ れる。 すなわち、 排水中の有機性懸濁物は、 従来のように前処理により除去され て汚泥として排出されるのではなく、 排水中の溶解性有機物と共に同時に分解除 去される。
このとき、 ダイヤモンド電極表面の電流密度は 0. 0 0 1〜1 0 A/ c m2と し、 通液線速度は 1 0〜1 0, O O O mZ h rとして、 有機性懸濁物を含む排水 をダイヤモンド電極面と平行方向に通液して接触処理することが、 高効率で、 有 機化合物を電気分解する上で好ましい。 ここで、 電流密度及び通液線速度の範囲
については、 前述した第二の処理方法と同じ理由である。
特に、 前述した第一の処理方法と同じ理由により、 電流密度を 0. 5〜1 O A / c m2とし、 通液線速度を 2 0 0〜1 0, O O O mZ h rとすることが好まし く、 これらに加えて前記式 1、 式 2の関係式を充足することが好ましい。
なお、 電解反応槽内における液温度は、 特に限定しないが、 低温すぎると、 有 機化合物の電気分解が良好に進行せず、 逆に高温すぎると、 排水と電極表面との 接触を阻害するガス成分の生成が多くなるため、 第三の処理方法では、 1 0〜9 5 °G程度とすることが望ましい。
本発明の第三の処理方法では、 有機性懸濁物を含有する排水中の全有機炭素濃 度 (T O C ) および化学的酸素消費量 (C O D ) を高効率で除去することができ 、 従来の白金系電極を用いた電気分解処理に比べ、 電解効率を向上させることが でき、 必要な電極面積を小さくすることができ、 電解反応装置全体を小型化する ことができ、 経済的メリットが大きい。 特に陽極および陰極の両方にダイヤモン ド電極を用いて転極を行うことにより、 有機性懸濁物および溶解性有機物の高効 率除去を持続することができる。
第四の有機化合物含有排水の処理方法
さらに、 本発明の第四の有機化合物含有排水の処理方法について説明する。 こ の第四の処理方法は、 処理対象となる有機化合物含有排水が有機窒素化合物を含 有する排水であり、 陰極と陽極にダイヤモンド電極を用いた 1段目の電気分解処 理を行った後、 陰極にダイヤモンド電極を用い、 陽極に金属電極を用いた 2段目 の電気分解処理を行うことを特徴とする。
このとき、 1段目の電気分解処理を行う際に、 有機窒素化合物含有排水に硫酸 イオンを添加してもよいし、 これに代えて、 あるいはこれと共に、 2段目の電気 分解処理を行う際に、 1段目の電気分解処理後の排水に塩化物イオンを添加して もよい。
第四の処理方法における処理対象としての有機窒素化合物の種類は、 窒素を含 有する有機化合物であれば特に制限されず、 電気分解処理で炭酸ガス、 窒素、 水 等の無機化合物にまで分解するものであれば、 どのようなものであってもよい。 また、 このような有機窒素化合物の濃度も、 特に制限されず、 どのような濃度で
あってもよく、 場合によっては、 本処理方法で処理するに先立ち、 濃縮しておい てもよい。 なお、 本処理方法における 2段階処理における電解効率等の面からは 、 有機窒素化合物の濃度は、 0. 5〜2 0 g /リットル (以下、 リットルを 「L J 、 ミリリットルを 「m L j と記す) 程度が好ましい。
第四の処理方法では、 1段目において主として全有機炭素 (T O C ) を低減し 、 2段目において全有機窒素 (T一 N ) を低減する。
この 1段目の電気分解処理は、 陰■陽両極にダイヤモンド電極を使用して行う 前記のように、 陰極と陽極にダイヤモンド電極を使用する場合、 有機窒素化合 物は、 陽極で N O Xや硝酸イオンに酸化され、 陰極でアンモニアに還元され、 こ のアンモニアは、 陽極で再び硝酸イオンに酸化されると言うように、 両極間で酸 化と還元を繰り返すが、 本処理方法では、 陰極で生成したアンモニアが陽極で再 酸化される前に、 2段目の電気分解処理に移送させることで、 陽極での再酸化を 防いでいる。
このとき、 硫酸イオン (S O 4一2) を含む電解質物質が存在すると、 ダイヤモ ンド電極の陽極側で、 過硫酸 (S 208一2) の生成やオゾンの生成が進行し、 こ れらによる酸化分解効果が相乗されて、 よリ強力な酸化分解効果を得ることがで さる。
この硫酸イオンを含む電解質物質としては、 硫酸力リゥ厶、 硫酸ナトリゥム、 硫酸カルシウム等のアルカリ金属、 アルカリ土類金属等の硫酸塩であってもよい し、 その他の硫酸イオンを生じる化合物があってもよく、 これらは単独で用いて もよいし、 適宜の組み合わせによる 2種以上を混合して用いることもできる。 これらの硫酸ィォンを含む電解質物質は、 第四の処理方法の処理対象である有 機窒素化合物含有排水中に存在しているものであってもよいし、 外部から導入す るものであってもよい。
1段目の電気分解処理時における硫酸イオン濃度は、 特に制限しない力 低す ぎれば、 硫酸イオンによる上記の作用 '効果が発現せず、 逆に高すぎても、 硫酸 イオンによる上記の作用 .効果が飽和するばかりか、 硫酸イオンを含む電解質物 質自体の処理も必要となって処理効率が低下するため、 第四の処理方法では、 1
~100 gZL程度とすることが適している。
また 1段目の電気分解処理は、 電流密度 0. 1 ~10AZcm2、 通液線速度 200〜10, OOOmZh rで行うことが好ましい。 電流密度が 0. 1 AZG m2未満であると、 大量の有機窒素化合物含有排水を所定の該化合物レベルまで 電気分解処理するのに、 電極面積を大きくしなければならず、 大容量の電解反応 層を必要とし、 1 OAZcm2を超えると、 極間電圧が増大し、 熱エネルギーに 消費されるのみならず、 ダイヤモンド電極の耐久性の点からも好ましくない。 通液線速度は、 電流密度の増大に伴って大きくすることが好ましく、 上記の電 流密度の範囲内において、 TOC除去率を、 3時間以内で、 70%以上とするた めと、 電解反応によって生成するガス成分を液流に伴わせて効率良く除去するた めには、 ZOOm/h r以上とすることが重要であり、 10, OOOmZh rま での範囲で処理するのが望ましい。
特に、 前述した第一の処理方法と同じ理由により、 電流密度を 0. 5〜1 OA ノ cm2とし、 通液線速度を 200~10, 00 Om/h rとすることが好まし く、 これらに加えて前記式 1、 式 2の関係式を充足することが好ましい。
なお、 1段目の電気分解処理の際の液温度は、 特に限定しないが、 低温すぎる と、 有機窒素化合物の電解反応が良好に進行せず、 逆に高温すぎると、 排水と電 極表面との接触を阻害するガス成分の生成が多くなるため、 第四の処理方法では 、 10〜95°C程度とすることが望ましい。
以上のような 1段目の電気分解処理で、 主として TO Cが低減された排水は、 2段目の電気分解処理に付される。
この 2段目の電気分解処理は、 陰極にダイヤモンド電極を使用し、 陽極に金属 電極を使用して行う。
この金属電極としては、 白金電極、 パラジウム電極、 ロジウム電極、 金電極、 銀電極、 イリジウム電極、 これらの合金製の電極等を用いることができる。 また、 これらの金属 (合金) 電極上に I r 02を分散担持した電極を用いるこ ともできる。
2段目の電気分解処理は、 1段目で TO Cが低減された排水を、 上記のような 金属電極を使用した陽極と、 ダイヤモンド電極を使用した陰極とで電気分解処理
し、 該排水の T— Nを低減させる。
このとき、 排水中に塩化物イオン (C I - , C I 0一1等) が存在すると、 陽 極で次亜塩素酸イオンが生成するが、 この次亜塩素酸イオンは、 硝酸イオンがダ ィャモンド陰極で還元されて生じるアンモニアと反応して窒素ガスを生成し、 系 外に抜けるため、 高い処理効率で T一 Nの低減を達成することができる。
なお、 ダイヤモンド電極を陽極に使用すると、 酸化力が強すぎて、 塩化物ィォ ンが過塩素酸まで酸化してしまうため、 このような反応は生成しない。
この塩化物イオンを含む電解質物質としては、 塩化カリウム、 塩化ナトリウム 、 次亜塩素酸カリウム、 次亜塩素酸ナトリウム等が好ましく使用でき、 これらは 単独で用いてもよいし、 適宜の組み合わせによる 2種以上を混合して用いること もできる。
これらめ塩化物イオンを含む電解質物質は、 本処理方法の処理対象である有機 窒素化合物含有排水中に存在しているものであってもよいし、 外部から導入する ものであってもよい。
2段目の電気分解処理時における塩化物イオン濃度は、 特に制限しないが、 第 四の処理方法は 500〜1 2, 00 OmgZL程度が好ましい。
塩化物ィォンは上記のように電流効率を高める作用をなすものであるため、 陰 極に電流効率の高いダイヤモンド電極を用いる本処理方法では、 あまり高濃度で なくてもよく、 陰■陽両極に白金電極を用いる従来の電気分解処理では効率が悪 くなる濃度である 1 2, 00 OmgZL以下でも、 良好な電流効率を得ることが できる一方で、 500mgZL未満では、 排水中の T— Nを電気分解処理で低減 するのに十分な電流効率を得ることができない場合もある。
2段目の電気分解処理は、 電流密度 0. 1〜1 0AZcm2、 通液線速度 20 0〜1 0, 00 OmZh rで行うことが好ましい。
電流密度が 0. 1 AZcm2未満であると、 T— Nを所定のレベルまで電気分 解処理するのに、 電極面積を大きくしなければならず、 大容量の電解反応層を必 要とし、 1 OAZcm2を超えると、 極間電圧が増大し、 熱エネルギーに消費さ れるのみならず、 陰極のダイャモンド電極や陽極の白金電極等の耐久性の点から も好ましくない。
通液線速度は、 電流密度の増大に伴って大きくすることが好ましく、 上記の電 流密度の範囲内において、 T— N除去率を、 3時間以内で、 7 0 %以上とするた めと、 電解反応によって生成するガス成分を液流に伴わせて効率良く除去するた めには、 2 0 0 mZ h r以上とすることが重要であり、 1 0, O O O mZ h rま での範囲で処理するのが望ましい。
特に、 前述した第一の処理方法と同じ理由により、 電流密度を 0. 5〜1 O A Z c m2とし、 通液線速度を 2 0 0〜1 0 , O O O mZ h rとすることが好まし く、 これらに加えて前記式 1、 式 2の関係式を充足することが好ましい。
2段目の電気分解処理の際の液温度も、 特に限定しないが、 低温すぎると、 T 一 Nの低減反応が良好に進行せず、 逆に高温すぎると、 排水と電極表面との接触 を阻害するガス成分の生成が多〈なるため、 上記の 1段目の電気分解処理の際と 同じ 1 0 ~ 9 5 °G程度とすることが望ましい。
以上の 1段目, 2段目の電気分解処理で使用するダイヤモンド電極としては、 前述した第一の処理方法で用いたものと同じものを用いることができる。
この第四の処理方法では、 上述した 1段目、 2段目の電気分解処理は、 図 5に 示すように、 1段目の電解反応槽 1と 2段目の電解反応槽 2を直列配置して連続 処理してもよいし、 図 6に示すように、 1段目の電解反応槽 1と 2段目の電解反 応槽 2の間に貯槽 3を設け、 1段目の電気分解処理後の排水をこの貯槽 3に一旦 貯留しておき、 この貯槽 3内の液を 2段目の電気分解処理に付すと言うバッチ方 式での処理としてもよい。
なお、 図 5, 図 6において、 4は処理対象である排水の貯槽、 5は 2段目の電 気分解処理後の水を貯留するための槽である。
さらに、 本処理方法では、 図 5, 図 6に示す 1段目, 2段目の電解反応槽 1 , 2のそれぞれを複数使用することもでき、 このときの各電解反応槽の配置態様は 、 直列配置、 並列配置、 これらの組み合わせ配置であってよく、 有機窒素化合物 含有排水を確実に電気分解処理するには直列配置が適しておリ、 また大容量の排 水を一度に処理する場合であって、 しかも有機窒素化合物含有排水を確実に電気 分解処理するには、 並列配置と直列配置の組み合わせが適している。
例えば、 図 7に示すように、 1段目の電気分解処理を行うための 3つの電解反
応槽 1 1, 12, 13を直列に配置し、 この直列配置を A列, B列, C列の 3つ の列に並列に配置し、 1つの排水貯槽 4から A〜C各列の第一の電解反応槽 1 1 , 1 1, 1 1に送液し、 第二、 第三の電解反応槽 12, 12, 12, 13, 13 , 13と順次送液して 1段目の電気分解処理を行い、 1つの貯槽 3に集液する。 この後、 上記と同じ態様で直列配置 (21, 22, 23) と、 並列配置 (A, B, C列) をした 2段目の電気分解処理を行うため電解反応槽の、 A~C各列の 第一の電解反応槽 21, 21, 21に、 上記の貯槽 3から送液し、 第二、 第三の 電解反応槽 12, 22, 22, 23, 23, 23と順次送液して 2段目の電気分 解処理を行い、 1つの槽 5に集液する。
この態様において、 各電解反応槽 1 1, 12, 13のそれぞれが上記の 1段目 の電気分解処理の条件を満たし、 また電解反応槽 21, 22, 23のそれぞれが 上記の 1段目の電気分解処理の条件を満たしていることが好適である。
第四の処理方法では、 工場排水等中の有機窒素化合物含有排水を、 電流効率が 良好であるため接触面積が少なくて済み使用装置を小型化できるのみならず、 化 学的安定性にも優れるため酸やアル力リによる腐食の懸念のない、 ダイヤモンド 電極を陰■陽両極に用いた 1段目の電気分解処理に付すことで、 極めて効率的に T 0 Cを低減することができる。
この腐食性の TO Cが低減された排水を、 陽極には金属電極を用い、 陰極のみ にダイャモンド電極を用いた 2段目の電気分解処理に付すことで、 T一 Nを効率 的に低減することができる。
この結果として、 工場排水等を、 コンパクトな装置で、 しかも装置コストを低 額に抑え、 かつ実用的規模で、 電気化学的に処理し、 該排水中の有機窒素化合物 を、 炭酸ガス、 窒素ガス、 水等の無害な無機化合物にまで、 極めて容易に分解す ることができる。 実施例
第一の処理方法
実施例 1
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶ダイヤモンド電極板 (
5 x 5 x0. 05 cm) 2枚を陰■陽両極にそれぞれ用い、 極間距離を 1 c m に設定して、 電解反応槽を構成した。
一方、 有機化合物としてジメチルスルホキシド (DMSO) を含む排水 (TO C: 71 Omg/L) 1. 5 Lを準備し、 この排水に硫酸ナトリウム 1 4, 20 OmgZLを添加し、 貯槽に貯留した。
上記ダイャモンド電極への投入電気量を電流密度が 1 AZcm2となるように 設定し、 この電解反応槽に、 上記貯槽内の排水を、 送液ポンプの吐出量を通液線 速度が 1 500mZh rとなるように調整して導入し、 当該電解反応槽の出口水 を取り出し、 上記貯槽に戻す操作を行って、 循環処理した。
このとき、 貯槽内は、 スターラにより攪拌した。
上記のようにして循環処理を 3時間継続して行った後、 電解反応槽出口水の水 を採取し、 全有機体炭素 (TOC) の分析を行った。
この結果は、 表 1に示す通りであり、 TOCが効率良く分解除去できることが 確認できた。
〔表 1〕
電解時間 ( h r ) TOC (mg/L)
0 71 0
1 230
2 50
3 6 比較例 1
通液線速度を 1 OOmZh rにする以外は、 実施例 1と同様にして 3時間継続 して循環処理を行った。
この結果は、 表 2に示す通りであり、 TOCの分解除去効率は 50%程度に止 まっているばかりか、 電気分解処理後にはダイヤモンド膜が剥離している箇所が 観察された。
〔表 2〕
電解時間 (h r) TOC (mg/L)
0 710
1 620
2 450
3 346 実施例 2
有機化合物としてテトラメチルアンモニゥ厶ヒドラジドを含む排水 (TOC: 77 Omg/L) 3Lを用い、 電流密度を 2AZcm2、 通液線速度を 2600 m/h「にし、 実施例 1と同様にして 3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、 表 3に示す通りであり、 実施例 1と同様に、 TOCが効率良〈分 解除去できることが確認できた。
〔表 3〕
電解時間 (h r ) TOC (mgZL)
0 770
1 215
2 42
3 6 比較例 2
通液線速度を 500mZh rにする以外は、 実施例 2と同様にして 3時間継続 して循環処理を行った。
この結果は、 表 4に示す通りであり、 TOCの分解除去効率は 50%程度に止 まっているばかりか、 電気分解処理後にはダイヤモンド膜が剥離している箇所が 観察された。
〔表 4〕
雷解時間 (h r) TOC (mg/L)
0 770
1 550
2 467
3 388 第二の処理方法
実施例 3
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶ダイヤモンド電極板 (
5x 5x0. 05 cm) 2枚を陰 '陽両極にそれぞれ用い、 極間距離を 1 cm に設定して、 電解反応槽を構成した。
一方、 有機化合物としてジメチルスルホキシド (DMSO) を含む排水 (DM
SO: 230 Omg/L, TOC: 710mg/L) 30 OmLを準備し、 この 排水に水酸化ナトリウム 4, OOOmgZLを添加して p Hを 1 2に調整して、 貯槽に貯留した。
上記ダイヤモンド電極への投入電気量を電流密度が 0. 2AZGm2 (200 0 A/m2) となるように設定し、 この電解反応槽に、 上記貯槽内の排水を、 送 液ポンプの吐出量を通液線速度が 1 OOmZh r (流速 833mLZm i n) と なるように調整して導入し、 当該電解反応槽の出口水を取り出し、 上記貯槽に戻 す操作を行って、 循環処理した。
このとき、 貯槽内は、 スターラにより攪拌した。
上記のようにして循環処理を 3時間継続して行った後、 電解反応槽出口水の水 を採取し、 全有機体炭素 (TOC) の分析を行った。
この結果は、 表 5に示す通りであり、 TOCが効率良く分解除去できることが 確認できた。
〔表 5〕
電解時間 (h r ) TOC (mg/L)
0 710
1 170
2 20
3 5 比較例 3
水酸化ナトリウムに代えて、 塩化ナトリウム 6, OOOmgZLを添加し、 p H調整は行わなかった (pH6. 8) 以外は、 実施例 3と同様にして 3時間継続 して循環処理を行った。
この結果は、 表 6に示す通りであり、 TOCの分解除去効果が著しく低下して いること力《確認された。
〔表 6〕
電解時間 (h r ) TOC (mg/L)
0 710
1 680
2 650
3 620 実施例 4
有機化合物としてジォキサンを含む排水 (ジォキサン: 600mg /し TO C: 313mg/L) 6 OOmLを用いる以外は、 実施例 3と同様にして 3時間 継続して循環処理を行った。
この結果は、 表 7に示す通りであり、 実施例 3と同様に、 TOCが効率良く分 解除去できることが確認できた。
〔表 7〕
電解時間 (h r ) TOC (mg/L)
0 313
1 165
2 42
3 6 比較例 4
水酸化ナトリウムに代えて、 塩化ナトリウム 6, OOOmgZLを添加し、 p H調整は行わなかった (pH6. 7)以外は、 実施例 4と同様にして 3時間継続 して循環処理を行った。
この結果は、 表 8に示す通りであり、 TOCの分解除去効果が著しく低下して いることが確認された。
〔表 8〕
電解時間 ( h r ) TOC (mg/L)
0 313
1 285
2 270
3 260 実施例 5
実施例 3で用いたダイヤモンド電極より寸法の小さいダイヤモンド電極 (2 X 2. 5x0. 05 cm) 2枚を陰■陽両極にそれぞれ用い、 極間距離を 1 G mに設定して、 電解反応槽を構成した。
電流密度を 1 AZcm
2、 (10, OOOAZm
2) 、 通液線速度を 1, 00 Om/h r
n) とする以外は、 実施例 3と同様にして 3時間継続して循環処理を行つた。
この結果は、 表 9に示す通りであり、 TOCの分解除去効果が実施例 3より良 好であること力確認され、 電解反応槽をよリコンパク卜化できることが確認され
4978
27
た。
〔表 9〕
電解時間 ( h r ) TOC (mg/L)
0 フ 1 0
1 1 45
2 1 2
3 <1 実施例 6
実施例 5と同じ電解反応槽を構成し、 実施例 5と同じ電流密度および通液線速 度とする以外は、 実施例 4と同様にして 3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、 表 1 0に示す通りであり、 TOCの分解除去効果が実施例 4より 良好であることカ確認され、 電解反応槽をよリコンパク ト化できること力《確認さ れた。
〔表 1 0〕
電解時間 ( h r ) TOC (mg/L)
0 31 3
1 1 43
2 35
3 < 1 第三の処理方法
実施例 7
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶導電性ダイヤモンド板 (5 cmx 5 cmxO. 05 c m) 2枚を電極に用い、 極間距離 1 G mに設定 して電解反応槽とした。 電解質として硫酸ナトリウムを 1 4, OOOmgZL添 加した有機性懸濁物 (SS) 含有排水 (SS = 720mgZL、 TOC=1 89 4mg /し、 CODcr=8240mgXL) 50 OmLを電解貯槽に入れて、 ス ターラで攪拌した状態で送液ポンプを用いて、 電解反応槽に 500m l Zmi n
0304978
28 の流速で循環処理した (通液線速度 SOmZh) 。 電解反応槽の投入電気量は電 流密度が 0. Ι Α/cm2 (1 000 A/m2) となるように設定した。 電気分 解処理を 6時間継O C)i b続して、 電解反応槽出口水の水を採取して TO C、 SS、 CO Dcr および濁度の分析を行ったところ表 1 1の結果を得た。 第三の処理方法に
| 」
よって、 有機性懸濁物と共に TOCと CODcr を効率良く除去できることが確 認できた。
〔表 1 1〕
電解時間 TOC CODcr 濁 度
(h r) (mg/L) (mg/L) (度)
0 720 1 894 8240 705
2 <5 829 2720 <1
4 <5 21 8 540 <1
6 <5 1 6 30 ぐ 1 比較例 5
実施例 7で用いた導電性ダイャモンド板の代わりに白金めつきしたチタン板 ( 5 cmx 5 cmx 0. 3 cm) 2枚を電極とし、 他は実施例 7と同じ条件で電 気分解処理を行った。 電解は実施例 7と同様に 6時間継続したが、 表 1 2の分析 結果に示すように、 電極上への SSの付着が起こるばかりか、 TOCおよび CO Dcrの低減効果もないことがわかった。
〔表 1 2〕
電解時間 SS TOC CO Dcr 濁 度
(h r) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (度)
0 720 1 894 8240 705
2 88 1 605 6200 55
4 32 1 45 5020 34
6 21 1 303 4820 32 実施例 8
ポロンド一プ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶導電性ダイヤモンド板
(5 cmx 5 cmx 0. 05 cm) 2枚を電極に用い、 極間距離 5mmに設定 して電解反応槽とした。 電解質として硫酸ナトリウムを 1 4, OOOmgZL添 加した有機性懸濁物 (SS) 含有排水 (SS = 720mgZし、 TOC=1 89 4mgZし、 CODcr=8240mg/L) 500 m Lを電解貯槽に入れて、 ス ターラで攪拌した状態で送液ポンプを用いて、 電解反応槽に 3 LZm i nの流速 で循環処理した (通液線速度 720m/h) 。 電解反応槽の投入電気量は電流密 度が 0. "! AZcm2 (l OOOAZm2) となるように設定した。 電気分解処 理を 5時間継続して、 電解反応槽出口水の水を採取して TOC、 SS、 CODcr および濁度の分析を行ったところ表 1 3の結果を得た。 この実施例 8から通液線 速度を実施例 7より大きくとることで、 実施例 7より短時間で処理を終えること ができることが確認できた。
〔表 1 3〕
電解時間 S S TOG CODcr 濁 度
(h r ) (mgノ L) (mg/L) (mgZL) (度)
0 720 1 894 8240 705
1 <5 1 1 75 3890 <1
2 <5 729 1 650 <1
3 <5 456 540 <1
4 <5 1 68 350 <1
5 <5 5 20 <1 実施例 9
ポロンドープ法を用いて気相析出合成した円板状の積層状多結晶導電性ダイヤ モンド板 (直径 1 O cmxO. 05 cm) 2枚を電極に用い、 極間距離 5 mm に設定して電解反応槽とした。 電解質として硫酸ナトリウムを 1 4, OOOmg /Lを添加した有機性懸濁物 (SS) 含有排水 (SS = 1 20mg/し、 TOC =95 Omg/L, CODcr=3240mg/L) 6 Lを電解貯槽に入れて、 ス ターラで攪拌した状態で送液ポンプを用いて、 電解反応槽に 5 LZm i nの流速
で循環処理した (通液線速度60011 ^) 。 電解反応槽の投入電気量は電流密 度が 0. 5 01712 (5000A/m2) となるように設定した。 電気分解処 理を 6時間継続して、 電解反応槽出口水の水を採取して TOC、 SS、 CODcr および濁度の分析を行ったところ表 1 4の結果を得た。
〔表 1 4〕
電解時間 SS TOG CODcr 濁 度
(h r ) (m /L) (m^/L) (mg/L) (度)
0 1 20 950 3240 650
2 25 320 1 650 1 05
4 <5 1 24 520 24
6 <5 32 96 <1 比較例 6
実施例 9で用いた導電性ダイヤモンド板の代わリに白金めつきした円板状のチ タン板 (直径 1 O cmxO. 3 cm) 2枚を電極とした以外は、 実施例 9と同 条件で電気分解処理を行った。 電解は実施例 9と同様に 6時間継続したが、 表 1 5の分析結果に示すように、 電極上への SSの付着がおこるばかりか、 TOCお よび C 0 D c rの低減効果はないことがわかつた。
〔表 1 5〕
電解時間 SS TOC CODcr 濁 度
( r) (mg/し) (mg/L) (mg/L) (度)
0 1 20 950 3240 650
2 68 695 2200 350
4 55 586 2020 340
6 48 534 1 850 320 実施例 1 0
ポロンドープ法を用いて気相析出合成した円板状の積層状多結晶導電性ダイヤ モンド板 (直径 1 O cmxO. 05 cm) 2枚を電極に用い、 極間距離 5 mm
304978
31
に設定して電解反応檣とした。 電解質として硫酸ナトリウムを 1 4, OOOmg ZLを添加した有機性懸濁物 (SS) 含有排水 (SS=1 20mg/L TOC =95 Omg/L, CODcr=3240mg/L) 6 Lを電解貯槽に入れて、 ス ターラで攪拌した状態で送液ポンプを用いて、 電解反応糟に 1 O LZm i nの流 速で循環処理した (通液線速度 1, 200m/h) 。 電解反応槽の投入電気量は 電流密度が 0. 5A/cm2 (5000A/m2) となるように設定した。 電気 分解処理を 6時間継続して、 電解反応槽出口水の水を採取して TOC、 SS、 C ODcr および濁度の分析を行ったところ表 1 6の結果を得た。 通液線速度を大 きくとることで、 電気分解処理効果は、 実施例 9よりも改善されていることがわ かる。
〔表 1 6〕
電解時間 SS TOC CODcr 濁 度
(h r) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (度)
0 1 20 950 3240 650
2 <5 270 1 350 <1
4 <5 88 320 <1
6 <5 8 25 <1 第四の処理方法
実施例 1 1
ポロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶ダイヤモンド電極板 ( 5 x 5 x0. 05 cm) 2枚を陰 .陽両極にそれぞれ用い、 極間距離を 1 cm に設定して、 1段目の電気分解処理を行う電解反応槽を構成した。
一方、 有機窒素化合物としてテトラメチルアンモニゥムヒドロキシドを含有す る排水 (TOC : 770mgノし T-N : 230mg/L) 300mLに、 硫 酸ナトリウム 1 4, 200mgZLを添加して、 貯槽に貯留した。
上記ダイヤモンド電極への投入電気量を、 電流密度が 0. 2AZcm2 (20 00A/m2) となるように設定し、 この電解反応槽内に、 上記貯槽内をスター ラで攪拌しながら、 該貯槽内の排水を、 送液ポンプにより通液線速度 20 OmZ
hで導入し、 電解反応槽のオーバーフロー分を貯槽に戻す操作を行って、 循環処 理した。
上記のようにして循環処理を 3時間継続して行った後、 電解反応槽出口水を採 取し、 全有機体炭素 (TOC) と全有機体窒素 (T一 N) の分析を行った。 この結果は、 表 1 7に示す通りであり、 TOCが効率良く分解除去できること が確認できた。
〔表 1 7〕
電解時間 ( h r ) TOC (mg/L) T-N (mg/L)
0 770 230
1 230 1 90
2 50 1 65
3 6 1 40 次に、 上記の 1段目の電解反応槽で使用したものと同様のダイヤモンド電極を 陰極に用い、 陽極に、 板状体のチタン表面に白金をメツキした電極 (5 X 5 X 0. 3 cm) (以下、 チタン一白金電極と記す) を用いた 2段目の電気分解処理 を行う電解反応槽を構成し、 この電解反応槽で、 上記の 1段目の電気分解処理で 3時間の継続処理を行った後の排水について、 次の要領で 2段目の電気分解処理 を行った。
上記の 1段目の電気分解処理を行った後の排水に、 6, 000mg/Lの塩化 ナトリウムを添加し、 陰'陽両極への投入電気量は電流密度が 0. 2AZcm2 (2000A/m2) となるように設定した以外は、 上記の 1段目の電気分解処 理と同様にして循環処理を 1時間継続して行った。
電解反応槽出口水の水を採取し、 全有機体窒素 (T一 N) の分析を行った。 この結果は、 表 1 8に示す通りであり、 1段目の電気分解処理で十分に分解除 去できなかった T一 Nが効率良く分解除去できることが確認できた。
〔表 1 8〕
電解時間 (h r ) T-N (mg/L)
0 1 40
1 6 比較例 7
1段目の電気分解処理のみを 4時間継続して行う以外は、 実施例 1 1と同様に して循環処理を行った。
この結果は、 表 1 9に示す通りであり、 丁0〇は実施例1 1と同様に分解除去 できるものの、 T— Nの除去率は 40%程度であった。
〔表 1 9〕
電解時間 ( h r ) TOC (mg/L) T-N (mg/L)
0 770 230
1 234 1 96
2 52 1 60
3 8 1 36
4 <1 1 25 実施例 1 2
有機窒素化合物としてジメチルイミダゾリジノンを含む排水 (TOG: 526 mg/L, T-N : 246mg/L) 300m Lを用いる以外は、 実施例 1 1の 1段目の電気分解処理と同様にして 3時間継続して循環処理を行った。
この結果は、 表 20に示す通りであり、 実施例 1 1の 1段目の電気分解処理と 同様に、 T 0 Cが効率良く分解除去できることが確認できた。
〔表 20〕
電解時間 ( h r ) TOC (mg/L) T-N (mg/L)
0 526 246
1 317 185
2 60 165
3 6 135 次に、 上記の排水を実施例 11の 2段目の電気分解処理と同様にして、 2段目 の電気分解処理に付し、 電解反応槽出口水を採取し、 全有機体窒素 (T一 N) の 分析を行った。
この結果は、 表 21に示す通りであり、 1段目の電気分解処理で十分に分解除 去できなかった T一 Nが効率良く分解除去できることが確認できた。
〔表 21〕
電解時間 ( h r ) T-N (mg/L)
0 135
1 6 比較例 8
1段目の電気分解処理のみを 4時間継続して行う以外は、 実施例 12と同様に して循環処理を行った。
この結果は、 表 22に示す通りであり、 TOCは実施例 12と同様に分解除去 できるものの、 T一 Nの除去率は 40%程度であった。
〔表 22〕
電解時間 ( h r ) TOC (mg/L) T-N (mg/L)
0 526 246
1 308 196
2 52 160
3 5 136
4 <1 1 15
実施例 1 3
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状多結晶ダイヤモンド電極板 ( 直径 1 0 cmx厚さ 0. 05 cm) 2枚を陰極と陽極にそれぞれ用い、 極間距 離を 5mmに設定して、 1段目の電気分解処理を行う電気分解処理槽を構成した 一方、 有機窒素化合物としてテトラメチルアンモニゥムヒドロキシドを含有す る排水 (T0C: 1 00 Omg/U T-N: 29 Omg/L) 4しに、 硫酸ナトリ ゥ厶 1 4, 20 OmgZLを添加して、 貯槽にいれた。
上記ダイヤモンド電極への投入電気量を、 電流密度が 0. 5AZcm2 (50 00A/m2) となるように設定して、 この電解反応槽内に上記貯槽内の排水を スターラによって攪拌しながら、 排水を送液ポンプによって通液線速度が 200 0 m/ hになるように導入して循環処理を行った。 この循環処理を 6時間継続し て、 電解反応槽出口水を採取して、 全有機性炭素 (TOC) および全窒素濃度 ( T-N) を測定した。 この結果は、 表 23の通りであり、 TOCが効率良く分解 除去できることが確認できた。
〔表 23〕
電解時間 ( h r ) TOC (mgZL) T-N (mg/L)
0 1 000 290
1 475 263
2 284 224
3 1 34 1 93
4 39 1 62
5 5 1 31 次に、 上記 1段目の電解反応槽で使用したものと同様のダイヤモンド電極を陰 極に用いて、 陽極に白金メッキしたチタン板 (直径 1 O cmxO. 05 cm) を用いた 2段目の電気分解処理を行う電解反応槽を構成し、 この電解反応槽で上 記 1段目の排水について、 さらに、 次の要領で 2段目の電気分解処理を行った。
1段目の電気分解処理を行った排水に 600 OmgZしの塩化ナ卜リウ厶を添
力!]し、 投入電気量は電流密度が 0. SAZcrr^ (500 OAノ m2) となるよ うに設定した以外は、 上記 1段目の電気分解処理と同様に循環処理を 2時間継続 して行った。
電解反応槽出口の水を採取して、 全窒素濃度 (T一 N) の分析を行った。 この 結果は表 24に示す通りであり、 1段目の電気分解処理で十分に除去できなかつ た T— Nが効率よく分解除去できることが確認できた。
〔表 24〕
電解時間 ( h r ) T-N (mg^L)
0 1 31
1 52
2 4 産業上の利用可能性
本発明の第一及び第二の有機化合物含有排水の処理方法によれば、 工場排水等 中の有機化合物を、 有害で悪臭等を放つ副生成物を生じることなく、 二酸化炭素 や水等の無害な無機化合物にまで、 容易に分解することができる。 また、 電流効 率が良好なダイヤモンド電極を用いるため、 使用装置をコンパクト化でき、 しか もダイヤモンド電極は、 化学的安定性にも優れるため、 電極の寿命が長期化し、 工場排水等を、 経済的に、 かつ実用的規模で、 電気分解処理することができる。 また、 本発明の第三の有機化合物含有排水の処理方法及びこれに係る装置によ れば、 有機性懸濁物の処理コストを抑制しつつ、 有機性懸濁物含有水を電気分解 処理するときにエネルギ効率が大幅に低下し、 装置の寿命が大幅に短くなつてし まうのを抑制することができる。 詳細には、 排水に含まれる有機性懸濁物を予め 除去する必要なく、 排水に含まれる溶解性有機物を有機性懸濁物と共に酸化分解 処理することにより、 排水中の溶解性有機物および有機性懸濁物を同時に分解除 去し、 排水中の全有機炭素濃度 (TOC) 及び化学的酸素消費量 (COD) を低 減することができる。
さらに、 本発明の第四の有機化合物含有排水の処理方法によれば、 工場排水等 中の有機窒素化合物を、 炭酸ガス、 窒素ガス、 水等の無害な無機化合物にまで、
容易に分解することができる。 また、 有機窒素化合物を多量に含む排水を、 化学 的安定性にも優れ、 かつ電流効率が良好なダイヤモンド電極を陰■陽両極に用い る 1段目の電気分解処理で電気化学的に処理した後、 陰極のみにダイヤモンド電 極を用いる 2段目の電気分解処理で電気化学的に処理するため、 全体の使用装置 をコンパクト化、 かつ低廉化することができるのみならず、 電極の寿命を長期化 することもでき、 工場排水等を、 経済的に、 かつ実用的規模で、 電気分解処理す ることができる。