JP2004344806A - 写真廃液の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】写真処理廃液に電解酸化処理を施した後、生物処理を行なう写真処理廃液の処理において、該電解酸化処理に導電性ダイヤモンド電極を陽極として用いることを特徴とする写真廃液処理方法。
【選択図】 なし
Description
【産業上の利用分野】
本発明は写真廃液の処理方法に関するもので、従来下水道法の排出基準を満たす処理が困難とされていた写真処理廃液の実用的且つ経済的な処理方法に関する。とくに現像所において実施可能な写真廃液の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真処理廃液は、種々の写真処理工程から排出される廃液で、通常混合された状態で回収されて処理されるが、廃液組成の多様性が効果的な廃液処理手段を見出すことを困難にしており、種々の工業廃液の中でも最も処理が困難なものの1つであって、従来から多くの処理法が開示されているが、除去率・処理コストの両面で尚多くの問題がある。
そのため、現実的な対応策として、写真廃液は廃液回収業者により回収され、焼却処理されているが、大気環境及び水域環境中に環境有害物質物質を排出することなく焼却処理するには、焼却温度を高くする必要があるので中型や小型の焼却炉では高温での連続運転による焼却処理は困難なため、大規模焼却装置で焼却されており、処理コストが高くならざるをえない。また、燃焼時に生じる酸化鉄等の高融点の無機塩による配管の閉塞や燃焼炉の消耗を回避するために、化学的な脱鉄工程の設置が必要であるので、工程及び操作がさらに複雑になる問題点も含んでいる。
このような事情から、現在焼却処理が現実的な対応手段ではあっても満足な手段ではなく、写真廃液のより優れた処理技術が引き続き検討されている。
【0003】
写真廃液処理に関して従来より開示されている方法は、主として生物処理、化学処理及び物理処理である。
生物処理法は、例えば活性汚泥による写真廃液の処理法については、特許文献1に医療用X線写真廃液中のCOD を減少させる方法をはじめ多くの処理方法が開示されているが、これらは通常廃液を10〜50倍に希釈したものを処理期間(平均滞留時間)15〜50日でCOD の50〜80%、及びBOD の50〜80%が分解除去できるとされている。
【0004】
化学処理(酸化法)にはオゾン酸化法、過酸化水素酸化法、その他の化学酸化剤による酸化法、電解酸化法等がある。オゾン酸化法は、例えば特許文献2に開示されており、無機COD 成分の分解除去及び現像主薬である芳香族化合物のベンゼン環分解に有効な手段であるが、有機BOD 成分を除去する効果は殆どない。過酸化水素を用いる方法には、過酸化水素に触媒を組み合わせた特許文献3が開示されている。また、過酸化水素−第二鉄塩法(フェントン法)は有機・無機成分いずれに対しても効果があるが、処理コストが高い点に問題がある。そのほか酸化剤として過硫酸塩を使用する方法、強酸性液中に酸化剤を加えて硫黄化合物を安定化して析出させる方法、塩素、次亜塩素酸塩によって酸化する方法及び過硫酸塩を加えて加熱する処理法などが知られている。
電解酸化法には、特許文献4、特許文献5、特許文献6などが開示されている。
一般に化学処理によるCOD の除去率(低減率)は50%程度とされている。
【0005】
物理処理には高圧加熱法、噴霧焼却法、蒸発乾燥法等がある。写真廃液中には多量のハロゲン化物イオンが含まれているので、反応装置の応力腐食が問題となる。また、熱回収のための熱交換器のスケール、残渣、廃ガス等の処理にも問題がある。
さらに、無機または有機高分子吸着剤を使用する吸着除去法、逆浸透法、透析法などが提案されている。
【0006】
しかし、写真処理廃液のように廃液中に多種多様な環境汚染化学物質が含まれている場合、上記のいずれの方法でも単独では十分に満足な結果は得られない。例えば、1)化学的酸化法では、大量の化学薬品の消費に伴う高コスト化、2)電解酸化法では、電極の汚染に伴うCOD除去率の低下、3)吸着除去法では、吸着剤の吸着能の低下と使用量の増大、4)蒸発法では、悪臭および有害物質の飛散、5)微生物処理法では、有害物質の存在による微生物のCOD成分処理能の低下、6)逆浸透法または透析法では、カラムまたは膜の寿命低下などの問題がある。
【0007】
そのため改善方法として、上記した処理手段の組み合わせ、とりわけ酸化処理と微生物処理を組み合わせた処理方法が提示されている。例えば、特許文献7には、過酸化水素酸化処理(フェントン法)と微生物処理との組み合わせにより、特許文献8〜10に電解酸化処理と微生物処理との組み合わせにより、また特許文献11にオゾンガスによる光化学酸化と微生物処理との組み合わせにより、写真廃液のBOD及びCODの低減できることが開示されている。しかしながら、上記いずれの組み合わせ方法も、装置が大型になる、広い設置スペースが必要、操作が煩雑、特殊な微生物の利用、大量の水希釈が必要などのいずれかの問題を含んでいて満足な解決にはならない。
【0008】
このうち、廃液処理に電気分解法を用いるのが強力な化学酸化剤を用いる酸化処理に比べ操作が容易且つ安全で、小型化が可能であるという特徴を持つ。しかしながら、写真処理廃液の電解過程において、有機成分濃度が高い時点では、電解時に発生した酸化種が効率よく有機物を分解するが、多くの場合、酢酸、ギ酸、シュウ酸等の低級脂肪酸まで分解されると、さらなる分解の電解効率が悪化し電力を浪費してしまう。これらの有機酸を電気分解するには、白金あるいは鉛の電極を用いてもなお電位窓が狭く、電解効率は改善されない。また、鉛、白金等の重金属イオンが溶出する問題がある。
特許文献12には、電極表面を蒸着ダイヤモンドで被覆した陽極を使用した電解酸化法が開示されている。この電極を用いれば印加電圧を上げることができて有機物の分解効果が向上することが示されているが、依然として下水道法の排水基準を満たすに至っていない。
【0009】
この出願の発明に関連する前記の先行技術には、次の文献がある。
【特許文献1】
特開昭59−42094号公報
【特許文献2】
特開平7−47347号公報
【特許文献3】
特開平9−234475号公報
【特許文献4】
特開昭63−116796号公報
【特許文献5】
特開平8−296081号公報
【特許文献6】
特開平7−323290号公報が開示
【特許文献7】
特開平3−262594号公報
【特許文献8】
特開平4−235786号公報
【特許文献9】
特開平6−320184号公報
【特許文献10】
特開平4−244299号公報
【特許文献11】
特開平5−96298号公報
【特許文献12】
特開平7−299467号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来開示されているいずれの廃液処理手段も、また廃液処理手段同士を組み合わせた複合処理手段も、完全な解決とはならず、特に現像所で実施するのは困難で、写真廃液に対して、BOD及びCODのいずれをも排水基準値以下に低減させ得る手段、特に現像所においても実施できる廃液処理手段が強く望まれている。
本発明は、上記した背景からなされたものであり、その目的は、写真廃液のBOD及びCODを効果的に低減できる写真廃液処理方法を提供することであり、さらなる目的は、現像所に適用可能な、すなわちオンサイト処理可能な、BOD及びCODを効果的に低減できる写真廃液処理方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的の解決方法を見出すために、化学的手段よりも比較的操作が容易で安全な電解法についてその電極材料の可能性を、またその電解法に生物処理を組み合わせる複合処理手段の可能性を鋭意検討したところ、後述するダイヤモンド電極である程度電解した写真廃液は、電気分解中にEDTA等の難生分解性物質が分解されて消失しており、活性汚泥等の生物処理を行なうと、速やかにTOC(全有機炭素量)が減少することが判明し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
(1)写真処理廃液に電解酸化処理を施した後、生物処理を行なう写真処理廃液の処理において、該電解酸化処理に導電性ダイヤモンド電極を陽極として用いることを特徴とする写真廃液処理方法。
(2)電解酸化処理によって写真処理廃液のCODの少なくとも70%を低減させた後、生物処理を行うことを特徴とする上記(1)に記載の写真廃液処理方法。
(3)電解酸化処理において、陽極と陰極の両方に導電性ダイヤモンド電極を用いることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の写真廃液処理方法。
(4)電解酸化処理において、陽極と陰極の極性反転をおこなうことを特徴とする上記(3)に記載の写真廃液処理方法。
(5)生物処理が活性汚泥処理であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
(6)生物処理が担体に固定化された微生物による処理であることを特徴とする上記(5)に記載の写真廃液の処理方法。
(7)生物処理が耐塩性菌による処理であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
【0013】
上記より明らかなように、本発明の写真廃液処理方法の特徴は、写真廃液の電解酸化処理にダイヤモンド電極を使用したことである。導電性のダイヤモンド電極を用いることで、電極の汚染等により電解効率が悪化することもなく、廃液のEDTA、PEG等の難生分解性の成分をも効果的に分解できて、そのため電解後の生物処理で生分解が容易に進行し、BOD、COD共に顕著に減少して排水基準を満たすことが可能となった。この優れた効果は、ダイヤモンド電極の水素過電圧が高いので陽極酸化の電位窓が広く、実効的な酸化種であるヒドロキシラジカルの発生効率が高いためにもたらされるものと考えられる。
その上、ダイヤモンド電極を用いれば、重金属電極のような陽極金属溶出による被処理液の汚染もなく、また、写真廃液中の銀イオンは、ほぼ完全に硫化銀として沈降し、銀イオンによる活性汚泥の失活も起こらない。公知の酸化鉛、酸化錫、白金等ではダイヤモンド電極に見られる高い電解効率は得られず、かつ陽極溶出による被処理液汚染を伴う。
【0014】
また、写真廃液に対しては生分解性が不充分という従来の活性汚泥処理等の生物処理の欠点を、ダイヤモンド電極利用の電解酸化という前処理で解消できたことにより、生物処理の常温常圧、薬品を用いない、低エネルギーコストという利点を取りいれて優れた写真廃液処理方法を実現できた。この方法の更なる利点としては、電解酸化処理された廃水の生物処理は、廃水が高塩濃度であるにも拘わらず比較的低い希釈(希釈倍率が1〜5程度)でも生物処理できることである。したがって、処要スペースが少なくて済み、現像所において、オンサイトで廃液処理を行うことも可能である。とくに耐塩性微生物を用いることによりこの利点を更に活かすことができる。
【0015】
以下、本発明をさらに具体的に詳述する。
【発明の実施の形態】
[写真処理廃液の構成と水質特性]
本発明の写真処理廃液の処理方法について説明するに先だって、写真処理廃液について構成と水質特性を中心に説明する。以下「写真処理廃液」を「写真廃液」と記すこともある。
写真処理廃液は、カラー写真或いはモノクローム写真の現像廃液の他、定着廃液または写真製版等写真工業で発生した多くの種類の廃液が含まれている。定着廃液は溶存している銀を回収した残液が処理の対象となる。
【0016】
したがって、写真廃液には処理液処方に含まれて消費されなかった構成薬品、すなわち現像液由来の現像主薬、アルカリ化合物、緩衝剤、亜硫酸塩やヒドロキシルアミン誘導体などの補恒剤、アルカリハライドなど、定着系処理液由来のチオ硫酸や亜硫酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アルカリハライドなど、漂白系処理液由来のポリアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩などの漂白剤、再ハロゲン化剤、緩衝塩など、その他各工程槽から排出される硬水軟化剤、界面活性剤などの機能性化合物など、が含まれているほかに、処理中に感光材料から溶出した例えばゼラチンや感光色素などの溶出成分及び処理中に生じた反応生成物が混在しており、多岐に亘る化学成分を含んでいる。
写真廃液を水質環境要因からみれば、高濃度のBOD 、COD 、窒素、リンを含み、且つ、生物処理または化学処理によっても難分解性成分が多量に含まれている。処理の種類及びその処理の各工程からの廃液の混合比率によりかなり変動はするが、おおよそCOD 30,000〜50,000 mg/l、BOD 5,000 〜15,000 mg/l、TOC(Total Organic Carbon) 10,000〜25,000 mg/l、ケルダール窒素 10,000 〜15,000 mg/l、トータル燐 100〜500mg/l の範囲である。COD:BOD:TOC の比率は概ね 4:1:1.5でCOD が高い特徴があり、またC:N:P の元素比率はほぼ 100:100:1でN の含有率が高い特徴がある。
【0017】
[電解酸化処理]
本発明の方法による写真処理廃液の電解酸化処理について述べる。
<廃液の調整>
本発明において、写真処理廃液は、pHの調製や、支持電解質の添加を行うことなしに電解処理に供して良い。必要があれば電解酸化処理に先だって又は電解中に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤を用いてpHの調整が行ってもよい。電解中に被処理液は酸性化すると成分中の臭素イオン、塩素イオン、沃素イオンが酸化されてそれぞれのハロゲンガスが発生するので、これを防止するためである。また、CODの分解効率にもアルカリ性のpHが好ましい。添加されるアルカリ剤は、固体、水溶液、懸濁液などのいずれの形であってもよく、添加方法も電解酸化処理に先だって添加してもよく、また自動調整装置と連動させながら電解をすすめてもよい。pHは電解操作中7以上に、好ましくはpH8以上に、維持されるように調整されてもよい。
一方、鉄錯塩化合物の加水分解による沈殿生成を抑止するために、pHは12.5以下であることが好ましい。
【0018】
<陽極>
本発明では、導電性ダイヤモンドを陽極用電極物質として使用することを特徴としており、これによって廃液中の難生分解性物質の電気分解を効率良く行える。本発明において“導電性ダイヤモンド電極”とは1MΩcm未満の電気抵抗率を有するダイヤモンド電極を意味するが、誤解の恐れのない限り“導電性”を省略して記すこともある。
本発明の電極物質であるダイヤモンドは、粉末ダイヤモンドを基体であるチタン、ニオブ、タンタル、シリコン、カーボン、ニッケル、タングステンカーバイド等の板、打抜き板、金網、粉末焼結体、金属繊維焼結体等の表面に後述の方法により被覆して構成してもよく、また板状のダイヤモンドをそのまま電極として使用しても良いが、コスト面から前者を採用することが望ましい。前者におけるダイヤモンド被覆層を本明細書では、ダイヤモンド層と記す。又密着性の確保と基体の保護とを目的として基体とダイヤモンド層の間に中間層を設けることが好ましい。中間層の材質としては基体を構成する金属の炭化物や酸化物が使用できる。基体表面は密着性と反応面積増大に寄与するため研磨しても良いし、逆に粗にしてもよい。又電極物質としてダイヤモンド以外に少量の他の電極物質を含有していても良い。基体はダイヤモンドの集電体としても機能し、ダイヤモンド板を使用する場合には、別に集電体を用意してダイヤモンド電極への給電を行う必要がある。
【0019】
ダイヤモンド層の基体表面への形成方法としては、熱フィラメントCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、プラズマアークジェット法、PVD法などが開発されている。次に代表的な熱フィラメントCVD法について説明する。炭素源となるアルコールなどの有機化合物を水素ガス中等の還元雰囲気に保ち、炭素ラジカルが生成する温度1800〜2400℃に維持する。このとき電極基体を、ダイヤモンドが析出する別の温度(750 〜950 ℃)領域に設置する。水素に対する好ましい有機化合物ガス濃度は0.1 〜10容量%、供給速度は反応容器の寸法にも依るが0.01〜10リットル/分、圧力は15〜760 mmHgである。ダイヤモンド微細粒子は通常0.01〜5μm程度の粒径を有し、本発明では前記条件により前記基体上にダイヤモンド粉末を蒸着させて、厚さ0.1 〜50μm好ましくは1〜10μmの厚さのダイヤモンド層とする。この厚さは基体への電解液の浸入を防ぐために好適な厚さである。生成するダイヤモンド層に良好な導電性を付与するためには原子価の異なる元素を微量添加(ドーピング)することが必要で、例えばリンや硼素を1〜100000ppm 、好ましくは100 〜10000 ppm 程度含有させる。この添加物の原料化合物としては毒性の少ない酸化硼素や五酸化二リンなどが好ましい。
【0020】
十分な電導性を付与するためのドーピングには、プラズマ増強CVD(PECVD)ダイヤモンド蒸着法を利用することが好ましい。ドーピングされた電極の製作方法の詳細は、例えば、Ramesham, Thin Solid Films 、229巻 (1993) 44〜50頁に記載されている。PECVDダイヤモンド層は、マイクロ波プラズマにより活性化したメタン及び水素ガスの混合物から製造したホウ素ドーピング化多結晶質ダイヤモンドである。この方法によるダイヤモンド層の蒸着は当業者によく理解されている(例えば、Klages, Appl.Phys. A56巻 (1993) 、513〜526頁を参照)。
【0021】
熱フィラメントCVD(HFCVD)法(Klages, Appl.Phys. A56巻 (1993) 513〜526頁 を参照)により製造したダイヤモンド層は、 Advanced Technology Materials.Inc., 7 Commerce Drive, Danbury,CT 06810、米国から市販されている。
ダイヤモンド電極の製法としては、特開平8−225395号公報段落0007に記載されている真空チャンバー内での化学蒸着法も好ましい。
【0022】
<陰極>
陰極としては、電解の休止期間中に腐食を起こさないよう十分の耐蝕性と通電性を持つものならいずれの材料でもよいが、ステンレスの板又は棒が特に適している。しかし、他の電極、例えば炭素電極や種々の金属電極も使用できる。陰極・陽極を対にした形、陰極を両側から陽極が挟むサンドイッチ構造の形、あるいは陰極と陽極とを交互に配した多数枚配列構造などの適切な形が選択される。陰極の形状は、線状、棒状、板状などのいずれであってもよい。
【0023】
また、本発明の一態様として、陰極にも導電性ダイヤモンド電極を用いることができる。また、両極に導電性ダイヤモンド電極を用いる場合には、極性を反転させながら電解を行うことも電極を正常な状態に維持するために好ましい。すなわち、電解槽の陰極面上には、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの水酸化物等が付着するため、定期的なスケール除去が必要である。スケールの付着を防止するために、電極の極性をごく短時間反転する考案(特開平3.09988号、特開平5−4087、特開平6−63558等)が報告されている。これらの方法を用いると、電解槽の陰極面上に付着物を、電極の極性を逆転させることによりつまり前記水酸化物等の付着面を陽分極させることによりカルシウムイオン及びマグネシウムイオンとして被処理水中に再溶解させて電極から除去しながら電解反応が可能である。反転の間隔と時間は、両極の形状が同じであれば、格別の規定は不要である。
【0024】
<電極アセンブリ>
導電性ダイヤモンド電極材料の最も重要な性質の1つは電気伝導性である。十分な電導性がなければ、目的とする電解を進めるのに必要な電圧が過度となり、経済的に実行不可能になる。ドーピングを施さないダイヤモンド電極は、ドーピング剤不純物が存在しないために大きなバンドギャップ(5.5eV) を有し、むしろ絶縁体に近い。陽極の説明において前記したように、ドーピング剤不純物、例えば、ホウ素を適切なレベルで取り込むことにより、合成ダイヤモンド粒子及びダイヤモンド層の電導性を調整することができる。ダイヤモンドに電導性を付与するために用いられるドーピング剤の種類は、前記のホウ素に限らず、例えば、米国特許第5,162,886号に記載されているような他の元素、例えば、リチウム、ベリリウム、窒素、リン、イオウ、塩素、ヒ素及びセレンを含むことができる。中でも、ホウ素のドーピングは、20mΩcm未満の抵抗率を作り出すために好ましい。ドーピング化ダイヤモンドにおける、一般的に好ましいホウ素濃度は、100ppm〜10000ppmである。
【0025】
電極アセンブリの総抵抗値 は、それを構成する接触電気抵抗、基板の抵抗、基板とダイヤモンド層間の界面抵抗のみならず、その成分の各々の厚さにも依存する。その結果、ダイヤモンド層に伴う電極抵抗の一部は、ダイヤモンドの電導性の変更と同時にダイヤモンド層の厚さの変更により調整することができる。所定目的の抵抗を得るために、好ましい厚さは、0.1μm〜1mmの範囲の厚さであり、最も好ましい厚さは、1〜100μmの範囲である。ダイヤモンド層が薄すぎると、基板面を十分に覆うことができず、電極の有効表面積が減少する可能性もある。反面、ダイヤモンド層が厚すぎると、ダイヤモンド層の抵抗率は、電極の厚さ方向の電圧低下を引き起こし、そして電力が、電極の抵抗加熱によって失われる。極端な場合は、厚いダイヤモンド層は使用中に加熱しそしてダイヤモンド層と基板の間の結合を損い、その結果ダイヤモンド層が基板からはがれてしまうこともある。
【0026】
基板の機能は、電極アセンブリ中を電流が流れやすくするための通路を提供することと、薄いダイヤモンド層の機械的支持体となることである。電導性基板には、以下に述べる3つの特性が最も重要である。第一に、有用な電極の構成には基板の電導性が必須であり、適当な抵抗が得られるようにするであろう。例えば、1000〜10、000オームの範囲の基板厚さ方向の抵抗は、電極アセンブリ全体の抵抗もまた1000〜10,000オームであるならば、低電流用途に用いることができる。しかしながら、電極アセンブリの抵抗がこのように高いことは望ましくなく、電極アセンブリの抵抗の好ましい範囲は、10〜1000オームであり、より好ましい値は10オーム未満であり、最も好ましくは1オーム未満である。基板の厚さ及び抵抗率の最適状況は、基板材料の機械的強度にも依存するが、基板の抵抗率が0.1〜20Ωcmの範囲内であって、厚さは0.5mm〜10cmの範囲内である。
【0027】
基板とダイヤモンド層との間の導電特性は、界面の性質に密接に関連しており、ドーピング化ダイヤモンドを基板上に付着させるプロセスの結果としての界面形成にも影響する。高分解能電子顕微鏡により、熱フィラメント蒸着した薄ダイヤモンド層とシリコン基板の間の界面を調べると、界面が複雑であることを具体的に示している(Jiang, Nほか、Appl.Phys.Lett.、1993, 63巻3号、328頁)。Jiang等のこの文献によれば、非晶質炭素層又は結晶性SiC層がダイヤモンドの核形成のために必要であることが示唆される。この層の存在が基板とダイヤモンド層の電気的接触を良好なものとしている。界面層は基板とダイヤモンド層を接合するものであり、界面により基板とダイヤモンド層の接着が良好なものとなる。
【0028】
すなわち、界面を形成する物質は、電導性であるか又は極めて薄いので良好な電気的接触が達成され、界面形成によって問題となるような抵抗が生じることはない様に形成されている。
電導性の安定な炭化物類を形成する金属は、ダイヤモンドの蒸着用の良好な基板材料として用いることができる。この材料は、前記の界面接着性及び電気的接触性についての要件を備えていて炭化物を形成する。例えば、Mo,W,Ti,Cu,Co,Cr,Ni及びTiの低次酸化物(suboxide, 例えば、米国特許第4,912,286号に記載されているもの)が挙げられるが、本発明に好ましく用いられる基板はこれらの金属に限られない。例えば、p−タイプのドーピング化されたSiも通常用いられる基板材料であるが、Si基板は、0.01〜0.1Ωcmの程度の抵抗率を有している。より好ましい基板材料としては、安定な電導性界面を介してダイヤモンドへの良好な接着性、高電導率を有する材料であり、最適の場合には、電気化学的に不活性であるか、又は基板の処理溶液接触部を保護する不動態膜を形成する材料であり、このような金属材料の例は、Ti,Ta,Zr又はNbである。Ti金属は、電解質溶液との接触が金属基板を有意に腐蝕することがなく、そして電気化学処理の際の電解質の基板との接触から生じる基板不良がないので特に優れている。
【0029】
電極アセンブリに効率よく電流を供給して効果的に電解を進行させるために、電源から電導性基板への電気的接続が良好なことが必要である。そのため、電源、すなわち電流制御ユニットもしくは電圧制御ユニット、例えば電位可変器セルなど、から電導性基板への電気接触が良いことが必要であり、好ましい電気的接触が可能な接合材料としては、電導性エポキシ樹脂、例えば、銀エポキシ樹脂(銀エポキシ樹脂は電線又は他の導電材料を基板にしっかり固定することができる)によるか、又は電極アセンブリと導電材料間に圧力を加えて電極アセンブリと導電材料間の直接の物理的接触を行うものであってもよい。特に好ましいのは、基板が電解質溶液で腐蝕されず、ダイヤモンド層へ強固に接着し、かつ電源への導電材料としても機能できるように形成された電極アセンブリである。
【0030】
導電性ダイヤモンド電極における通電中の電圧降下は、ダイヤモンド層の抵抗率及び厚さ、並びに基板の抵抗率及び厚さ、及び電極への接続における抵抗に依存するので、基板の電導率及びダイヤモンド層や電源への接合状態は、電極アセンブリでの全体的な電圧降下に対しては無視できるように設計されているのが好ましい。
【0031】
電解酸化の際の電流密度は、一般に10mA/cm2 の程度であり、電極での電圧降下は、10〜100Vの範囲であり、電流値と抵抗値の二乗の積である電力消費は極めて大きく、相当のエネルギーが抵抗加熱となって失われてしまう。ダイヤモンド層が1MΩcm未満の抵抗率を有する場合、基板が十分に高い電導率を有し、ダイヤモンド層厚さが十分に薄い(5μm未満)限り、電解用の電極として用いることは可能である。
【0032】
しかし好ましい電極は、100Ωcm未満の抵抗率、及び100mA/cm2 の電流密度で電圧降下は1V未満となる厚さのダイヤモンド層を有する電極である。このような電極であれば、適当な電流密度で、抵抗加熱から生じる電力損が僅かな状態で機能する。最も好ましい電極は、0.1Ωcm未満の抵抗率を有し、電流密度1A/cm2 で、電極での電圧降下が0.1V未満となるような厚さを有する電極である。
【0033】
<電解槽の構造>
本発明においては、電解槽の構造は公知の各種の構成で用いることができる。すなわち、単一室セルであってもよく、又は陽極と陰極が膜で仕切られた分割セルであってもよい。最も簡単な実施態様は、単一室セルである。単一室セルでは、陽極と陰極を隔てるバリヤーがなく、したがって溶質は陽極と陰極間を移動するのに制限を受けない。このような単一室方式は、一般的には陽極で酸化された成分がその後陰極で還元されるという可能性を持っているが、本発明では写真廃液の成分の電気酸化分解反応は、大半がC−H及びC−C結合の破壊並びにC−O及びO−H結合の形成であって酸化種は殆ど非可逆的な酸化を受けているのでそのリスクの可能性はない。
【0034】
2室セルにおいては、イオン交換膜、ミクロろ過膜、半透膜、多孔性膜、などの通電性隔膜を陽極と陰極の間に挿入し、この隔膜はあるタイプのイオン種のみを陽極液から陰極液へ又はその逆方向へ通過させることができる。膜の機能は、陽極液と陰極液が混合することなく電気的中性を保持することである。また、適当な膜を用いれば、その膜を通過して移動するイオンの性質を制御することができる。例えば、陰極室でチオ硫酸イオンや亜硫酸イオンが還元されて生成した硫黄イオンにとって硫化銀が生成して沈殿し、陰極室内で捕集する本発明の好ましい態様が可能である。
【0035】
しかしながら、2室セルにおいては、膜の耐久性が限られているので、ファウリングを生じないように適切に交換するなどの管理が必要である。
【0036】
単一室セル及び2室セルの使用についての先の記載が与えられた場合、簡易という立場からは、単一室セルの使用が好ましい。しかしながら、隔膜の適切な管理とプロセス管理が可能ならば、より好ましい形態は2室セルである。
【0037】
本発明における電解酸化は、バッチ方式、再循環方式、連続方式のいずれの方式を用いても良く、廃液処理の規模や処理の程度に応じて、適宜最も都合がよい方式を選択できる。
【0038】
電極表面積は、ダイヤモンド電極のダイヤモンド層の粗さを制御することによって、巨視的には同じ幾何学的表面であっても、微細な表面粗さによって表面積の変化を与えることができる。それは、ダイヤモンド層の蒸着法及びパラメーターを変更して結晶サイズを変更することによって行われる。電極表面が滑らかでなく、かなりの粗さが表面に存在するならば、測定された顕微鏡による幾何学的面積は、みかけの電極表面積より大きく、電流密度はみかけの電流密度より低くなる。粗い電極表面は電極全体を通じて非均一の電流密度を生じるので、状況は実際さらに複雑となる。粗い電極はピークと谷を表面中に有し、電流密度はピーク域近辺で最高、谷で最低になる。鋭角の末端表面点は最高の電流密度を有する。その結果、電極表面上のある部分は、算出電流密度より高い電流密度下で作用し、別の領域は算出電流より低い電流密度で作用することになる。
【0039】
上記した不均一性はあっても、高表面積電極は、反応がおこることができる電極表面をより多く提供できるので、粗い電極表面を有することは有利である。多結晶性ダイヤモンド層は、本来その表面が粗く、その結果、電気化学反応の容積効率の点では優れた表面積特性を与える。電極表面積に加えて、電気化学セルのデザインにより生じる電流密度の変動についても考慮しなければならない。電流は、陽極と陰極の間に流れるので、電極の位置は最も均一な電流密度分布を得るように設定するのがよい。ダイヤモンド層電極を含有する電気化学セルは、陽極と陰極の直接接続、もしくはショートさせるような通路を生じさせることなく、電極間間隙をできるだけ小さく保つ。数センチメートルを超える大きい電極間距離は許容できるが、好ましい電極間間隙は、0.1mm〜50mmの範囲内であり、最も好ましい状態は電極間間隙が0.5mm〜20mmの範囲内にある。
【0040】
本発明における写真廃液の電解酸化は、電流密度が1mA/cm2〜10A/cm2、流速/セル体積比が0.001〜1000であり、電極表面積が顕微鏡により測定した幾何学的電極表面と等しいか、又はそれより大きく、とくに幾何学的電極表面の1〜5倍の表面積であることが好ましい。しかしながら、さらに好ましい状態は、電流密度が20mA/cm2〜2A/cm2の範囲であり、流速/セル体積比が0.01〜50であり、本発明の最良形態は、電流密度が50mA/cm2〜800mA/cm2であり、流速/セル体積比が1〜20の範囲であり、電極表面積が、顕微鏡で測定した幾何学的電極面積の少なくとも2倍の場合である。
【0041】
[生物処理]
本発明では、写真廃液をダイヤモンド陽極付きの電解装置で電解した後、さらに生物処理を施す。以下、生物処理について説明する。
【0042】
<廃液の希釈>
電解酸化処理が施された廃液は、微生物の生育に適した濃度へ希釈が行われる。好ましい希釈倍率は100以下であり、生物処理が現像所とは別の専用処理施設で行われる場合には、5〜100倍、好ましくは5〜50倍の希釈倍率の希釈が施された後、生物処理される。一方、生物処理を現像所において行う場合には、希釈することなく直接生物処理することが可能な場合もあるが、好ましくは生物処理に先だって希釈倍率が4以下の希釈が行なわれる。好ましい希釈倍率は3以下であり、2以下であることがより好ましい。また、希釈は 電解酸化処理を施した後が好ましいが、希釈してから電解酸化処理を施すことも可能である。
いずれにしても、写真廃液の生分解を行なうには、一般的には10〜100倍程度の希釈が必要であるが、本発明の方法では、上記のオンサイトの処理の例のように、低希釈の廃液でも生物処理が効果的に進行してCODが減少する。
なお、希釈倍率は、[(希釈後の被処理液の容積)/(原被処理液)]の容積を指す。
【0043】
<廃液のpH調製>
電解酸化処理が施された廃液は、酸あるいはアルカリを加えることで、微生物の生育に適したpHに調製される。微生物の生育に適したpHは、その微生物によって異なるが、通常、5.0〜9.0の範囲であり、6.5〜7.5が好ましい。
pHは、微生物に供される前に、pHを調製されてもよいし、生物処理槽に電解液を供した後に、pHを調製しても良い。生物処理中にもpHが変動する場合は、自動調整装置と連動させながら処理することが好ましい。
【0044】
<生物処理の形態>
生物処理の方法としては、汎用公知の好気性生物処理を適用できる。すなわち、一般的な活性汚泥法のほか、ラグーン法、散水濾床法、回転円板法等、好気性微生物を非処理液に含有させて曝気あるいは空気や酸素に接触させる方法であれば本発明の生物処理に用いることができる。現像所において廃液処理を行うには、廃液流入系と汚泥の分離・返送系と処理済み廃液排出系を備えた曝気槽からなるコンパクトなバイオリアクターが好ましい。これらの生物処理のより具体的方法については「廃水処理プロセス、設計理論と実験法」W.W.エッケンフェルダー、D.L.フォード著、松井三郎訳 技報堂出版および「生物学的水処理技術と装置」、化学工学協会編、培風館に記載されている。
本発明に特に好ましい生物処理方法は、微生物を担体に 担持・固定化させた形態で行う処理方法である。固定化処理の中でも、包括処理が特に好ましい。担持・固定化処理は、微生物濃度を高めることができて、かつ微生物の流出を防止できるので、処理槽の容積当たりの処理能力が高められるので、オンサイト処理には特に好都合である。
【0045】
・担持・固定化方法
本発明の微生物固定化担体の製造方法において、微生物の 担持・固定化方法としては、担体から生分解菌が流出しないように固定される方法ならばその種類、形式を問わない。具体的な 担持・固定化法としては、例えば、微生物が付着して生物膜を形成するような担体を用いる付着生物膜法、担体と培地を混合して微生物を培養する担持培養法、水不溶性の担体に微生物を結合させる担体結合法、減圧下で担体の孔隙内に微生物を封入する方法、2個以上の官能基を持つ試薬によって菌体内に架橋を形成させて固定化する方法、微生物を高分子のゲル内部や皮膜などに閉じ込める包括固定化法、さらに結合手段により共有結合法、物理的吸着法、イオン結合法及び生化学的特異結合法などと分類される担体結合法が知られているが、本発明には、これらの公知の方法を用いることができる。中でも、付着生物膜法及び包括固定化法が好ましく,とりわけ包括固定化法が優れている。
【0046】
付着微生物膜法の特徴は、微生物を高濃度化することができ、処理効率を向上させることができる。また、通常は系外に洗い出されてしまうような増殖速度が遅い菌を系内に留めることができる。また、微生物が安定して棲息できる状態に保てることも特徴としてあげられる。
【0047】
包括固定化法の特徴は、菌体を高濃度に保持できるため、処理効率を向上させることができ、増殖の遅い菌を固定化できる。また、pH、温度等の条件変化に対する耐性が広く、高負荷状態にも耐えることができる。包括固定化法としては、アクリルアミド法、寒天−アクリルアミド法、PVA−ホウ酸法、PVA−冷凍法、光硬化性樹脂法、アクリル系合成高分子樹脂法、ポリアクリル酸ソーダ法、アルギン酸ナトリウム法、K−カラギーナン法等、微生物を閉じ込めることができ、系の中で微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば種類を問わない。
【0048】
包括固定化法の代表例としてアクリルアミド法のを用いた微生物固定化ゲルの調製法について説明する。固定化ゲルは、架橋剤(例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド)を含有したアクリルアミドモノマー溶液と細菌(MLSS 20,000ppm程度の濃縮菌体)とを懸濁し、重合促進剤(例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)、重合開始剤(例えば、過硫酸カリウム)を添加し、3mm径の塩化ビニル製チューブ等の成型形に入れ、20℃で重合し、重合終了後、成型形から押し出し、一定の長さに切断して得られる。固定化ゲルの表面の細孔は、細菌より小さいため、包括固定化した細菌はリークしにくく、内部で増殖し、自己分解する。廃液中の汚染成分のみが細孔よりゲル内部に入り込み、内部の細菌により処理される。
【0049】
これらの固定化法のより具体的な方法については、「生物触媒としての微生物」100頁、福井三郎著(共立出版、1979),「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一編著(産業用水調査会)、稲森悠平の「生物膜法による排水処理の高度・効率化の動向」,水質汚濁研究, 13巻,9号(1990),563−574頁、稲森悠平らの「高度水処理技術開発の動向・課題・展望」,用水と廃水, 34巻,10号(1992),829−835頁 などに記載されている。
【0050】
・微生物担持用担体
次ぎに、微生物担持用担体について説明する。
微生物担持用担体としては、微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば、いずれの公知材料をも使用できるが、有用微生物の効果的な担持という点から、担体表面に微生物が強く吸着するもの、微生物を微小孔隙中へ侵入させることにより保持力を高めることができるような多孔性のもの、ミクロ粒子が凝集して実質的に吸着あるいは吸蔵表面を増大させたものが望ましい。
また、膨潤性の担体材料は、微生物が利用できる空間が広い点では、好ましい材料ではあるが、微生物を 担持・固定化した後、長期に亘って安定に使用するためには、物理的な強度が必要であり、その点では非膨潤性の担体材料を用いることが好ましい。非膨潤性であっても後述するようなサイズ効果や形状効果を利用して利用空間を維持させることができる。
また、被処理水と担体とが激しく相対運動する微生物処理環境においては、担体の物理的強度が特に重要であり、さらに活性汚泥槽のように担持担体が流動する流動床の場合には、比重の制御ができることが必要で、シリカなどの比重制御剤を用いて比重値を約1.1程度に調整するので、この点からも物理的強度が大きいことが好ましい。
【0051】
これらの理由から、本発明に好ましい担持用担体としては、具体的には、セルロース、デキストラン、アガロースのような多糖類;コラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの不活化蛋白質;イオン交換樹脂、ポリビニルクロライドのような合成高分子化合物;セラミックスや多孔性ガラスなどの無機物;寒天、アルギン酸、カラギーナンなどの天然炭水化物;さらにはセルロースアセテート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、光硬化性樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなどがあげられる。また、リグニン、デンプン、キチン、キトサン、濾紙、木片等などの天然物も利用できる。
中でも、上記した好ましい要件に特に適合する材料としてポリプロピレン及びポリエチレンで代表されるポリオレフィン系の合成高分子化合物材料が好ましい。
これらの材料は、市販されており、例えばバイオステージ(ポリプロピレン製、筒中プラスチック工業(株)製)、ゼビオバイオチューブ(ポリエチレン製、ゼビオプラスト(株)製)などを挙げることが出来る。
【0052】
好ましい担体の形状としては、ほぼ球状、ほぼ立方体状、ほぼ直方体状、円筒状あるいはチューブ状であり、なかでも製造し易いほぼ球状、あるいは比面積を大きくできるほぼ直方体状又はチューブ状であることが好ましい。担体の製造方法としては、既知の任意の方法を用いることができる。例えば微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を不溶解性液体中に滴下して液体中で液滴を固化させて微生物 担持担体粒子の分散物を作る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を低温化、ゲル化剤や固化剤の添加などの方法で固化させた後、固化体を適当なサイズに裁断して微生物を 担持した直方体粒子を得る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を押し出しノズルから不溶解性液体中に注入して液体中で固化させて微生物 担持担体の糸状の固化物を得てこれを適当に裁断して円筒状粒子を作る方法、またこのときの押し出し成形のダイを環状として円環状(チューブ状)の微生物 担持担体粒子を得る方法を挙げることができる。
【0053】
担体粒子の大きさは、外径0.1〜70mm、好ましくは0.5〜40mm、より好ましくは1.0〜10mmであり、粒子サイズが大きければ比面積が少なくなって非効率となり、小さいとすぐに分解・消滅して 担持体の意味をなさなくなる。したがって、適用対象に応じて好ましいサイズが選択される。
【0054】
・微生物
生物処理に用いる微生物に付いては、生物処理が微生物を固定化しない一般的な形態で行う場合も固定化してコンパクトな装置で行う場合も、本質的に同じであるので、ここでは方式に関係なく説明する。
本発明の方法では、一般的に難分解性である写真廃液を通常用いられている活性汚泥を用いて処理することができる。順化処理が行われるので、活性汚泥中の微生物の履歴・由来などは問わない。しかし、写真廃液は、前記のようにアミノポリカルボン酸型の錯形成剤、各種のアニオン性及び非イオン性界面活性剤、有機溶剤など類を含んでいることからそれらの生分解を効果的に行う特定の微生物を単独で用いたり、活性汚泥と組み合わせて用いたりすることもできる。後者の場合は、それぞれの微生物がいずれも十分に活動できるように、活性汚泥と上記特定の微生物とを別個の処理槽で処理できるように複数構成の微生物処理槽を用いることが好ましい。
【0055】
また、写真処理廃液は、塩濃度が高いので高塩濃度環境で生育できる好気製菌であることが好都合であり、とくに現像所でオンサイト処理するような場合には、被処理廃水の希釈倍率を下げるほど装置を小型化できて有利であるのでこの観点からも耐塩性菌が好ましい。耐塩性菌の例としては、特開2001−169775号公報に記載の高塩濃度耐性白色腐朽菌、特に海洋性白色腐朽菌、特開2000−270846号公報及び特開2000−279167号公報記載の耐塩性菌、特開平9−192690号公報及び特開平9−201187号公報等に記載の耐塩性硝化脱窒菌を挙げることができる。
さらにEDTA分解能を有する海洋性菌類であるバチルス・エディタビダス(Bacillus editabidus)及びメソフィロバクター・エディタビダス(Mesophilobacter editabidus) が挙げられる。この有機アミノカルボン酸類分解菌バチルス・エディタビダス(Bacilluseditabidus)は、Bacillus editabidus −M1(微工研菌寄第14868号)及びBacillus editabidus −M2(微工研菌寄第14869号)の属する種である。又、有機アミノカルボン酸類分解菌メソフィロバクター・エディタビダス(Mesophilobacter editabidus) は、Mesophilobacter editabidus−M3(微工研菌寄第14870号)の属する種である。
【0056】
・栄養物
本発明において、微生物を 担持・固定化して用いる態様では、該微生物用の栄養物を供給してやることが、 担持・固定化される微生物の増殖を促進して速やかに該微生物が優先的に生育する環境が確立されるので、好ましい。また、廃液処理装置の稼動中に微生物の活性が低下した場合にも栄養物の供給により賦活してやることが好ましい。
栄養物としては、炭素、窒素、リンを含むものが好ましく、微生物の生育に適した培養液などが挙げられる。培養液としては、例えば、肉汁、酵母エキス、麦芽エキス、バクトペプトン、グルコース、無機塩類、ミネラルなどが適当な割合で混合したものが良く用いられているが、微生物の種類に応じて適当な配合比のものを選べば良い。また、本発明に用いる栄養物としては、上記の培養液以外にも有機、無機栄養物を適当に含むものであれば、どのようなものでも利用可能である。例えば、自然界より採取した、あるいは培養を加えた任意の微生物を乾燥、粉砕し、粉砕微粉体を栄養物として用いてもよい。
さらに、生分解菌として働く微生物を活性化する特定の共存微生物を用いることもできる。この共存微生物は、それ自身が生分解菌として働く微生物の栄養源となったり、その共存微生物が分泌する物質が生分解菌として働く微生物を活性化する成分を含んでいたりする。好ましい微生物としては、いわゆるEM菌として市販されている微生物混合体や光合成細菌が挙げられる。とりわけ、ロードシュードモナスキャプスラータ(Rhodepseudomonas capsulata)やチオバチルスデフィニトリカンス(Thiobacilluse definitricans)をはじめとする光合成細菌が好ましい。
【0057】
その他の調整条件
微生物処理の温度は、微生物の活動に適した温度であることが必要で、3〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは18〜40℃である。この温度に維持するためには、状況に応じて温水を撒布又は注入するなどの加温を行なってもよい。また、寒冷地などでは、熱伝導体をバイオリアクターに装備して熱源からの伝熱あるいは直接の通電によって加温することもできる。熱伝導体としては、金属、セラミックスなど熱を伝えることができる物質であれば材質は問わない。
【0058】
本発明に適用される写真処理廃液は、写真処理液成分を主成分としているが、写真処理廃液には、写真処理液に添加されている素材のほか写真処理過程で生成した現像主薬の酸化体、硫酸塩、ハライドなどの反応生成物や、感光材料から溶け出した微量のゼラチン、感光色素、界面活性剤などの成分が含まれている。
【0059】
[写真処理液]
写真処理液は、カラー感光材料と黒白感光材料の処理に用いられるが、処理されるカラー感光材料としてはカラーペーパー、カラー反転ペーパー、撮影用カラーネガフィルム、カラー反転フィルム、映画用ネガもしくはポジフィルム、直接ポジカラー感光材料などを挙げることができ、黒白感光材料としては、Xレイフィルム、印刷用感光材料、マイクロフィルム、撮影用黒白フィルムなどを挙げることができる。
【0060】
写真処理液にはカラー処理液、黒白処理液、製版作業に伴う減力液、現像処理タンク洗浄液などがあり、黒白現像液、カラー現像液、定着液、漂白液、漂白定着液、画像安定化液などが挙げられる。
【0061】
カラー現像液は、通常、芳香族第一級アミンカラー現像主薬を主成分として含有する。それは主にp−フェニレンジアミン誘導体であり、代表例はN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ〕アニリン、N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミノアニリンである。また、これらのp−フェニレンジアミン誘導体は硫酸塩、塩酸塩、亜硫酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの塩である。該芳香族第一級アミン現像主薬の含有量は現像液1リットル当り約0.5g〜約10gの範囲である。
【0062】
また黒白現像液中には、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−ヒドロキシメチル−4−メチル−3−ピラゾリドン、N−メチル−p−アミノフェノール及びその硫酸塩、ヒドロキノン及びそのスルホン酸塩などが含まれている。
【0063】
カラー及び黒白現像液には保恒剤として、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩や、カルボニル亜硫酸付加物を含有するのが普通で、これらの含有量は現像液1リットル当たり0g〜5gである。
【0064】
カラー及び黒白現像液中には、保恒剤として種々のヒドロキシルアミン類を含んでいる。ヒドロキシルアミン類は置換又は無置換いずれも用いられる。置換体としてはヒドロキシアルミン類の窒素原子が低級アルキル基によって置換されているもの、とくに2個のアルキル基(例えば炭素数1〜3)によって置換されたN,N−ジアルキル置換ヒドロキシルアミン類が挙げられる。またN,N−ジアルキル置換ヒドロキシルアミンとトリエタノールアミンなどのアルカノールアミンの組合せも用いられる。ヒドロキシルアミン類の含有量は現像液1リットル当り0〜5gである。
【0065】
カラー及び黒白現像液は、pH9〜12である。上記pHを保持するためには、各種緩衝剤が用いられる。緩衝剤としては、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシン塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロシアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。特に炭酸塩、リン酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩は、溶解性やpH9.0以上の高pH領域での緩衝能に優れ、現像液に添加しても写真性能面への悪影響(カブリなど)がなく、安価であるといった利点を有し、これらの緩衝剤が多く用いられる。該緩衝剤の現像液への添加量は通常現像液1リットル当たり0.1モル〜1モルである。
【0066】
その他、現像液中にはカルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤として、或いは現像液の安定性向上のために各種キレート剤が添加される。その代表例としてニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ−N,N,N−トリメリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンホスホン酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール四酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等を挙げることができる。これらのキレート剤は必要に応じて2種以上併用されることもある。
【0067】
現像液は、各種の現像促進剤を含有する。現像促進剤としては、チオエーテル系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、4級アンモニウム塩類、p−アミノフェノール類、アミン系化合物、ポリアルキレンオキサイド、1−フェニル−3−ピラゾリドン類、ヒドラジン類、メソイオン型化合物、チオン型化合物、イミダゾール類等である。
【0068】
多くのカラーペーパー用カラー現像液は、上記のカラー現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤などと共にシルキレングリコール類やベンジルアルコール類を含んでいる。一方カラーネガ用現像液、カラーポジ用現像液、一部のカラーペーパー用現像液は、これらのアルコール類を含んでいない。
【0069】
また、現像液中には、カブリ防止の目的で、臭素イオンを含有することが多いが、塩化銀を主体とする感光材料に対しては臭素イオンを含まない現像液を用いることもある。その他、無機カブリ防止剤としてNaClやKClなどの塩素イオンを与える化合物を含有していることがある。また各種有機カブリ防止剤を含有していていることも多い。有機カブリ防止剤としては、例えば、アデニン類、ベンズイミダゾール類、ベンズトリアゾール類及びテトラゾール類を含有していてよい。これらのカブリ防止剤の含有量は現像液1リットル当り0.010g〜2gである。これらのカブリ防止剤は処理中に感光材料中から溶出し、現像液中に蓄積するものも含まれる。特に本発明において上記したような臭素イオンや塩素イオン等の総ハロゲンイオン濃度が混合液1リットル当たり1ミリモル以上であるような廃液においても有効に処理することができる。特に臭素イオン濃度が混合液1リットル当たり1ミリモル以上の場合に有効である。
【0070】
また、現像液中には、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等の各種界面活性剤を含有している。
【0071】
黒白写真処理においては、現像処理の後に定着処理が行なわれる。カラー写真処理においては、現像処理と定着処理の間に通常漂白処理が行なわれ、漂白処理は定着処理と同時に漂白定着(ブリックス)で行なわれることもある。漂白液には、酸化剤として鉄(III) 又はCo(III) のEDTA、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸塩、ホスホノカルボン酸塩そのほか過硫酸塩、キノン類などが含まれている。そのほか、臭化アルカリ、臭化アンモニウムなどの再ハロゲン化剤、硼酸塩類、炭酸塩類、硝酸塩類を適宜含有する場合もある。定着液や漂白定着液には通常チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム又はカリ明ばん亜硫酸塩などを含有していている。
【0072】
ハロゲン化銀写真感光材料の処理においては、定着処理あるいは漂白定着処理行なった後、水洗及び/又は安定処理を行なうことが一般的である。水洗処理においては、その処理槽にバクテリアが繁殖し、生成した浮遊物が感光材料に付着する等の問題が生じることがある。このような問題の解決策として、水洗水に特開昭61−131632号に記載のカルシウムイオン、マグネシウムイオンを低減させる方法を用いることができる。また、特開昭57−8542号に記載のイソチアゾロン化合物やサイアベンダゾール類、塩素化イソシアヌール酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、その他ベンゾトリアゾール等、堀口博著「防菌防黴剤の化学」、衛生技術会編「微生物の滅菌、殺菌、防黴技術」、日本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」に記載の殺菌剤を用いることもある。
【0073】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
[実施例1]
試験用の写真廃液として、デジタルミニラボFRONTIER350(富士写真フイルム株式会社製)を用いて、市販のカラーペーパー(フジカラーペーパーsuper)にカラーネガからプリント焼き付けを行って、フジカラーカラーペーパー用処理剤CP−48Sを用いて処理して得た現像、漂白定着、水洗、各浴からのオーバーフロー液、すなわち現像廃液、漂白定着廃液、水洗廃液を混合したものを用いた。
【0074】
<電解>
陽極に二酸化鉛(日本カーリット社製、LD400)、陰極にステンレス(SUS−316)用い、陰極3枚と陽極2枚を交互に取り付けた容量15Lのタンクに、廃液10Lを入れて電解した。それぞれの電極面積は、200cm2であり、極間距離は25mm、廃液はスターラーで撹拌しながら、電流を100Aとして、15時間電解酸化処理を行った。
次いで、陽極を、同一面積の、白金電極、及びダイヤモンド電極にそれぞれ変えた以外は同じ条件で実験を行った。
使用したダイヤモンド電極は、ホウ素ドーピング化ダイヤモンド層電極で、本明細書中に前記した方法で、(100)単結晶シリコンウェーハ(0.76mm厚さ)上に蒸着したダイヤモンド層にホウ素を含ませたホウ素ドーピング化多結晶質ダイヤモンド層(約2.5μm厚さ)であり、米国のAdvanced Technology Materials, Inc., 7 CommerceDrive, Daubury, CT 06810より市販されているものを用いた。このダイヤモンド層の抵抗率は、80mΩcmであり、ドープしたホウ素濃度は、5,000ppm であった。また、シリコンウェーハの抵抗率は15mΩcmであった。銅電線をシリコン基板へ、市販の銀エポキシ(Epo−Tek H20E, Epoxy Technology Inc.)を用いて固定することにより、溶液の、電極の裏側へのリークを、RTVシリコーンを用いて最少にして、ダイヤモンド電極の裏面同士を張り合わせ臨界面を密封した。
また、白金電極は、市販の白金板をそのまま用いた。
【0075】
各電極の印加電圧は、二酸化鉛 3.5V、白金 5V、ダイヤモンド 6Vであった。
電解後の反応液を、水酸化ナトリウム粒でpH6.5に中和し、ろ過して、沈殿した硫化銀と水酸化鉄を除去し、ろ液中のCOD(JIS法(JIS K0102、工業排水試験方法)に定められているマンガン法),銀イオン(原子吸光法)を分析した。
さらに、電解後のろ液を、活性汚泥(MLSS(活性汚泥浮遊物)4500mg/リットル)にて、平均滞留時間2日として連続曝気処理を行った。生成する硫酸を10%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、曝気槽内をpH6.6以下にならないように保った。
【0076】
使用した汚泥は、富士写真フイルム(株)足柄工場の端末処理場から採取した活性汚泥を、微生物栄養源として本明細書中に前記した栄養液と上記写真廃液試料液との混合液を用いて、溶存酸素量(DO)を0.1mg/L〜3mg/Lに保つよう、空気を曝気槽にはpHコントローラー(東京理化製)を設け、硫酸または水酸化ナトリウムの添加により槽内のpHを8.5±0.1に保ちながら馴養した活性汚泥を用いた。栄養液と写真廃液試料液との混合比は、9:1でスタートし、汚泥の状況を見ながら順次写真廃液試料液の比率を増やして3週間の連続運転の後全量を写真廃液試料液として得た。
得られた廃液のCOD(上記過マンガン酸法)を分析した。
【0077】
【表1】
【0078】
表からわかる様に、ダイヤモンド電極を用いた電解酸化処理により元廃液の1/2以上のCODを除去後、生物処理を行った場合、残存CODは99%以上除去され、且つ、CODの除去を電解のみで99%近くまで処理する場合の約1/2の電力で行なえており、本発明の組合せが、効率よい方法であることがわかる。また、電解を他の電極を用いた場合は、電気分解が不十分で、難生分解性の化合物が除去しきれていないため、電解後に生分解処理を組み合わせてもCODが下がらないため、本発明の有効性は明らかである。
【0079】
[実施例2]
上記実施例1の試験において、電解時間の途中ラップを細かく取って、本発明の電解と生分解処理との組合せの効果が発現する電解量を測定する試験を行った。得られた電解時間とCODの推移及び処要電力量の関係を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
ダイヤモンド電極による電解+生物処理とを組み合わせた本発明の方法の場合は、電解工程でCODの70%以上を除去すればその後の生物処理で、下水道法の規制値の600mg/Lを満たすまで除去できるが、他の電極では、80%以上電解で除去しないと、600mg/L以下には到達しない。しかもこの場合に必要な電力消費は、ダイヤモンド電極の場合の2倍以上であり、本方式の有効性は明らかである。
ダイヤモンド電極を用いた場合は、廃液中の有機成分の酸化分解生成物のなかでも特に、ギ酸、酢酸等の生分解の容易な成分の生成が速く、COD値が若干高くても生分解が容易になったと推定している。
【0082】
【発明の効果】
導電性ダイヤモンド電極を陽極として電解酸化処理を施した後、生物処理を行なうことを特徴とする本発明の写真廃液の処理方法によって、写真廃液のBOD及びCODを下水道法の排水基準を満たすレベルまで効果的に低減できる。この方法は、現像所においても実用できる。
Claims (7)
- 写真処理廃液に電解酸化処理を施した後、生物処理を行なう写真処理廃液の処理において、該電解酸化処理に導電性ダイヤモンド電極を陽極として用いることを特徴とする写真廃液処理方法。
- 電解酸化処理によって写真処理廃液のCODの少なくとも70%を低減させた後、生物処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の写真廃液処理方法。
- 電解酸化処理において、陽極と陰極の両方に導電性ダイヤモンド電極を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の写真廃液処理方法。
- 電解酸化処理において、陽極と陰極の極性反転をおこなうことを特徴とする請求項3に記載の写真廃液処理方法。
- 生物処理が活性汚泥処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
- 生物処理が耐塩性菌による処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
- 生物処理が担体に固定化された微生物による処理であることを特徴とする請求項6または7に記載の写真廃液の処理方法。
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