JPH11211694A - キャピラリーおよびその製造方法 - Google Patents

キャピラリーおよびその製造方法

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JPH11211694A
JPH11211694A JP10017105A JP1710598A JPH11211694A JP H11211694 A JPH11211694 A JP H11211694A JP 10017105 A JP10017105 A JP 10017105A JP 1710598 A JP1710598 A JP 1710598A JP H11211694 A JPH11211694 A JP H11211694A
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capillary
polymer
wall
electrophoresis
solution
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Yuichi Mori
森  有一
Hiroshi Yoshioka
浩 吉岡
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  • Spinning Methods And Devices For Manufacturing Artificial Fibers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 所望の材料があらかじめ充填された複層構造
キャピラリーを均一な高品質で、しかも低コストで製造
する。 【解決手段】 高分子からなる中空管状の外壁を有する
キャピラリーの該外壁を、100℃以下の低い温度で紡
糸する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子からなる中
空管状の外壁を有するキャピラリー、および該外壁内の
中空部にポリマーまたはモノマーを含むコア材料が配置
されてなる複層構造(ないし中空部充填)キャピラリー
に関する。本発明のキャピラリーは、例えば、キャピラ
リー電気泳動法に好適に使用可能である。
【0002】
【従来の技術】電気泳動法は、汎用的な分離・精製手段
たるクロマトグラフィー法等と同様に、古くから物質分
離の有効な手段として利用されてきた。
【0003】近年では、特に、対流の問題を克服するこ
とによって、分離の理論段数を飛躍的に向上させたキャ
ピラリーないし毛細管(例えば、内径が10〜1,00
0μmのキャピラリー)を用いたキャピラリー電動泳動
法が注目を集めている(これら対流、層流laminar flo
w、ないし栓流plug flow等の理論の詳細については、例
えば、本田・寺部編「キャピラリー電気泳動 基礎と実
際」第9頁、(1995年)講談社サイエンティフィク
を参照することができる)。
【0004】このキャピラリー電動泳動法は、これに使
用するキャピラリー自体の内径が小さく、分離・精製の
対象たる試料の必要量が微量で、生体成分等の微量成分
の分析などに好適であること、キャピラリーを通しての
ジュール熱の放出効率が良好であるため高電圧の印加が
可能で、該高電圧の印加により分析時間を著しく短縮す
ることができる等の多くの利点を有している。
【0005】上記のキャピラリー電気泳動法は、1)キ
ャピラリー中に電解質溶液のみを充填して測定を行う方
法と;2)電解質溶液および支持体を充填して測定を行
う方法に大別される。
【0006】前者としては、移動界面電気泳動法、ゾー
ン電気泳動法、等速電気泳動法、等電点電気泳動法等が
挙げられ、後者としては、キャピラリーゲル電気泳動法
が挙げられる。
【0007】中でも、キャピラリーゲル電気泳動法は、
キャピラリー中に高分子ハイドロゲル、または高分子水
溶液を支持体(ないしコア)として充填したものを用い
て、被測定試料の分離・精製を行う方法である。このキ
ャピラリーゲル電気泳動法は、ハイドロゲルまたは高分
子水溶液中に形成される高分子網目構造による分子ふる
い効果によって、分子量の大きさにより物質分離を行う
もので、理論段数が高い超高性能分析法であり、タンパ
ク質、核酸等の分離に特に有効である。
【0008】近年では、特にヒトゲノムDNAの遺伝情報
の解読のためのDNAの塩基配列の決定、DNAの変異を
検出することによる遺伝子診断・鑑定等へのキャピラリ
ーゲル電気泳動法の応用が急速に広まりつつある(前掲
の「キャピラリー電気泳動 基礎と実際」第163頁以
下を参照)。
【0009】しかしながら、従来のキャピラリーゲル電
気泳動法には以下に記すような大きな問題点がある。
【0010】(キャピラリーの材質に関連する問題点)
従来より、キャピラリーの材質としては、ガラス、溶融
石英、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン)等の含
フッ素炭化水素樹脂等が用いられてきた。これらのう
ち、ガラス、溶融石英等の材質からなるキャピラリーを
用いた場合には、該キャピラリーの内壁が負帯電してい
て、該内壁と電解質溶液間にゼータ電位に起因する電気
二重層が形成される。このため、電気泳動のための印加
電圧による電気浸透流が生じ、ハイドロゲルまたは高分
子水溶液等の支持体が測定中にキャピラリー内を移動し
て、キャピラリーと支持体との間に間隙ができ、測定不
能となる問題が生じる。
【0011】これを防ぐために、キャピラリー表面に活
性基を導入し、高分子ハイドロゲルを共有結合によって
固定化する方法(H.H.Yin, et al.J.High Resolut.
Chromatogr.,13,624,1990)等が行われてい
る。しかしながら、この工程が煩雑で手間がかかるこ
と、モノマー溶液からハイドロゲルに重合する際の体積
減少によってゲル中に気泡が入ってしまうこと等、致命
的な問題が発生する。またガラス、溶融石英等の材質か
らなるキャピラリーは非常に脆く、実際にはポリイミド
樹脂等でこれらのキャピラリーを被覆した後に電気泳動
に使用することが必要となっている。
【0012】他方、キャピラリー材質がテフロン等の含
フッ素炭化水素樹脂の場合には、ガラス、溶融石英等と
比較してゼータ電位が低く電気浸透流が生じにくいこと
(K.D.Lukacs, et al., J, High Resolut.Chroma
togr.Chromatogr.Commun.,, 407, 198
5)、および耐衝撃性に優れている等の利点を有するも
のの、透明性に問題があり、可視光、紫外線による分離
・精製物の検出が困難となる。
【0013】(キャピラリー内の支持体に関する問題
点)従来より、電気泳動用のキャピラリー内支持体とし
て最も一般的に用いられている支持体は、架橋ポリアク
リルアミド・ハイドロゲルである。その他にも、セルロ
ース誘導体、デキストラン、非架橋ポリアクリルアミ
ド、アガロース等の高分子水溶液が支持体として用いら
れている。
【0014】しかしながら、架橋ポリアクリルアミド・
ハイドロゲルを支持体として用いる際には、アクリルア
ミドモノマーおよび重合開始剤等をキャピラリー内に注
入して熱、光等で重合し、架橋ポリアクリルアミドゲル
を形成することが必要となるが、この際に、脱酸素、脱
気泡の工程の煩雑さ、長時間の重合工程、および重合収
縮によるゲル中での気泡の発生等の問題が避けがたい。
【0015】更に、支持体がゲルの場合には、キャピラ
リーから充填ゲルを抜き出すことは極めて困難であるた
め、実用的には、キャピラリー内のゲルには10回以上
の繰り返し測定に耐えるレベルの安定性が要求されるこ
ととなる。
【0016】しかしながら、現状では、上記した電気浸
透流によるゲルの移動、更にくり返し使用に基づくキャ
ピラリー内壁およびゲル自身の汚れに起因して、実際に
は繰り返し使用は困難である。
【0017】一方、高分子水溶液を支持体として用いる
際には、高粘度の高分子水溶液を非常に細い(10〜1
00μm)キャピラリー内部に注入すること自体が非常
に困難であるのみならず、高分子ハイドロゲルよりも電
気浸透流による支持体の移動が大きく、支持体の安定性
に欠けるという問題点が生ずる。
【0018】上述したように、キャピラリーゲル電気泳
動は分離効率が高く、試料も少量で足り、且つ電気泳動
時間が著しく短縮できるという大きな利点を有している
ものの、機械的強度の乏しいキャピラリーの材質、繰り
返し使用することができない支持体の不安定さ、支持体
をキャピラリー内部に導入する工程の煩雑さ等、該キャ
ピラリーゲル電気泳動をより効率的に活用するための、
いわゆる「ソフト技術」の開発が著しく遅れている。
【0019】したがって、例えばヒトゲノムDNAの遺
伝子情報を解読するために必要な、莫大な量のDNA塩基
配列の決定を迅速に行うために、上記キャピラリーを数
十本並べて、同時に複数個のDNA試料を測定出来るマル
チタイプのDNA解析装置が開発されている(H. Kamb
ara, et al., Nature, 361, 565, 1993)も
のの、キャピラリーと支持体に関する上記の問題点が解
決されない限り、キャピラリーゲル電気泳動法のメリッ
トが充分に生かされているとは言い難い。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
したような従来のキャピラリー材質および/又は支持体
に関連する問題点を解消した(単層)キャピラリーない
し複層構造キャピラリーを提供することにある。
【0021】本発明の他の目的は、電気泳動用キャピラ
リーとして特に好適に使用可能なキャピラリーないし複
層構造キャピラリーを提供することにある。
【0022】本発明の更に他の目的は、キャピラリー材
質に関して、従来のキャピラリー材質の大きな電気浸透
流、低い機械的強度、および含フッ素炭化水素樹脂等の
低い光学的透明性等を改良したキャピラリーないし複層
構造キャピラリーを提供することにある。
【0023】本発明の更に他の目的は、コア(例えば、
電気泳動用支持体)材料のキャピラリー内への導入およ
び/又は重合に長時間の煩雑な工程を必須としない複層
構造キャピラリーを提供することにある。
【0024】本発明の更に他の目的は、キャピラリー内
壁とコア(例えば、電気泳動用ゲル)本体間の空隙の発
生を防止するために、複雑なキャピラリー内壁へのコー
ティング操作を必須としない複層構造キャピラリーを提
供することにある。
【0025】本発明の更に他の目的は、コア材料が高粘
度の高分子水溶液(例えば、電気泳動用高分子水溶液)
の場合であっても、該高分子水溶液のキャピラリー内へ
の導入が容易な複層構造キャピラリーを提供することに
ある。
【0026】本発明の更に他の目的は、あらかじめ支持
体が充填されてなるキャピラリー調製の手間を大幅に省
き、分離能を安定化するのみならず、低コストとして一
回限りの使い捨てにすることをも可能とした複層構造キ
ャピラリーを提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究の
結果、高分子を、100℃以下の温度で紡糸(例えば、
乾式または湿式紡糸法により)して中空管状のキャピラ
リー外壁を形成することが、上述した従来技術の問題点
を解決するために極めて有利であることを見出した。
【0028】本発明者らは上記知見に基づいて更に研究
を進めた結果、ポリマーまたはモノマーからなるコア材
料の中空管状キャピラリー外壁内への充填を、該外壁の
形成と実質的に同時に行って複層構造キャピラリーを形
成することが、上述した従来の複層構造キャピラリーの
問題点を解決するために極めて有利であることをも見出
した。
【0029】本発明の(単層)キャピラリーは上記知見
に基づくものであり、より詳しくは、高分子からなる中
空管状の外壁を有するキャピラリーであって、該外壁の
前記高分子が100℃以下の温度で紡糸されてなること
を特徴とするものである。
【0030】本発明によれば、更に、ポリマーまたはモ
ノマーを含むコア材料と、これを囲む外壁とを少なくと
も有する複層構造キャピラリーであって、前記外壁の形
成と実質的に同時に、該コア材料が該外壁内へ充填され
てなることを特徴とする複層構造キャピラリーが提供さ
れる。
【0031】本発明によれば、更に、高分子を乾式また
は湿式紡糸により中空管状の外壁に加工して、該外壁を
有するキャピラリーを得ることを特徴とするキャピラリ
ーの製造方法が提供される。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、必要に応じて図面を参照し
つつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載におい
て量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り
重量基準とする。
【0033】(紡糸可能なキャピラリー材質)本発明に
おいては、100℃以下(好ましくは95℃以下)の温
度で紡糸することが可能なキャピラリー材質を用いる。
【0034】このような紡糸は、例えば、乾式または湿
式紡糸により行うことが可能である。本発明において
は、このように、キャピラリー外壁内(内腔)に配置さ
れるべき「コア材料」たるモノマー溶液または高分子溶
液が、安定にキャピラリー内腔に導入できる温度で紡糸
を実施することができる。
【0035】合成高分子化合物の紡糸法として、従来よ
り最も汎く用いられているのは溶融紡糸法である。しか
し、本発明の主要な態様である、キャピラリーの内腔に
泳動支持体である高分子ハイドロゲルを与えるモノマー
溶液等を充填し紡糸工程中またはその後の工程で重合を
行う方法、または、高分子溶液を充填しながら紡糸を行
う方法に於いては、該合成高分子化合物の融点より高温
で実施される溶融紡糸法は適用できない。
【0036】従来より、ポリビニールアルコール、ポリ
メチルメタクリレート、ポリ塩化ビニール、ポリアクリ
ロニトリル、レーヨン等の合成高分子化合物繊維が、工
業的に乾式または湿式防止法によって生産されてきた。
その他にも、一般に溶融紡糸法によって生産されている
ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン繊維も原理的には乾式または湿式紡糸の適用が可能で
あるが、これらの材料の場合には、溶融紡糸法と比較し
て性能および製造コストの面で著しく劣るとされて来
た。
【0037】(キャピラリー材質)本発明においては、
100℃以下の温度で紡糸することが可能である限り、
該キャピラリー(外壁)を構成する材質は特に制限され
ない。コア材料が高分子溶液またはハイドロゲルである
態様においては、該材料は疎水性であることが好まし
い。
【0038】本発明のキャピラリーを電気泳動用キャピ
ラリーとして使用する態様においては、キャピラリー材
質としては、疎水性であり、かつ機械的物性が良いこと
と、微量分離成分を高感度で検出・定量するための優れ
た光学的透明性(即ち、紫外・可視部の透明性)が良好
なものが好適に使用可能である。このような点からは、
合成高分子化合物の中で最も光学的透明性に優れ、非晶
性の構造を有するポリメチルメタクリレートが特に好適
に使用可能である。
【0039】ポリメチルメタクリレートは、ガラス転移
温度が高く、硬くかつ剛性に富んでおり、しかも成形
性、加工性にも優れており、電気泳動用キャピラリーと
して使用する態様において特に好適な特性を有してい
る。
【0040】(乾式または湿式紡糸法)乾式または湿式
紡糸法は、いずれも、高分子化合物を溶媒に溶解し紡糸
原液として、これを口金を通じて押し出すことにより紡
糸する方法である。
【0041】乾式法の場合には、加熱気体中で紡糸原液
の溶媒を蒸発させ、高分子を繊維状に固化させる。他
方、湿式法の場合には、高分子が溶解せず、しかも紡糸
原液の溶媒と相容性のある凝固溶液中で、溶媒と凝固溶
液とを置換することにより、高分子を繊維状に固化させ
る。
【0042】本発明における中空繊維であるキャピラリ
ーを、乾式または湿式紡糸法で作製する場合には、無腔
の繊維を作製する口金の代わりに、中空繊維を作製する
口金(即ち口金孔内に中空細管を有する環状オリフィス
からなる口金)を用いて、無腔の繊維の場合と同様の方
法で実施することが可能である。
【0043】しかしながら、中空繊維を作製するには、
紡糸原液を該環状オリフィスから押し出すと同時に、該
口金孔内に施置された中空細管を通して、気体または液
体を該中空繊維内腔に連続的かつ定量的に押し出し、内
腔を維持して紡糸する必要があり、無腔の繊維を作製す
るより、はるかに困難である。
【0044】従来より、主として湿式紡糸法によりレー
ヨン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、エチレ
ン/ビニルアルコール共重合体(EVAL)、ポリスルホ
ン、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート等の高分子
化合物の中空繊維が、人工透析用の中空糸膜として工業
生産されている。
【0045】(ポリメチルメタクリレート製キャピラリ
ー)本発明において、特に好適に用いられる方法は、
(例えば、ポリメチルメタクリレート製の)キャピラリ
ーを乾式または湿式紡糸法によって作製する方法であ
る。しかし上記したように、中空繊維の製造は無腔の繊
維の製造と比較して格段に困難であるため、下記に示す
ような製造法で実施することが好ましい。
【0046】(ステレオコンプレックス)本発明におい
ては、より良好な中空繊維の紡糸性という点からは、立
体規則性としてアイソタクチック(Iso)部分を有す
るポリメチルメタクリレートと、シンジオタクチック
(Syn)部分を有するポリメチルメタクリレートとか
らなるステレオコンプレックス現象を利用して、ポリメ
チルメタクリレート製キャピラリーを製造することが好
ましい。本発明のキャピラリーが「ステレオコンプレッ
クス」であることは、例えば、核磁気共鳴(NMR)ス
ペクトル測定により好適に確認することが可能である。
より具体的には、本発明において「ステレオコンプレッ
クス」ポリメチルメタクリレートは、2%〜50%(更
には10%〜30%)のIso部分を有することが好ま
しい。
【0047】上記したIso部分とSyn部分とは、同
一ポリメチルメタクリレート分子内に存在していても良
く、異なるポリメチルメタクリレート分子に存在しても
良い。ポリメチルメタクリレートのIso部分とSyn
部分は、特定の溶媒中でステレオコンプレックスを形成
し、ゲル化することが知られている。該ステレオコンプ
レックスゲルは明確なゾルーゲル転移温度を有してお
り、該ゾルーゲル転移温度より低温ではゲル状態で、該
ゾルーゲル転移温度より高温ではゾル状態であり、温度
に対して可逆的である(W.H.Watanabe、et al J. Ph
ys. Chem., 65, 896, 1961)。
【0048】(ステレオコンプレックスの形成方法)上
記のステレオコンプレックスを形成するためには、核磁
気共鳴(NMR)スペクトル測定から得られるIso部
分、Syn部分およびヘテロタクチック部分の含有量を
triad(ポリマー分子鎖中の連続した3個のモノマー単
位の立体規則性)で表し、それぞれI,S,Hとする
と、0.1<I/S<10およびI+S>Hの条件を満
足することが必須である。
【0049】上記ステレオコンプレックスを形成する際
に使用すべき溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ア
セトン、アセチルイソブチレート、アセトニトリル、ジ
メチルスルホキシド、四塩化炭素、テトラヒドロフラ
ン、メチルメタクリレートモノマー、トルエン、ベンゼ
ン、ジオキサン等、およびこれらの混合溶媒から適宜選
択して使用することが可能である。
【0050】ステレオコンプレックスを利用した選択透
過性を有する含水ポリメチルメタクリレート中空繊維お
よび、その製造方法が特許出願(特開昭49−1083
20号)されている。該特許出願に於いては、先ず上記
ステレオコンプレックス形成溶媒の中で水と相溶性のあ
る溶媒中に、Iso部分とSyn部分を有するポリメチ
ルメタクリレートを該ステレオコンプレックスのゾルー
ゲル転移温度より高温で溶解し、紡糸原液を作製する。
次いで、口金孔内に中空細管を有する環状オリフィスか
ら、該紡糸原液を該ステレオコンプレックスのゾルーゲ
ル転移温度より高温で押し出しすと同時に、口金孔内の
中空細管を用いて気体または液体を中空繊維の内腔に連
続的に導入する。
【0051】該環状オリフィスから押し出された紡糸原
液を直ちに冷却することによってステレオコンプレック
スを形成させ、ゲル化した中空繊維を水を必須成分とす
る凝固浴中に導入し、紡糸溶媒を水に置換することによ
って透明性の高い含水ポリメチルメタクリレート中空繊
維を得る技術が開示されている。
【0052】本発明のキャピラリーの好適な一態様たる
ポリメチルメタクリレートから成るキャピラリーは、該
特許に開示された技術によって作製された含水ポリメチ
ルメタクリレート中空繊維を乾燥することによって作製
することも可能である。この場合は、コア材料(例え
ば、高分子ハイドロゲルまたは高分子水溶液等の電気泳
動用支持体)を該ポリメチルメタクリレート中空繊維内
に充填する際、従来公知の方法で行わなければならず、
前にも述べたように支持体の充填操作の煩雑さ等のいく
つかの難点を有する。
【0053】一方、本発明の、より好ましい他の方法
は、ステレオコンプレックス形成能を有するポリメチル
メタクリレート紡糸原液を口金から押し出す際に、該口
金に設置された中空細管を用いて、該中空繊維内腔に電
気泳動用支持体の高分子ハイドロゲルを与えるアクリル
アミド等のモノマー、架橋剤および重合開始剤を含有す
る電気泳動用媒体溶液を導入し、紡糸工程またはその後
の工程で、該モノマー溶液を重合し、高分子ハイドロゲ
ルをポリメチルメタクリレート中空繊維の内腔に形成さ
せる方法である。
【0054】また重合性モノマーのかわりに、電気泳動
用支持体である高分子化合物の電気泳動用媒体溶液を、
該中空細管を通じてポリメチルメタクリレート中空繊維
の内腔に導入しながら紡糸することも可能である。
【0055】電気泳動用支持体を与える重合性モノマー
溶液、または高分子溶液のキャピラリー内腔への導入
は、一定の吐出量でギアポンプ等を用いて行うことが可
能である。
【0056】上記の「支持体を充填したポリメチルメタ
クリレートからなるキャピラリー」を作製する場合に
は、紡糸原液を口金から押し出した後、直ちに冷却して
ステレオコンプレックスを形成させ、加熱気体中で紡糸
溶媒を蒸発させる乾式紡糸法が湿式紡糸法よりも好適で
ある。更にまた紡糸原液の溶媒として、ステレオコンプ
レックス形成能があり水と非相溶の溶媒、例えば、トル
エン、四塩化炭素、ベンゼンまたはその混合溶媒を選択
する方法が、該中空繊維内腔に導入する電気泳動用支持
体の水溶液と溶け合わないという点で好適である。
【0057】しかし、電気泳動用支持体として、高分子
溶液を中空繊維内腔に導入する場合は、重合性モノマー
を導入して重合する場合と異なり、特開昭59−108
320号に開示された湿式紡糸法が適用できる。即ち、
内腔に電気泳動用支持体としての高分子溶液が充填され
た含水ポリメチルメタクリレート中空繊維を湿式紡糸法
により製造した後、該中空繊維を電気泳動用媒体中に浸
漬し、物質透過性を有する含水ポリメチルメタクリレー
ト中空繊維壁を通じて内腔の高分子溶媒を電気泳動用媒
体に置換することが可能であり、その後、該中空繊維を
急速に乾燥することにより、ポリメチルメタクリレート
中空繊維壁中の水分のみを蒸発させ支持体高分子の電気
泳動用媒体溶液を内腔に充填した、ポリメチルメタクリ
レートから成るキャピラリーを作製することが可能であ
る。
【0058】ここで、ステレオコンプレックスのゾルー
ゲル転移温度は、Iso, Syn部分の混合割合、ステ
レオコンプレックス形成溶媒の種類、ポリマー濃度等に
よって制御することができ、適宜選択することが可能で
ある。また、形成されたステレオコンプレックスゲルの
機械的強度はIso, Syn 部分の混合割合、ステレ
オコンプレックス形成溶媒の種類、ポリマー濃度、ポリ
マーの平均分子量、および温度等によって制御可能であ
り、適宜選択できる。
【0059】紡糸原液の調製は、IsoおよびSyn部
分を有するポリメチルメタクリレートをステレオコンプ
レックスを形成する混合割合で、ステレオコンプレック
ス溶媒中に該ゾルーゲル温度以上で溶解することによっ
て行うことが可能である。
【0060】該紡糸原液のポリメチルメタクリレート濃
度は、約5〜50重量%(更には、約10〜30重量
%)であることが好ましい。該紡糸原液の粘度は、紡糸
温度で100ポイズ以上5000ポイズ以下(更には5
00ポイズ以上2000ポイズ以下)の範囲であること
が好ましい。この際の「粘度」測定方法の詳細に関して
は、文献(例えば、田所宏行ら編、近代工業化学19、
第273頁、落球粘度計、朝倉書店、1966年)を参
照することができる。
【0061】また紡糸温度は、良好な紡糸性という点か
らは、該紡糸原液のステレオコンプレックスのゾルーゲ
ル転移温度よりも5℃以上、好ましくは10℃以上高い
温度であることが好ましい。また、ポリメチルメタクリ
レートからなるキャピラリーの外径、内径、壁厚等の形
状は、紡糸原液中のポリメチルメタクリレート濃度、口
金の環状オリフィスの内径および外径、紡糸原液の吐出
量、ローラによる巻き取り速度等によって適宜制御する
ことができる。
【0062】以上、ステレオコンプレックスを利用した
ポリメチルメタクリレート製キャピラリーの製造方法を
主として述べてきた。前記したように、中空繊維の紡糸
は無腔繊維の紡糸よりも格段に困難であり、口金から押
し出された直後に冷却することによってゲル化する、即
ち、固化するステレオコンプレックスの性質が中空繊維
形性に大きく寄与している。本発明においては、良好な
紡糸性という点からは、上記ステレオコンプレックス形
成を利用してキャピラリーを形成することが好ましい
が、もちろん、本発明においてステレオコンプレックス
形成を利用することなく、乾式または湿式紡糸法によっ
てキャピラリーを製造することも可能である。
【0063】(Iso, Syn 部分を有するポリメチ
ルメタクリレート)Iso, Syn 部分を有するポリ
メチルメタクリレート合成はそれぞれ、従来公知の重合
法によって行うことが可能である。特にIso 部分を
多く含有するポリメチルメタクリレートの重合法として
は、グリニヤ触媒等を用いたイオン重合法が、またSy
n 部分を多く含有するポリメチルメタクリレートの重
合法としては低温ラジカル重合法がそれぞれ好適に用い
られる。
【0064】本発明に好適に使用可能なポリメチルメタ
クリレートはメチルメタクリレート単独重合体に限定さ
れることなく、ステレオコンプレックス形成能が維持さ
れる限りメチルメタクリレート以外のモノマーとの共重
合体も使用することが出来る。
【0065】(支持体としての高分子ハイドロゲルおよ
び高分子水溶液)高分子ハイドロゲルとして最も一般的
に用いられているものは、架橋ポリアクリルアミド・ハ
イドロゲルであり、従来公知の重合法によって合成する
ことができる。
【0066】キャピラリーゲル電気泳動の性能は、主と
して架橋ポリアクリルアミドゲルの物性によって決ま
り、重合時のモノマー濃度およびメチレンビスアクリル
アミド等の架橋剤濃度を適宜、選択することによって制
御することができる。
【0067】一方、高分子水溶液に用いられる高分子と
しては、セルロース誘導体、デキストラン、非架橋ポリ
アクリルアミド、アガロース等、従来公知の高分子が使
用可能であり、分子ふるいとしての性能は、主として該
高分子の分子量および濃度によって決まる。一方、電気
泳動用溶媒としては、従来公知の電解質水溶液が使用可
能である。
【0068】(キャピラリーのモジュール化)本発明の
紡糸法で得られる高分子(例えば、ポリメチルメタクリ
レート等)からなるキャピラリーは、連続的にローラー
上に規則正しく並列に巻き取ることが可能であり、粘着
テープまたは接着剤等を用いて、所定の長さを有する複
数のキャピラリーが規則正しく平面上に並んだシートを
作製することが可能である。このようにキャピラリーを
複数本並べてなる「マルチタイプ」のキャピラリーゲル
は、複数個の試料を同時に測定できる電気泳動法に効果
的に応用が可能である。
【0069】以下、実施例により本発明を更に具体的に
説明する。
【0070】
【実施例】実施例1 温度−78℃で開始剤としてt−BuMgBr(モノマ
ー重量に対して約2%)を用いてメチルメタクリレート
・モノマーをイオン重合することによって得られたIs
o部分を多く含有するポリメチルメタクリレート(I=
94%、H=6%;重量平均分子量、約150万)50
gと、低温(0℃)で開始剤として、クメンヒドロキシ
ペルオキシドとFe塩を用いてメチルメタクリレート・
モノマーをラジカル重合することによって得られたSy
n部分を多く含有するポリメチルメタクリレート(I=
10%、H=35%、S=55% ;Mw=約70万)
250gとを、1200gのジメチルスルホキシドに1
00℃で撹拌下に溶解して、ポリメチルメタクリレート
濃度が約20重量%の紡糸原液を作製した。
【0071】上記で得た紡糸原液は、約70℃以下でス
テレオコンプレックスを形成しゲル化することが観察さ
れた。該紡糸原液の粘度は、90℃で約1000ポイズ
であった。
【0072】別に、上記紡糸原液から作成されるべき中
空繊維内腔に充填する液として、0.5重量%のヒドロ
キシプロピルメチルセルロース(シグマ社製)のジメチ
ルスルホキシド溶液を作製した。
【0073】本実施例で使用した紡糸装置は通常の溶液
紡糸法で使用されるもので、原液槽および口金装置部分
は熱媒によって加温および保温が可能なものであった。
本実施例で使用した口金は、口金孔内の中空細管と外径
2mm内径0.5mmの環状オリフィスから成ってい
る。
【0074】上記で得た濃度が約20重量%のポリメチ
ルメタクリレート紡糸原液を90℃で脱気した後に、ギ
ヤポンプによって上記紡糸装置の環状オリフィスから約
2.5ml/分の吐出量で押し出すと同時に、口金孔腔
内の中空細管を通じて、上記で得た0.5重量%のヒド
ロキシプロピルメチルセルローズのジメチルスルホキシ
ド溶液を該中空繊維の内腔にギアポンプによって導入し
た。
【0075】口金から押し出された中空繊維を約10℃
に冷却した空気によって冷却し、ステレオコンプレック
スを形成させてゲル化し、口金下約2mの場所に−5℃
に冷却した25%のジメチルスルホキシド水溶液からな
る凝固槽に導入し、凝固槽中のローラーに巻き取った
(湿式紡糸法)。中空繊維の巻き取り速度は約10m/
minであった。
【0076】次いで、上記によりローラーに巻き取った
中空繊維を、室温で電気泳動用媒体である2mmのエチ
レンジアミンテトラアセテイックアシッド(EDT
A)、および0.5μg/mlのエチジウムブロマイド
を含有する89mMのトリス−ホウ酸水溶液中に1日間
(24時間)浸漬して、ヒドロキシプロピルメチルセル
ローズの溶媒であるジメチルスルホキシドを上記の電気
泳動用媒体で置換した後、空気中で一昼夜、風乾するこ
とにより、電気泳動用支持体が充填されたポリメチルメ
タクリレート製キャピラリーを作製した。上記の工程で
得られたポリメチルメタクリレート製キャピラリーの外
径は、約350μm、内径は約100μmであった。
【0077】実施例2 実施例1で用いたIso部分を多く含むポリメチルメタ
クリレートとSyn部分を多く含むポリメチルメタクリ
レートとを1:5の割合(重量比)でトルエン中に10
0℃で溶解して、ポリメチルメタクリレート濃度が約2
0重量%の紡糸原液を作製した。該紡糸原液は約70℃
以下でステレオコンプレックスを形成しゲル化すること
が観察された。該紡糸原液の粘度は90℃で約850ポ
イズであった。
【0078】別に、上記紡糸原液から作成されるべき中
空繊維内腔に充填する液として、7Mの尿素を含有する
89mmのトリス−ホウ酸水溶液中に、5重量%のアク
リルアミドモノマー、0.15重量%のメチレンビスア
クリルアミドおよび0.01重量%の過硫酸アンモニウ
ムをそれぞれ加えた溶液を作製した。
【0079】上記のポリメチルメタクリレート紡糸原液
を約90℃で脱気した後、ギアポンプを用いて実施例1
で用いた紡糸装置の口金から押し出すと同時に、口金孔
内の中空細管を通じて該中空繊維内腔に上記のアクリル
アミドモノマー、架橋剤および重合開始剤の電気泳動用
媒体溶液をギアポンプによって導入した。
【0080】口金から押し出された紡糸原液を約10℃
に冷却した空気によって冷却し、ステレオコンプレック
スを形成させた後、約50℃の加熱空気中を通過させ、
紡糸溶媒であるトルエンを蒸発させ固化させローラーに
巻き取った。中空繊維の巻き取り速度は約12m/mi
nであった。
【0081】次に、上記によりローラーに巻き取った中
空繊維を、約60℃で数時間(約6時間)放置して、該
中空繊維内腔のアクリルアミドモノマーを重合させるこ
とによって、該内腔に配置された、架橋ポリアクリルア
ミド・ハイドロゲルからなる支持体を得た。上記の工程
で得られたポリメチルメタクリレート製キャピラリーの
外径は約330μm、内径は約110μmであった。
【0082】実施例3 実施例1で作製した支持体が充填されたポリメチルメタ
クリレート製キャピラリーを、キャピラリー電気泳動装
置(Perkin Elmer ABI Prism 310 GeneticAnalyze
r)に装着した。このキャピラリー電気泳動装置を用
い、サンプルとしてDNA分子量マーカー(ΦX174
DNAの制限酵素HaeIII 消化物、ニツポンジーン社
製)を用いて、25℃で印加電圧200V/cmで30
分間電気泳動させた。上記の電気泳動後、蛍光検出によ
って、上記DNA分子量マーカーの分離パターン(A)
を得た。
【0083】上記とは別に、実施例1で用いた0.5重
量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを、実施例
1で用いた電気泳動用媒体(ジメチルスルホキシド)に
溶解して作製した電気泳動用支持体を、市販の溶融シリ
カ製キャピラリー(内径75μm、外径375μm、J
&W Scientific社製)に充填することによって作製し
た電気泳動用の充填キャピラリーを用いた以外は上記と
同様の方法により、電気泳動により分離し、蛍光検出し
て、上記DNA分子量マーカーの分離パターン(B)を
得た。
【0084】上記2種類の電気泳動より得られたDNA
分子量マーカーの分離パターン(A)および(B)は、
相互に極めて類似したものであった。
【0085】実施例4 実施例2で作製し支持体が充填されたポリメチルメタク
リレート製キャピラリーを、キャピラリー電気泳動装置
(Perkin Elemen ABI Prism 310 GeneticAnalyzer
)に装着した。
【0086】分離用サンプルとして、塩基配列が既知の
DNA(M13mp18; AppliedBiosystems-Perkin
Elmer社製)をテンプレートとし、R110,R6G、
TAMRA、ROXの蛍光試薬(これらの試薬は全てAp
plied Biosystems-Perkin Elmer社製)でラベルされた
プライマーを用いてサイクルシークエンシング反応を行
ったもの(該反応に用いた試薬は全てApplied Biosyste
ms-Perkin Elmer社製)を用いて25℃で200V/c
mで30分間泳動させた。ここで用いた「サイクルシー
クエンシング反応」の詳細については、例えば、文献
(馬場嘉信、分析化学、44、883、1995)を参
照することができる。
【0087】上記電気泳動後のDNAサンプルを実施例
3と同様に蛍光検出して、該DNAサンプルの分離パタ
ーンを得た。
【0088】上記とは別に、実施例2で用いたアクリル
アミドモノマーの電気泳動用媒体溶液を、実施例3で用
いた市販の溶融シリカ製キャピラリーに充填し、60℃
で数時間放置することによって架橋ポリアクリルアミド
・ハイドロゲルが充填された電気泳動用キャピラリーを
作製した。このようにして得た電気泳動用キャピラリー
を用いた以外は、上記方法と同様の条件で電気泳動およ
び蛍光検出を行い、上記DNAの分離パターン(D)を
得た。
【0089】上記2種類の方法により得られたDNAサ
ンプルの分離パターン(C)および(D)は、相互の類
似性が良好であった。
【0090】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、高分子
からなる中空管状の外壁を有するキャピラリーであっ
て、該外壁の前記高分子が100℃以下の温度で紡糸さ
れてなることを特徴とするキャピラリーが提供される。
【0091】本発明によれば、更に、ポリマーまたはモ
ノマーを含むコア材料と、これを囲む外壁とを少なくと
も有する複層構造キャピラリーであって、前記外壁の形
成と実質的に同時に、該コア材料が該外壁内へ充填され
てなることを特徴とする複層構造キャピラリーが提供さ
れる。
【0092】本発明によれば、更に、高分子を乾式また
は湿式紡糸により中空管状の外壁に加工して、該外壁を
有するキャピラリーを得ることを特徴とするキャピラリ
ーの製造方法が提供される。
【0093】本発明のキャピラリー材質は、該キャピラ
リー外壁を構成する前記高分子が100℃以下の低い温
度で紡糸(例えば、乾式または湿式紡糸)することが可
能な高分子化合物から成っている。したがって、該高分
子を紡糸してキャピラリーを連続的に作製するに際し
て、必要に応じて、該キャピラリー内腔に他の材料(例
えば、電気泳動用支持体)を充填して、複層構造キャピ
ラリーを得ることが可能となる。
【0094】即ち、本発明によれば、連続紡糸法により
所望の材料があらかじめ充填された複層構造キャピラリ
ーを均一な高品質で、しかも低コストで製造することが
可能となり、従来のキャピラリー内腔への泳動支持体を
充填するという繁雑な工程が必須でなくなるのみなら
ず、キャピラリー部分を1回限りの使い捨てにすること
が可能となる。
【0095】本発明の複層構造キャピラリーを、例え
ば、電気泳動用のキャピラリーとして用いた場合には、
従来のキャピラリーゲル電気泳動の問題点である大きな
電気浸透流、低い機械的強度、泳動用支持体の低い安定
性等を著しく改善することが可能となる。
【0096】更に、本発明の複層構造キャピラリーを、
例えば、電気泳動用キャピラリーとして用いた場合に
は、電気泳動用支持体を充填してなる低コストのキャピ
ラリーであって、かつ1回限りの使い捨てにすることが
可能な電気泳動用キャピラリーとなる。
【0097】このようなキャピラリーを電気泳動用に使
用することにより、電気泳動用キャピラリーの調製操作
の労力・手間を大幅に削減し、例えば、ヒトゲノムDNA
の遺伝情報の解読のためのDNA塩基配列の決定、DNA
の変異を検出することによる遺伝子診断、鑑定などを低
コストで、迅速に行うことが可能となる。
【0098】本発明のキャピラリーは、その特性(均一
性、高品質、低コスト等)を活かして、電気泳動以外の
用途、例えば、高パフォーマンスクロマトグラフィー
(HPLC)等にも好適に使用可能である。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高分子からなる中空管状の外壁を有する
    キャピラリーであって、該外壁の前記高分子が100℃
    以下の温度で紡糸されてなることを特徴とするキャピラ
    リー。
  2. 【請求項2】 前記外壁が、乾式または湿式紡糸により
    形成されてなる請求項1記載のキャピラリー。
  3. 【請求項3】 前記高分子化合物が、疎水性の合成高分
    子である請求項1記載のキャピラリー。
  4. 【請求項4】 前記疎水性の合成高分子化合物がポリメ
    チルメタクリレートである請求項1記載のキャピラリ
    ー。
  5. 【請求項5】 前記ポリメチルメタクリレートが、アイ
    ソタクチック部分とシンジオタクチック部分から成るス
    テレオコンプレックスを形成している請求項4記載のキ
    ャピラリー。
  6. 【請求項6】 前記外壁に囲まれた中空部に、ポリマー
    またはモノマーを含むコア材料が配置されてなる請求項
    1記載のキャピラリー。
  7. 【請求項7】 ポリマーまたはモノマーを含むコア材料
    と、これを囲む外壁とを少なくとも有する複層構造キャ
    ピラリーであって、 前記外壁の形成と実質的に同時に、該コア材料が該外壁
    内へ充填されてなることを特徴とする複層構造キャピラ
    リー。
  8. 【請求項8】 高分子を乾式または湿式紡糸により中空
    管状の外壁に加工して、該外壁を有するキャピラリーを
    得ることを特徴とするキャピラリーの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記高分子を紡糸して前記外壁を形成す
    るに際し、ハイドロゲル形成性のモノマー、架橋剤およ
    び重合開始剤からなる混合物溶液を該外壁内の中空部に
    導入し、 該混合物溶液紡糸工程またはその後の工程で重合反応を
    行うことにより、ハイドロゲルが充填された複層構造キ
    ャピラリーを得る請求項8記載のキャピラリーの製造方
    法。
  10. 【請求項10】 前記高分子を紡糸して前記外壁を形成
    するに際し、高分子溶液を該外壁内の中空部に導入する
    ことにより、該高分子溶液が充填された複層構造キャピ
    ラリーを得る請求項8記載のキャピラリーの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記高分子がポリメチルメタクリレー
    トである請求項8〜10のいずれかに記載のキャピラリ
    ーの製造方法。
  12. 【請求項12】 前記ポリメチルメタクリレートのアイ
    ソタクチック部分とシンジオタクチック部分からなるス
    テレオコンプレックスを形成させつつ、該ポリメチルメ
    タクリレートからなる外壁を形成する請求項11記載の
    キャピラリーの製造方法。
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