JP2005177585A - 写真廃液の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 写真廃液のBOD及びCOD並びに全窒素量のいずれをも下水道法に基づく排水基準を満たすレベルに低減できる写真廃液処理方法を提示すること。
【解決手段】 全窒素量が0.5g/L以上の写真廃液に物理化学的酸化処理を施し、ついで硫酸イオン低減処理を施し、さらに生物処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は写真廃液の処理に関するもので、具体的には写真廃液の処理に伴う環境負荷の軽減に関し、中でも写真廃液の全有機炭素量や化学的酸素消費量のみでなく全窒素量をも低減する方法に関する。
写真廃液は高濃度のBOD 、COD 、窒素、リンを含み、且つ、生物処理または化学処理によっても難分解性成分が多量に残存している。写真廃液特にカラー現像液は種々の工業廃液の中でも最も処理が困難なものの1つであって、従来から多くの処理法が開示されているが、除去率・処理コストの両面で尚多くの問題がある。現像所にとって手間がかからない処理手段は、廃液の焼却処理を産業廃棄物処理業者に委託することであり、これが現実的手段として通常行われているが、焼却処理には化石燃料を必要とするので環境保全の上から問題を含む処理手段である。
焼却に頼らない写真廃液処理方法に関して従来開示されている方法は、主として生物処理、化学処理及び物理処理である。生物処理法は、例えば活性汚泥法によるもので、通常廃液を10〜50倍に希釈したものを曝気期間15〜50日の処理でCOD の50〜80%、及びBOD の50〜80%が分解除去出来るとされている。化学処理(酸化法)にはオゾン酸化法、過酸化水素−第一鉄塩法(フェントン法)、電解酸化法等がある。オゾン酸化法は無機COD 成分の分解除去及び現像主剤である芳香族化合物のベンゼン環分解に有効であるが、有機BOD 成分を除去する効果は殆どない。フェントン法は有機・無機成分いずれに対しても効果があるが、処理コストが高い点に問題がある。一般に化学処理によるCOD の除去率は50%程度とされている。
物理処理には高圧加熱法、噴霧焼却法、蒸発乾燥法等がある。写真廃液中には多量のハロゲン化物イオンが含まれているので、反応装置の応力腐食が問題となる。また、熱回収のための熱交換器のスケール、残渣、廃ガス等の処理にも問題がある。
しかしながら、これらの開示された写真廃液処理手段は、難生分解性のものも含む無機、有機の多種の化合物が混在した写真処理廃液を排水基準を満たすレベルまで処理するには不十分である。そのため改善方法として、上記した処理手段の組み合わせ、とりわけ酸化処理と微生物処理を組み合わせた処理方法が提示されている。例えば、特許文献1には、過酸化水素酸化処理(フェントン法)と微生物処理との組み合わせにより、特許文献2に電解酸化処理と微生物処理との組み合わせにより、また特許文献3にオゾンガスによる光化学酸化と微生物処理との組み合わせにより、写真廃液のBOD及びCODの低減できることが開示されている。また、特許文献4には、汚泥を濾別しながら電解処理と活性汚泥処理とを反復させる写真廃液処理方法が開示されている。
これらの生物処理、化学処理及び物理処理から選択された組合せ処理は、BODやCODなどの酸素消費性についてはかなりの効果は認められるが、必ずしも十分ではないことに加えて写真廃液が大量に含んでいる全窒素量(多くの場合0.5g/L以上)の低減作用が特に不十分である。活性汚泥処理などの好気性処理の場合でも、十分の滞留時間を取れば、処理後期には脱窒が行われるとされているが、写真廃液の処理の場合には、脱窒反応の進行は極めて緩慢であって実際的でない。また、全窒素量を低減する目的の生物処理でも、好気性硝化に続く嫌気性脱窒工程の進行が極めて遅いという問題がある。
上記のように好気性、嫌気性いずれの生物処理も、また生物処理と別の手段とを組み合わせた複合処理方法も、写真廃液に対しては酸素消費量の低減効果が不十分であることと、それ以上に全窒素量の低減効果の不足であることとが実用上の障害であり、写真廃液に対してBOD及びCOD並びに全窒素量のいずれをも排水基準値以下に低減させ得る現実的な廃液処理手段が求められている。
この出願の発明に関連する前記の先行技術には、次ぎの文献がある。
特開平3−262594号公報 特開平4−235786号公報 特開平5−96298号公報 特開平6−320184号公報
本発明は、上記した背景からなされたものであり、その目的は、写真廃液のBOD及びCOD並びに全窒素量のいずれをも下水道法に基づく排水基準を満たすレベルに低減できる写真廃液処理方法を提示するである。
本発明者は、上記目的の解決方法を見出すために、とくに写真廃液やその一次処理液の組成や塩濃度と硝化・脱窒菌の活性との関連に着目して鋭意検討するなかで、特定の一次処理が行われることによって脱窒性微生物の活性が維持されることを見出すに至り、それに基づいて本発明に到達することができた。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)全窒素量が0.5g/L以上の写真廃液に物理化学的酸化処理を施し、ついで硫酸イオン低減処理を施し、さらに生物処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
(2)物理化学的酸化処理が電解酸化処理であることを特徴とする上記(1)に記載の写真廃液の処理方法。
(3)電解酸化処理が、導電性ダイヤモンド電極を陽極として用いる電解酸化処理であることを特徴とする上記(2)に記載の写真廃液の処理方法。
(4)硫酸イオン低減処理が水溶性アルカリ土類金属塩を写真廃液に添加して硫酸イオンを沈澱させて除去する処理であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
(5)水溶性アルカリ土類金属塩がカルシウム塩又はバリウム塩であることを特徴とする上記(4)に記載の写真廃液の処理方法。
(6)硫酸イオン低減処理が写真廃液中の硫酸イオン濃度を1g/L以下に低減する処理であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
本発明の写真廃液の処理方法の特徴は、写真廃液に生物処理を施すに先だって、物理化学的酸化処理とそれに続く硫酸イオン低減処理を施すことである。物理化学的酸化処理と生物処理を組合せて行う複合処理方法は公知であるが(前記従来技術参照)、両処理の間に硫酸イオン低減処理を施すと、生物処理における脱窒作用が促進されて全窒素量を排水基準を満たすまで低減できることが判明した。
物理化学的酸化処理は、いずれの酸化剤による化学酸化であっても、電解酸化であっても、あるいはそれらの光化学的、触媒的促進処理であってもよいが、その中では電解酸化処理が化学的酸化剤が不要で工程制御が容易であって、かつ効果が大きいことなどで有利であり、とりわけダイヤモンド電極を陽極に用いる電解酸化法が高い酸化電位を適用できて好ましい。
硫酸イオン低減処理は、硫酸イオンを難溶性塩にして被処理廃液から分離することが実際的であり、難溶性塩形成には、アルカリ土類金属化合物が適している。とくに硫酸塩の溶解度積が小さいカルシウム化合物やバリウム化合物が好ましい。
硫酸塩の低減の程度は、硫酸イオンの廃液中の濃度が1g/L以下とするのがよく、このレベルまで低減すると写真廃液成分の脱窒反応阻害作用は認められなくなる。
全窒素量が0.5g/L以上の写真廃液に物理化学的酸化処理、硫酸イオン低減処理、生物処理を順次施すことを特徴とする写真廃液の処理方法によって、従来全窒素量の低減が特に困難であった写真廃液でも全窒素量を効果的に低減させることが可能となる。その結果,BOD及びCOD並びに全窒素量のいずれをも下水道法に基づく排水基準を満たすレベルに低減できる
以下、本発明をさらに具体的に詳述する。
なお、本明細書では生分解に係る「微生物」を「菌体」と呼ぶこともあるが、実質的に同義に解してよい。また、「写真処理廃液」とその簡略表現である「写真廃液」は、同義である。
[被処理廃液]
本発明の実施の形態の説明に先だって、発明の対象である写真処理廃液について述べる。写真処理廃液は、カラー写真或いはモノクローム写真の現像廃液の他、定着廃液または写真製版等写真工業で発生した多くの種類の廃液が含まれている。定着廃液は、溶存している銀を回収した残液が処理の対象となる。通常これら種々の写真処理工程からの廃液は、混合された状態で回収されて、処理される。
写真廃液を構成する現像廃液は、現像処理の各工程から排出された廃液であって、処理中に感光材料から溶出した例えばゼラチンや感光色素などの成分、処理中に生じた反応生成物、及び処理液処方に含まれて消費されなかった構成薬品(処理液処方の詳細は後述する)などを含んでいる廃液である。
カラー現像廃液には、現像主薬及びその酸化生成物、アルカリ化合物及び緩衝剤、亜硫酸塩やヒドロキシルアミン誘導体などから選択される補恒剤、アルカリハライドなどを主体としており、定着廃液は、チオ硫酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及び/又は亜硫酸のアンモニウム塩及び/又はナトリウム塩、アルカリハライドなどを主体としており、漂白廃液は、ポリアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩などの漂白剤とそれに由来する反応生成物、アルカリハライド(再ハロゲン化剤)、緩衝塩などを主体としており、漂白定着廃液は、定着廃液と漂白廃液に含まれるものとほぼ同様の成分を主体としており、その他の各工程から排出される廃液もそれらの工程液の機能性化合物とそれに由来する化合物を含有している。したがって、処理される写真廃液の成分は、現像液由来の成分や漂白液・定着液・漂白定着液由来の成分などが感光材料溶出物や処理中の反応生成物と混在しており、例えば緩衝剤(炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩など)、発色現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤、アルキレングリコール類、ベンジルアルコール類、界面活性剤(アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等)酸化剤(鉄(III)のEDTA錯塩、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸錯塩など)、ハロゲン化物(臭化アルカリ、臭化アンモニウムなど)、チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩など多岐に亘る化学成分を含んでいる。
感光材料からも処理の過程で種々の感光材料添加成分やそれらの反応生成物が処理液中へ溶出する。ハロゲン化銀は、銀錯塩とハライドイオンとなって処理液中に溶出し、それに伴ってハロゲン化銀に吸着していた感光色素(色増感剤)やかぶり防止、化学増感、その他の目的の含窒素ヘテロ環化合物、カプラーやDIR化合物から離脱した化合物(多くの場合窒素化合物)が処理液中に溶出する。さらに感光層のバインダーから界面活性剤などが溶出してくる。感光材料から溶出される化合物の更なる詳細は、後述する感光材料の項に述べる。
したがって写真処理廃液は、前記したように処理液由来及び感光材料由来の酸素消費性化合物、窒素化合物、硫黄化合物,鉄錯塩及び高い塩濃度を持っている。この多様性が効果的な廃液処理手段を困難にしているが、本発明はその解決につながるものである。
写真廃液の組成は、処理の種類及びその処理の各工程からの廃液の混合比率によりかなり変動するが、おおよそCOD 30,000〜50,000 mg/l、BOD 5,000 〜15,000 mg/l、TOC(Total Organic Carbon) 10,000〜25,000 mg/l、ケルダール窒素 10,000 〜15,000 mg/l、トータル燐 100〜500mg/l の範囲である。COD:BOD:TOC の比率は概ね 4:1:1.5でCOD が高い特徴があり、またC:N:P の元素比率はほぼ 100:100:1でN の含有率が高い特徴がある。
写真廃液は、難生分解性化合物を多く含有していて生物処理手段のみによる廃液処理を困難にしている。難生分解性化合物の主なものは、上記の鉄(III)キレートなどの漂白剤や現像主薬である。
本発明の対象となる写真廃液は、全窒素量が0.5g/L以上の廃液であるが、上記のように多くの写真廃液は全窒素量0.5g/L以上である。また、全窒素量が0.5g/Lに満たないような処理廃液が特定の工程から排出されても、廃液処理には他工程からの廃液と混合した混合廃液にすることによって全窒素量が0.5g/L以上の廃液とすることができる。
本発明の廃液処理に対しては、写真廃液の好ましい全窒素量は、0.5〜20g/Lであり、より好ましくは1.0〜15g/Lであり、さらに好ましい濃度範囲は1.5〜10g/Lである。処理される廃液は、状況が許すなら廃液同士を混合して上記範囲に調整することにより、全窒素量の低減効果を高められる。
また、本明細書における写真廃液のCOD、全窒素量、アンモニア性窒素などは、通常の環境データとして用いられる指標であって、JIS K0102(工業排水試験方法)に規定されたCODMn、全窒素量、アンモニア性窒素の試験方法にもとづいている。写真廃液の場合は、写真処理に用いた各処理液の処方値と使用比率からアンモニア性窒素となる化合物の全窒素含量を求めることによってアンモニア性窒素量を精度良く近似できるので、実際的な方法としてこの近似値算定手段を用いても良い。
[廃液処理工程]
<物理化学的酸化処理>
本明細書において、物理化学的酸化処理は、化学酸化処理の中で、酸化剤が処理済み廃液中に水、酸素、水素、炭酸ガス又は炭酸イオン以外の反応生成物として残ることのない処理を指す。具体的には、酸素、オゾン、過酸化水素、過炭酸から選択される酸化剤による酸化処理、これらの酸化剤存在下での紫外線などの活性光照射処理、電解酸化処理、及び活性光照射を伴う電解酸化処理が挙げられる。
好ましい物理化学的酸化処理は、電解酸化処理、オゾン酸化処理、過酸化水素酸化処理、及びこれらと紫外線照射の組み合わせ処理である。特に好ましい処理は、電解酸化処理、オゾン酸化処理及びオゾンと紫外線照射の組み合わせ処理である。
電解酸化法
本発明において、写真処理廃液は、pHの調製や、支持電解質の添加を行うことなしに電解処理に供して良い。必要があれば電解酸化処理に先だって又は電解中に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤を用いてpHの調整が行ってもよい。電解中に被処理液は酸性化すると成分中の臭素イオン、塩素イオン、沃素イオンが酸化されてそれぞれのハロゲンガスが発生するので、これを防止するためである。また、CODの分解効率にもアルカリ性のpHが好ましい。添加されるアルカリ剤は、固体、水溶液、懸濁液などのいずれの形であってもよく、添加方法も電解酸化処理に先だって添加してもよく、また自動調整装置と連動させながら電解をすすめてもよい。pHは電解操作中7以上に、好ましくはpH8以上に、維持されるように調整されてもよい。
一方、鉄錯塩化合物の加水分解による沈殿生成を抑止するために、pHは12.5以下であることが好ましい。
電解酸化処理の温度は常温或いはこれよりやや高い温度が好ましく、また、電圧は5.0 〜8.0 V 、電流密度は、0.005 〜1A/cm2が好ましく、より好ましくは0.01〜0.5 A/cm2がよい。また、電解は回分法でも連続法の何れでもよい。
電解酸化処理の程度にもよるが、好ましい条件ではこのプロセスによって廃液中のCOD の10〜40%、多くの場合10〜20%が低減される。しかしながら、電解酸化処理の大きな利点は、COD の低減効果以上に、前記したように電解酸化処理後の廃液は微生物による生分解率が向上することある。実際に、殆ど生物分解性がない現像主薬成分、EDTA、Fe+3−EDTA錯塩等の化合物の大部分が電解処理によって生物分解性物質に分解されているという分析結果が得られている。担体に固定化した微生物を用いると生分解処理がさらに効果的に進行する。
写真廃液中には、一般的に多量のハロゲン化イオンが存在する。従って電解により塩素イオンは陽極で酸化されて塩素が生成し、塩素の一部は更に水と反応して次亜塩素酸イオンが生成するため酸化活性が増大するため、本発明の目的に好ましく適用される。その反面、電解液は高い腐食性をもっているので、電解槽はこれらの成分に耐える耐食性材料である白金、フェライト、ステンレス、酸化皮膜が速やかに形成される鉄等を選択する必要がある。陰極はこの電解酸化反応には直接関与しないが、反応液に対して不活性な材質である白金、ステンレス等が好ましい。例えば、陽極にはフェライト電極を、陰極にはステンレス電極等が好ましい。また、反応液中には多量の懸濁成分が含まれているため、電極への懸濁物の沈澱を防止して均一な酸化反応を起こさせ、電流効率を高めるためには回転陰極が好ましい。
電解酸化に用いる陽極としては、二酸化鉛、炭素(グラファイト、グラシーカーボンなど)、鉄、ステンレス、ニッケルなどの公知の陽極を用いることができる。好ましい陽極は、導電性ダイヤモンド電極であり、これによって廃液中の難分解性物質の電気分解を効率良く行える。本発明において"導電性ダイヤモンド電極”とは1MΩcm未満の電気抵抗率を有するダイヤモンド電極を意味するが、誤解の恐れのない限り“導電性”を省略して記すこともある。
本発明の電極物質であるダイヤモンドは、粉末ダイヤモンドを基板であるチタン、ニオブ、タンタル、シリコン、カーボン、ニッケル、タングステンカーバイド等の板、打抜き板、金網、粉末焼結体、金属繊維焼結体等の表面に後述の方法により被覆して構成してもよく、また板状のダイヤモンドをそのまま電極として使用しても良いが、コスト面から前者を採用することが望ましい。前者におけるダイヤモンド被覆層を本明細書では、ダイヤモンド層と記す。又密着性の確保と基体の保護とを目的として基体とダイヤモンド層の間に中間層を設けることが好ましい。中間層の材質としては基体を構成する金属の炭化物や酸化物が使用できる。基体表面は密着性と反応面積増大に寄与するため研磨しても良いし、逆に粗にしてもよい。又電極物質としてダイヤモンド以外に少量の他の電極物質を含有していても良い。
ダイヤモンド層の基板表面への形成方法としては、熱フィラメントCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、プラズマアークジェット法、PVD法などが開発されている。次に代表的な熱フィラメントCVD法について説明する。炭素源となるアルコールなどの有機化合物を水素ガス中等の還元雰囲気に保ち、炭素ラジカルが生成する温度1800〜2400℃に維持する。このとき電極基体を、ダイヤモンドが析出する別の温度(750 〜950 ℃)領域に設置する。水素に対する好ましい有機化合物ガス濃度は0.1 〜10容量%、供給速度は反応容器の寸法にも依るが0.01〜10リットル/分、圧力は15〜760 mmHgである。ダイヤモンド微細粒子は通常0.01〜5μm程度の粒径を有し、本発明では前記条件により前記基体上にダイヤモンド粉末を蒸着させて、厚さ0.1 〜50μm好ましくは1〜10μmの厚さのダイヤモンド層とする。この厚さは基体への電解液の浸入を防ぐために好適な厚さである。生成するダイヤモンド層に良好な導電性を付与するためには原子価の異なる元素を微量添加(ドーピング)することが必要で、例えばリンや硼素を1〜100000ppm 、好ましくは100 〜10000 ppm 程度含有させる。この添加物の原料化合物としては毒性の少ない酸化硼素や五酸化二リンなどが好ましい。
十分な電導性を付与するためのドーピングには、プラズマ増強CVD(PECVD)ダイヤモンド蒸着法を利用することが好ましい。ドーピングされた電極の製作方法の詳細は、例えば、Ramesham, Thin Solid Films 、229巻 (1993) 44〜50頁に記載されている。PECVDダイヤモンド層は、マイクロ波プラズマにより活性化したメタン及び水素ガスの混合物から製造したホウ素ドーピング化多結晶質ダイヤモンドである。この方法によるダイヤモンド層の蒸着は当業者によく理解されている(例えば、Klages, Appl.Phys. A56巻 (1993) 、513〜526頁を参照)。
熱フィラメントCVD(HFCVD)法(Klages, Appl.Phys. A56巻 (1993) 513〜526頁 を参照)により製造したダイヤモンド層は、 Advanced Technology Materials.Inc., 7 Commerce Drive, Danbury,CT 06810、米国から市販されている。
ダイヤモンド電極の製法としては、特開平8-225395号公報段落0007に記載されている真空チャンバー内での化学蒸着法も好ましい。
写真廃液の電解酸化用の陰極としては、電解の休止期間中に腐食を起こさないよう十分の耐蝕性と通電性を持つものならいずれの材料でもよいが、ステンレスの板又は棒が特に適している。しかし、他の電極、例えば炭素電極や種々の金属電極も使用できる。陰極・陽極を対にした形、陰極を両側から陽極が挟むサンドイッチ構造の形、あるいは陰極と陽極とを交互に配した多数枚配列構造などの適切な形が選択される。陰極の形状は、線状、棒状、板状などのいずれであってもよい。
また、本発明の一態様として、陰極にも導電性ダイヤモンド電極を用いることができる。また、両極に導電性ダイヤモンド電極を用いる場合には、極性を反転させながら電解を行うことも電極を正常な状態に維持するために好ましい。すなわち、電解槽の陰極面上には、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの水酸化物等が付着するため、定期的なスケール除去が必要である。スケールの付着を防止するために、電極の極性をごく短時間反転する考案(特開平3−109988号、特開平5-4087、特開平6-63558等)が報告されている。これらの方法を用いると、電解槽の陰極面上に付着物を、電極の極性を逆転させることによりつまり前記水酸化物等の付着面を陽分極させることによりカルシウムイオン及びマグネシウムイオンとして被処理水中に再溶解させて電極から除去しながら電解反応が可能である。反転の間隔と時間は、両極の形状が同じであれば、格別の規定は不要である。
導電性ダイヤモンド電極における通電中の電圧降下は、ダイヤモンド層の抵抗率及び厚さ、並びに基板の抵抗率及び厚さ、及び電極への接続における抵抗に依存するので、基板の電導率及びダイヤモンド層や電源への接合状態は、電極アセンブリでの全体的な電圧降下に対しては無視できるように設計されているのが好ましい。
電解酸化の際の電流密度は、一般に10mA/cm2の程度で、電極での電圧降下は10〜100Vの範囲であるので、電流値と抵抗値の二乗の積である電力消費は極めて大きくなり、相当のエネルギーが抵抗加熱となって失われてしまう。
したがって、本発明に好ましい電極は、ダイヤモンド層が1MΩcm未満の抵抗率となるように、ダイヤモンド層厚さは十分に薄く(5μm未満)、基板は十分に高い電導率を有している。
しかし、より好ましい電極は、100Ωcm未満の抵抗率、及び100mA/cm2の電流密度で電圧降下は1V未満となる厚さのダイヤモンド層を有する電極である。このような電極であれば、適当な電流密度で、抵抗加熱から生じる電力損が僅かな状態で機能する。最も好ましい電極は、0.1Ωcm未満の抵抗率を有し、電流密度1A/cm2で、電極での電圧降下が0.1V未満となるような厚さを有する電極である。
本発明においては、電解槽の構造は公知の各種の構成で用いることができる。すなわち、単一室セルであってもよく、又は陽極と陰極が膜で仕切られた分割セルであってもよい。最も簡単な実施態様は、単一室セルである。単一室セルでは、陽極と陰極を隔てるバリヤーがなく、したがって溶質は陽極と陰極間を移動するのに制限を受けない。このような単一室方式は、一般的には陽極で酸化された成分がその後陰極で還元されるという可能性を持っているが、本発明では写真廃液の成分の電気酸化分解反応は、大半がC−H及びC−C結合の破壊並びにC−O及びO−H結合の形成であって酸化種は殆ど非可逆的な酸化を受け、チオ硫酸イオンや亜硫酸イオンも安定な硫酸イオンに酸化されるのでそのリスクの可能性はない。
2室セルにおいては、イオン交換膜、ミクロろ過膜、半透膜、多孔性膜、などの通電性隔膜を陽極と陰極の間に挿入し、この隔膜はあるタイプのイオン種のみを陽極液から陰極液へ又はその逆方向へ通過させることができる。膜の機能は、陽極液と陰極液が混合することなく電気的中性を保持することである。また、適当な膜を用いれば、その膜を通過して移動するイオンの性質を制御することができる。
しかしながら、2室セルにおいては、膜の耐久性が限られているので、ファウリングを生じないように適切に交換するなどの管理が必要である。
単一室セル及び2室セルの使用については、簡易という立場からは、単一室セルの使用が好ましい。しかしながら、隔膜の適切な管理とプロセス管理が可能ならば、2室セルがより好ましい形態である。
本発明における電解酸化は、バッチ方式、再循環方式、連続方式のいずれの方式を用いても良く、廃液処理の規模や処理の程度に応じて、適宜最も都合がよい方式を選択できる。
ダイヤモンド層電極を含有する電気化学セルは、陽極と陰極の直接接続、もしくはショートさせるような通路を生じさせることなく、電極間間隙をできるだけ小さく保つ。数センチメートルを超える大きい電極間距離は許容できるが、好ましい電極間間隙は、0.1mm〜50mmの範囲内であり、最も好ましい状態は電極間間隙が0.5mm〜20mmの範囲内にある。
本発明における写真廃液の電解酸化は、電流密度が1mA/cm2〜10A/cm2、流速/セル体積比が0.001〜1000であり、電極表面積が顕微鏡により測定した幾何学的電極表面と等しいか、又はそれより大きく、とくに幾何学的電極表面の1〜5倍の表面積であることが好ましい。しかしながら、さらに好ましいのは、電流密度が20mA/cm2〜2A/cm2の範囲であり、流速/セル体積比が0.01〜50であり、本発明の最良形態は、電流密度が50mA/cm2〜800mA/cm2 であり、流速/セル体積比が1〜20の範囲であり、電極表面積が、顕微鏡で測定した幾何学的電極面積の少なくとも2倍の場合である。
好ましい通電量は被処理廃液のCODにも依存するが、通常写真廃液1リットルにつき0.5MQ以上であり、好ましくは1〜10MQであり、より好ましくは2〜8MQである(MQはメガクーロン)。
オゾン曝気処理
オゾン酸化法は、オゾナイザー(オゾン発生装置)から導かれるオゾン含有空気を写真廃液に注入して行われる。この際にオゾン含有空気の注入とともに紫外光による照射処理を行なうことが好ましい。注入方法の一態様としては、紫外光を効率良く透過する容器に処理水を導びき入れオゾンを容器底部に設けたガラスボールフィルター(気孔径40〜50μm)を通して送気する形式が挙げられる。
オゾンを発生させるには無声放電を行わせたり、コロナ放電を利用したりあるいは電解反応を利用するなどの方法が採られているが、本発明に用いるオゾン発生装置は、いずれであっても特に制約はなく通常市販されているオゾン発生装置から選択して使用することができる。その中では無声放電を利用する方法が好ましい。無声放電は2つの電極の間に誘電体を介して交流高電圧をかけたとき、その間隙に起る放電現象を指すもので、放電の際にその空間に介在する酸素の一部がオゾンに変化する。誘電体は普通ガラスを用い、空間々隙は数mm、電圧は交流50〜500サイクル数千ボルトから場合によっては2万ボルトぐらいまでが使われる。
オゾン発生装置は、平板型の相対する電極群からなるものや、筒状のオゾン発生管を縦型又は横型に配置したものなどがあるが、本発明にはそのいずれも使用できる。また原料は酸素、空気いずれでもよいが、本発明においては空気を使用する方法が安価で好ましい。
このオゾン送気と同時に紫外光を照射するとオゾンが活性化されて酸化効率が向上する。紫外光は容器底部または内部または周囲に設置した水銀ランプ等の光源より照射される。水銀ランプはランプ内部の水銀蒸気圧により低圧、高圧、超高圧に分類されていてそれぞれ遠紫外の輝線,近遠紫外の輝線,紫外連続スペクトルを発するが、オゾンガスは励起波長領域が広いので本発明の目的にはどの型のものでも使用でき、そのランプの電力量は、COD値と廃液成分の分解性によって異なるが、目安として廃液量100kgに対して5W・hrから600W・hrが好ましく、中でも20W・hrから500W・hrがより好ましい。
オゾンガス酸化により分解される適当な量は、廃液の組成や濃度によって適宜選択されるが、電解酸化処理の場合と同じく廃液中のCOD の10〜40%,多くは10〜20%が低減される程度が適切である。オゾンガス酸化処理の利点も、電解酸化処理の場合と同じで直接のCOD の低減効果は副次的で、酸化処理した廃液が微生物処理によって分解され易くなり、微生物による生分解率が向上することにある。
上記のオゾンおよび紫外光による処理については水処理技術第32巻1号3頁(1991)、工業用水第349号15頁(1987)、ACS Symposium Ser.(Am. Chem. Soc.) 第259号195頁(1984)などに記載されている。
過酸化水素処理
本発明の物理化学的酸化処理の一態様として過酸化水素を用いる酸化処理も好ましく用いることができる。過酸化水素は、濃厚液(例えば30質量%ありはそれ以上)としても供給されるが、写真廃液に使用する場合には、安全上10質量%以下、たとえば3質量%に希釈されたものを用いることが好ましい。過酸化水素は高い酸化電位からも判るように十分の酸化力を有するが、反応速度が遅いので、酸化還元触媒を併用して廃液中の酸素消費成分の分解速度を向上させることができる。過酸化水素を用いる写真廃液の酸化処理については、例えば特開平03−262594号公報に記載されている。
<硫酸イオン濃度低減処理>
物理化学的酸化処理が施された写真廃液は、硫酸イオン低減処理が施される。硫酸イオンには、発色現像主薬の対イオンなど写真処理液処方由来のもの、感光材料溶出物由来のもの、物理化学的酸化処理中に生成したもの(例えば亜硫酸イオンやチオ硫酸イオンの酸化)などが含まれる。とくに物理化学的酸化処理によって廃液中の硫酸イオンは顕著に増加して1g/L以上、多くの場合約30g/Lとなる。
本発明の廃液処理方法では、生物処理に先だってこの増加した硫酸イオン濃度を低減させることが特徴である。硫酸イオン濃度低減手段としては、硫酸イオン濃度を低下できる任意の方法を採ることができるが、被処理廃液中で難水溶性硫酸塩を形成させて不溶解物を除去する方法が簡便かつ実際的である。難水溶性硫酸塩を形成させるには、被処理廃液に難水溶性硫酸塩を形成可能の水溶性化合物を固体又は水溶液として添加する方法が好ましい。
そのような水溶性化合物としては、アルカリ土類金属のハロゲン化物,水酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩を挙げることができる。好ましいアルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウムであり、中でもカルシウム及びバリウムが好ましく、とりわけカルシウムが好ましい。一方、好ましい対塩は、ハロゲン化物,水酸化物及び硝酸塩であり、とくに塩化物及び水酸化物である。とりわけ消石灰、塩化カルシウムが適している。
生じた不溶解性または難溶解性沈殿物は、自然沈降、ろ別、遠心沈降などの適当な方法で被処理液から分離される。しかしながら、分離は必須ではない。硫酸イオン濃度の低減レベルは、1g/L以下であり、好ましくは0.5g/L以下であり、より好ましくは0.1g/L以下である。硫酸イオン濃度は、低いほど好ましく、非検出レベルのときに脱窒効果の点では最も優れている。
これらの難水溶性硫酸塩形成化合物の添加量は、廃液中の硫酸イオン濃度を所定の濃度まで低減できる量で決定される。廃液中の硫酸イオン濃度は、通常の化学分析法、とくにイオンクロマトグラフ法や湿式の硫酸バリウム法など公知の任意の方法を選択できるが、精度を高くする必要はないので、簡易な確認手段としては、例えば1質量%塩化カルシウム水溶液と被処理廃液とを混合して濁りの有無で判断することもできる。
<生物処理>
廃液の希釈
物理化学的酸化処理が施された廃液は、直接生物処理することも可能な場合もあるが、好ましくは生物処理に先だって希釈倍率が4以下の希釈が行なわれる。好ましい希釈倍率は3以下であり、2以下であることがより好ましい。また、希釈は 物理化学的酸化処理を施した後が好ましいが、希釈してから物理化学的処理を施すことも可能である。
いずれにしても、写真廃液の生分解を行なうには、廃液を微生物が生存して活動できる環境、とくに塩濃度が低い環境にするために、通常10〜50倍程度の希釈が必要であるが、本発明の方法では、先に述べた理由により上記した低希釈の廃液でも生物処理が効果的に進行してCODが減少する。
生物処理の形態
生物処理の方法としては、汎用公知の好気性生物処理を適用できる。すなわち、一般的な活性汚泥法のほか、ラグーン法、散水濾床法、回転円板法等、好気性微生物を非処理液に含有させて曝気あるいは空気や酸素に接触させる方法であれば本発明の生物処理に用いることができる。現像所において廃液処理を行うには、廃液流入系と汚泥の分離・返送系と処理済み廃液排出系を備えた曝気槽からなるコンパクトなバイオリアクターが好ましい。これらの生物処理のより具体的方法については「廃水処理プロセス、設計理論と実験法」W.W.エッケンフェルダー、D.L.フォード著、松井三郎訳 技報堂出版および「生物学的水処理技術と装置」、化学工学協会編、培風館に記載されている。
本発明に特に好ましい生物処理方法は、微生物を担体に 担持・固定化させた形態で行う処理方法である。固定化処理の中でも、包括処理が特に好ましい。
本発明において微生物固定化担体を用いる場合,その製造の際、微生物の 担持・固定化方法としては、担体から生分解菌が流出しないように固定される方法ならばその種類、形式を問わない。具体的な 担持・固定化法としては、例えば、微生物が付着して生物膜を形成するような担体を用いる付着生物膜法、担体と培地を混合して微生物を培養する担持培養法、水不溶性の担体に微生物を結合させる担体結合法、減圧下で担体の孔隙内に微生物を封入する方法、2個以上の官能基を持つ試薬によって菌体内に架橋を形成させて固定化する方法、微生物を高分子のゲル内部や皮膜などに閉じ込める包括固定化法、さらに結合手段により共有結合法、物理的吸着法、イオン結合法及び生化学的特異結合法などと分類される担体結合法が知られているが、本発明には、これらの公知の方法を用いることができる。中でも、付着生物膜法及び包括固定化法が好ましく,とりわけ包括固定化法が優れている。
付着微生物膜法の特徴は、微生物を高濃度化することができ、処理効率を向上させることができる。また、通常は系外に洗い出されてしまうような増殖速度が遅い菌を系内に留めることができる。また、微生物が安定して棲息できる状態に保てることも特徴としてあげられる。
包括固定化法の特徴は、菌体を高濃度に保持できるため、処理効率を向上させることができ、増殖の遅い菌を固定化できる。また、pH、温度等の条件変化に対する耐性が広く、高負荷状態にも耐えることができる。包括固定化法としては、アクリルアミド法、寒天−アクリルアミド法、PVA−ホウ酸法、PVA−冷凍法、光硬化性樹脂法、アクリル系合成高分子樹脂法、ポリアクリル酸ソーダ法、アルギン酸ナトリウム法、K−カラギーナン法等、微生物を閉じ込めることができ、系の中で微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば種類を問わない。
包括固定化法の代表例としてアクリルアミド法の場合の微生物固定化ゲルの調製法について説明する。固定化ゲルは、架橋剤(例えば、N,N'−メチレンビスアクリルアミド)を含有したアクリルアミドモノマー溶液と細菌(MLSS 20,000ppm程度の濃縮菌体)とを懸濁し、重合促進剤(例えば、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン)、重合開始剤(例えば、過硫酸カリウム)を添加し、3mm径の塩化ビニル製チューブ等の成型形に入れ、20℃で重合し、重合終了後、成型形から押し出し、一定の長さに切断して得られる。固定化ゲルの表面の細孔は、細菌より小さいため、包括固定化した細菌はリークしにくく、内部で増殖し、自己分解する。廃液中の汚染成分のみが細孔よりゲル内部に入り込み、内部の細菌により処理される。
これらの固定化法のより具体的な方法については、「生物触媒としての微生物」100頁、福井三郎著(共立出版、1979),「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一編著(産業用水調査会)、稲森悠平の「生物膜法による排水処理の高度・効率化の動向」,水質汚濁研究, 13巻,9号(1990),563-574頁、稲森悠平らの「高度水処理技術開発の動向・課題・展望」,用水と廃水, 34巻,10号(1992),829-835頁 などに記載されている。
次ぎに、微生物担持用担体について説明する。
微生物担持用担体としては、微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば、いずれの公知材料をも使用できるが、有用微生物の効果的な担持という点から、担体表面に微生物が強く吸着するもの、微生物を微小孔隙中へ侵入させることにより保持力を高めることができるような多孔性のもの、ミクロ粒子が凝集して実質的に吸着あるいは吸蔵表面を増大させたものが望ましい。
また、膨潤性の担体材料は、微生物が利用できる空間が広い点では、好ましい材料ではあるが、微生物を 担持・固定化した後、長期に亘って安定に使用するためには、物理的な強度が必要であり、その点では非膨潤性の担体材料を用いることが好ましい。非膨潤性であっても後述するようなサイズ効果や形状効果を利用して利用空間を維持させることができる。
また、被処理水と担体とが激しく相対運動する微生物処理環境においては、担体の物理的強度が特に重要であり、さらに活性汚泥槽のように担持担体が流動する流動床の場合には、比重の制御ができることが必要で、シリカなどの比重制御剤を用いて比重値を約1.1程度に調整するので、この点からも物理的強度が大きいことが好ましい。
これらの理由から、本発明に好ましい担持用担体としては、具体的には、セルロース、デキストラン、アガロースのような多糖類;コラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの不活化蛋白質;イオン交換樹脂、ポリビニルクロライドのような合成高分子化合物;セラミックスや多孔性ガラスなどの無機物;寒天、アルギン酸、カラギーナンなどの天然炭水化物;さらにはセルロースアセテート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、光硬化性樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなどがあげられる。また、リグニン、デンプン、キチン、キトサン、濾紙、木片等などの天然物も利用できる。
中でも、上記した好ましい要件に特に適合する材料としてポリプロピレン及びポリエチレンで代表されるポリオレフィン系の合成高分子化合物材料が好ましい。
これらの材料は、市販されており、例えばバイオステージ(ポリプロピレン製、筒中プラスチック工業(株)製)、ゼビオバイオチューブ(ポリエチレン製、ゼビオプラスト(株)製)などを挙げることが出来る。
好ましい担体の形状としては、ほぼ球状、ほぼ立方体状、ほぼ直方体状、円筒状あるいはチューブ状であり、なかでも製造し易いほぼ球状、あるいは比面積を大きくできるほぼ直方体状又はチューブ状であることが好ましい。担体の製造方法としては、既知の任意の方法を用いることができる。例えば微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を不溶解性液体中に滴下して液体中で液滴を固化させて微生物 担持担体粒子の分散物を作る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を低温化、ゲル化剤や固化剤の添加などの方法で固化させた後、固化体を適当なサイズに裁断して微生物を 担持した直方体粒子を得る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を押し出しノズルから不溶解性液体中に注入して液体中で固化させて微生物 担持担体の糸状の固化物を得てこれを適当に裁断して円筒状粒子を作る方法、またこのときの押し出し成形のダイを環状として円環状(チューブ状)の微生物 担持担体粒子を得る方法を挙げることができる。
担体粒子の大きさは、外径0.1〜70mm、好ましくは0.5〜40mm、より好ましくは1.0〜10mmであり、粒子サイズが大きければ比面積が少なくなって非効率となり、小さいとすぐに分解・消滅して 担持体の意味をなさなくなる。したがって、適用対象に応じて好ましいサイズが選択される。
本発明の方法では、一般的に難分解性である写真廃液を通常用いられている活性汚泥を用いて処理することができる。順化処理が行われるので、活性汚泥中の微生物の履歴・由来などは問わない。しかし、写真廃液は、前記のようにアミノポリカルボン酸型の錯形成剤、各種のアニオン性及び非イオン性界面活性剤、有機溶剤など類を含んでいることからそれらの生分解を効果的に行う特定の微生物を単独で用いたり、活性汚泥と組み合わせて用いたりすることもできる。後者の場合は、それぞれの微生物がいずれも十分に活動できるように、活性汚泥と上記特定の微生物とを別個の処理槽で処理できるように複数構成の微生物処理槽を用いることが好ましい。
本発明では、微生物を 担持・固定化する際に、該微生物用の栄養物を供給してやることが、 担持・固定化される微生物の増殖を促進して速やかに該微生物が優先的に生育する環境が確立されるので、好ましい。また、廃液処理装置の稼動中に微生物の活性が低下した場合にも栄養物の供給により賦活してやることが好ましい。
栄養物としては、炭素、窒素、リンを含むものが好ましく、微生物の生育に適した培養液などが挙げられる。培養液としては、例えば、肉汁、酵母エキス、麦芽エキス、バクトペプトン、グルコース、無機塩類、ミネラルなどが適当な割合で混合したものが良く用いられているが、微生物の種類に応じて適当な配合比のものを選べば良い。また、本発明に用いる栄養物としては、上記の培養液以外にも有機、無機栄養物を適当に含むものであれば、どのようなものでも利用可能である。例えば、自然界より採取した、あるいは培養を加えた任意の微生物を乾燥、粉砕し、粉砕微粉体を栄養物として用いてもよい。
さらに、生分解菌として働く微生物を活性化する特定の共存微生物を用いることもできる。この共存微生物は、それ自身が生分解菌として働く微生物の栄養源となったり、その共存微生物が分泌する物質が生分解菌として働く微生物を活性化する成分を含んでいる。好ましい微生物としては、いわゆるEM菌として市販されている微生物混合体や光合成細菌が挙げられる。とりわけ、ロードシュードモナスキャプスラータ(Rhodepseudomonas capsulata)やチオバチルスデフィニトリカンス(Thiobacilluse definitricans)をはじめとする光合成細菌が好ましい。
一般に脱窒作用は、好気性の生分解作用がピークを超えた活性汚泥処理の後期課程で増加し始めるので、全窒素量低減のためには、活性汚泥処理の場合には、滞留時間の延長、汚泥槽内での均一攪拌ではなく写真廃液が槽内の流路にそって槽内投入口から槽から次ぎの工程への排出口に流れる仕組みの処理槽の採用、あるいは好気性活性汚泥槽の処理に続いて硝化・脱窒槽が設けられた処理システムを用いることができる。
硝化・脱窒用に独立の処理槽を用いる場合には、し尿処理槽などで用いられているような硝化・脱窒菌を用いることが有効である。
その他の調整条件
微生物処理の温度は、微生物の活動に適した温度であることが必要で、3〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは18〜40℃である。この温度に維持するためには、状況に応じて温水を撒布又は注入するなどの加温を行なってもよい。また、寒冷地などでは、熱伝導体をバイオリアクターに装備して熱源からの伝熱あるいは直接の通電によって加温することもできる。熱伝導体としては、金属、セラミックスなど熱を伝えることができる物質であれば材質は問わない。
被処理廃水のpHは、通常2〜10であり、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8.5であって、微生物の至適pHであれば最も好ましい。
試験用の写真廃液として、店頭処理用小型現像機[デジタルミニラボFRONTIER350(富士写真フイルム株式会社製)]を用いて、市販のカラーペーパー(フジカラーペーパーsuper)にカラーネガからプリント焼き付けを行って、フジカラーカラーペーパー用処理剤CP-48Sを用いて処理して得た現像、漂白定着、水洗の各浴からのオーバーフロー液、すなわち現像廃液、漂白定着廃液、水洗廃液を混合したものを用いた。
(電解酸化処理)
陽極に二酸化鉛(日本カーリット社製、LD400)、陰極にステンレス(SUS−316)用い、陰極3枚と陽極2枚を並列で交互に取り付けた容量15Lのタンクに、廃液10Lを入れて電解した。それぞれの電極面積は、200cm2であり、極間距離は25mm、廃液はスターラーで撹拌しながら、電流を100Aとして、15時間電解酸化処理を行った。この電解酸化試料をAとする。
次いで、陽極を、同一面積の、白金電極、及びダイヤモンド電極にそれぞれ変えた以外は同じ条件で実験を行った。これらの電解酸化試料をそれぞれB及びCとする。
なお、使用したダイヤモンド電極は、ホウ素ドーピング化ダイヤモンド層電極で、本明細書中に前記した方法で、(100)単結晶シリコンウェーハ(0.76mm厚さ)上に蒸着したダイヤモンド層にホウ素を含ませたホウ素ドーピング化多結晶質ダイヤモンド層(約2.5μm厚さ)であり、米国のAdvanced Technology Materials, Inc., 7 CommerceDrive, Daubury, CT 06810より市販されているものを用いた。このダイヤモンド層の抵抗率は80mΩcmであり、ドープしたホウ素濃度は、5,000ppm であった。また、シリコンウェーハの抵抗率は15mΩcmであった。銅電線をシリコン基板へ、市販の銀エポキシ樹脂(Epo-Tek H20E, Epoxy Technology Inc.)を用いて固定してあり、溶液の、電極の裏側へのリークを、RTVシリコーンを用いて最少にしてあり、ダイヤモンド電極の裏面同士を張り合わせ臨界面を密封してある。
また、白金電極は、市販の白金板をそのまま用いた。
各電極対間の印加電圧は、陰極に対して二酸化鉛陽極 3.5V、白金陽極 5V、ダイヤモンド陽極 6Vであった。
電解後の反応液を、粒状水酸化カリウムでpH6.5に中和し、ろ過を行ない、沈澱した硫化銀と水酸化鉄を除去した。各試料とも硫酸イオン濃度は、チオ硫酸塩の酸化などによって少なくとも20g/Lであった。
上記A、B、Cの各電解酸化試料液それぞれから1Lづつ4バッチを採取し(A、B、C各1L×4)、4バッチ中3バッチに炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム,炭酸バリウムを各0.8モルそれぞれ添加し、生じた沈澱をろ過して除去した。ろ過後のいずれの試料もイオンクロマトグラフで求めた硫酸イオン濃度が1g/L以下であった。
次いで、それぞれの試料に淡水魚類水槽の浄化装置内の浸漬ろ床から剥離した生物膜を植種し、1リットルの処理槽を用い、平均滞留時間を10日毎に20日、10日、5日、2日、1日と順次短くして汚泥の馴養を行ないながら、活性汚泥を調製し、これを用いて上記電解廃液を10倍希釈した試料液の活性汚泥連続処理を行なった。この間、リンをリン酸水素二カリウムの形で廃液COD値の1%に相当する量を添加した。曝気槽にはpHコントローラー(東京理化製)を設け、硫酸または水酸化ナトリウムの添加により槽内のpHを7.5±0.1に保った。また溶存酸素量(DO)を0.1mg/L〜3mg/Lに保つよう、ガラスボールフィルター(木下理化工業製)を通じてエアコンプレッサーから空気を送り込んだ。平均滞留時間1日での運転を開始してから7日後の活性汚泥はMLSS40,000mg/Lであった。
また、活性汚泥槽に連結した硝化・脱窒槽により窒素分除去を行った。硝化・脱窒槽には、家庭の浄化槽から採取した細菌を植種・馴養し、グラニュール状になった硝化、脱窒能を有する活性汚泥を用い、「環境浄化のための微生物学」(須藤隆一編,講談社刊行)の135〜139頁記載の条件にしたがって処理を行い、滞留時間1日の処理まで行った各試料の7日後の残留全窒素量(T−N)をT−N計(TOC−V CSH付属TNH−1、島津製作所製)で測定した。なお、生物処理前の電解済み廃液のT−Nは、いずれも540mg/Lであった。
結果を表1に示す。
Figure 2005177585
表1の結果が示すように、アルカリ土類金属化合物を添加して硫酸イオンの低減処理を施すことによって硝化・脱窒処理後の全窒素量は顕著に減少した。特にアルカリ土類金属化合物が炭酸カルシウム及び炭酸バリウムの場合に効果が大きかった。また、ダイヤモンド陽極を用いて電解した試料が全窒素量低減効果が大きいことも示された。
実施例2
生物処理前の電解液の硫酸イオン低減処理において、残留する硫酸イオン濃度が0.5,1.0,1.5,2.0及び3.0g/Lになるように炭酸カルシウムの添加量を調整(減量)して添加した以外は、実施例1におけるNo.A−3,B−3,C−3と同じ試験を行い、硫酸イオン濃度の生物処理に及ぼす影響について試験を行った。
結果を表2に示す。
Figure 2005177585
表2は、すべて本発明例同士の比較であるが、結果が示すように、陽極の種類の如何に拘わらず、硫酸イオン濃度を低減するほど全窒素量を減少させることが可能であることが示された。そして、いずれも硫酸イオン濃度を減少させるのに伴って下水道法に基づく一般排水基準の全窒素量(240mg/L)を満たすようになることも示されている。さらに、実施例1同様、ダイヤモンド陽極を用いて電解した試料が全窒素量低減効果が大きいことも示された。

Claims (6)

  1. 全窒素量が0.5g/L以上の写真廃液に物理化学的酸化処理を施し、ついで硫酸イオン低減処理を施し、さらに生物処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
  2. 物理化学的酸化処理が電解酸化処理であることを特徴とする請求項1に記載の写真廃液の処理方法。
  3. 電解酸化処理が、導電性ダイヤモンド電極を陽極として用いる電解酸化処理であることを特徴とする請求項2に記載の写真廃液の処理方法。
  4. 硫酸イオン低減処理が水溶性アルカリ土類金属塩を写真廃液に添加して硫酸イオンを沈澱させて除去する処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
  5. 水溶性アルカリ土類金属塩がカルシウム塩又はバリウム塩であることを特徴とする請求項4に記載の写真廃液の処理方法。
  6. 硫酸イオン低減処理が写真廃液中の硫酸イオン濃度を1g/L以下に低減する処理であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
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