JP2006068617A - 水媒体の処理方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 導電性特殊電極を用いた電解処理を利用して、水媒体、特に難生分解性の水媒体を効率よく処理することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】 本発明の一態様は、水媒体の処理方法であって、水媒体を、導電性特殊電極を用いた電気分解工程にかけ、次に、水処理工程にかけることを特徴とする水媒体の処理方法を提供する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、水溶液、スラリー、エマルジョン、ミセル、懸濁液、濃厚液、汚泥等で形態を問わない各種水媒体の処理方法に関し、特に難生分解性の水媒体を効率よく処理することができる方法に関する。
排水又は廃液は、水溶液、スラリー、エマルジョン、ミセル、懸濁液、濃厚液、汚泥混合液等の各種形態(本明細書においてはこれらを総称して「水媒体」という)で、民間工業施設、公共施設、第三セクター施設等から排出されている。これらの排水又は廃液は、公共水域に放流する前に水処理を行って無害化する必要がある。排水又は廃液に対して最も一般的に行われている水処理方法は、生物処理であり、処理コストが比較的低いため、広く且つ昔から普及している。生物処理には大きく分けて好気性処理と嫌気性処理がある。前者は、主に水媒体の化学的酸素要求量(COD)が数10〜数千mg/L以下の場合に用いられ、後者は主に水媒体のCOD1000mg/L以上の場合に用いられている。また、し尿処理や下水処理などでは、脱窒素処理が好気性処理又は嫌気性処理単独では完結できないため、両者の特徴を生かして、好気性生物処理と嫌気性生物処理とを組み合わせて用いる場合もある。いずれにしても、生物処理は、処理対象とする水媒体が主に生分解性物質で構成されている場合に多く使われている。食品工場、飲料工場、ビール工場の各種排水又は廃液、焼酎粕、残飯、家畜糞尿、下水、し尿、バイオマス廃棄物のように自然起源の物質が多い場合には、生物処理の適用が可能な場合が多い。
しかしながら、化学物質またはペトロケミカル由来の化学的に合成された物質が水媒体中に含まれる場合や、下水処理場の有機性汚泥又はメタン発酵汚泥のように硬い細胞壁を持つ菌体が含まれている場合などのように、生分解性が低い物質を多く含む水媒体に対しては、生物処理を適用することが困難なことがある。また、リグニン、フミンなどのように、自然起源の物質であっても分子内にベンゼン環官能基を有する高分子である場合などは、生分解性が非常に低いことがある。すなわち、生物処理において用いられる微生物が消化できない物質が多く含まれている水媒体については、基本的に生物処理が困難である。また、生分解性物質が含まれる水媒体であっても、処理プロセスとして実用的な時間内では完結できない場合がある。更に、生分解性物質が多く含まれていても、水媒体中に微生物に対して毒性を示す物質又は生物阻害を起こす物質が少量でも含まれていると、生物処理がうまく働かないことがある。例えば、アンモニア、ベンゼン、フェノール類は数多くの微生物活動に阻害を起こすことが知られている。また、酢酸は本来生分解性が非常に高い物質であるが、ピクルスが保存食となることから理解できるように、水媒体中に酢酸が高濃度で含まれていると微生物が繁殖できなくなり、水媒体自体は難生分解性になることがある。同様に、サッカロースなども生分解性が高い物質であるが、廃糖蜜のように糖分が高濃度に含まれていると、微生物細胞と水媒体の溶質濃度差に起因する浸透圧が発生して微生物が生殖できなくなるめ、難生分解性の水媒体となる。塩類濃度が高い漬物汁なども同じである。これらの濃厚な廃液は、希釈すると難生分解性ではなくなって生物処理が可能になることがある。但しこの場合には、処理しなくてはいけない水媒体の量が多くなるため、大量の水媒体を処理するためのコスト、設置スペース等の問題のために生物処理を用いた水処理プロセスとして成立させることが困難になる場合がある。
更に、染色排水のように水媒体中に色素成分が含まれていると生物処理が極めて困難になることがある。色素成分は全般的に微生物に対して難生分解性であるため、色素成分を含む水媒体を生物処理にかけた場合、COD、BODが十分に除去できても、色度がほとんど取れないことがある。
更に、難生分解性物質、易生分解性物質の含有割合のみを基準とした生物処理の可否に対する判断だけでなく、生物処理を行うと根本的に危険な水媒体もある。特に、医薬品製造工場や病院などからの抗生物質が含まれている排水・廃液がそれに該当する。生物処理では好気性菌又は嫌気性菌を培養して水媒体を浄化させる。これらの好気性菌・嫌気性菌の世代交代は数時間〜数日と非常に短いため、抗生物質が水媒体の処理場に流入し続けると、抗生物質に対する抗体を持った菌が容易に発生し、増殖する可能性がある。人間に害を及ぼし、抗生物質が効かないMRSA(メチシリン・レジスタント・スタヒロコッカス・アウレウス;院内感染ブドウ球菌)も、同じ原理により抗生物質が乱用された院内で発生したと考えられている。従って、上記のような排水を生物処理によって処理すると、水媒体の処理場が抗体を持った菌の培養地になり、周辺環境にこれらの菌を放出する危険性がある。
一般的に且つ本明細書内において、難生分解性物質とは生物的に分解困難な物質を指す。前記したように、生分解性物質または自然起源の物質が含まれていても、必ずしも生物処理単独では水媒体の実用的な処理ができない場合がある。本明細書内で「難生分解性の水媒体」とは、難生分解性物質、毒性物質、生物処理に対して阻害性の物質が含まれている水媒体に限らず、前記したような生物処理が水処理プロセスとして適用困難な水媒体一般を指す。また、難生分解性の水媒体の形態としては水溶液、固形物が含まれるスラリー、エマルジョン、ミセル、懸濁質、濃厚液、汚泥でもよい。
このような定義下の難生分解性の水媒体としては、下水処理場や水処理場の汚泥混合液;メタン発酵プロセス等の各種汚泥類;石油精製工場や石油製品工場の排水・廃液;化学薬品工場の排水・廃液;医薬品製造工場や病院の排水・廃液;半導体プロセス(フォトレジスト工程、洗浄工程、鍍金工程)の各種工程排水・廃液;写真現像廃液;機械加工工場の各種使用済み切削油(油性、水溶性)廃液;塗料製造工程の洗浄水・排水;製缶工場、車体工場、板金工場の塗装工程洗浄水・排水;農薬製造工程の排水・廃液;染色排水;染料工場排水;発電所のイオン交換再生廃水(コンデミ排水);有機物やアンモニアが含まれる鍍金工場の鍍金廃液や鍍金洗浄水;などが例として挙げられるが、これらに限定されず、これら以外にも生物処理が困難な水媒体は数多くある。
このような難生分解性の水媒体は、その処理を物理化学的方法などの他の手段にゆだねる必要性がある。水媒体のCODが数100mg/L以下の場合には、オゾン、紫外線、過酸化水素、次亜塩素酸等を用いて処理される場合がある。またオゾン、過酸化水素と紫外線とを組み合わせた促進酸化法(AOP)が用いられる場合もある。AOP、紫外線は特にダイオキシン等の微量の有機塩素化合物が含まれている水媒体の処理にその効果を発揮することが知られている。オゾン単独処理も、低濃度の色素成分、染料等が含まれている場合に効果的である場合がある。次亜塩素酸処理は水媒体を周囲環境に排出する前に殺菌、消毒処理が必要な場合に適している。
水媒体のCOD濃度が低く、色度成分が多い場合、粒状活性炭による吸着処理で色度成分がうまく除去できるケースがある。しかしながら、比較的高濃度のCOD成分が含まれていると活性炭の吸着性能が短時間で低下する場合がある。活性炭のコストも必ずしも安価ではなく、さらに使用済み活性炭自体の処分の必要性があるため、色度成分の除去のために活性炭を使用できる難生分解性の水媒体は限定される。
また水媒体中に懸濁している物質が多く含まれる場合は、凝集処理を行うと効果的に水処理ができる場合がある。ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸バンド等、Al系又Fe系の凝集剤を水媒体に添加すると、マイナスに荷電されている懸濁物質が中和され、ファンデールワールス力によって懸濁物質同士が凝集する。凝集によりフロックが形成されたら、このフロックを沈殿法または濾過法で除去することによって水媒体を処理することができる。しかしながら、水媒体に完全に溶解している物質が多く含まれている場合などには、凝集沈殿又は凝集濾過などの処理法はほとんど効果を発揮しない。また、下水汚泥、メタン発酵汚泥等を脱水する前に凝集剤を添加して、汚泥から濾液を絞り出しやすくするような凝集剤の使い方もある。しかしながら、有機性汚泥の場合は菌体の細胞壁内に多量の水分が閉じ込められているため、凝集剤を用いて脱水汚泥を含水率80%以下に脱水するのは非常に困難である。従って、凝集処理は水媒体の懸濁物質のみに効果があるので、ほとんどの場合は最終処理ではなく前処理として扱われる。
汚泥の処分法に関しては、10数年前までは海洋投棄と言う手段も用いられていたが、ロンドン条約の発効等により法的規制が厳しくなり、現在では実施できなくなっている。さらに、埋め立てという方法もあるが、地下水資源の汚染の懸念、地域住民の環境意識の高まり、処分場の枯渇などによってこのような処分は実行困難となってきている。
また、難生分解性水媒体の効果的な物理化学的処理方法として燃焼法がある。燃焼法では、水媒体を温度800〜900℃で加熱燃焼処理することによって、水は水蒸気に、有機物は炭酸ガスと水に、無機物は灰になるため、廃棄物を著しく減量化できる。燃焼法は、汚泥、濃厚廃液、その他各種の生物処理が適用できない水媒体の処理に用いられている。水媒体を燃焼法で処理する場合は、灯油、都市ガス等のバーナーが設けられた焼却炉で行うか、或いは固形ゴミを燃やす焼却炉で発熱量の高いゴミと一緒に燃焼処理するのが一般的である。写真現像廃液、農薬工場廃液などの水媒体は、灯油バーナーが設けられた焼却炉で処理されている。
しかしながら、燃焼法で水媒体を処理する場合には、水媒体中に可燃性物質が少なくとも約40%以上含まれていないと自燃は不可能である。この熱量が足りない分は前記したように灯油などで補う必要があり、水媒体中に可燃性物質が少ないと燃料代のコストが高くなる。また、廃プラスチック等の発熱量が高い廃棄物を焼却している炉で水媒体を噴霧燃焼させる場合は、炉温が下がるなどの原因によって不完全燃焼が起りやすくなるという問題がある。さらに、近年、廃棄物を燃やすこと自体に対して、地域住民の了解が得られず、風当たりが大変強い。ダイオキシン類対策特別措置法などの法規制により小規模の焼却炉の運転は中止されてきており、新規の焼却設備の設置は地域住民の了解が得られず、また法的に規制されてきている。焼却炉を維持運転するためには排ガス中のダイオキシン濃度等の法定検査を行い、排出基準以下になっていることを所轄監督所に届け出る必要がある。この結果、不完全燃焼、高温燃焼などの焼却運転管理が徹底されることが厳しく求められてきており、中小規模の焼却炉の維持管理は大変困難となってきている。したがって、小規模な焼却炉は廃止して、廃棄物を遠隔輸送し、集中して大規模装置で焼却を行う傾向にある。大規模の焼却炉では、運転制御管理、排ガス制御管理が比較的徹底しやすいが、大掛かりな排ガス処理設備の設置、焼却灰や飛灰の処理コスト、運搬費などが原因で必ずしも処理コストは安くならない。
近年、水媒体の新たな物理化学的処理法として、電極反応による電気化学的な水処理法が注目を集めている。電気化学的な水処理には、通電すると処理を開始し、通電を止めると処理が停止するという運転のし易さ、薬品が必要ないこと、コンパクトな装置で処理できること、電子のみが試薬の代わりを務めること、常温常圧で処理ができることなどのいわゆるグリーンケミカル的なイメージが定着しつつある。
水媒体に塩素イオンが含まれていると、DSA(Dimensionally Stable Electrode)などの貴金属電極で次亜塩素酸を発生させることが可能性であり、この次亜塩素酸によって水媒体に含まれているアンモニア、色素成分を分解できる場合がある。水媒体中のアンモニアは、次亜塩素酸とのブレークポイント反応により窒素ガスまで無機化することができる。しかしながら、これらの貴金属のDSA電極では、アンモニア、色素成分以外のCOD成分を分解する効果はほとんどない。そこで、酸素発生過電圧が高い二酸化鉛などの電極を用いた電気化学的水処理も提案されている。これらの電極では、直接電極表面でCOD分解が起り、無機化させる効果があるようである。しかしながら、これらの電極を用いた電気化学的処理によるCOD分解の効率は必ずしも高くなく、また電極が重金属で構成されているため、電極構成重金属が処理水へ溶出することが懸念される。
近年、導電性ダイヤモンドを用いた電気化学的水処理法が注目されている。ダイヤモンドに導電性を持たせ、電極として用いて電気化学的反応を起こさせた場合にCODを除去する効果があることは、約10年前に報告されている。しかしながら、この報告でCOD分解の現象は確認されたものの、当時はまだメカニズムが明確でなく、また実用的な電極を製造することはできなかった。しかしながら、近年のCVD法を用いた成膜技術の発展により、導電性ダイヤモンド電極の製造技術は目覚しく進歩してきた。そして、近年、導電性ダイヤモンド電極を用いて水媒体の電気化学的処理を行うと、CODの分解に関して二酸化鉛電極を用いた場合よりも効率が高いことが報告された(Ghrardini et Al.: Electrochemical Oxidation of 4-chlorophenol for wastewater treatment, J. Electrochemical Society, 148, D78-D82, 2001)。導電性ダイヤモンド電極は二酸化鉛と異なり、水媒体中に溶出しても成分は炭素のみであるため重金属の溶出の問題がなく、また電極表面で発生するOHラジカルによってCOD分解の効率は非常に高い。また、この導電性ダイヤモンド電極で発生するOHラジカルは非常に高い殺菌効果を有することが知られている。
天然のダイヤモンドは絶縁体であるが、ダイヤモンドはシリコンと同じ第IV族の元素であるため、第III族の元素であるホウ素等をドーピングするとp型の半導体となり、一方第V族の元素である窒素等をドーピングするとn型の半導体となる。ドーピング剤の量を多くすると、ダイヤモンドは10mΩcm等の金属並みの低い電気抵抗を示す導体になる。この導電性ダイヤモンドを電気化学反応の電極として用いると、他の電極材料では見られない広い熱力学の窓(水素発生過電圧と酸素発生過電圧の電位窓)を示す。すなわち、導電性ダイヤモンド電極は、電気分解に使用すると酸素と水素が発生しにくい電極である。このため、導電性ダイヤモンド電極を陽極として用いると、酸素が発生する代わりにOHラジカルの発生が進行し、このOHラジカルがCODを分解すると考えられる。OHラジカルは非常に高い酸化能力を有するため、ほとんどの有機物等のCOD成分を炭酸ガスと水まで分解することが可能である。
上記に説明したように、導電性ダイヤモンド電極を用いた水媒体の電気化学的処理はメリットがあるものの、従来の技術では難生分解性水媒体の処理プロセスとして実用化するためには多くの課題があった。
導電性ダイヤモンド電極を用いた電気分解による難生分解性水媒体の処理においては、水媒体中に完全に溶解しているCOD成分の濃度が高い間、特に溶解性CODが数千mg/L以上の場合には、ほぼ100%の電流効率でCOD成分が炭酸ガス、水、窒素等へ無機化される。しかし、水媒体中のCOD濃度が低下すると、この電流効率は著しく低下し始める。本発明者らは、工場から排出される難生分解性水媒体を導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理にかけて、水媒体中のCOD濃度とCOD分解の電流効率との関係を調べた。結果を図1に示す。
導電性ダイヤモンド電極を運転する際の電流密度にもよるが、一般的な電流密度の範囲以内では水媒体中のCODが500〜2000mg/L以上であると導電性ダイヤモンド電極のCOD分解に関する電流効率はほぼ100%である。しかしながら、このCOD以下になると電流効率が著しく低下し始める。COD成分が無機化するためには、導電性ダイヤモンド電極の表面で発生しているOHラジカルまで水媒体中のCOD成分が到達する必要がある。OHラジカルは導電性ダイヤモンド電極の表面で連続的に発生しているが、寿命が短いため、電極表面から溶液中に放出されて所謂溶液反応的な酸化分解反応を起こすには至らない。すなわち、電極表面でしかCOD成分の無機化反応は進行しない。従って、水媒体中のCOD濃度が低くなると、電極表面への物質移動律速となり、COD分解の電流効率が大きく低下する。この場合、機械的に水媒体を攪拌するなどしてレイノルズ数(流れが層流であるか乱流であるかを示す無次元数)を高くしても、この物質移動律速を解消するには限界があり、COD分解の電流効率を維持するのは極めて困難となる。COD分解の電流効率が下がると、処理に必要な電力は大幅に増大するため、処理コストが高くなるという問題が出てくる。
物質移動律速になると、導電性ダイヤモンド電極の表面で発生するOHラジカルが無駄に消費されてしまう。導電性ダイヤモンド電極の表面において、CODの分解ではなく、OHラジカルが自己分解などを起こして酸素ガスが発生し始める。ここで発生する酸素ガスはCOD成分とはほとんど反応しない(少なくとも一般的な電極の使用条件下である150℃以下ではほとんど反応性がない)。この場合、陽極反応の生成物は炭酸ガスではなく酸素ガスとなる。
一方、陰極反応では水の還元反応が起り、水素ガスの発生が進行する。陰極では導電性ダイヤモンド電極を用いても、他のDSA電極、又は白金、チタン、ステンレス電極を用いても、水素ガスの発生が通常進行する。酸素ガスと水素ガスが同一電解槽内で同時に発生すると、爆発性の酸素ガスと水素ガスの混合気生成が懸念され、プロセスの安全性から問題が生ずる。ソーダ工業において用いられる電解槽では、陽極室と陰極室を分離させることにより発生ガスが混合しないように、分離膜を用いるのが一般的である。このような分離膜には、比較的耐久性の高いフッ素系のイオン交換膜が使われることが多い。しかしながら、このようなフッ素系のイオン交換膜は比較的高価であり、更に導電性ダイヤモンド電極で発生するOHラジカルに対して耐食性の問題がある。運転中に電解槽内で隔膜が導電性ダイヤモンド電極に触れたりすると、隔膜が著しく劣化する可能性が高い。さらに、ソーダ工業のように水質管理が徹底された純飽和食塩水のみが電解槽に導入される場合には問題ないが、難生分解性の水媒体、すなわち、汚れた排水や廃液を処理する場合には、隔膜の劣化が起りやすい。難生分解性の水媒体では、様々な物質が水媒体中に含まれているため、これらの物質の付着などにより分離膜の閉塞やイオン交換機能の低下などが起り易い。隔膜は一般的に「きれいな水媒体」の処理に適しているが、本発明が意図するような難生分解性の水媒体の処理に使用することは困難である。
上記で説明した物質移動律速が起こる状態で導電性ダイヤモンド電極を用いた電解槽の運転を継続すると、導電性ダイヤモンド電極自体の耐久性に関わる更に深刻な問題も発生しうる。水媒体中のCOD濃度が高く、COD成分の電極表面への物質移動律速が起っていない間は、電極表面で発生したOHラジカルはCOD成分の分解によって消費される。そして、COD成分の電極表面への物質移動律速が起こってCOD成分が導電性ダイヤモンド電極に届かなくなると、電極表面で発生したOHラジカルは最終的に酸素ガスになる。しかし、OHラジカルが酸素ガスに変換される前に、まだ活性があるOHラジカルは導電性ダイヤモンド電極自体と反応する可能性がある。導電性ダイヤモンド電極で発生するOHラジカルはほとんどの有機物を酸化分解できるので、安定性が高いダイヤモンドの炭素(sp)とまったく反応しないとは断言できない。本発明者らは、上記のような物質移動律速が起っている状態で導電性ダイヤモンド電極を用いた電解反応によって有機物の分解試験を行った。電解に使用する前と使用した後の導電性ダイヤモンド電極の表面の状態を示す電子顕微鏡写真(SEM)を図2に示す。使用前において導電性ダイヤモンド電極の表面に多結晶のダイヤモンド粒子が均一に成膜されているが(図2a)、一定期間使用した後にはこのダイヤモンドの結晶粒子は消耗されている様子が分かる(図2b)。これは、COD成分の分解に消費されなかったOHラジカルが、導電性ダイヤモンド電極の炭素を酸化させた結果であると考えられる。
導電性ダイヤモンド電極の導電性ダイヤモンド薄膜は、メタン等の安価な有機物を炭素源として用い、CVD法によって製造される。そのため、将来的にはより安価な導電性ダイヤモンド電極の製造が期待できる。しかし、現状ではまだそれほど安価ではなく、さらに高温で行うCVD成膜工程のランニングコストが高い。したがって、導電性ダイヤモンド電極を数日または数ヶ月毎に劣化したら取り替えればよいということにはならない。短期間で導電性ダイヤモンド電極を取り替えなくてはならないとすると、メンテナンス時間、メンテナンス労務等のコストが発生し、難生分解性水媒体の処理プロセスとして成り立たせることは難しくなる。
水媒体に溶解しているCOD成分の濃度が低い場合には上記のような問題があるが、汚泥のようなスラリー、すなわち水媒体に溶解していない浮遊物が存在する場合にも、電流効率が低下するという問題が起こる。これは、固体又は懸濁している物質の電極表面への接触の悪さが原因である。
また、上述したような物質移動律速の問題が起らない高濃度の溶解性COD成分を含む水媒体に対して、導電性ダイヤモンド電極を使用した電解処理によって完全無害化処理を行う場合にも下記に記述するような問題がある。
導電性ダイヤモンド電極の表面での電気化学反応は、酸化還元電位表の下記の電気化学反応式を参考にすることができる。
[式1]
酸素の分子量は16であるので、水媒体の化学的酸素要求量すなわちCOD 1gを分解するのに必要な電気量はファラデーの法則から
[式2]
となる。
すなわち、電流効率が100%であっても1gのCODを分解するのには3.4Ahの理論電気量が必要である。導電性ダイヤモンド電極は、広い熱力学の窓をもち、酸素ガス発生過電圧が高いことが知られている。酸素ガスを発生する前にOHラジカルを発生するのであれば、電解しているときのダイヤモンド電極電位は少なくとも式(1)の2.8V以上になっている必要がある。実際に電解反応を行う場合の導電性ダイヤモンド電極のセル電圧は、この電極過電圧以外に、溶液抵抗や、電極で生成するガスによる電解液の電気抵抗の増加などにより、少なくとも4〜5V以上が必要である。運転する電流密度、電解液温度、水媒体の電気伝導度などにもよるが、セル電圧(単一電解層の電極間電圧)の一般的な運転値を挙げるとすると、大体7V位である。
従って、CODを1g分解するのに必要な電力は、3.4Ahx7V=23.8VAh≒24Wh/g−COD又は24kWh/kg−CODとなる。
導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって、濃厚な水媒体、例えばCOD成分が5%(50kg/m)含まれている水媒体1mを処理するのに必要な電力は50x24kWh=1,200kWhとなり、決して安い処理コストとは言えない計算になる。すなわち、COD濃度が低いと物質移動律速が起こって無駄な電力を消費する問題があり、一方COD濃度が高いとCOD分解の電流効率は良いがCODの絶対量に比例して電解コストがかかるため、処理する水媒体の容積当りの電力費が高くなるという欠点がある。
上記のように、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体を完全に処理する方法には問題点が多い。本発明者らは、これらの問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、水媒体を、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理にかけることによって、水媒体の生分解性を向上することができることを初めて見出した。
本発明者らは、まず、水媒体の生分解性を示す指標の一つとしてBOD/CODに着目し、各種の実験を行った結果、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によってこの値が増加することを明らかにした。また、水媒体の生分解性が向上する原因は、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって揮発性脂肪酸(VFA)類、または可溶性の糖類が増加するためであることを突き止めた。すなわち、VFA類または可溶性の糖類は生分解性が高いため、COD成分がVFA又は可溶性の糖に変換されることによって、COD成分がBOD成分へと変換される。さらに、導電性ダイヤモンド電極による電解処理によって水媒体を処理すると、水媒体の粘性などが変化するため、水媒体の凝集性、沈降性、ろ過性などが向上することを見出した。そして、本発明者らは、これらの水媒体の生分解性の向上、凝集性、沈殿性、ろ過性、吸着性、晶析性などの向上は、水媒体中のCOD成分が導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で完全に除去される前に起こることに着眼し、本発明に係る水媒体の処理方法の発明を完成するに至った。
即ち、本発明の一態様では、水媒体の処理方法であって、水媒体を、導電性ダイヤモンド電極を用いた電気分解工程にて処理し、次に、水処理工程、例えば、生物処理、凝集沈殿処理、濾過処理、油水分離処理、吸着処理、晶析処理のいずれか、或いは、生物処理と、凝集沈殿処理、濾過処理、油水分離処理、吸着処理、晶析処理のいずれか一つの工程又はこれらの少なくとも二つ以上の工程との組合せによって処理することを特徴とする水媒体の処理方法が提供される。
上述したように、本発明者らの知見によって、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体の生分解性が著しく向上されるため、水媒体を生物処理によって処理することが容易になり、生物処理によって水媒体の処理を完結して無害化させることにより、処理プロセス全体のコストを大幅に引き下げることが可能となる。
同様に、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体中の懸濁物質の凝集性が大いに改善されるために、凝集沈殿の効率が上がり、また凝集剤の使用量が少なくてすむ。水媒体中の懸濁物質の凝集性が悪い場合は、水媒体中に含まれる粘質成分が影響している場合が多い。この粘質成分は、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって分解されるため、さらさらとした水媒体に変換される。従って、この凝集性が改良された水媒体に凝集沈殿処理を行い、凝集物としてCOD成分を除去することにより、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理における消費電力を減少させることが可能となる。
更に、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体の粘度が下がるため、精密濾過膜(Micro Filtration、MF)、限外濾過膜(Ultra Filtration、UF)、逆浸透膜(Reverse Osmosis、RO)、砂濾過、フィルタープレス濾過、ベルトプレス濾過等の各種濾過操作が可能となり、また濾過で水媒体中の汚濁物質を除去することにより、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理に必要な電力を節約することができ、処理プロセス全体のコストを下げることができる。さらに有機性汚泥の場合のように、菌体細胞内に閉じ込められている水分は、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって細胞壁が壊されるため、汚泥の脱水性が向上する。
更に、エマルジョン状の水媒体に対して導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理を行うと、乳化破壊、ミセル破壊が起るために、油相、水相の相境界があらわれ、油水分離が可能となる。
また、本発明においては、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理に続く後段の水処理工程として、生物処理と、凝集沈殿処理、濾過処理、油水分離処理、吸着処理、晶析処理のいずれか一つの工程又はこれらの少なくとも二つ以上の工程との組み合わせを採用することができる。例えば、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で水媒体の生分解性を向上させた後に、凝集沈殿処理、濾過処理などによって、水媒体中の懸濁性物質や固形物を除去し、次いで生物処理することにより水媒体を効率的に分解処理することができる。水媒体中に懸濁している物質や浮遊している固形物を水媒体から除去するには、凝集沈殿、濾過がもっとも安価なプロセスであり、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理後の水媒体中の懸濁性又は固形性のCOD成分が除去可能となる。また、濾過、沈殿で除けない水媒体中に溶解しているCOD成分は、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって生分解性が高くなるため、生物処理が容易になる。また、油水混合の水媒体を処理する場合には、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって油水分離が可能となり、油相を除去した後の水相は生物処理で効果的に分解処理ができるようになる。
本発明方法においては、生物処理工程として嫌気性生物処理又は好気性生物処理を用いることができる。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって、水媒体中の難生分解性のCOD成分を、有機酸や可溶性の糖に変換することにより、これらの物質を嫌気性処理によって速やかにメタンガスに変換することができる。この方法は、水媒体のCOD濃度が高い場合に特に有効な方法であり、発生するメタンガスはエネルギー源として使えるため、廃棄物からのエネルギー回収も可能となる。また、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体の生分解性を高めた後、処理コストが安価な好気性処理を行うこともできる。この方法は、特に水媒体の濃度があまり高くない場合に有効である。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理においてあくまでも生分解性を高めるだけの最小限のエネルギーを使い、また導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理の効率が悪い低いCOD濃度の水媒体に対しては生物処理を有効に作用することができるので、生物処理を組み込んだ処理を行うことにより処理プロセス全体の効率化が図られる。
本発明方法においては、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程を、水媒体中のCOD成分を完全に分解させない状態で停止し、後段の水処理工程を行うことが好ましい。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体中のCOD成分を完全分解するには、水媒体中のCOD濃度が高い場合には単位容積当りの消費電力が高くなるという問題があり、また水媒体中のCOD濃度が低い場合には電流効率が悪くなり無駄な電力を消費するという問題がある。しかしながら、本発明の好ましい態様によれば、水媒体中のCOD成分を全量、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって処理するのではなく、その一部分のみを処理することにより、生分解性を高め及び/又はろ過性、沈降性等を向上させて、後段で水処理、例えば、生物処理や凝集沈殿処理などを行うことより、コスト的、効率的に優れた水媒体の処理方法が提供される。更に、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理では、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理の効率が良い高濃度COD領域のみで水媒体の処理を行うため、導電性ダイヤモンド電極自体が発生したOHラジカル自身のアタックによって自己劣化するという問題を防ぐことができ、導電性ダイヤモンド電極の耐久性を増すことができる。
本発明方法は、難生分解性の水媒体の処理に特に好適に用いることができる。
本発明の好ましい態様においては、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理において、水媒体の生分解性を向上して、水媒体のBOD/CODを0.2以上とすることが好ましい。水媒体のBOD/CODが0.2以下であると、生分解性が低くなるために後段の生物処理が困難となる。後段の生物処理として好気性生物処理を行う場合には、水媒体を希釈する、生物処理時間を長くする、すなわち滞留時間を長くする等の対応によって、水媒体のBOD/CODが0.2以下であっても対応可能な場合があるが、処理効率は悪くなる。また、水媒体のBOD/CODが0.2以下であっても、微生物を長期間培養する、すなわち微生物の世代交代を行わせて馴致させることによって生物処理が可能となる場合もある。しかし、この方法では特殊な限定された菌相ができるため、同じ水質の水媒体が常に生物処理槽に供給されている場合には問題はないが、水媒体の水質が少しでも変動すると生物処理の能力が著しく低下するおそれがある。後段の生物処理がスムーズに進行させるためには、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体のBOD/CODを0.2以上とすることが望ましく、0.3以上とすることがより望ましく、0.5以上とすることが更に好ましい。水媒体のBOD/CODを0.5以上にすると、嫌気性処理であるメタン発酵も適用が容易となる。
本発明方法においては、水媒体中のCOD1グラムに対して、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程において34Ah以下の電気量を与えることが好ましい。水媒体の初期COD濃度が数100mg/Lと低い場合には、水媒体容積当り(例:m当り)の消費電力が少ないため、これ以上の電気量の負荷でもコスト的に成り立つ場合があるが、いずれにしても電流効率が悪い領域で導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理を行うことになり、電力の無駄遣いになるので好ましくはない。より好ましい態様においては、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程において、17Ah/g−COD以下の電気量を与えることが好ましく、理論電気量の3.4Ah/g−COD以下を与えることが更に好ましく、負荷電気量を理論電気量の95%以下に抑えることが更により好ましく、理論電気量の90%以下とすることがより一層好ましい。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程において与える電気量の下限値としては、0.034Ah/g−COD以上であることが好ましい。電気量がこれ以下であると、水媒体の生分解性の向上、沈降性、ろ過性などの改善などのように水媒体の物性値又は水質の変化を起こして、後段の水処理をスムーズに進行させることが困難となる。下限電気量としてより好ましい数値は、0.34Ah/g−COD、すなわち理論電気量の10%以上であり。さらに好ましい数値は、0.68Ah/g−COD、すなわち理論電気量の20%以上である。
本明細書で用いる用語の説明を行う。
「水媒体」とは、水が主成分である媒体であり、スラリー、エマルジョン、水溶液等の形態は限定しない。また水媒体の構成成分は、有機物、無機物、塩類等のいずれであってもよい。
「難生分解性の水媒体」とは、前記したように従来の生物処理等の水処理法で処理困難な水媒体の意味である。具体的には、ペトロケミカルを原料とする化学的に合成された物質が含まれる場合や、有機性汚泥、メタン発酵汚泥のように硬い細胞壁を持つ菌体が含まれている場合などのように、生分解性が低い物質を多く含む場合には、難生分解性の水媒体となる。更に、水媒体中に、微生物に対して毒性を示す物質や生物阻害を起こす物質、例えばアンモニア、ベンゼン、フェノール類が含まれている水媒体も難生分解性の水媒体である。また、酢酸や糖分が高濃度で含まれている水媒体も、微生物が繁殖できないため、難生分解性の水媒体と言うことができる。更に、色素成分が含まれている水媒体なども難生分解性の水媒体であり、更には、抗生物質が含まれている水媒体のように生物処理を行うことが問題となるものも本発明でいう「難生分解性の水媒体」に含まれる。
本明細書内で、COD(化学的酸素要求量)との記載は重クロム酸カリウムを酸化剤として求めた水媒体の化学的酸素要求量(CODCr)を意味する。物理化学的な酸素要求量としては、CODCr以外に、過マンガン酸カリウムを酸化剤として用いたCODMn、燃焼による酸素消費量から求めたTOD(Total Oxygen Demand)、及び完全酸化の反応式から求められる理論的酸素要求量ThOD(Theoretical Oxygen Demand)がある。これらの物理化学的酸素要求量は測定方法に違いがあるため、同じ水媒体の酸素要求量を求めても数値に違いがでてくる。本明細書内で用いるCODCrの値は、他の物理化学的酸素要求量と、ThOD≧TOD≧CODCr≧CODMnの関係にある。すなわち、本明細書記載の水媒体の化学的酸素要求量の数値はCODCrであるため、ThOD又はTODで求めるとより高い数値、またCODMnとして求めた場合はより低い数値になる場合が多い。本明細書内で用いるBODは生物的酸素要求量の意味であり、5日間で求めるBODの値である。本明細書内で水媒体の生分解性を示す指標として用いるBOD/CODの値はBODの値をCODCrの値で割ったものであり、0〜1又は0〜100%の数値で記述する。
本発明の一態様を図3を用いて説明する。本発明の一態様によれば、水媒体1は、まず前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2で処理され、ここで発生する電解処理水3は次いで後段の水処理工程4で処理され、処理水5が排出される。
本発明によれば、難生分解性の水媒体を特に好適に処理することができる。本発明によって処理することのできる難生分解性の水媒体としては、下水処理場、水処理場の汚泥;メタン発酵プロセス等の各種汚泥類;石油精製工場、石油製品工場の排水・廃液;化学薬品工場の排水・廃液;医薬品工場や病院の排水・廃液;半導体関係(フォトレジスト工程、洗浄工程、鍍金工程)の各種工程排水・廃液;写真現像廃液;機械加工工場の各種使用済み切削油(油性、水溶性)廃液;塗料製造工程の洗浄水・排水;製缶工場、車体工場、板金工場の塗装工程洗浄水・排水;農薬製造工程の排水・廃液;染色排水、染料工場排水;発電所のイオン交換再生廃水(コンデミ排水);有機物、アンモニアが含まれる鍍金工場の鍍金廃液、鍍金洗浄水;上水水処理場の膜濾過濃縮水;などを挙げることができ、更に本発明はこれらに限定されることなく生物処理が困難な水媒体一般に適用することができる。
処理対象の水媒体1は、その形態を限定されるものではない。完全水溶液、固形物が含まれるスラリー、エマルジョン、ミセル、懸濁質、濃厚液、汚泥などの形態であってよい。また、各種膜処理、各種蒸留処理、凝集沈殿処理、濾過処理などで濃縮された難生分解性の水媒体であってもよい。本発明においては、処理対象の水媒体は、数千mg/L以上の濃度にした方が効率がよいが、この濃度に限定されるものでもない。なお、処理対象の水媒体が、懸濁状態ではなく、数mm以上の固形物が含まれている場合には、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理にかける前に、ストレーナ、篩い等に通した方がよい。処理対象の水媒体がエマルジョンではなく、明らかに相分離された油相、油膜がある場合には、この油相を液位分離などで除去した方がよい。さらに、処理対象の水媒体1が最初から沈殿している固形物あるいは濁度を有する場合には、この沈殿物を予め除去するか又は攪拌するかによって、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程へスムーズな送液ができるようにすることが好ましい。処理対象の水媒体の電気伝導度が低い場合には、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの各種電解質を、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程1の前に添加することが好ましい。処理対象の水媒体の電気伝導度が0.1mS/cm以下の場合には、水媒体に電解質を添加することが好ましい。これは、水媒体の電気伝導度が低いと導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2でセル電圧が上昇し、電解コストが高くなるためである。処理対象の水媒体の電気伝導度は1mS/cm以上とすることが好ましい。この場合、薬品の電解質を水媒体に加えてもよいし、電気伝導度が高い他の水媒体を容易に入手することができる場合には、処理対象の水媒体とこの電気伝導が高い水媒体とを混合して、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2に送液してもよい。たとえば、海水を容易に入手することができる場合には、海水を処理対象の水媒体と混合した後に、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程に送液してもよい。
本発明においては、まず、処理対象の水媒体を、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって処理する。この電解処理において使用することのできる導電性ダイヤモンド電極としては、当該技術において公知の任意の構成の導電性ダイヤモンドを使用することができる。例えば、Ni,Ta,Ti,Mo,W,Zr等の導電性金属材料を基板として用い、これらの基板の表面に導電性ダイヤモンドの薄膜を析出させたものや、或いはシリコンウエハ等の半導体材料を基板として用い、これらの基板の表面に導電性ダイヤモンドの薄膜を成膜したもの、更には析出させた導電性多結晶ダイヤモンドを板状に形成した材料などを、本発明において導電性ダイヤモンド電極として用いることができる。なお、導電性ダイヤモンド薄膜は、基板上へダイヤモンド薄膜を成膜する際にホウ素や窒素などのドーパントを所定量ドープして導電性を付与したものであり、ドーパントとしてはホウ素を使用するのが一般的である。なお、本発明において前段の電解処理工程においては、陽極及び陰極の両方に導電性ダイヤモンド電極を用いてもよく、或いは陽極又は陰極のいずれか一方に導電性ダイヤモンド電極を用いてもよい。導電性ダイヤモンド電極でない電極材料としては、白金、チタンなどの通常の電極材料を用いることができる。好ましくは、電解処理工程においては、陽極及び陰極の両方を導電性ダイヤモンド電極で構成する。
本発明においては、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2で、水媒体1中に含まれるCOD成分を完全に分解させないことが好ましい。電解処理工程でCODの完全除去を行うと、水媒体のCOD濃度が高い(数万mg/L以上または%オーダー以上)場合には水媒体の容積当り(L、m当り)の電解処理工程の処理コストが高くなり、逆に水媒体のCOD濃度が低い場合には導電性ダイヤモンド電極表面への物質移動律速が起って無駄な電力が導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2で浪費されることになるからである。
処理対象の水媒体の初期CODが前記したように数%オーダー以上である場合には、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2でのCOD分解率は、電解処理水3のCODが500mg/L以上、好ましくは1000mg/L以上、さらに好ましく2000mg/L以上とすることが好ましい。水媒体の初期CODが高くてCOD成分が溶解性である場合には、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理でのCOD分解電流効率は100%を維持することができる。しかしながら、水媒体中のCOD濃度が上記の数値以下になると導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理での電流効率が悪くなる。例えば、水媒体1の初期COD濃度が10,000mg/L(1%)である場合、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程での好ましいCOD除去率は、95%以下、好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下となり、これよりもCOD濃度が低くなると、水媒体中のCOD成分の電極への物質移動律速が影響して処理効率が悪くなる。言うまでも無く、水媒体の初期COD濃度が異なれば、この物質移動律速が影響してくるCOD濃度に到達するCOD分解率は異なってくる。例えば、初期COD濃度が50,000mg/Lであるとすると、CODが96%〜99%分解しないとこの物質移動律速が起り始めるCOD濃度領域には到達しない。しかし、物質移動律速が起らなくとも、このような高濃度の水媒体において高いCOD分解率を達成すると導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程1での処理コストが高くなるため、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程でのCODの分解率は95%以下、好ましくは90%以下さらに好ましくは80%以下とすることが望ましい。
導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程1でのCOD除去率の好ましい最小値は1%以上であり、さらに好ましくは5%以上であり、なおさらに好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは15%以上であり、より好ましくは20%以上である。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理において、CODの全量を除去するのは本発明の望ましい形態ではないが、COD濃度を全く低下させないで水媒体の生分解性、凝集性、沈降性、ろ過性などに影響する水質や物性値を変化させるのは不可能である。従って、後段の水処理工程4での水処理を可能にするためには、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程において、COD濃度を少なくとも1%低下させることが望ましい。そのため、上記に示す最低限のCOD分解率を前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程で維持することが望ましい。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理において上述の範囲内にCOD分解率を維持することにより、図5(詳しい説明は後述する)に示されるように、電解処理によって水媒体の生分解性(BOD/COD)を向上させることが可能となる。
水媒体1の初期COD濃度が、上記よりも1桁小さい数千mg/L以下である場合は、既に導電性ダイヤモンド電極表面へのCOD成分の物質移動律速が起り始めるCOD濃度領域にある。COD濃度が低くても、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体中のCOD濃度が投入電気量に比例して線形的に低下する領域がある。もちろん、この領域ではCOD成分の物質移動律速となっているので電流効率100%は維持できないが、CODが数100mg/L以下になると電流効率はさらに悪化する。一例として、初期COD1300mg/Lの水媒体を導電性ダイヤモンド電極を用いた電気分解によって処理した時の様子が図9に示されている。図9では、電気量2.6Ah/g−CODを投入した時点までは電流効率は約56%であるが、CODが500mg/L以下になるとさらにこの電流効率は低下する。初期段階で比較的電流効率が高いのは、導電性ダイヤモンド電極による電気分解によって分解しやすい成分が優先的に分解されるためである。導電性ダイヤモンド電極による電解で分解しやすい成分は、生物処理でいう易生分解性物質とは異なる。図9からも明らかであるように、色度成分は導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって分解されやすい。COD濃度の低下よりも、色度低下の方がはるかに低い電気量で進行する。通常、色度成分はCODが完全分解するのに必要な電気量の10〜90%の電気量で完全に除去される。色度成分は、生物処理などの通常の水処理では除去が大変困難な場合が多いので、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理1において、CODは完全分解しなくても、色度成分はできるだけ除去することが好ましい。
処理対象の水媒体1中のCOD濃度が数%のオーダーであっても、固形物のCOD成分、たとえば汚泥のように微生物の菌体が含まれている場合には、前記したCOD成分の物質移動律速が起り始める500−2,000mg/LのCODになる前に電解処理効率が低下する場合がある。例として、メタン発酵汚泥の導電性ダイヤモンド電極による電解処理行った場合の挙動が図12に示されている。図12に示されるように、水媒体中のCOD濃度が6,000mg/L以下になると急激にCODの分解効率が低下する。これは、固形性COD成分の電極表面への接触効率が低下するためであると考えられる。このような状態で導電性ダイヤモンド電極による電解処理工程によってCODを100%除去しようとしたら、膨大な電力が消費されることになる。従って、できるだけ後段の水処理に負担させて、前段の電解処理工程では最小限のCOD分解を行った方がプロセス全体のコストは安価になる。
ここで本発明において、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程によって後段の水処理工程がスムーズに行くようにさせるメカニズムについて説明する。これらのメカニズムは、CODが電解によって完全分解される前に進行し始める。
まず、本発明の一態様においては、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体の生分解性を向上することができる。水媒体の生分解性の指標の一つとして、BOD/CODを用いることができ、この数値を高くする(即ち生分解性を向上させる)ためには、難分解性のCOD成分をBOD成分に変換させることが重要である。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理においては、導電性ダイヤモンド電極で発生するOHラジカルは、有機物などを直接炭酸ガスと水に変換するのではなく、一旦有機酸等の中間生成物を経由して、この有機酸類が炭酸ガスと水に変換される。VFAに代表される有機酸類は生分解性が非常に高いため、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって有機酸類が高濃度に生成される場合には、後段で嫌気性生物処理のメタン発酵を行うことが有効である。従って、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理においては、COD成分が完全分解する前に水媒体の生分解性が向上する。水媒体に高分子の有機物が含まれている場合、高分子有機物は一般的に生分解性が悪く、水媒体の生分解性が悪くなる。しかしながら、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって高分子有機物の低分子化反応がおこるため、水媒体の生分解性を向上させることが可能となる。セルロース系化合物のような多糖類、リグニン、フミンのような高分子有機物は、直接炭酸ガスと水までに分解するのではなく、低分子化のステップを得て炭酸ガスと水まで変換されると考えられる。
また、通常生分解性が悪い色度成分も導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で容易に分解することが可能である。考えられる色度成分の分解メカニズムは以下の通りである。まず、色度成分が直接OHラジカルとの反応で分解されるメカニズムがある。この分解は必ずしも完全分解である必要性がなく、色度成分の分子を部分的に変化させることで、色度が無くなる場合がある。水媒体中に染料などの成分が含まれている場合は、発色する分子構造の一つの結合をOHラジカルが切断することのみで発色が無くなることがある。これらの発色分子の破壊は、アゾ化合物などの各種色素又は色度成分とOHラジカルとの反応で起りうる。さらに、水媒体中に塩素イオン、硫酸イオンが含まれていると、これらのイオンは導電性ダイヤモンド電極での反応で酸化剤である次亜塩素酸や過硫酸に変換されて、これらの酸化剤が色度、色素成分を分解する作用を行う。
有機性汚泥のように、菌体細胞壁の中に多量の水分を含み、粘性があるため、脱水性が非常に悪い水媒体では、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で容易にに粘質性成分の分解が起こる。さらに、導電性ダイヤモンド電極の表面で発生するOHラジカルは菌体細胞壁を破壊するため、汚泥の脱水性を著しく向上させることができる。
脱水性の性能向上以外に、この細胞壁が破壊された汚泥を好気性の生物処理槽、すなわち曝気槽に導入することによって、汚泥の発生がない水処理システムを構築することも可能となる。即ち、好気性微生物処理を用いる水処理場で発生する余剰汚泥の全量又は一部を導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で処理し、この電解処理によって得られる電解処理水を好気性微生物処理槽に戻すことにより、汚泥が発生しないか或いは汚泥の発生量が極めて少ない水処理システムを構築することができる。すなわち、本発明の構成を好気性生物処理システムの一部として組み込めば、汚泥の可溶化、減容化を図ることができる。この考え方は、好気性生物処理のみではなく、嫌気性生物処理にも適用することができる。即ち、メタン発酵で発生する汚泥を導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって処理して、電解処理水の全量又は一部をメタン発酵槽に戻すことで、汚泥が発生しないか又は汚泥発生量が非常に少ないメタン発酵システムを構築することが可能である。前記したように、水媒体を導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって処理することにより有機酸が発生し、この有機酸はメタン発酵菌の良好な基質となるため、メタンガス発生量自体を増加させることも可能となる。なお、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2の処理液の全量をメタン発酵槽又は好気性生物処理槽に戻す必要性はなく、電解処理液を濾過等で固液分離して濾液である水溶液のみをメタン発酵槽又は生物処理槽に戻してもよい。菌体の細胞壁が導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で破壊されるが、固体である菌体の殻は微生物が消化するのに時間がかかるため、有機酸又は可溶性の糖などが含まれている水溶液部分の方が好気性又は嫌気性の生物処理では消化しやすい。
本発明によって水媒体の処理効率が向上する別のメカニズムとしては、処理対象の水媒体が懸濁状態、エマルジョン状態、乳化状態などである場合に、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によってエマルジョンの電荷等が変化して、凝集性、分離性が改良することが挙げられる。処理対象の水媒体中に水溶性の塗料や樹脂などが含まれていると、これらはpHの変化によって凝集する。前記した導電性ダイヤモンド電極表面での電気化学反応の反応式(1)、(2)に示したように、電解反応において陽極でOHラジカルまたは酸素ガスが発生するときはプロトン(H)も同時に発生し、電極表面は強酸性になっている。逆に、陰極ではOHが発生しているため、強アルカリになっている。水媒体中にバランスよく懸濁、エマルジョン化或いは乳化していた水溶性の樹脂、塗料などの粒子は、このような強酸性又は強アルカリ性になっている電極表面への接触を繰り返すと、たちまち凝集し始める。特に電極付近のpHが酸性であると、水媒体中に懸濁している水溶性の樹脂、塗料の粒子の荷電が中和され、粒子同士が反発し合わなくなるために凝集が起こる。
さらに、導電性ダイヤモンド電極を用いた水媒体の電解処理では、有機酸が発生することにより、pHが酸性になって、上記の水溶性の塗料、樹脂が凝集沈殿する場合がある。また、処理対象の水媒体が水溶性切削油のように油と水が乳化したような状態になっている場合には、電極反応による作用でミセル破壊、乳化破壊が起り、油粒子同士が次々に結合して大きな油の塊をつくり、相境界が明らかな油相と水相とが形成され、油水分離が可能な状態になるという効果もある。これらの効果は、前記したように、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理においてCODが完全に除去される前に起り、後段の水処理が可能な性状となる。
本発明において導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2の装置の構成及び形態は特に限定されるものではない。電解槽の運転は、バッチ式でも、連続式でもかまわない。バッチ式の場合、処理対象の水媒体が導入されるタンクに導電性ダイヤモンドで形成された陽極と陰極を設置して、一定時間電解処理を行って所定のCOD分解率が得られた段階で後段の水処理工程へ電解処理水を送液してもよい。さらに導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2は、循環バッチ式でもよい。循環バッチ式では、電解セルを水媒体タンクの外に設けて、ポンプ等で水媒体をタンクから電解セルに送液し、電解セルの処理水を水タンクに戻す。この場合、電解セルの陽極と陰極の間に、ポンプ送液による水媒体の強制的な流れができるため、水媒体タンクにただ電極を浸漬配置した場合よりも電解効率が良好に保てる。この循環バッチ式においても、タンク内の水媒体のCOD濃度が所定値まで下がった段階で、水媒体を後段の水処理工程に送ることができる。また、上述のバッチ式あるいは循環バッチ式の処理装置においては、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理装置は、1個のタンクと1個の電解セルから構成されるものだけではなく、多段構成になっていてもよい。すなわち、一段目の電解槽で処理された水媒体を次の電解槽に送液して、この電解槽でも同じくタイヤモンド電極を用いた電解処理を行うという構成の装置を採用することもできる。このような構成の装置においては、最終段の導電性ダイヤモンド電極電解槽から得られる電解処理水を水処理工程4に送ることができる。このような構成の装置においては、水媒体のCOD濃度によって、各段の電解セルの運転条件を設定できるというメリットがある。高濃度COD領域の水媒体を処理する電解槽タンクは高電流密度に設定し、低濃度COD領域の水媒体を処理する電解槽タンクは低電流密度に設定して、より効率的な導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理運転を行うことができる。電流密度によって導電性ダイヤモンド電極表面で発生するOHラジカルの密度が決まるので、電解処理対象の水媒体のCOD濃度に見合ったOHラジカルの発生量を調整することが可能である。上記のような構成を採用すると、余分なOHラジカルの発生を少なくすることができるので、OHラジカルによる導電性ダイヤモンド電極の消耗を減少させることができ、電極の寿命を延ばすことが可能となる。更に、余分なOHラジカルの発生が少ないので、電解用の電力の節約にもつながる。
導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2は、連続式であってもよい。連続式で電解処理を行う場合は、導電性ダイヤモンド電極が設置されている電解槽タンクを複数個直列に接続して設置し、各電解槽タンクで所定の滞留時間が確保されるようする。また、このような電解槽タンクで処理するのではなく、ソーダ工業で用いられる、多段で且つ交互に陽極と陰極が設置されているフィルタープレス形式の電解槽で処理することも可能である。さらに電解槽への通電の方法は、モノポーラ(単極)電極方式も可能であるし、バイポーラ電極方式(複極)であってもよい。大きな電極面積が必要な場合はバイポーラの方が装置がコンパクトになるメリットがある。
電解槽において、導電性ダイヤモンド電極が接触する水媒体の温度は、40℃〜100℃に設定することが好ましい。水媒体の電気伝導度は温度によって著しく変化し、温度が高いほど電気伝導は高くなる。そして水媒体の電気伝導度を高くするとセル電圧を低く維持することができる。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解反応によって水媒体の温度が上昇するが、この高い水温をできるだけ維持することが好ましい。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程の更に好ましい運転温度は50〜90℃であり、より好ましくは60〜85℃である。このような水温を維持するためには、特に電解槽の入口と出口とに熱交換器を設置して、これらの間で熱交換が行えるようにして電解槽で発生する熱を効率的に再利用することが望ましい。電解槽での導電性ダイヤモンド電極の設置方法としては、できるだけガス抜きを良好に行える構造にすることが好ましい。ガス抜きが良好に行えないと電極間に気泡が溜まって電極間電圧を上昇させる原因となる。従って、電極は、電解槽内に水平に設置するよりは、垂直に設置する方が好ましい。また、電極を電解槽内で水平に設置する場合には、少なくとも陽極となる導電性ダイヤモンド電極及び/又は陰極をメッシュ状、パンチングプレート状、エクスパンドメタル状など、ガス抜きが良好に行える構造にすることが望ましい。
処理対象の水媒体の組成によっては、電解反応で発生するガスによって1mm以下の微細な気泡が形成される場合がある。例えば、粘性が高い水媒体を処理する場合は、COD分解率が低い間、すなわち電解工程の初期段階においては、気泡の成長が起らないため、電解槽から取り出される処理水が、その中に微細な気泡が混入した状態となる場合がある。このような場合には、電解処理水を後段の水処理工程4へ送る前に、電解槽から出てくる水媒体をデガッサー又は機械的脱気装置或いは脱泡装置が設けられている別のタンクで消泡操作にかけることができる。この脱泡操作では、少量の薬品消泡剤を用いることも有効である。なお、このような微細気泡の発生が起こるのはCOD分解率が低い段階であり、処理対象の水媒体の初期粘度にもよるが通常は電解処理におけるCOD分解率が5〜15%以上になると、泡立ちの問題は無くなる。
本発明の一態様においては、後段の水処理工程として生物処理を行うことができる。水処理の中では生物処理がもっとも安価な処理法の一つであり、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって処理することが難しい低濃度COD領域の水媒体の処理を効率的に行うことができる。また、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体の生分解性が大幅に向上されるので、極めて効率的な生物処理が可能となる。
本発明方法における生物処理工程4は、嫌気性生物処理工程であってもよい。特に、処理対象の水媒体のCOD濃度が高く、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって有機酸や可溶性糖が大量に生成される系においては、嫌気性生物処理が好ましく適用される。嫌気性生物処理は、標準的な20日間メタン発酵であっても良いし、また55℃程度の温度で運転される高温メタン発酵であってもよい。高温メタン発酵の場合は、生物処理の速度が速いので処理時間を10〜15日に短縮できるメリットがある。本発明においては、生物処理として、更に、グラニュール(メタン発酵菌を粒状化した塊)を投入した高速UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)メタン発酵、或いは更に高速且つ高負荷の運転ができるEGSB(Expanded Granular Sludge Bed)メタン発酵を採用することもできる。本発明方法において後段の生物処理としてこれらの嫌気性処理を行うと、メタンガスの形でエネルギー回収を行うことができたり、或いは発生する汚泥量が少ないなどのメリットがある。メタン発酵から生成されるガスは、直接燃料として用いるか、或いは改質することによって水素ガスに変換して燃料電池等のエネルギー源として使用することもできる。もちろん、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程では水素ガスが生成されるので、この水素ガスも同じく燃料電池のエネルギー源として用いることができる。
本発明の他の態様においては、後段の水処理工程は好気性生物処理であってもよい。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程から得られる電解処理水のCODが低い場合には、後段処理として好気性生物処理が好ましく適用される。本発明において後段処理として用いることのできる好気性生物処理の方式は特に限定されるものではなく、例えば、標準的な好気性生物処理である浮遊法(曝気槽に汚泥が浮遊する)の活性汚泥処理法であっても良いし、微生物が膜に固定化された生物膜濾過法であってもよい。更に、活性炭、アンスラサイト(石炭系炭素)、砂などの担体に好気性微生物を固定した方式の好気性生物処理であってもよい。また、浮遊法のバリエーションとして粒状のPEG(ポリエチレンングリコール)又は活性炭を担体として微生物を固定化した方式であってもよい。更には、ひも状、網状又はハニカム状の担体に微生物が固定化された接触酸化方式の好気性生物処理であってもよい。或いは、空気曝気を行わないで直接空気中から酸素を取り入れる回転円盤式の好気性生物処理であってもよい。回転円盤式好気性生物処理とは、スポンジ等が取りつけられたディスクが、その上半分が水媒体から空気中に露出した状態で配置されており、このディスクが回転することによって空気中から直接水媒体中に酸素を取り込むことを特徴とする好気性生物処理法である。
また、本発明の他の態様においては、後段の生物処理工程として、嫌気性生物処理と好気性生物処理とを組み合わせたものを用いることができる。この場合には、電解処理水中に残留する窒素やリン成分の除去が可能となる。従って、この方式を採用する場合には、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程で、水媒体中の全ての窒素成分やリン成分を除去する必要性が無くなる。
次に、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理と、後段の各種水処理とを組みあわせた本発明に係る水媒体の処理方法について、各種の形態を図面を参照して説明する。以下の記載は、本発明を適用することのできる水処理媒体の処理方法の各種形態の具体例を幾つか挙げたものであり、本発明はこの記載に限定されるものではない。
図13は、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理を、後段の嫌気性処理・好気性処理を組み合わせた生物処理と組みあわせた本発明の一態様にかかる水媒体の処理方法の一具体例のフロー図である。処理対象の水媒体が、難生分解性の水媒体であって、アンモニア、硝酸性窒素成分が多く含まれており且つ塩素イオンがあまり含まれていない場合に、図13に示す形態を好ましく適用することができる。例えば、アンモニア及び硝酸性窒素成分が全窒素として3〜3000mg/L含まれている難生分解性の水媒体を処理する場合に、図13の形態を好ましく適用することができる。水媒体中の窒素濃度がより高い場合には、塩素イオンを導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理の前に水媒体に添加して、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程で窒素除去を行うことが好ましい。難生分解性水媒体1は、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2で電解処理される。この導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2では、処理対象の水媒体1に、後段の好気性生物処理工程10で発生する余剰汚泥15を混合して処理することが好ましい。余剰汚泥15を、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で処理することにより、有機性汚泥が発生しないか又は汚泥発生量が極端に少ない水処理プロセスを構築することが可能となる。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2では、COD成分を完全分解させないことが処理プロセス全体の処理コストを抑えることにつながる。また水媒体中に含まれる塩素イオンが少ないと、難生分解性水媒体1中に含まれているアンモニア性窒素は、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2で硝酸性窒素に変換される。次に、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2の電解処理水3は沈殿池6に送られ、ここで固形物8が除去される。なお、この実施の形態では固液分離を行う手法として沈殿池6を示しているが、その他の各種膜濾過法、砂濾過法、フィルタープレス法、ベルトプレス法、凝集沈殿分離法などの各種固液分離法を採用することもできる。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2で分解されなかった水媒体1中の固形分又は未分解の汚泥の細胞壁などの固形物は、沈殿池6で分離される。電解処理水3に含まれる固形分は、活性汚泥の有機性余剰汚泥のように脱水性が悪いものではなく、さらさらした固形分であるため、沈殿処理や濾過処理などで容易に除去できるものである。次いで、沈殿池の上澄み液7は、無酸素状態、すなわち嫌気性の生物処理槽9に送られる。図示していないが、この上澄み液7は、他の易分解性の水媒体と混合して嫌気性生物処理槽9に送ってもよい。生物処理が後段にあるので、上澄み液7に難生分解性の水媒体を加えるのは好ましくなく、難生分解性の水媒体は、まず導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理にかけることが好ましい。嫌気性生物処理槽9において、水媒体中の硝酸性窒素は窒素ガスに変換される。嫌気性生物処理槽9では、脱窒素菌が、酸素の代わりに硝酸性窒素を水素受容体として呼吸し、硝酸性窒素又は亜硝酸性窒素を窒素ガスまで還元する。なお、ここではアンモニア性窒素は分解されない。逆に、水媒体中にタンパク性窒素などが含まれていると、嫌気性生物処理槽9では、アンモニアの濃度が高くなる場合もある。また、脱窒素菌はBOD成分である有機物を水素供与体とするので、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で発生した有機酸などのBOD成分が、嫌気性生物処理槽9において、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素を窒素ガスに変換するのに利用される。この嫌気性生物処理槽9で分解されないアンモニア性窒素は後段の好気性生物処理槽10で硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素に変換される。このアンモニア性窒素を硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素に変換する工程では、好気性菌である亜硝酸菌(Nitrosomonas等)がアンモニア性窒素を亜硝酸窒素に変換し、次いで好気性生物処理槽10内に存在する硝酸菌(Nitrobacter)が亜硝酸性窒素を硝酸性窒素まで分解する。なお、図13においてBは好気性生物処理槽10内に空気を吹き込むための曝気ポンプである。この硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が含まれる消化液は循環ライン11で嫌気性生物処理槽9へ返送されて、ここで硝酸性窒素、亜硝酸性窒素が窒素ガスに変換される。ライン11の消化液の循環率とライン14の嫌気性生物処理槽9への汚泥返送比を調整することによって、生物処理プロセス4での全窒素除去率を制御することが可能でとなる。好気性生物処理槽10からの排水12は、沈殿池13によって余剰汚泥が除去された後、処理水5として回収される。余剰汚泥は、ライン14を通して嫌気性生物処理槽9へ、またライン15を通して導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理槽2へ返送される。上記では窒素の除去についてのみ説明したが、有機物などのBOD成分も生物処理工程4で分解されるため、処理水5は良好に浄化される。なお、図13では嫌気性生物処理槽9及び好気性生物処理槽10がそれぞれ1個ずつ配置した構成を示したが、例えば第1嫌気/第1好気/第2嫌気/第2好気の2段生物脱窒素処理を生物処理工程4として採用することもできる。さらに、この第2嫌気槽にメタノールを添加して脱窒素速度を高めることもできる。
ダイヤモンド電極処理工程と後段に他の水処理方法を組み合わせた本発明の実施形態をさらに説明する。前段にダイヤモンド電極を用いた電解処理を行い後段に水処理工程をもつ方法として、凝集沈殿処理はリンの除去法として有用なだけでなく、同時にSS、CODの一部及び色度なども除去することができ、本発明の前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理が部分的処理であることの相補的な効果が期待でき、水媒体の処理には非常に有効である。
凝集沈殿工程を行う方法としては、沈殿池あるいは浮上分離装置で凝集処理する方法、生物処理(活性汚泥法)の曝気槽に直接添加する方法、生物処理後の高度処理として凝集沈殿する方法、同じく高度処理として濾過工程の手前で凝集剤を添加する方法、等がある。これらの凝集処理に用いる凝集剤には、鉄塩(塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)等)、アルミニウム塩(硫酸バンド、PAC等)、あるいはカルシウム塩(石灰等)が好ましく使用することができる。それぞれの凝集剤には凝集反応に最適なpHが存在するので、必要に応じて酸あるいはアルカリ溶液を添加してpH調整しても良い。また、凝集フロックを大きくするために高分子凝集剤を添加しても良い。
さらに、リン除去だけでなく、水媒体がめっき廃液や化学工業等からの排水で金属イオンが多く含まれる場合には、凝集沈殿処理工程はダイヤモンド電極を用いた電解処理工程の前処理として使用すれば、電極への金属類、塩類等の析出が抑制されるので、本発明の他の態様として有用である。
図14〜図17は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理を、後段の凝集沈殿処理とを組み合わせた本発明の一態様にかかる水媒体の処理方法の具体例のフロー図であり、処理対象の水媒体が、難生分解性の水媒体であって、リンが多く含まれる場合に好ましく適用することができる。
図14は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理を、後段の凝集沈殿処理と組み合わせた本発明の一態様を示した具体例を示すフロー図である。難生分解性水媒体1は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2で電解処理される。次に処理された電解処理水3は攪拌槽16に送られ、攪拌しながら凝集剤17が注入され混合された後、凝集沈殿池18に送られ、処理水5と固形分8とに分離される。凝集沈殿池18はフロックの性質によって、浮上分離槽としても良い。
図15は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理と、後段に生物処理と凝集沈殿処理とを組み合わせた本発明の一態様にかかる水媒体の処理方法の一具体例を示すフロー図である。難生分解性水媒体1は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2で電解処理される。次に、処理された電解処理水3は後段の好気性生物処理工程10に送られ、曝気しながら凝集剤17が注入され混合される。好気性生物処理水12はその後、凝集沈殿池18に送られ、処理水5と固形分8とに分離され、固形分8の一部は返送汚泥14として好気性生物処理工程に戻しても良い。また、後段の好気性生物処理工程10の前工程として、嫌気性生物処理工程を追加して生物処理工程をより高度なものにすることもできる。
図16は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理と、後段に生物処理と凝集沈殿処理とを組み合わせた本発明の一態様にかかる水媒体の処理方法の他の具体例を示すフロー図である。難生分解性水媒体1は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2で電解処理される。次に、処理された電解処理水3は後段の好気性生物処理工程10に送られる。そこで処理された好気生物処理水12は攪拌槽16に送られ、凝集剤17が注入され混合された後、凝集沈殿池18に送られ、処理水5と固形分8とに分離される。また、後段の好気性生物処理工程10の前工程として、嫌気性生物処理工程を追加して生物処理工程をより高度なものにすることもでき、後工程として沈殿池を追加して汚泥の一部の生物処理工程への返送、電解処理工程2への添加することもできる。
図17は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理と、後段に凝集沈殿処理と濾過処理とを組み合わせた本発明の一態様にかかる水媒体の処理方法の一具体例を示すフロー図である。難生分解性水媒体1は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理工程2で電解処理される。次に処理された電解処理水3は攪拌槽16に送られ、攪拌しながら凝集剤17が注入され混合された後、凝集沈殿池18に送られ、凝集分離処理水19と固形分8とに分離される。凝集分離処理水19は濾過槽20に送られ、処理水5を得る。濾過槽としては、砂濾過槽が好ましいが、必要に応じて種々の濾過を用いても良い。
図18で本発明の他の実施形態であるダイヤモンド電極電解処理工程と後段に晶析によるリン除去工程が設けられているフローを示す。このフローでは後段にリン除去工程を設定しているが、水媒体中にリン濃度が数千mg/Lと非常に高い場合は前段にもリン除去工程を設定して、タイヤモンド電極装置の配管、電極等にリン析出が起らない程度に予めリン除去を行ってもよい。前段にダイヤモンド電極を用いた電解処理を行い後段に水処理工程をもつ方法として、晶析脱リン法は、汚泥を生成せずリン資源としてリンが回収ができ、ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程が晶析に干渉する有機物等を減少させ晶析を促進するので、本発明の前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理に組み合わせる水処理工程として非常に有効である。晶析脱リン法には結晶種として、HAP(ヒドロキシアパタイト、Ca5(OH)(PO4)3)、MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム、Mg(NH4)PO4)があり、水媒体の成分及び含有イオンのバランスによってどちらかの結晶種を選択する。いずれの結晶種でも、不足イオン種を添加し、pHを調整した後、晶析部となる脱リン塔でリン除去を行い、処理水を得る。図18は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理を、後段の晶析脱リン処理と組み合わせた本発明の一態様にかかる水媒体の処理方法の一具体例を示すフロー図である。処理対象の水媒体が、難生分解性の水媒体であって、電極処理水3にリン(PO−P)が50mg/L以上含まれる場合に好ましく適用することができる。処理対象となる難分解性水媒体1は、前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理工程で処理され、電極処理水3は攪拌槽16に送られ、調整用薬液21(pH調整剤、不足イオン種を含む薬液)が添加され、晶析に必要な条件に調整される。この晶析調整処理水22を脱リン塔23に送り、脱リン塔23内部で結晶(HAP又はMAP)を成長させることでリンを除去する。脱リン塔23からリン晶析物24が取り出され、処理水5が得られる。リン晶析物24はリン資源として価値があり、肥料として又は肥料の調合に用いることができる。
本発明の各種態様は以下の通りである。
1.水媒体の処理方法であって、水媒体を、導電性ダイヤモンド電極を用いた電気分解工程にかけ、次に、水処理工程にかけることを特徴とする水媒体の処理方法。
2.後段の水処理工程が、生物処理、凝集沈殿処理、濾過処理、油水分離処理、吸着処理、晶析処理のいずれか一つである上記第1項に記載の水媒体の処理方法。
3.後段の水処理工程が、生物処理と、凝集沈殿処理、濾過処理、油水分離処理、吸着処理、晶析処理のいずれか一つ又はこれらの少なくとも二つ以上との組み合わせである上記第1項に記載の水媒体の処理方法。
4.生物処理工程が、嫌気性生物処理又は好気性生物処理である上記第1項〜第3項のいずれかに記載の水媒体の処理方法。
5.前段の電気分解工程をCOD成分を完全に分解させない状態で停止し、後段の水処理工程を行う上記第1項〜第4項のいずれかに記載の水媒体の処理方法。
6.処理対象の水媒体が難生分解性の水媒体である上記第1項〜第5項のいずれかに記載の水媒体の処理方法。
7.前段の電気分解工程において、水媒体のBOD/CODを0.2以上とすることを特徴とする上記第6項に記載の水媒体の処理方法。
8.水媒体中のCOD1グラムに対して、前段の電気分解工程において34Ah以下の電気量を負荷することを特徴とする上記第1項〜第7項のいずれかに記載の水媒体の処理方法。
9.水媒体の処理装置であって、処理対象の水媒体を導入して電解処理を行うための、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解槽と、電解槽で処理された電解処理水を導入して水処理を行う水処理槽とを具備することを特徴とする装置。
10.後段の水処理槽が、生物処理槽、凝集沈殿処理槽、濾過処理槽、油水分離処理槽、吸着処理槽、晶析処理槽のいずれか一つである上記第9項に記載の水媒体の処理装置。
11. 後段の水処理槽が、生物処理槽と、凝集沈殿処理槽、濾過処理槽、油水分離処理槽、吸着処理槽、晶析処理槽のいずれか一つ又はこれらの少なくとも二つ以上との組み合わせである上記第9項に記載の水媒体の処理装置。
12.物処理槽が、嫌気性生物処理槽又は好気性生物処理槽或いはこれらの組合せにより構成される上記第9項〜第11項のいずれかに記載の水媒体の処理装置。
実施例1
本実施例では、下表1に示す水質を有する工場Aから排出される水媒体を、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって処理した。
処理対象の水媒体は、CODが10,600mg/Lと高く、またBOD/CODが15.3%で生分解性が低いため、通常の生物処理では対応が困難な難生分解性の水媒体であった。上記の水媒体3Lをサンプル液として、電流密度140mA/cm、平均セル電圧7.5Vの電解条件で、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理実験を行った。電解処理中の水媒体の温度は、電極反応の発熱により46℃に上昇した。電解セルは、陽極が導電性ダイヤモンド電極であり、陰極としてチタン板を設置し、電極間距離は2mmとし、また電極間には分離膜を配置しなかった。ダイヤモンド電極は6インチシリコンウエハー基材にホットフィラメントCVD法により導電性ダイヤモンドを成膜したものであった。電解処理は循環バッチ式で行い、全容積5Lの密閉リザーバーからポンプで電解セルにサンプル液を送り、また電解セルからの排出液はリザーバータンクに戻した。リザーバータンクのヘッドスペース空気は予め不活性のアルゴンガスで置換し、電解中に発生したリザーバータンク内のガスを定期的に抜き出し、ガスクロマト分析で定量を行った。その結果を図4、図5、図6、図7に示す。図4は、サンプル液中に含まれていた1gのCODに対して与えた電気量(横軸)と、サンプル液のCOD及びBOD(縦軸)との関係を示すグラフである。図4から分かるように、サンプル液のCODが約2,000mg/Lまでの間は、COD分解の電流効率が100%近い数値で進行する。図中の破線は、電流効率が100%の場合のCODの低下直線である。しかしながら、CODが2,000mg/L以下となると、水媒体中でのCOD成分の物質移動律速が起こり始めるために、COD濃度の低下曲線が図中の破線から外れる。また、サンプル液の初期BODは1,630mg/Lであったのに対して、1Ah/g−CODの電気量を与えたときに2.8倍高い4,600mg/Lとなった。すなわち、理論電気量の約29%を負荷した時点で水媒体中のBOD濃度が最も高くなった。これ以上の電気量では、BOD濃度は再び下がる傾向を示した。図5は、本実施例におけるCOD分解率とBOD/CODとの関係を示す。BOD/CODはBODの値をCODCrの値で割り、%表示したものである。この数値が高いほど、水媒体中に含まれているCOD成分の生分解性が高いことを示す。原水のBOD/CODが15.4%であったのに対して、COD分解率が15%になった時点でBOD/CODは50%に到達し、COD分解率が30%から75%においてはBOD/CODは60%以上であった。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理でCOD分解率が95%以上になると、逆に原水のBOD/CODよりも低い値になった。後段の水処理として嫌気性生物処理を行う場合には、メタンガスの回収量を上げるためにCOD成分を残留させておいた方がよいので、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理ではCOD分解率を10〜60%に留めておいた方がよい。また、後段の水処理として好気性生物処理を行う場合には、CODは低い方がよいので、前段の導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理では、より高いCOD分解率、たとえば30〜95%としてもよい。図6には、本実施例における投入電気量と有機酸生成の傾向を示す。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で最も多く生成した有機酸はギ酸であり、次いで乳酸、酢酸、及び少量のプロピオン酸が生成した。これらの有機酸濃度を合計したものをVFA(揮発性脂肪酸)濃度として図6に示す。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって水媒体の生分解性が向上するのは、VFA類が生成するためである。なお、本実施例では、1.8Ah/g−CODの電気量(即ち、理論電気量の約53%)を与えた時点でVFA濃度が最大となった。これ以上の電気量では、VFA類が導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で更に分解されて濃度が低下する。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理においてVFA類が生成するのは、有機物が部分酸化されためである。電解処理において更にCODを完全分解するまで電気量を与えつづけると、VFA類も炭酸ガスと水に変換される。図7にこの実施例における生成ガスの濃度組成を示す。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解反応で生成するガスの主成分は水素ガスであり、ついで炭酸ガスであることが分かる。また、3.2Ah/g−COD以上の電気量を与えた時点、すなわち理論電気量の94%以上の電気量を与えた時点で、酸素ガスが発生し始めている。これは水媒体のCODが低くなり、COD成分の電極表面への物質移動律速が起り始め、COD成分の分解反応のかわりに酸素を発生させる水の酸化反応が起こり始めているためである。このように、COD分解率が低い間は水素ガスと炭酸ガスが発生し、問題がないが、COD分解率が高くなると水素ガスと酸素ガスが同時に発生するため、水素爆鳴気の危険性が出てくる。
本実施例で得られたCOD分解率15%〜95%の電解処理水は、生物処理などの通常の水処理で十分に対応可能なものである。
実施例2
実施例1で得られたCOD分解率15%から95%の電解処理水が、生物処理などの通常の水処理で十分対応可能なものに変換されたことを示すために、実施例1において1.8Ah/g−CODの電気量を与えた電解処理水(VFAが最大となった時点の電極処理水のCOD分解率は55%あった)をサンプルとして用いて、嫌気性生物処理(メタン発酵)を行った。また、比較実験として、表1に水質を示した工場A排水の原水もサンプルとして用いてメタン発酵試験を行った。メタン発酵の種汚泥と各サンプルの合計容積が40mLとなるように調整し、100mLのバイアル瓶に不活性ガスと共に封入した。また、種汚泥のみをバイアル瓶に封入したブランク試料も準備した。各バイアル瓶を、55℃になっている振動式恒温槽に入れて、高温メタン発酵試験を行った。その結果を図8に示す。図8の縦軸は、サンプルに含まれていたCOD1gあたりのメタンガス発生量(但し、種汚泥(ブランク)が発生するメタンガス発生量を差し引いた値)を示す。未処理原水をメタン発酵したものは、14日間メタン発酵を継続してもメタンの発生量はわずかであったが緩やかに発生量が増える傾向が見られた。なお、この未処理原水のメタン発酵試験では、1,2日目まではブランクの発生量を差し引くとマイナスのメタン発生量になる現象が見られた。これは未処理原水に含まれていた何らかの成分がメタン発酵の阻害を起こしていたものと考えられる。これに対して、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって得られた電解処理水をメタン発酵処理した場合には、7日目以降はメタンガス発生量が増える傾向が見られなかったが、圧倒的に多いメタンガス発生量となった。すなわち、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理により得られた電解処理水の場合には、VFA類が含有COD成分の大半であるために、メタン発酵が高速で進み、約7日間でメタン発酵が完結したことを示している。
実施例3
本実施例においては、し尿の生物処理水を濃縮した濃縮水を被処理水として、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によって処理した。被処理水は、下表2に示す水質を有する、難生分解性の水媒体であった。
被処理水のCOD濃度は1,300mg/Lでそれほど高くはないが、BODが80mg/Lと低く、そのため生分解性が非常に低い(BOD/COD:6%)。さらに、胆汁に起因すると考えられる色度成分が多く含まれており(色度:6,200)、この色度成分は生物処理ではほとんど除去できないものであった。アンモニア性窒素も約300mg/L含まれていた。上記の難生分解性の水媒体3Lをサンプル液として、電流密度が40mA/cm、平均セル電圧が4.8Vの条件で導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理実験を行った。電解処理中の水媒体の温度は電極反応の発熱により40℃に上昇した。用いた電解セルの構成及び処理操作は、実施例1と同じものであった。ダイヤモンド電極の処理結果を図9、図10及び図11に示す。図9から分かるように、被処理水の初期CODは1,300mg/Lであり、物質移動律速が起っているため、初期の電流効率は56%程度であった。水媒体のCODが低下するのに伴い電流効率が低くなり、理論電気量以上の電気量を投入した時点で更に電流効率が低くなる傾向が見られた。BODに関しては、1.3Ah/g−CODの電気量(理論電気量の38%)を与えた時点(COD分解率は22%)で最も高い値を示した。この時点でのBOD/CODは39%であり、原水のBOD/CODよりも約6.5倍も高かった。色度に関しては、投入電気量の増加で著しく低下し、2.6Ah/g−CODの投入電気量(理論電気量の76%)を投入した時点でほぼ100%除去されていた。この時点でのCOD除去率は56%であり、これより色度除去を行うのにCOD分解率を100%にする必要性が無いことは明らかである。図9のデータから、COD除去率と色度除去率との関係を算出し、図10にプロットした。図10からも、色度除去を行うのにCOD分解率を100%にする必要性が無いことが明らかである。また、図11は、本実施例における原水に含まれていたアンモニア性窒素とCOD除去率との関係を示したものである。COD除去率80%でアンモニア性窒素はほぼ100%分解された。これは、原水中に塩素イオンが含まれていたために、塩素イオンの一部が導電性ダイヤモンド電極の電極反応によって次亜塩素酸に変換され、次亜塩素酸とのブレークポイント反応により、アンモニア性窒素が分解されたと考えられる。
COD除去率が22%となった時点の電解処理水を水で10倍に希釈して、好気性生物処理を行った。好気性生物処理は、活性汚泥法を用い、0.2g−BOD/g−VSS汚泥・日の負荷で試験を行った。最終処理水はCOD濃度が10mg/L以下であり、色度は2であった。
実施例4
本実施例においては、し尿、生ゴミを処理しているメタン発酵プラントの汚泥を被処理液として、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理を行った。被処理液は、下表3に示す水質を有する難分解性の水媒体であった。
上記のメタン発酵汚泥は、嫌気性生物処理された粕であるため生分解性が低く(BOD/COD:8.8%)、菌体内に水分を多く含む微生物で構成されており、また粘度も195mPa.sと比較的に高いため脱水性が悪い水媒体である。T−COD(固形物を含んだ状態のCOD)濃度は11,100mg/Lと比較的高いが、このCODの約90%は可溶性ではなく、微生物菌体等に起因する固形性のCOD成分である。この固形物はMLSS(Moisture Licor Suspended Solid)として7,290mg/L含まれていた。この水媒体3Lをサンプル液として、電流密度が120mA/cm、平均セル電圧が13.5Vの条件で導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理実験を行った。電解処理中の水媒体の温度は電極反応の発熱により約55℃に上昇した。用いた電解セルの構成及び処理操作は、実施例1と同じものであった。メタン発酵汚泥の電解処理結果を図12に示す。T−CODの低下傾向を見ると、1.85Ah/g−CODの電気量(理論電気量の54%)を与えた時点までは、CODの分解は100%近い電流効率で進行している。この時点でのCOD分解率は48%であった。しかしながら、それ以上の投入電気量においてはCOD分解の効率が著しく低下することが分かる。図には示していないが、96%以上のCOD分解率を得るのには276Ah/g−COD(理論電気量の81倍)以上の電気量投入が必要であった。この数値から算出すると、1mの本メタン発酵汚泥を処理するのに必要な電力は2,060kWh以上であった。導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理によってCODを完全分解しようとすると、多量の電気量を消費し、コストパーフォーマンスが得られないことは明らかである。電解処理の初期段階でCOD分解の電流効率が高いのは、粘度を高めている成分又は導電性ダイヤモンド電極による電解処理によって分解されやすい可溶性のCODなどが優先的に分解するためであると考えられる。また、1.85Ah/g−CODの電気量を与えた時点で、MLSSは3,760mg/L(SS除去率52%)、粘度は43mPa.s(粘度低下率77%)であり、この時点でのCOD分解率は48%であった。この時点での電解電力は138kWh/m−汚泥であり、CODの96%分解率を得るときに必要な電力の1/15であった。またMLSSも低下することから、この導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理では、OHラジカルが菌体の細胞壁を攻撃して、細胞膜を破壊し、有機性汚泥の減容化効果をもたらすと考えられる。細胞壁が破壊されて菌体の中身が水媒体中に溶出すると、この菌体の中身も導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理で順次分解される。なお、残留する硬い細胞壁は、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理でも分解効率は悪い。すなわち、この固体の細胞壁成分を電極表面で酸化させようとすると、接触効率の問題などが出てくる。そのため、1.85Ah/g−CODの以上電気量を与えてもMLSSの低下が鈍ると考えられる。
COD分解率が48%の時点の電解処理水を、0.45μmのメンブレンフイルターで濾過した。同様に原水汚泥も濾過試験した。原水汚泥はすぐフィルターの目詰まりが起り、ほとんど濾過できなかったのに対して、COD分解率48%の電解処理水は容易に濾過することができた。また、原水汚泥の固形分はぬめりが大変高かったが、COD分解率48%の電解処理水を濾過した時の残渣固形物は比較的さらさらしていた。
本発明では水媒体の処理方法を提供する。本発明においては、前段で導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理を行い、後段で生物処理、凝集沈殿処理、濾過処理、油水分離処理、吸着処理、晶析処理などの水処理工程を行うことによって、処理プロセス全体が効率的に且つ安価になる。本発明によれば、特に難生分解性の水媒体を効率よく処理することができる。本発明のプロセスにおいては、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理工程ではこの電解処理が得意とする部分のみを担当し、後段の水処理工程では生物処理などが得意とする部分を担当するため、水媒体全体の処理がスムーズに行く。さらに本発明により、導電性ダイヤモンド電極の耐久性を飛躍的に向上できる。
工場から排出される難生分解性水媒体を導電性ダイヤモンド電極を用いた電解処理にかけた際の水媒体中のCODとCOD分解の電流効率との関係を示すグラフである。 電気分解に使用する前と使用した後の導電性ダイヤモンド電極の表面の状態を示す電子顕微鏡写真(SEM)である。 本発明の一態様にかかる水媒体の処理方法のフロー図である。 実施例1の実験における、サンプル液中に含まれていた1gのCODに対して与えた電気量(横軸)と、サンプル液のCOD及びBOD(縦軸)との関係を示すグラフである。 実施例1の実験における、COD分解率とBOD/COD(%表示)との関係を示すグラフである。 実施例1の実験における、投入電気量と有機酸生成の関係を示すグラフである。 実施例1の実験における、投入電気量と生成ガスの濃度組成の関係を示すグラフである。 実施例2の実験におけるメタン発生量の経緯を示すグラフである。 実施例3の実験における、投入電気量とCOD,BOD,色度の変化との関係を示すグラフである。 実施例3の実験における、COD除去率と色度除去率との関係を示すグラフである。 実施例3の実験における、COD除去率とアンモニア性窒素の濃度及び除去率との関係を示すグラフである。 実施例4の実験における、投入電気量とCOD,MLSS,粘度との関係を示すグラフである。 本発明の一態様にかかる水媒体の処理方法の詳細フロー図である。 本発明の一態様にかかる水媒体の処理方法の詳細フロー図であり、前段にダイヤモンド電極処理工程と後段に凝集沈殿工程で難分解性水媒体を処理する方法にかかわる。 前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理と後段に生物処理と凝集沈殿処理とを組み合わせた本発明の他の実施形態にかかわるフロー図である。 前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理と後段に生物処理と凝集沈殿処理とを組み合わせた本発明の他の実施形態にかかわるフロー図である。 前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理と後段に凝集沈殿処理及び濾過処理を組み合わせた本発明の他の実施形態にかかわるフロー図である。 前段のダイヤモンド電極を用いた電解処理と後段に晶析による脱リンを組み合わせた本発明の他の実施形態にかかわるフロー図である。

Claims (12)

  1. 水媒体の処理方法であって、水媒体を、導電性ダイヤモンド電極を用いた電気分解工程にかけ、次に、水処理工程にかけることを特徴とする水媒体の処理方法。
  2. 後段の水処理工程が、生物処理、凝集沈殿処理、濾過処理、油水分離処理、吸着処理、晶析処理のいずれか一つである請求項1に記載の水媒体の処理方法。
  3. 後段の水処理工程が、生物処理と、凝集沈殿処理、濾過処理、油水分離処理、吸着処理、晶析処理のいずれか一つ又はこれらの少なくとも二つ以上との組み合わせである請求項1に記載の水媒体の処理方法。
  4. 生物処理工程が、嫌気性生物処理又は好気性生物処理である請求項1〜3のいずれかに記載の水媒体の処理方法。
  5. 前段の電気分解工程をCOD成分を完全に分解させない状態で停止し、後段の水処理工程を行う請求項1〜4のいずれかに記載の水媒体の処理方法。
  6. 処理対象の水媒体が難生分解性の水媒体である請求項1〜5のいずれかに記載の水媒体の処理方法。
  7. 前段の電気分解工程において、水媒体のBOD/CODを0.2以上とすることを特徴とする請求項6に記載の水媒体の処理方法。
  8. 水媒体中のCOD1グラムに対して、前段の電気分解工程において34Ah以下の電気量を負荷することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水媒体の処理方法。
  9. 水媒体の処理装置であって、処理対象の水媒体を導入して電解処理を行うための、導電性ダイヤモンド電極を用いた電解槽と、電解槽で処理された電解処理水を導入して水処理を行う水処理槽とを具備することを特徴とする装置。
  10. 後段の水処理槽が、生物処理槽、凝集沈殿処理槽、濾過処理槽、油水分離処理槽、吸着処理槽、晶析処理槽のいずれか一つである請求項9に記載の水媒体の処理装置。
  11. 後段の水処理槽が、生物処理槽と、凝集沈殿処理槽、濾過処理槽、油水分離処理槽、吸着処理槽、晶析処理槽のいずれか一つ又はこれらの少なくとも二つ以上との組み合わせである請求項9に記載の水媒体の処理装置。
  12. 生物処理槽が、嫌気性生物処理槽又は好気性生物処理槽或いはこれらの組合せにより構成される請求項9〜11のいずれかに記載の水媒体の処理装置。
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