JPWO2003050932A1 - 偏平型コンミテータの製造方法及びその製造装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、回転電機のコンミテータ製造方法に関し、特に、ディスクタイプの偏平型コンミテータの製造方法に関する。
背景技術
近年、電動パワーステアリングやエンジンスタータ、燃料ポンプなどに使用されるモータでは、装置小型化等の要請から、偏平型のコンミテータ(フラットコンミ)を採用したものが登場している。この偏平型コンミテータは、円筒状の一般的なコンミテータと異なり、回転軸から径方向に延びるディスク状のブラシ摺接面を有しており、コンミテータメタルと呼ばれる金属部材が合成樹脂と一体に成型される。一体成形後、コンミテータメタルは、互いに絶縁状態となるように放射状に切断されて周方向に分離され、複数のセグメントが形成される。そして、このコンミテータメタルからなるブラシ摺接面に軸方向からブラシが摺接し、アーマチュア電流の切替が行われる。
一方、このような偏平型コンミテータを製造する方法としては、概ね次の2つの方式がある。すなわち、まず第1に、丸棒状のコンミテータバーをパイプ状のカートリッジに組み付け、それを樹脂モールドした後に、各セグメントに切り分ける方式がある。また、第2に、コンミテータメタルを個別に冷間鍛造にて形成し、それを複数個インサートモールドした後、セグメント間の樹脂を除去する方式がある。
この場合、コンミテータメタルの分離には刃物が、また、セグメント間樹脂の除去には刃物(カッタ)又はレーザが使用されスリットカットが行われる。このようにして各セグメントを分離した後、セグメント外周にコイル取付用のU溝を有するものでは、それを切削加工にて形成する。これにより、セグメントが互いに絶縁されて放射状に配列されたディスクタイプのコンミテータが完成する。その後、コンミテータは、回転軸やアーマチュアコア、コイル巻線等と共に組み付けられ、さらに合成樹脂コーティングを施されてアーマチュアアッセンブリとなる。そして、最後にブラシ摺動面の切削仕上げを行い、セグメント表面を清浄化すると共に、その平面度や面粗さが調整される。
しかしながら、このようなコンミテータ製造方法では、各製造方式それぞれに幾つかの問題点がある。まず、バーを用いる第1の方式では、切削にて除去してしまう部分が多く歩留まりが良くないという問題がある。また、切削量が多い分、工数も多くなり、さらに、カートリッジへの組付工数も加わるため、製造に非常に手間がかかるという問題がある。加えて、スリットカットにおいても、刃物自体の精度や加工時のチャック精度、角度割り出し精度などによりセグメント分割精度が決定されるため、精度決定要因が多く、製品精度にバラツキが生じ易いという問題もある。
次に、冷間鍛造部品を用いる第2の方式では、第1の方式に比して歩留まりは改善されるものの、鍛造用予備加工品(スラグ)の製造や冷間鍛造工程が必要となり、工数削減は図れない。また、セグメント間樹脂の除去におけるスリットカットにおいても前述同様の問題があり、製品精度が確保しにくい。
一方、両方式に共通する問題点として、コイル溝形成に際し、カッタの送り速度はその周速とカット深さにて決定されるが、小さなU溝を形成する場合、カッタ外形を大きくすることができず加工に時間がかかるという問題がある。近年、モータは多スロット化の傾向があり、それに伴いセグメント数も増加し、U溝加工にますます時間を要することとなり、かかる工程の存在は多スロット化には不利な方向に作用する。また、コイル溝加工においても前述のスリットカットと同様の問題があり、溝加工精度にバラツキが生じ易く、かかるバラツキは後の巻線工程での不良を誘発し易いという問題もあった。
この場合、セグメント部品段階にて予めコイル溝を形成しておけば、前述のようなスリット加工に伴う精度バラツキは低減する。しかしながら、それを樹脂モールドすると、溝内部に樹脂が入り込み後工程にて溝内部のバリ取りを行う必要が生じる。すなわち、予め溝を形成するとバリ取りという新たな工程が追加されることとなり、工数増加は避けられない。さらに、コイル溝内のバリ残りは、コイル挿入不良や導通不良など、コイル挿入工程やフュージング工程での不良原因となる。このためバリの完全除去が求められ、かかる観点からするとバリ自体が発生しないことが望ましい。
加えて、前述の製造方法では、最後のブラシ摺接面の切削仕上げは、溝を有するディスク面の切削加工となるため、断続切削となり溝内にバリが発生する。このため、実際には切削加工の後、それをバフ研磨にて除去して完成品としている。すなわち、コンミテータ製造上は、切削加工に加えてさらにバフ工程が必要となり、工数削減の要請からその改善も求められていた。
本発明の目的は、歩留まりが良く精度の高い製品を得ることができ、しかも工数削減を図り得る偏平型コンミテータの製造方法を提供することにある。
発明の開示
本発明の偏平型コンミテータの製造方法は、合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造方法であって、前記セグメントを形成する金属片を複数連設した連鎖体を形成する工程と、前記連鎖体を円形に集成し、前記金属片を周方向に沿って配列する工程と、前記金属片を合成樹脂にて一体にモールド成型する工程とを有することを特徴とする。
本発明にあっては、金属片を連鎖状に形成しそれを円形に集成することでセグメントの原型を形成し、これを樹脂モールドすることにより偏平型コンミテータを得ることができので、従来の方式に比して製造工数を削減することが可能となる。また、連鎖体は、加工速度の速い順送プレス装置を用いて金属片を連鎖状に成型し、セグメント数分でそれを切断して形成できるため、製品精度の高いものが歩留まり良く得ることができ、信頼性の高い製品を低コストにて製造することが可能となる。
この場合、前記製造方法において、前記連鎖体を円形に集成した後、そのブラシ摺接面側にカートリッジを装着し、前記カートリッジを装着した状態でモールド成型を行っても良い。さらに、前記連設された前記金属片を前記モールド成型以前に個々の金属片に分離しても良く、これにより、モールド成型後に金属片同士を切り離す切削加工が不要となり、工数削減が図られると共に、加工時における周方向のバリ発生や合成樹脂の損傷防止を防止して製品信頼性の向上を図ることが可能となる。
また、本発明の偏平型コンミテータの製造方法は、合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造方法であって、前記セグメントを形成する金属片のブラシ摺接面側に、前記金属片間に形成された間隙に嵌合する突起を有するカートリッジを装着する工程と、前記カートリッジに装着した前記金属片の前記間隙近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧して前記突起に前記間隙を密着させる工程と、前記カートリッジを装着した状態で、前記金属片を合成樹脂にて一体にモールド成型する工程とを有することを特徴とする。
本発明にあっては、カートリッジに形成された突起に金属片間の間隙を密着させた状態でモールド成型が行われるので、成型時に間隙内に合成樹脂が入り込まず、突起の部位がそのまま金属片間に凹部として残存してスリットとなる。このため、モールド成型後のスリットカット加工を省くことができ、工数削減を図ることが可能となる。また、スリットがカートリッジの突起にて形成されるため、刃物によるスリット形成に比してスリット位置精度を向上させることができ、製品精度のバラツキを低減させることが可能となる。
さらに、本発明の偏平型コンミテータの製造方法は、合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造方法であって、前記セグメントを形成する金属片のブラシ摺接面側に、前記金属片の外周部に形成されたコイル取付溝に嵌合する突起を有するカートリッジを装着する工程と、前記カートリッジに装着した前記金属片の前記コイル取付溝近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧して前記突起に前記コイル取付溝を密着させる工程と、前記カートリッジを装着した状態で、前記金属片を合成樹脂にて一体にモールド成型する工程とを有することを特徴とする。
本発明にあっては、カートリッジに形成された突起にコイル取付溝を密着させた状態でモールド成型が行われるので、成型時にコイル取付溝内に合成樹脂が入り込まず、溝内に樹脂バリが発生するのを防止することができる。このため、溝内の樹脂バリ問題が解決されるため、金属片形成時に同時にコイル取付溝を形成することができ、切削加工にて後に溝を形成する場合に比して大幅に工数を削減することができる。さらに、突起にコイル取付溝を密着させることにより、溝の寸法・形状が突起に倣って矯正されるため、切削加工に比してコイル取付溝の寸法精度を向上させることができ、巻線時におけるコイル挿入不良を防止することが可能となる。
加えて、本発明の偏平型コンミテータの製造方法は、合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造方法であって、(a).前記セグメントを形成する金属片を複数連設した連鎖体を形成する工程と、(b).前記連鎖体を円形に集成し、前記金属片を周方向に沿って配列する工程と、(c).前記円形に集成した連鎖体のブラシ摺接面側に、前記金属片間に形成された間隙に嵌合する第1の突起と、前記金属片の外周部に形成されたコイル取付溝に嵌合する第2の突起とを有するカートリッジを装着する工程と、(d).前記金属片の前記間隙近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧して前記第1の突起に前記間隙を密着させる工程と、(e).前記連設された前記金属片を個々の金属片に分離する工程と、(f).前記コイル取付溝近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧して前記第2の突起に前記コイル取付溝を密着させる工程と、(g).前記カートリッジを装着した状態で、前記金属片を合成樹脂にて一体にモールド成型する工程とを有することを特徴とする。
本発明にあっては、金属片を連鎖状に形成しそれを円形に集成することでセグメントの原型を形成し、これを樹脂モールドすることにより偏平型コンミテータを得ることができので、従来の方式に比して製造工数を削減することが可能となる。また、連鎖体は、加工速度の速い順送プレス装置を用いて金属片を連鎖状に成型し、セグメント数分でそれを切断して形成できるため、製品精度の高いものが歩留まり良く得ることができ、信頼性の高い製品を低コストにて製造することが可能となる。
また、カートリッジに形成された突起に金属片間の間隙を密着させた状態でモールド成型が行われるので、成型時に間隙内に合成樹脂が入り込まず、突起の部位がそのまま金属片間に凹部として残存してスリットとなる。このため、モールド成型後のスリットカット加工を省くことができ、工数削減を図ることが可能となる。また、スリットがカートリッジの突起にて形成されるため、刃物によるスリット形成に比してスリット位置精度を向上させることができ、製品精度のバラツキを低減させることが可能となる。
さらに、連設された金属片をモールド成型以前に個々の金属片に分離するので、モールド成型後に金属片同士を切り離す切削加工が不要となり、工数削減が図られると共に、加工時における周方向のバリ発生や合成樹脂の損傷防止を防止して製品信頼性の向上を図ることが可能となる。
加えて、カートリッジに形成された突起にコイル取付溝を密着させた状態でモールド成型が行われるので、成型時にコイル取付溝内に合成樹脂が入り込まず、溝内に樹脂バリが発生するのを防止することができる。このため、溝内の樹脂バリ問題が解決されるため、金属片形成時に同時にコイル取付溝を形成することができ、切削加工にて後に溝を形成する場合に比して大幅に工数を削減することができる。さらに、突起にコイル取付溝を密着させることにより、溝の寸法・形状が突起に倣って矯正されるため、切削加工に比してコイル取付溝の寸法精度を向上させることができ、巻線時におけるコイル挿入不良を防止することが可能となる。
前記コンミテータの製造方法において、前記工程(c)の後(f)の前の何れかに、前記金属片の内周側に軸方向に突出するボス部を形成する工程を設けても良く、この場合、前記ボス部形成工程後に、前記ボス部の先端を基部よりも拡径させる工程をさらに設けても良い。また、前記コンミテータの製造方法において、前記金属片に段違いに形成した本体部と外周部を設け、前記工程(c)の後(f)の前の何れかに、前記本体部と前記外周部との間の段部に前記本体部側に突出する係合片を形成する工程を設けても良い。これらのボス部や係合片は、金属片をモールド成型してホルダ部を形成したとき、ホルダ部内にアンカー状に埋設され、セグメントの抜け止めとして機能する。
一方、本発明の偏平型コンミテータの製造装置は、合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造装置であって、前記セグメントを形成する金属片を複数連設した連鎖体を円形に集成しつつ収容し、前記金属片が装着される金属片取付部と、前記金属片の内周を規制する内径ガイド部とを備えてなる円盤状に形成された回転体と、前記回転体の外周に沿って配設され、前記金属片の外周部を規制する外径ガイド部材と、前記回転体の下方に上下移動自在に配置され、前記回転体に前記金属片と対応して形成された複数のピン孔から前記回転体上面に突出して前記金属片を前記回転体から離脱させる複数のノックアウトピンとを有することを特徴とする。
本発明にあっては、順送プレス装置等によって金属片が複数連設された連鎖体を回転体に収容し、それを外径ガイド部材と内径ガイド部との間にて径方向の移動を規制しつつ回転体を回転させることにより、連鎖体が円形に丸められ円盤状の集成体が形成される。
また、本発明の偏平型コンミテータの製造装置は、合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造装置であって、前記セグメントを形成する金属片のブラシ摺接面側に装着され、前記金属片間に形成された間隙に嵌合する突起を有するカートリッジと、前記カートリッジに装着した前記金属片の前記間隙近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧する押圧手段とを有することを特徴とする偏平型コンミテータの製造装置。
本発明にあっては、押圧手段による押圧により、コンミテータのセグメント間に配されるスリットを形成する間隙の両側面が間隙内に挿入された突起に密着する。これにより、突起に金属片間の間隙を密着させた状態でモールド成型を行うことが可能となり、スリット内の樹脂バリ発生を防止できると共に、スリット寸法の精度を向上させることが可能となる。
この場合、前記カートリッジの前記突起基部に、前記金属片の端縁に当接する曲面部を設けても良い。これにより、突起を間隙に挿入すると、金属片の間隙に臨む端縁が曲面部に当接し、その状態にて間隙近傍が押圧されると、端縁が曲面部に倣って変形して曲面が形成される。このため、ブラシ摺動面に対し切削仕上げを行う際、断続切削加工を行ってもセグメントのスリット内にバリが発生するのを抑えることができる。従って、切削加工後のバリ取りが不要となり、コンミテータ製造工数の削減を図ることが可能となる。
また、前記製造装置において、前記曲面部の半径を前記金属片のブラシ摺動面に施される仕上加工における切削代よりも大きくしても良く、これにより、仕上げ切削時のバリ発生が確実に抑えられる。さらに、前記製造装置において、前記突起の先端部寸法を基部寸法よりも大きく形成しても良く、これにより、突起と間隙側面との密着性を向上することができる。
加えて、本発明の偏平型コンミテータの製造装置は、合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造装置であって、前記セグメントを形成する金属片のブラシ摺接面側に装着され、前記金属片の外周部に形成されたコイル取付溝に嵌合する突起を有するカートリッジと、前記カートリッジに装着した前記金属片の前記コイル取付溝を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧する押圧手段とを有することを特徴とする。
本発明にあっては、押圧手段による押圧によりコイル取付溝の両側面が溝内に挿入された突起に密着する。これにより、突起にコイル取付溝を密着させた状態でモールド成型を行うことが可能となり、コイル取付溝内の樹脂バリ発生を防止できると共に、溝寸法の精度を向上させることが可能となる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による製造方法によって製造された偏平型コンミテータの一例を示す一部切断斜視図である。
当該コンミテータ1は、図1に示すように偏平構造に構成されており、スタータモータやインタンク式燃料供給ポンプ等に使用される。コンミテータ1は、合成樹脂製のホルダ部2と複数の金属製セグメント3とを備えており、セグメント3はホルダ部2と一体にモールド成型されている。そして、セグメント3の表面(図3において上面)はブラシ摺動面4となっており、そこに軸方向から図示しないブラシが接触するようになっている。
ホルダ部2は、厚肉の略円盤形状に形成されており、中心部にはモータ回転軸固定用の軸孔5が形成されている。また、ホルダ部2の軸方向一端面には、複数のセグメント3が等間隔に配設されている。各セグメント3は略扇形形状に形成されており、ホルダ部2の表面上に放射状に配されている。さらに、セグメント3の間は、隣合うセグメント3を互いに電気的に絶縁するためのスリット6が形成されている。
一方、セグメント3は、ブラシ摺動面4が形成される本体部7と、本体部7の外側に段差を設けて形成された外周部8を有している。この場合、本体部7の内周側には、先端部が外周側に拡径したテーパ状のボス部9が設けらている。また、本体部7と外周部8との境界に形成された段部10には、内周側に向かって突出する係合片11が設けられている。これらのボス部9及び係合片11はホルダ部2に対する抜け止めとなっており、これによりセグメント3が合成樹脂製のホルダ部2から軸方向に脱落しないようになっている。また、外周部8にはU字型のコイル取付溝12が設けられている。このコイル取付溝12には、図示しないアーマチュアコイルがフュージング等によって固定される。
次に、図1のコンミテータの製造方法について説明する。図2は、コンミテータ1を用いたアーマチュアアッセンブリの製造工程を示すチャートであり、その工程P1〜P9に本発明の一実施の形態である偏平型コンミテータの製造方法が適用される。ここでは、まず工程全体の概要を述べた後、本発明にかかる各工程について詳述する。
当該コンミテータ製造方法は、図2に示すようにP1〜P9の9工程からなり、金属片を複数連設した連鎖体を丸めてセグメント3の原型を作り、それをカートリッジに装着した状態で切断、モールドすることにより図1のコンミテータ1を形成する。すなわち、まず工程P1にて、セグメント3を形成する金属片を複数連設した連鎖体を形成する。次に、この連鎖体を円形に集成し、金属片を周方向に沿って配列させる(工程P2)。そして、この円形の連鎖体にカートリッジを装着する(工程P3)。このカートリッジには、金属片間に形成された間隙に嵌合しスリット6を形成する突起と、コイル取付溝12に嵌合する突起が設けられており、最後のモールド工程P9までそのまま使用される。
カートリッジ装着後、ボス部9を形成するバーリング加工を行うと共に、間隙近傍を押圧して突起に間隙を密着させる(工程P4)。ボス部9を形成した後その先端を基部よりも拡径させ(工程P5)、さらに、係合片11を形成する(工程P6)。その後、連鎖体を個々の金属片に分離すると共に(工程P7)、コイル取付溝12近傍を押圧して突起にコイル取付溝12を密着させる(P8工程)。そして、カートリッジを装着した状態で金属片を合成樹脂にて一体にモールド成型し(P9)、図1のようなコンミテータ1が出来上がる。
このようにして完成したコンミテータ1は、図示しない回転軸やアーマチュアコア、コイル巻線と共に組み付けられ、その後、合成樹脂にてコーティングが施されアーマチュアアッセンブリが形成される(P10)。そして、アッセンブリ工程P10の後、ブラシ摺動面4の清浄化を行うと共に、平面度や面粗さを完成品精度に仕上げるため切削仕上げが行われる(P11)。
そこで、各工程での加工処理形態を順を追って説明する。図3(a)は工程P1にて形成される連鎖体21の構成を示す正面図、(b)はその側面図である。この連鎖体21は、後にセグメント3を形成する金属片22を並列に複数連設した構成となっており、順送プレス装置にて形成される。金属片22はセグメント数に合わせて連鎖状に形成されており、各金属片22の間はキャリア23によって連結されている。なお、図3においては金属片22は31個設けられているが、その個数はセグメント数に応じて適宜選定される。
図4は、連鎖体21の加工過程を示す説明図である。図4では加工部位が斜線にて示されており、そこでは帯状の金属板24が、抜き工程2回、曲げ工程2回、抜き工程1回、抜き落とし1回にて連鎖体21に成型される。ここでは、前段の抜き工程にてキャリア23近傍が形成され、曲げ工程にて段部10が形成される。その後、後段の抜き工程にて本体部7が形成され、最後に所定個数(当該実施の形態では31個)の金属片22にて切断される。このように、連鎖体21は順送プレスにて成型されるため、加工速度が速く、しかも製品精度の高いものが歩留まり良く得ることができる。
このようにして連鎖体21を形成した後、工程P2にてそれを丸めて金属片22を放射状に並べる。図5は工程P2にて使用される金属片集成装置の構成を示す平面図、図6は図5のA−A線に沿った断面図、図7は図5のO−B線に沿った断面図である。図5,6に示すように、当該金属片集成装置25は、連鎖体21を円形に集成しつつ収容する回転体26と、回転体26の外側に配設された外径ガイド部材27と、連鎖体21を装置から取り出すためのノックアウト治具28とから構成されている。
この場合、回転体26の円板29上には、連鎖体21の端部に位置する1個の金属片22が装着される金属片取付部31が設けられている。この金属片取付部31には、金属片22の形状に合わせてV字形に配設された2枚のブレード32が図7に示すように立設されている。また、回転体26の中央部には、金属片22の内周を規制する内径ガイド部33が設けられている。さらに、円板29には、金属片22の数に合わせて複数のピン孔34が設けられている。このピン孔34は、金属片22の本体部7相当位置に開設されており、両ブレード32間の中心部から等ピッチにて金属片22の個数分(31個)円板29に貫通形成されている。
また、回転体26の外側には、円板29の外周に沿って外径ガイド部材27が配設されている。この外径ガイド部材27の内周面27aは、連鎖体21を円板29上にて円形に集成したとき、金属片22の外周部が形成する外接円径と同径又は若干大径に形成されている。そして、金属片22は、この内周面27aによってその外周部が規制されつつ円板29上にて円形に集成される。
さらに、回転体26の下方には、ノックアウト治具28が上下移動自在に配置されている。このノックアウト治具28は、回転体26と共に回転するようになっており、その上面にはピン孔34に挿入されるノックアウトピン35が複数(31個)立設されている。このノックアウトピン35は、ノックアウト治具28が上方に移動すると円板29の上面に突出し、連鎖体21を円板29上方に押し上げることができるようになっている。
このような金属片集成装置25では、次のようにして連鎖体21を円形に集成する。図8〜図12は、連鎖体丸め工程P2における加工過程を示す説明図である。ここでは、まず連鎖体21の端部にある金属片22を金属片取付部31に装着する。すなわち、図8に示すように、ブレード32の間に金属片22を挿入する。なお、外径ガイド部材27の一部は、図5に示すように、金属片22を金属片取付部31に装着し易いように切り欠かれている。
金属片22を、その内径側端部が内径ガイド部33に当接するように装着した後(図9)、回転体26を回転させる。回転体26の回転に伴い、連鎖体21は、内径ガイド部33と外径ガイド部材27とに規制されつつ、図10のように外径ガイド部材27の内側に引き込まれる。そして、回転体26を1回転させると、図11のように、連鎖体21は円形に集成され金属片22が放射状に配列された集成体36が形成される。その後、ノックアウト治具28を上方に移動させると、図12に示すように、ノックアウトピン35は円板29の上面に突出し、円板29上の集成体36が金属片集成装置25から取り出される。なお、この際、ノックアウトピン35は各金属片22に対応して設けられているので、集成体36は傾くことなく押し上げられる。
このように当該製造方法では、連鎖体21の成型と、それを円形に集成する丸め工程のみでセグメント3の原型を形成することができる。従って、前述のようなコンミテータバーをカートリッジの挿入する方式や、冷間鍛造にてセグメント3を個別形成する方式に比して大幅に工数を削減することができる。また、連鎖体21は順送プレス装置にて高精度に成型されるため、冷間鍛造方式並の精度を維持しつつ工数削減を図ることができ、信頼性の高い製品を低コストにて製造することが可能となる。
連鎖体21を丸めて集成体36を形成した後、集成体36に金属製のカートリッジ37を装着する(工程P3)。図13(a)はカートリッジ37の構成を示す断面図、(b)はその部分斜視図である。カートリッジ37はリング状に形成されており、図13(a)に示すように、ベースプレート37a上に本体リング37b、外周リング37c、スペーサリング37dを載置した構成となっている。この場合、本体リング37bは、ベースプレート37a上にボルト38にて固定されており、その周囲に外周リング37c、スペーサリング37dが取り付けられている。
また、本体リング37bの上面には、図13(b)に示すように、集成体36の各金属片22の間に形成され後にスリット6を構成する間隙39に嵌合する突起41(第1の突起)が形成されている。また、外周リング37cの上面には、金属片22に形成されたコイル取付溝12に嵌合する突起42(第2の突起)が形成されている。そして、このカートリッジ37を集成体36のブラシ摺動面4側(図13において集成体36の下面側)に装着し、次のバーリング・アンカー押し工程P4に移る。
図14は、バーリング・アンカー押し工程における加工状態を示す説明図である。このバーリング・アンカー押し工程P4からコイル取付溝矯正工程P8まではプレス装置にて行われ、当該工程では、集成体36はカートリッジ37と共にストッパ43上に載置される。ストッパ43の下方にはパンチホルダ44が設けられており、その中央にはバーリングパンチ45が立設されている。バーリングパンチ45の先端部には、集成体36の内周に挿入されるガイド部45aと、ボス部9を形成するパンチ部45bが設けられている。また、パンチホルダ44とストッパ43との間にはスプリング46と胴突きプレート47が配設されている。パンチホルダ44は、胴突きプレート47とストッパ43が当接するまで上方に移動可能となっており、移動後はスプリング46にて図13の状態に復帰する。
一方、集成体36の上面側には、バーリングダイ48が配置される。バーリングダイ48の集成体36に臨む面(図13において下面)には、アンカー押し突起49が設けられている。このアンカー押し突起49は、集成体36の間隙39に対応して31個設けられており、間隙39よりも幅広に形成されている。なお、カートリッジ37は、このアンカー押し突起49が間隙39とが対向するように位置決めされてストッパ43に取り付けられる。
このようなプレス装置においてパンチホルダ44が図中上方に移動すると、それに伴ってバーリングパンチ45も上方へ移動する。バーリングパンチ45は、バーリングダイ48にて上方への移動が規制された状態の集成体36に当接し、そのパンチ部45bによって集成体36の中央部が押し上げられる。これにより、集成体36の中央部には中心軸に沿って延びるボス部9が突出形成される。
また、当該工程では、ボス部形成と共に、間隙39のアンカー押しが実施される。図15は工程P4時におけるアンカー押し突起49と間隙39の状態を示す説明図、図16はバーリング・アンカー押し工程後の集成体36の状態を示す平面図である。図15に示すように、工程P4加工時には、アンカー押し突起49は間隙39上方からその近傍に押し込まれ、金属片22の上面には、図16に示すようにアンカー痕51が形成される。また、この際、アンカー押し突起49による押圧により、その下方に位置する間隙39の両側面が間隙内に膨出するように変形する。この場合、間隙39内には突起41が挿入されており、これにより、間隙39の両側面がカートリッジ37の突起41に押し付けられ、間隙39内にて突起41に金属片22の端面が密着する。
従って、後述するモールド工程P9にて間隙39内に合成樹脂が入り込まず、突起41の部位がそのままセグメント3間に凹部として残存する。そして、この凹部がそのままスリット6となる。このため、当該コンミテータ1では、モールド成型後のスリットカット加工を省くことができ、工数削減を図ることが可能となる。また、スリット6はカートリッジ37の突起41にて形成されるため、刃物によるスリット形成に比してスリット位置精度を向上させることができ、製品精度のバラツキを低減させることが可能となる。なお、突起41は、図15のようなストレート形状のみならず、密着性向上のため、先端部寸法が基部寸法よりも大きい逆テーパ形状としても良い。
一方、突起41には、図15に示すように、その基部に曲面部52が形成されている。この曲面部52は、突起41を間隙39に挿入すると、金属片22の間隙39に臨む端縁53に当接するようになっている。そして、その状態にてアンカー押し突起49が間隙39近傍に押接されると、端縁53は曲面部52に倣って変形する。すなわち、セグメント3には、スリット6に臨む角に曲面部52が転写される形で曲面(R)が形成される。
前述のように、コンミテータ1は、モールド成形後にブラシ摺動面4に対し切削仕上げが施される。この仕上げ切削の際にはスリット内にバリが発生するため従来のコンミテータではそれを後にバフにて除去している。これに対し当該コンミテータ1では、スリット6の入口が曲面となっているため、断続切削加工を行っても、スリット6内のバリ発生を抑えることができる。この場合、曲面部52の半径は仕上加工での切削代よりも大きく設定されており、仕上げ切削は曲面部52の範囲内にて実施される。つまり、突起41の基部に曲面部52を設けセグメント3の角を切削代を超える半径のRに形成したことにより、仕上げ切削時のバリ発生が抑えられる。従って、切削加工後のバリ取りが不要となり、コンミテータ製造工数の削減を図ることが可能となる。
バーリング・アンカー押し加工の後、ボス部テーパ押し工程P5に移る。工程P5では、工程P4にて形成したボス部9の先端部を拡径させ、ボス部9をテーパ形状に加工する。図17はボス部テーパ押し工程における加工状態を示す説明図、図18(a)はボス部テーパ押し工程後の集成体36の状態を示す平面図、(b)はその断面図である。図17に示すように、ここではカートリッジ37は胴突きブロック54に載置される。この胴突きブロック54の中央には、カートリッジ37の内周部に挿入される胴突部54aが設けられている。また、集成体36の上方にはストリッパ55が配設される。ストリッパ55の上方には、スプリング56を介してパンチホルダ57が配置されている。このパンチホルダ57には下方に向けて突出するパンチ58が取り付けられている。パンチ58の先端部はテーパ部58aとなっており、テーパ部58aの先端側は現在形成されているボス部9の内径と略同径となっている。これに対し、テーパ部58aの基部側(図17にて上側)は、ボス部9の内径よりも大径に形成されている。
図17の装置においてパンチホルダ57が下方に下げられると、それに伴いパンチ58が降下する。この際、集成体36のボス部9にはパンチ58が挿入され、テーパ部58aがボス部9の内周に当接する。そして、さらにパンチ58を降下させると、テーパ部58aがボス部9内に挿入され、ボス部9がテーパ部58aに沿って拡径される。パンチ58は胴突きブロック54の胴突部54aに当接するまで降ろされ、これにより、ボス部9の先端部側の径が基部側よりも拡径されて図17に示すようなテーパ形状となる。この場合、テーパ形状のボス部9は、金属片22をモールド成型してホルダ部2を形成したとき、図1に示すようにホルダ部2内にアンカー状に埋設され、セグメント3の抜け止めとして機能する。
ボス部9をテーパ形状にした後、金属片22の段部10内周側に係合片11を形成する(係合片形成工程P6)。図19は係合片形成工程における加工状態を示す説明図、図20(a)は係合片形成工程後の集成体36の状態を示す平面図、(b)はその断面図である。図19に示すように、ここでは集成体36の上方にストリッパ59が配される。ストリッパ59の上方には、スプリング61を介してパンチホルダ62が配置されている。このパンチホルダ62には下方に向けて突出するパンチ63が取り付けられている。パンチ63の先端部には爪削ぎ部63aが形成されている。爪削ぎ部63aの外径は、段部10の内径よりも若干小さく形成されている。また、爪削ぎ部63aの内周側は上方が拡径したテーパ形状となっている。
図19の装置においてパンチホルダ62が下方に下げられると、それに伴いパンチ63が降下し、パンチ58の爪削ぎ部63aが段部10の上面に接触する。そして、さらにパンチ63を段部10の高さを超えない寸法だけ下降させると、爪削ぎ部63aが段部10に食い込み、その内周側に係合片11が形成される。この際、係合片11は、爪削ぎ部63aのテーパ形状に沿って内周側に倒れるように突出形成される。そして、内周側に突出した係合片11は、金属片22をモールド成型してホルダ部2を形成したとき、図1に示すようにホルダ部2内にアンカー状に埋設され、テーパ形状のボス部9と共にセグメント3の抜け止めとして機能する。
係合片11を形成した後、金属片22の間に存在するキャリア23を切断する連鎖体トリム工程P7に進む。図21は係合片形成工程における加工状態を示す説明図、図22(a)は係合片形成工程後の集成体36の状態を示す平面図、(b)はその断面図である。図21に示すように、ここでは集成体36の上方にはトリムダイ64とノックアウトブロック65が配される。この場合、トリムダイ64はキャリア23の部位に配置され、その内側にノックアウトブロック65が配置されている。また、当該工程では、カートリッジ37の外周リング37cがトリムパンチ66として使用される。これにより、別途パンチ部材を設ける必要がなくなり、型構成が簡略化され、生産コストの削減が図られる。
図21の装置においてトリムパンチ66が上方に上げられると、それに伴いトリムダイ64とトリムパンチ66との間にてキャリア23が切断される。この際、金属片22はそれぞれに分離されるが、カートリッジ37に収容され、突起41,42にてその移動が規制されているため、キャリア23切断によりバラバラになることはない。そして、キャリア23切断後、ノックアウトブロック65を下げることにより、トリムダイ64内に入り込んだ集成体36が取り出される。
ここで、キャリア23の除去に関しては、モール成型後にそれを切り落とす方式も考えられる。ところが、モールド成型後にキャリア23を除去する場合、図23に示すように、金属片22の外周部を切削加工してキャリア23を全て落とす必要があり、切削代が大きく工数がかかるという問題がある。また、その場合、コイル取付溝12を含む断続切削加工となるため、工具のダメージが大きく製造コストが嵩むという問題もある。また、断続切削のため、コイル取付溝12内に周方向にバリが生じ易くなり、溝内にバリが生じるとコイルが挿入しづらく巻線不良を誘発するおそれがある。このため、工程P4のアンカー押し加工にて廃したはずのバフ加工を最後に行う必要が生じ、工数削減の妨げとなる。さらに、外周切削加工では、キャリア23とその内側に流入した合成樹脂とを除去する必要があり、その際、スリット6内の合成樹脂を損傷するおそれもある。スリット6内の樹脂を損傷すると、コイル取付時におけるフュージング不良を招来するおそれがある。
そこで、当該コンミテータ製造方法では、カートリッジ37を装着してP4〜P6にてプレス加工を行うことに着目し、モールド成型工程以前にキャリア23をプレス加工にて切断して前述のような問題の解決を図っている。このため、モールド成型後の切削加工が不要となり、工数削減が図られると共に、周方向のバリ発生や合成樹脂の損傷防止を防止して製品信頼性の向上を図ることが可能となる。
このようにしてキャリア23を除去した後、モールド成型前にコイル取付溝12の寸法矯正を行う(工程P8)。前述のように、コイル取付溝を後加工すると溝加工精度にバラツキが生じ易い。その一方、当初からコイル取付溝を形成しておくと、溝内部に合成樹脂が入り込み、後工程にて溝内部のバリ取りを行う必要が生じる。そこで、当該コンミテータ製造方法では、後者の方式を採用しつつ、カートリッジ37にコイル取付溝12に嵌合する突起42を設けて溝内部に樹脂が入り込むのを防止している。しかしながら、P4〜P7のプレス加工を経て来た金属片22は、他の加工工程の影響により、コイル取付溝12の寸法が変化し、突起42との間に隙間が生じている可能性がある。かかる隙間が生じると、そこから溝内に樹脂が流入し樹脂バリが生じるおそれがある。そこで、ここではモールド成型工程の直前に、突起42にコイル取付溝12を密着させる工程を置いて、コイル取付溝12の寸法矯正とバリ発生の防止を図っている。
図24はコイル取付溝矯正工程における加工状態を示す説明図である。図24に示すように、ここでは集成体36の上方には圧縮パンチ67が配され、金属片22の上面側からコイル取付溝12近傍に圧接される。この圧縮パンチ67による押圧により、コイル取付溝12の両側面が溝内に膨出するように変形する。この場合、コイル取付溝12内には突起42が挿入されており、これにより、コイル取付溝12の両側面が突起42に押し付けられ、突起42はコイル取付溝12に密着する。
従って、後述するモールド工程P9にてコイル取付溝12内に合成樹脂が入り込まず、溝内に樹脂バリが発生するのを防止することができる。バリの問題が解決されるため、連鎖体21形成時に同時にコイル取付溝を形成することができ、切削加工にて後に溝を形成する場合に比して大幅に工数を削減することができる。さらに、突起42にコイル取付溝12を密着させることにより、溝の寸法・形状が突起42に倣って矯正されるため、切削加工に比してコイル取付溝12の寸法精度を向上させることができ、巻線時におけるコイル挿入不良を防止することが可能となる。
このようにして一連のプレス工程を終えた後、合成樹脂モールド工程P9に進む。図25は合成樹脂モールド工程における加工状態を示す説明図である。図25に示すように、ここでも金属片22はカートリッジ37に装着されたまま処理が行われ、カートリッジ37は、センターピン68が植設された下型69に収容される。また、カートリッジ37の上方には、ゲート71を有するゲートプレート73が載置される。そして、ゲート71から合成樹脂が注入され、それが固化した後、エジェクトピン72によって成型品がカートリッジ37と共に取り出される。この際、出来上がった成型品は、カートリッジ37の突起42,42及びP4,P8工程での処理などにより、樹脂漏れによるバリがなく、しかも高精度な製品を得ることができる。
合成樹脂によるモールド成型後、成型品からカートリッジ37が取り外され、図1のようなコンミテータ1が出来上がる。なお、このカートリッジ37はその後再利用可能である。このようにして完成したコンミテータ1は、図示しない回転軸やアーマチュアコア、コイル巻線等と共に組み付けられ、その後、合成樹脂コーティングが施されてアーマチュアアッセンブリが形成される(P10)。ところが、コンミテータ1は合成樹脂コーティング時に150〜180度程度の高温に晒されるため、その際、銅製のセグメント3が酸化・変色してしまう。このため、アッセンブリ工程P10の後、ブラシ摺動面4の清浄化を行うと共に、平面度や面粗さを完成品精度に仕上げるため切削仕上げが行われる(P11)。この際、前述のように各セグメント3のスリット6に臨む端部は曲面となっているため、ブラシ摺動面4を断続切削加工しても、スリット6内のバリ発生が抑えられ、後のバフ研磨は不要である。なお、この切削仕上げでは、アーマチュアアッセンブリの回転軸を軸受にて支持した状態でブラシ摺動面4が切削される。すなわち、ブラシ摺動面4は回転軸の軸受を基準として切削加工され、モータ実使用時と同じ基準にて切削仕上げされる。従って、モータ組み付け後におけるブラシ摺動面4の精度が確保され、製品信頼性の向上が図られる。
また、突起41,42によりスリット6やコイル取付溝12が高精度に形成されており、モールド成型後の加工はブラシ摺動面4の仕上げのみで足り、従来のコンミテータのようにスリット加工は必要ない。このため、コンミテータ製造工数を大幅に削減できると共に製品精度も向上し、コストダウンと信頼性向上を図ることができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施の形態では、セグメントを31個有するコンミテータを例にとって本発明の製造方法を説明したが、その個数は31個には限定されず、回転電機の仕様に応じて適宜変更可能である。また、製造工程の順序も、P5はP4の後に設定され、P8はP9の直前に設定される必要があるが、P6,P7は、必ずしもP5の後でなくとも良く、P6とP7の順序を逆にすることも可能である。つまり、P3→P7→P6→P4→P5→P8→P9のように処理を行うことも可能である。
さらに、P4及びP8の工程は、連鎖体を用いず個々の金属片をカートリッジに収容して処理を行う場合にも有効である。すなわち、単品としてプレス成型した金属片22をカートリッジ37に並べ、それをモールド成型してコンミテータを形成する場合にもP4,8の処理は適用可能である。なお、バーリング・アンカー押し工程P4では、バーリングとアンカー押しの2処理を1工程にて行っているが、これらをそれぞれ独立の工程にて行うことも可能である。
本発明の偏平型コンミテータの製造方法によれば、セグメントを形成する金属片を複数連設した連鎖体を形成して円形に集成し、これを合成樹脂モールドすることにより偏平型コンミテータを得るようにしたので、従来のコンミテータバーや冷間鍛造品による方式に比して方式に比して製造工数を削減することが可能となる。この場合、加工速度の速い順送プレス装置を用いて連鎖体を形成することより、製品精度の高いものが歩留まり良く得られ、信頼性の高い製品を低コストにて製造することが可能となる。
また、連設された金属片をモールド成型以前に個々の金属片に分離することにより、モールド成型後に金属片同士を切り離す切削加工が不要となる。従って、工数削減が図られると共に、加工時における周方向のバリ発生や合成樹脂の損傷防止を防止して製品信頼性の向上を図ることが可能となる。
さらに、本発明の偏平型コンミテータの製造方法によれば、セグメントを形成する金属片に金属片間に形成された間隙に嵌合する突起を設けたカートリッジを装着し、金属片の間隙近傍を押圧して突起に間隙を密着させた後にモールド成型するようにしたので、成型時に間隙内に合成樹脂が入り込まず、突起の部位がそのまま金属片間に凹部として残存してスリットとなる。このため、モールド成型後のスリットカット加工を省くことができ、工数削減を図ることが可能となる。また、スリットがカートリッジの突起にて形成されるため、刃物によるスリット形成に比してスリット位置精度を向上させることができ、製品精度のバラツキを低減させることが可能となる。
加えて、本発明の偏平型コンミテータの製造方法によれば、セグメントを形成する金属片に金属片の外周部に形成されたコイル取付溝に嵌合する突起を設けたカートリッジを装着し、金属片のコイル取付溝近傍を押圧して突起にコイル取付溝を密着させた後にモールド成型するようにしたので、成型時にコイル取付溝内に合成樹脂が入り込まず、溝内に樹脂バリが発生するのを防止することができる。このため、溝内の樹脂バリ問題が解決されるため、金属片形成時に同時にコイル取付溝を形成することができ、切削加工にて後に溝を形成する場合に比して大幅に工数を削減することができる。さらに、突起にコイル取付溝を密着させることにより、溝の寸法・形状が突起に倣って矯正されるため、切削加工に比してコイル取付溝の寸法精度を向上させることができ、巻線時におけるコイル挿入不良を防止することが可能となる。
一方、本発明の偏平型コンミテータの製造装置によれば、セグメントを形成する金属片のブラシ摺接面側に装着され、金属片間に形成された間隙に嵌合する突起を有するカートリッジと、カートリッジに装着した金属片の間隙近傍を押圧する押圧手段とを設けたので、押圧手段による押圧によって突起に間隙両側面を密着させることができる。これにより、突起に金属片間の間隙を密着させた状態でモールド成型を行うことが可能となり、スリット内の樹脂バリ発生を防止できると共に、スリット寸法の精度を向上させることが可能となる。
また、カートリッジの突起基部に金属片の端縁に当接する曲面部を設けることにより、突起を間隙に挿入しその状態にて間隙近傍を押圧すると、金属片の間隙に臨む端縁が曲面部に倣って変形して曲面が形成され、ブラシ摺動面に対し切削仕上げを行う際、断続切削加工を行ってもセグメントのスリット内にバリが発生するのを抑えることができる。従って、切削加工後のバリ取りが不要となり、コンミテータ製造工数の削減を図ることが可能となる。この場合、曲面部の半径を仕上加工時の切削代よりも大きくすることにより、仕上げ切削時のバリ発生が確実に抑えられる。
さらに、本発明の偏平型コンミテータの製造装置によれば、セグメントを形成する金属片のブラシ摺接面側に装着され、金属片の外周部に形成されたコイル取付溝に嵌合する突起を有するカートリッジと、カートリッジに装着した金属片のコイル取付溝近傍を押圧する押圧手段とを設けたので、押圧手段による押圧によって突起にコイル取付溝の両側面を密着させることができる。これにより、突起にコイル取付溝を密着させた状態でモールド成型を行うことが可能となり、コイル取付溝内の樹脂バリ発生を防止できると共に、溝寸法の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明による製造方法によって製造された偏平型コンミテータの一例を示す一部切断斜視図である。
図2は、本発明の一実施の形態である偏平型コンミテータを用いたアーマチュアアッセンブリの製造工程を示すチャートである。
図3(a)は連鎖体形成工程にて形成される連鎖体の構成を示す正面図、図3(b)はそのA−A線に沿った断面図である。
図4は、連鎖体の加工過程を示す説明図である。
図5は、連鎖体丸め工程にて使用される金属片集成装置の構成を示す平面図である。
図6は、図5のA−A線に沿った断面図である。
図7は、図5のO−B線に沿った断面図である。
図8は、連鎖体丸め工程における加工過程を示す説明図であり、連鎖体を回転体に装着しようとする状態を示している。
図9は、連鎖体丸め工程における図8に続く加工過程を示す説明図であり、連鎖体を回転体に装着した状態を示している。
図10は、連鎖体丸め工程における図9に続く加工過程を示す説明図であり、連鎖体を円形に集成して行く状態を示し、(a)はその平面図、(b)は(a)のO−C線に沿った断面図である。
図11は、連鎖体丸め工程における図10に続く加工過程を示す説明図であり、連鎖体を円形に集成し終わった状態を示している。
図12は、連鎖体丸め工程における図11に続く加工過程を示す説明図であり、集成体を取り出す状態を示している。
図13(a)はカートリッジの構成を示す断面図、図13(b)はその部分斜視図である。
図14は、バーリング・アンカー押し工程における加工状態を示す説明図である。
図15は、バーリング・アンカー押し工程時におけるアンカー押し突起と間隙の状態を示す説明図である。
図16は、バーリング・アンカー押し工程後の集成体の状態を示す平面図である。
図17は、ボス部テーパ押し工程における加工状態を示す説明図である。
図18(a)はボス部テーパ押し工程後の集成体の状態を示す平面図、図18(b)はその断面図である。
図19は、係合片形成工程における加工状態を示す説明図である。
図20(a)は係合片形成工程後の集成体の状態を示す平面図、図20(b)はその断面図である。
図21は、係合片形成工程における加工状態を示す説明図である。
図22(a)は係合片形成工程後の集成体の状態を示す平面図、図22(b)はその断面図である。
図23は、モールド成型後にキャリアを除去する場合の加工状況を示す説明図である。
図24は、コイル取付溝矯正工程における加工状態を示す説明図である。
図25は、合成樹脂モールド工程における加工状態を示す説明図である。
Claims (16)
- 合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造方法であって、
前記セグメントを形成する金属片を複数連設した連鎖体を形成する工程と、
前記連鎖体を円形に集成し、前記金属片を周方向に沿って配列する工程と、
前記金属片を合成樹脂にて一体にモールド成型する工程とを有することを特徴とする偏平型コンミテータの製造方法。 - 請求項1記載の偏平型コンミテータの製造方法において、前記連鎖体は、順送プレス装置にて連鎖状に成型され、前記セグメント数分の金属片にて切断されてなることを特徴とする偏平型コンミテータの製造方法。
- 請求項1または2記載の偏平型コンミテータの製造方法において、前記連鎖体は円形に集成された後、そのブラシ摺接面側にカートリッジが装着され、前記カートリッジを装着した状態でモールド成型されることを特徴とする偏平型コンミテータの製造方法。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載の偏平型コンミテータの製造方法において、前記連設された前記金属片は、前記モールド成型以前に個々の金属片に分離されることを特徴とする偏平型コンミテータの製造方法。
- 合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造方法であって、
前記セグメントを形成する金属片のブラシ摺接面側に、前記金属片間に形成された間隙に嵌合する突起を有するカートリッジを装着する工程と、
前記カートリッジに装着した前記金属片の前記間隙近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧して前記突起に前記間隙を密着させる工程と、
前記カートリッジを装着した状態で、前記金属片を合成樹脂にて一体にモールド成型する工程とを有することを特徴とする偏平型コンミテータの製造方法。 - 合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造方法であって、
前記セグメントを形成する金属片のブラシ摺接面側に、前記金属片の外周部に形成されたコイル取付溝に嵌合する突起を有するカートリッジを装着する工程と、
前記カートリッジに装着した前記金属片の前記コイル取付溝近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧して前記突起に前記コイル取付溝を密着させる工程と、
前記カートリッジを装着した状態で、前記金属片を合成樹脂にて一体にモールド成型する工程とを有することを特徴とする偏平型コンミテータの製造方法。 - 合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造方法であって、
(a).前記セグメントを形成する金属片を複数連設した連鎖体を形成する工程と、
(b).前記連鎖体を円形に集成し、前記金属片を周方向に沿って配列する工程と、
(c).前記円形に集成した連鎖体のブラシ摺接面側に、前記金属片間に形成された間隙に嵌合する第1の突起と、前記金属片の外周部に形成されたコイル取付溝に嵌合する第2の突起とを有するカートリッジを装着する工程と、
(d).前記金属片の前記間隙近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧して前記第1の突起に前記間隙を密着させる工程と、
(e).前記連設された前記金属片を個々の金属片に分離する工程と、
(f).前記コイル取付溝近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧して前記第2の突起に前記コイル取付溝を密着させる工程と、
(g).前記カートリッジを装着した状態で、前記金属片を合成樹脂にて一体にモールド成型する工程とを有することを特徴とする偏平型コンミテータの製造方法。 - 請求項7記載の偏平型コンミテータの製造方法において、前記工程(c)の後(f)の前に、前記金属片の内周側に軸方向に突出するボス部を形成する工程を設けたことを特徴とする偏平型コンミテータの製造方法。
- 請求項8記載の偏平型コンミテータの製造方法において、前記ボス部形成工程後に、前記ボス部の先端を基部よりも拡径させる工程を設けたことを特徴とする偏平型コンミテータの製造方法。
- 請求項7〜9の何れか1項に記載の偏平型コンミテータの製造方法において、前記金属片は段違いに形成された本体部と外周部とを有してなり、前記工程(c)の後(f)の前に、前記本体部と前記外周部との間の段部に前記本体部側に突出する係合片を形成する工程を設けたことを特徴とする偏平型コンミテータの製造方法。
- 合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造装置であって、
前記セグメントを形成する金属片を複数連設した連鎖体を円形に集成しつつ収容し、前記金属片が装着される金属片取付部と、前記金属片の内周を規制する内径ガイド部とを備えてなる円盤状に形成された回転体と、
前記回転体の外周に沿って配設され、前記金属片の外周部を規制する外径ガイド部材と、
前記回転体の下方に上下移動自在に配置され、前記回転体に前記金属片と対応して形成された複数のピン孔から前記回転体上面に突出して前記金属片を前記回転体から離脱させる複数のノックアウトピンとを有することを特徴とする偏平型コンミテータの製造装置。 - 合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造装置であって、
前記セグメントを形成する金属片のブラシ摺接面側に装着され、前記金属片間に形成された間隙に嵌合する突起を有するカートリッジと、
前記カートリッジに装着した前記金属片の前記間隙近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧する押圧手段とを有することを特徴とする偏平型コンミテータの製造装置。 - 請求項12記載の偏平型コンミテータの製造装置において、前記カートリッジの前記突起基部に、前記金属片の端縁に当接する曲面部を設けたことを特徴とする偏平型コンミテータの製造装置。
- 請求項13記載の偏平型コンミテータの製造装置において、前記曲面部の半径は、前記金属片のブラシ摺動面に施される仕上加工における切削代よりも大きいことを特徴とする偏平型コンミテータの製造装置。
- 請求項12〜14の何れか1項に記載の偏平型コンミテータの製造装置において、前記突起は、先端部寸法が基部寸法よりも大きいことを特徴とする偏平型コンミテータの製造装置。
- 合成樹脂によって円盤状に形成されたホルダ部と、前記ホルダ部の軸方向一端面に周方向に沿って配設された複数のセグメントとを有してなる偏平型コンミテータの製造装置であって、
前記セグメントを形成する金属片のブラシ摺接面側に装着され、前記金属片の外周部に形成されたコイル取付溝に嵌合する突起を有するカートリッジと、
前記カートリッジに装着した前記金属片の前記コイル取付溝近傍を前記ブラシ摺接面と反対面側から押圧する押圧手段とを有することを特徴とする偏平型コンミテータの製造装置。
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