JP4253915B2 - 露光装置、露光方法、及びレーザ光源 - Google Patents

露光装置、露光方法、及びレーザ光源 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的に、半導体素子や液晶表示素子等の製造の分野において用いられる露光装置、露光方法、及びレーザ光源に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子、液晶表示素子、撮像素子(CCD等)や薄膜磁気ヘッド等をフォトリソグラフィ技術を用いて製造する際に、マスクとしてのレチクルのパターンの投影光学系を介した像をフォトレジスト等が塗布されたウエハ(又はガラスプレート等)上に投影露光する投影型の露光装置が使用されている。露光装置における一つの基本的な機能として、ウエハの各ショット領域内の各点に対する露光量(積算露光エネルギー)を適正範囲内に維持する露光量制御機能がある。
【0003】
また、最近においては、ウエハ上に露光するパターンの解像度をより高めることが求められており、解像度を高めるための一つの手法として露光光の短波長化がある。これに関して、現在、露光用の光源として使用することができる光源の中で、発光される光の波長の短いものは、KrFエキシマレーザ若しくはArFエキシマレーザ等のエキシマレーザ光源、金属蒸気レーザ光源、又はYAGレーザ光源等のパルス発振型のレーザ光源(パルス光源)である。しかしながら、水銀ランプ等の連続発光型の光源と異なり、パルス光源では発光されるパルス光の露光エネルギー(パルスエネルギー)がパルス発光毎にばらつくという特性がある。このため、パルス光源を使用する場合の露光量制御においては、パルスエネルギーのばらつきを考慮することが要求される。
【0004】
このようなパルス光源をステッパーのような一括露光型の投影露光装置に適応した場合における露光量制御としては、露光光の光量を連続的にモニタするためのインテグレータセンサを使用した所謂カットオフ制御が知られている。カットオフ制御においては、インテグレータセンサの計測結果が、目標露光量に対してパルスエネルギーのばらつきを考慮して定められた臨界レベルを超えるまで、パルス光源の発光が繰り返される。さらに、インテグレータセンサの計測結果に応じて、パルス発光毎にパルスエネルギーを調整する所謂パルス毎制御も知られている。このパルス毎制御では、カットオフ制御に比べて、ウエハ上の一点当たりの最小露光パルス数(所要の露光量制御精度の再現性を得るための最小の露光パルス数)を小さくすることができる。
【0005】
尚、インテグレータセンサは、光路から分岐された光を用いて露光対象物(ウエハ)と光学的に共役な点でエネルギー計測を行うことにより間接的にウエハへの露光量を計測するものである。
【0006】
一方、近年においては、半導体素子等の一個のチップサイズが大型化する傾向にあり、露光装置においては、レチクル上のより大きな面積のパターンをウエハ上に露光する大面積化が求められている。しかし、単に露光光学系の露光フィールドを大きくしようとすると、広い露光フィールドの全面で諸収差を許容範囲内に収めるために投影光学系が複雑化すると共に大型化してしまう。そこで、投影光学系の露光フィールドをあまり大型化することなく、被転写パターンの大面積化に応えるために、例えば矩形、円弧状、六角形等の照明領域に対してレチクル及びウエハを同期して走査することによって、レチクル上のパターンを逐次ウエハ上に露光する所謂スキャン型の露光装置が開発されている。
【0007】
スキャン型の露光装置では、ウエハ上の露光エリアの各点が相異なるパルスを受けることになり、ウエハ上の一点のみに着目した露光量制御を適用することができない。そのため、従来は、単純に各パルスの光量を積算して露光量制御を行う方式(オープン露光量制御方式)が採用されていた。
【0008】
オープン露光量制御方式においては、所望の露光量制御の直線性を得るために、次の関係が成立するように、即ち、露光パルス数が整数になるように、パルスエネルギーを微調整する必要がある。
【0009】
(目標露光量)=(パルス数)×(1パルスの平均エネルギー)
ここで、1パルスの平均エネルギーは露光直前にインテグレータセンサにて計測される値である。この制御方式を採用するためには、パルスエネルギーの微変調を行う必要があり、そのために、パルスレーザ光源自体の出力を微変調する方法が提案されている。
【0010】
また、オープン露光量制御方式では、露光動作の前に1パルスのエネルギー量を微変調し、露光自体は複数パルスの露光による平均化を行って、ショット内積算露光量均一性を所望の値以下に抑えていた。この場合における積算露光量のばらつきの低減効果は、統計的に1/N1/2(Nは1点当たりの露光パルス数)である。即ち、パルスエネルギーのばらつき量をδp、平均値をpとすると、パルスエネルギーのばらつき(統計的分散)が小さくなるようにパルスエネルギーを制御したときのNパルス積算後の露光量のばらつきは、(δp/p)/N1/2と表すことができる。
【0011】
露光量制御精度を向上させるために、パルス毎にエネルギーの制御を行うアルゴリズムが採用されている。具体的には、レーザ光源内に設けられているエネルギーモニタが参照され、単位時間内或いは任意のパルス数における積算パルスエネルギーが一定になるように、レーザ光源において設定されている印加電圧と出力エネルギーとの相関曲線に従って、印加電圧が制御される。このエネルギー制御のモードの他に、主としてレチクルのアライメント等、エキシマ光による計測シーケンスに採用されるエネルギー制御のモードもある。そのモードにおいては、レーザのパルス毎のばらつきが最小に抑えられるようなアルゴリズムが採用される。このように、露光量制御には少なくとも2種類のモードがあることになる。
【0012】
また、エネルギー制御を行う際に参照されるセンサに関しても少なくとも2種類のモードがある。あるモードでは、レーザ光源内に設けられているエネルギーモニタが参照され、その計測結果に基づきエネルギー制御が行われる。また他のモードでは、露光装置内に設けられているインテグレータセンサが参照され、その計測結果に基づき露光量制御が行われる。後者のモードによると、レーザ光源から露光装置に至る光路上で予期せぬエネルギー変動が発生した場合であっても、露光装置内におけるパルスエネルギーの移動平均が一定になるような制御が可能となる。ここで、「予期せぬエネルギー変動」というのは、
(1)チップ内で生じるレーザの光軸ずれ、
(2)チップ内或いはチップ間における、露光装置の振動及び傾き等に起因する、露光装置への光束入射口における光束のけられの変動、
(3)チップ内或いはチップ間における、レーザ光源から露光装置に至る光路を提供している光学系の透過率の変動、
等に起因する変動であり、何れもエネルギーモニタ及びインテグレータセンサ間の計測誤差として表面化する。このように、インテグレータセンサを参照した露光量制御においては、上述した変動要素がキャンセルされ、露光量制御精度を高めることができる。以下、インテグレータセンサを参照した露光量制御を「フィードバック制御」と称する。
【0013】
以上の通り、露光装置における露光制御には少なくとも4種類のモード(発振モード)があることになる。具体的には、
(1)レーザ光源内に設けられているエネルギーモニタを参照し、且つ、パルス毎のエネルギーばらつきが抑制されるようなアルゴリズムを採用する発振モード、
(2)同じくエネルギーモニタを参照し、且つ、積算エネルギーが一定になるようなアルゴリズムを採用する発振モード、
(3)露光装置内に設けられるインテグレータセンサを用いてフィードバック制御を行い、且つ、パルス毎のエネルギーばらつきが抑制されるようなアルゴリズムを採用する発振モード、
(4)同じくフィードバック制御を行い、且つ、積算エネルギーが一定になるようなアルゴリズムを採用する発振モード、
等の複数の発振モードがある。さらには、積算エネルギーとパルス毎のエネルギーの両方のばらつきを抑えるような制御方式が採用されることもあり、露光装置には種々の発振モードがあることになる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
このように選択的に切替可能な複数の発振モードを有する光源を備えた露光装置においては、発振モードの切替に際して一時的にレーザの発振状態が不安定になり、露光制御を安定に行うことができないことがある。例えば、レーザ光源内に設けられているエネルギーモニタを用いた制御からフィードバック制御に切り替えられると、切替直後の数十パルスについて正しい制御を行うことができない状況が生じる。また、制御のアルゴリズムが異なる2つのモード間における切替に際しても、物理的に不安定な状況が生じることがある。これらの現象は、レーザ光源内における電気系の過渡的な現象とも考えられるが、どのような原因にしろ、予め不安定性の程度を予測し除去することは困難である。
【0015】
さらに、発振モードが切り替えられると、レーザ光源において学習されていた内容が誤って使用される恐れがある。ここで、「学習」というのは、レーザ光源の特性等に関する制御データの記憶及びその記憶内容の更新をいう。レーザ光源は、通常の発振動作に並列して、バースト発振の過渡現象のマッピングや印加電圧とエネルギーとの相関曲線の学習を行っている。しかし、学習の課程で用いられる制御データはあくまでその発振モードにおける制御データであり、条件の異なる他の発振モードではその制御データに関する学習結果はその発振モードにおける制御の参考にはならない。場合によっては、その発振モードにおいて誤った制御データが用いられることになる。
【0016】
よって、本発明の目的は、選択的に切替可能な複数の発振モードを有する露光方法又は露光装置において、露光制御を安定に行い得るようにするところにある。本発明の他の目的は、そのような露光方法又は露光装置に適用可能なレーザ光源を提供することである。本発明の更に他の目的は以下の説明から明らかになる。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、選択的に切替可能な複数の発振モードに応じた発振条件に従ってレーザ光を発振する光源(1)を備えた露光装置において、前記発振モードの切替時に、切替後の発振モードで発振されたレーザ光を使用する前にダミー発振することを特徴とする露光装置が提供される。ダミー発振は、例えば、切替後の発振モードに応じた発振条件と同一の発振条件で行われる。
【0018】
発振モードの切替直後には、前述したようにレーザ発振が不安定になる傾向がある。レーザ発振が不安定になる期間は、一般的にはパルス数にすると数十パルス程度であることが実験的に明らかにされている。従って、本発明のようにダミー発振を行ってレーザ発振が不安定な期間におけるパルスを所謂捨てパルスとすることにより、これを実際の露光及び計測に使用せずに済み、実際の露光及び計測においては精度良くエネルギー制御されたパルスのみを使用することができるようになる。その結果、安定な露光制御が可能になり、本発明の目的の一つが達成される。
【0019】
望ましくは、ダミー発振する時間及びダミー発振から本発振までの時間の少なくとも一方を含むパラメータを記憶保持する記憶装置が採用され、ダミー発振時に対応するパラメータに従って発振が行われる。
【0020】
望ましくは、レーザ光の光路を選択的に遮断するシャッタが採用され、ダミー発振中はシャッタによりレーザ光の光路が遮断される。このようなシャッタを採用することにより、ダミー発振に係わるレーザ光を実際の露光及び計測から排除することを容易に行うことができる。
【0021】
本発明の他の側面によると、選択的に切替可能な複数の発振モードを有し、該複数の発振モードの中から選択された発振モードに応じた発振条件に従ってレーザ光を発振する光源(1)を備えた露光装置において、前記複数の発振モード毎に前記レーザ光の発振制御データを備え、前記複数の発振モードの中から選択された発振モードに対応する制御データを使って前記レーザ光の発振を行うことを特徴とする露光装置が提供される。制御データは、例えば、発振中のレーザ光を検出することによって作成される。
【0022】
レーザ光源は、自己発振により、印加電圧と出力エネルギーとの相関、エネルギー制御時の過渡現象のマッピング等、種々の現象を学習し、レーザ発振に際してはその学習内容が反映される制御が行われている。発振モードが異なると、印加電圧と出力エネルギーとの相関関係や過渡現象の程度が異なることが予想される。よって、発振モード毎に学習結果を発振制御データとして保持及び活用することにより、それぞれの発振モードに最適な制御パラメータを当該発振モードにおける露光制御に供することができる。
【0023】
望ましくは、制御データは、光源に対する印加電圧と光源から発振されるレーザ光のエネルギーとの関係を含む。
【0024】
望ましくは、複数の発振モードは、光源の内部に設けられる第1のセンサ(エネルギーセンサ)を用いるモードと前記光源から射出されたレーザ光の一部を検出する第2のセンサ(インテグレータセンサ)を用いるモードとを含む。
【0025】
また、本発明によると、選択的に切替可能な複数の発振モードを有し、各発振モードに応じた発振条件でレーザ光を発振するレーザ光源において、前記レーザ光を発振する発振器と、該発振器からのレーザ光の光路を遮断するシャッタと、前記発振モードの切替時に前記シャッタで前記光路を遮断した状態で、前記発振器からレーザ光をダミー発振させる制御手段と、を備えたことを特徴とするレーザ光源が提供される。
【0026】
さらに、本発明によると、選択的に切替可能な複数の発振モードを有し、各発振モードに応じた発振条件でレーザ光を発振するレーザ光源において、前記レーザ光を発振する発振器と、前記複数の発振モード毎に前記レーザ光を発振を制御するための制御データを有し、前記複数の発振モードのうち選択された発振モードに対応する制御データに基づいて前記発振器からのレーザ光の発振を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするレーザ光源が提供される。
【0027】
また、本発明によると、選択的に切替可能な複数の発振モードに応じた発振条件に従って発振する光源からのレーザ光でマスクを介して基板を露光する露光方法において、前記発振モードの切替時にダミー発振し、前記ダミー発振した後に、切替後の発振モードで発振されたレーザ光で露光することを特徴とする露光方法が提供される。
【0028】
さらに、本発明によると、選択的に切替可能な複数の発振モードを有し、該複数の発振モードの中から選択された発振モードに応じた発振条件に従って発振する光源からのレーザ光でマスクを介して基板を露光する露光方法において、前記複数の発振モード毎に前記レーザ光の発振制御データを備え、前記複数の発振モードの中から選択された発振モードに対応する制御データを使って前記レーザ光の発振を行うことを特徴とする露光方法が提供される。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の望ましい実施の形態を詳細に説明する。ここでは、パルスエネルギー源としてエキシマレーザ光源を使用するステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置における露光量制御に本発明が適用される。
【0030】
図1は、本発明が適用されるステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置の構成図である。エキシマレーザ光源1からパルス発光されたレーザビームLBは、シリンダレンズ及びビームエキスパンダ等から構成されるビーム整形光学系2により、後続のフライアイレンズ5に効率良く入射するようにビームの断面形状が整形される。光源1としては、KrF(波長248nm)、又はArF(波長193nm)等のエキシマレーザ光源を使用することができる。尚、パルスエネルギー源として、F(波長157nm)等のレーザ光源、金属蒸気レーザ光源やYAGレーザの高調波発生装置等のパルス光源、さらには軟X線のような極短紫外光(EUV光)のビーム発生装置を使用する場合にも、本発明を適用することができる。
【0031】
光学系2から射出されたレーザビームLBは、エネルギー調整器としてのエネルギー粗調器3に入射する。粗調器3は、回転自在なレボルバ上に透過率が異なる複数の光学的なフィルタを配置したものであり、そのレボルバを回転することにより、入射するレーザビームLBに対する透過率を100%から複数段階で切り替えることができるように構成されている。尚、そのレボルバと同様のレボルバを直列に2段配置し、2段のフィルタの組み合わせによってより細かく透過率を調整することができるようにしてもよい。
【0032】
エネルギー粗調器3から射出されたレーザビームLBは、光路折り曲げ用のミラーMを介してフライアイレンズ5に入射する。フライアイレンズ5は、後述のレチクル11を均一な照度分布で照明するために多数の2次光源を形成する。フライアイレンズ5の射出面には照明系の開口絞り6が配置され、開口絞り6内の2次光源から射出されるパルス照明光ILは、反射率が小さく且つ透過率が大きなビームスプリッタ7に入射し、ビームスプリッタ7を透過した露光ビームとしてのパルス照明光ILは、第1リレーレンズ8Aを経てレチクルブラインド9Aの矩形の開口部を通過する。レチクルブラインド9Aは、レチクルのパターン面に対する共役面の近傍に配置されている。また、レチクルブラインド9Aの近傍には、走査方向の位置及び幅が可変の開口部を有する可動ブラインド9Bが配置されており、走査露光の開始時及び終了時には、可動ブラインド9Bを介して照明領域をさらに制限することによって、不要な部分への露光が防止される。尚、可動ブラインド9Bは、後述するダミー発振に際して光路を遮断するためのシャッタとしても機能することができる。
【0033】
レチクルブラインド9A及び可動ブラインド9Bを通過したパルス照明光ILは、第2リレーレンズ8B及びコンデンサレンズ10を経て、レチクルステージ15上に保持されたレチクル11上の矩形の照明領域12Rを均一な照度分布で照明する。照明領域12R内のパターンを投影光学系13を介して投影倍率α(αは例えば1/4或いは1/5)で縮小した像が、フォトレジストが塗布されたウエハ14上の矩形の露光領域(照野フィールド)12Wに投影露光される。ウエハ14は、例えばシリコン又はSOI(silicon on insulator)等のウエハである。
【0034】
以下、投影光学系13の光軸AXに平行にZ軸を取り、その光軸AXに垂直な平面内で照明領域12Rに対するレチクル11の走査方向(即ち図1の紙面に平行な方向)をY方向、その走査方向に垂直な非走査方向をX方向として説明する。
【0035】
レチクルステージ15は、レチクルステージ駆動部18によりY方向に駆動される。レチクルステージ15上に固定された移動鏡及び外部のレーザ干渉計16により計測されるレチクルステージ15のX座標、Y座標及び回転角がステージコントローラ17に供給され、ステージコントローラ17は、供給された座標等に基づいて、レチクルステージ駆動部18を介してレチクルステージ15の位置及び速度を制御する。
【0036】
ウエハ14は、図示しないウエハホルダを介してZチルトステージ19上に載置され、ステージ19はXYステージ20上に載置されている。XYステージ20は、X方向及びY方向にウエハ14の位置決めを行うと共に、Y方向にウエハ14を等速で移動させる(走査する)。また、Zチルトステージ19は、ウエハ14のZ方向の位置(フォーカス位置)を調整すると共に、XY平面に対するウエハ14の傾斜角を調整する機能を有する。Zチルトステージ19上に固定された移動鏡及び外部のレーザ干渉計22により計測されるXYステージ20のX座標、Y座標及び回転角がステージコントローラ17に供給され、コントローラ17は、供給された座標等に基づいて、ウエハステージ駆動部23を介してXYステージ20の位置及び速度を制御する。
【0037】
ステージコントローラ17の動作は、装置全体を統括制御する図示しない主制御系によって制御されている。走査露光時には、レチクル11がレチクルステージ15を介して照明領域12Rに対して+Y方向(又は−Y方向)に速度Vで走査されるのに同期して、ウエハ14は、XYステージ20を介して露光領域12Wに対して−Y方向(又は+Y方向)に速度α・V(αはレチクル11からウエハ14に対する投影倍率)で走査される。
【0038】
Zチルトステージ19上のウエハ14の近傍には、光電変換素子からなる照度むらセンサ21が設けられており、センサ21の受光面はウエハ14の表面と同じ高さに設定されている。センサ21としては、遠紫外域で感度があり且つパルス照明光を検出するために高い応答周波数を有するPIN型のフォトダイオード等を使用することができる。センサ21の検出信号は、図示しないピークホールド回路及びアナログ/デジタル(A/D)変換器を介して露光コントローラ26に供給される。
【0039】
一方、ビームスプリッタ7で反射されたパルス照明光ILは、集光レンズ24を介して光電変換素子からなるインテグレータセンサ25で受光され、インテグレータセンサ25の光電変換信号は、図示しないピークホールド回路及びA/D変換器を介して出力DS(デジタル信号)として露光コントローラ26に供給される。
【0040】
インテグレータセンサ25の出力DSと、ウエハ14の表面(像面)上でのパルス照明光ILの単位面積当たりのパルスエネルギー(露光量)との相関係数は予め求められて露光コントローラ26内に記憶されている。露光コントローラ26は、ステージコントローラ17からのステージ系の動作情報に同期して、制御情報TSをエキシマレーザ光源1に供給することによって、光源1の発光タイミング及び発光パワー等を制御する。さらに、露光コントローラ26は、エネルギー粗調器3のフィルタを切り替えることによって透過率を制御し、ステージコントローラ17は、ステージ系の動作情報に同期して可動ブラインド9Bの開閉動作を制御する。
【0041】
図2は図1に示される露光装置の露光量制御系を示すブロック図である。エキシマレーザ光源1は、一つの独立したケーシングによって提供されている。ビーム整形光学系2及びエネルギー粗調器3は図示しない他のケーシング内に収容されており、フライアイレンズ5よりも下流側の部分は露光装置本体30の内部に収容されている。特にこの実施形態では、フライアイレンズ5とビームスプリッタ7との間には、パルス照明光ILの光路を切り替えるための可動ミラー31が設けられている。可動ミラー31は、パルス照明光ILを反射させない第1の位置とパルス照明光ILを反射させる第2の位置との間で移動可能である。従って、可動ミラー31が第1の位置にあるときにはウエハ露光用の光路32が得られ、可動ミラー31が第2の位置にあるときには、計測用の光路33が得られる。
【0042】
エキシマレーザ光源1内において、パルスエネルギー源としてのレーザ共振器1aからパルス的に放出されたレーザビームは、透過率が高く僅かな反射率を有するビームスプリッタ1bに入射し、ビームスプリッタ1bを透過したレーザビームLBが外部に射出される。また、ビームスプリッタ1bで反射されたレーザビームは、出力センサとしての光電変換素子よりなるエネルギーモニタ1cに入射し、エネルギーモニタ1cからの光電変換信号が、図示しないピークホールド回路を介して出力ESとしてエネルギーコントローラ1dに供給されている。エネルギーモニタ1cの出力ESに対応するエネルギーの制御量の単位は(mJ/pulse)である。エネルギーコントローラ1dは、露光コントローラ26からの制御情報TSに基づいて高圧電源1e内の電源電圧を設定し、これによって、レーザ共振器1aから射出されるレーザビームLBのパルスエネルギーが所定の値の近傍に設定される。
【0043】
この場合、エキシマレーザ光源1の1パルス当たりのエネルギーの平均値は、通常、所定の中心エネルギーEにおいて安定化されているが、そのエネルギーの平均値はその中心エネルギーEの上下の所定の可変範囲(例えば±10%程度)で制御することができるように構成されている。そして、その可変範囲内で例えばパルスエネルギーの微変調が行われる。
【0044】
エキシマレーザ光源1内のビームスプリッタ1bの外側には、露光コントローラ26からの制御情報に応じてレーザビームLBを随時遮光するためのシャッタ1fが配置されている。
【0045】
走査露光時の基本的な露光量制御動作として、露光コントローラ26は、インテグレータセンサ25の出力DSを直接フィードバックすることによって、エキシマレーザ光源1の次のパルス発光時のパルスエネルギーの目標値を設定する。即ち、例えばオペレータによって、まず図1に示されるウエハ14上のレジストの既知の感度に応じて、ウエハ14上の各点に対する積算露光量の目標値である目標露光量Sが定められると共に、エキシマレーザ光源1のパルスエネルギーの既知のばらつき、及び予め設定されている必要な露光量制御再現精度よりウエハ14上の各点に対するパルス照明光ILの最小露光パルス数Nmin が定められている。
【0046】
これらのパラメータに基づいて、露光コントローラ26は、エネルギー粗調器3の透過率を最大にして、実際に例えば上述の中心エネルギーEの近傍でエキシマレーザ光源1に所定回数パルス発光を行わせて、インテグレータセンサ25を介してウエハ14上での平均的なパルスエネルギーPを計測し、この計測結果でその積算露光量の目標値Sを割ることによって露光パルス数Nを求める。尚、実際にはS/Pは必ずしも整数にはならないため、S/Pを整数化した値が使用される。ここでは、簡単のため、S/Pが整数であるとして説明する。
【0047】
そして、求められた露光パルス数Nが既にNmin 以上であれば、そのまま露光に移行するが、露光パルス数NがNmin より小さいときには、露光コントローラ26は、その露光パルス数NがNmin 以上となる範囲で且つ例えば最も大きな透過率を持つフィルタをエネルギー粗調器3中から選択し、選択されたフィルタを設定する。選択された透過率をTとすると、露光パルス数Nは(S/(P・T))となる。実際には、(S/(P・T))も必ずしも整数とはならないため、整数化の必要があるが、ここでは簡単のために整数であるとする。この結果、1パルス当たりの目標エネルギーはS/Nとなる。
【0048】
また、図1に示されるウエハ14上のスリット状の露光領域12Wの走査方向の幅(スリット幅)をD、エキシマレーザ光源1の発振周波数(又はパルスの繰り返し周期の逆数)をF、走査露光時のウエハ14の走査速度をVとすると、パルス発光間にウエハ14が移動する間隔はV/Fであるから、その露光パルス数Nは次式で表される。
【0049】
N=D/(V/F) …(1)
即ち、その露光パルス数Nが得られるように、スリット幅D、及び発振周波数F等を設定し直す必要がある。但し、通常そのスリット幅Dは一定であるため、(1)式が成立するように発振周波数F及び走査速度Vの少なくとも一方が設定され、走査速度Vの情報はステージコントローラ17に供給される。
【0050】
その後の走査露光時に露光コントローラ26は、エネルギーコントローラ1dにパルス発光を開始する指令を発した後、一例として発光パルス数がNmin (又は所定の数)に達するまでは、インテグレータセンサ25で検出されるウエハ14上での各パルスエネルギーの平均値がS/Nとなるように、レーザ共振器1aに周波数Fでパルス発光を行わさせる。これと平行して、露光コントローラ26は、各パルス照明光毎にインテグレータセンサ25からの出力DSよりウエハ14上での露光量Pを求め、この露光量Pを積算して、ウエハ14上での実際の積算露光量(移動和)を求める。そして、発光パルス数がNmin に達してからは、順次一連のNmin パルス分の積算露光量(移動ウインドウ)STが常に次の目標値となるように、エネルギーコントローラ1dを介してレーザ共振器1aの次のパルス発光時の高圧電源1eの電圧を制御する。Nmin パルス分の時間は制御系にとっての単位時間ともみなすことができる。尚、その電圧は、レーザ共振器1a内のガスの状態及びレーザ共振器1aの状態等を考慮して決定される。
【0051】
ST=Nmin ・(S/N) …(2)
そして、図3に示されるように、k番目、(k+1)番目、(k+2)番目、…のパルス発光時には、それぞれそれまでのNmin パルス分の積算露光量STが(2)式に近づくように、高圧電源1eが制御され、エキシマレーザ光源1における1パルス当たりのエネルギーの微調整が行われる。これによって、走査露光後のウエハ14上の各点には、必要な露光量制御精度で目標値Sとなる積算露光量が与えられる。
【0052】
このように本実施形態では、インテグレータセンサ25の出力DSに基づいてエキシマレーザ光源1の次のパルス発光時の目標エネルギーが設定されている。その結果、例えば図2に符号LB’で示されるように、フライアイレンズ5に対して入射するレーザビームLBの光軸ずれが生じたとしてもウエハ14上の各点では適正な露光量が得られる。
【0053】
このような光軸ずれが生じているときに、図2に示されるエキシマレーザ光源1に対して内部のエネルギーモニタ1cの出力ESを基準として一定出力でパルス発光を行わせると、インテグレータセンサ25により計測されるウエハ14上でのパルス毎の露光量P1のNmin パルス毎の平均値は、図4(a)の曲線51A,51B,…,51Dのようにショット内、ショット間において次第に変化してしまう。図4(a)〜(c)の横軸は露光開始からの経過時間tであり、曲線51A〜51Dは互いに異なるショット領域に露光する際の露光量の変化を示している。
【0054】
これに対して、本実施形態では、実際にインテグレータセンサ25で計測されるウエハ14上でのパルス発光毎の露光量Pが一定になるように、図4(b)の曲線52A〜52Dに示すように、エキシマレーザ光源1のパルス発光毎のパルスエネルギーの目標値Eをフィードバック制御している。曲線52A〜52Dは、曲線51A〜51Dに対応する各ショット領域への露光中のパルスエネルギーの目標値の変化を現している。この結果、光軸ずれが生じても、最終的にウエハ14上でのパルス発光毎の露光量Pは、図4(c)に示すように目標値の近傍でばらつくようになるため、走査露光後に必要な露光量制御精度が得られる。同様に、例えば図1に示されるミラーMにおけるレーザビームLBに対する反射率が経時変化して、エネルギーモニタ1cとインテグレータセンサ25との出力の相関関係が変化するような場合であっても、インテグレータセンサ25の出力を直接フィードバックすることによって、高い露光量制御精度が得られる。
【0055】
エキシマレーザ光源1の出力はインテグレータセンサ25の出力DSに基づいて設定されているため、原理的にはエキシマレーザ光源1内のエネルギーモニタ1cを使用する必要はない。しかしながら、単にインテグレータセンサ25の出力DSのみを用いた場合には、例えば光軸ずれが大きくなったときに、エキシマレーザ光源1の出力が可変範囲の上限又は下限に達したかどうかを正確に判定することが困難である。さらに、実際には露光パルス数Nを決定するための値(S/(P・T))は必ずしも整数とはならないため、通常は最初からエキシマレーザ光源1の出力は中心エネルギーEから所定の割合でずらした値に設定される。このような場合には、エネルギーモニタ1cの出力を用いて、エキシマレーザ光源1の出力の目標値を直接中心エネルギーから外れた値に設定することによって、高速にその出力制御を行うことができる。また、エネルギーモニタ1cを用いてエキシマレーザ光源1の自己診断を行うこともできる。
【0056】
以上の説明は、インテグレータセンサ25を用いたフィードバック制御が行われ、且つ、積算エネルギーが一定になるようなアルゴリズムが採用されている場合についてのものである。これに対して、エキシマレーザ光源1内に設けられているエネルギーモニタ1cを用いた制御の例を次に説明する。ここでは、パルス毎のエネルギーばらつきが抑制されるアルゴリズムが採用される。
【0057】
光源としてパルス発振で励起されるエキシマレーザを用いる場合、パルス放電そのものが放電ガスや電極の表面状態に依存する本質的に統計的な現象であるため、パルス毎のレーザ光エネルギーを一定にすることは事実上困難である。特に、連続発振等の発振開始直後では、放電を支配するガスや電極の状態が過渡的に変化するため、レーザ光エネルギーが、図5に示されるように、発振開始直後には大きく、その後徐々に減少していくというパターン(スパイク現象)が一般的に見られる。
【0058】
従って、バースト発振に際しては、発振状態を開始するたびに開始直後のレーザ光のエネルギーは大きくその後徐々に減少していくという、図6に示すようなスパイク状のパターンを避けることができない場合がある。前述したフィードバック制御ではこのスパイク状のパターンを消去することは困難である。
【0059】
エキシマレーザ光源1から出力されるレーザ光のパルスエネルギーの大きさは、図7に示すように放電電圧に従って変化する。この性質は、例えば、エネルギーモニタ1cを用いてエキシマレーザ光源1の出力を長期的に一定に維持するために利用することができる。
【0060】
この例では、スパイク状パターンを消去しバースト発振中における各パルス毎のエネルギー値をほぼ一定とするように放電電圧を制御する制御手段をエネルギーコントローラ1dに設け、感光剤に対して影響を与えない程度のパルス発振を行ってそのときパルスエネルギーと放電電圧(印加電圧)との関係を求めてエネルギーコントローラ1d内に設けられる記憶手段に記憶し、この関係に基づいて高圧電源1eからレーザ共振器1aに供給される放電電圧の制御を行うものである。
【0061】
即ち、スパイクの発生要因であるガスの状態や電極の状態がパルスエネルギーに与える状況を探るために、感光剤に影響を与えない状態でパルス発振を行い、そのときのレーザ光のパルスエネルギーと放電電圧との関係を計測してその値から図9の(a)に示されるようなスパイク状のパターンを予測する。パルスの発振時にはそのスパイク状パターンを相殺するために、図9の(b)に示すように放電電圧を時間的に変化させてパルス発振を行う。こうすることで、バースト発振が行われているエキシマレーザ光源1において、エネルギーのスパイク状のパルスを事実上消去することができる。
【0062】
そのために、エネルギーコントローラ1dは、図7に示すようなレーザ共振器1aに対する放電電圧とレーザ光のパルスエネルギーとの関係を求めて記憶しており、高圧電源1eに対して放電電圧に関する指令(信号)を出力する。エネルギーコントローラ1dは、レーザ光のパルスエネルギーが一定になるような、パルスの発振時間に対する放電電圧の予め定められたパターンを制御データとして有している。レーザ光のエネルギー値はガス状態、電極の消耗状態等に依存するため、こうしたパターンを決定するには、バースト発振の停止中にできるだけ少ないパルス数だけ発振を行い、そのときの放電電圧とレーザ光のエネルギーとの関係を求めて決定することが好ましい。
【0063】
図8は、このような放電電圧の制御による露光制御のためのアルゴリズムの一例をフローチャートで示したものである。以下、このフローチャートに従って制御の具体例を説明する。
【0064】
エネルギーコントローラ1dは、前述したような発振時間に対する放電電圧の関係についてのパターンを予め初期データとして記憶している(ステップ101)。エネルギーコントローラ1dは露光コントローラ26からの発振命令の有無をチェックし(ステップ102)、無ければパターンのデータを更新するルーチンAに移る。
【0065】
ルーチンAではまず露光コントローラ26からの発振命令を受け付けないようにし(ステップ201)、シャッタ1fを閉じる(ステップ202)。こうしてレーザ光が露光対象物に届かない状態を作り出した後、発振を行う(ステップ203)。この発振は極力レーザの状態に影響を与えないのが望ましく、出来れば1〜数パルスが良い。このときのレーザ光はエネルギーモニタ1cで測定され(ステップ204)、エネルギーコントローラ1dでレーザ光のパルスエネルギーが算出される(ステップ205)。このときのエネルギー値に従って放電電圧のパターンのデータが更新される(ステップ206)。
【0066】
データ更新の方法としては例えば次のようなものがある。放電電圧のパターンは、通常、図9の(b)のように、徐々に放電電圧値を上昇させ、一定値に達した後はそのパルスエネルギー値を保つ通常のフィードバック制御又は電圧を一定に保つ制御とするものである。
【0067】
図9の(a)のように一定の放電電圧で発振したときに生じるレーザ光エネルギーのスパイク状パターンが強く現れると考えられるなら、エネルギーコントローラ1dに記憶される放電電圧変化のパターン(図9の(b))は急峻になり、初期の放電電圧値はより小さくされるべきである。逆にスパイク状パターンが弱く現れると予測されるなら、エネルギーコントローラ1dに記憶される放電電圧変化のパターンは緩慢になるべきである。
【0068】
即ち、シャッタ1fを閉じてこのルーチンAで発振したときの最初の数パルスのエネルギー値が大きいときには、放電電圧変化のパターンは急峻になる。逆にさほど大きくなければ放電電圧変化のパターンは緩慢になる。
【0069】
こうしてパターンのデータが更新されると、ルーチンAの最初で行った発振受付の停止を解除し(ステップ207)、露光コントローラ26からの発振命令があればそれに従ってシャッタ1fを開き(ステップ103)、エネルギーコントローラ1dに記憶され或いは更新されたパターンのデータに基づいてレーザ光を発振する(ステップ104)。所定パルス数だけ或いは所定の露光量だけ露光を行った後、シャッタ1fを閉じる(ステップ105)。
【0070】
次に、本発明で特徴的な、露光制御の安定化に効果的なダミー発振の具体的な形態を説明する。
【0071】
以上の説明では、選択的に切替可能な複数の発振モードとして2つのモードを例示した。複数の発振モードの分類としては、エネルギー自体の制御アルゴリズムによる分類と、エネルギー制御を行う際に使用するセンサによる分類とを挙げることができる。
【0072】
前者の分類では、パルス間のエネルギーばらつきを抑制する制御アルゴリズム(例えば図8による説明を参照)と、数十パルスの積算パルスエネルギーが一定になるように制御するアルゴリズム(例えば図3による説明を参照)とが考えられる。また、各パルスエネルギーと積算パルスエネルギーの両者ができるだけ一定に制御されるようなバランス制御も考えられる。さらには、露光コントローラ26内で制御パラメータを持ち、各パルスにおける最適な放電電圧を例えば図7に示される関係に基づいて計算した後にエキシマレーザ光源1に送る方法もある。これらの制御アルゴリズムにおける手順は、例えば、エネルギーコントローラ1d内に記憶されている。
【0073】
後者の分類では、エキシマレーザ光源1内においてレーザ共振器1aの近傍に設けられるエネルギーモニタ1cを使用する方法と、エキシマレーザ光源1と露光装置本体30(図2参照)との間のエネルギー変動をキャンセルするために露光装置30内に設けられるインテグレータセンサ25を使用する方法(フィードバック制御)とが考えられる。
【0074】
このように、露光装置においては、複数の制御アルゴリズムと、制御に使用する複数のセンサとの組み合わせによって、複数の発振モードが存在することになり、これらの複数の発振モードが一つの露光装置において併用されることとなる。
【0075】
本発明の望ましい実施形態においては、ウエハ14の露光に際しては第1の発振モードが採用され、レチクル11(マスク)のアライメントに際しては第2の発振モードが採用される。第1の発振モードにおいては、インテグレータセンサ25を用いたフィードバック制御が行われ且つ積算エネルギーが一定になるようなアルゴリズムが採用される。また、第2の発振モードにおいては、エキシマレーザ光源1内に設けられているエネルギーモニタ1cを用いた制御が行われ且つパルス毎のエネルギーばらつきが抑制されるようなアルゴリズムが採用される。その理由は次の通りである。
【0076】
ウエハ14の露光では、露光量制御精度を一定に保つためには、エキシマレーザ光源1と露光装置本体30との間のエネルギー変動を抑えるためにフィードバック制御が望ましい。また、ウエハ14上の一点は数十パルスの積算パルスによって感光されることから、積算エネルギーが一定になるようなアルゴリズムが要求される。一方、レチクル11のアライメントのような計測シーケンスでは、エキシマ光の光路は図2に示されるように露光用光路32とは別に用意された計測用光路33として与えられるので、インテグレータセンサ25を用いたフィードバック制御は行うことができない。また、アライメントに使用されるセンサのセンサレンジ等の要求から、パルス毎のエネルギーばらつきが抑えられている方が好ましい場合が多い。
【0077】
このように露光装置(又は光源)が選択的に切替可能な複数の発振モードを有している場合にモード切替に際して物理的な不安定な状況が生じることは前述した通りである。
【0078】
レチクル11のアライメントの直後に第2の発振モードから第1の発振モードに切り替えてウエハ14の露光を行う場合を考える。ウエハ14の露光で用いられる第1の発振モードでは、インテグレータセンサ25を用いたフィードバック制御が行われ且つ積算エネルギーが一定になるようなアルゴリズムが採用されている。ウエハ14の第1チップを露光する直前に例えば50パルスのダミー発振が実行される。ダミー発振はウエハ14の露光におけるのと同様に第1の制御モードで実行される。ダミー発振に際しては、可動ブラインド9B(図1参照)或いはシャッタ1fを閉じておくことによって、露光対象物であるウエハ14に対するダミー発振の影響は一切ない。例示された50パルスのダミー発振はモード切替直後の最初のバーストであり、物理的に非常に不安定な状態で発振されたものである。その後のパルスはエネルギー的に良好に制御されているので、上述のようにダミー発振を行うことによって、ウエハ14に対する実露光において露光量制御精度を効果的に高めることができる。
【0079】
次に、ウエハ14の露光を終了して次のウエハを露光する前にレチクル11の再アライメントを行う必要のあるプロセスを考える。この場合、インテグレータセンサ25を用いた第1の発振モードからエネルギーモニタ1cを用いた第2の発振モードに切り替わる。切替直後のパルスを用いてアライメントを行うと、露光量制御の収束性等の影響から最初の数十パルスは所望値に対して大きくばらついたエネルギーを有することになる。レチクル11のアライメントに使用するセンサの使用レンジは一般に極端に小さく、各パルスのエネルギーがそのレンジから外れると、そのセンサを用いたアライメントを良好に行うことができないことがある。そこで、第1の発振モードから第2の発振モードに切り替えるに際しても、第2の発振モードに応じた発振条件に従ってダミー発振を行うこととする。これにより、エネルギーばらつきが小さくなった後のパルスをアライメントに供することが可能になり、アライメントに際しての計測を良好に行うことができる。
【0080】
これらのダミー発振の各々におけるパルス数は、レーザ固有の値と考えられ、また、長期的にはレーザチャンバの寿命等で変化することも考えられる。従って、各ダミー発振に際してのパルス数はエキシマレーザ光源1及び露光装置本体30毎にパラメータとして入力及び変更が可能であることが望ましい。ここでは、ダミー発振に際してのパルス数について言及したが、ダミー発振する時間或いはダミー発振から本発振までの時間をパラメータとして記憶保持する記憶装置を設け、ダミー発振時に対応するパラメータに従って発振を行うようにしても良い。この場合にも、発振モードの切り替えにかかわらず安定な露光制御を行うことができる。
【0081】
また、エキシマレーザ光源1は、自己学習によって獲得するパラメータを複数の発振モード毎に発振制御データとして備えている。自己学習の例としては図8に示されるアルゴリズムを参照されたい。そして、エネルギーコントローラ1d(図2参照)は、露光装置本体30からの発振モードの切り替えの指令を受け取るたびに、発振時に参照されるべき種々のパラメータを切り替え、切り替わったパラメータで発振が行われる。これらのパラメータは、例えば、図7に示されるような放電電圧とパルスエネルギーとの相関曲線、バースト始めの過渡現象のマッピングを含む。このように、複数の発振モードから選択されたある発振モードに対応する発振制御データを使ってレーザ光の発振を行うことによって、発振モードの切り替えにかかわらず露光制御を安定に行うことができる。
【0082】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施の形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0083】
例えば、上記の実施の形態では、ステップ・アンド・スキャン方式の縮小投影型走査露光装置(スキャニング・ステッパー)についての説明としたが、例えばレチクルとウエハとを静止させた状態でレチクルパターンの全面に露光用照明光を照射して、そのレチクルパターンが転写されるべきウエハ上の1つの区画領域(ショット領域)を一括露光するステップ・アップ・リピート方式の縮小投影型露光装置(ステッパー)、さらにはミラープロジェクション方式やプロキシミティ方式等の露光装置、その他のあらゆる形式の露光装置にも同様に本発明を適用することが可能である。
【0084】
また、半導体素子、液晶ディスプレイ、薄膜磁気ヘッド、及び撮像素子(CCDなど)の製造に用いられる露光装置だけでなく、レチクル、又はマスクを製造するために、ガラス基板、又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、選択的に切替可能な複数の発振モードを有する露光方法又は露光装置において安定な露光制御が可能になるという効果が生じる。また、本発明によると、そのような露光方法又は露光装置に適用可能なレーザ光源の提供が可能になるという効果もある。本発明の特定の実施形態による効果は以上説明した通りであるので、その説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の望ましい実施形態で使用されるステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置を示す構成図である。
【図2】 図1に示される露光装置の露光量制御系を示すブロック図である。
【図3】 一連のNminパルス発光毎の積算露光量を一定にするように露光量制御を行う際の説明図である。
【図4】 (a)はエキシマレーザ光源1の出力を一定にして露光を行う場合のウエハ上での露光量の変化の一例を示す図、(b)はウエハ上での所定数のパルス発光毎の積算露光量が一定になるように定められた次のパルスエネルギーの目標値の変化の一例を示す図、(c)は図4(b)のようにパルスエネルギーの目標値を定めた場合のウエハ上でのパルス発光毎の露光量の変化を示す図である。
【図5】 エキシマレーザ光のパルス毎のエネルギーの大きさを示す線図である。
【図6】 バースト発振におけるエキシマレーザ光のパルス毎のエネルギーの大きさを示す図である。
【図7】 エキシマレーザの放電電圧とパルスエネルギーとの関係を説明する線図である。
【図8】 露光制御におけるアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【図9】 放電電圧のパターンの設定の例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…エキシマレーザ光源
1a…レーザ共振器
1c…エネルギーモニタ
1d…エネルギーコントローラ
1e…高圧電源
2…ビーム整形光学系
3…エネルギー粗調器
5…フライアイレンズ
7…ビームスプリッタ
11…レチクル
13…投影光学系
14…ウエハ
15…レチクルステージ
17…ステージコントローラ
25…インテグレータセンサ
26…露光コントローラ

Claims (16)

  1. 選択的に切替可能な複数の発振モードに応じた発振条件に従ってレーザ光を発振する光源を備えた露光装置において、
    前記発振モードは、レーザ光の制御に使用する複数のセンサの位置と複数の制御アルゴリズムの組み合わせに対応して選定され、
    前記発振モードの切替時に、切替後の発振モードで発振されたレーザ光を使用する前の、前記発振モードの切替直後のレーザ発振が不安定な期間にダミー発振することを特徴とする露光装置。
  2. 選択的に切替可能な複数の発振モードに応じた発振条件に従ってレーザ光を発振する光源を備えた露光装置において、
    前記複数の発振モードは、前記光源の内部に設けられた第1のセンサを用いるモードと前記光源から射出されたレーザ光の一部を検出する第2のセンサを用いるモードとを含み、
    前記発振モードの切替時に、切替後の発振モードで発振されたレーザ光を使用する前の、前記発振モードの切替直後のレーザ発振が不安定な期間にダミー発振することを特徴とする露光装置。
  3. 前記ダミー発振は、切替後の発振モードに応じた発振条件と同一の発振条件で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。
  4. 前記ダミー発振する時間及び前記ダミー発振から前記切替後の発振モードでの発振までの時間の少なくとも一方を含むパラメータを記憶保持する記憶装置を設け、ダミー発振時に対応するパラメータに従って発振することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の露光装置。
  5. 前記レーザ光の光路を選択的に遮断するシャッタを設け、前記ダミー発振中は前記シャッタにより前記レーザ光の光路を遮断することを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。
  6. 選択的に切替可能な複数の発振モードを有し、各発振モードに応じた発振条件でレーザ光を発振するレーザ光源において、
    前記発振モードは、内部のエネルギー検出器の出力に基づいてレーザ光の発振を制御する第1モードと、外部のエネルギー検出器の出力に基づいてレーザ光の発振を制御する第2モードとを含み、
    前記レーザ光を発振する発振器と、
    該発振器からのレーザ光の光路を遮断するシャッタと、
    前記発振モードの切替直後のレーザ発振が不安定な期間に前記シャッタで前記光路を遮断した状態で、前記発振器からレーザ光をダミー発振させる制御手段と、を備えたことを特徴とするレーザ光源。
  7. 選択的に切替可能な複数の発振モードを有し、各発振モードに応じた発振条件でレーザ光を発振するレーザ光源において、
    前記発振モードは、前記発振器からパルス発振されたレーザ光のエネルギーがパルス毎にほぼ一定になるように制御する第1モードと、前記発振器からパルス発振されたレーザ光の所定パルス数毎の積算エネルギーがほぼ一定になるようにレーザ光の発振を制御する第2モードとを含み、
    前記レーザ光を発振する発振器と、
    該発振器からのレーザ光の光路を遮断するシャッタと、
    前記発振モードの切替直後のレーザ発振が不安定な期間に前記シャッタで前記光路を遮断した状態で、前記発振器からレーザ光をダミー発振させる制御手段と、を備えたことを特徴とするレーザ光源。
  8. レーザ光を使って基板を露光する露光装置に用いられることを特徴とする請求項6又は7に記載のレーザ光源。
  9. 前記第1モードは露光装置内のアライメント動作時に用いられ、前記第2モードは露光装置内の露光動作時に用いられることを特徴とする請求項8に記載のレーザ光源。
  10. 選択的に切替可能な複数の発振モードに応じた発振条件に従って発振する光源からのレーザ光でマスクを介して基板を露光する露光方法において、
    前記発振モードは、レーザ光の制御に使用する複数のセンサの位置と複数の制御アルゴリズムの組み合わせに対応して選定され、
    前記発振モードの切替直後のレーザ発振が不安定な期間にダミー発振し、
    前記ダミー発振した後に、切替後の発振モードで発振されたレーザ光で露光することを特徴とする露光方法。
  11. 選択的に切替可能な複数の発振モードに応じた発振条件に従って発振する光源からのレーザ光でマスクを介して基板を露光する露光方法において、
    前記複数の発振モードは、前記光源の内部に設けられた第1のセンサを用いるモードと前記光源から射出されたレーザ光の一部を検出する第2のセンサを用いるモードとを含み、
    前記発振モードの切替直後のレーザ発振が不安定な期間にダミー発振し、
    前記ダミー発振した後に、切替後の発振モードで発振されたレーザ光で露光することを特徴とする露光方法。
  12. 選択的に切替可能な複数の発振モードに応じた発振条件に従って発振する光源からのレーザ光でマスクを介して基板を露光する露光方法において、
    前記発振モードは、前記発振器からパルス発振されたレーザ光のエネルギーがパルス毎にほぼ一定になるように制御する第1モードと、前記発振器からパルス発振されたレーザ光の所定パルス数毎の積算エネルギーがほぼ一定になるようにレーザ光の発振を制御する第2モードとを含み、
    前記発振モードの切替直後のレーザ発振が不安定な期間にダミー発振し、
    前記ダミー発振した後に、切替後の発振モードで発振されたレーザ光で露光することを特徴とする露光方法。
  13. 複数の発振モードの中から選択された発振モードに応じた発振条件に従ってレーザ光を発振するレーザ光源において、
    前記発振モードは、内部のエネルギー検出結果の出力に基づいてレーザ光の発振を制御する第1モードと、外部のエネルギー検出器の出力に基づいてレーザ光の発振を制御する第2モードとを含み、
    前記レーザ光を発振する発振器と、前記発振モードの切替直後のレーザ発振が不安定な期間に前記発振器からレーザ光をダミー発振させる制御手段と、を備えたことを特徴とするレーザ光源。
  14. 複数の発振モードの中から選択された発振モードに応じた発振条件に従ってレーザ光を発振するレーザ光源において、
    前記発振モードは前記発振器からパルス発振されたレーザ光のエネルギーがパルス毎にほぼ一定になるように制御する第1モードと、前記発振器からパルス発振されたレーザ光 の所定パルス数毎の積算エネルギーがほぼ一定になるようにレーザ光の発振を制御する第2モードとを含み、
    前記レーザ光を発振する発振器と、前記発振モードの切替直後のレーザ発振が不安定な期間に前記発振器からレーザ光をダミー発振させる制御手段と、を備えたことを特徴とするレーザ光源。
  15. レーザ光を使って基板を露光する露光装置に用いられることを特徴とする請求項13又は14に記載のレーザ光源。
  16. 前記第1モードは露光装置内のアライメント動作時に用いられ、前記第2モードは露光装置内の露光動作時に用いられることを特徴とする請求項15に記載のレーザ光源。
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