JPWO2002103766A1 - 走査露光方法及び走査型露光装置、並びにデバイス製造方法 - Google Patents
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Abstract
パルス光源(16)からのパルス光によりマスク(R)上の照明領域(42R)を照明し、マスクと感光物体(W)とを同期移動して、マスクのパターンを感光物体上に転写する走査露光の際に、主制御装置(50)は、マスクと感光物体との走査速度が最大走査速度に設定される高感度領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御を行う。パルス光源(16)は、パルスエネルギを所定範囲内で可変であり、パルスエネルギを変更可能な範囲で、露光パルス数を最小露光パルス数に維持する。従って、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることが可能となる。また、消費エネルギを抑制できるので、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。
Description
技術分野
本発明は、走査露光方法及び走査型露光装置、並びにデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、例えば半導体素子、液晶表示素子、撮像素子(CCD等)又は薄膜磁気ヘッド等を製造するためのリソグラフィ工程中で使用されるパルスレーザ光源を用いた走査露光方法及び走査型露光装置、並びにこれらを用いるデバイス製造方法に関する。
背景技術
従来より、半導体素子等を製造する際に、マスクとしてのレチクルのパターンを投影光学系を介してフォトレジストが塗布されたウエハ(又はガラスプレート等)上の各ショット領域に転写露光する投影露光装置が使用されている。
この種の装置としては、従来、ウエハが搭載されたウエハステージを静止した状態で、ウエハ上のショット領域にレチクルパターンを一括して転写する一括露光型の投影露光装置、例えばステッパなどが主として用いられていた。かかる投影露光装置では、ウエハの各ショット領域内の各点に対する積算露光量(積算露光エネルギ)を適正範囲内に収めるための露光量制御を行う必要がある。このため、ステッパ等の一括露光型の投影露光装置では、露光光源として超高圧水銀ランプのような連続光源、又はエキシマレーザ光源のようなパルスレーザ光源の何れを使用する場合でも、露光量制御方法としては基本的にはカットオフ制御が採用されていた。このカットオフ制御では、感光材料(フォトレジスト)が塗布されたウエハへの露光光の照射中にその露光光の一部を分岐してインテグレータセンサと呼ばれる光電検出器に導き、このインテグレータセンサを介して間接的にウエハ上での露光量を検出し、この検出結果の積算値が当該感光材料で必要とされる積算露光量(以下、「設定露光量」と呼ぶ)に対応する所定のレベル(クリティカルレベル)を超えるまでレーザ発光を続ける(連続光の場合にはクリティカルレベルを超えたらシャッタを閉め始める)というような制御が行われていた。
しかし、近年では、投影光学系に対する負担をあまり重くすることなく、より大面積のパターンを高精度にウエハ上に転写できるようにするために、レチクルのパターンの一部を投影光学系を介してウエハ上に投影した状態で、レチクル及びウエハを投影光学系に対して同期して走査することによりレチクルのパターンをウエハ上の各ショット領域に逐次転写露光する、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型の投影露光装置(以下、単に、「走査型露光装置」とも呼ぶ)が主流となりつつある。
この種の走査型露光装置では、ウエハ上の1点だけに着目した露光量制御が適用できないために、上述したカットオフ制御が適用できない。そこで、走査型露光装置、特にパルス光源を用いる装置では、第1の制御方式として、単純に各パルス照明光の光量を積算して露光量制御を行う方式(オープン露光量制御方式)が採用されていた。この第1の制御方式においては、所望の露光量制御の直線性を得るために次の関係が成立するように、即ち、露光パルス数が整数になるように、パルスエネルギを微調する必要がある。
設定露光量(S0)=パルス数(N)×1パルスの平均エネルギ(p)
……(1)
ここで、1パルスの平均エネルギpは露光直前にインテグレータセンサにて計測される値である。このため、光路中にパルスエネルギ微変調器が設けられていた。
更に、露光光源としてパルス光源を用いる場合においては、パルス光毎にエネルギのばらつきを有するため、ある一定数(以下、「最小露光パルス数」と呼ぶ)以上の複数のパルス光で露光することにより、所望の露光量制御精度再現性を得ている。
ところで、レーザパルス光源などのパルス光源を用いる走査型露光装置の場合には、次の式も満足しなければいけない。
V=Ws/N×f ……(2)
上式において、Vはウエハ(ウエハステージ)の走査露光時の走査速度、Wsはウエハ面上でのスリット状露光領域の走査方向の幅(スリット幅)、Nは1点当たりの露光パルス数、fは光源からのパルス光の発光繰り返し周波数(以下、適宜「繰り返し周波数」と呼ぶ)を示す。
従来の走査型露光装置では、スリット幅Wsは通常固定であり、ウエハ面におけるパルス光のエネルギは、減光手段を用いて小さくすることは容易であるが、所定の値より大きくすることはできない。このため、設定露光量が大きい低感度領域の場合には、走査露光中にウエハ上の1点当たりに与えられる積算エネルギを大きくするため、繰り返し周波数fを大きくするか、走査速度Vを小さくする必要がある。しかし、繰り返し周波数fには光源の性能上の上限があり、一方、走査速度Vを小さくすることはスループットの低下につながるため、むやみに走査速度Vを小さくできない。このため、低感度領域においては、繰り返し周波数を最大値fmaxに維持してかつ走査速度Vを可能な限り大きくなるように設定する必要がある。この結果、(2)式の関係からわかるように、露光パルス数Nを最小露光パルス数Nminに維持することはできない。
また、例えば高感度レジストが用いられる、設定露光量が小さい高感度領域では、式(1)から明らかなように、パルスレーザ光源からのレーザ光をそのまま使用したのでは、最小露光パルス数以上での露光ができなくなる。そこで、このように設定露光量が小さいときには、例えば光路に設置された減光手段によりパルスレーザ光を減光することにより、最小露光パルス数以上のパルス数で露光できるようにしていた。
上述した減光手段としては、レボルバと呼ばれる回転自在の円板上に透過率(=1−減光率)の異なる複数個のNDフィルタを配置したものを、1又は複数段配置して成るエネルギ粗調器が用いられ、それぞれのレボルバを回転することにより、入射するパルス光に対する透過率を100%から複数段階で切り換えるようになっていた。すなわち、かかるエネルギ粗調器による透過率の設定は、離散的なもの(通常、等比級数的)になっている。
このため、特に高感度領域においては、設定露光量によっては、それに対応した(比例した)減光率を設定することが困難な場合があり、かかる設定露光量の場合には、設定露光量に対応した減光率以下での減光率の組み合わせの内で最も近い減光率となるようなNDフィルタを選択する他なく、1点当たりの露光パルス数Nを、NDフィルタ透過率の離散分(理想的な連続可変エネルギ変調器で設定される設定露光量に対応した減光率からの差分)だけ最小露光パルス数Nminより大きな値に設定していた。
このように、従来のパルス光源を用いる走査型露光装置では、低感度領域は勿論、高感度領域(通常、スループットを高く維持する観点から走査速度は最高速度に維持される)においても、露光量制御精度再現性を重視する観点から、露光パルス数については、最小露光パルス数Nmin以上に設定するという条件以外の条件は殆ど考慮されていなかった。
このため、消費パルスの無駄な消費、これに伴なうコストの上昇、ひいてはパルス光源及び光学系の劣化による寿命の低下などを招いていた。特に、エキシマレーザなどのレーザガスを用いるパルス光源では、そのガス消費の増加もも招いていた。
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止することが可能な走査露光方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止することが可能な走査型露光装置を提供することにある。
本発明の第3の目的は、マイクロデバイスを生産性良く製造することができるデバイス製造方法を提供することにある。
発明の開示
本発明は、第1の観点からすると、パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査露光方法において、走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御を行うことを特徴とする第1の走査露光方法である。
ここで、「露光パルス数」とは、走査露光中に感光物体上の1点当りに照射されるパルス光の数を意味する。本明細書においては、かかる意味で「露光パルス数」なる用語を用いる。
これによれば、走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御が行われる。このため、本発明によれば、従来殆ど考慮されていなかった、露光パルス数の一定化、より具体的には最小露光パルス数を維持するという手法により、マスクと感光物体とが最大走査速度(スキャン最高速)で同期移動される露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域(高感度領域)では、設定露光量に無関係に最小消費エネルギでの露光が行われることとなる。また、この場合、上記の高感度領域において最小露光パルス数で露光が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。従って、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることが可能となる。また、消費エネルギを抑制できるので、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。
この場合において、前記露光量制御は、感光物体面上に照射されるパルス光の前記感光物体面上における1パルス当たりのエネルギ密度を変更することにより行われることとすることができる。
この場合において、感光物体面上に照射されるパルス光の前記感光物体面上における1パルス当たりのエネルギ密度の変更は、種々の方法を用いることができるが、例えば前記1パルス当たりのエネルギ密度の変更は、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギ及びパルス光を減光する減光装置の減光率の少なくとも一方を変更することにより行われることとすることができる。
本発明の第1の走査露光方法では、前記パルス光源として、パルスエネルギを所定範囲内で可変なレーザ光源を用いる場合、前記パルスエネルギを変更することにより、前記露光パルス数を最小露光パルス数にすることとすることができる。
この場合において、前記パルスエネルギの変更は、前記レーザ光源の発振に関する所定の制御ファクタを制御することによって行われることとすることができる。なお、前記パルスエネルギの変更で用いる制御ファクタは1つ及び複数のいずれでも良い。
この場合において、レーザ光源としては種々のレーザ光源を用いることができるが、例えば前記レーザ光源としてガスレーザ光源などを用いても良く、この場合には、前記制御ファクタとして、例えばレーザ光源での印加電圧(又は充電電圧)やレーザチューブ内のガス状態などを含むこととすることができる。特に前記レーザ光源として、高圧電源を備え、希ガス及びハロゲンガスを含むレーザガスを用いるパルスレーザ光源を用いることとしても良い。この場合には、例えば前記パルスエネルギの変更は、前記制御ファクタとして前記高圧電源での電源電圧を制御することによって行われることとすることもできるし、あるいは前記パルスエネルギの変更は、前記制御ファクタとして前記希ガス及び前記ハロゲンガスの少なくとも一方のガス状態を制御することによって行われることとすることもできる。後者の場合、前記制御対象のガス状態は、ガス圧を含むこととすることができる。
本発明の第1の走査露光方法では、前記パルス光源と前記感光物体との間に配置された前記パルス光を減光する減光装置の減光率を変更することにより、前記露光パルス数を最小露光パルス数にすることとすることができる。この場合、減光装置は、減光率を離散的に設定するものであっても良いし、連続的に設定するものであっても良い。
本発明の第1の走査露光方法では、前記走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち、前記露光パルス数を最小露光パルス数に維持しない前記所定値を超える露光量の設定領域では、前記パルス光源のパルス発光の繰り返し周波数及び露光パルス数を調整して前記最大走査速度を維持するような露光量制御を行うこととすることができる。かかる場合には、前述の所定値以下の露光量の設定領域で、前述と同様に、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図るとともに、消費エネルギの抑制により、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長化を図ることができることに加え、最大走査速度を得るのに必要なパルス発光の繰り返し周波数が最大周波数以内の領域では、少なくとも設定露光量に無関係に最大走査速度での走査露光が可能となり、スループットを最も高く維持することが可能になる。
本発明は、第2の観点からすると、パルス光源からのパルス光に対しマスクと感光物体とをそれぞれ同期移動し、前記マスクを介して前記パルス光で前記感光物体を走査露光する走査露光方法において、前記走査露光時に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度が最高走査速度に設定される露光量設定領域のうち、所定値以下の露光量の設定領域では露光パルス数を最小露光パルス数に維持し、かつ前記所定値を超える露光量の設定領域では前記露光パルス数を前記最小露光パルス数よりも多くする露光量制御を行うことを特徴とする第2の走査露光方法である。
これによれば、走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御が行われる。このため、従来殆ど考慮されていなかった、露光パルス数の一定化、より具体的には最小露光パルス数を維持するという手法により、マスクと感光物体とが最大走査速度(スキャン最高速)で同期移動される露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域(高感度領域)では、設定露光量に無関係に最小消費エネルギでの露光が行われることとなる。また、この場合、上記の高感度領域において最小露光パルス数で露光が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。また、所定値を超える露光量の設定領域では前記露光パルス数を前記最小露光パルス数よりも多くする露光量制御が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。従って、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることが可能となる。また、消費エネルギを抑制できるので、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。
この場合において、前記パルス光源のパルス発光の安定特性に応じて、前記走査露光時とそれ以外の時(すなわち、走査露光と異なる少なくとも1つの動作、例えばマスク(レチクル)のアライメント動作などが行われる時)とで、前記パルス光源の中立設定を異ならせることとすることができる。
本発明の第2の走査露光方法では、前記パルス光源からのパルス発光が休止したとき、再開後に検出したパルスエネルギの値に基づいて、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶された休止時間学習テーブルを逐次更新することとすることができる。
本発明は、第3の観点からすると、パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査露光方法であって、前記パルス光源からのパルス発光が休止したとき、再開後に前記パルス光源のパルスエネルギの値を検出する工程と;前記検出されたパルスエネルギの値に基づいて、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶された設定エネルギ毎の休止時間学習テーブルを逐次更新する工程と;を含む第3の走査露光方法である。
これによれば、パルス光源からのパルス発光が休止したとき、再開後にパルス光源のパルスエネルギの値を検出し、その検出されたパルスエネルギの値に基づいて、パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶された設定エネルギ毎の休止時間学習テーブルを逐次更新する。このため、同じ休止時間で設定エネルギが変わったときなどにおいても、これに影響を受けることのない最適なパルスエネルギの制御が可能となる。なお、休止時間学習テーブルは、休止時間毎に持たせることとしても良い。
本発明は、第4の観点からすると、パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査型露光装置であって、前記マスクと感光物体とを同期して所定の走査方向に駆動する駆動系と;走査露光の際に、設定露光量に応じ前記駆動系を介して前記マスクと感光物体との同期移動を制御するとともに、前記同期移動時における前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に設定する露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御を行う制御装置と;を備える第1の走査型露光装置である。
これによれば、走査露光の際に、制御装置により、駆動系を介してマスクと感光物体との同期移動が制御されるとともに、同期移動時におけるマスクと感光物体と少なくとも一方でその走査速度が最大走査速度に設定される露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域(高感度領域)では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御が行われる。このため、本発明によれば、従来殆ど考慮されていなかった、露光パルス数の一定化、より具体的には最小露光パルス数を維持するという手法により、マスクと感光物体とが最大走査速度(スキャン最高速)で同期移動される領域のうちの高感度領域では、設定露光量に無関係に最小消費エネルギでの露光が行われることとなる。また、この場合、上記の高感度領域において最小露光パルス数で露光が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。従って、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることが可能となる。また、消費エネルギを抑制できるので、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。
この場合において、前記制御装置は、前記露光量制御に際して、感光物体面上に照射されるパルス光の前記感光物体面上における1パルス当たりのエネルギ密度を変更することとすることができる。
この場合において、前記パルス光源からのパルス光を減光する減光装置を更に備える場合には、前記制御装置は、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギ及びパルス光を減光する減光装置の減光率の少なくとも一方を変更することにより、前記1パルス当たりのエネルギ密度を変更することとすることができる。
この場合において、前記減光装置がその減光率が離散的に設定可能な場合には、前記制御装置は、前記露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御に際し、前記減光装置を用いて減光を行うときには、前記走査露光中における前記パルス光源のパルス発光の繰り返し周波数が前記最大走査速度条件下における前記最小露光パルス数に対応する周波数に維持できるように、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギを調整することとすることができる。
本発明の第1の走査型露光装置では、感光物体面上に照射されるパルス光の感光物体面上における1パルス当たりのエネルギ密度を変更するに際し、前記パルス光源が、パルスエネルギを所定範囲内で可変なレーザ光源である場合には、前記制御装置は、前記パルスエネルギを変更することにより、前記1パルス当たりのエネルギ密度を変更することとすることができる。
この場合において、前記制御装置は、前記レーザ光源の発振に関する所定の制御ファクタを制御して前記パルスエネルギを変更することとすることができる。なお、前記パルスエネルギの変更で用いる制御ファクタは1つ及び複数のいずれでも良い。
この場合において、前記レーザ光源として種々のレーザ光源を用いることができるが、例えば前記レーザ光源としてガスレーザ光源などを用いても良く、この場合には、前記制御ファクタとして、例えばレーザ光源での印加電圧(又は充電電圧)やレーザチューブ内のガス状態などを含むこととすることができる。特に前記レーザ光源として、高圧電源を備え、希ガス及びハロゲンガスを含むレーザガスを用いるパルスレーザ光源を用いることもできる。
この場合において、前記制御装置は、前記制御ファクタとして前記高圧電源での電源電圧を制御することとすることもできる、あるいは、前記制御装置は、前記制御ファクタとして前記希ガス及び前記ハロゲンガスの少なくとも一方のガス状態を制御することとすることもできる。後者の場合、前記制御対象のガス状態は、ガス圧を含むこととすることができる。
本発明の第1の走査型露光装置では、前記制御装置は、前記走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち、前記露光パルス数を最小露光パルス数に維持しない前記所定値を超える露光量の設定領域では、前記パルス光源のパルス発光の繰り返し周波数及び露光パルス数を調整して前記最大走査速度を維持するような露光量制御を行うこととすることができる。
本発明の第1の走査型露光装置では、前記制御装置は、前記パルス光源のパルス発光の安定特性に応じて、走査露光時とそれ以外の時(すなわち、走査露光と異なる少なくとも1つの動作、例えばマスク(レチクル)のアライメント動作などが行われる時)とで、前記パルス光源の中立設定を異ならせることとすることができる。
本発明の第1の走査型露光装置では、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶されるとともにその更新が可能な設定エネルギ毎の休止時間学習テーブルを更に備えることとすることができる。
本発明は、第5の観点からすると、パルス光源からのパルス光に対しマスクと感光物体とをそれぞれ同期移動し、前記マスクを介して前記パルス光で前記感光物体を走査露光する走査型露光装置であって、前記マスクと感光物体とを同期して所定の走査方向に駆動する駆動系と;走査露光の際に、前記走査露光時に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度が最高走査速度に設定される露光量設定領域のうち、所定値以下の露光量の設定領域では露光パルス数を最小露光パルス数に維持し、かつ前記所定値を超える露光量の設定領域では前記露光パルス数を前記最小露光パルス数よりも多くする露光量制御を行う制御装置と;を備える第2の走査型露光装置である。
これによれば、走査露光の際に、制御装置により、駆動系を介してマスクと感光物体との同期移動が制御されるとともにマスクと感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御が行われる。このため、従来殆ど考慮されていなかった、露光パルス数の一定化、より具体的には最小露光パルス数を維持するという手法により、マスクと感光物体とが最大走査速度(スキャン最高速)で同期移動される露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域(高感度領域)では、設定露光量に無関係に最小消費エネルギでの露光が行われることとなる。また、この場合、上記の高感度領域において最小露光パルス数で露光が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。また、制御装置により、所定値を超える露光量の設定領域では前記露光パルス数を前記最小露光パルス数よりも多くする露光量制御が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。従って、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることが可能となる。また、消費エネルギを抑制できるので、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。
本発明は、第6の観点からすると、パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査型露光装置であって、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶されるとともにその更新が可能な休止時間学習テーブルを、設定エネルギ毎に備える第3の走査型露光装置である。
これによれば、同じ休止時間で設定エネルギが変わったときなどにおいても、これに影響を受けることのない最適なパルスエネルギの制御が可能となる。なお、休止時間学習テーブルは、休止時間毎に持たせることとしても良い。
また、リソグラフィ工程において、本発明の第1〜第3の走査露光方法のいずれかを用いることにより、露光量制御精度を維持しつつ、感光物体上にマスクに形成されたパターンを精度良く転写することができ、その際、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることができるとともに、消費エネルギを抑制できる。従って、高集積度のマイクロデバイスを高精度でかつ生産コストを低減して製造することができる。また、同様に、リソグラフィ工程において、本発明の第1〜第3の走査型露光装置のいずれかを用いて露光をおこなうことにより、高集積度のマイクロデバイスを高精度でかつ生産コストを低減して製造することができる。特に、本発明の第2の走査型露光装置を用いて露光を行う場合、より高精度な露光量制御が可能となり、感光物体上にパターンを精度良く形成することができる。従って、本発明は、更に別の観点からすると、本発明の第1〜第3の走査露光方法のいずれかを用いるデバイス製造方法、あるいは本発明の第1〜第3の走査型露光装置のいずれかを用いるデバイス製造方法であるとも言える。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1には、一実施形態の走査型露光装置10の概略構成が示されている。この走査型露光装置10は、露光用光源にパルス光源としてのエキシマレーザ光源を用いたステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置である。
この走査型露光装置10は、パルス光源16を含む照明系12、この照明系12により照明されるマスクとしてのレチクルRを保持して所定の走査方向に移動するマスクステージとしてのレチクルステージRST、レチクルRのパターンを感光物体としてのウエハW上に投影する投影光学系PL、ウエハWを保持して水平面(XY平面内)を移動するXYステージ14、及びこれらの制御系等を備えている。
前記照明系12は、パルス光源16、ビーム整形光学系18、減光装置としてのエネルギ粗調器20、オプティカルインテグレータ(フライアイレンズ、内面反射型インテグレータ、又は回折光学素子などであり、図1ではフライアイレンズを用いているので、以下では「フライアイレンズ」とも呼ぶ)22、照明系開口絞り板24、ビームスプリッタ26、第1リレーレンズ28A、第2リレーレンズ28B、視野絞りとしてのレチクルブラインド(本実施形態では固定レチクルブラインド30Aと可動レチクルブラインド30Bとから成る)、光路折り曲げ用のミラーM及びコンデンサレンズ32等を備えている。なお、以下においては、照明系12を構成するパルス光源16以外の構成部分を纏めて適宜「照明光学系」と呼ぶ。
ここで、この照明系12の上記構成各部について説明する。パルス光源16としては、一例として、1パルス当たりのパルスエネルギEをEmin(例えば8mJ/pulse)〜Emax(例えば10mJ/pulse)の範囲で変更可能であり、かつパルス発光の繰り返し周波数fをfmin(例えば600Hz)〜fmax(例えば2000Hz)の範囲内で変更可能なKrFエキシマレーザ光源(発振波長248nm)が用いられているものとする。以下においては、パルス光源16を「エキシマレーザ光源16」と呼ぶ。
なお、上記と同様のパルスエネルギと繰り返し周波数の変更機能を有するものであれば、このエキシマレーザ光源16に代えて、ArFエキシマレーザ光源(発振波長193nm)やF2レーザ光源(発振波長157nm)は勿論、金属蒸気レーザ光源やYAGレーザの高調波発生装置等のパルス光源を使用することも可能である。
ビーム整形光学系18は、エキシマレーザ光源16からパルス発光されたレーザビームLBの断面形状を、該レーザビームLBの光路後方に設けられたフライアイレンズ22に効率よく入射するように整形するもので、例えばシリンダレンズやビームエキスパンダ(いずれも図示省略)等で構成される。
エネルギ粗調器20は、ビーム整形光学系18後方のレーザビームLBの光路上に配置され、ここでは、回転板34の周囲に透過率(=1−減光率)の異なる複数個(例えば6個)のNDフィルタ(図1ではその内の2個のNDフィルタ36A、36Dが示されている)を配置し、その回転板34を駆動モータ38で回転することにより、入射するレーザビームLBに対する透過率を100%から等比級数的に複数段階で切り換えることができるようになっている。駆動モータ38は、後述する主制御装置50によって制御される。なお、その回転板34と同様の回転板を2段配置し、2組のNDフィルタの組み合わせによってより細かく透過率を調整できるようにしてもよい。
前記フライアイレンズ22は、エネルギ粗調器20後方のレーザビームLBの光路上に配置され、レチクルRを均一な照度分布で照明するためにその射出側焦点面に多数の点光源から成る面光源、すなわち2次光源を形成する。この2次光源から射出されるレーザビームを以下においては、「パルス照明光IL」と呼ぶものとする。
フライアイレンズ22の射出面近傍、すなわち本実施形態では照明光学系の瞳面とほぼ一致するその射出側焦点面に、円板状部材から成る照明系開口絞り板24が配置されている。この照明系開口絞り板24には、ほぼ等角度間隔で、例えば通常の円形開口より成る開口絞り、小さな円形開口より成りコヒーレンスファクタであるσ値を小さくするための開口絞り、輪帯照明用の輪帯状の開口絞り、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置して成る変形開口絞り(図1ではこのうちの2種類の開口絞りのみが図示されている)等が配置されている。この照明系開口絞り板24は、後述する主制御装置50により制御されるモータ等の駆動装置40により回転されるようになっており、これによりいずれかの開口絞りがパルス照明光ILの光路上に選択的に設定される。なお、開口絞り板24の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えば照明光学系内に交換して配置される複数の回折光学素子、照明光学系の光軸に沿って可動なプリズム(円錐プリズム、多面体プリズムなど)、及びズーム光学系の少なくとも1つを含む光学ユニットを、光源16とオプティカルインテグレータ22との間に配置し、オプティカルインテグレータ22がフライアイレンズであるときはその入射面上での照明光の強度分布、オプティカルインテグレータ22が内面反射型インテグレータであるときはその入射面に対する照明光の入射角度範囲などを可変とすることで、照明光学系の瞳面上での照明光の光量分布(2次光源の大きさや形状)、すなわち照明条件の変更に伴なう光量損失を抑えることが望ましい。
照明系開口絞り板24後方のパルス照明光ILの光路上に、反射率が小さく透過率の大きなビームスプリッタ26が配置され、更にこの後方の光路上に、固定レチクルブラインド30A及び可動レチクルブラインド30Bを介在させて第1リレーレンズ28A及び第2リレーレンズ28Bから成るリレー光学系が配置されている。
固定レチクルブラインド30Aは、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置され、レチクルR上で照明領域42Rを規定する矩形開口が形成されている。また、この固定レチクルブラインド30Aの近傍に走査方向に対応する方向の位置及び幅が可変の開口部を有する可動レチクルブラインド30Bが配置され、走査露光の開始時及び終了時にその可動レチクルブラインド30Bを介して照明領域42Rを更に制限することによって、不要な部分の露光が防止されるようになっている。さらに、可動レチクルブラインド30Bは走査方向と直交する非走査方向に対応する方向に関しても開口部の幅が可変であり、ウエハ上に転写すべきレチクルRのパターンに応じて照明領域42Rの非走査方向の幅を調整できるようになっている。なお、本実施形態では固定レチクルブラインド30Aをデフォーカスして配置することで、レチクルR上での照明光ILの走査方向に関する強度分布をほぼ台形状としているが、他の構成を採用する、例えば周辺部で減光率が徐々に高くなる濃度フィルタ、あるいは照明光を部分的に回折させる回折光学素子などを照明光学系内に配置して、照明光ILの強度分布を台形状としても良い。また、本実施形態では固定レチクルブラインド30Aと可動レチクルブラインド30Bとを設けているが、固定レチクルブラインドを設けないで可動レチクルブラインドのみとしても良い。
リレー光学系を構成する第2リレーレンズ28B後方のパルス照明光ILの光路上には、当該第2リレーレンズ28Bを通過したパルス照明光ILをレチクルRに向けて反射する折り曲げミラーMが配置され、このミラーM後方のパルス照明光ILの光路上にコンデンサレンズ32が配置されている。
一方、ビームスプリッタ26で反射されたパルス照明光ILは、集光レンズ44を介して光電変換素子よりなるインテグレータセンサ46で受光され、インテグレータセンサ46の光電変換信号が、不図示のピークホールド回路及びA/D変換器を介して出力DS(digit/pulse)として主制御装置50に供給される。インテグレータセンサ46としては、例えば遠紫外域で感度があり、且つエキシマレーザ光源16のパルス発光を検出するために高い応答周波数を有するPIN型のフォトダイオード等が使用できる。このインテグレータセンサ46の出力DSと、ウエハWの表面上でのパルス照明光ILの照度(露光量)との相関係数は予め求められて、主制御装置50に併設されたメモリ51内に記憶されている。
前記レチクルステージRST上にレチクルRが載置され、不図示のバキュームチャック等を介して吸着保持されている。レチクルステージRSTは、水平面(XY平面)内で微小駆動可能であるとともに、レチクルステージ駆動部48によって走査方向(ここでは図1の紙面左右方向であるY軸方向とする)に所定ストローク範囲で走査されるようになっている。この走査中のレチクルステージRSTの位置は、レチクルステージRST上に固定された移動鏡52Rを介して外部のレーザ干渉計54Rによって計測され、このレーザ干渉計54Rの計測値が主制御装置50に供給されるようになっている。なお、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工してレーザ干渉計54Rの反射面(前述の移動鏡52Rの反射面に相当)を形成しても良い。
前記投影光学系PLとしては、例えば両側テレセントリックな縮小系であり、共通のZ軸方向の光軸AXを有する複数枚のレンズエレメントから成る屈折系が用いられている。また、この投影光学系PLの投影倍率γは、例えば1/4又は1/5である。このため、前記の如くして、パルス照明光ILによりレチクルR上の照明領域42Rが照明されると、そのレチクルRに形成されたパターンが投影光学系PLによって投影倍率γで縮小された像が表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上のスリット状の露光領域(照明領域42Rに共役な領域)42Wに形成される。
前記XYステージ14は、ウエハステージ駆動部56によってXY面内で走査方向であるY軸方向及びこれに直交するX軸方向(図1における紙面直交方向)に2次元駆動されるようになっている。このXYステージ14上に、Zチルトステージ58が搭載され、このZチルトステージ58上に不図示のウエハホルダを介してウエハWが真空吸着等により保持されている。Zチルトステージ58は、ウエハWのZ方向の位置(フォーカス位置)を調整すると共に、XY平面に対するウエハWの傾斜角を調整する機能を有する。また、XYステージ14の位置は、Zチルトステージ58上に固定された移動鏡52Wを介して外部のレーザ干渉計54Wにより計測され、このレーザ干渉計54Wの計測値が主制御装置50に供給されるようになっている。なお、Zチルトステージ58(又はXYステージ14)などの端面を鏡面加工して、レーザ干渉計54の反射面(前述の移動鏡52Wの反射面に相当)を形成しても良い。
さらに、図示は省略されているが、レチクルRの上方には、例えば特開平7−176468号公報及びこれに対応する米国特許第5,646,413号などに詳細に開示されるように、CCD等の撮像素子を有し、露光波長の光(本実施形態ではパルス照明光IL)をアライメント用照明光とする画像処理方式の一対のレチクルアライメント顕微鏡が配置されている。この場合、一対のレチクルアライメント顕微鏡は、投影光学系PLの光軸AXを含むYZ平面に関して対称(左右対称)な配置で設置されている。また、この一対のレチクルアライメント顕微鏡は光軸AXを通るXZ面内でX軸方向に往復移動が可能な構造となっている。本国際出願で指定した指定国又は選択した選択国の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応する上記米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
通常、一対のレチクルアライメント顕微鏡は、レチクルRがレチクルステージRST上に載置された状態で、レチクルRの遮光帯の外側に配置された一対のレチクルアライメントマークをそれぞれ観察可能な位置に設定されている。
制御系は、図1中、制御装置としての主制御装置50によって主に構成される。主制御装置50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はミニコンピュータ)を含んで構成され、露光動作が的確に行われるように、例えばレチクルRとウエハWの同期走査、ウエハWのステッピング、露光タイミング等を統括して制御する。
具体的には、主制御装置50は、例えば走査露光時には、レチクルRがレチクルステージRSTを介して+Y方向(又は−Y方向)に速度VRで走査されるのに同期して、XYステージ14を介してウエハWが露光領域42Wに対して−Y方向(又は+Y方向)に速度γ・VR(γはレチクルRからウエハWに対する投影倍率)で走査されるように、レーザ干渉計54R、54Wの計測値に基づいてレチクルステージ駆動部48、ウエハステージ駆動部56をそれぞれ介してレチクルステージRST、XYステージ14の位置及び速度をそれぞれ制御する。また、ステッピングの際には、主制御装置50ではレーザ干渉計54Wの計測値に基づいてウエハステージ駆動部56を介してXYステージ14の位置を制御する。このように、本実施形態では、主制御装置50、レーザ干渉計54R、54W、レチクルステージ駆動部48、ウエハステージ駆動部56、レチクルステージRST、及びXYステージ14によって、駆動系が構成されている。
また、主制御装置50では、制御情報TSをエキシマレーザ光源16に供給することによって、エキシマレーザ光源16の発光タイミング、及び発光パワー等を制御する。また、主制御装置50は、エネルギ粗調器20、照明系開口絞り板24をモータ38、駆動装置40をそれぞれ介して制御し、更にステージ系の動作情報に同期して可動レチクルブラインド30Bの開閉動作を制御する。このように本実施形態では、主制御装置50が、露光量制御装置及びステージ制御装置の役目をも有している。これらの制御装置を主制御装置50とは別に設けても良いことは勿論である。
次に、本実施形態の走査型露光装置10の露光量制御系の構成について図2に基づいて説明する。
図2には、図1の走査型露光装置10の露光量制御に関連する構成部分が取り出されて示されている。この図2に示されるように、エキシマレーザ光源16の内部には、レーザ共振器16a、ビームスプリッタ16b、エネルギモニタ16c、エネルギコントローラ16d及び高圧電源16e等が設けられている。
前記レーザ共振器16aは、例えば放電電極を含むエキシマレーザチューブ(レーザチャンバ)、該エキシマレーザチューブの後側(図2における紙面内左側)に配置された全反射ミラー(リアミラー)、エキシマレーザチューブの前側(図2における紙面内右側)に配置された低反射率ミラー(フロントミラー)、並びにエキシマレーザチューブとフロントミラーとの間に順次配置された固定のファブリ・ペロー・エタロン(Fabry−Perot etalon)及び可変傾角のファブリ・ペロー・エタロン等(いずれも図示省略)を含んで構成することができる。この場合、リアミラーとフロントミラーとによって、共振器が構成され、コヒーレンシを少し高めるようにされる。また、固定のファブリ・ペロー・エタロンと可変傾角のファブリ・ペロー・エタロンとによって、狭帯域化モジュールが構成される。この狭帯域化モジュールによって、レーザ共振器16aから射出されるレーザビームLBのスペクトル幅を、ここでは自然発振スペクトル幅の約1/100〜1/300程度に狭めて出力する。また、可変傾角のエタロンの傾角を調整することにより、レーザ共振器16aから射出されるレーザビームLBの波長(中心波長)を所定範囲でシフトできるようになっている。
なお、狭帯域化モジュールを、例えばプリズムと回折格子(グレーティング)とを組み合わせたものなどによって構成することも可能である。
前記エキシマレーザチューブ内には、所定の混合比のレーザガス(これは媒体ガスであるクリプトンKr、フッ素F2及びバッファガスであるヘリウムHeから成る)が充填されている。エキシマレーザチューブには、不図示の排気バルブを介して例えばフレキシブルなチューブから成る排気管が接続されている。また、エキシマレーザチューブには、不図示の給気バルブを介してフレキシブルなガス供給管の一端が接続され、このガス供給管の他端はKr、F2、Heなどのガスボンベ(図示省略)に接続されている。
上記各バルブは、主制御装置50によって開閉制御される。主制御装置50は、例えばガス交換の際等に、エキシマレーザチューブ内のレーザガスが所定の混合比及び圧力になるように調整する。また、主制御装置50は、エキシマレーザ光源16の発振に関する制御ファクタ(又は制御パラメータ)を制御することで、エキシマレーザ光源16の出力(レーザビームLBのパルスエネルギ)を変更する。ここで、パルスエネルギの変更で用いる制御ファクタは1つ及び複数のいずれでも良いが、本実施形態ではエキシマレーザ光源16の印加電圧(又は充電電圧)とエキシマレーザチューブ内のガス状態とをそれぞれ制御ファクタとして独立に制御するとともに、ガス状態は少なくとも1つのレーザガス(Kr、F2、Heなど)のガス圧であるものとする。なお、エキシマレーザ光源16の制御ファクタは後述するエネルギコントローラ16dにより制御され、エネルギコントローラ16dは主制御装置50から送出される1パルス当たりのパルスエネルギの目標値に基づき、エキシマレーザ光源16から射出されるレーザビームLBのパルスエネルギがその目標値とほぼ一致するように、前述した2つの制御ファクタの少なくとも一方を制御する。ここで、制御ファクタとしてガス状態を制御する場合、エネルギコントローラ16dは、レーザガスの圧力を検出する不図示のセンサの出力に応じて、例えば希ガス(Kr)及びハロゲン(F2)などのガス圧を制御する。また、エキシマレーザチューブ内部では、レーザの発振時には、不図示のファンによって常時レーザガスが循環される。
図2において、レーザ共振器16aからパルス的に放出されたレーザビームは、透過率が高く僅かな反射率を有するビームスプリッタ16bに入射し、ビームスプリッタ16bを透過したレーザビームLBが外部に射出される。また、ビームスプリッタ16bで反射されたレーザビームが光電変換素子より成るエネルギモニタ16cに入射し、エネルギモニタ16cからの光電変換信号が不図示のピークホールド回路を介して出力ESとしてエネルギコントローラ16dに供給されている。エネルギモニタ16cの出力ESに対応するエネルギの制御量の単位は(mJ/pulse)である。通常の発光時には、エネルギコントローラ16dは、エネルギモニタ16cの出力ESが、主制御装置50より供給された制御情報TS中の1パルス当たりのエネルギの目標値に対応した値となるように、高圧電源16eでの電源電圧(前述の印加電圧又は充電電圧に対応)をフィードバック制御する。また、エネルギコントローラ16dは、レーザ共振器16aに供給されるエネルギを高圧電源16eを介して制御することにより発振周波数をも変更する。すなわち、エネルギコントローラ16dは、主制御装置50からの制御情報TSに応じてエキシマレーザ光源16の発振周波数を主制御装置50で指示された周波数に設定するとともに、エキシマレーザ光源16での1パルス当たりのエネルギが主制御装置50で指示された値となるように高圧電源16eの電源電圧のフィードバック制御を行なう。
また、エキシマレーザ光源16内のビームスプリッタ16bの外側には、主制御装置50からの制御情報に応じてレーザビームLBを遮光するためのシャッタ16fも配置されている。この他、図示は省略されているが、エキシマレーザ光源16を統括制御する制御装置も設けられており、主制御装置50からの指令(制御情報)とは別に、制御装置はエキシマレーザ光源16に設けられた各種センサの出力などに応じて、シャッタ16fの開閉、レーザビームLBの中心波長の設定やスペクトル幅(波長幅)の狭帯域化、及びレーザガスの交換、混合比やガス圧の調整などを独自に制御できるようになっている。
次に、本実施形態の走査型露光装置10の基本的な露光量制御シーケンスについて、主制御装置50内のCPUの制御アルゴリズムを示す図3のフローチャートを参照して説明する。
なお、実際には、インテグレータセンサ46の出力DSが、図1のZチルトステージ58上で像面(即ち、ウエハの表面)と同じ高さに設置された不図示の基準照度計の出力に対して予め較正(キャリブレーション)され、これによって像面照度とインテグレータセンサ46の出力との関係を示す変換係数αが、照明条件(照明光学系の瞳面上での照明光ILの光量分布)毎に求められる。そして、露光に先立って、そのインテグレータセンサ46と、エキシマレーザ光源16内のエネルギモニタ16cとを用いて、照明条件毎の変換係数αとインテグレータセンサ46の出力DSより間接的に求められる像面上での露光量、すなわちインテグレータセンサ46の処理量p(mJ/(cm2・pulse))と、エキシマレーザ光源16内のエネルギモニタ16cの出力ES(mJ/pulse)との相関関係を示す所定の制御テーブルが作成される。
但し、以下の説明では、簡単のためインテグレータセンサ46とエネルギモニタ16cとの相関が1次関数で表され、そのオフセットは0とみなすことができ、その傾きを変換係数βとして扱えるものとする。即ち、インテグレータセンサ46の処理量p(mJ/(cm2・pulse))、及び変換係数βを用いて、次式よりエネルギモニタ16cの出力ES(mJ/pulse)を算出できるものと仮定する。
ES=β・p ……(3)
なお、特に前述した光学ユニットが設けられているときは、上記の変換係数βについても、その光学ユニットによって可変となるオプティカルインテグレータ22への照明光の入射条件毎に求めることが好ましい。また、照明系12を構成する照明光学系や投影光学系PLのパルス照明光ILの透過率変動などを考慮して変換係数α、βを計算にて更新するようにすることが望ましい。
また、エネルギ粗調器20の透過率は設定露光量全般での露光時間を最小にするために、離散透過率は等比数列になるように設計されているものとする。
先ず、図4のステップ102において、オペレータによりコンソール等の入出力装置62(図1参照)を介して設定露光量S0が設定されるのを待ち、設定露光量S0が設定されると、次のステップ104に進み、レーザビームLBの1パルス当たりのエネルギEを最小エネルギ値Emin(8mJ/pulse)に、繰り返し周波数fを最小周波数fmin(600Hz)に設定する。すなわち、このようにして、パルスエネルギとその繰り返し周波数の中立設定を行う。
次のステップ106ではエキシマレーザ光源16に複数回(例えば数100回)パルス発光を行わせて、インテグレータセンサ46の出力を積算することによって、間接的にウエハW上での平均パルスエネルギ密度p(mJ/(cm2・pulse))を計測する。この計測は、例えば、可動レチクルブラインド30Bを駆動して、その開口を完全に閉じ、照明光ILがレチクルR側に達するのを阻止した状態で行われる。勿論、XYステージ14を駆動してウエハWを退避させた状態で行なっても良い。
次のステップ108では次式(4)により露光パルス数Nを算出する。
N=cint(S0/p) ……(4)
ここで、関数cintは小数点以下1桁目の値の四捨五入を表すものとする。
次のステップ110でその露光パルス数Nが、必要な露光量制御再現精度を得るための最小露光パルス数Nmin以上であるかどうかを判断する。ここで、最小露光パルス数Nminは、例えば予め計測されて装置定数として設定されているパルスエネルギのばらつき(3σの値)δpの平均パルスエネルギ密度pに対する比δp/pに基づいて求められる値である。本実施形態では、例えばNmin=40であるものとする。
そして、このステップ110における判断が否定された場合、すなわち露光パルス数Nが最小露光パルス数Nminより小さい場合には、ステップ111に移行して、図1のエネルギ粗調器20のNDフィルタにより設定可能な透過率の中からS0/(Nmin×p)より小さく、かつ最も近いNDフィルタを選択して設定した後、上記ステップ106の処理を再び行ない、選択されたND条件での平均パルスエネルギ密度p=ptを新たに求め、この平均パルスエネルギ密度ptを用いて、ステップ108の処理を再び行う。このようにしてステップ110の判断が肯定された場合又は当初からステップ110の判断が肯定された場合(N≧Nminの場合)には、ステップ112に移行する。なお、ここで、当初からステップ110の判断が肯定された場合の平均パルスエネルギ密度pは、上記の選択されたND条件での平均パルスエネルギ密度ptと同様にN≧Nminを満たすので、以下では、ptとして扱うものとする。
ステップ112では、上記ステップ106で求めたエネルギ密度ptを用いて、次式(5)に基づいて前述した変換係数βを算出する。勿論、これに限らず、前述した制御テーブルを予め求めておく場合には、この制御テーブルから、平均パルス密度ptに対応する変換係数βを算出するようにしても良い。
β=Emin/pt ……(5)
次のステップ113では次式(6)により、レーザビームLBの1パルス当たりのエネルギ設定値Et(mJ/pulse)を算出し、ステップ114に移行する。
Et=β×S0/Nmin ……(6)
ステップ114では上記のエネルギ設定値Etが設定可能な最大エネルギEmax(ここでは、10mJ/pulse)以下であるか否かを判断する。そして、この判断が肯定された場合には、ステップ115に進んでエネルギ設定値Etをエネルギコントローラ16dに供給した後、ステップ118に移行する。これにより、エネルギコントローラ16dにより、1パルスのエネルギEがEtに設定される。
この一方、前述したステップ114における判断が否定された場合、すなわち先に算出したエネルギ設定値Etが設定可能な最大エネルギEmaxより大きい場合には、このようなエネルギの設定は不可能なので、ステップ116に進んでエネルギ設定値としてEt=Emaxをエネルギコントローラ16dに供給する。これにより、エネルギコントローラ16dにより、1パルスのエネルギEがEmaxに設定される。
この場合、N=Nminとはならないので、次のステップ117に進んで次式(7)に従って露光パルス数Nを計算した後、ステップ118に移行する。
N=β×S0/Emax ……(7)
ステップ118ではスキャン速度V=スキャン最高速(Vmax)として繰り返し周波数fを次式(8)により算出する。
f=int(Vmax×N/Ws) ……(8)
ここで、関数int(a)は、実数aを超えない最大の整数を表すものとする。
そして、次のステップ119では、上で算出した繰り返し周波数fがレーザの持つ最大繰り返し周波数fmax以下であるか否かを判断する。そして、この判断が肯定された場合には、ステップ120に進み、エネルギコントローラ16dを介して繰り返し周波数fを上で算出した値に設定し、次のステップ122でスキャン目標速度(スキャン速度)をスキャン最高速Vmaxに設定する。
一方、上記ステップ119の判断が否定された場合は、上で算出した繰り返し周波数fの設定は不可能であるから、ステップ126に移行する。このステップ126では、エネルギコントローラ16dを介して繰り返し周波数fを最大発振周波数fmaxに設定した後、ステップ128に進んで、スキャン速度Vを次式(9)に基づいて設定する。
V=Ws×fmax/N ……(9)
そして、ステップ130では、それまでのステップで定まった設定条件(V、f、E、N)にて、ウエハW上の指定されたショット領域に、走査露光方式でレチクルRのパターンを転写する。
上記の走査露光の終了後、ステップ132で全てのショット領域に対する露光が終了したか否かを判断し、この判断が否定された場合、すなわち露光すべきショット領域が残っている場合には、ステップ130に戻り、上記走査露光を次ショット領域に対して行う。
このようにして、露光すべき全てのショット領域に対する露光処理が終了した時点で本ルーチンの一連の処理を終了する。
また、上記では特に説明をしなかったが、本実施形態では、露光開始に先立って、パルス照明光ILをアライメント光として用いる前述した一対のレチクルアライメント顕微鏡により、レチクルR上の一対のレチクルアライメントマーク(不図示)の像とXYステージ14上の不図示の基準マーク板に形成されたレチクルアライメント用基準マークの投影光学系PLを介した像とを同時に観察し、両マーク像の相対位置関係を計測するレチクルアライメントが行われる。そして、主制御装置50は、その相対位置関係とそのときのレチクル干渉計54R及びウエハ干渉計54Wの計測値とに基づいてレチクルパターン像の投影位置を求める。主制御装置50では、このレチクルアライメントの際のエキシマレーザ光源16のパルスエネルギとその繰り返し周波数との中立設定を、エキシマレーザ光源16のパルス発光の安定特性に応じて、必要な場合には、前述した走査露光時と異ならせることが望ましい。
ところで、発明者等が行った実験によれば、従来のパルスエネルギ10(mJ/pulse)固定の場合に、像面におけるエネルギの計測結果が、p=0.8(mJ/cm2/pulse)であり、設定露光量S0が、S0=0.8×40=32(mJ/cm2)より小さければ、NDフィルタにより減光が必要なことが確認された。これに対して、本実施形態と同様に、パルスエネルギ8(mJ/pulse)に設定した場合に、同一の光学系を用いて像面におけるエネルギの計測結果が、p=0.64(mJ/cm2/pulse)であり、設定露光量S0が、S0=0.64×40=25.6(mJ/cm2)までの範囲で、NDフィルタによる減光を必要しないことが確認された。すなわち非減光領域が広がった。
また、設定露光量S0=22(mJ/cm2)として、従来の露光量制御方法により露光量制御を行った場合、パルスエネルギ10(mJ/pulse)で、像面におけるエネルギの計測結果がp=0.8(mJ/cm2/pulse)、露光パルス数N=cint(S0/p)=28<Nmin=40となった。このため、透過率58%のNDフィルタを光路上に設定し、像面エネルギpを再計測し、露光パルス数Nを再計測した結果、p=0.464(mJ/cm2/pulse)、N=47となった。そして、エネルギ微調整を行った結果、最終的なエネルギ設定値Etは、Et=S0/N/p×10=10.09(mJ/pulse)となった。
これに対し、同一の設定露光量S0=22(mJ/cm2)として、本実施形態の露光量制御方法により露光量制御を行った場合、パルスエネルギEmin=8(mJ/pulse)で、像面におけるエネルギの計測結果がp=0.64(mJ/cm2/pulse)、露光パルス数N=cint(S0/p)=34<Nmin=40となった。このため、透過率80%のNDフィルタを光路上に設定し、再度像面エネルギpを計測し、露光パルス数Nを再計測した結果、p=0.512(mJ/cm2/pulse)、N=43となった。そして、N=Nmin=40とし、エネルギ調整を行った結果、最終的なエネルギ設定値Etは、Et=β・pt=S0/Nmin/p×8=8.59(mJ/pulse)となった。従って、この場合、パルス数が47から40に削減し、パルスエネルギが10.09mJから8.59mJに低減されたことになる。
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る走査型露光装置10及びこの走査露光時の露光量制御方法によると、高感度レジストに対応した領域において、エネルギ粗調器20の離散的な減光率の影響を受けることなく、常に(設定露光量S0の値にかかわらず)スキャン最高速(Vmax)にて露光が可能になり、露光時間が最小になる。また、低感度レジストに対応する領域でも、エキシマレーザ光源16の持つ最大繰り返し周波数fmax、かつ最大パルスエネルギEmaxでの露光となるために、露光時間を極力短くすることができる。すなわち、広範囲の設定露光領域スループットとしても最大を得ることが可能となる。
さらに、本実施形態では、スキャン最高速度Vmaxで露光が行われる高感度領域では、常に最小露光パルス数Nminでの露光が可能となるため、消費パルス数が最低となり、コストダウンが可能となる。この場合、所望の露光量再現精度を確保できるので、高精度な露光量制御が可能である。また、エキシマレーザ光源16の消費エネルギを抑制できるので、ガス消費の削減、消費電力の削減、さらには、エキシマレーザ光源16及び照明系12内の光学素子の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。すなわち、照明系12内の硝材は、レーザ光源のパルス数、パルスエネルギの両者に比例して劣化するので、本実施形態によると、パルス数が減少し、NDフィルタ(減光器)に入射するパルスエネルギが減少するので、硝材の長寿命化を達成することができる。
また、従来ほぼEmax付近にエキシマレーザ光源の出力が固定されていたが、本実施形態によると、エキシマレーザ光源16のパルスエネルギを変更できるため、パルス当たりの像面エネルギを相対的に低くでき、その分エネルギ粗調器20等を用いて減光を行わない、非減光領域を広げることができる。換言すれば、本実施形態では、同一の設定露光量に対し、より減光率の低いNDフィルタを使用することができるようになるので、エネルギ損失を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、エキシマレーザ光源16のパルスエネルギを変更しているため、高速、且つ高精度にウエハWに対するレーザビームLBの露光量を制御でき、ウエハW上の各点で所望の積算露光量を得ることができる。
しかしながら、本発明がこれに限定されるものではなく、パルスエネルギの変更に代えて、又はこれとともにレーザビームの透過率を連続的に変更可能なエネルギ変調器を用いて、像面に与えられるエネルギ密度を変更するようにしても良いことは勿論である。かかる場合には、例えば図1のエネルギ粗調器20とフライアイレンズ22との間のレーザビームLBの光路上にエネルギ変調器が配置されるとともに、ウエハW上の各点で所望の積算露光量が得られるように主制御装置50によってこれが制御されることとなる。この場合のエネルギ変調器としては、例えばパルス発光されるレーザビームLBの光路上に、所定ピッチで透過部と遮光部とが形成された固定の格子板と格子のピッチ方向に移動自在な可動の格子板とを有するダブル・グレーティング方式の変調器を用いることができる。2枚の格子板の相対的な位置をずらすことによって、レーザビームLBに対する透過率を変調できる。このようなダブル・グレーティング方式の変調器については、例えば特開平3−179357号公報及びこれに対応する米国特許第5,191,374号などに詳細に開示されており、本国際出願で指定した指定国又は選択した選択国の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応する上記米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
また、照明条件の変更によって像面照度が変化するときは、前述した走査露光時の露光条件の設定を再度行う必要がある。これは、照明条件が変更されると、照明光学系の瞳面上での照明光の光量分布(2次光源の大きさや形状)が変更される結果、像面上における平均パルスエネルギ密度p、あるいは前述した変換係数α、βなどが変化する可能性が高いからである。
なお、上記実施形態では、パルス光源としてエキシマレーザ光源を用い、主制御装置50が、エキシマレーザ光源16内の高圧電源16eでの電源電圧(Hv)やエキシマレーザチューブ内の希ガス(Kr)、ハロゲン(F2)などのガス圧などを制御することによって、パルスエネルギを変更する場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、レーザガスの温度その他のガス状態と、エキシマレーザ光源16から出力される1パルス当たりのエネルギとの間にも何らかの相関はあるので、この関係を利用してエキシマレーザ光源16のパルスエネルギを変更することとしても良い。要するに、エキシマレーザ光源16の発振に関する所定の制御ファクタ(上記の電源電圧やガス状態はこれに含まれる)を制御することによって、パルスエネルギを変更すれば良い。レーザ光源として、エキシマレーザ光源以外のレーザ光源を用いる場合にも、そのレーザ光源の発振(あるいはパルス発光)に関する制御ファクタを制御することによって、パルスエネルギを変更することとすれば良い。
さらに、本実施形態では、エキシマレーザ光源16のパルスエネルギを変更するので、エキシマレーザ光源16から出力される1パルス当たりのエネルギ(又は設定エネルギ)Eと、所定の制御ファクタ(制御パラメータ)、例えば高圧電源16eでの電源電圧(Hv)やハロゲンガス、希ガス等のガス圧などとの関係を予め求め、例えばパルス発光が休止したとき、再開後にエネルギモニタ16cで検出された値に基づいて上記関係が逐次更新される学習テーブル(いわゆる休止時間学習テーブル)を設定エネルギ毎に持たせることが望ましい。このようにすると、同じ休止時間で設定エネルギが変わったときなどにおいても、これに影響を受けることのない最適なパルスエネルギの制御が可能となる。この休止時間学習テーブルは、休止時間毎に持たせることとしても良い。
また、本実施形態のスキャン最高速度Vmaxは、レチクルステージRSTを駆動するリニアモータの推力を含むレチクルステージ駆動系の構造上の限界最高速度(上限値)であるものとしているが、この上限値でレチクルステージRSTを移動するとき、例えば要求されるレチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期精度を満たすことが困難であるときなどは、その同期精度などから上限値より小さく設定されるレチクルステージRSTの速度をスキャン最高速度Vmaxとしても良い。すなわち、スキャン最高速度Vmaxは構造的な限界最高速度に限定されるものではない。
なお、本実施形態では投影光学系PLが縮小系(倍率γ)であり、走査露光時にレチクルステージRSTの移動速度がウエハステージWSTの移動速度の、投影倍率の逆数倍(1/γ)となるので、ウエハステージよりもレチクルステージRSTの方が先に限界最高速度に達するものとして説明を行っているが、ウエハステージWSTの方が先に限界最高速度に達するときには、前述した高感度領域で、レチクルステージRSTではなくウエハステージWSTをスキャン最高速度Vmaxで移動するように露光条件を設定すれば良い。また、本実施形態では主制御装置50がエキシマレーザ光源16に指令(制御情報)を送出してパルスエネルギや繰り返し周波数などを制御するものとしたが、例えば主制御装置50は、最小露光パルス数に関する情報及びインテグレータセンサの出力をエキシマレーザ光源16に与えるだけとし、パルスエネルギや繰り返し周波数の決定は、エキシマレーザ光源16の制御装置で行うようにしても良い。さらに、本実施形態ではエキシマレーザ光源16で繰り返し周波数を可変としているが、特定の周波数ではパルスエネルギの変動が大きくなるなどしてパルス発振を行うことができないことがあるので、その場合にはその特定の周波数を考慮して露光条件(走査速度、繰り返し周波数、パルスエネルギなど)の設定を行うことが好ましい。但し、インジェクション・ロッキング方式のレーザ光源ではこの不都合が生じる可能性が小さいので、本実施形態でインジェクション・ロッキング方式のレーザ光源を採用しても構わない。
なお、上記実施形態では、本発明がステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、本発明は、スリットスキャン方式の露光装置など走査露光方式の露光装置であれば好適に適用することができる。
また、露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、プラズマディスプレイや有機ELなどの表示装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
また、上記実施形態において、レーザ光として、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
例えば、単一波長レーザの発振波長を1.51〜1.59μmの範囲内とすると、発生波長が189〜199nmの範囲内である8倍高調波、又は発生波長が151〜159nmの範囲内である10倍高調波が出力される。特に発振波長を1.544〜1.553μmの範囲内とすると、発生波長が193〜194nmの範囲内の8倍高調波、即ちArFエキシマレーザとほぼ同一波長となる紫外光が得られ、発振波長を1.57〜1.58μmの範囲内とすると、発生波長が157〜158nmの範囲内の10倍高調波、即ちF2レーザとほぼ同一波長となる紫外光が得られる。
また、発振波長を1.03〜1.12μmの範囲内とすると、発生波長が147〜160nmの範囲内である7倍高調波が出力され、特に発振波長を1.099〜1.106μmの範囲内とすると、発生波長が157〜158μmの範囲内の7倍高調波、即ちF2レーザとほぼ同一波長となる紫外光が得られる。なお、単一波長発振レーザとしてはイッテルビウム・ドープ・ファイバーレーザを用いる。
また、レーザ光源としては、波長146nmのKr2レーザ(クリプトン・ダイマーレーザ)、波長126nmのAr2レーザ(アルゴン・ダイマーレーザ)などの真空紫外光を発生する光源を使用しても良い。さらに、レーザ光源としてSOR又はレーザプラズマ光源を用いて軟X線領域のEUV光を照明光ILとしても良い。
また、投影光学系は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良いし、屈折系のみならず反射屈折系及び反射系のいずれでも良い。
《デバイス製造方法》
次に上述した露光装置をリソグラフィ工程で使用したデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
図4には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図4に示されるように、まず、ステップ201(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップ202(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ステップ203(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
次に、ステップ204(ウエハ処理ステップ)において、ステップ201〜ステップ203で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ205(デバイス組立てステップ)において、ステップ204で処理されたウエハを用いてデバイス組立てを行う。このステップ205には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
最後に、ステップ206(検査ステップ)において、ステップ205で作成されたデバイスの動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
図5には、半導体デバイスにおける、上記ステップ204の詳細なフロー例が示されている。図5において、ステップ211(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ212(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ213(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ214(イオン打ち込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ211〜ステップ214それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ215(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ216(露光ステップ)において、上で説明した走査型露光装置及び走査露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ217(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップ218(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ219(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光工程(ステップ216)において上記実施形態の走査型露光装置及び走査露光方法が用いられるので、高精度な露光量制御により精度良くレチクルのパターンをウエハ上に転写することができる。この結果、高集積度のデバイスの生産性(歩留まりを含む)を向上させることが可能になる。また、特に高感度領域では最小露光パルス数の露光によりパルスの無駄な消費の防止、これによる消費エネルギの抑制、パルス光源及び光学系の負荷軽減による長寿命化などによって、コスト面においても、その生産性の向上が可能となる。
産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明の走査露光方法及び走査型露光装置は、感光基板上にデバイスパターンを転写するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法はマイクロデバイスの製造に適している。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施形態に係る走査型露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2は、図1の装置の露光量制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
図3は、主制御装置内CPUの露光量制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図4は、本発明のデバイス製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図5は、図4のステップ204の具体例を示すフローチャートである。
本発明は、走査露光方法及び走査型露光装置、並びにデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、例えば半導体素子、液晶表示素子、撮像素子(CCD等)又は薄膜磁気ヘッド等を製造するためのリソグラフィ工程中で使用されるパルスレーザ光源を用いた走査露光方法及び走査型露光装置、並びにこれらを用いるデバイス製造方法に関する。
背景技術
従来より、半導体素子等を製造する際に、マスクとしてのレチクルのパターンを投影光学系を介してフォトレジストが塗布されたウエハ(又はガラスプレート等)上の各ショット領域に転写露光する投影露光装置が使用されている。
この種の装置としては、従来、ウエハが搭載されたウエハステージを静止した状態で、ウエハ上のショット領域にレチクルパターンを一括して転写する一括露光型の投影露光装置、例えばステッパなどが主として用いられていた。かかる投影露光装置では、ウエハの各ショット領域内の各点に対する積算露光量(積算露光エネルギ)を適正範囲内に収めるための露光量制御を行う必要がある。このため、ステッパ等の一括露光型の投影露光装置では、露光光源として超高圧水銀ランプのような連続光源、又はエキシマレーザ光源のようなパルスレーザ光源の何れを使用する場合でも、露光量制御方法としては基本的にはカットオフ制御が採用されていた。このカットオフ制御では、感光材料(フォトレジスト)が塗布されたウエハへの露光光の照射中にその露光光の一部を分岐してインテグレータセンサと呼ばれる光電検出器に導き、このインテグレータセンサを介して間接的にウエハ上での露光量を検出し、この検出結果の積算値が当該感光材料で必要とされる積算露光量(以下、「設定露光量」と呼ぶ)に対応する所定のレベル(クリティカルレベル)を超えるまでレーザ発光を続ける(連続光の場合にはクリティカルレベルを超えたらシャッタを閉め始める)というような制御が行われていた。
しかし、近年では、投影光学系に対する負担をあまり重くすることなく、より大面積のパターンを高精度にウエハ上に転写できるようにするために、レチクルのパターンの一部を投影光学系を介してウエハ上に投影した状態で、レチクル及びウエハを投影光学系に対して同期して走査することによりレチクルのパターンをウエハ上の各ショット領域に逐次転写露光する、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型の投影露光装置(以下、単に、「走査型露光装置」とも呼ぶ)が主流となりつつある。
この種の走査型露光装置では、ウエハ上の1点だけに着目した露光量制御が適用できないために、上述したカットオフ制御が適用できない。そこで、走査型露光装置、特にパルス光源を用いる装置では、第1の制御方式として、単純に各パルス照明光の光量を積算して露光量制御を行う方式(オープン露光量制御方式)が採用されていた。この第1の制御方式においては、所望の露光量制御の直線性を得るために次の関係が成立するように、即ち、露光パルス数が整数になるように、パルスエネルギを微調する必要がある。
設定露光量(S0)=パルス数(N)×1パルスの平均エネルギ(p)
……(1)
ここで、1パルスの平均エネルギpは露光直前にインテグレータセンサにて計測される値である。このため、光路中にパルスエネルギ微変調器が設けられていた。
更に、露光光源としてパルス光源を用いる場合においては、パルス光毎にエネルギのばらつきを有するため、ある一定数(以下、「最小露光パルス数」と呼ぶ)以上の複数のパルス光で露光することにより、所望の露光量制御精度再現性を得ている。
ところで、レーザパルス光源などのパルス光源を用いる走査型露光装置の場合には、次の式も満足しなければいけない。
V=Ws/N×f ……(2)
上式において、Vはウエハ(ウエハステージ)の走査露光時の走査速度、Wsはウエハ面上でのスリット状露光領域の走査方向の幅(スリット幅)、Nは1点当たりの露光パルス数、fは光源からのパルス光の発光繰り返し周波数(以下、適宜「繰り返し周波数」と呼ぶ)を示す。
従来の走査型露光装置では、スリット幅Wsは通常固定であり、ウエハ面におけるパルス光のエネルギは、減光手段を用いて小さくすることは容易であるが、所定の値より大きくすることはできない。このため、設定露光量が大きい低感度領域の場合には、走査露光中にウエハ上の1点当たりに与えられる積算エネルギを大きくするため、繰り返し周波数fを大きくするか、走査速度Vを小さくする必要がある。しかし、繰り返し周波数fには光源の性能上の上限があり、一方、走査速度Vを小さくすることはスループットの低下につながるため、むやみに走査速度Vを小さくできない。このため、低感度領域においては、繰り返し周波数を最大値fmaxに維持してかつ走査速度Vを可能な限り大きくなるように設定する必要がある。この結果、(2)式の関係からわかるように、露光パルス数Nを最小露光パルス数Nminに維持することはできない。
また、例えば高感度レジストが用いられる、設定露光量が小さい高感度領域では、式(1)から明らかなように、パルスレーザ光源からのレーザ光をそのまま使用したのでは、最小露光パルス数以上での露光ができなくなる。そこで、このように設定露光量が小さいときには、例えば光路に設置された減光手段によりパルスレーザ光を減光することにより、最小露光パルス数以上のパルス数で露光できるようにしていた。
上述した減光手段としては、レボルバと呼ばれる回転自在の円板上に透過率(=1−減光率)の異なる複数個のNDフィルタを配置したものを、1又は複数段配置して成るエネルギ粗調器が用いられ、それぞれのレボルバを回転することにより、入射するパルス光に対する透過率を100%から複数段階で切り換えるようになっていた。すなわち、かかるエネルギ粗調器による透過率の設定は、離散的なもの(通常、等比級数的)になっている。
このため、特に高感度領域においては、設定露光量によっては、それに対応した(比例した)減光率を設定することが困難な場合があり、かかる設定露光量の場合には、設定露光量に対応した減光率以下での減光率の組み合わせの内で最も近い減光率となるようなNDフィルタを選択する他なく、1点当たりの露光パルス数Nを、NDフィルタ透過率の離散分(理想的な連続可変エネルギ変調器で設定される設定露光量に対応した減光率からの差分)だけ最小露光パルス数Nminより大きな値に設定していた。
このように、従来のパルス光源を用いる走査型露光装置では、低感度領域は勿論、高感度領域(通常、スループットを高く維持する観点から走査速度は最高速度に維持される)においても、露光量制御精度再現性を重視する観点から、露光パルス数については、最小露光パルス数Nmin以上に設定するという条件以外の条件は殆ど考慮されていなかった。
このため、消費パルスの無駄な消費、これに伴なうコストの上昇、ひいてはパルス光源及び光学系の劣化による寿命の低下などを招いていた。特に、エキシマレーザなどのレーザガスを用いるパルス光源では、そのガス消費の増加もも招いていた。
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止することが可能な走査露光方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止することが可能な走査型露光装置を提供することにある。
本発明の第3の目的は、マイクロデバイスを生産性良く製造することができるデバイス製造方法を提供することにある。
発明の開示
本発明は、第1の観点からすると、パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査露光方法において、走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御を行うことを特徴とする第1の走査露光方法である。
ここで、「露光パルス数」とは、走査露光中に感光物体上の1点当りに照射されるパルス光の数を意味する。本明細書においては、かかる意味で「露光パルス数」なる用語を用いる。
これによれば、走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御が行われる。このため、本発明によれば、従来殆ど考慮されていなかった、露光パルス数の一定化、より具体的には最小露光パルス数を維持するという手法により、マスクと感光物体とが最大走査速度(スキャン最高速)で同期移動される露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域(高感度領域)では、設定露光量に無関係に最小消費エネルギでの露光が行われることとなる。また、この場合、上記の高感度領域において最小露光パルス数で露光が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。従って、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることが可能となる。また、消費エネルギを抑制できるので、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。
この場合において、前記露光量制御は、感光物体面上に照射されるパルス光の前記感光物体面上における1パルス当たりのエネルギ密度を変更することにより行われることとすることができる。
この場合において、感光物体面上に照射されるパルス光の前記感光物体面上における1パルス当たりのエネルギ密度の変更は、種々の方法を用いることができるが、例えば前記1パルス当たりのエネルギ密度の変更は、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギ及びパルス光を減光する減光装置の減光率の少なくとも一方を変更することにより行われることとすることができる。
本発明の第1の走査露光方法では、前記パルス光源として、パルスエネルギを所定範囲内で可変なレーザ光源を用いる場合、前記パルスエネルギを変更することにより、前記露光パルス数を最小露光パルス数にすることとすることができる。
この場合において、前記パルスエネルギの変更は、前記レーザ光源の発振に関する所定の制御ファクタを制御することによって行われることとすることができる。なお、前記パルスエネルギの変更で用いる制御ファクタは1つ及び複数のいずれでも良い。
この場合において、レーザ光源としては種々のレーザ光源を用いることができるが、例えば前記レーザ光源としてガスレーザ光源などを用いても良く、この場合には、前記制御ファクタとして、例えばレーザ光源での印加電圧(又は充電電圧)やレーザチューブ内のガス状態などを含むこととすることができる。特に前記レーザ光源として、高圧電源を備え、希ガス及びハロゲンガスを含むレーザガスを用いるパルスレーザ光源を用いることとしても良い。この場合には、例えば前記パルスエネルギの変更は、前記制御ファクタとして前記高圧電源での電源電圧を制御することによって行われることとすることもできるし、あるいは前記パルスエネルギの変更は、前記制御ファクタとして前記希ガス及び前記ハロゲンガスの少なくとも一方のガス状態を制御することによって行われることとすることもできる。後者の場合、前記制御対象のガス状態は、ガス圧を含むこととすることができる。
本発明の第1の走査露光方法では、前記パルス光源と前記感光物体との間に配置された前記パルス光を減光する減光装置の減光率を変更することにより、前記露光パルス数を最小露光パルス数にすることとすることができる。この場合、減光装置は、減光率を離散的に設定するものであっても良いし、連続的に設定するものであっても良い。
本発明の第1の走査露光方法では、前記走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち、前記露光パルス数を最小露光パルス数に維持しない前記所定値を超える露光量の設定領域では、前記パルス光源のパルス発光の繰り返し周波数及び露光パルス数を調整して前記最大走査速度を維持するような露光量制御を行うこととすることができる。かかる場合には、前述の所定値以下の露光量の設定領域で、前述と同様に、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図るとともに、消費エネルギの抑制により、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長化を図ることができることに加え、最大走査速度を得るのに必要なパルス発光の繰り返し周波数が最大周波数以内の領域では、少なくとも設定露光量に無関係に最大走査速度での走査露光が可能となり、スループットを最も高く維持することが可能になる。
本発明は、第2の観点からすると、パルス光源からのパルス光に対しマスクと感光物体とをそれぞれ同期移動し、前記マスクを介して前記パルス光で前記感光物体を走査露光する走査露光方法において、前記走査露光時に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度が最高走査速度に設定される露光量設定領域のうち、所定値以下の露光量の設定領域では露光パルス数を最小露光パルス数に維持し、かつ前記所定値を超える露光量の設定領域では前記露光パルス数を前記最小露光パルス数よりも多くする露光量制御を行うことを特徴とする第2の走査露光方法である。
これによれば、走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御が行われる。このため、従来殆ど考慮されていなかった、露光パルス数の一定化、より具体的には最小露光パルス数を維持するという手法により、マスクと感光物体とが最大走査速度(スキャン最高速)で同期移動される露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域(高感度領域)では、設定露光量に無関係に最小消費エネルギでの露光が行われることとなる。また、この場合、上記の高感度領域において最小露光パルス数で露光が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。また、所定値を超える露光量の設定領域では前記露光パルス数を前記最小露光パルス数よりも多くする露光量制御が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。従って、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることが可能となる。また、消費エネルギを抑制できるので、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。
この場合において、前記パルス光源のパルス発光の安定特性に応じて、前記走査露光時とそれ以外の時(すなわち、走査露光と異なる少なくとも1つの動作、例えばマスク(レチクル)のアライメント動作などが行われる時)とで、前記パルス光源の中立設定を異ならせることとすることができる。
本発明の第2の走査露光方法では、前記パルス光源からのパルス発光が休止したとき、再開後に検出したパルスエネルギの値に基づいて、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶された休止時間学習テーブルを逐次更新することとすることができる。
本発明は、第3の観点からすると、パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査露光方法であって、前記パルス光源からのパルス発光が休止したとき、再開後に前記パルス光源のパルスエネルギの値を検出する工程と;前記検出されたパルスエネルギの値に基づいて、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶された設定エネルギ毎の休止時間学習テーブルを逐次更新する工程と;を含む第3の走査露光方法である。
これによれば、パルス光源からのパルス発光が休止したとき、再開後にパルス光源のパルスエネルギの値を検出し、その検出されたパルスエネルギの値に基づいて、パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶された設定エネルギ毎の休止時間学習テーブルを逐次更新する。このため、同じ休止時間で設定エネルギが変わったときなどにおいても、これに影響を受けることのない最適なパルスエネルギの制御が可能となる。なお、休止時間学習テーブルは、休止時間毎に持たせることとしても良い。
本発明は、第4の観点からすると、パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査型露光装置であって、前記マスクと感光物体とを同期して所定の走査方向に駆動する駆動系と;走査露光の際に、設定露光量に応じ前記駆動系を介して前記マスクと感光物体との同期移動を制御するとともに、前記同期移動時における前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に設定する露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御を行う制御装置と;を備える第1の走査型露光装置である。
これによれば、走査露光の際に、制御装置により、駆動系を介してマスクと感光物体との同期移動が制御されるとともに、同期移動時におけるマスクと感光物体と少なくとも一方でその走査速度が最大走査速度に設定される露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域(高感度領域)では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御が行われる。このため、本発明によれば、従来殆ど考慮されていなかった、露光パルス数の一定化、より具体的には最小露光パルス数を維持するという手法により、マスクと感光物体とが最大走査速度(スキャン最高速)で同期移動される領域のうちの高感度領域では、設定露光量に無関係に最小消費エネルギでの露光が行われることとなる。また、この場合、上記の高感度領域において最小露光パルス数で露光が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。従って、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることが可能となる。また、消費エネルギを抑制できるので、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。
この場合において、前記制御装置は、前記露光量制御に際して、感光物体面上に照射されるパルス光の前記感光物体面上における1パルス当たりのエネルギ密度を変更することとすることができる。
この場合において、前記パルス光源からのパルス光を減光する減光装置を更に備える場合には、前記制御装置は、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギ及びパルス光を減光する減光装置の減光率の少なくとも一方を変更することにより、前記1パルス当たりのエネルギ密度を変更することとすることができる。
この場合において、前記減光装置がその減光率が離散的に設定可能な場合には、前記制御装置は、前記露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御に際し、前記減光装置を用いて減光を行うときには、前記走査露光中における前記パルス光源のパルス発光の繰り返し周波数が前記最大走査速度条件下における前記最小露光パルス数に対応する周波数に維持できるように、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギを調整することとすることができる。
本発明の第1の走査型露光装置では、感光物体面上に照射されるパルス光の感光物体面上における1パルス当たりのエネルギ密度を変更するに際し、前記パルス光源が、パルスエネルギを所定範囲内で可変なレーザ光源である場合には、前記制御装置は、前記パルスエネルギを変更することにより、前記1パルス当たりのエネルギ密度を変更することとすることができる。
この場合において、前記制御装置は、前記レーザ光源の発振に関する所定の制御ファクタを制御して前記パルスエネルギを変更することとすることができる。なお、前記パルスエネルギの変更で用いる制御ファクタは1つ及び複数のいずれでも良い。
この場合において、前記レーザ光源として種々のレーザ光源を用いることができるが、例えば前記レーザ光源としてガスレーザ光源などを用いても良く、この場合には、前記制御ファクタとして、例えばレーザ光源での印加電圧(又は充電電圧)やレーザチューブ内のガス状態などを含むこととすることができる。特に前記レーザ光源として、高圧電源を備え、希ガス及びハロゲンガスを含むレーザガスを用いるパルスレーザ光源を用いることもできる。
この場合において、前記制御装置は、前記制御ファクタとして前記高圧電源での電源電圧を制御することとすることもできる、あるいは、前記制御装置は、前記制御ファクタとして前記希ガス及び前記ハロゲンガスの少なくとも一方のガス状態を制御することとすることもできる。後者の場合、前記制御対象のガス状態は、ガス圧を含むこととすることができる。
本発明の第1の走査型露光装置では、前記制御装置は、前記走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち、前記露光パルス数を最小露光パルス数に維持しない前記所定値を超える露光量の設定領域では、前記パルス光源のパルス発光の繰り返し周波数及び露光パルス数を調整して前記最大走査速度を維持するような露光量制御を行うこととすることができる。
本発明の第1の走査型露光装置では、前記制御装置は、前記パルス光源のパルス発光の安定特性に応じて、走査露光時とそれ以外の時(すなわち、走査露光と異なる少なくとも1つの動作、例えばマスク(レチクル)のアライメント動作などが行われる時)とで、前記パルス光源の中立設定を異ならせることとすることができる。
本発明の第1の走査型露光装置では、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶されるとともにその更新が可能な設定エネルギ毎の休止時間学習テーブルを更に備えることとすることができる。
本発明は、第5の観点からすると、パルス光源からのパルス光に対しマスクと感光物体とをそれぞれ同期移動し、前記マスクを介して前記パルス光で前記感光物体を走査露光する走査型露光装置であって、前記マスクと感光物体とを同期して所定の走査方向に駆動する駆動系と;走査露光の際に、前記走査露光時に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度が最高走査速度に設定される露光量設定領域のうち、所定値以下の露光量の設定領域では露光パルス数を最小露光パルス数に維持し、かつ前記所定値を超える露光量の設定領域では前記露光パルス数を前記最小露光パルス数よりも多くする露光量制御を行う制御装置と;を備える第2の走査型露光装置である。
これによれば、走査露光の際に、制御装置により、駆動系を介してマスクと感光物体との同期移動が制御されるとともにマスクと感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御が行われる。このため、従来殆ど考慮されていなかった、露光パルス数の一定化、より具体的には最小露光パルス数を維持するという手法により、マスクと感光物体とが最大走査速度(スキャン最高速)で同期移動される露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域(高感度領域)では、設定露光量に無関係に最小消費エネルギでの露光が行われることとなる。また、この場合、上記の高感度領域において最小露光パルス数で露光が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。また、制御装置により、所定値を超える露光量の設定領域では前記露光パルス数を前記最小露光パルス数よりも多くする露光量制御が行われるので、所望の露光量制御精度再現性を確保できる。従って、露光量制御精度を維持しつつ、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることが可能となる。また、消費エネルギを抑制できるので、パルス光源及び光学系の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。
本発明は、第6の観点からすると、パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査型露光装置であって、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶されるとともにその更新が可能な休止時間学習テーブルを、設定エネルギ毎に備える第3の走査型露光装置である。
これによれば、同じ休止時間で設定エネルギが変わったときなどにおいても、これに影響を受けることのない最適なパルスエネルギの制御が可能となる。なお、休止時間学習テーブルは、休止時間毎に持たせることとしても良い。
また、リソグラフィ工程において、本発明の第1〜第3の走査露光方法のいずれかを用いることにより、露光量制御精度を維持しつつ、感光物体上にマスクに形成されたパターンを精度良く転写することができ、その際、パルスの無駄な消費を防止してコストダウンを図ることができるとともに、消費エネルギを抑制できる。従って、高集積度のマイクロデバイスを高精度でかつ生産コストを低減して製造することができる。また、同様に、リソグラフィ工程において、本発明の第1〜第3の走査型露光装置のいずれかを用いて露光をおこなうことにより、高集積度のマイクロデバイスを高精度でかつ生産コストを低減して製造することができる。特に、本発明の第2の走査型露光装置を用いて露光を行う場合、より高精度な露光量制御が可能となり、感光物体上にパターンを精度良く形成することができる。従って、本発明は、更に別の観点からすると、本発明の第1〜第3の走査露光方法のいずれかを用いるデバイス製造方法、あるいは本発明の第1〜第3の走査型露光装置のいずれかを用いるデバイス製造方法であるとも言える。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1には、一実施形態の走査型露光装置10の概略構成が示されている。この走査型露光装置10は、露光用光源にパルス光源としてのエキシマレーザ光源を用いたステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置である。
この走査型露光装置10は、パルス光源16を含む照明系12、この照明系12により照明されるマスクとしてのレチクルRを保持して所定の走査方向に移動するマスクステージとしてのレチクルステージRST、レチクルRのパターンを感光物体としてのウエハW上に投影する投影光学系PL、ウエハWを保持して水平面(XY平面内)を移動するXYステージ14、及びこれらの制御系等を備えている。
前記照明系12は、パルス光源16、ビーム整形光学系18、減光装置としてのエネルギ粗調器20、オプティカルインテグレータ(フライアイレンズ、内面反射型インテグレータ、又は回折光学素子などであり、図1ではフライアイレンズを用いているので、以下では「フライアイレンズ」とも呼ぶ)22、照明系開口絞り板24、ビームスプリッタ26、第1リレーレンズ28A、第2リレーレンズ28B、視野絞りとしてのレチクルブラインド(本実施形態では固定レチクルブラインド30Aと可動レチクルブラインド30Bとから成る)、光路折り曲げ用のミラーM及びコンデンサレンズ32等を備えている。なお、以下においては、照明系12を構成するパルス光源16以外の構成部分を纏めて適宜「照明光学系」と呼ぶ。
ここで、この照明系12の上記構成各部について説明する。パルス光源16としては、一例として、1パルス当たりのパルスエネルギEをEmin(例えば8mJ/pulse)〜Emax(例えば10mJ/pulse)の範囲で変更可能であり、かつパルス発光の繰り返し周波数fをfmin(例えば600Hz)〜fmax(例えば2000Hz)の範囲内で変更可能なKrFエキシマレーザ光源(発振波長248nm)が用いられているものとする。以下においては、パルス光源16を「エキシマレーザ光源16」と呼ぶ。
なお、上記と同様のパルスエネルギと繰り返し周波数の変更機能を有するものであれば、このエキシマレーザ光源16に代えて、ArFエキシマレーザ光源(発振波長193nm)やF2レーザ光源(発振波長157nm)は勿論、金属蒸気レーザ光源やYAGレーザの高調波発生装置等のパルス光源を使用することも可能である。
ビーム整形光学系18は、エキシマレーザ光源16からパルス発光されたレーザビームLBの断面形状を、該レーザビームLBの光路後方に設けられたフライアイレンズ22に効率よく入射するように整形するもので、例えばシリンダレンズやビームエキスパンダ(いずれも図示省略)等で構成される。
エネルギ粗調器20は、ビーム整形光学系18後方のレーザビームLBの光路上に配置され、ここでは、回転板34の周囲に透過率(=1−減光率)の異なる複数個(例えば6個)のNDフィルタ(図1ではその内の2個のNDフィルタ36A、36Dが示されている)を配置し、その回転板34を駆動モータ38で回転することにより、入射するレーザビームLBに対する透過率を100%から等比級数的に複数段階で切り換えることができるようになっている。駆動モータ38は、後述する主制御装置50によって制御される。なお、その回転板34と同様の回転板を2段配置し、2組のNDフィルタの組み合わせによってより細かく透過率を調整できるようにしてもよい。
前記フライアイレンズ22は、エネルギ粗調器20後方のレーザビームLBの光路上に配置され、レチクルRを均一な照度分布で照明するためにその射出側焦点面に多数の点光源から成る面光源、すなわち2次光源を形成する。この2次光源から射出されるレーザビームを以下においては、「パルス照明光IL」と呼ぶものとする。
フライアイレンズ22の射出面近傍、すなわち本実施形態では照明光学系の瞳面とほぼ一致するその射出側焦点面に、円板状部材から成る照明系開口絞り板24が配置されている。この照明系開口絞り板24には、ほぼ等角度間隔で、例えば通常の円形開口より成る開口絞り、小さな円形開口より成りコヒーレンスファクタであるσ値を小さくするための開口絞り、輪帯照明用の輪帯状の開口絞り、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置して成る変形開口絞り(図1ではこのうちの2種類の開口絞りのみが図示されている)等が配置されている。この照明系開口絞り板24は、後述する主制御装置50により制御されるモータ等の駆動装置40により回転されるようになっており、これによりいずれかの開口絞りがパルス照明光ILの光路上に選択的に設定される。なお、開口絞り板24の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えば照明光学系内に交換して配置される複数の回折光学素子、照明光学系の光軸に沿って可動なプリズム(円錐プリズム、多面体プリズムなど)、及びズーム光学系の少なくとも1つを含む光学ユニットを、光源16とオプティカルインテグレータ22との間に配置し、オプティカルインテグレータ22がフライアイレンズであるときはその入射面上での照明光の強度分布、オプティカルインテグレータ22が内面反射型インテグレータであるときはその入射面に対する照明光の入射角度範囲などを可変とすることで、照明光学系の瞳面上での照明光の光量分布(2次光源の大きさや形状)、すなわち照明条件の変更に伴なう光量損失を抑えることが望ましい。
照明系開口絞り板24後方のパルス照明光ILの光路上に、反射率が小さく透過率の大きなビームスプリッタ26が配置され、更にこの後方の光路上に、固定レチクルブラインド30A及び可動レチクルブラインド30Bを介在させて第1リレーレンズ28A及び第2リレーレンズ28Bから成るリレー光学系が配置されている。
固定レチクルブラインド30Aは、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置され、レチクルR上で照明領域42Rを規定する矩形開口が形成されている。また、この固定レチクルブラインド30Aの近傍に走査方向に対応する方向の位置及び幅が可変の開口部を有する可動レチクルブラインド30Bが配置され、走査露光の開始時及び終了時にその可動レチクルブラインド30Bを介して照明領域42Rを更に制限することによって、不要な部分の露光が防止されるようになっている。さらに、可動レチクルブラインド30Bは走査方向と直交する非走査方向に対応する方向に関しても開口部の幅が可変であり、ウエハ上に転写すべきレチクルRのパターンに応じて照明領域42Rの非走査方向の幅を調整できるようになっている。なお、本実施形態では固定レチクルブラインド30Aをデフォーカスして配置することで、レチクルR上での照明光ILの走査方向に関する強度分布をほぼ台形状としているが、他の構成を採用する、例えば周辺部で減光率が徐々に高くなる濃度フィルタ、あるいは照明光を部分的に回折させる回折光学素子などを照明光学系内に配置して、照明光ILの強度分布を台形状としても良い。また、本実施形態では固定レチクルブラインド30Aと可動レチクルブラインド30Bとを設けているが、固定レチクルブラインドを設けないで可動レチクルブラインドのみとしても良い。
リレー光学系を構成する第2リレーレンズ28B後方のパルス照明光ILの光路上には、当該第2リレーレンズ28Bを通過したパルス照明光ILをレチクルRに向けて反射する折り曲げミラーMが配置され、このミラーM後方のパルス照明光ILの光路上にコンデンサレンズ32が配置されている。
一方、ビームスプリッタ26で反射されたパルス照明光ILは、集光レンズ44を介して光電変換素子よりなるインテグレータセンサ46で受光され、インテグレータセンサ46の光電変換信号が、不図示のピークホールド回路及びA/D変換器を介して出力DS(digit/pulse)として主制御装置50に供給される。インテグレータセンサ46としては、例えば遠紫外域で感度があり、且つエキシマレーザ光源16のパルス発光を検出するために高い応答周波数を有するPIN型のフォトダイオード等が使用できる。このインテグレータセンサ46の出力DSと、ウエハWの表面上でのパルス照明光ILの照度(露光量)との相関係数は予め求められて、主制御装置50に併設されたメモリ51内に記憶されている。
前記レチクルステージRST上にレチクルRが載置され、不図示のバキュームチャック等を介して吸着保持されている。レチクルステージRSTは、水平面(XY平面)内で微小駆動可能であるとともに、レチクルステージ駆動部48によって走査方向(ここでは図1の紙面左右方向であるY軸方向とする)に所定ストローク範囲で走査されるようになっている。この走査中のレチクルステージRSTの位置は、レチクルステージRST上に固定された移動鏡52Rを介して外部のレーザ干渉計54Rによって計測され、このレーザ干渉計54Rの計測値が主制御装置50に供給されるようになっている。なお、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工してレーザ干渉計54Rの反射面(前述の移動鏡52Rの反射面に相当)を形成しても良い。
前記投影光学系PLとしては、例えば両側テレセントリックな縮小系であり、共通のZ軸方向の光軸AXを有する複数枚のレンズエレメントから成る屈折系が用いられている。また、この投影光学系PLの投影倍率γは、例えば1/4又は1/5である。このため、前記の如くして、パルス照明光ILによりレチクルR上の照明領域42Rが照明されると、そのレチクルRに形成されたパターンが投影光学系PLによって投影倍率γで縮小された像が表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上のスリット状の露光領域(照明領域42Rに共役な領域)42Wに形成される。
前記XYステージ14は、ウエハステージ駆動部56によってXY面内で走査方向であるY軸方向及びこれに直交するX軸方向(図1における紙面直交方向)に2次元駆動されるようになっている。このXYステージ14上に、Zチルトステージ58が搭載され、このZチルトステージ58上に不図示のウエハホルダを介してウエハWが真空吸着等により保持されている。Zチルトステージ58は、ウエハWのZ方向の位置(フォーカス位置)を調整すると共に、XY平面に対するウエハWの傾斜角を調整する機能を有する。また、XYステージ14の位置は、Zチルトステージ58上に固定された移動鏡52Wを介して外部のレーザ干渉計54Wにより計測され、このレーザ干渉計54Wの計測値が主制御装置50に供給されるようになっている。なお、Zチルトステージ58(又はXYステージ14)などの端面を鏡面加工して、レーザ干渉計54の反射面(前述の移動鏡52Wの反射面に相当)を形成しても良い。
さらに、図示は省略されているが、レチクルRの上方には、例えば特開平7−176468号公報及びこれに対応する米国特許第5,646,413号などに詳細に開示されるように、CCD等の撮像素子を有し、露光波長の光(本実施形態ではパルス照明光IL)をアライメント用照明光とする画像処理方式の一対のレチクルアライメント顕微鏡が配置されている。この場合、一対のレチクルアライメント顕微鏡は、投影光学系PLの光軸AXを含むYZ平面に関して対称(左右対称)な配置で設置されている。また、この一対のレチクルアライメント顕微鏡は光軸AXを通るXZ面内でX軸方向に往復移動が可能な構造となっている。本国際出願で指定した指定国又は選択した選択国の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応する上記米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
通常、一対のレチクルアライメント顕微鏡は、レチクルRがレチクルステージRST上に載置された状態で、レチクルRの遮光帯の外側に配置された一対のレチクルアライメントマークをそれぞれ観察可能な位置に設定されている。
制御系は、図1中、制御装置としての主制御装置50によって主に構成される。主制御装置50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はミニコンピュータ)を含んで構成され、露光動作が的確に行われるように、例えばレチクルRとウエハWの同期走査、ウエハWのステッピング、露光タイミング等を統括して制御する。
具体的には、主制御装置50は、例えば走査露光時には、レチクルRがレチクルステージRSTを介して+Y方向(又は−Y方向)に速度VRで走査されるのに同期して、XYステージ14を介してウエハWが露光領域42Wに対して−Y方向(又は+Y方向)に速度γ・VR(γはレチクルRからウエハWに対する投影倍率)で走査されるように、レーザ干渉計54R、54Wの計測値に基づいてレチクルステージ駆動部48、ウエハステージ駆動部56をそれぞれ介してレチクルステージRST、XYステージ14の位置及び速度をそれぞれ制御する。また、ステッピングの際には、主制御装置50ではレーザ干渉計54Wの計測値に基づいてウエハステージ駆動部56を介してXYステージ14の位置を制御する。このように、本実施形態では、主制御装置50、レーザ干渉計54R、54W、レチクルステージ駆動部48、ウエハステージ駆動部56、レチクルステージRST、及びXYステージ14によって、駆動系が構成されている。
また、主制御装置50では、制御情報TSをエキシマレーザ光源16に供給することによって、エキシマレーザ光源16の発光タイミング、及び発光パワー等を制御する。また、主制御装置50は、エネルギ粗調器20、照明系開口絞り板24をモータ38、駆動装置40をそれぞれ介して制御し、更にステージ系の動作情報に同期して可動レチクルブラインド30Bの開閉動作を制御する。このように本実施形態では、主制御装置50が、露光量制御装置及びステージ制御装置の役目をも有している。これらの制御装置を主制御装置50とは別に設けても良いことは勿論である。
次に、本実施形態の走査型露光装置10の露光量制御系の構成について図2に基づいて説明する。
図2には、図1の走査型露光装置10の露光量制御に関連する構成部分が取り出されて示されている。この図2に示されるように、エキシマレーザ光源16の内部には、レーザ共振器16a、ビームスプリッタ16b、エネルギモニタ16c、エネルギコントローラ16d及び高圧電源16e等が設けられている。
前記レーザ共振器16aは、例えば放電電極を含むエキシマレーザチューブ(レーザチャンバ)、該エキシマレーザチューブの後側(図2における紙面内左側)に配置された全反射ミラー(リアミラー)、エキシマレーザチューブの前側(図2における紙面内右側)に配置された低反射率ミラー(フロントミラー)、並びにエキシマレーザチューブとフロントミラーとの間に順次配置された固定のファブリ・ペロー・エタロン(Fabry−Perot etalon)及び可変傾角のファブリ・ペロー・エタロン等(いずれも図示省略)を含んで構成することができる。この場合、リアミラーとフロントミラーとによって、共振器が構成され、コヒーレンシを少し高めるようにされる。また、固定のファブリ・ペロー・エタロンと可変傾角のファブリ・ペロー・エタロンとによって、狭帯域化モジュールが構成される。この狭帯域化モジュールによって、レーザ共振器16aから射出されるレーザビームLBのスペクトル幅を、ここでは自然発振スペクトル幅の約1/100〜1/300程度に狭めて出力する。また、可変傾角のエタロンの傾角を調整することにより、レーザ共振器16aから射出されるレーザビームLBの波長(中心波長)を所定範囲でシフトできるようになっている。
なお、狭帯域化モジュールを、例えばプリズムと回折格子(グレーティング)とを組み合わせたものなどによって構成することも可能である。
前記エキシマレーザチューブ内には、所定の混合比のレーザガス(これは媒体ガスであるクリプトンKr、フッ素F2及びバッファガスであるヘリウムHeから成る)が充填されている。エキシマレーザチューブには、不図示の排気バルブを介して例えばフレキシブルなチューブから成る排気管が接続されている。また、エキシマレーザチューブには、不図示の給気バルブを介してフレキシブルなガス供給管の一端が接続され、このガス供給管の他端はKr、F2、Heなどのガスボンベ(図示省略)に接続されている。
上記各バルブは、主制御装置50によって開閉制御される。主制御装置50は、例えばガス交換の際等に、エキシマレーザチューブ内のレーザガスが所定の混合比及び圧力になるように調整する。また、主制御装置50は、エキシマレーザ光源16の発振に関する制御ファクタ(又は制御パラメータ)を制御することで、エキシマレーザ光源16の出力(レーザビームLBのパルスエネルギ)を変更する。ここで、パルスエネルギの変更で用いる制御ファクタは1つ及び複数のいずれでも良いが、本実施形態ではエキシマレーザ光源16の印加電圧(又は充電電圧)とエキシマレーザチューブ内のガス状態とをそれぞれ制御ファクタとして独立に制御するとともに、ガス状態は少なくとも1つのレーザガス(Kr、F2、Heなど)のガス圧であるものとする。なお、エキシマレーザ光源16の制御ファクタは後述するエネルギコントローラ16dにより制御され、エネルギコントローラ16dは主制御装置50から送出される1パルス当たりのパルスエネルギの目標値に基づき、エキシマレーザ光源16から射出されるレーザビームLBのパルスエネルギがその目標値とほぼ一致するように、前述した2つの制御ファクタの少なくとも一方を制御する。ここで、制御ファクタとしてガス状態を制御する場合、エネルギコントローラ16dは、レーザガスの圧力を検出する不図示のセンサの出力に応じて、例えば希ガス(Kr)及びハロゲン(F2)などのガス圧を制御する。また、エキシマレーザチューブ内部では、レーザの発振時には、不図示のファンによって常時レーザガスが循環される。
図2において、レーザ共振器16aからパルス的に放出されたレーザビームは、透過率が高く僅かな反射率を有するビームスプリッタ16bに入射し、ビームスプリッタ16bを透過したレーザビームLBが外部に射出される。また、ビームスプリッタ16bで反射されたレーザビームが光電変換素子より成るエネルギモニタ16cに入射し、エネルギモニタ16cからの光電変換信号が不図示のピークホールド回路を介して出力ESとしてエネルギコントローラ16dに供給されている。エネルギモニタ16cの出力ESに対応するエネルギの制御量の単位は(mJ/pulse)である。通常の発光時には、エネルギコントローラ16dは、エネルギモニタ16cの出力ESが、主制御装置50より供給された制御情報TS中の1パルス当たりのエネルギの目標値に対応した値となるように、高圧電源16eでの電源電圧(前述の印加電圧又は充電電圧に対応)をフィードバック制御する。また、エネルギコントローラ16dは、レーザ共振器16aに供給されるエネルギを高圧電源16eを介して制御することにより発振周波数をも変更する。すなわち、エネルギコントローラ16dは、主制御装置50からの制御情報TSに応じてエキシマレーザ光源16の発振周波数を主制御装置50で指示された周波数に設定するとともに、エキシマレーザ光源16での1パルス当たりのエネルギが主制御装置50で指示された値となるように高圧電源16eの電源電圧のフィードバック制御を行なう。
また、エキシマレーザ光源16内のビームスプリッタ16bの外側には、主制御装置50からの制御情報に応じてレーザビームLBを遮光するためのシャッタ16fも配置されている。この他、図示は省略されているが、エキシマレーザ光源16を統括制御する制御装置も設けられており、主制御装置50からの指令(制御情報)とは別に、制御装置はエキシマレーザ光源16に設けられた各種センサの出力などに応じて、シャッタ16fの開閉、レーザビームLBの中心波長の設定やスペクトル幅(波長幅)の狭帯域化、及びレーザガスの交換、混合比やガス圧の調整などを独自に制御できるようになっている。
次に、本実施形態の走査型露光装置10の基本的な露光量制御シーケンスについて、主制御装置50内のCPUの制御アルゴリズムを示す図3のフローチャートを参照して説明する。
なお、実際には、インテグレータセンサ46の出力DSが、図1のZチルトステージ58上で像面(即ち、ウエハの表面)と同じ高さに設置された不図示の基準照度計の出力に対して予め較正(キャリブレーション)され、これによって像面照度とインテグレータセンサ46の出力との関係を示す変換係数αが、照明条件(照明光学系の瞳面上での照明光ILの光量分布)毎に求められる。そして、露光に先立って、そのインテグレータセンサ46と、エキシマレーザ光源16内のエネルギモニタ16cとを用いて、照明条件毎の変換係数αとインテグレータセンサ46の出力DSより間接的に求められる像面上での露光量、すなわちインテグレータセンサ46の処理量p(mJ/(cm2・pulse))と、エキシマレーザ光源16内のエネルギモニタ16cの出力ES(mJ/pulse)との相関関係を示す所定の制御テーブルが作成される。
但し、以下の説明では、簡単のためインテグレータセンサ46とエネルギモニタ16cとの相関が1次関数で表され、そのオフセットは0とみなすことができ、その傾きを変換係数βとして扱えるものとする。即ち、インテグレータセンサ46の処理量p(mJ/(cm2・pulse))、及び変換係数βを用いて、次式よりエネルギモニタ16cの出力ES(mJ/pulse)を算出できるものと仮定する。
ES=β・p ……(3)
なお、特に前述した光学ユニットが設けられているときは、上記の変換係数βについても、その光学ユニットによって可変となるオプティカルインテグレータ22への照明光の入射条件毎に求めることが好ましい。また、照明系12を構成する照明光学系や投影光学系PLのパルス照明光ILの透過率変動などを考慮して変換係数α、βを計算にて更新するようにすることが望ましい。
また、エネルギ粗調器20の透過率は設定露光量全般での露光時間を最小にするために、離散透過率は等比数列になるように設計されているものとする。
先ず、図4のステップ102において、オペレータによりコンソール等の入出力装置62(図1参照)を介して設定露光量S0が設定されるのを待ち、設定露光量S0が設定されると、次のステップ104に進み、レーザビームLBの1パルス当たりのエネルギEを最小エネルギ値Emin(8mJ/pulse)に、繰り返し周波数fを最小周波数fmin(600Hz)に設定する。すなわち、このようにして、パルスエネルギとその繰り返し周波数の中立設定を行う。
次のステップ106ではエキシマレーザ光源16に複数回(例えば数100回)パルス発光を行わせて、インテグレータセンサ46の出力を積算することによって、間接的にウエハW上での平均パルスエネルギ密度p(mJ/(cm2・pulse))を計測する。この計測は、例えば、可動レチクルブラインド30Bを駆動して、その開口を完全に閉じ、照明光ILがレチクルR側に達するのを阻止した状態で行われる。勿論、XYステージ14を駆動してウエハWを退避させた状態で行なっても良い。
次のステップ108では次式(4)により露光パルス数Nを算出する。
N=cint(S0/p) ……(4)
ここで、関数cintは小数点以下1桁目の値の四捨五入を表すものとする。
次のステップ110でその露光パルス数Nが、必要な露光量制御再現精度を得るための最小露光パルス数Nmin以上であるかどうかを判断する。ここで、最小露光パルス数Nminは、例えば予め計測されて装置定数として設定されているパルスエネルギのばらつき(3σの値)δpの平均パルスエネルギ密度pに対する比δp/pに基づいて求められる値である。本実施形態では、例えばNmin=40であるものとする。
そして、このステップ110における判断が否定された場合、すなわち露光パルス数Nが最小露光パルス数Nminより小さい場合には、ステップ111に移行して、図1のエネルギ粗調器20のNDフィルタにより設定可能な透過率の中からS0/(Nmin×p)より小さく、かつ最も近いNDフィルタを選択して設定した後、上記ステップ106の処理を再び行ない、選択されたND条件での平均パルスエネルギ密度p=ptを新たに求め、この平均パルスエネルギ密度ptを用いて、ステップ108の処理を再び行う。このようにしてステップ110の判断が肯定された場合又は当初からステップ110の判断が肯定された場合(N≧Nminの場合)には、ステップ112に移行する。なお、ここで、当初からステップ110の判断が肯定された場合の平均パルスエネルギ密度pは、上記の選択されたND条件での平均パルスエネルギ密度ptと同様にN≧Nminを満たすので、以下では、ptとして扱うものとする。
ステップ112では、上記ステップ106で求めたエネルギ密度ptを用いて、次式(5)に基づいて前述した変換係数βを算出する。勿論、これに限らず、前述した制御テーブルを予め求めておく場合には、この制御テーブルから、平均パルス密度ptに対応する変換係数βを算出するようにしても良い。
β=Emin/pt ……(5)
次のステップ113では次式(6)により、レーザビームLBの1パルス当たりのエネルギ設定値Et(mJ/pulse)を算出し、ステップ114に移行する。
Et=β×S0/Nmin ……(6)
ステップ114では上記のエネルギ設定値Etが設定可能な最大エネルギEmax(ここでは、10mJ/pulse)以下であるか否かを判断する。そして、この判断が肯定された場合には、ステップ115に進んでエネルギ設定値Etをエネルギコントローラ16dに供給した後、ステップ118に移行する。これにより、エネルギコントローラ16dにより、1パルスのエネルギEがEtに設定される。
この一方、前述したステップ114における判断が否定された場合、すなわち先に算出したエネルギ設定値Etが設定可能な最大エネルギEmaxより大きい場合には、このようなエネルギの設定は不可能なので、ステップ116に進んでエネルギ設定値としてEt=Emaxをエネルギコントローラ16dに供給する。これにより、エネルギコントローラ16dにより、1パルスのエネルギEがEmaxに設定される。
この場合、N=Nminとはならないので、次のステップ117に進んで次式(7)に従って露光パルス数Nを計算した後、ステップ118に移行する。
N=β×S0/Emax ……(7)
ステップ118ではスキャン速度V=スキャン最高速(Vmax)として繰り返し周波数fを次式(8)により算出する。
f=int(Vmax×N/Ws) ……(8)
ここで、関数int(a)は、実数aを超えない最大の整数を表すものとする。
そして、次のステップ119では、上で算出した繰り返し周波数fがレーザの持つ最大繰り返し周波数fmax以下であるか否かを判断する。そして、この判断が肯定された場合には、ステップ120に進み、エネルギコントローラ16dを介して繰り返し周波数fを上で算出した値に設定し、次のステップ122でスキャン目標速度(スキャン速度)をスキャン最高速Vmaxに設定する。
一方、上記ステップ119の判断が否定された場合は、上で算出した繰り返し周波数fの設定は不可能であるから、ステップ126に移行する。このステップ126では、エネルギコントローラ16dを介して繰り返し周波数fを最大発振周波数fmaxに設定した後、ステップ128に進んで、スキャン速度Vを次式(9)に基づいて設定する。
V=Ws×fmax/N ……(9)
そして、ステップ130では、それまでのステップで定まった設定条件(V、f、E、N)にて、ウエハW上の指定されたショット領域に、走査露光方式でレチクルRのパターンを転写する。
上記の走査露光の終了後、ステップ132で全てのショット領域に対する露光が終了したか否かを判断し、この判断が否定された場合、すなわち露光すべきショット領域が残っている場合には、ステップ130に戻り、上記走査露光を次ショット領域に対して行う。
このようにして、露光すべき全てのショット領域に対する露光処理が終了した時点で本ルーチンの一連の処理を終了する。
また、上記では特に説明をしなかったが、本実施形態では、露光開始に先立って、パルス照明光ILをアライメント光として用いる前述した一対のレチクルアライメント顕微鏡により、レチクルR上の一対のレチクルアライメントマーク(不図示)の像とXYステージ14上の不図示の基準マーク板に形成されたレチクルアライメント用基準マークの投影光学系PLを介した像とを同時に観察し、両マーク像の相対位置関係を計測するレチクルアライメントが行われる。そして、主制御装置50は、その相対位置関係とそのときのレチクル干渉計54R及びウエハ干渉計54Wの計測値とに基づいてレチクルパターン像の投影位置を求める。主制御装置50では、このレチクルアライメントの際のエキシマレーザ光源16のパルスエネルギとその繰り返し周波数との中立設定を、エキシマレーザ光源16のパルス発光の安定特性に応じて、必要な場合には、前述した走査露光時と異ならせることが望ましい。
ところで、発明者等が行った実験によれば、従来のパルスエネルギ10(mJ/pulse)固定の場合に、像面におけるエネルギの計測結果が、p=0.8(mJ/cm2/pulse)であり、設定露光量S0が、S0=0.8×40=32(mJ/cm2)より小さければ、NDフィルタにより減光が必要なことが確認された。これに対して、本実施形態と同様に、パルスエネルギ8(mJ/pulse)に設定した場合に、同一の光学系を用いて像面におけるエネルギの計測結果が、p=0.64(mJ/cm2/pulse)であり、設定露光量S0が、S0=0.64×40=25.6(mJ/cm2)までの範囲で、NDフィルタによる減光を必要しないことが確認された。すなわち非減光領域が広がった。
また、設定露光量S0=22(mJ/cm2)として、従来の露光量制御方法により露光量制御を行った場合、パルスエネルギ10(mJ/pulse)で、像面におけるエネルギの計測結果がp=0.8(mJ/cm2/pulse)、露光パルス数N=cint(S0/p)=28<Nmin=40となった。このため、透過率58%のNDフィルタを光路上に設定し、像面エネルギpを再計測し、露光パルス数Nを再計測した結果、p=0.464(mJ/cm2/pulse)、N=47となった。そして、エネルギ微調整を行った結果、最終的なエネルギ設定値Etは、Et=S0/N/p×10=10.09(mJ/pulse)となった。
これに対し、同一の設定露光量S0=22(mJ/cm2)として、本実施形態の露光量制御方法により露光量制御を行った場合、パルスエネルギEmin=8(mJ/pulse)で、像面におけるエネルギの計測結果がp=0.64(mJ/cm2/pulse)、露光パルス数N=cint(S0/p)=34<Nmin=40となった。このため、透過率80%のNDフィルタを光路上に設定し、再度像面エネルギpを計測し、露光パルス数Nを再計測した結果、p=0.512(mJ/cm2/pulse)、N=43となった。そして、N=Nmin=40とし、エネルギ調整を行った結果、最終的なエネルギ設定値Etは、Et=β・pt=S0/Nmin/p×8=8.59(mJ/pulse)となった。従って、この場合、パルス数が47から40に削減し、パルスエネルギが10.09mJから8.59mJに低減されたことになる。
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る走査型露光装置10及びこの走査露光時の露光量制御方法によると、高感度レジストに対応した領域において、エネルギ粗調器20の離散的な減光率の影響を受けることなく、常に(設定露光量S0の値にかかわらず)スキャン最高速(Vmax)にて露光が可能になり、露光時間が最小になる。また、低感度レジストに対応する領域でも、エキシマレーザ光源16の持つ最大繰り返し周波数fmax、かつ最大パルスエネルギEmaxでの露光となるために、露光時間を極力短くすることができる。すなわち、広範囲の設定露光領域スループットとしても最大を得ることが可能となる。
さらに、本実施形態では、スキャン最高速度Vmaxで露光が行われる高感度領域では、常に最小露光パルス数Nminでの露光が可能となるため、消費パルス数が最低となり、コストダウンが可能となる。この場合、所望の露光量再現精度を確保できるので、高精度な露光量制御が可能である。また、エキシマレーザ光源16の消費エネルギを抑制できるので、ガス消費の削減、消費電力の削減、さらには、エキシマレーザ光源16及び照明系12内の光学素子の負荷軽減による寿命の延長効果も期待できる。すなわち、照明系12内の硝材は、レーザ光源のパルス数、パルスエネルギの両者に比例して劣化するので、本実施形態によると、パルス数が減少し、NDフィルタ(減光器)に入射するパルスエネルギが減少するので、硝材の長寿命化を達成することができる。
また、従来ほぼEmax付近にエキシマレーザ光源の出力が固定されていたが、本実施形態によると、エキシマレーザ光源16のパルスエネルギを変更できるため、パルス当たりの像面エネルギを相対的に低くでき、その分エネルギ粗調器20等を用いて減光を行わない、非減光領域を広げることができる。換言すれば、本実施形態では、同一の設定露光量に対し、より減光率の低いNDフィルタを使用することができるようになるので、エネルギ損失を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、エキシマレーザ光源16のパルスエネルギを変更しているため、高速、且つ高精度にウエハWに対するレーザビームLBの露光量を制御でき、ウエハW上の各点で所望の積算露光量を得ることができる。
しかしながら、本発明がこれに限定されるものではなく、パルスエネルギの変更に代えて、又はこれとともにレーザビームの透過率を連続的に変更可能なエネルギ変調器を用いて、像面に与えられるエネルギ密度を変更するようにしても良いことは勿論である。かかる場合には、例えば図1のエネルギ粗調器20とフライアイレンズ22との間のレーザビームLBの光路上にエネルギ変調器が配置されるとともに、ウエハW上の各点で所望の積算露光量が得られるように主制御装置50によってこれが制御されることとなる。この場合のエネルギ変調器としては、例えばパルス発光されるレーザビームLBの光路上に、所定ピッチで透過部と遮光部とが形成された固定の格子板と格子のピッチ方向に移動自在な可動の格子板とを有するダブル・グレーティング方式の変調器を用いることができる。2枚の格子板の相対的な位置をずらすことによって、レーザビームLBに対する透過率を変調できる。このようなダブル・グレーティング方式の変調器については、例えば特開平3−179357号公報及びこれに対応する米国特許第5,191,374号などに詳細に開示されており、本国際出願で指定した指定国又は選択した選択国の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応する上記米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
また、照明条件の変更によって像面照度が変化するときは、前述した走査露光時の露光条件の設定を再度行う必要がある。これは、照明条件が変更されると、照明光学系の瞳面上での照明光の光量分布(2次光源の大きさや形状)が変更される結果、像面上における平均パルスエネルギ密度p、あるいは前述した変換係数α、βなどが変化する可能性が高いからである。
なお、上記実施形態では、パルス光源としてエキシマレーザ光源を用い、主制御装置50が、エキシマレーザ光源16内の高圧電源16eでの電源電圧(Hv)やエキシマレーザチューブ内の希ガス(Kr)、ハロゲン(F2)などのガス圧などを制御することによって、パルスエネルギを変更する場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、レーザガスの温度その他のガス状態と、エキシマレーザ光源16から出力される1パルス当たりのエネルギとの間にも何らかの相関はあるので、この関係を利用してエキシマレーザ光源16のパルスエネルギを変更することとしても良い。要するに、エキシマレーザ光源16の発振に関する所定の制御ファクタ(上記の電源電圧やガス状態はこれに含まれる)を制御することによって、パルスエネルギを変更すれば良い。レーザ光源として、エキシマレーザ光源以外のレーザ光源を用いる場合にも、そのレーザ光源の発振(あるいはパルス発光)に関する制御ファクタを制御することによって、パルスエネルギを変更することとすれば良い。
さらに、本実施形態では、エキシマレーザ光源16のパルスエネルギを変更するので、エキシマレーザ光源16から出力される1パルス当たりのエネルギ(又は設定エネルギ)Eと、所定の制御ファクタ(制御パラメータ)、例えば高圧電源16eでの電源電圧(Hv)やハロゲンガス、希ガス等のガス圧などとの関係を予め求め、例えばパルス発光が休止したとき、再開後にエネルギモニタ16cで検出された値に基づいて上記関係が逐次更新される学習テーブル(いわゆる休止時間学習テーブル)を設定エネルギ毎に持たせることが望ましい。このようにすると、同じ休止時間で設定エネルギが変わったときなどにおいても、これに影響を受けることのない最適なパルスエネルギの制御が可能となる。この休止時間学習テーブルは、休止時間毎に持たせることとしても良い。
また、本実施形態のスキャン最高速度Vmaxは、レチクルステージRSTを駆動するリニアモータの推力を含むレチクルステージ駆動系の構造上の限界最高速度(上限値)であるものとしているが、この上限値でレチクルステージRSTを移動するとき、例えば要求されるレチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期精度を満たすことが困難であるときなどは、その同期精度などから上限値より小さく設定されるレチクルステージRSTの速度をスキャン最高速度Vmaxとしても良い。すなわち、スキャン最高速度Vmaxは構造的な限界最高速度に限定されるものではない。
なお、本実施形態では投影光学系PLが縮小系(倍率γ)であり、走査露光時にレチクルステージRSTの移動速度がウエハステージWSTの移動速度の、投影倍率の逆数倍(1/γ)となるので、ウエハステージよりもレチクルステージRSTの方が先に限界最高速度に達するものとして説明を行っているが、ウエハステージWSTの方が先に限界最高速度に達するときには、前述した高感度領域で、レチクルステージRSTではなくウエハステージWSTをスキャン最高速度Vmaxで移動するように露光条件を設定すれば良い。また、本実施形態では主制御装置50がエキシマレーザ光源16に指令(制御情報)を送出してパルスエネルギや繰り返し周波数などを制御するものとしたが、例えば主制御装置50は、最小露光パルス数に関する情報及びインテグレータセンサの出力をエキシマレーザ光源16に与えるだけとし、パルスエネルギや繰り返し周波数の決定は、エキシマレーザ光源16の制御装置で行うようにしても良い。さらに、本実施形態ではエキシマレーザ光源16で繰り返し周波数を可変としているが、特定の周波数ではパルスエネルギの変動が大きくなるなどしてパルス発振を行うことができないことがあるので、その場合にはその特定の周波数を考慮して露光条件(走査速度、繰り返し周波数、パルスエネルギなど)の設定を行うことが好ましい。但し、インジェクション・ロッキング方式のレーザ光源ではこの不都合が生じる可能性が小さいので、本実施形態でインジェクション・ロッキング方式のレーザ光源を採用しても構わない。
なお、上記実施形態では、本発明がステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、本発明は、スリットスキャン方式の露光装置など走査露光方式の露光装置であれば好適に適用することができる。
また、露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、プラズマディスプレイや有機ELなどの表示装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
また、上記実施形態において、レーザ光として、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
例えば、単一波長レーザの発振波長を1.51〜1.59μmの範囲内とすると、発生波長が189〜199nmの範囲内である8倍高調波、又は発生波長が151〜159nmの範囲内である10倍高調波が出力される。特に発振波長を1.544〜1.553μmの範囲内とすると、発生波長が193〜194nmの範囲内の8倍高調波、即ちArFエキシマレーザとほぼ同一波長となる紫外光が得られ、発振波長を1.57〜1.58μmの範囲内とすると、発生波長が157〜158nmの範囲内の10倍高調波、即ちF2レーザとほぼ同一波長となる紫外光が得られる。
また、発振波長を1.03〜1.12μmの範囲内とすると、発生波長が147〜160nmの範囲内である7倍高調波が出力され、特に発振波長を1.099〜1.106μmの範囲内とすると、発生波長が157〜158μmの範囲内の7倍高調波、即ちF2レーザとほぼ同一波長となる紫外光が得られる。なお、単一波長発振レーザとしてはイッテルビウム・ドープ・ファイバーレーザを用いる。
また、レーザ光源としては、波長146nmのKr2レーザ(クリプトン・ダイマーレーザ)、波長126nmのAr2レーザ(アルゴン・ダイマーレーザ)などの真空紫外光を発生する光源を使用しても良い。さらに、レーザ光源としてSOR又はレーザプラズマ光源を用いて軟X線領域のEUV光を照明光ILとしても良い。
また、投影光学系は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良いし、屈折系のみならず反射屈折系及び反射系のいずれでも良い。
《デバイス製造方法》
次に上述した露光装置をリソグラフィ工程で使用したデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
図4には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図4に示されるように、まず、ステップ201(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップ202(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ステップ203(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
次に、ステップ204(ウエハ処理ステップ)において、ステップ201〜ステップ203で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ205(デバイス組立てステップ)において、ステップ204で処理されたウエハを用いてデバイス組立てを行う。このステップ205には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
最後に、ステップ206(検査ステップ)において、ステップ205で作成されたデバイスの動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
図5には、半導体デバイスにおける、上記ステップ204の詳細なフロー例が示されている。図5において、ステップ211(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ212(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ213(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ214(イオン打ち込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ211〜ステップ214それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ215(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ216(露光ステップ)において、上で説明した走査型露光装置及び走査露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ217(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップ218(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ219(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光工程(ステップ216)において上記実施形態の走査型露光装置及び走査露光方法が用いられるので、高精度な露光量制御により精度良くレチクルのパターンをウエハ上に転写することができる。この結果、高集積度のデバイスの生産性(歩留まりを含む)を向上させることが可能になる。また、特に高感度領域では最小露光パルス数の露光によりパルスの無駄な消費の防止、これによる消費エネルギの抑制、パルス光源及び光学系の負荷軽減による長寿命化などによって、コスト面においても、その生産性の向上が可能となる。
産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明の走査露光方法及び走査型露光装置は、感光基板上にデバイスパターンを転写するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法はマイクロデバイスの製造に適している。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施形態に係る走査型露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2は、図1の装置の露光量制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
図3は、主制御装置内CPUの露光量制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図4は、本発明のデバイス製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図5は、図4のステップ204の具体例を示すフローチャートである。
Claims (32)
- パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査露光方法において、
走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御を行うことを特徴とする走査露光方法。 - 請求項1に記載の走査露光方法において、
前記露光量制御は、感光物体面上に照射されるパルス光の前記感光物体面上における1パルス当たりのエネルギ密度を変更することにより行われることを特徴とする走査露光方法。 - 請求項2に記載の走査露光方法において、
前記1パルス当たりのエネルギ密度の変更は、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギ及びパルス光を減光する減光装置の減光率の少なくとも一方を変更することにより行われることを特徴とする走査露光方法。 - 請求項1に記載の走査露光方法において、
前記パルス光源として、パルスエネルギを所定範囲内で可変なレーザ光源を用い、
前記パルスエネルギを変更することにより、前記露光パルス数を最小露光パルス数にすることを特徴とする走査露光方法。 - 請求項4に記載の走査露光方法において、
前記パルスエネルギの変更は、前記レーザ光源の発振に関する所定の制御ファクタを制御することによって行われることを特徴とする走査露光方法。 - 請求項5に記載の走査露光方法において、
前記レーザ光源として、高圧電源を備え、希ガス及びハロゲンガスを含むレーザガスを用いるパルスレーザ光源を用いることを特徴とする走査露光方法。 - 請求項6に記載の走査露光方法において、
前記パルスエネルギの変更は、前記制御ファクタとして前記高圧電源での電源電圧を制御することによって行われることを特徴とする走査露光方法。 - 請求項6に記載の走査露光方法において、
前記パルスエネルギの変更は、前記制御ファクタとして前記希ガス及び前記ハロゲンガスの少なくとも一方のガス状態を制御することによって行われることを特徴とする走査露光方法。 - 請求項8に記載の走査露光方法において、
前記制御対象のガス状態は、ガス圧を含むことを特徴とする走査露光方法。 - 請求項1に記載の走査露光方法において、
前記パルス光源と前記感光物体との間に配置された前記パルス光を減光する減光装置の減光率を変更することにより、前記露光パルス数を最小露光パルス数にすることを特徴とする走査露光方法。 - 請求項1に記載の走査露光方法において、
前記走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち、前記露光パルス数を最小露光パルス数に維持しない前記所定値を超える露光量の設定領域では、前記パルス光源のパルス発光の繰り返し周波数及び露光パルス数を調整して前記最大走査速度を維持するような露光量制御を行うことを特徴とする走査露光方法。 - パルス光源からのパルス光に対しマスクと感光物体とをそれぞれ同期移動し、前記マスクを介して前記パルス光で前記感光物体を走査露光する走査露光方法において、
前記走査露光時に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度が最高走査速度に設定される露光量設定領域のうち、所定値以下の露光量の設定領域では露光パルス数を最小露光パルス数に維持し、かつ前記所定値を超える露光量の設定領域では前記露光パルス数を前記最小露光パルス数よりも多くする露光量制御を行うことを特徴とする走査露光方法。 - 請求項12に記載の走査露光方法において、
前記パルス光源のパルス発光の安定特性に応じて、前記走査露光時とそれ以外の時とで、前記パルス光源の中立設定を異ならせることを特徴とする走査露光方法。 - 請求項12に記載の走査露光方法において、
前記パルス光源からのパルス発光が休止したとき、再開後に検出したパルスエネルギの値に基づいて、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶された休止時間学習テーブルを逐次更新することを特徴とする走査露光方法。 - パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査露光方法であって、
前記パルス光源からのパルス発光が休止したとき、再開後に前記パルス光源のパルスエネルギの値を検出する工程と;
前記検出されたパルスエネルギの値に基づいて、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶された設定エネルギ毎の休止時間学習テーブルを逐次更新する工程と;を含む走査露光方法。 - リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程では、請求項1〜15のいずれか一項に記載の走査露光方法を用いることを特徴とするデバイス製造方法。 - パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査型露光装置であって、
前記マスクと感光物体とを同期して所定の走査方向に駆動する駆動系と;
走査露光の際に、設定露光量に応じ前記駆動系を介して前記マスクと感光物体との同期移動を制御するとともに、前記同期移動時における前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度を最大走査速度に設定する露光量設定領域のうち所定値以下の露光量の設定領域では、露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御を行う制御装置と;を備える走査型露光装置。 - 請求項17に記載の走査型露光装置において、
前記制御装置は、前記露光量制御に際して、感光物体面上に照射されるパルス光の前記感光物体面上における1パルス当たりのエネルギ密度を変更することを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項18に記載の走査型露光装置において、
前記パルス光源からのパルス光を減光する減光装置を更に備え、
前記制御装置は、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギ及びパルス光を減光する減光装置の減光率の少なくとも一方を変更することにより、前記1パルス当たりのエネルギ密度を変更することを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項19に記載の走査型露光装置において、
前記減光装置はその減光率が離散的に設定可能であり、
前記制御装置は、前記露光パルス数を最小露光パルス数に維持するような露光量制御に際し、前記減光装置を用いて減光を行うときには、前記走査露光中における前記パルス光源のパルス発光の繰り返し周波数が前記最大走査速度条件下における前記最小露光パルス数に対応する周波数に維持できるように、前記パルス光源から出力されるパルスエネルギを調整することを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項19に記載の走査型露光装置において、
前記パルス光源は、パルスエネルギを所定範囲内で可変なレーザ光源であり、
前記制御装置は、前記パルスエネルギを変更することにより、前記1パルス当たりのエネルギ密度を変更することを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項21に記載の走査型露光装置において、
前記制御装置は、前記レーザ光源の発振に関する所定の制御ファクタを制御して前記パルスエネルギを変更することを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項22に記載の走査型露光装置において、
前記レーザ光源は、高圧電源を備え、希ガス及びハロゲンガスを含むレーザガスを用いるパルスレーザ光源であることを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項23に記載の走査型露光装置において、
前記制御装置は、前記制御ファクタとして前記高圧電源での電源電圧を制御することを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項23に記載の走査型露光装置において、
前記制御装置は、前記制御ファクタとして前記希ガス及び前記ハロゲンガスの少なくとも一方のガス状態を制御することを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項25に記載の走査型露光装置において、
前記制御対象のガス状態は、ガス圧を含むことを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項17に記載の走査型露光装置において、
前記制御装置は、前記走査露光の際に、前記マスクと前記感光物体との走査速度を最大走査速度に維持できる露光量設定領域のうち、前記露光パルス数を最小露光パルス数に維持しない前記所定値を超える露光量の設定領域では、前記パルス光源のパルス発光の繰り返し周波数及び露光パルス数を調整して前記最大走査速度を維持するような露光量制御を行うことを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項17に記載の走査型露光装置において、
前記制御装置は、前記パルス光源のパルス発光の安定特性に応じて、走査露光時とそれ以外の時とで、前記パルス光源の中立設定を異ならせることを特徴とする走査型露光装置。 - 請求項17に記載の走査型露光装置において、
前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶されるとともにその更新が可能な設定エネルギ毎の休止時間学習テーブルを更に備えることを特徴とする走査型露光装置。 - パルス光源からのパルス光に対しマスクと感光物体とをそれぞれ同期移動し、前記マスクを介して前記パルス光で前記感光物体を走査露光する走査型露光装置であって、
前記マスクと感光物体とを同期して所定の走査方向に駆動する駆動系と;
前記走査露光時に、前記マスクと前記感光物体との少なくとも一方でその走査速度が最高走査速度に設定される露光量設定領域のうち、所定値以下の露光量の設定領域では露光パルス数を最小露光パルス数に維持し、かつ前記所定値を超える露光量の設定領域では前記露光パルス数を前記最小露光パルス数よりも多くする露光量制御を行う制御装置と;を備える走査型露光装置。 - パルス光源からのパルス光によりマスク上の所定の照明領域を照明し、前記マスクと感光物体とを同期移動して、前記マスクに形成されたパターンを前記感光物体上に転写する走査型露光装置であって、
前記パルス光源から出力されるパルスエネルギと所定の制御ファクタとの関係が記憶されるとともにその更新が可能な休止時間学習テーブルを、設定エネルギ毎に備える走査型露光装置。 - リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程では、請求項17〜31のいずれか一項に記載の走査型露光装置を用いて露光を行うことを特徴とするデバイス製造方法。
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