JPWO2003012423A1 - 内壁部に櫛形ポリマーが導入された中空繊維、ゲル充填中空繊維及び繊維配列体薄片 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、キャピラリー電気泳動等に使用される中空繊維又はDNAマイクロアレイ用の部材等として使用される中空繊維配列体薄片に関する。
背景技術
近年、生体内の微量な物質を分析する目的でキャピラリーゲル電気泳動法が使用されている。該方法で使用するキャピラリーは、内径100μm程度の細管を使用するため、試料が微量で済み、分離能も高い。キャピラリーを構成する部材としては、ガラスやポリメチルメタクリレートに代表されるような透明性に優れたプラスチック等が利用される。また、遺伝子の一括解析が可能なDNAチップの構成部材として、アクリルアミド等のゲルが中空部に充填されたキャピラリーを利用する試みもなされている(WO 00/53736号公報参照)。
キャピラリーゲル電気泳動法やDNAチップによりDNA等の生体関連物質を分析するためには、キャピラリー内部にゲルを強固に保持させる必要がある。
しかし、中空部に充填されたゲルが体積収縮することにより、キャピラリー内壁部とゲルとの界面に隙間が生じ、物質分析の際、その隙間部分に物質が優先的に流れ、分析精度が低下するという問題があった。また、DNAチップの構成部材として、キャピラリーを使用する場合、例えば、キャピラリーの複数本を束状とし、その束を横切断しDNAチップを作成するが、キャピラリー内壁部とゲルとの密着が十分でない場合、横切断の際にゲルがキャピラリーから欠落するという問題があった。さらには、ハイブリダイゼーション等の分析操作の途中でゲルが欠落するという問題があった。
キャピラリー内壁とゲルとの密着性を向上させる試みとして、例えば、キャピラリー内壁に親水基を導入して密着性を上げる方法が提案されている(USP 5,015,350号公報参照)。しかし、この方法は、親水化コートによりゲルとキャピラリーとの密着性を上げる方法であり、ゲルと内壁との結合力は強固ではなく、使用回数が増えるとゲルを保持しきれなくなる。
また、ガラス製キャピラリーでは、内壁にポリアクリルアミドを化学修飾させ、ゲルとの密着性を向上させる方法が開発されている(S.F.Y.Liら,Capillary Electrophroesis,173,(1992))。しかし、この方法はガラス表面のシラノール基と反応する2官能性のカップリング剤でガラス表面を処理する方法であって、ガラス製のキャピラリー以外で効果が認められるものではない。
さらには、高分子キャピラリーの賦形とキャピラリー中空部のゲル充填を同時に行い、キャピラリー中空部にゲルが充填された高分子キャピラリーを得る方法が提案されている(特開平11−211694号公報参照)。しかし、この方法は、キャピラリーの賦形中に起こるゲルの体積収縮により、キャピラリー内壁とゲルとの界面に隙間を生じる。
一方、多孔質中空繊維に吸湿性及び制電性等の機能性を付与する目的で、該繊維の中空部に非水溶性重合体を充填する試みがなされている(特開平8−188967号公報参照)。しかし、この方法は、繊維に新たな機能を付与する方法であって、中空部に充填されているゲルの密着性とは無関係な技術である。
即ち、従来の方法では、ゲルの体積収縮によるキャピラリーの内壁とゲルとの界面に生じる隙間の問題、DNAチップを作成する際に生じるゲルの欠落等の問題を充分解決できる手段はなく、ゲルを充填したキャピラリーをキャピラリーゲル電気泳動やDNAチップの構成部材として利用することは困難であった。
発明の開示
本発明の目的は、中空繊維の中空部内壁にゲルを強固に保持することができる中空繊維を提供することにある。また、この中空繊維の中空部にゲルが充填された中空繊維を提供することにある。さらには、中空部にゲルが強固に保持された中空繊維束をスライスして得られる薄片を提供することにある。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、中空繊維の内壁に櫛形ポリマーを導入することにより、中空繊維内壁と中空部に充填されたゲルとの密着性が向上し、ゲルが体積収縮することによる中空繊維内壁からの剥離、DNAチップ作成の際のゲルの欠落等が抑制できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1.内壁部に櫛形ポリマーが導入された中空繊維。
櫛形ポリマーは、重合性官能基又は親水性官能基を有するものが例示できる。また、櫛形ポリマーの主鎖は、ポリメチルメタクリレートが例示できる。
2.中空繊維の中空部にゲルが充填されたゲル充填中空繊維。
ゲルはアクリルアミド系モノマーを主成分とするゲルが例示できる。また、ゲルには必要に応じて生体関連物質が保持されている。
3.ゲル充填中空繊維を複数本束ねた中空繊維配列体。
4.前記3に記載の配列体を繊維の長手方向に交叉する方向で切断した中空繊維配列体薄片。
本発明で使用される中空繊維は、有機系の中空繊維であって、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート等のポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン系繊維、フェノール系繊維、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等からなるフッ素系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維等が例示される。
キャピラリー電気泳動法では、キャピラリーの外壁から検出光を照射し、分析を行うので、中空繊維は光学的に透明であることが好ましい。したがって、中空繊維を構成する材料は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に例示されるメタクリレート系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート等の透明性に優れる材料が好ましい。
中空繊維の形態は、多孔質中空繊維、非多孔質中空繊維のいずれでも良い。中空繊維の外径は、2mm以下、好ましくは1mm以下である。内径は0.02mm以上が好ましい。
本発明において、中空繊維内壁部に導入される櫛形ポリマーは、主鎖部(幹鎖)及び側鎖部(枝部)で構成されるポリマーであって、下記の(a)又は(b)に例示する櫛形ポリマーを挙げることができる。この櫛形ポリマーは、中空部に充填されるゲルを中空繊維内壁部に強固に保持させる機能を有する。
(a)主鎖又は側鎖に重合性官能基を有する櫛形ポリマー
重合性官能基としては、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基又はシクロヘキセン等の環状の不飽和官能基が例示できる。これら重合性官能基は、櫛形ポリマーの主鎖の末端又は側鎖の末端に導入されていることが好ましい。
櫛形ポリマーの主鎖として用いられるポリマー成分は、中空繊維材料に親和性を持つポリマーであることが好ましい。例えば、中空繊維材料が、ポリメチルメタクリレート(PMMA)であれば、櫛形ポリマーの主鎖として用いられるモノマー成分は、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等が好ましい。また、上記モノマーは、2種以上を共重合し用いることもできる。
(b)中空部に充填されるゲルに親和性を有する櫛形ポリマー
主鎖を構成するポリマー成分としては、上記(a)と同じく中空繊維材料に対して親和性が有するものを選択する。また、側鎖は、中空繊維中空部に充填されるゲルの網目構造に対して、十分親和性があり、且つ高分子ゲルの網目構造と絡み合い可能な形態のポリマーを選ぶことが好ましい。
例えば、中空部に充填されるゲルが親水性を有するものであれば、側鎖ポリマーは親水性官能基を有していることが好ましい。親水性官能基としては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルアルコール、アクリル酸、アクリルアミドなどを構成単位とした重合体又はこれらの2種以上を共重合させたものを選択する。この他に重合末端に水酸基、アミノ基、スルフォン酸基などの親水性官能基を導入した重合体を側鎖として選択することも可能である。
側鎖に導入させる重合体の鎖長の分子量は、20〜300,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましい。
中空繊維内壁部への櫛形ポリマーの導入方法としては、中空繊維の一端を櫛形ポリマー溶液に浸漬し、他端から吸引する方法が採用できる。その際、中空部の詰まりや内壁面の溶解による中空繊維の脆化を避けるため、吸引により導入した櫛形ポリマー溶液を放出させることが好ましい。ポリマー溶液を放出した後は、櫛形ポリマーを溶解している溶媒を風乾により蒸発させて櫛形ポリマーを中空繊維内壁に付着させる。
櫛形ポリマー濃度は、50質量%以下の範囲が好ましく、1〜10質量%の範囲がさらに好ましい。
前記(a)及び(b)で例示した櫛形ポリマーを中空繊維内壁に均一に付着させるには、櫛形ポリマーを溶解している溶媒が、櫛形ポリマーに対して良溶媒であり、且つ中空繊維材料に対して貧溶媒であるものを選択することが好ましい。好ましい溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は複数組み合わせて使用できる。また、複数組み合わせて使用する際は、組み合わせる溶媒が互いに相溶性であり、且つ混合する溶媒がそれぞれ単独で前記の櫛形ポリマーに対して良溶媒である溶媒を用いることが望ましい。
本発明において、中空部に充填するゲルの種類は特に制限されないが、例えばアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール、N−アクリロイルアミノプロパノール、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、アリルデキストリン等の単量体の一種類以上と、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体と共重合した架橋重合体を、水で膨潤したゲルを用いることができる。
重合開始剤としては、使用する溶媒に溶解可能なアゾ系、過酸化物系、レドックス系等の開始剤を用いることができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)イソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、又は過酸化ベンゾイル−ジメチルアニリン系等が挙げられる。
その他のゲルとして、例えば、アガロース、アルギン酸、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等のゲル、またはこれらを架橋したゲルを用いることができる。
核酸の分析に本発明の中空繊維を使用する場合、中空部に充填されるゲルは、アクリルアミドゲルが好ましい。アクリルアミドモノマー濃度としては2〜20質量%の範囲が好ましい。
中空繊維の中空部にゲルを充填する方法は、真空により吸引する方法が一般的であるがこれに限定されるものではない。
上記(a)に記載した櫛形ポリマーを使用した場合、その重合性官能基をゲル成分と化学結合させることにより、中空繊維内に充填されたゲルを中空繊維内壁に強固に保持させることができる。具体的には、(a)の櫛形ポリマーを中空繊維内壁に導入した中空繊維内にゲル成分の原料となるモノマー成分を充填し、モノマー成分の重合時に(a)の櫛形ポリマーの重合性官能基とモノマー成分を反応させる方法が例示される。
また、上記(b)に記載した櫛形ポリマーを使用した場合、中空繊維内に充填されるゲルの網目構造と(b)の櫛形ポリマーの側鎖が、絡み合うことにより中空繊維内に充填されたゲルを中空繊維内壁に強固に保持させることができる。
本発明において、生体関連物質とは、以下の1〜3の物質からなる群から選択されるものが挙げられる。
1.核酸、アミノ酸、糖又は脂質。
2.上記1の物質のうち少なくとも1種類の成分からなる重合物。
3.上記1又は2の物質と相互作用を有する物質。
例えば、生体関連物質として核酸を用いる場合、生細胞からのDNAの調製は、Blinらの方法(Nucleic Acids Res.3.2303(1976))等により、また、RNAの抽出については、Favaloroらの方法(Methods.Enzymol.65.718(1980))等により行うことができる。また、鎖状若しくは環状のプラスミドDNA又は染色体DNAも使用することができる。これらのDNAとしては、制限酵素を用い若しくは化学的手法を用い切断したDNA断片、試験管内で酵素等により合成されたDNA又は化学合成したDNA等を使用することもできる。
生体関連物質は、ゲルに物理的に包括する方法や、ゲル構成成分への直接的な結合を利用する方法等によりのゲルに保持させることができる。また、生体関連物質を一旦高分子体や無機粒子などの担体に共有結合又は非共有結合により結合させ、その担体をゲル中に包括固定化してもよい。
例えば、ゲル構成成分への直接的な結合を利用する方法として、核酸の末端基にビニル基を導入し、アクリルアミド等のゲルの構成成分と共重合させることができる(WO 98/39351号公報参照)。また、アガロースを臭化シアン法でイミドカルボネート化しておき、末端をアミノ化した核酸のアミノ基と結合させ、ゲル化することもできる。他の方法としては、例えば、ビオチン化した核酸とアビジン化したアガロースビーズ(シグマ社製 アビジン化アガロース等)を反応させることによって、核酸が固定化されたアガロースビーズを得ることができる。核酸固定化アガロースビーズはアクリルアミドゲル等に包括固定化することができる。
上記のごとく作成した生体関連物質が保持されたゲルが中空繊維中空部に充填されている中空繊維を複数本束ねて、該束状物を繊維の長手方向に交叉する方向で切断することにより中空繊維配列体薄片を作成することができる。
中空繊維を複数本、束にするには、(a)粘着シート等のシート状物に中空繊維を複数本、平行に配置及び固定した後、該シートを螺旋状に巻き取ることにより束にする方法、(b)複数の穴の開いた多孔板2枚を重ね、それらの多孔板に存在する各穴に、各中空繊維を通過させ、2枚の多孔板の間隔を開くことにより束にする方法等が例示できる。
また、上記(b)の方法では、繊維を多孔板に通過させた後の配列の規則性を保つため、各繊維に張力を付与する必要がある。よって、繊維は、繊維の弾性率の高い材料、例えば、芳香族ポリアミドやメタクリル酸メチル等のメタクリル系樹脂からなるものが好ましい。
中空繊維の束は、各繊維の隙間部分に樹脂等を流し込むことにより固定される。固定された束を、ミクロトーム等を使用し、繊維の長手方向に交叉する方向で切断することにより薄片を得ることができる。薄片は1mm以下の厚さが好ましい。
該薄片は、複数の遺伝子の一括分析に利用されるため、1つの薄片に存在する中空繊維の本数は多い方が好ましく、薄片1cm2あたり100本以上が好ましい。よって、使用される中空繊維の外径は細い方が好ましく、0.5mm以下、更に好ましくは0.3mm以下が好ましい。内径は、0.02mm以上が好ましい。
薄片中に存在する中空繊維に保持されている生体関連物質は、中空繊維ごとに異なっていても良い。また、同一の生体関連物質が保持されている数本の中空繊維を1グループとし、薄片中に配列されていても良い。
上記のごとく作成された生体関連物質が保持された中空繊維配列体の薄片は、例えば、遺伝子の一括解析のツールとして使用される。
本明細書は本願の優先権の基礎である特願2001−232751号の明細書に記載される内容を包含する。
発明を実施するための最良の形態
本発明を実施例により更に詳細に説明する。
<実施例1>
(1)側鎖に重合性官能基を有する櫛形ポリマーの製造
メチルメタクリレート(MMA)、グリシジルメタクリレート(GMA)各100部をアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5部と共に80℃のメチルエチルケトン(MEK)(50部)中へ窒素気流下(50cc/min.)3時間滴下した。
その後、AIBN(0.1部)及びMEK(70部)を加え1時間保持、次いで、AIBN(0.1部)及びMEK(10部)加え3時間保持、次いで、MEK(50部)を更に加えた後、メチルヒドロキノン(MEHQ)(0.5部)、トリフェニルフォスフィン(2.5部)アクリル酸(GMAの99モル%)を加えた。上記操作の間、空気を吹き込みながら(100cc/min.)、30時間反応させて側鎖末端にビニル基が付加された櫛形ポリマー(A)を得た。該共重合体には、ビニル基がモル分率で25モル%、導入されていた。
(2)櫛形ポリマーを導入した中空繊維の製造
ポリメタクリル酸メチル中空繊維(三菱レイヨン株式会社製、外径300μm、内径200μm、長さ60cm)を50本束ね、図1に示す装置を用い、中空繊維内壁部へ櫛形ポリマー(A)を導入した。図1において、繊維束11の片端は、トラップ管13に接続した。もう一端は、ポリマー溶液1で満たした容器12内に配置した。真空ポンプ14を作動させることにより、ポリマー溶液1を中空部へ吸引導入した。
中空部に吸引導入した溶液の一部はトラップ管へ除去した後、風乾により中空部内壁の溶剤を蒸発させることで櫛形ポリマー(A)で中空部内壁を導入した中空繊維を得た。
〔ポリマー溶液1〕
櫛形ポリマー(A) 5 質量部
1,4−ジオキサン 95 質量部
(3)中空繊維配列体の製造
直径0.32mmの孔を有し、孔の中心間距離が0.42mmの多孔板であって、縦横各7列に合計49個配列された厚さ0.1mmの多孔板2枚を重ね、これらの多孔板2枚の各孔に、(2)で作成したポリメタクリル酸メチル中空繊維49本を通過させた。2枚の多孔板の間隔を50mmとし、糸を張った状態で両端を固定した。
次に、樹脂原料を中空繊維配列体の周囲に流し込み硬化させた。樹脂は、ポリウレタン樹脂接着剤(日本ポリウレタン工業(株)ニッポラン4276、コロネート4403)を使用した。樹脂が硬化した後、多孔板を取り除くことによって中空繊維を含む樹脂ブロックを得た。
(4)メタクリレート基を有するオリゴヌクレオチドの製造
オリゴヌクレオチドの合成は、自動合成機DNA/RNA synthesizer(model394)(アプライドバイオシステム社製(旧PEバイオシステムズ社))を用いて行い、合成の最終工程でアミノリンクII(アプライドバイオシステムズ社製)と反応させて末端アミノ化オリゴヌクレオチドを合成した。
得られた末端アミノ化GCAT(500nmol/ml)50μl、グリシジルメタクリレート5μl及びジメチルホルムアミド(DMF)5μlを混合し、70℃で2時間反応させ、水190μlを加えて、100nmol/mlのメタクリレート基を有するGCAT(MA−GCAT)を得た。
(5)中空部へのゲル充填
次に、下記の質量比で混合したモノマー及び開始剤を含むゲル用の原料溶液を調製した。
・アクリルアミド 9質量部
・N,N′−メチレンビスアクリルアミド 1質量部
・2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)
ジヒドロクロライド(V−50) 0.1質量部
・水 90質量部
上記の溶液に対して、0.5nmol/Lとなるように(4)で調製したMA−GCATを混合した。
上記の混合溶液を(3)で得られた樹脂ブロック中の中空繊維の中空部に充填し、ブロックを内部が水蒸気で飽和された密閉ガラス容器に移し、70℃で3時間放置することにより重合反応を行うことにより、ゲルを生成させ、中空部にゲルが充填された中空繊維配列体ブロックを得た。
(6)中空繊維配列体薄片の作成
この中空繊維配列体ブロックを繊維の配列方向と垂直方向に厚さ500μmにスライスして薄片を得た。スライスの際にゲルの脱落はなく、中空繊維内壁とゲルとの界面の密着性が良好であることを確認した。また、中空部内のゲルの形体を実体顕微鏡で観察したところ、49本の中空繊維のすべてにアクリルアミドゲルが隙間なく充填されていた。
<実施例2>
ポリマー溶液1の代わりにポリマー溶液2を使用した以外は、実施例1と同様にして、中空繊維配列体薄片を作成した。
〔ポリマー溶液2〕
PMMAモノアクリレート(分子量6000) 5質量部
トルエン 95質量部
スライスの際にゲルの脱落はなく、中空繊維内壁とゲルとの界面の密着性が良好であることを確認した。また、中空部内のゲルの形体を実体顕微鏡で観察したところ、49本の中空繊維のすべてにアクリルアミドゲルが隙間なく充填されていた。
<実施例3>
ポリメタクリル酸メチル中空繊維の代わりにポリカーボネート中空繊維(三菱レイヨン株式会社製、外径250μm、内径130μm、長さ60cm)を、また、ポリマー溶液1の代わりにポリマー溶液3を使用した以外は、実施例1と同様にして、中空繊維配列体薄片を作成した。
〔ポリマー溶液3〕
櫛形ポリマー(A) 5質量部
1,4−ジオキサン/アセトニトリル(12%/88%) 95質量部
スライスの際にゲルの脱落はなく、中空繊維内壁とゲルとの界面の密着性が良好であることを確認した。また、中空部内のゲルの形体を実体顕微鏡で観察したところ、49本の中空繊維のすべてにアクリルアミドゲルが隙間なく充填されていた。
<実施例4>
(1)中空部に充填されるゲルに親和性を有する櫛形ポリマーの製造−1
実施例1で得られた櫛形ポリマー(A)を1部及び開始剤として2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(V−50)0.1部を重合管に取り、100部のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)に溶解し、脱気して封管し、60℃で重合せしめた。重合終了後、封管を開封してエタノール中に注ぎ、側鎖にポリHEMAが付加された櫛形ポリマー(B)の沈殿物を得た。なお、副生するHEMAのホモポリマーはエタノール相に補足された。
(2)櫛形ポリマーの導入〜中空繊維配列体薄片の作成
ポリマー溶液1のかわりにポリマー溶液4を使用した以外は、実施例1と同様にして中空繊維配列体薄片を作成した。
〔ポリマー溶液4〕
櫛形ポリマー(B) 5 質量部
1,4−ジオキサン 95 質量部
スライスの際にゲルの脱落はなく、中空繊維内壁とゲルとの界面の密着性が良好であることを確認した。また、中空部内のゲルの形体を実体顕微鏡で観察したところ、49本の中空繊維のすべてにアクリルアミドゲルが隙間なく充填されていた。
<実施例5>
ポリマー溶液3のかわりにポリマー溶液5を使用した以外は、実施例3と同様にして中空繊維配列体薄片を作成した。
〔ポリマー溶液5〕
櫛形ポリマー(B) 5質量部
1,4−ジオキサン/アセトニトリル(12%/88%) 95質量部
スライスの際にゲルの脱落はなく、中空繊維内壁とゲルとの界面の密着性が良好であることを確認した。また、中空部内のゲルの形体を実体顕微鏡で観察したところ、49本の中空繊維のすべてにアクリルアミドゲルが隙間なく充填されていた。
<実施例6>
(1)中空部に充填されるゲルに親和性を有する櫛形ポリマーの製造−2
実施例1で得られた櫛形ポリマー(A)を1部及び開始剤としてV−50(0.1部)を重合管にとり、ポリエチレンオグリコールモノアクリレート(Aldrich社製)100部に溶解し、封管して60℃で重合せしめた。重合終了後、溶液を水中に注ぎ、側鎖にポリエチレングリコールが付加した櫛形ポリマー(C)を得た。なお、副生されるポリエチレンオグリコールモノアクリレートのホモポリマーは水相に分離された。
(2)櫛形ポリマーの導入〜中空繊維配列体薄片の作成
ポリマー溶液1のかわりにポリマー溶液6を使用した以外は、実施例1と同様にして中空繊維配列体薄片を作成した。
〔ポリマー溶液6〕
櫛形ポリマー(C) 5質量部
1,4−ジオキサン 95質量部
スライスの際にゲルの脱落はなく、中空繊維内壁とゲルとの界面の密着性が良好であることを確認した。また、中空部内のゲルの形体を実体顕微鏡で観察したところ、49本の中空繊維のすべてにアクリルアミドゲルが隙間なく充填されていた。
<実施例7>
(1)中空部に充填されるゲルに親和性を有する櫛形ポリマーの製造−3
実施例1で得られた櫛形ポリマー(A)1部及びアクリルアミド100部をエタノール100部中に溶解し、更に開始剤溶液(過硫酸アンモニウム10%水溶液)0.1部を加えて60℃で重合せしめた。重合終了後、溶液を水中に注ぎ、側鎖にポリアクリルアミドが付加された櫛形ポリマー(D)を得た。副生されるポリアクリルアミドは水相に分離された。
(2)櫛形ポリマーの導入〜中空繊維配列体薄片の作成
ポリマー溶液1のかわりにポリマー溶液7を使用した以外は、実施例1と同様にして中空繊維配列体薄片を作成した。
〔ポリマー溶液7〕
櫛形ポリマー(D) 5質量部
1、4−ジオキサン 95質量部
スライスの際にゲルの脱落はなく、中空繊維内壁とゲルとの界面の密着性が良好であることを確認した。また、中空部内のゲルの形体を実体顕微鏡で観察したところ、49本の中空繊維のすべてにアクリルアミドゲルが隙間なく充填されていた。
<比較例1>
ポリマー溶液1のかわりにポリマー溶液8を使用した以外は、実施例1と同様にして中空繊維配列体薄片を作成した。
〔ポリマー溶液8〕
メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体 5質量部
(三菱レイヨン社製コーティングレジン:PB2322)
エタノール 95質量部
中空部のゲルの形状を観察したところ、中空部からゲルが欠落したものは見られなかったが、中空繊維内壁とゲルとの界面に隙間が確認された。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
産業上の利用の可能性
中空繊維内壁部に櫛形ポリマーを導入した中空繊維を用いることにより、中空部に充填されたゲルが中空繊維の内壁に強固に保持されたゲル充填中空繊維を得ることができる。この中空繊維を束にし、スライスして得られる薄片においても、ゲルと中空繊維内壁との密着性は良好である。
【図面の簡単な説明】
図1は、中空繊維内壁部に櫛形ポリマーを含む溶液を導入する装置の模式図である。
なお、図中の符号は以下のものを示す。
11・・・繊維束
12・・・櫛形ポリマーを含む溶液で満たした容器
13・・・トラップ管
14・・・真空ポンプ
Claims (11)
- 内壁部に櫛形ポリマーが導入された中空繊維。
- 櫛形ポリマーが、重合性官能基を有するものである請求の範囲第1項記載の中空繊維。
- 重合性官能基がビニル基である請求の範囲第2項記載の中空繊維。
- 櫛形ポリマーが、親水性官能基を有するものである請求の範囲第1項記載の中空繊維。
- 櫛形ポリマーの主鎖がポリメチルメタクリレートである請求の範囲第1項記載の中空繊維。
- 請求の範囲第1項記載の中空繊維の中空部に、ゲルが充填されているゲル充填中空繊維。
- ゲルがアクリルアミド系モノマーを主成分とするゲルである請求の範囲第6項記載のゲル充填中空繊維。
- 請求の範囲第6項記載のゲル充填中空繊維のゲルに、生体関連物質が保持されたゲル充填中空繊維。
- 請求の範囲第6項記載のゲル充填中空繊維を複数本束ねた中空繊維配列体。
- 中空繊維の本数が1cm2あたり100本以上である請求の範囲第9項記載の中空繊維配列体。
- 請求の範囲第9項記載の中空繊維配列体を、繊維の長手方向に交叉する方向で切断した中空繊維配列体薄片。
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