JPWO2002088175A1 - クローン病抗体結合性ペプチド及びクローン病の検査方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、クローン病の診断に有用な検査試薬、またクローン病の罹患の有無を簡便に精度よく検出する方法を提供する。本発明の検査試薬は、下記(a)または(b)のクローン病抗体結合性ペプチドを有効成分とする:(a)配列番号1〜4で示されるアミノ酸配列のいずれかから選ばれるアミノ酸配列を有するペプチド、(b)上記(a)に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチド。また本発明のクローン病の検査方法は、被験者の生体試料におけるヒト液胞型H+輸送性ATPase、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)、またはコメアレルゲンを認識する抗体の有無を検出することによって行うことができる。
Description
技術分野
本発明は、クローン病の診断に有用な検査試薬及びその有効成分に関する。また、本発明は血液などの生体試料を被験試料として用いて簡便に実施できるクローン病の検査方法に関する。
背景技術
クローン病は、免疫学的応答の異常状態に基づく局所の炎症性傷害として理解されている。従来、かかるクローン病の診断は、臨床症状、X線造影、内視鏡検査または病理学的検査等によって総合的に行われている。しかしながら、これらの方法は判別に経験と熟練した技術が必要であり、また患者に肉体的または精神的な苦痛を与えるといった欠点がある。このためクローン病を簡単に精度良く診断するための方法が求められている。
クローン病の病因は未だ不明であるが、食餌性抗原との関連も指摘されており、事実、抗パン酵母抗体や抗ブタアミラーゼ抗体等の特定の抗体がクローン病患者の血清中に特異的に増加していることが報告されている。このような知見から、最近ではクローン病の診断として、クローン病患者に特有に見られる抗体、例えば抗パン酵母抗体(松本譽之他,「炎症性腸疾患における血清anti Saccharomyces cerevisiae antibody測定の意義」難治性炎症性腸管障害調査研究班,平成10年報告書;Main J,et al.BMJ,1988 Oct 29,297(6656)1105−6;Barnes RM,et al.Int Arch Allergy Appl Immunol.1990,92(1):9−15;Giaffer MH,et al.Gut.1992 Aug,33(8),1071−5;Sendid B,et al.Clin Diagn Lab Immunol.1996 Mar,3(2),219−26;Quinton JF,et al.,Gut.1998 Jun,42(6)788−91)、抗ブタアミラーゼ抗体(戸澤辰雄他,「クローン病患者血中抗ブタアミラーゼ抗体−ELISAによる研究」難治性炎症性腸管障害調査研究班,平成10年報告書、特開平11−190734号公報)、抗Mパラチュバキュローシス由来タンパク抗体(Suenaga K,et al.Dig Dis Sci.,1999,Jun,44(6),1202−7;Kreuzpaintner G,et al.,Gut.1995 Sep,37(3),361−6;Oudkerk Pool M,et al.,J.Clin Pathol.,1995 Apr,48(4),346−50)、抗好中球抗体(Targan,S.,et al.,Gastroenterology,96,A505,1989)、抗小腸抗体(Bagchi,S.,et al:Clin.Exp.Immunol,55,44−48,1984)を検出することによってクローン病を診断する方法が提案されている。
ところで、コメアレルゲン蛋白質は、コメアレルギー患者におけるIgEの主要抗原として単離され、遺伝子およびアミノ酸配列よりalpha−amylase/trypsin inhibitorであることが知られている(Izumi H,et al.FEBS Lett.1992 May,18;302(3),213−6;Nakamura R,et al.Biosci Biotechnol Biochem.1996 Aug,60(8),1215−21))。前述するように、クローン病に特異的な自己抗原としてパン酵母やブタアミラーゼなどの食餌性抗原との関連は指摘されているものの、上記コメアレルゲン蛋白質との関連性については報告されていない。
また、液胞型H+輸送性ATPaseは、細胞内膜系(central vacuolar system)に属するオルガネラに存在してオルガネラの内部を酸性に調整しているH+ポンプであり、これが形成する酸性pHが神経伝達物質やイオンの濃縮、タンパク質分解など、膜の動的な過程を含む多くの生命現象と密接に結びついていることが知られている(生化学、第65巻、第6号、1993年6月、第413−436頁)。しかし、その生体内での詳細機能は十分に解明されてはいない。さらに、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300(ZNF300))は、Zinc fingerドメインを有することから核内で遺伝子の発現制御に関与していると予測されているものの、未だ機能が不明な蛋白質である。当該ヒト核内蛋白質に関する報告はなく、唯一、そのアミノ酸配列及びその遺伝子配列がデータベースに登録されているに過ぎない(Gou D.−MET et al.,Submitted(28−JUN−2001)to the EMBL/GenBank/DDBJ databases)。
これらの蛋白質については、生体内での機能が解明されることによって新たな薬剤の開発や医療に応用できる可能性が期待されるものの、未だそれを示唆する報告はなく、またいずれもクローン病との関連性について報告された例もない。
発明の開示
本発明は、クローン病の罹患の有無を特異的に検出するのに有用な検査試薬、及びその有効成分を提供することを目的とする。また本発明は、被験者の生体試料を対象に簡便に実施できるクローン病の検査方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、特定のペプチドがクローン病患者体内に特有に存在する抗体を特異的に認識して結合する性質を有することを見出し、これらのペプチドを1種、好ましくは2種以上組み合わせて用いることにより、被験者についてクローン病の罹患の有無を簡単に且つ精度よく検出することができることを確認した。さらに本発明者らは、上記研究の過程で、クローン病患者体内には、液胞型H+輸送性ATPase(特にそのサブユニットE)、コメアレルゲン蛋白質、またはヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300(ZNF300))を認識する抗体が特異的に存在していることを見いだした。そして、これらの蛋白質がクローン病における特異的な自己抗原となっている可能性を確信し、被験者について上記抗体の有無を検出することにより、クローン病の罹患の有無を高い精度で調べることができることを確信した。
本発明はかかる種々の知見に基づいて開発されたものである:
第1に、本発明はクローン病の検査に有効に利用できる下記(1)〜(9)に掲げるクローン病抗体結合性ペプチドである:
(1)下記(a)または(b)のいずれかであるクローン病抗体結合性ペプチド:
(a)配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列のいずれかから選ばれるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)上記(a)に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチド。
(2)上記(b)に記載されるペプチドが、配列番号1〜4または配列番号7に示されるアミノ酸配列のいずれかを一部に含むペプチドである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(3)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号5〜14に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(4)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、少なくともLIAQQMのアミノ酸配列を含むアミノ酸数6〜226ペプチドである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(5)配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号15〜19に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(6)配列番号3に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号20〜32に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(7)配列番号3に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、少なくとも配列番号51に示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸数7〜604のペプチドである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(8)配列番号4に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号33〜48に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである請求項1に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(9)配列番号4に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、少なくともL(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列を含むアミノ酸数8〜165のペプチドである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
また、本発明のクローン病抗体結合性ペプチドは、一分子中に、上記(1)〜(9)に掲げる各ペプチドのアミノ酸配列を複数個有するものであってもよい。本発明はこのような形態のペプチドとして、下記(10)〜(11)に掲げる分岐状多抗原性ペプチドを提供する:
(10)分枝鎖のアミノ酸配列として、下記:
(a)配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列のいずれかから選ばれるアミノ酸配列からなるペプチド、または
(b)上記(a)に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチド
のアミノ酸配列を、同一または異なって、一分子中に複数個有する分岐状多抗原性ペプチド。
(11)(i)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(iii)配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、及び(iv)配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物のうち、少なくとも2つの群の中から選択される2種以上の異なるクローン病抗体結合性ペプチドのアミノ酸配列を分枝鎖に有する(10)に記載の分岐状多抗原性ペプチド。
なお、ここで「同効物」とは、各々配列番号1〜4に記載されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドを意味する(下記の(13)においても同じ)。
第2に、本発明はクローン病の診断に有効に利用できる下記(12)〜(15)に掲げるクローン病の検査試薬及びそれを含む試薬キットである:
(12)上記(1)〜(9)のいずれかに記載するクローン病抗体結合性ペプチド;(10)に記載する分岐状多抗原性ペプチド;及びヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体よりなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有するクローン病の検査試薬。
(13)上記のクローン病抗体結合性ペプチドが、(i)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(iii)配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、及び(iv)配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物のうち、少なくとも2つの群の中から選択される2種以上の異なるクローン病抗体結合性ペプチドであり、分岐状多抗原性ペプチドが(11)に記載されるペプチドである、(12)に記載のクローン病の検査試薬。
(14)(12)または(13)に記載の検査試薬をクローン病抗体結合用の抗原物質として含むクローン病の検査試薬キット。
(15)抗ヒトIgG抗体、及び(12)または(13)に記載の検査試薬、並びに必要に応じて、検体希釈液、標識物質、支持体(固相)、抗ヒトIgG抗体希釈液、酵素基質液、及び反応停止液よりなる群から選択される少なくとも1つを含有する(14)に記載のクローン病の検査試薬キット。
第3に、本発明は下記(A)〜(C)に掲げるクローン病の検査方法である:
(A)被験者の生体試料中のヒト液胞型H+輸送性ATPaseを認識する抗体の有無を検出する工程を含むクローン病の検査方法。
上記クローン病の検査方法には、下記の態様が包含される:
(A−1) 上記抗体がヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEを認識する抗体である(A)記載のクローン病の検査方法。
(A−2) 上記抗体がヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体を認識する抗体である(A)記載のクローン病の検査方法。
(A−3) 上記抗体がヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEの199〜212位のアミノ酸領域を認識する抗体である(A)記載のクローン病の検査方法。
(A−4) LIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物、またはこれらのペプチド若しくはその同効物のアミノ酸配列を同一または異なって一分子中に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを抗原物質として用い、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseを認識する抗体との抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出する工程を有する(A)〜(A−3)のいずれかに記載のクローン病の検査方法。
(A−5) LIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物が、LIAQQMのアミノ酸配列を含むアミノ酸数6〜227個からなるペプチドである(A−4)に記載のクローン病の検査方法。
(A−6) LIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチドの同効物が、配列番号1及び5〜14に記載されるそれぞれのアミノ酸配列を有するペプチドよりなる群から選択されるものである(A−4)に記載のクローン病の検査方法。
(A−7) ヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体によって生じる複合物を検出する工程を有する(A)〜(A−3)のいずれかに記載のクローン病の検査方法。
(B)被験者の生体試料中のヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)を認識する抗体の有無を検出する工程を含むクローン病の検査方法。
上記クローン病の検査方法には、下記の態様が包含される:
(B−1) 上記抗体がヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)の126〜138位のアミノ酸領域を認識する抗体である(B)記載のクローン病の検査方法。
(B−2) 配列番号51に記載するペプチド若しくはその同効物、またはこれらのペプチド若しくはその同効物のアミノ酸配列を同一または異なって一分子中に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを抗原として用い、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)を認識する抗体との抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出する工程を有する(B)または(B−1)に記載のクローン病の検査方法。
(B−3) 配列番号51に記載するペプチド若しくはその同効物が、少なくとも配列番号51に記載するアミノ酸配列を含むアミノ酸数7〜604個からなるペプチドである(B−2)に記載のクローン病の検査方法。
(B−4) 配列番号51に記載するペプチドの同効物が、配列番号3、21〜32よりなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドである(B−2)に記載のクローン病の検査方法。
(C)被験者の生体試料中のコメアレルゲン蛋白質を認識する抗体の有無を検出する工程を含むクローン病の検査方法。
(C−1) 上記コメアレルゲン蛋白質がalpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属するものである(C)記載のクローン病の検査方法。
(C−2) 上記コメアレルゲン蛋白質が、Rice allergen、Rice seed allergen RA5、Rice allergen RA5B precursor、Rice seed allergen RA14、Rice allergen RA14B precursor及びRice seed allergen RAG2よりなる群から選択される少なくとも1種である(C)または(C−1)に記載のクローン病の検査方法。
(C−3) 上記コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体が、Rice seed allergen RA14の99〜111位のアミノ酸領域を認識する抗体である(C)〜(C−2)のいずれかに記載のクローン病の検査方法。
(C−4) 上記コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体が、alpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyの、L(V)GGIYRELのアミノ酸配列を有するアミノ酸領域を認識する抗体である(C)〜(C−3)のいずれかに記載のクローン病の検査方法。
(C−5) L(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物、またはこれらのペプチド若しくはその同効物のアミノ酸配列を同一または異なって一分子中に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを抗原物質として用い、コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体との抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出する工程を有する(C)〜(C−4)のいずれかに記載のクローン病の検査方法。
(C−6) L(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物が、少なくともL(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列を含むアミノ酸数8〜166個からなるペプチドである(C−5)に記載のクローン病の検査方法。
(C−7) L(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列からなるペプチドの同効物が、配列番号4、33〜48に記載されるアミノ酸配列を有するペプチドよりなる群から選択されるものである(C−5)に記載のクローン病の検査方法。
更に本発明には、下記の発明が含まれる:
(a)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のペプチドの、クローン病の検査においてクローン病抗体と反応させる抗原物質としての使用。
(b)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のペプチドの、クローン病の検査試薬の製造のための使用。
以下、本明細書におけるアミノ酸、ペプチド、塩基配列、核酸等の略号による表示は、IUPAC、IUBの規定、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(特許庁編)及び当該分野における慣用記号に従うものとする。また、本発明でいうペプチドには、アミノ酸数が10個以下のオリゴペプチドおよびそれ以上のアミノ酸からなるポリペプチドがいずれも包含される。
「クローン病抗体」は、クローン病の罹患によって生体内で生成されるクローン病特有の抗体である。本発明では、原因となる抗原物質の別を問わず、またその認識如何に関わらず、クローン病患者に特異的に認められるクローン病患者特有の抗体を広く意味するものである。より詳細には、少なくとも健常者、潰瘍性大腸炎患者、その他の自己免疫疾患患者、十二指腸潰瘍患者及び胃潰瘍患者とクローン病患者とを対比した場合に、クローン病患者に特異的に認められる抗体を意味する。なお、クローン病抗体は、通常クローン病患者の血液(血清、血漿)、尿、汗、唾液、精液及び髄液等の各種の生体試料中に含まれる。
発明を実施するための最良の形態
(1)クローン病抗体結合性ペプチド
本発明が対象とする「クローン病抗体結合性ペプチド」(以下、単に「CD結合性ペプチド」ともいう)とは、クローン病抗体、すなわちクローン病患者に特異的に認められるクローン病特有の抗体に対して、特異的に結合するペプチドを意味する。
本発明のCD結合性ペプチドとして、具体的には配列番号1〜4に示されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドを例示することができる(配列番号1:CD1ペプチド、配列番号2:CD2ペプチド、配列番号3:CD3ペプチド、配列番号4:CD4ペプチド)。これらはいずれもクローン病抗体に対して特異的に結合性を有することによって特徴づけられる。
さらに本発明のペプチドには、上記配列番号1〜4に示されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドの他に、これらの各アミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが包含される。本発明においては、これらのペプチドを配列番号1から4に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドの「同効物」ということもある。
ここで、アミノ酸の「置換、欠失若しくは付加」の程度及びそれらの位置などは、改変されたペプチドが、配列番号1から4で示されるアミノ酸配列のいずれかからなるペプチド(CD1ペプチド、CD2ペプチド、CD3ペプチド、CD4ペプチド)と同様に、クローン病抗体に対して特異的結合性を有するといった特徴を備えた同効物であれば特に制限されない。アミノ酸配列の改変(変異)は、例えば突然変異や翻訳後の修飾などにより生じることもあるが、人為的に改変することもできる。なお、アミノ酸配列の改変(変異)方法は、当業者において良く知られたところである(例えば、サイトスペシフィック・ミュータゲネシス〔Methods in Enzymology,154,350,367−382(1987);同100,468(1983);Nucleic Acids Res.,12,9441(1984);続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」、日本生化学会編,p105(1986)〕などの遺伝子工学的手法、またはリン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法などの化学合成手段〔J.Am.Chem.Soc.,89,4801(1967);同91,3350(1969);Science,150,178(1968);Tetrahedron Lett.,22,1859(1981);同24,245(1983)〕等が例示できる。)。
本発明は、このような改変や変異の原因及び手段などを問わず、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する全ての改変ペプチドを包含するものである。
かかる同効物はディスプレイファージのライブラリー(ファージディスプレイライブラリー)、好ましくはランダムペプチドディスプレイファージのライブラリーを利用したスクリーニング手法を用いて取得することができる。該ファージディスプレイライブラリーを用いるスクリーニングは、ファージディスプレイ法と呼ばれ、従来から種々の細胞表面レセプターと特異的に結合するリガンドや種々の抗体の認識するエピトープを同定するために使用されている公知の方法である。これらファージディスプレイライブラリーの作成方法及びインビトロスクリーニング法については、スコット及びスミスらの方法を参照することができる(Scott,J.M.and Smith,G.P.,Science,249,386−390(1990);Smith,G.P.and Scott,J.K.,Methods in Enzymology,217,228−257(1993))。
当該ライブラリー中のランダムペプチドディスプレイファージは、クローン病抗体に特異的に結合するペプチドを選別し同定するために、スクリーニング対象とする多数のペプチド(オリゴペプチドまたはポリペプチド)をインビトロで発現するのに利用される。また、用いられるファージライブラリーは、通常この方法に用いられる公知のファージライブラリーのいずれであってもよく、例えばファージのコートタンパク質pIII遺伝子にランダムなDNAが挿入されて、ファージ外殻表面にランダムな15個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するペプチドが発現し得るように構築されたランダムペプチドディスプレイファージ(繊維状ファージ)を好適に例示することができる(特開平10−237098号公報、特開平10−237099号公報および石川大、瀧孝雄、細胞工学,16(12)1821−1828(1997)、特開2000−253900号公報)。
当該スクリーニング方法を利用して、上記CD1ペプチド(配列番号1)、CD2ペプチド(配列番号2)、CD3ペプチド(配列番号3)、及びCD4ペプチド(配列番号4)の各々の同効物を取得する方法として、具体的には次の方法を挙げることができる:
まず、ファージミドベクターに、ランダムなDNA配列を挿入し、ファージの外殻表面に上記DNA配列に対応してランダムなアミノ酸配列を有するペプチドを発現し得るようにランダムペプチドディスプレイファージを構築する。これを、予めマイクロプレート等の固相表面上に抗ヒトIgG抗体を介して固定化したクローン病患者の血清抗体(IgG)と反応させて、該クローン病患者の血清抗体と特異的に結合するファージを回収する(バイオパニング)。なお、ファージミドベクターに挿入するランダムなDNA配列は、同効物取得の対象となるペプチド(CD1ペプチド、CD2ペプチド、CD3ペプチドまたはCD4ペプチド)のアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸を欠失、置換または付加することによって改変したアミノ酸配列をコードするDNA配列を選択することができる。
ここで、マイクロプレート等に固定化させるクローン病患者の血清抗体(IgG)としては、少なくとも抗原結合能を有するものであれば特に制限されず、例えばクローン病に罹患した患者から採取した血清そのものであってもよいし、また該血清をプロテインAを用いて精製した精製抗体や、硫酸マグネシウム溶液で沈降処理することによって得られる精製抗体であってもよい。
またクローン病抗体と特異的に結合するファージの回収は、クローン病抗体とファージとの結合を阻害する能力を有する物質を、上記固定化抗体に対して作用させることによって行うことができる。すなわち、マイクロプレート上に抗ヒトIgG抗体を介して固定化されたクローン病抗体に特異的に結合しているファージは上記物質を加えることによりクローン病抗体から脱離溶出し、回収することができる。このようなスクリーニングを数回、好ましくは2〜3回程度繰り返すことによりクローン病抗体と特異的に結合するペプチドを発現し得るファージが選別できる。
ここで、クローン病抗体とファージとの結合を阻害する能力を有する物質としては、特に制限されないが、例えば酸性溶液やアルカリ性溶液、高濃度の塩、尿素、チオシアン等を挙げることができる。
次いで、上記の方法によって得られたファージを大腸菌に感染させて大量培養し、分離、精製して、クローン病抗体と特異的に結合するペプチド発現ファージを得る。かくして得られたファージは、抗ファージ抗体を介して支持体(固相)に固定化され、クローン病抗体と特異的に結合するファージをスクリーニングする操作に供される。かかるスクリーニングは、具体的には、上記方法で得られたファージを、任意の支持体に固定化した抗ファージ抗体と反応させて固定化し、該固定化ファージに対してクローン病患者の血清並びに対照血清として健常者の血清や潰瘍性大腸炎やその他の自己免疫疾患、胃潰瘍または十二指腸潰瘍などに罹患した患者の血清を反応させて、その反応性からクローン病患者の血清に特異的に反応するファージを選択することによって実施される。次いで、選択されたファージからDNAを抽出単離し、その塩基配列を決定し、それに基づいてアミノ酸配列を決定することにより、選択されたファージが発現するペプチド、すなわちクローン病抗体と特異的に結合するCD1ペプチド、CD2ペプチド、CD3ペプチド、またはCD4ペプチドの各々の同効物(CD結合性ペプチド)を同定し、取得することができる。
なお、上記方法により抽出単離したDNAの配列決定は、当業界で公知の方法により容易に行うことができ、例えばジデオキシ法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,74,5463−5467(1977)〕やマキサム−ギルバート法〔Method in Enzymology,65,499(1980)〕等を挙げることができる。かかる塩基配列の決定は、市販のシークエンスキット等を用いても容易に行うことができる。
例えば、上記の方法で得られるCD1ペプチド(配列番号1)の同効物としては、表1に示すCDP−1aペプチド(配列番号5)、CDP−1ペプチド(配列番号6)、CD5ペプチド(配列番号7)、CDP−5aペプチド(配列番号8)、CDP−5ペプチド(配列番号9)、VATE−201cペプチド(配列番号10)、VATE−201ペプチド(配列番号11)、CD1sペプチド(配列番号12)、及びCDP−1sペプチド(配列番号13)を例示することができる。なお、表1に示す各ペプチドについて、CD1ペプチドのアミノ酸配列と共通する部分を四角で囲み、また類似するアミノ酸残基を下線で示す(以下、表2〜4においても同様)。
また、CD2ペプチド(配列番号2)の同効物としては、表2に示すCDP−2ペプチド(配列番号15)、CD2sペプチド(配列番号16)、CDP−2sペプチド(配列番号17)、CD2s1ペプチド(配列番号18)、及びCDP−2s1ペプチド(配列番号19)を例示することができる。
さらに、CD3ペプチド(配列番号3)の同効物としては、表3に示すCDP−3ペプチド(配列番号20)、CDP3ペプチド(配列番号21)、CDP3−1ペプチド(配列番号22)、CDP3−2ペプチド(配列番号23)、CDP3−3ペプチド(配列番号24)、CDP3−4ペプチド(配列番号25)、CDP3−5ペプチド(配列番号26)、CDP3−6ペプチド(配列番号27)、CDP3−8ペプチド(配列番号28)、CDP3−12ペプチド(配列番号29)、CDP3−14ペプチド(配列番号30)、及びZ300ペプチド(配列番号31)を例示することができる。
さらにまた、CD4ペプチド(配列番号4)の同効物としては、表4に示すCDP−4ペプチド(配列番号33)、CDP4ペプチド(配列番号34)、CDP4−1ペプチド(配列番号35)、CDP4−2ペプチド(配列番号36)、CDP4−3ペプチド(配列番号37)、CDP4−4ペプチド(配列番号38)、CDP4−10ペプチド(配列番号39)、CDP4−13ペプチド(配列番号40)、CDP4−14ペプチド(配列番号41)、及びTO3965ペプチド(配列番号42)を例示することができる。
これらのCD結合性ペプチドは、そのアミノ酸配列に従って、一般的な化学合成法により製造することができる。該方法には、通常の液相法及び固相法によるペプチド合成法が包含される。かかるペプチド合成法は、より詳しくは、本発明で提供するアミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させ鎖を延長させていくステップワイズエロゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法とを包含する。本発明のペプチドの合成は、そのいずれによることもできる。
上記ペプチド合成に採用される縮合法も、公知の各種方法に従うことができる。その具体例としては、例えばアジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)、ウッドワード法等を例示できる。これらの各方法に利用できる溶媒もこの種ペプチド縮合反応に使用されることがよく知られている一般的なものから適宜選択することができる。その例としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
尚、上記ペプチド合成反応に際して、反応に関与しないアミノ酸及至ペプチドにおけるカルボキシル基は、一般にはエステル化により、例えばメチルエステル、エチルエステル、第三級ブチルエステル等の低級アルキルエステル、例えばベンジルエステル、p−メトキシベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステルアラルキルエステル等として保護することができる。また、側鎖に官能基を有するアミノ酸、例えばTyrの水酸基は、アセチル基、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、第三級ブチル基等で保護されてもよいが、必ずしもかかる保護を行う必要はない。更に例えばArgのグアニジノ基は、ニトロ基、トシル基、2−メトキシベンゼンスルホニル基、メチレン−2−スルホニル基、ベンジルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基等の適当な保護基により保護することができる。上記保護基を有するアミノ酸、ペプチド及び最終的に得られる本発明のペプチドにおけるこれら保護基の脱保護反応もまた、慣用される方法、例えば接触還元法や、液体アンモニア/ナトリウム、フッ化水素、臭化水素、塩化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸等を用いる方法等に従って、実施することができる。
かくして得られる本発明のCD結合性ペプチドは、通常の方法に従って、例えばイオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、向流分配法等のペプチド化学の分野で汎用されている方法に従って、適宜その精製を行うことができる。
また、本発明でいうCD結合性ペプチドには、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、上記各種のペプチドだけでなくこれらのペプチドのアミノ酸配列を一部に含むオリゴペプチドやポリペプチドも包含される。
このようなポリペプチドとしては、例えば、配列番号1,配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号7,配列番号10,配列番号12,配列番号16,配列番号18,配列番号31,または配列番号42のいずれかに示されるアミノ酸配列を一部に有するポリペプチドを挙げることができる。また、上記配列番号のいずれかに示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列であって、且つクローン病抗体に結合性を有するアミノ酸配列を一部に有するポリペプチドであってもよい。
一般に抗原−抗体反応において抗体が認識するのに必要な最小のアミノ酸数は4個であると考えられている。従って、抗原性の観点からは、4以上のアミノ酸からなるペプチドである限り、そのアミノ酸数は特に制限されない。制限はされないが、通常4〜700個のアミノ酸数を例示することができる。また、後述するように一分子中に当該CD結合性ペプチドのアミノ酸配列を分枝鎖として複数個有する分岐状多抗原性ペプチドとして調製する場合には、当該分枝鎖のアミノ酸数として9〜14の範囲を好適に例示することができる。
より具体的には、少なくとも配列番号10に示されるアミノ酸配列のうちLIAQQMのアミノ酸配列を含むポリペプチドを例示することができる。配列番号10に示されるアミノ酸配列は、CD1ペプチドの同効物であるVATE−201cペプチドのアミノ酸配列であり、当該アミノ酸配列(LIAQQM)を一部に含むポリペプチドとしては、配列番号11のアミノ酸配列を有するVATE−201ペプチド、液胞型H+輸送性ATPase(以下、「V−ATPase」ともいう)、またはそのサブユニットEを挙げることができる。なお、V−ATPaseのアミノ酸配列のサブユニットEのアミノ酸配列を配列番号14に示す。
V−ATPaseは、真核細胞の細胞内膜系(central vacuolar system)に属するオルガネラ(ゴルジ体、リソソーム、分泌顆粒、シナプス小胞、酵母の液胞など)の内部を酸性に維持するために機能しているH+ポンプである。当該V−ATPaseは、サブユニットA、B、C、D及びE、並びに115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットの9つのサブユニットから構成されることが知られている。これらの各サブユニットの一次構造は既に公知であり、またこれらのサブユニットから構成されるV−ATPaseの構造も推定されている(生化学、第65巻、第6号、1993年6月、第413−436頁)。
本発明のCD結合性ペプチドには、これらのサブユニットから構成されるV−ATPaseの全配列を有するポリペプチド(蛋白質)、並びにクローン病抗体との結合性を備える限り、V−ATPaseの断片(各サブユニット及び各サブユニットの断片を含む)が含まれる。また、本発明のCD結合性ペプチドには、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体も包含される。
V−ATPaseの断片としては、サブユニットE(33kDaポリペプチド、アミノ酸数226個)、当該サブユニットE領域を含むポリペプチド(サブユニットEを含む各種サブユニットの複合体を含む)、当該サブユニットEのアミノ酸配列の202−208領域を含むアミノ酸数7〜226個のポリペプチド、またはサブユニットEのアミノ酸配列の199−212領域を含むアミノ酸数14〜226個のポリペプチドを挙げることができる。さらに、これらのV−ATPase、並びにその断片(例えば、サブユニットEを含む各種サブユニットの複合体、サブユニットEまたはその一部)は、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、そのアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されていてもよい。これらの改変蛋白質は、それぞれV−ATPase並びにその断片(例えばサブユニットE)の同効物として定義することができる。
また、CD結合性のポリペプチドとして、少なくとも配列番号51に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを例示することができる。配列番号51に示されるアミノ酸配列は、CD3ペプチドの同効物であるZ300ペプチドのアミノ酸配列(配列番号31)にも該当する。当該アミノ酸配列を一部に含むポリペプチドとしては)ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300;以下、「ヒト核内蛋白質(HZF300)」ともいう)を挙げることができる。なお、ヒト核内蛋白質(HZF300)のアミノ酸配列を配列番号32に示す。本発明のCD結合性ペプチドには、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、配列番号32に示すヒト核内蛋白質(HZF300)のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されていてもよい。かかる改変物としては、ヒト核内蛋白質(HZF300)のアミノ酸配列の129−135領域を含むアミノ酸数7〜604個のポリペプチド、またはヒト核内蛋白質(HZF300)のアミノ酸配列の126−139領域を含むアミノ酸数14〜604個のポリペプチドを挙げることができる。これらの改変物は、ヒト核内蛋白質(HZF300)の同効物として定義することができる。
さらに、CD結合性のポリペプチドとして、少なくともL(V)GGIYXE(D)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列を含むポリペプチドを例示することができる。当該アミノ酸配列を一部に含むポリペプチドには、配列番号4、33〜42にそれぞれ示されるCD4ペプチド及びその同効物が全て含まれる。また、当該アミノ酸配列を一部に含むポリペプチドとして、他にコメアレルゲン蛋白質のalpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属するライス・シード・アレルゲンRA14(Rice seed allergen RA14)を挙げることができる。なお、Rice seed allergen RA14のアミノ酸配列を配列番号46に示す。
本発明のCD結合性ペプチドは、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、Rice seed allergen RA14(配列番号46)のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されていてもよい。かかる改変物としては、Rice seed allergen RA14のアミノ酸配列(配列番号46)の101−108領域を含むアミノ酸数8〜165個のポリペプチド、またはRice seed allergen RA14のアミノ酸配列の99−111領域を含むアミノ酸数13〜165個のポリペプチドを挙げることができる。これらの改変物は、Rice seed allergen RA14の同効物として定義することができる。
さらに本発明のCD結合性ペプチドには、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、配列番号42に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されていてもよい改変アミノ酸配列を一部に含むポリペプチドも含まれる。かかるポリペプチドとしては、Rice seed allergen RA14と同様にalpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属するライス・アレルゲン(Rice allergen)(配列番号43)、ライス・シード・アレルゲンRA5(Rice seed allergen RA5)(配列番号44)、ライス・アレルゲンRA5B・プレカーサー(Rice allergen RA5B precursor)(配列番号45)、ライス・アレルゲンRA14B・プレカーサー(Rice allergen RA14B precursor)(配列番号47)、及びライス・シード・アレルゲンRAG2(Rice seed allergen RAG2)(配列番号48)を挙げることができる。なお、これらのコメアレルゲン蛋白質もまた、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、そのアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されていてもよい。このようなコメアレルゲン蛋白質の同効物としては、例えば、各コメアレルゲン蛋白質の95〜110位のアミノ酸領域に位置する少なくともL(V)GGIYRELのアミノ酸配列(配列番号49、50)を保有する蛋白質を挙げることができる。具体的にはRice allergenのアミノ酸配列の99−106領域を含むアミノ酸数8〜157個のポリペプチド、Rice seed allergen RA5のアミノ酸配列の99−106領域を含むアミノ酸数8〜157個のポリペプチド、Rice allergen RA5B precursorのアミノ酸配列の102−109領域を含むアミノ酸数8〜160個のポリペプチド、Rice allergen RA14B precursorのアミノ酸配列の102−109領域を含むアミノ酸数8〜166個のポリペプチド、及びRice seed allergen RAG2のアミノ酸配列の102−109領域を含むアミノ酸数8〜166個のポリペプチドを挙げることができる。これらの改変蛋白質は、それぞれRice allergen、Rice seed allergen RA5、Rice allergen RA5B precursor、Rice allergen RA14B precursor、及びRice seed allergen RAG2の同効物として定義することができる。
以上、V−ATPase、そのサブユニットE(配列番号14)及びこれらの同効物はCD1ペプチドの同効物として、ヒト核内蛋白質(HZF300)(配列番号32)及びその同効物はCD3ペプチドの同効物として、並びにalpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属する各種のコメアレルゲン蛋白質(配列番号43〜48)及びこれらの同効物はCD4ペプチドの同効物として、いずれも本発明のCD結合性ペプチドに包含される。
さらに本発明のCD結合性ペプチドは、多抗原性ペプチド(multiple antigen peptide:以下「MAPペプチド」または「分岐状多抗原性ペプチド」もいう)形態であることもできる。このMAPペプチドは、基本分子に、例えば配列番号1〜4に示されるペプチド(CD1ペプチド〜CD4ペプチド)またはこれらの同効物のアミノ酸配列が分枝鎖として、複数個、分岐状に結合した形態として特徴付けられる。上記CD結合性ペプチドのアミノ酸配列を有する分枝鎖の数としては特に制限されないが、好ましくは2〜16個、より好ましくは4〜16個、さらに好ましくは8個を例示することができる。
MAP形態を有する本発明のCD結合性ペプチド(分岐状多抗原性ペプチド)の好適な一例としては、例えば基本分子(骨格)としてデンドリマー構造を有するものを挙げることができる。
デンドリマーとは、一般に樹枝状形状から星形の立体配置を有する球状乃至その他の構造の分子として知られている。該分子はまた複数個の機能基を有する枝(繰返し単位)を有することにより特徴付けられる(例えば、特表昭60−500295号公報;特開昭63−99233号公報;特開平3−263431号公報;米国特許第4507466号明細書;同第4568737号明細書;Polymer Journal,17,p.117(1985);Angewandte Chem.Int.Engl.,29,138−175(1990);Macromolecures,25,p.3247(1992)など参照)。
本発明に利用できるデンドリマーは、開始部分となる核構造、該開始核に結合した繰返し単位(枝)で構成される内部層(世代)および各枝に結合して存在する機能基よりなる外表面を有するものであれば、特に制限されない。該デンドリマーの大きさ、形態、反応性などは、開始核部分、世代数および各世代に用いられる繰返し単位を適宜選択することによって調節することができ、これらにも特に制限はない。適当な大きさなどを有するデンドリマーの製造は、後記する常法に従うことができ、また異なる大きさのデンドリマーは、利用される世代数を増やすことによって容易に得ることができる(例えば米国特許第4694064号明細書など参照)。
デンドリマー構造を有する本発明のCD結合性ペプチド(分岐状多抗原性ペプチド))の一例としては、例えば窒素原子を開始核部分とし、該核部分に結合する−CH2CH2CONHCH2CH2−構造からなる繰返し単位(枝)を有するデンドリマーの各枝の最外側末端にCD結合性ペプチドの特定アミノ酸配列を、複数個結合させたものを挙げることができる。他の一例としては、例えばLys、Arg、Glu、Aspなどのアミノ酸のいずれかを開始核部分とし、該核部分に直接結合する繰返し単位として同様の各アミノ酸を利用し、同様に各枝末端にCD結合性ペプチドのアミノ酸配列を結合させたものを挙げることができる。
上記窒素原子を開始核部分とするデンドリマーは、常法に従い製造できる。またその構造物(デンドリマー原料)は、市販品としても入手できる(Polysciences,Inc.,400 Vally Road,Warrington,PA,18976 U.S.A.)。他方のアミノ酸を開始核部分とするデンドリマーは、例えば前記したペプチド合成法に従い製造することができる。また、例えばFmoc8−Lys4−Lys2−Lys−βAla−Alko樹脂(渡辺化学工業社製)などとして市販のデンドリマー原料を利用して製造することもできる。
より具体的には、上記デンドリマー原料は、次の如くして製造することができる。即ち、固相ペプチド合成用の樹脂に、スペーサーを介してまたは介さずに、2つのアミノ基を同一のまたは同一でない保護基で保護したα,ω−ジアミノ酸を縮合反応させ、ついで保護基を除去し、更に同様の保護α,ω−ジアミノ酸の縮合反応及び脱保護基反応を繰返す。
固相ペプチド合成用の樹脂としては、通常のペプチド合成に汎用されているものをいずれも使用することができる。その例としては、例えばポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリスチレンポリエチレングリコール樹脂などの末端にクロロメチル基、4−(ヒドロキシメチル)フェノキシ基、4−((α−2’,4’−ジメトキシフェニル)−9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノメチル)フェノキシ基などを有するものを挙げることができる。スペーサーとしては、1個または複数個のアミノ酸を挙げることができる。また、α,ω−ジアミノ酸としては、リジン、オルニチン、1,4−ジアミノ酪酸、1,3−ジアミノプロピオン酸などを挙げることができる。
保護基としては、Boc基、Fmoc基、Z基などを挙げることができる。機能基としては、アミノ基、カルボキシル基および水酸基を挙げることがきる。保護基の除去反応は、前述したペプチド合成法に従うことができる。枝の数は、繰返し単位の縮合と保護基の除去とをn回繰り返すことにより2nとなる。この枝数は、具体的には2から16の範囲を好ましいものとして挙げることができる。
得られるデンドリマー原料の各枝末端の機能基に、CD結合性ペプチドの特定アミノ酸配列を結合させることにより、所望のMAP形態の本発明のペプチド(分岐状多抗原性ペプチド)を収得することができる。この結合反応は、前記したペプチド合成法に従うことができる。
MAP形態の本発明ペプチド(分岐状多抗原性ペプチド)は、常法に従い、適当なマトリックス、例えばセファクリールS−300(ファルマシア社製)などの樹脂を用いたクロマトグラフィー操作などにより精製することができる。
本発明の分岐状多抗原性ペプチドにおいて、各枝末端を構成するアミノ酸配列は、同一のものである必要はなく任意に異なるCD結合性ペプチドのアミノ酸配列を組合せたものであることもできる。異なるCD結合性ペプチドのアミノ酸配列の組合せ例としては、例えば、(i)CD1ペプチド及びその同効物、(ii)CD2ペプチド及びその同効物、(iii)CD3ペプチド及びその同効物、及び(iv)CD4ペプチド及びその同効物よりなる4群のうち、少なくとも2群、好ましくは3群、より好ましくは4群の中から選択される異なる2種以上、好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上のペプチドのアミノ酸配列の組合せを例示することができる。このような複合型分岐状多抗原性ペプチドによれば、個々の被験者についてクローン病の罹患の有無をより高い精度で検出することができる。
本発明のCD結合性ペプチドは、クローン病患者に特異的に認められるクローン病特有の抗体(クローン病抗体)を選択的に認識してそれと結合する性質を有するものである。よって、本発明のCD結合性ペプチド及びそのアミノ酸配列を含む分岐状多抗原性ペプチドは、クローン病の罹患の有無、すなわちクローン病の検査及び診断に有効に利用することができる。
(2)クローン病の検査試薬及び試薬キット
以上のことから、本発明は上記のCD結合性ペプチドまたは及びそのアミノ酸配列を含む分岐状多抗原性ペプチドを有効成分とするクローン病の検査試薬を提供する。
具体的には、本発明のクローン病の検査試薬は、有効成分として、前述する(i)CD1ペプチドまたはその同効物、(ii)CD2ペプチドまたはその同効物、(iii)CD3ペプチドまたはその同効物、及び(iv)CD4ペプチドまたはその同効物からなる各種のCD結合性ペプチドの中から選択される少なくとも1つのペプチド、または(i)CD1ペプチドまたはその同効物、(ii)CD2ペプチドまたはその同効物、(iii)CD3ペプチドまたはその同効物、及び(iv)CD4ペプチドまたはその同効物からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドのアミノ酸配列を、同一または異なって一分子中に、分岐状に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを含むものである。
なお、上記のCD1ペプチドの同効物には、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体が包含される。
ここで有効成分として用いるこれらのCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドは、クローン病抗体に対するその特異的結合性を利用して、被験者の生体試料中に存在し得るクローン病抗体と結合してそれを捕捉または標識化する抗原物質としての役目を担うものである。
クローン病の検査試薬の有効成分として、上記のCD結合性ペプチドは1種単独で使用されてもよいが、2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。精度(判定の信頼性)向上の点からは2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。かかる組合せの態様は特に制限されないが、好ましくは(i)CD1ペプチドまたはその同効物(例えば、CDP−1aペプチド,CDP−1ペプチド,CD5ペプチド,CDP−5aペプチド,CDP−5ペプチド,VATE−201cペプチド,VATE−201ペプチド,CD1sペプチド,CDP−1sペプチド、V−ATPase,サブユニットEまたはこれらの同効物)、(ii)CD2ペプチドまたはその同効物(例えば、CDP−2ペプチド,CD2sペプチド,CDP−2sペプチド,CD2s1ペプチド,CDP−2s1ペプチドまたはこれらの同効物)、CD3ペプチドまたはその同効物(例えば、CDP−3ペプチド,CDP3ペプチド,CDP3−1ペプチド,CDP3−2ペプチド,CDP3−3ペプチド,CDP3−4ペプチド,CDP3−5ペプチド,CDP3−6ペプチド,CDP3−8ペプチド,CDP3−12ペプチド,CDP3−14ペプチド,Z300ペプチド,ヒト核内蛋白質(HZF300)またはこれらの同効物)、及び(iv)CD4ペプチドまたはその同効物(例えば、CDP−4ペプチド,CDP4ペプチド,CDP4−1ペプチド,CDP4−2ペプチド,CDP4−3ペプチド,CDP4−4ペプチド,CDP4−10ペプチド,CDP4−13ペプチド,CDP4−14ペプチド,TO3965ペプチド,Rice allergen,Rice seed allergen RA5,Rice allergen RA5B precursor,Rice seed allergen RA14,Rice allergen RA14B precursor,Rice seed allergen RAG2またはこれらの同効物)の各群(i)〜(iv)のうち、少なくとも2群、好ましくは3群、より好ましくは4群から任意に選択される2種以上、好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上のペプチドを組み合せて使用する態様である。
本発明のクローン病の検査試薬が、上記のようにCD結合性ペプチドを2種以上含有する組成物の態様である場合、各CD結合性ペプチドの配合割合は特に制限されない。例えば、各CD結合性ペプチドを互いに等しい割合で配合してもよいし、またクローン病抗体に対する反応性(結合性)の弱いペプチド等を含む場合はそれを考慮して、該反応性の弱いペプチド等の配合割合が多くなるように配合することもできる。例えば、制限されないが、有効成分として、上記(i)群、(ii)群、(iii)群及び(iv)群のそれぞれに属するCD結合性ペプチドとして、(i)CD1ペプチド、(ii)CD2ペプチド、(iii)CD3ペプチド、及び(iv)CD4ペプチドを用いる場合、これらは1:2:2:1の割合で用いることができる。
また、クローン病の検査試薬の有効成分として、上記の分岐状多抗原性ペプチドを用いる場合、当該多抗原性ペプチドは分枝を構成するアミノ酸配列は、同一種のCD結合性ペプチドのアミノ酸配列からなるものであってもよいが、2種以上の異なるCD結合性ペプチドのアミノ酸配列を含むものであってもよい。後者の場合、かかる分枝として用いるCD結合性ペプチドのアミノ酸配列の組合せの態様も特に制限されないが、上記各群(i)〜(iv)のうち、少なくとも2群、好ましくは3群、より好ましくは4群から任意に選択される2種以上、好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上のCD結合性ペプチドのアミノ酸配列を組み合せて分岐鎖として使用する態様である。
本発明のクローン病の検査試薬は、クローン病抗体と特異的に結合する抗原物質として、クローン病抗体の捕捉や標識化に用いることができる。よってこの目的を逸脱しない限り、当該検査試薬は、有効成分として1種または2種以上のCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドだけからなるものであってもよいし、また他の成分を含有するものであってもよい。また、クローン病抗体の標識に用いるためには、これらのCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドは、任意の標識物質で標識されていることが好ましい。かかる標識に用いられる標識物質としては、当業界で用いられる通常の標識物質を広く用いることができ、特に制限されないが、具体的には3Hや14C等の放射性同位元素;アルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ(POX)、マイクロパーオキシダーゼ、キモトリプリノーゲン、プロカルボキシペプチダーゼ、グリセロアルデヒド−3−リン酸脱水酵素、アミラーゼ、ホスホリラーゼ、D−ナーゼ、及びP−ナーゼなどの酵素;フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)等の蛍光物質;並びに、その他1N−(2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシル−4−ピペリジル)−5N−(アスパルテート)−2,4−ジニトロベンゼン(TOPA)、染料ゾル、金属ゾル、ラテックス粒子等を例示することができる。なお、前述する本発明にかかるCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドには、これらの標識化CD結合性ペプチドも包含される。
一般に、被験者の生体試料を被験試料として、クローン病の検査を行うには、CD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドを有効成分とする上記の検査試薬を含む試薬キットを利用することが簡便である。ゆえに、また本発明はクローン病の検査(診断)に有効に利用できる試薬キットを提供する。
本発明のクローン病の検査試薬キットは、前述する検査試薬を、クローン病抗体と結合させる目的で含むものであれば、クローン病抗体の捕捉剤として含んでいても、またクローン病抗体の標識剤として含んでいてもよい。なお、上記の検査試薬をクローン病抗体の捕捉剤として利用する場合には、予め任意の支持体(固相)に固定化させた固定化物として用いることもできる。またクローン病抗体の標識剤として利用する場合には、前述するように任意の標識物質で標識されたCD結合性ペプチドまたは多抗原性ペプチドを用いることが好ましい。
本発明の検査試薬キットに上記の検査試薬と組み合わせて用いられる他の成分は、クローン病の検査に利用される免疫学的測定方法の種類や採用される検出手段に応じて、常法に従って適宜選択して用いることができる。好ましくは、本発明の検査試薬キットには、CD結合性ペプチドまたは多抗原性ペプチドを有効成分とする上記の検出試薬以外の他の成分として、ヒトIgGを検出するための二次抗体(例えば抗ヒトIgG抗体)を含めることができる。なお、当該抗ヒトIgG抗体は、前述する標識物質で標識化されていてもよいし、また予め任意の支持体(固相)に固定化されていてもよい。
また、検査試薬キットには、標識物質に応じた基質、または標識物質と基質との反応を検出するための検出試薬が含まれていてもよく、さらに測定の実施の便益のために適当な被験試料希釈液、二次抗体希釈液(例えば抗ヒトIgG抗体希釈液)、標準抗体、緩衝液、洗浄液、酵素基質液、反応停止液などが含まれていてもよい。さらに、上記の検査試薬または抗ヒトIgG抗体として、標識または固定化されていないものを使用する場合は、検査試薬キットの他に成分として、支持体(固相)や標識物質を含めることもできる。
すなわち、本発明のクローン病の検査試薬キットは、上記のCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドを有効成分とする検出試薬(固定化または/及び標識されていてもよい)に、固定化または/及び標識されていてもよい抗ヒトIgG抗体、標識物質に応じた基質、抗体希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄液、基質溶解液、反応停止液、支持体(固相)、及び標識物質の中から任意に選択される少なくとも一つを組み合わせたクローン病の検査用の試薬セットである。簡便性、安全性、感度等の観点から、好ましくは酵素を標識物質として用いることが好ましい。この点から、本発明のクローン病の検査試薬キットは、上記のCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドを有効成分とする検出試薬(固定化または/及び酵素標識されていてもよい)に、固定化または/及び酵素標識されていてもよい抗ヒトIgG抗体、酵素基質、抗体希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄液、酵素基質溶解液、酵素反応停止液、支持体(固相)、及び酵素標識物質の中から任意に選択される少なくとも一つを組み合わせたクローン病の検査用の試薬セットであることができる。なお、酵素標識のための酵素標識物質としては、例えば、上記に加えて、マイクロパーオキシダーゼ、キモトリプシノーゲン、プロカルボキシペプチダーゼ、グリセロアルデヒド−3−リン酸脱水酵素、アミラーゼ、ホスホリラーゼ、D−ナーゼ、及びP−ナーゼなどを例示することができる
(3)クローン病の検査方法
さらに本発明はクローン病の検査方法を提供する。当該検査方法は、検査のための被験試料として被験者の生体試料を用いて、個々の被験者についてクローン病の罹患の有無を検出するものである。より具体的には、本発明のクローン病の検査方法は、クローン病患者の生体試料に特異的に存在する特定の抗体の存在を指標として、個々の被験者についてクローン病の罹患の有無を検出するものである。
ここで被験試料としては、被験者(ヒト)の血液(血清、血漿)、尿、汗、唾液、精液または髄液等の各種の生体試料、好ましくは血清を用いることができる。
クローン病の検査方法として、下記(3−1)〜(3−3)の3つの方法を挙げることができる。
(3−1) 後述する実施例に示すように、クローン病患者にはヒト液胞型H+輸送性ATPaseを認識する抗体が特異的に存在している。
従って、本発明のクローン病の検査方法として、被験者の生体試料を対象として、ヒト液胞型H+輸送性ATPase(V−ATPase)を認識する抗体を検出する工程を含む方法を挙げることができる。上記の検出対象とする抗体は、好ましくはV−ATPaseのサブユニットEを認識する抗体であり、より好ましくはV−ATPaseのサブユニットEの199〜212位のアミノ酸領域を認識する抗体である。
これらの抗体の検出は、抗原−抗体反応を利用した従来公知の免疫学的測定方法を用いて行うことができる。具体的にはクローン病の罹患が疑われる被験者から、上記各種の生体試料、好ましくは血清を採取し、その生体試料と上記V−ATPaseを認識する抗体に結合性を有する抗原物質を反応させて、抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出することによって実施することができる。
ここでV−ATPaseを認識する抗体に結合性を有する抗原物質としては、V−ATPaseを認識する抗体に特異的に結合するものであれば特に制限されない。好ましくはV−ATPaseのサブユニットEを認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものであり、より好ましくはV−ATPaseのサブユニットEの199〜212位のアミノ酸領域を認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものである。かかる性質を有するものとして、具体的にはLIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチド及びその同効物を挙げることができる。ここで同効物には、上記アミノ酸配列(LIAQQM)において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加により改変されてなるペプチドであって、且つV−ATPaseのサブユニットEを認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものが含まれる。かかるペプチドとしては、例えば配列番号1、5〜15の各々に記載されるアミノ酸配列を有するペプチド(CD1ペプチド、CDP−1aペプチド、CDP−1ペプチド、CD5ペプチド、CDP−5aペプチド、CDP−5ペプチド、VATE−201cペプチド、VATE−201ペプチド、CD1sペプチド、CDP−1sペプチド、V−ATPase、V−ATPaseのサブユニットE)を挙げることができる。また、これらに限定されることなく、例えば上記アミノ酸配列(LIAQQM)を有するアミノ酸数6〜226、好ましくは6〜14のポリペプチドを用いることもできる。
またV−ATPaseを認識する抗体に結合性を有する抗原物質として、V−ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体を用いることもできる。さらにまた、V−ATPaseを認識する抗体に結合性を有する抗原物質として、上記のアミノ酸配列(LIAQQM)からなるペプチドまたはその同効物を、同一または異なって、一分子中に複数個含む分岐状多抗原性ペプチドを用いることもできる。
(3−2) また後述する実施例6に示すように、クローン病患者にはヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300(HZF300))を認識する抗体が特異的に存在している。
従って、本発明のクローン病の検査方法として、被験者の生体試料を対象として、ヒト核内蛋白質(HZF300)を認識する抗体を検出する工程を含む方法を挙げることができる。上記の検出対象とする抗体は、好ましくはヒト核内蛋白質(HZF300)の126〜138位のアミノ酸領域を認識する抗体である。
これらの抗体の検出は、抗原−抗体反応を利用した従来公知の免疫学的測定方法を用いて行うことができる。具体的にはクローン病の罹患が疑われる被験者から、上記各種の生体試料、好ましくは血清を採取し、その生体試料と上記ヒト核内蛋白質(HZF300)を認識する抗体に結合性を有する抗原物質を反応させて、抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出することによって実施することができる。
ここで上記ヒト核内蛋白質を認識する抗体に結合性を有する抗原物質としては、当該ヒト核内蛋白質(HZF300)を認識する抗体に特異的に結合するものであれば特に制限されない。好ましくはヒト核内蛋白質(HZF300)の126〜138位のアミノ酸領域を認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものである。かかる性質を有するものとして、具体的には配列番号51に記載するアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物を挙げることができる。ここで同効物には、配列番号51において1又は複数個のアミノ酸が付加してなるペプチドまたは蛋白質であって、且つヒト核内蛋白質(HZF300)を認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものが含まれる。かかるペプチドとしては、例えば配列番号3及び20〜32の各々に記載されるアミノ酸配列を有するペプチド(CD3ペプチド、CDP−3ペプチド、CDP3−1ペプチド、CDP3−2ペプチド、CDP3−3ペプチド、CDP3−4ペプチド、CDP3−5ペプチド、CDP3−6ペプチド、CDP3−8ペプチド、CDP3−12ペプチド、CDP3−14ペプチド、Z300ペプチド、ヒト核内蛋白質(HZF300))を挙げることができる。また、これらに限定されることなく、例えば配列番号51に記載するアミノ酸配列を一部に有するアミノ酸数7〜604のポリペプチドを用いることもできる。
さらにヒトヒト核内蛋白質(HZF300)を認識する抗体に結合性を有する抗原物質として、上記の配列番号51に記載するアミノ酸配列からなるペプチドまたはその同効物を、同一または異なって一分子中に複数個含む分岐状多抗原性ペプチドを用いることもできる。
(3−3) また後述する実施例7に示すように、クローン病患者にはコメアレルゲン蛋白質を認識する抗体が特異的に存在している。
従って、本発明のクローン病の検査方法として、被験者の生体試料を対象として、コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体を検出する工程を含む方法を挙げることができる。なお、ここでコメアレルゲン蛋白質としては、α−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属するものを挙げることができ、具体的にはRice allergen(158aa)、Rice seed allergen RA5(157aa)、Rice allergen RA5B precursor(160aa)、Rice seed allergen RA14(165aa)、Rice allergen RA14B precursor(166aa)、及びRice seed allergen RAG2(166aa)を例示することができる。上記の検出対象とする抗体は、好ましくはこれらの各種のコメアレルゲン蛋白質の95〜110位のアミノ酸領域に位置する少なくともL(又はV)GGIYRELのアミノ酸配列を認識する抗体である。
これらの抗体の検出は、抗原−抗体反応を利用した従来公知の免疫学的測定方法を用いて行うことができる。具体的にはクローン病の罹患が疑われる被験者から、上記各種の生体試料、好ましくは血清を採取し、その生体試料と上記コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体に結合性を有する抗原物質を反応させて、抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出することによって実施することができる。
ここで上記ヒト核内蛋白質を認識する抗体に結合性を有する抗原物質としては、当該コメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor)のgene familyに属する蛋白質を認識する抗体に特異的に結合するものであれば特に制限されない。好ましくは各種のコメアレルゲン蛋白質の95〜110位のアミノ酸領域に位置する少なくともL(又はV)GGIYRELのアミノ酸配列(配列番号49、50)を認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものである。
かかる性質を有するものとして、具体的にはL(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその同効物を挙げることができる。ここで同効物には、上記L(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が付加してなるペプチドであって、且つコメアレルゲン蛋白質を認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものが含まれる。かかるペプチドとしては、例えば配列番号4及び33〜48の各々に記載されるアミノ酸配列を有するペプチド(CD4ペプチド、CDP−4ペプチド、CDP4−1ペプチド、CDP4−2ペプチド、CDP4−3ペプチド、CDP4−4ペプチド、CDP4−10ペプチド、CDP4−13ペプチド、CDP4−14ペプチド、TO3965ペプチド、Rice allergen、Rice seed allergen RA5、Rice allergen RA5B precursor、Rice seed allergen RA14、Rice allergen RA14B precursor、及びRice seed allergen RAG2)を挙げることができる。また、これらに限定されることなく、L(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列を有するアミノ酸数8〜166、好ましくはアミノ酸数8〜14のポリペプチドを用いることもできる。
さらにコメアレルゲン蛋白質を認識する抗体に結合性を有する抗原物質として、上記のL(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその同効物を、同一または異なって一分子中に複数個含む分岐状多抗原性ペプチドを用いることもできる。
このような抗原物質とクローン病患者に特有の抗体との反応によって生じる抗原−抗体複合物の検出方法に関しては、特に制限されることはなく、慣用の方法を広く採用することができる。具体的には抗原物質として上記の各種のCD結合性ペプチドまたはそれを含む分岐状多抗原性ペプチドを利用する各種の免疫測定法が好適に例示できる。例えば、ヒト血清を被験試料とする固相化サンドイッチ法を例にすると、目的抗体は、例えば以下の方法で測定することができる。
まず抗原物質として用いる上記ペプチドを固相化しておき(以下、これを便宜上「固相化ペプチド」という)、これに被験試料としての生体試料(例えば血清検体)を加える。その結果、固相化ペプチドと被験試料中のクローン病患者特有の抗体との間で抗原−抗体反応が起こり、被験試料中に存在する目的抗体は固相化ペプチドに結合する。次に結合した目的抗体の有無及びその抗体量(力量)を、ヒト抗体(IgG)検出試薬を用いて検出することにより、被験試料中、すなわち被験者の生体試料(血清など)中に存在する目的抗体を検出し定量することができる。
また、上記において、ヒト抗体(IgG)検出試薬を予め固相化し、これに被験試料を添加して生体試料中の目的抗体を捕捉させ、次いでこれに上記抗原物質を加えて、目的抗体に結合させることにより、被験試料中に存在する目的のクローン病患者特有の抗体を検出し、その抗体量(力量)を測定することもできる。また、目的抗体に結合した抗原物質にさらに該抗原物質の特異抗体を結合させることにより、該抗体を指標としてクローン病患者特有の抗体が検出でき、その抗体量(力量)を測定することもできる。これら測定手法における各種手段の選択やそれらの改変などはいずれも当業者のよく知るところであり、本発明においてはそれら各手法をいずれも採用することができる〔「臨床検査法提要」、金原出版、1995年等参照〕。
ここで、クローン病抗体を検出するためのヒト抗体(IgG)検出試薬は、特に制限されることなく一般に使用されている各種の試薬を利用することができる。例えば、好適にはヒトIgGに特異的に結合する抗ヒトIgG抗体などが使用できる。これらは市販品として入手できるが、常法に従い調製することもできる。
また、これらのヒト抗体(IgG)検出試薬を指標として、目的とする抗体を検出する場合は、当該ヒト抗体(IgG)検出試薬は標識されていることが好ましい。かかる標識に用いられる標識物質としては、具体的には3Hや14C等の放射性同位元素、アルカリホスファターゼやパーオキシダーゼ(POX)などの酵素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)等の蛍光物質、並びに、その他1N−(2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシル−4−ピペリジル)−5N−(アスパルテート)−2,4−ジニトロベンゼン(TOPA)、染料ゾル、金属ゾル、ラテックス粒子等が例示される。なお、これらの標識物質で標識された検出試薬を用いた免疫測定法は、それぞれラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、フルオロイムノアッセイ、スピンイムノアッセイ、フロースルーアッセイ及びイムノクロマトアッセイと称される。
本発明においては、簡便性、安全性、感度等の観点から、好ましくは酵素を標識物質として用いるエンザイムイムノアッセイが採用される。酵素標識のための酵素標識物質としては、例えば、上記に加えて、マイクロパーオキシダーゼ、キモトリプシノーゲン、プロカルボキシペプチダーゼ、グリセロアルデヒド−3−リン酸脱水酵素、アミラーゼ、ホスホリラーゼ、D−ナーゼ、及びP−ナーゼなどを例示することができる。なお、これらの標識物質による標識方法は、自体公知の方法に従って行うことができる(「単クローン抗体」岩崎辰夫 他著、講談社サイエンティフィク、1984;「酵素免疫測定法」第2版、石川栄治 他著、医学書院、1982年など)。
また、抗原物質(CD結合性ペプチド又はそのアミノ酸配列を含む分岐状多抗原性ペプチド)を指標として目的抗体を検出し測定する場合は、抗原物質として標識されたペプチドを用いることが好ましい。かかる抗原物質の標識も、上記抗ヒトIgG抗体の標識と同様にして、常法に従って任意の標識物質で用いて行うことができる。
また、上記測定方法において、固相法を採用する場合、目的抗体を捕捉する目的で、予め抗原物質或いは抗ヒトIgG抗体を支持体(固相)に固定化して用いてもよい。ここで支持体としては不溶性、不活性担体であれば特に制限されず、通常使用されるものが広く用いられる。例えば、ガラス、セルロース粉末、セファデックス、セファロース、ポリスチレン、濾紙、カルボキシメチルセルロース、イオン交換樹脂、デキストラン、プラスチックフィルム、プラスチックチューブ、ナイロン、ガラスビーズ、絹、ポリアミン−メチルビニルエーテル−マレイン酸共重合体、アミノ酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体などの種々の素材からなるスティック、ビーズ、マイクロプレート、試験管等が広く用いられる。
抗原物質或いは抗ヒトIgG抗体の固相への固定化方法についても特に制限はなく、物理的結合及び化学的結合のいずれをも使用することができる。具体的には、例えば共有結合法としてジアゾ法、ペプチド法(酸アミド誘導体、カルボキシクロライド樹脂法、カルボジイミド樹脂法、無水マレイン酸誘導体法、イソシアナート誘導体法、臭化シアン活性化多糖体法、セルロースカルボナート誘導体法、縮合試薬を使用する方法等)、アルキル化法、架橋試薬による担体結合法(架橋試薬としてグルタールアルデヒド、ヘキサメチレンイソシアナートなどを用いる。)、Ugi反応による担体結合法などの化学的反応:或いはイオン交換樹脂のような担体を用いるイオン結合法:ガラスビーズ等の多孔性ガラスを担体として用いる物理的吸着法等が例示できる。
上記の測定系において使用される溶媒としては、反応に悪影響を与えないものであれば一般的に使用されるもののいずれをも用いることができる。具体的にはクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液などのpHが約5〜9程度の緩衝液が例示される。
免疫反応(抗原−抗体反応)条件も特に制限はなく、一般にこの種の測定法で用いられる通常の条件が採用される。一般には45℃以下、好ましくは約4〜40℃程度の温度条件下に、1〜40時間程度を要して反応を行うことができる。
抗原−抗体反応によって生じる抗原−抗体複合物の測定は、使用する標識物質の種類に応じて慣用方法に従って行うことができる。
例えば、標識物質として酵素を利用する場合、当該酵素の活性を測定することによって行うことができる。酵素活性の測定は、使用する酵素の種類に応じて公知の方法に従って行うことができ、例えば標識酵素としてパーオキシダーゼを用いる場合は基質としてABTSJ2,2’−アジノービ(3’エチルベンツチアゾリンスルホン酸)を用い、またアルカリホスファターゼを用いる場合は基質としてp−ニトロフェニルホスフェートを用いて、それぞれインキュベートし、各基質の分解を分光光度計等を用いて測定する方法等が挙げられる(「酵素免疫測定法」第2版、石川栄治 他著、医学書院、1982年等参考)。なお、上記酵素標識の代わりに、放射性同位元素や蛍光物質による標識体を用いる場合も、自体公知の方法に従って測定することができる。
【実施例】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げる。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 クローン病抗体結合性ペプチドの選別及びその同定
(1)ファージディスプレイライブラリーの調製
フランコらの報告(Franco Felici.,et al.,J.Mol.Biol.,222,301−310(1991))に若干の変更を加え、ファージディスプレイライブラリーを作製した(1.0×10E8クローン)。該ファージディスプレイライブラリーは、具体的にはNNK(NはA,C,G,Tのいずれかを示し、KはG又はTを示す。)が9回繰り返された配列を含むDNAが遺伝子工学的に挿入された繊維状ファージであって、更に主要外殻タンパク質pVIII遺伝子のN端部分に9残基のランダムなアミノ酸からなるペプチドをコードするDNAが挿入されてファージ外殻表面にランダムな9残基のアミノ酸配列を有するペプチドが発現できるように構築されている。
(2)クローン病抗体結合性ペプチド(CD結合性ペプチド)の選択
(i)血清抗体の固定化
抗体として血清抗体を用いた。血清としてクローン病患者の血清20検体、並びに対照血清検体として潰瘍性大腸炎患者の血清20検体及び健常者の血清20検体を用いた。
次のようにして血清中の抗体(IgG)をマグネチックビーズに固定化した。まず、マグネチックビーズ(Dynabeads M−450 Tosyl−activated)に、0.1Mホウ酸緩衝液で200μg/ml濃度に調製した抗ヒトIgG(Fc)特異的抗体(Biodesign)を加え、4℃で一晩反応させた。反応後、該マグネチックビーズを0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含有する(D)−PBS(ダルベッコ式リン酸緩衝液)で洗浄し、0.1%のBSAを含有する0.2Mトリス(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)(Tris−HCl)を用いたブロッキング、次いで0.1%のBSAを含有する(D)−PBSを用いたブロッキングを行い、抗ヒトIgG(Fc)特異抗体固相化マグネチックビーズを調製した。
次いで、この抗ヒトIgG(Fc)特異抗体固相化マグネチックビーズに、クローン病患者の血清20検体よりランダムに選んだ3人分の血清プール2種類(CDG1及びCDG2)、及び健常者の血清20検体よりランダムに選んだ5人分の血清プールをそれぞれ添加し、一晩反応させて、表面に抗ヒトIgG(Fc)特異抗体を介して各血清IgG(健常者の血清IgGまたはクローン病患者の血清IgG)を固定化したマグネチックビーズを作製した。
(ii)CD結合性ペプチドディスプレイファージの選別(バイオパニング)
健常者の血清IgGを固定化したマグネチックビーズに、約1×1011のファージライブラリー(M13ファージのpVIII領域にランダムな9アミノ酸をディスプレイするライブラリー)を添加して4℃で一晩反応させ、次いで結合しなかったファージをクローン病患者の血清IgGを固定化したマグネチックビーズに添加して4℃で一晩反応させた。反応後、ビーズを0.1%BSAを含む(D)−PBSを用いて洗浄し、その後、溶出緩衝液(1mg/mlのBSAを含有する0.1M塩酸をグリシンにてpH2.2に調整)を用いて、ビーズに結合したファージを溶出した。得られた溶出ファージを1Mトリスを用いて中和し、中和後のファージを大腸菌JM109に感染させて、これを150μg/mlアンピシリン、1%グルコースを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。培養後、増殖した培地上の大腸菌を全て掻き取り、ヘルパーファージ(M13KO7)を感染させて、IPTG(イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド)及びカナマイシンを添加した後、37℃で一晩振盪培養した。培養液を遠心分離して不溶物を除去し、この中にポリエチレングリコールを含む塩化ナトリウム溶液を加え、数回撹拌した後、再度遠心してペレットを回収し、0.02%アジ化ナトリウムを含む(D)−PBSに溶解し、濃縮ファージ溶液を得た。
こうして得られたファージ溶液を用いて、さらに上記のようなバイオパニングを2回繰り返した。3回目のバイオパニングで得られたファージ溶液を大腸菌JM109に感染させ、これを150μg/mlアンピシリン、1%グルコースを含むLB寒天培地に塗布し、37℃にて一晩培養した。培地上に形成された単コロニーの大腸菌を掻き取り、150μg/mlのアンピシリンを含むLB液体培地を用いて37℃にて3時間振盪培養した後、ヘルパーファージ(M13KO7)を感染させて、IPTG及びカナマイシンを添加した後、37℃で一晩振盪培養した。
以上のようにして、CD結合性ペプチドディスプレイファージを単クローン化した。
(iii)ファージELISA
上記で単クローン化したCD結合性ペプチドディスプレイファージについて、上記のバイオパニングで用いた健常者血清プール及びクローン病患者血清プール((i)参照)を用いてファージELISAを行った。
ELISAにあたっては、まず抗ファージ抗体(Pharmacia)を96穴マイクロタイタープレートに固定化した。固定化は、具体的には(D)−PBSにて1μg/ml濃度に調製した抗ファージ抗体(Pharmacia)溶液100μlを各ウエルに添加し、4℃で一晩静置した後、洗浄し、300μlのブロッキング溶液(1%BSA、5%ソルビトールを含む(D)−PBS)を加えて4℃で一晩静置することによって行った。
一次反応は、ファージELISA緩衝液(1%BSA、0.05%Tween20、10%正常ヤギ血清を含む(D)−PBS)90μlに上記(ii)で調製したファージ培養液を10μl加え、上記の抗ファージ抗体を固定化した各ウエルに添加した後、37℃にて一時間反応させることによって行った。一次反応終了後、4回洗浄し、二次反応を行った。二次反応は、ファージELISA緩衝液100μlに血清1μl(健常者血清またはクローン病患者血清)を加え、各ウエルに添加した後、37℃にて一時間反応させることによって行った。次いで二次反応終了後、4回洗浄し、三次反応を行った。三次反応は、ファージELISA緩衝液で40,000倍に希釈したHRP(horseradish peroxidase)標識抗ヒトIgG(Fc)特異的抗体(20ng/ml)100μlを各ウエルに添加した後、37℃にて一時間反応させることによって行った。三次反応終了後、洗浄し、発色反応を行った。発色はTMB(3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン)溶液を加えて、室温で10分間反応させた後、停止液(1N 硫酸)を加えることによって反応を停止した。反応を停止させたプレートはプレートリーダーで吸光度(OD450nm)を測定し、血清抗体との反応性を調べた。
これから、健常者の血清抗体とは反応しないでクローン病患者の血清抗体だけに反応性を示すファージクローンを選択した。次いで選択したファージクローンについて、上記方法と同様にしてクローン病患者血清20検体、潰瘍性大腸炎患者血清20検体及び健常者血清20検体のそれぞれに対してELISAを行い、その反応性からクローン病患者血清に特異性の高い5つのクローン(CD−1、CD−2、CD−3、CD−4、CD−5)を選択した。選択した5つのクローンについて各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)に対する反応性(ELISA)をみた結果を図1に示す。
(3)CD結合性ペプチドのアミノ酸配列の決定
上記各ファージELISAによって選択した5つのクローン(CD−1、CD−2、CD−3、CD−4、CD−5)のアミノ酸配列の決定を行った。まず、上記で選択されたファージクローンからDNAを抽出した。具体的にはファージクローンを大腸菌JM109に感染させ、アンピシリンを含むLB寒天培地に塗布し、一晩培養を行い、培地上に形成されたコロニーを掻き取り、2mlのアンピシリン含むLB液体培地で一晩振盪培養し、キアプレップDNA抽出キット(キアゲン)を用いてプラスミドDNAを抽出した。
ファージDNAの塩基配列の決定は、ジデオキシ法(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.,74,5463−5467(1977))により、アマシャム社のサイクルシークエンスキット(Amersham pharmacia biotech,code;2438)を用いて、キットの使用説明書に従い実施した。DNA配列はファルマシア社製のDNAシークエンサー(ALF DNAシークエンサー)を用いてシークエンスを行った。
得られた塩基配列から決定した各クローン(CD−1、CD−2、CD−3、CD−4、CD−5)のアミノ酸配列を1文字表記として表5に示す。
なお、表中、各ペプチドのN末端及びC末端領域に位置するそれぞれAEGEL及びADPAまたはGDPAは、ファージベクターのランダムペプチドの両端に位置するアミノ酸配列に由来するものである。
CD−5クローンを除くCD−1、CD−2、CD−3及びCD−4クローンについて、上記ファージベクター由来のアミノ酸配列を含む18アミノ酸を分岐状多抗原性ペプチド(Multiple Antigen Peptide)(MAPペプチド)の形態にて合成し、以下の実験に使用した。具体的には市販のFmoc8−Lys4−Lys−2−βAla−Alko(渡辺化学工業社製)を用いて下記のアミノ酸配列を有するペプチドをペプチドATC−357 peptide synthesizer(Advanced Chem Tech社製)にて合成した。
本合成法により、各分岐状多抗原性ペプチド(MAPペプチド)は、一分子中にCD結合性ペプチドのアミノ酸配列を分岐状に8つ有することになる(図2)。
実施例2 CD結合性ペプチドの血清検体に対する反応性
(1)個々の分岐状多抗原性ペプチド(MAPペプチド)を抗原としたELISA
実施例1で得られた各MAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3及びCDP−4のMAPペプチド:図3参照)を抗原ペプチドとして利用して、ELISAにより各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)に対する反応性を調べた。
まず、各MAPペプチドを96穴マイクロタイタープレートに固定化した。具体的には、固定化は、各MAPペプチドをbicarbonate buffer(50mM、pH9.6)にて1μg/ml濃度に調製してMAP溶液を調製し、プレートの各ウエルに100μlずつ添加し、4℃にて一晩静置し、その後洗浄して300μlのカゼイン溶液(0.1%カゼイン及び1%TritonX−100を含む(D)−PBS)を加えて、再度4℃にて一晩静置することによって行った。
(i)各MAPペプチドを固定化したMAPプレートを用いて、クローン病患者血清20検体、潰瘍性大腸炎患者血清20検体及び健常者血清48検体の各MAPペプチドに対する反応性をELISAにより確認した。
具体的には、まず一次反応として、カゼイン溶液100μlに血清抗体1μlを加えた全量をMAPプレートの各ウエルに添加し、それを37℃で1時間反応させた。一次反応終了後、4回洗浄し、このウエル中に、カゼイン溶液で20,000倍に希釈したHRP標識抗ヒトIgG(Fc)特異的抗体を添加し、37℃で一時間反応させて二次反応を行った。二次反応終了後、4回洗浄し発色反応を行った。検出は100μlのTMB溶液を加えて、室温で10分間反応させた後、100μlのTMB停止溶液(1N硫酸)を加えることにより反応を停止し、プレートリーダーでOD450nmの吸光度を測定して、各血清について各MAPプレートに対する反応性を調べた。結果を図3に示す。図3からわかるように、4種類のMAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3およびCDP−4のMAPペプチド)は、いずれも潰瘍性大腸炎患者の血清や健常者の血清とは殆ど反応せず、クローン病患者の血清に対して2〜4割の割合で反応性を示した。また図3からわかるように、各MAPペプチドのクローン病患者の血清に対する反応性は各MAPペプチド間でそれぞれ異なっており共通性は認められなかった。このことから、この4種類のペプチドはクローン病患者特異的に反応するそれぞれ異なるタイプのペプチドであると判断された。
(ii)次に多数の血清検体(クローン病患者血清96検体、潰瘍性大腸炎患者血清20検体及び健常者血清48検体)を用いて、上記各MAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3およびCDP−4のMAPペプチド)の反応性を上記(i)の方法と同様にして調べ、クローン病患者血清に対する当該ペプチドの特異性を評価した。結果を表6に示す。
表6に示すように、健常者の血清48検体の平均OD値十5SDをカットオフ値とした場合、クローン病患者血清96検体に対する陽性率はCDP−1ペプチドが31.3%、CDP−2ペプチドが27.1%、CDP−3ペプチドが51.0%、及びCDP−4ペプチドが31.3%であった。また、健常者及び潰瘍性大腸炎患者の血清に対する偽陽性率はいずれのペプチドも5%以下であった。このことから、これらの各ペプチド(CDP−1ペプチド、CDP−2ペプチド、CDP−3ペプチドおよびCDP−4ペプチド)はクローン病患者が有する特有の抗体(クローン病抗体)に特異的に結合し、これを利用することによって、クローン病の罹患の有無を精度よく診断できると考えられた。
(2)混合MAPペプチドを抗原としたELISA
実施例1で調製したMAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3およびCDP−4のMAPペプチド)を混合して混合MAPペプチドを調製し、これを抗原として利用して、ELISAにより多種類の血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清、十二指腸潰瘍患者血清、胃潰瘍患者血清及び健常者血清)に対する反応性を調べた。
なお、検出に使用する抗原プレートは、CDP−1のMAPペプチド及びCDP−4びMAPペプチドがそれぞれ1.5μg/ml、CDP−2びMAPペプチド及びCDP−3のMAPペプチドがそれぞれ3μg/mlとなるように調製し、これらを等量混和したものを(1)に記載するMAPプレートの調製と同様にして96穴マイクロタイタープレートに固定化することによって調製した。
(i)この混合抗原プレートを用いて、クローン病患者血清550検体、潰瘍性大腸炎患者血清20検体、健常者血清120検体、十二指腸潰瘍患者血清25例及び胃潰瘍患者血清15検体について混合MAPペプチドに対する反応性をELISAにより確認した。なお、ELISAは二次反応に使用するHRP標識抗ヒトIgG(Fc)特異的抗体として、カゼイン溶液(0.1%カゼイン及び1%TritonX−100を含む(D)−PBS)で10,000倍に希釈したものを使用する以外は、上記の(1)(i)に記載する方法と同様にして行った。結果を図4及び表7に示す。
図4及び表7からわかるように、健常者の血清120検体の平均unit値十3SDをカットオフ値とした場合、クローン病患者血清に対する陽性率は67.1%(369/550)であり、偽陽性率は潰瘍性大腸炎患者の血清について5%(1/20)、健常者血清について1.7%(2/120)、十二指腸潰瘍患者血清並びに胃潰瘍患者血清については0%(0/25、0/15)であった。
この結果と(1)の結果とを比較することにより、各クローン病抗体結合性ペプチド(CDP−1ペプチド、CDP−2ペプチド、CDP−3ペプチドおよびCDP−4ペプチド)を単独で使用するよりも、これらを組み合わせて用いることによりクローン病特有の抗体に対する特異性が向上し、これによってクローン病の罹患の有無が高い精度で診断できると考えられた。
(3)混合MAPペプチドとパン酵母を抗原としたELISAとの比較
(2)と同様にして、実施例1で調製したMAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3およびCDP−4のMAPペプチド)を混合してこれを抗原として利用して、ELISAにより各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)に対する反応性を調べた。また、クローン病との関連が指摘されているパン酵母(saccharomyces cerevisiae)(Gut 1998,42,pp.788−791、Gastroenterology 1999,116,pp.1001−1003、Am J Gastroenterol 2001,96 pp.730−734)についても同様に、上記各血清検体に対する反応性を調べ、両者のクローン病診断における有用性を比較した。なお、抗原プレートとして使用する混合MAPプレートは、CDP−1のMAPペプチド及びCDP−4のMAPペプチドがそれぞれ1.5μg/ml、CDP−2のMAPペプチド及びCDP−3のMAPペプチドがそれぞれ3μg/mlとなるように調製し、これらを等量混和したものを(1)に記載するMAPプレートの調製と同様にして96穴マイクロタイタープレートに固定化することによって調製した。またパン酵母に対する反応性は、市販の測定キットであるAnti−Saccharomyces cerevisiae antibodies検出キット(ASCA IgG検出キット及びASCA IgA検出キット、使用抗原:パン酵母細胞膜のグリコマンナン、Medizyme製)を用いて測定した。
(i)混合MAPプレートを用いてクローン病患者血清96例、潰瘍性大腸炎患者血清20例、及び健常者血清48例について混合MAPに対する反応性をELISAにより確認した。なお、ELISAは上記(2)(i)に記載する方法と同様に行った。
(ii)また、パン酵母に対する反応性は測定キットの操作説明書に従って行った。結果を図5に示す。図5Aに示すように、抗原として混合MAPペプチドを用いたELISAでは健常者の血清48検体の平均unit値+3SDをカットオフ値とし、図5B及び図5Cに示すように、抗原としてASCA IgG及びASCA IgAの測定キットを用いたELISAでは操作説明書に従ってbinding index(結合インデックス)=1.0をカットオフ値として陽性率と偽陽性率を算出した。陽性率と偽陽性率の結果を表8に示す。
これらの結果から、個々のMAPペプチドを組合せて混合MAPペプチドとして用いることによって、クローン病抗体の認識抗原として指摘されているパン酵母よりも、クローン病抗体が特異的に認識でき、高い精度でクローン病の罹患の有無が検出できると考えられた。
実施例3 CD結合性ペプチドのホモロジー解析
得られたMAPペプチド(CDP−1〜CDP−4のMAPペプチド)について、クローン病との関連が報告されているタンパク〔CDX(measles related antigen)〈Gut 2000 Feb;46(2):163−9〉、porcine pancreatic alpha amylase〈Annual report of the research committee of inflammatory bowel disease.Japan:The ministry of health and welfare of Japan,1999:98−100〉、M.paratuberculosis HSP65(horseradish peroxidase 65)〈Clin Diagn Lab Immunol.1995 Nov;2(6):657−64〉、human HSP60〈Digestion.1997;58(5):469−75〉、M.paratuberculosis p36〈Curr Microbiol.1999 Aug;39(2):115−9〉〕とのアミノ酸配列における相同性をDNASISソフト(日立製作所)を用いて解析した。結果を図6に示す。この結果からわかるように、それぞれのタンパクにおいて弱い相同性が認められたものの、余り高い相同性は認められなかった。
次いでこれらのアミノ酸配列について、FASTAプログラム(Genome Netサイト使用)を用いて、クローン病抗体結合性ペプチドとアミノ酸配列において相同性を有するタンパクをタンパクデータベースより検索した。検索は、Z−scoreが130以上である相同性の高いタンパクだけが抽出されるように行った。結果を図7に示す。図7からわかるように、CD1ペプチド、CD3ペプチド及びCD4ペプチドに関しては、クローン病との関与が報告されているyeastやmycobacteriumのタンパクだけでなく、クローン病との関連性が認められていない病原性微生物や食物(Zea myze等)のタンパク等、細菌、動物及び植物などの多くの種にわたって相同性を有するタンパクがみられた。
実施例4
実施例1において、ファージELISAで得られた各種血清に対する反応性(図1)並びにアミノ酸配列の類似性(表2)から、CD−1及びCD−5クローンのアミノ酸配列を有するそれぞれのペプチド(CDP−1ペプチド(配列番号6)、及びCDP−5ペプチド(配列番号9))は同一抗体を認識するものと考えられた。また当該CDP−1ペプチドとCDP−5ペプチドは、ヒト液胞型H+輸送性ATPase(V−ATPase)のサブユニットEの199−212領域に位置するペプチド(VATE−201ペプチド:配列番号11)とアミノ酸配列上の相同性を有している(図8)。
そこで、下記に示すペプチド(CDP−1aペプチド、CDP−5aペプチド、VATE−201ペプチド)を、上記実施例1(3)に記載する方法と同様にしてMAP(Multiple antigenic peptides)の形態にて合成し(図9)、実施例2(1)の方法に従って、各MAPペプチドの各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)に対する反応性をELISAによって調べた。
血清検体としてクローン病患者の血清20検体、並びに比較血清検体として潰瘍性大腸炎患者の血清20検体及び健常者の血清20検体を用いた。結果を図10に示す。図10からわかるように、CDP−1aペプチド、CDP−5aペプチド及びVATE−201ペプチドは互いに同様のELISA反応性を示した。
実施例5 VATE−201ペプチドによる抗原−抗体反応の阻害試験
実施例4で得られたVATE−201の反応性を確認するために、VATE−201ペプチドを用いてCDP−1aペプチドとクローン病抗体との抗原−抗体反応の阻害試験を行った。血清抗体試料として、各MAPペプチド(CDP−1aペプチド、CDP−5aペプチド、VATE−201ペプチド)に強い反応性を示したクローン病患者の血清8番、9番、及び14番(図11参照)を用いた。
具体的には、抗原プレートとして、CDP−1aのMAPペプチド(図10)をプレートに固定化したMAPプレートを用い(実施例2(1)参照)、これにVATE−201のMAPペプチド(反応阻害物質)を100μg/mLの濃度で含むカゼイン溶液(0.1%カゼイン及び1%TritonX−100を含む(D)−PBS)100μLに血清検体1μLを加えて37℃で1時間反応させた溶液の全量を添加し、実施例2(1)と同様にしてELISAを行った。一方、比較実験として、上記反応阻害物質として、VATE−201のMAPペプチドに代えてCDP−1aのMAPペプチドを用いて同様にELISAを行った。結果を図11に示す。
図11のBに示すように、反応系にVATE−201のMAPペプチドを添加することによって、CDP−1aのMAPプレートに対するクローン病患者の各血清検体(8番、9番、14番)の反応性がすべて阻害された。また、上記CDP−1aのMAPペプチドに代えてCDP−5aのMAPペプチドを用いて同様に行った試験においても同様の結果が得られた(結果示さず)。
以上、実施例4及び5の結果から、VATE−201ペプチド、並びにCDP−1aペプチド及びCDP−5aペプチドはいずれもクローン病患者の血清中に特異的に存在する抗体を認識することがわかった。またVATE−201ペプチドとのアミノ酸配列の類似性並びに血清抗体との反応性の共通性から、CDP−1aペプチドおよびCDP−5aペプチドを始めとする本発明のCD1ペプチド及びその同効物は、ヒト液胞型H+輸送性ATPase(V−ATPase)のサブユニットEを模倣するものであると考えられる。
すなわち、上記実施例の結果は、クローン病患者にはヒト液胞型H+輸送性ATPaseサブユニットEに対する抗体が特異的に存在していることを示すものである。このことから、ヒト液胞型H+輸送性ATPase、特にそのサブユニットEを認識する抗体を指標とすることによって個々の被験者についてクローン病の罹患の有無を診断することができるものと考えられる。
実施例6 CD3ペプチド及びその同効物の模倣蛋白質の探索、並びにその評価
実施例5の結果から、CD1ペプチド及びその同効物は、ヒト液胞型H+輸送性ATPase(V−ATPase)のサブユニットEを模倣していることが分かった。そこで同様にしてCD3ペプチド及びその同効物について模倣蛋白質を探索し、そのクローン病抗体への反応性について評価した。
(1)MAPペプチドの調製
CDP3ペプチドの改変物として、CDP3ペプチド(配列番号21)のアミノ酸配列を基本にそれぞれ1アミノ酸残基をアラニンに置換した14種類のペプチドを調製した(表9)。なお、CDP3−1については1番目のアミノ酸がアラニンであるためセリンに置換した。次いで、これらの15種類のペプチドについて、実施例1(3)の方法に従って、それぞれ1分子あたり8個のペプチドを有するMAPペプチドを調製した(1アミノ酸置換MAPペプチド)。
(2)CDP3エピトープ配列の決定
CDPペプチドのアミノ酸配列において、クローン病抗体との特異的反応性に必要な配列を決定するため、上記で調製した1アミノ酸置換MAPペプチドを反応阻害物質として用いて、下記の反応阻害試験を行った。反応血清抗体試料として、実施例2においてCDP−3ペプチドに強い反応性を示したクローン病患者の血清2番、7番及び8番を用いた(図3参照)。
具体的には、抗原プレートとして、CDP3のMAPペプチドをプレートに固定化したMAPプレート(実施例2(1)参照)を用いて3段階の反応により行った。1次反応は、クローン病患者血清を、1アミノ酸置換MAPをそれぞれ100μg/mL濃度で含む検体希釈液(0.5M食塩、1.5%カゼイン、2%正常ヤギ血清、0.2%Tween20を含む0.1Mトリス緩衝液)にて100倍希釈した後、25℃で1時間反応することにより行った。2次反応は、1次反応液100μLをMAPプレートのウエルに添加した後、25℃にて1時間反応した後、3回洗浄することにより行った。3次反応は、酵素標識抗体希釈溶液(0.14M食塩、0.5%BSA、5%正常ヤギ血清、0.05%Tween20を含むトリス緩衝液)で5,000倍に希釈したHRP標識抗ヒトIgG(Fc)特異的抗体100μLを添加し、25℃にて1時間反応した後、3回洗浄することにより行った。検出は、実施例2(1)に従い、1アミノ酸置換MAPペプチドによる反応阻害活性を測定した。結果を表9に示す。
この結果、クローン病患者血清2番において、反応阻害物質としてCDP3−7、CDP3−9、CDP3−10、CDP3−11及びCDP3−13の各MAPペプチドを用いた場合、クローン病患者血清とCDP3ペプチドと反応に対する阻害活性が50%以下であった。また、クローン病患者血清7番及び8番において、反応阻害物質としてCDP3−7、CDP3−9、及びCDP3−11の各MAPペプチドを用いた場合、クローン病患者血清とCDP3ペプチドと反応に対する阻害活性が50%以下であった。以上の結果より、CDP3のアミノ酸配列においてクローン病抗体との反応(抗体認識)に必要な配列なQXDGQXQ(Xは、同一または異なって、任意のアミノ酸残基)(配列番号51)であると判断された。
(3)CDP3ペプチド模倣蛋白質の探索
上記のことから、クローン病抗体の認識に重要と思われるアミノ酸配列(QXDGQXQ(Xは、同一または異なって、任意のアミノ酸))を用いて蛋白質データベースとの相同性解析を行った。その結果、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300(HZF300))の129〜135位のアミノ酸領域と相同性があることが確認された(図12)。
そこで、ヒト核内蛋白質(HZF300)がCDP3ペプチドの模倣蛋白質であることを確認するために、その126〜138位のアミノ酸領域のアミノ酸配列を有するペプチド(Z300ペプチド)をMAPペプチドの形態に調製し、クローン病患者血清20例、潰瘍性大腸炎患者血清20例、及び健常者血清20例を用いてMAP抗原ELISAを行った。
(4)MAP抗原ELISA
まず、ヒト血清を検体希釈液(前述)にて101倍に希釈し、その100μLをMAPプレートのウエルに添加した後、実施例6(2)の2次反応以降の操作に準じて測定し、MAPペプチドと各種の血清抗体との反応性を調べた。結果を図13に示す。その結果、CDP3ペプチドに強い反応性を示すクローン病患者血清2、7及び8番は、Z300ペプチドに対して同様の反応性を示した。一方、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清に対して、Z300ペプチドは明確な反応性を示さなかった。
(5)抗原−抗体反応の阻害試験
Z300ペプチドのクローン病抗体への反応性を確認するために、Z300ペプチドを用いてCDP3ペプチドとクローン病抗体との抗原−抗体反応の阻害試験を行った。血清抗体試料として、CDP3ペプチドに強い反応性を示したクローン病患者の血清2番、7番、及び8番を用いた。
具体的には、抗原プレートとして、CDP3のMAPペプチドをプレートに固定化したMAPプレートを用い(実施例2(1)参照)、これにZ300のMAPペプチド(反応阻害物質)を100μg/mLの濃度で含む検体希釈液(前述)100μLに血清検体1μLを加えて25℃で1時間反応させた溶液の全量を添加し、実施例6(2)と同様にしてELISAを行った。一方、比較実験として、上記反応阻害物質として、Z300のMAPペプチドに代えてCDP3のMAPペプチドを用いて同様にELISAを行った。結果を図14に示す。
図14のBに示すように、反応系にZ300のMAPペプチドを添加することによって、CDP3のMAPプレートに対するクローン病患者の各血清検体(2番、7番、8番)の反応性がすべて阻害された。
上記の結果から、Z300ペプチド及びCDP3ペプチドはいずれもクローン病患者の血清中に特異的に存在する抗体を認識することがわかった。またZ300ペプチドとのアミノ酸配列の類似性並びに血清抗体との反応性の共通性から、本発明のCD3ペプチド及びその同効物は、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)を模倣するものであると考えられる。
すなわち、上記実施例の結果は、クローン病患者にはヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)に対する抗体が特異的に存在していることを示すものである。このことから、ヒト核内蛋白質(Zinc finger protein 300)を認識する抗体を指標とすることによって個々の被験者についてクローン病の罹患の有無を診断することができるものと考えられる。
実施例7 CD4ペプチド及びその同効物の模倣蛋白質の探索、並びにその評価
次いでCD4ペプチド及びその同効物について模倣蛋白質を探索し、そのクローン病抗体への反応性について評価した。
(1)MAPペプチドの調製
CDP4ペプチドの改変物として、CDP4ペプチド(配列番号33)のアミノ酸配列を基本にそれぞれ1アミノ酸残基をアラニンに置換した15種類のペプチドを調製した(表10)。なお、CDP4−1については1番目のアミノ酸がアラニンであるためセリンに置換した。次いで、これらの14種類のペプチドについて、実施例1(3)の方法に従って、それぞれ1分子あたり8個のペプチドを有するMAPペプチドを調製した(1アミノ酸置換MAPペプチド)。
(2)CDP4エピトープ配列の決定
CDPペプチドのアミノ酸配列において、クローン病抗体との特異的反応性に必要な配列を決定するため、上記で調製した1アミノ酸置換MAPペプチドを反応阻害物質として用いて、実施例6(2)と同様にして反応阻害試験を行った。なお、反応血清抗体試料として、実施例2においてCDP−4ペプチドに強い反応性を示したクローン病患者の血清3番、6番、15番、17番及び20番を用いた(図3参照)。結果を表10に示す。
この結果、クローン病患者血清3番、6番、15番、17番及び20番において、反応阻害物質としてCDP4−7、CDP4−8、CDP4−9及びCDP8−12の各MAPペプチドを用いた場合、クローン病患者血清とCDP4ペプチドとの反応に対する阻害活性が30%以下であった。また、クローン病患者血清6番、15番、17番及び20番において、反応阻害物質としてCDP4−6のMApペプチドを用いた場合、クローン病患者血清とCDP3ペプチドとの反応に対する阻害活性が30%以下であった。さらに反応阻害物質としてCDP4−5及びCDP4−11の各MAPペプチドを用いた場合、それぞれクローン病患者血清6番及び15番において、クローン病患者血清とCDP4ペプチドとの反応に対する阻害活性が30%以下であった。
以上の結果より、CDP4ペプチドのアミノ酸配列においてクローン病抗体との反応(抗体認識)に必要な配列なLGGIYXDL(Xは任意のアミノ酸残基)(配列番号49)であると判断された。
(3)CDP4ペプチド模倣蛋白質の探索
上記のことから、クローン病抗体の認識に重要と思われるアミノ酸配列(LGGIYXDL(Xは任意のアミノ酸))を用いて蛋白質データベースとの相同性解析を行った。その結果、コメアレルゲン蛋白質と相同性があることが確認された(図15)。図15に示すように、コメアレルゲン蛋白質はα−amylase/trypsin inhibitorであり、gene familyを形成している。これらの相互に高い相同性を持つα−amylase/trypsin inhibitorは、いずれもクローン病抗体との反応(抗体認識)に重要と考えられるアミノ酸配列L(又はV)GGIYXD(又はE)L領域(配列番号49、50)を有していた。なお、LとVは脂肪族アミノ酸、DとEは酸性アミノ酸として互いに類似するアミノ酸である。
そこで、コメアレルゲン蛋白質がCDP4ペプチドの模倣蛋白質であることを確認するために、Rice seed allergen RA14(図16)の99〜111番目のアミノ酸領域のアミノ酸配列を有するペプチド(TO3965ペプチド)をMAPペプチドの形態に調製し、クローン病患者血清20例、潰瘍性大腸炎患者血清20例、及び健常者血清20例を用いてMAP抗原ELISAを行った。
(4)MAP抗原ELISA
抗原プレートとして、TO3965のMAPペプチドを固定化して調製したMAP抗原プレートを用いる以外は、実施例6(4)と同様にしてMAP抗原ELISAを行った。結果を図17に示す。その結果、CDP4ペプチドに強い反応性を示すクローン病患者血清3、6、15、17及び20番は、TO3965ペプチドに対しても同様の反応性を示した。一方、TO3965ペプチドは、CDP4ペプチドと同様に、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清に対して、明確な反応性を示さなかった。
(5)抗原−抗体反応の阻害試験
TO3965ペプチドのクローン病抗体への反応性を確認するために、実施例6(5)と同様にして、TO3965ペプチドを用いてCDP4ペプチドとクローン病抗体との抗原−抗体反応の阻害試験を行った。血清抗体試料として、CDP4ペプチドに強い反応性を示したクローン病患者の血清3、6、15、17及び20番を用いた。結果を図18に示す。
図18に示すように、反応系にTO3965のMAPペプチドを添加することによって、CDP4のMAPプレートに対するクローン病患者の各血清検体(3、6、15、17及び20番)の反応性がすべて阻害された。
上記の結果から、TO3965ペプチド及びCDP4ペプチドはいずれもクローン病患者の血清中に特異的に存在する抗体を認識することがわかった。またTO3965ペプチドとのアミノ酸配列の類似性並びに血清抗体との反応性の共通性から、本発明のCD4ペプチド及びその同効物は、コメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor gene family)を模倣するものであると考えられる。
すなわち、上記実施例の結果は、クローン病患者にはコメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor)に対する抗体が特異的に存在していることを示すものである。このことから、コメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor)のgene familyを認識する抗体を指標とすることによって個々の被験者についてクローン病の罹患の有無を診断することができるものと考えられる。
産業上の利用可能性
本発明によれば、クローン病患者に特有に存在する抗体に特異的に結合するペプチドを提供することができる。かかる本発明のペプチドはクローン病の検査試薬として有用であり、かかるペプチド及びそれを含む検査試薬によれば、クローン病の罹患の有無を精度よく診断することができる。
また、本発明は、クローン病患者の体内には、ヒト液胞型H+輸送性ATPase、特にヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEを認識する抗体、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)を認識する抗体、コメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor)のgene familyを認識する抗体が、特異的に存在しているという新たな知見を提供する。そして、この知見に基づいて、本発明はこれらの少なくとも1つの抗体を指標として、被験者の生体試料中にその存在を検出することからなるクローン病の検査方法を提供するものである。かかる方法によれば、個々の被験者について、生体試料(例えば血清等)を対象にすることにより、簡便にかつ精度よく、クローン病の罹患の有無を診断することができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1(2)の結果を示す図である。具体的には、クローン病患者血清に対する特異性から選択した5つのクローン(CD−1,CD−2、CD−3、CD−4、CD−5)について各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)に対する反応性をELISAで調べた結果を示す。
図2は、CDP−1、CDP−2、CDP−3、及びCDP−4の各MAPペプチドの構造を示す図である。
図3は、実施例2(1)の結果を示す図である。具体的には、各MAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3、CDP−4のMAPペプチド)に対する各種血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)の反応性をELISAで調べた結果を示す。
図4は、実施例2(2)の結果を示す図である。具体的には、混合抗原プレートを用いて、クローン病(CD)患者血清550検体、潰瘍性大腸炎(UC)患者血清20検体、健常者血清120検体、十二指腸潰瘍患者血清25例及び胃潰瘍患者血清15検体について混合MAPペプチドに対する反応性をELISAで調べた結果を示す。
図5は、実施例2(3)の結果を示す図である。具体的には、図Aは、混合MAPペプチドに対する各種血清検体(クローン病(CD)患者血清、潰瘍性大腸炎(UC)患者血清、及び健常者血清)の反応性を示す図である。図B及びCは、混合MAPペプチドに代えてパン酵母を抗原として、パン酵母に対する各種血清検体(クローン病(CD)患者血清、潰瘍性大腸炎(UC)患者血清及び健常者血清)の反応性を示す(市販のAnti−Saccharomyces cerevisiae antibodies(ASCA)検出キットを使用)。図BはASCA IgG、及び図CはASCA IgAを使用。
図6は、クローン病患者特異的ペプチド(クローン病抗体結合性ペプチド:CD1ペプチド、CD2ペプチド、CD3ペプチド、CD4ペプチド)と、クローン病との関連が報告されているタンパク(CDX、pig pancreatic alpha amylase(ブタ膵臓α−アミラーゼ),M.paratuberculosis HSP65(M.パラチュバキュローシスHSP65),human HSP60(ヒトHSP60),M.paratuberculosis p36(M.パラチュバキュローシスp36))とのアミノ酸配列における相同性を示す図である。なお、図中:はアミノ酸が一致することを、また・はアミノ酸が類似していることを示す。
図7は、タンパクデータベースよりホモロジー検索して得られた、クローン病患者特異的ペプチド(クローン病抗体結合性ペプチド:CD1ペプチド、CD3ペプチド、CD4ペプチド)とアミノ酸配列において相同性を有する各種生物(細菌、菌類、動物、節足動物、植物、藻類)に由来するタンパクを示す図である。
図8は、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEのアミノ酸配列と、CD1ペプチドの同効物(CDP−1ペプチド、CDP−5ペプチド)のアミノ酸配列との相同性を示した図である。なお、図中、‖はV−ATPaseサブユニットEのアミノ酸配列とCDP−1及びCDP−5ペプチドの両方またはいずれか一方のアミノ酸配列を一致することを、|はV−ATPaseサブユニットEのアミノ酸配列とCDP−1及びCDP−5ペプチドの両方のアミノ酸配列とが類似することを示す。また、:はCDP−1とCDP−5ペプチドとのアミノ酸が一致することを、・はCDP−1とCDP−5ペプチドとのアミノ酸が類似することを示す。また下線部は、ファージpVIII−蛋白質に由来するアミノ酸配列を示す。
図9は、VATE−201、CDP−1a及びCDP−5aの各MAPペプチドの構造を示す図である。
図10は、実施例4の結果を示す図である。具体的には、CDP−1aペプチド、CDP−5aペプチド、及びヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEに由来するペプチド(VATE−201ペプチド)について、各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清に対する反応性をELISAで調べた結果を示す。
図11は、実施例5の結果を示す図である。具体的には、クローン病患者の血清検体8番、9番、14番のCDP−1aのMAPプレートに対する反応性をCDP−1aのMAPペプチド抗原(図A)またはVATE−201のMAPペプチド抗原(図B)用いて阻害した試験の結果を示す。図中、―■―はクローン病患者血清8番、―●―はクローン病患者血清9番、及び―▲―はクローン病患者血清14番の結果を示す。
図12は、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)のアミノ酸配列、並びにその126〜138位のアミノ酸領域のアミノ酸配列を有するZ300ペプチドの位置関係を示した図である。
図13は、実施例6(4)の結果を示す図である。具体的には、CDP3ペプチド(上段)及びZ300ペプチド(下段)について、各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清に対する反応性をELISAで調べた結果を示す。
図14は、実施例6(5)の結果を示す図である。具体的には、クローン病患者の血清検体2番、7番、8番のCDP3のMAPプレートに対する反応性をCDP3のMAPペプチド抗原(図A)またはZ300のMAPペプチド抗原(図B)用いて阻害した試験の結果を示す。図中、―■―はクローン病患者血清2番、―●―はクローン病患者血清7番、及び―▲―はクローン病患者血清8番の結果を示す。
図15は、コメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor)のgene familyに属するRice allergen、Rice seed allergen RA5、Rice allergen RA5B precursor、Rice seed allergen R14、Rice allergen RA14B precursor、及びRice seed allergen RAG2について、95〜110位のアミノ酸領域の相同性を比較した図である。
図16は、コメアレルゲン蛋白質(Rice seed allergen RA14)のアミノ酸配列、並びにその99〜111位のアミノ酸領域のアミノ酸配列を有するTO3965ペプチドの位置関係を示した図である。
図17は、実施例7(4)の結果を示す図である。具体的には、CDP4ペプチド(上段)及びTO3965ペプチド(下段)について、各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清に対する反応性をELISAで調べた結果を示す。
図18は、実施例7(5)の結果を示す図である。具体的には、クローン病患者の血清検体3番、6番、15番、17番、20番のCDP4のMAPプレートに対する反応性をCDP4のMAPペプチド抗原(図A)またはTO3965のMAPペプチド抗原(図B)用いて阻害した試験の結果を示す。図中、―■―はクローン病患者血清3番、―●―はクローン病患者血清6番、―▲―はクローン病患者血清15番、―◆―はクローン病患者血清17番、及び―□―はクローン病患者血清20番の結果を示す。
本発明は、クローン病の診断に有用な検査試薬及びその有効成分に関する。また、本発明は血液などの生体試料を被験試料として用いて簡便に実施できるクローン病の検査方法に関する。
背景技術
クローン病は、免疫学的応答の異常状態に基づく局所の炎症性傷害として理解されている。従来、かかるクローン病の診断は、臨床症状、X線造影、内視鏡検査または病理学的検査等によって総合的に行われている。しかしながら、これらの方法は判別に経験と熟練した技術が必要であり、また患者に肉体的または精神的な苦痛を与えるといった欠点がある。このためクローン病を簡単に精度良く診断するための方法が求められている。
クローン病の病因は未だ不明であるが、食餌性抗原との関連も指摘されており、事実、抗パン酵母抗体や抗ブタアミラーゼ抗体等の特定の抗体がクローン病患者の血清中に特異的に増加していることが報告されている。このような知見から、最近ではクローン病の診断として、クローン病患者に特有に見られる抗体、例えば抗パン酵母抗体(松本譽之他,「炎症性腸疾患における血清anti Saccharomyces cerevisiae antibody測定の意義」難治性炎症性腸管障害調査研究班,平成10年報告書;Main J,et al.BMJ,1988 Oct 29,297(6656)1105−6;Barnes RM,et al.Int Arch Allergy Appl Immunol.1990,92(1):9−15;Giaffer MH,et al.Gut.1992 Aug,33(8),1071−5;Sendid B,et al.Clin Diagn Lab Immunol.1996 Mar,3(2),219−26;Quinton JF,et al.,Gut.1998 Jun,42(6)788−91)、抗ブタアミラーゼ抗体(戸澤辰雄他,「クローン病患者血中抗ブタアミラーゼ抗体−ELISAによる研究」難治性炎症性腸管障害調査研究班,平成10年報告書、特開平11−190734号公報)、抗Mパラチュバキュローシス由来タンパク抗体(Suenaga K,et al.Dig Dis Sci.,1999,Jun,44(6),1202−7;Kreuzpaintner G,et al.,Gut.1995 Sep,37(3),361−6;Oudkerk Pool M,et al.,J.Clin Pathol.,1995 Apr,48(4),346−50)、抗好中球抗体(Targan,S.,et al.,Gastroenterology,96,A505,1989)、抗小腸抗体(Bagchi,S.,et al:Clin.Exp.Immunol,55,44−48,1984)を検出することによってクローン病を診断する方法が提案されている。
ところで、コメアレルゲン蛋白質は、コメアレルギー患者におけるIgEの主要抗原として単離され、遺伝子およびアミノ酸配列よりalpha−amylase/trypsin inhibitorであることが知られている(Izumi H,et al.FEBS Lett.1992 May,18;302(3),213−6;Nakamura R,et al.Biosci Biotechnol Biochem.1996 Aug,60(8),1215−21))。前述するように、クローン病に特異的な自己抗原としてパン酵母やブタアミラーゼなどの食餌性抗原との関連は指摘されているものの、上記コメアレルゲン蛋白質との関連性については報告されていない。
また、液胞型H+輸送性ATPaseは、細胞内膜系(central vacuolar system)に属するオルガネラに存在してオルガネラの内部を酸性に調整しているH+ポンプであり、これが形成する酸性pHが神経伝達物質やイオンの濃縮、タンパク質分解など、膜の動的な過程を含む多くの生命現象と密接に結びついていることが知られている(生化学、第65巻、第6号、1993年6月、第413−436頁)。しかし、その生体内での詳細機能は十分に解明されてはいない。さらに、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300(ZNF300))は、Zinc fingerドメインを有することから核内で遺伝子の発現制御に関与していると予測されているものの、未だ機能が不明な蛋白質である。当該ヒト核内蛋白質に関する報告はなく、唯一、そのアミノ酸配列及びその遺伝子配列がデータベースに登録されているに過ぎない(Gou D.−MET et al.,Submitted(28−JUN−2001)to the EMBL/GenBank/DDBJ databases)。
これらの蛋白質については、生体内での機能が解明されることによって新たな薬剤の開発や医療に応用できる可能性が期待されるものの、未だそれを示唆する報告はなく、またいずれもクローン病との関連性について報告された例もない。
発明の開示
本発明は、クローン病の罹患の有無を特異的に検出するのに有用な検査試薬、及びその有効成分を提供することを目的とする。また本発明は、被験者の生体試料を対象に簡便に実施できるクローン病の検査方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、特定のペプチドがクローン病患者体内に特有に存在する抗体を特異的に認識して結合する性質を有することを見出し、これらのペプチドを1種、好ましくは2種以上組み合わせて用いることにより、被験者についてクローン病の罹患の有無を簡単に且つ精度よく検出することができることを確認した。さらに本発明者らは、上記研究の過程で、クローン病患者体内には、液胞型H+輸送性ATPase(特にそのサブユニットE)、コメアレルゲン蛋白質、またはヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300(ZNF300))を認識する抗体が特異的に存在していることを見いだした。そして、これらの蛋白質がクローン病における特異的な自己抗原となっている可能性を確信し、被験者について上記抗体の有無を検出することにより、クローン病の罹患の有無を高い精度で調べることができることを確信した。
本発明はかかる種々の知見に基づいて開発されたものである:
第1に、本発明はクローン病の検査に有効に利用できる下記(1)〜(9)に掲げるクローン病抗体結合性ペプチドである:
(1)下記(a)または(b)のいずれかであるクローン病抗体結合性ペプチド:
(a)配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列のいずれかから選ばれるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)上記(a)に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチド。
(2)上記(b)に記載されるペプチドが、配列番号1〜4または配列番号7に示されるアミノ酸配列のいずれかを一部に含むペプチドである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(3)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号5〜14に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(4)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、少なくともLIAQQMのアミノ酸配列を含むアミノ酸数6〜226ペプチドである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(5)配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号15〜19に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(6)配列番号3に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号20〜32に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(7)配列番号3に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、少なくとも配列番号51に示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸数7〜604のペプチドである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(8)配列番号4に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号33〜48に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである請求項1に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
(9)配列番号4に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、少なくともL(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列を含むアミノ酸数8〜165のペプチドである(1)に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
また、本発明のクローン病抗体結合性ペプチドは、一分子中に、上記(1)〜(9)に掲げる各ペプチドのアミノ酸配列を複数個有するものであってもよい。本発明はこのような形態のペプチドとして、下記(10)〜(11)に掲げる分岐状多抗原性ペプチドを提供する:
(10)分枝鎖のアミノ酸配列として、下記:
(a)配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列のいずれかから選ばれるアミノ酸配列からなるペプチド、または
(b)上記(a)に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチド
のアミノ酸配列を、同一または異なって、一分子中に複数個有する分岐状多抗原性ペプチド。
(11)(i)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(iii)配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、及び(iv)配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物のうち、少なくとも2つの群の中から選択される2種以上の異なるクローン病抗体結合性ペプチドのアミノ酸配列を分枝鎖に有する(10)に記載の分岐状多抗原性ペプチド。
なお、ここで「同効物」とは、各々配列番号1〜4に記載されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドを意味する(下記の(13)においても同じ)。
第2に、本発明はクローン病の診断に有効に利用できる下記(12)〜(15)に掲げるクローン病の検査試薬及びそれを含む試薬キットである:
(12)上記(1)〜(9)のいずれかに記載するクローン病抗体結合性ペプチド;(10)に記載する分岐状多抗原性ペプチド;及びヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体よりなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有するクローン病の検査試薬。
(13)上記のクローン病抗体結合性ペプチドが、(i)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(iii)配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、及び(iv)配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物のうち、少なくとも2つの群の中から選択される2種以上の異なるクローン病抗体結合性ペプチドであり、分岐状多抗原性ペプチドが(11)に記載されるペプチドである、(12)に記載のクローン病の検査試薬。
(14)(12)または(13)に記載の検査試薬をクローン病抗体結合用の抗原物質として含むクローン病の検査試薬キット。
(15)抗ヒトIgG抗体、及び(12)または(13)に記載の検査試薬、並びに必要に応じて、検体希釈液、標識物質、支持体(固相)、抗ヒトIgG抗体希釈液、酵素基質液、及び反応停止液よりなる群から選択される少なくとも1つを含有する(14)に記載のクローン病の検査試薬キット。
第3に、本発明は下記(A)〜(C)に掲げるクローン病の検査方法である:
(A)被験者の生体試料中のヒト液胞型H+輸送性ATPaseを認識する抗体の有無を検出する工程を含むクローン病の検査方法。
上記クローン病の検査方法には、下記の態様が包含される:
(A−1) 上記抗体がヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEを認識する抗体である(A)記載のクローン病の検査方法。
(A−2) 上記抗体がヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体を認識する抗体である(A)記載のクローン病の検査方法。
(A−3) 上記抗体がヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEの199〜212位のアミノ酸領域を認識する抗体である(A)記載のクローン病の検査方法。
(A−4) LIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物、またはこれらのペプチド若しくはその同効物のアミノ酸配列を同一または異なって一分子中に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを抗原物質として用い、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseを認識する抗体との抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出する工程を有する(A)〜(A−3)のいずれかに記載のクローン病の検査方法。
(A−5) LIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物が、LIAQQMのアミノ酸配列を含むアミノ酸数6〜227個からなるペプチドである(A−4)に記載のクローン病の検査方法。
(A−6) LIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチドの同効物が、配列番号1及び5〜14に記載されるそれぞれのアミノ酸配列を有するペプチドよりなる群から選択されるものである(A−4)に記載のクローン病の検査方法。
(A−7) ヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体によって生じる複合物を検出する工程を有する(A)〜(A−3)のいずれかに記載のクローン病の検査方法。
(B)被験者の生体試料中のヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)を認識する抗体の有無を検出する工程を含むクローン病の検査方法。
上記クローン病の検査方法には、下記の態様が包含される:
(B−1) 上記抗体がヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)の126〜138位のアミノ酸領域を認識する抗体である(B)記載のクローン病の検査方法。
(B−2) 配列番号51に記載するペプチド若しくはその同効物、またはこれらのペプチド若しくはその同効物のアミノ酸配列を同一または異なって一分子中に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを抗原として用い、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)を認識する抗体との抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出する工程を有する(B)または(B−1)に記載のクローン病の検査方法。
(B−3) 配列番号51に記載するペプチド若しくはその同効物が、少なくとも配列番号51に記載するアミノ酸配列を含むアミノ酸数7〜604個からなるペプチドである(B−2)に記載のクローン病の検査方法。
(B−4) 配列番号51に記載するペプチドの同効物が、配列番号3、21〜32よりなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドである(B−2)に記載のクローン病の検査方法。
(C)被験者の生体試料中のコメアレルゲン蛋白質を認識する抗体の有無を検出する工程を含むクローン病の検査方法。
(C−1) 上記コメアレルゲン蛋白質がalpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属するものである(C)記載のクローン病の検査方法。
(C−2) 上記コメアレルゲン蛋白質が、Rice allergen、Rice seed allergen RA5、Rice allergen RA5B precursor、Rice seed allergen RA14、Rice allergen RA14B precursor及びRice seed allergen RAG2よりなる群から選択される少なくとも1種である(C)または(C−1)に記載のクローン病の検査方法。
(C−3) 上記コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体が、Rice seed allergen RA14の99〜111位のアミノ酸領域を認識する抗体である(C)〜(C−2)のいずれかに記載のクローン病の検査方法。
(C−4) 上記コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体が、alpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyの、L(V)GGIYRELのアミノ酸配列を有するアミノ酸領域を認識する抗体である(C)〜(C−3)のいずれかに記載のクローン病の検査方法。
(C−5) L(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物、またはこれらのペプチド若しくはその同効物のアミノ酸配列を同一または異なって一分子中に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを抗原物質として用い、コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体との抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出する工程を有する(C)〜(C−4)のいずれかに記載のクローン病の検査方法。
(C−6) L(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物が、少なくともL(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列を含むアミノ酸数8〜166個からなるペプチドである(C−5)に記載のクローン病の検査方法。
(C−7) L(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列からなるペプチドの同効物が、配列番号4、33〜48に記載されるアミノ酸配列を有するペプチドよりなる群から選択されるものである(C−5)に記載のクローン病の検査方法。
更に本発明には、下記の発明が含まれる:
(a)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のペプチドの、クローン病の検査においてクローン病抗体と反応させる抗原物質としての使用。
(b)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のペプチドの、クローン病の検査試薬の製造のための使用。
以下、本明細書におけるアミノ酸、ペプチド、塩基配列、核酸等の略号による表示は、IUPAC、IUBの規定、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(特許庁編)及び当該分野における慣用記号に従うものとする。また、本発明でいうペプチドには、アミノ酸数が10個以下のオリゴペプチドおよびそれ以上のアミノ酸からなるポリペプチドがいずれも包含される。
「クローン病抗体」は、クローン病の罹患によって生体内で生成されるクローン病特有の抗体である。本発明では、原因となる抗原物質の別を問わず、またその認識如何に関わらず、クローン病患者に特異的に認められるクローン病患者特有の抗体を広く意味するものである。より詳細には、少なくとも健常者、潰瘍性大腸炎患者、その他の自己免疫疾患患者、十二指腸潰瘍患者及び胃潰瘍患者とクローン病患者とを対比した場合に、クローン病患者に特異的に認められる抗体を意味する。なお、クローン病抗体は、通常クローン病患者の血液(血清、血漿)、尿、汗、唾液、精液及び髄液等の各種の生体試料中に含まれる。
発明を実施するための最良の形態
(1)クローン病抗体結合性ペプチド
本発明が対象とする「クローン病抗体結合性ペプチド」(以下、単に「CD結合性ペプチド」ともいう)とは、クローン病抗体、すなわちクローン病患者に特異的に認められるクローン病特有の抗体に対して、特異的に結合するペプチドを意味する。
本発明のCD結合性ペプチドとして、具体的には配列番号1〜4に示されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドを例示することができる(配列番号1:CD1ペプチド、配列番号2:CD2ペプチド、配列番号3:CD3ペプチド、配列番号4:CD4ペプチド)。これらはいずれもクローン病抗体に対して特異的に結合性を有することによって特徴づけられる。
さらに本発明のペプチドには、上記配列番号1〜4に示されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドの他に、これらの各アミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが包含される。本発明においては、これらのペプチドを配列番号1から4に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドの「同効物」ということもある。
ここで、アミノ酸の「置換、欠失若しくは付加」の程度及びそれらの位置などは、改変されたペプチドが、配列番号1から4で示されるアミノ酸配列のいずれかからなるペプチド(CD1ペプチド、CD2ペプチド、CD3ペプチド、CD4ペプチド)と同様に、クローン病抗体に対して特異的結合性を有するといった特徴を備えた同効物であれば特に制限されない。アミノ酸配列の改変(変異)は、例えば突然変異や翻訳後の修飾などにより生じることもあるが、人為的に改変することもできる。なお、アミノ酸配列の改変(変異)方法は、当業者において良く知られたところである(例えば、サイトスペシフィック・ミュータゲネシス〔Methods in Enzymology,154,350,367−382(1987);同100,468(1983);Nucleic Acids Res.,12,9441(1984);続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」、日本生化学会編,p105(1986)〕などの遺伝子工学的手法、またはリン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法などの化学合成手段〔J.Am.Chem.Soc.,89,4801(1967);同91,3350(1969);Science,150,178(1968);Tetrahedron Lett.,22,1859(1981);同24,245(1983)〕等が例示できる。)。
本発明は、このような改変や変異の原因及び手段などを問わず、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する全ての改変ペプチドを包含するものである。
かかる同効物はディスプレイファージのライブラリー(ファージディスプレイライブラリー)、好ましくはランダムペプチドディスプレイファージのライブラリーを利用したスクリーニング手法を用いて取得することができる。該ファージディスプレイライブラリーを用いるスクリーニングは、ファージディスプレイ法と呼ばれ、従来から種々の細胞表面レセプターと特異的に結合するリガンドや種々の抗体の認識するエピトープを同定するために使用されている公知の方法である。これらファージディスプレイライブラリーの作成方法及びインビトロスクリーニング法については、スコット及びスミスらの方法を参照することができる(Scott,J.M.and Smith,G.P.,Science,249,386−390(1990);Smith,G.P.and Scott,J.K.,Methods in Enzymology,217,228−257(1993))。
当該ライブラリー中のランダムペプチドディスプレイファージは、クローン病抗体に特異的に結合するペプチドを選別し同定するために、スクリーニング対象とする多数のペプチド(オリゴペプチドまたはポリペプチド)をインビトロで発現するのに利用される。また、用いられるファージライブラリーは、通常この方法に用いられる公知のファージライブラリーのいずれであってもよく、例えばファージのコートタンパク質pIII遺伝子にランダムなDNAが挿入されて、ファージ外殻表面にランダムな15個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するペプチドが発現し得るように構築されたランダムペプチドディスプレイファージ(繊維状ファージ)を好適に例示することができる(特開平10−237098号公報、特開平10−237099号公報および石川大、瀧孝雄、細胞工学,16(12)1821−1828(1997)、特開2000−253900号公報)。
当該スクリーニング方法を利用して、上記CD1ペプチド(配列番号1)、CD2ペプチド(配列番号2)、CD3ペプチド(配列番号3)、及びCD4ペプチド(配列番号4)の各々の同効物を取得する方法として、具体的には次の方法を挙げることができる:
まず、ファージミドベクターに、ランダムなDNA配列を挿入し、ファージの外殻表面に上記DNA配列に対応してランダムなアミノ酸配列を有するペプチドを発現し得るようにランダムペプチドディスプレイファージを構築する。これを、予めマイクロプレート等の固相表面上に抗ヒトIgG抗体を介して固定化したクローン病患者の血清抗体(IgG)と反応させて、該クローン病患者の血清抗体と特異的に結合するファージを回収する(バイオパニング)。なお、ファージミドベクターに挿入するランダムなDNA配列は、同効物取得の対象となるペプチド(CD1ペプチド、CD2ペプチド、CD3ペプチドまたはCD4ペプチド)のアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸を欠失、置換または付加することによって改変したアミノ酸配列をコードするDNA配列を選択することができる。
ここで、マイクロプレート等に固定化させるクローン病患者の血清抗体(IgG)としては、少なくとも抗原結合能を有するものであれば特に制限されず、例えばクローン病に罹患した患者から採取した血清そのものであってもよいし、また該血清をプロテインAを用いて精製した精製抗体や、硫酸マグネシウム溶液で沈降処理することによって得られる精製抗体であってもよい。
またクローン病抗体と特異的に結合するファージの回収は、クローン病抗体とファージとの結合を阻害する能力を有する物質を、上記固定化抗体に対して作用させることによって行うことができる。すなわち、マイクロプレート上に抗ヒトIgG抗体を介して固定化されたクローン病抗体に特異的に結合しているファージは上記物質を加えることによりクローン病抗体から脱離溶出し、回収することができる。このようなスクリーニングを数回、好ましくは2〜3回程度繰り返すことによりクローン病抗体と特異的に結合するペプチドを発現し得るファージが選別できる。
ここで、クローン病抗体とファージとの結合を阻害する能力を有する物質としては、特に制限されないが、例えば酸性溶液やアルカリ性溶液、高濃度の塩、尿素、チオシアン等を挙げることができる。
次いで、上記の方法によって得られたファージを大腸菌に感染させて大量培養し、分離、精製して、クローン病抗体と特異的に結合するペプチド発現ファージを得る。かくして得られたファージは、抗ファージ抗体を介して支持体(固相)に固定化され、クローン病抗体と特異的に結合するファージをスクリーニングする操作に供される。かかるスクリーニングは、具体的には、上記方法で得られたファージを、任意の支持体に固定化した抗ファージ抗体と反応させて固定化し、該固定化ファージに対してクローン病患者の血清並びに対照血清として健常者の血清や潰瘍性大腸炎やその他の自己免疫疾患、胃潰瘍または十二指腸潰瘍などに罹患した患者の血清を反応させて、その反応性からクローン病患者の血清に特異的に反応するファージを選択することによって実施される。次いで、選択されたファージからDNAを抽出単離し、その塩基配列を決定し、それに基づいてアミノ酸配列を決定することにより、選択されたファージが発現するペプチド、すなわちクローン病抗体と特異的に結合するCD1ペプチド、CD2ペプチド、CD3ペプチド、またはCD4ペプチドの各々の同効物(CD結合性ペプチド)を同定し、取得することができる。
なお、上記方法により抽出単離したDNAの配列決定は、当業界で公知の方法により容易に行うことができ、例えばジデオキシ法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,74,5463−5467(1977)〕やマキサム−ギルバート法〔Method in Enzymology,65,499(1980)〕等を挙げることができる。かかる塩基配列の決定は、市販のシークエンスキット等を用いても容易に行うことができる。
例えば、上記の方法で得られるCD1ペプチド(配列番号1)の同効物としては、表1に示すCDP−1aペプチド(配列番号5)、CDP−1ペプチド(配列番号6)、CD5ペプチド(配列番号7)、CDP−5aペプチド(配列番号8)、CDP−5ペプチド(配列番号9)、VATE−201cペプチド(配列番号10)、VATE−201ペプチド(配列番号11)、CD1sペプチド(配列番号12)、及びCDP−1sペプチド(配列番号13)を例示することができる。なお、表1に示す各ペプチドについて、CD1ペプチドのアミノ酸配列と共通する部分を四角で囲み、また類似するアミノ酸残基を下線で示す(以下、表2〜4においても同様)。
また、CD2ペプチド(配列番号2)の同効物としては、表2に示すCDP−2ペプチド(配列番号15)、CD2sペプチド(配列番号16)、CDP−2sペプチド(配列番号17)、CD2s1ペプチド(配列番号18)、及びCDP−2s1ペプチド(配列番号19)を例示することができる。
さらに、CD3ペプチド(配列番号3)の同効物としては、表3に示すCDP−3ペプチド(配列番号20)、CDP3ペプチド(配列番号21)、CDP3−1ペプチド(配列番号22)、CDP3−2ペプチド(配列番号23)、CDP3−3ペプチド(配列番号24)、CDP3−4ペプチド(配列番号25)、CDP3−5ペプチド(配列番号26)、CDP3−6ペプチド(配列番号27)、CDP3−8ペプチド(配列番号28)、CDP3−12ペプチド(配列番号29)、CDP3−14ペプチド(配列番号30)、及びZ300ペプチド(配列番号31)を例示することができる。
さらにまた、CD4ペプチド(配列番号4)の同効物としては、表4に示すCDP−4ペプチド(配列番号33)、CDP4ペプチド(配列番号34)、CDP4−1ペプチド(配列番号35)、CDP4−2ペプチド(配列番号36)、CDP4−3ペプチド(配列番号37)、CDP4−4ペプチド(配列番号38)、CDP4−10ペプチド(配列番号39)、CDP4−13ペプチド(配列番号40)、CDP4−14ペプチド(配列番号41)、及びTO3965ペプチド(配列番号42)を例示することができる。
これらのCD結合性ペプチドは、そのアミノ酸配列に従って、一般的な化学合成法により製造することができる。該方法には、通常の液相法及び固相法によるペプチド合成法が包含される。かかるペプチド合成法は、より詳しくは、本発明で提供するアミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させ鎖を延長させていくステップワイズエロゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法とを包含する。本発明のペプチドの合成は、そのいずれによることもできる。
上記ペプチド合成に採用される縮合法も、公知の各種方法に従うことができる。その具体例としては、例えばアジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)、ウッドワード法等を例示できる。これらの各方法に利用できる溶媒もこの種ペプチド縮合反応に使用されることがよく知られている一般的なものから適宜選択することができる。その例としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
尚、上記ペプチド合成反応に際して、反応に関与しないアミノ酸及至ペプチドにおけるカルボキシル基は、一般にはエステル化により、例えばメチルエステル、エチルエステル、第三級ブチルエステル等の低級アルキルエステル、例えばベンジルエステル、p−メトキシベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステルアラルキルエステル等として保護することができる。また、側鎖に官能基を有するアミノ酸、例えばTyrの水酸基は、アセチル基、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、第三級ブチル基等で保護されてもよいが、必ずしもかかる保護を行う必要はない。更に例えばArgのグアニジノ基は、ニトロ基、トシル基、2−メトキシベンゼンスルホニル基、メチレン−2−スルホニル基、ベンジルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基等の適当な保護基により保護することができる。上記保護基を有するアミノ酸、ペプチド及び最終的に得られる本発明のペプチドにおけるこれら保護基の脱保護反応もまた、慣用される方法、例えば接触還元法や、液体アンモニア/ナトリウム、フッ化水素、臭化水素、塩化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸等を用いる方法等に従って、実施することができる。
かくして得られる本発明のCD結合性ペプチドは、通常の方法に従って、例えばイオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、向流分配法等のペプチド化学の分野で汎用されている方法に従って、適宜その精製を行うことができる。
また、本発明でいうCD結合性ペプチドには、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、上記各種のペプチドだけでなくこれらのペプチドのアミノ酸配列を一部に含むオリゴペプチドやポリペプチドも包含される。
このようなポリペプチドとしては、例えば、配列番号1,配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号7,配列番号10,配列番号12,配列番号16,配列番号18,配列番号31,または配列番号42のいずれかに示されるアミノ酸配列を一部に有するポリペプチドを挙げることができる。また、上記配列番号のいずれかに示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列であって、且つクローン病抗体に結合性を有するアミノ酸配列を一部に有するポリペプチドであってもよい。
一般に抗原−抗体反応において抗体が認識するのに必要な最小のアミノ酸数は4個であると考えられている。従って、抗原性の観点からは、4以上のアミノ酸からなるペプチドである限り、そのアミノ酸数は特に制限されない。制限はされないが、通常4〜700個のアミノ酸数を例示することができる。また、後述するように一分子中に当該CD結合性ペプチドのアミノ酸配列を分枝鎖として複数個有する分岐状多抗原性ペプチドとして調製する場合には、当該分枝鎖のアミノ酸数として9〜14の範囲を好適に例示することができる。
より具体的には、少なくとも配列番号10に示されるアミノ酸配列のうちLIAQQMのアミノ酸配列を含むポリペプチドを例示することができる。配列番号10に示されるアミノ酸配列は、CD1ペプチドの同効物であるVATE−201cペプチドのアミノ酸配列であり、当該アミノ酸配列(LIAQQM)を一部に含むポリペプチドとしては、配列番号11のアミノ酸配列を有するVATE−201ペプチド、液胞型H+輸送性ATPase(以下、「V−ATPase」ともいう)、またはそのサブユニットEを挙げることができる。なお、V−ATPaseのアミノ酸配列のサブユニットEのアミノ酸配列を配列番号14に示す。
V−ATPaseは、真核細胞の細胞内膜系(central vacuolar system)に属するオルガネラ(ゴルジ体、リソソーム、分泌顆粒、シナプス小胞、酵母の液胞など)の内部を酸性に維持するために機能しているH+ポンプである。当該V−ATPaseは、サブユニットA、B、C、D及びE、並びに115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットの9つのサブユニットから構成されることが知られている。これらの各サブユニットの一次構造は既に公知であり、またこれらのサブユニットから構成されるV−ATPaseの構造も推定されている(生化学、第65巻、第6号、1993年6月、第413−436頁)。
本発明のCD結合性ペプチドには、これらのサブユニットから構成されるV−ATPaseの全配列を有するポリペプチド(蛋白質)、並びにクローン病抗体との結合性を備える限り、V−ATPaseの断片(各サブユニット及び各サブユニットの断片を含む)が含まれる。また、本発明のCD結合性ペプチドには、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体も包含される。
V−ATPaseの断片としては、サブユニットE(33kDaポリペプチド、アミノ酸数226個)、当該サブユニットE領域を含むポリペプチド(サブユニットEを含む各種サブユニットの複合体を含む)、当該サブユニットEのアミノ酸配列の202−208領域を含むアミノ酸数7〜226個のポリペプチド、またはサブユニットEのアミノ酸配列の199−212領域を含むアミノ酸数14〜226個のポリペプチドを挙げることができる。さらに、これらのV−ATPase、並びにその断片(例えば、サブユニットEを含む各種サブユニットの複合体、サブユニットEまたはその一部)は、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、そのアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されていてもよい。これらの改変蛋白質は、それぞれV−ATPase並びにその断片(例えばサブユニットE)の同効物として定義することができる。
また、CD結合性のポリペプチドとして、少なくとも配列番号51に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを例示することができる。配列番号51に示されるアミノ酸配列は、CD3ペプチドの同効物であるZ300ペプチドのアミノ酸配列(配列番号31)にも該当する。当該アミノ酸配列を一部に含むポリペプチドとしては)ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300;以下、「ヒト核内蛋白質(HZF300)」ともいう)を挙げることができる。なお、ヒト核内蛋白質(HZF300)のアミノ酸配列を配列番号32に示す。本発明のCD結合性ペプチドには、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、配列番号32に示すヒト核内蛋白質(HZF300)のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されていてもよい。かかる改変物としては、ヒト核内蛋白質(HZF300)のアミノ酸配列の129−135領域を含むアミノ酸数7〜604個のポリペプチド、またはヒト核内蛋白質(HZF300)のアミノ酸配列の126−139領域を含むアミノ酸数14〜604個のポリペプチドを挙げることができる。これらの改変物は、ヒト核内蛋白質(HZF300)の同効物として定義することができる。
さらに、CD結合性のポリペプチドとして、少なくともL(V)GGIYXE(D)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列を含むポリペプチドを例示することができる。当該アミノ酸配列を一部に含むポリペプチドには、配列番号4、33〜42にそれぞれ示されるCD4ペプチド及びその同効物が全て含まれる。また、当該アミノ酸配列を一部に含むポリペプチドとして、他にコメアレルゲン蛋白質のalpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属するライス・シード・アレルゲンRA14(Rice seed allergen RA14)を挙げることができる。なお、Rice seed allergen RA14のアミノ酸配列を配列番号46に示す。
本発明のCD結合性ペプチドは、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、Rice seed allergen RA14(配列番号46)のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されていてもよい。かかる改変物としては、Rice seed allergen RA14のアミノ酸配列(配列番号46)の101−108領域を含むアミノ酸数8〜165個のポリペプチド、またはRice seed allergen RA14のアミノ酸配列の99−111領域を含むアミノ酸数13〜165個のポリペプチドを挙げることができる。これらの改変物は、Rice seed allergen RA14の同効物として定義することができる。
さらに本発明のCD結合性ペプチドには、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、配列番号42に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されていてもよい改変アミノ酸配列を一部に含むポリペプチドも含まれる。かかるポリペプチドとしては、Rice seed allergen RA14と同様にalpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属するライス・アレルゲン(Rice allergen)(配列番号43)、ライス・シード・アレルゲンRA5(Rice seed allergen RA5)(配列番号44)、ライス・アレルゲンRA5B・プレカーサー(Rice allergen RA5B precursor)(配列番号45)、ライス・アレルゲンRA14B・プレカーサー(Rice allergen RA14B precursor)(配列番号47)、及びライス・シード・アレルゲンRAG2(Rice seed allergen RAG2)(配列番号48)を挙げることができる。なお、これらのコメアレルゲン蛋白質もまた、クローン病抗体に対して特異的結合性を有する限り、そのアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されていてもよい。このようなコメアレルゲン蛋白質の同効物としては、例えば、各コメアレルゲン蛋白質の95〜110位のアミノ酸領域に位置する少なくともL(V)GGIYRELのアミノ酸配列(配列番号49、50)を保有する蛋白質を挙げることができる。具体的にはRice allergenのアミノ酸配列の99−106領域を含むアミノ酸数8〜157個のポリペプチド、Rice seed allergen RA5のアミノ酸配列の99−106領域を含むアミノ酸数8〜157個のポリペプチド、Rice allergen RA5B precursorのアミノ酸配列の102−109領域を含むアミノ酸数8〜160個のポリペプチド、Rice allergen RA14B precursorのアミノ酸配列の102−109領域を含むアミノ酸数8〜166個のポリペプチド、及びRice seed allergen RAG2のアミノ酸配列の102−109領域を含むアミノ酸数8〜166個のポリペプチドを挙げることができる。これらの改変蛋白質は、それぞれRice allergen、Rice seed allergen RA5、Rice allergen RA5B precursor、Rice allergen RA14B precursor、及びRice seed allergen RAG2の同効物として定義することができる。
以上、V−ATPase、そのサブユニットE(配列番号14)及びこれらの同効物はCD1ペプチドの同効物として、ヒト核内蛋白質(HZF300)(配列番号32)及びその同効物はCD3ペプチドの同効物として、並びにalpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属する各種のコメアレルゲン蛋白質(配列番号43〜48)及びこれらの同効物はCD4ペプチドの同効物として、いずれも本発明のCD結合性ペプチドに包含される。
さらに本発明のCD結合性ペプチドは、多抗原性ペプチド(multiple antigen peptide:以下「MAPペプチド」または「分岐状多抗原性ペプチド」もいう)形態であることもできる。このMAPペプチドは、基本分子に、例えば配列番号1〜4に示されるペプチド(CD1ペプチド〜CD4ペプチド)またはこれらの同効物のアミノ酸配列が分枝鎖として、複数個、分岐状に結合した形態として特徴付けられる。上記CD結合性ペプチドのアミノ酸配列を有する分枝鎖の数としては特に制限されないが、好ましくは2〜16個、より好ましくは4〜16個、さらに好ましくは8個を例示することができる。
MAP形態を有する本発明のCD結合性ペプチド(分岐状多抗原性ペプチド)の好適な一例としては、例えば基本分子(骨格)としてデンドリマー構造を有するものを挙げることができる。
デンドリマーとは、一般に樹枝状形状から星形の立体配置を有する球状乃至その他の構造の分子として知られている。該分子はまた複数個の機能基を有する枝(繰返し単位)を有することにより特徴付けられる(例えば、特表昭60−500295号公報;特開昭63−99233号公報;特開平3−263431号公報;米国特許第4507466号明細書;同第4568737号明細書;Polymer Journal,17,p.117(1985);Angewandte Chem.Int.Engl.,29,138−175(1990);Macromolecures,25,p.3247(1992)など参照)。
本発明に利用できるデンドリマーは、開始部分となる核構造、該開始核に結合した繰返し単位(枝)で構成される内部層(世代)および各枝に結合して存在する機能基よりなる外表面を有するものであれば、特に制限されない。該デンドリマーの大きさ、形態、反応性などは、開始核部分、世代数および各世代に用いられる繰返し単位を適宜選択することによって調節することができ、これらにも特に制限はない。適当な大きさなどを有するデンドリマーの製造は、後記する常法に従うことができ、また異なる大きさのデンドリマーは、利用される世代数を増やすことによって容易に得ることができる(例えば米国特許第4694064号明細書など参照)。
デンドリマー構造を有する本発明のCD結合性ペプチド(分岐状多抗原性ペプチド))の一例としては、例えば窒素原子を開始核部分とし、該核部分に結合する−CH2CH2CONHCH2CH2−構造からなる繰返し単位(枝)を有するデンドリマーの各枝の最外側末端にCD結合性ペプチドの特定アミノ酸配列を、複数個結合させたものを挙げることができる。他の一例としては、例えばLys、Arg、Glu、Aspなどのアミノ酸のいずれかを開始核部分とし、該核部分に直接結合する繰返し単位として同様の各アミノ酸を利用し、同様に各枝末端にCD結合性ペプチドのアミノ酸配列を結合させたものを挙げることができる。
上記窒素原子を開始核部分とするデンドリマーは、常法に従い製造できる。またその構造物(デンドリマー原料)は、市販品としても入手できる(Polysciences,Inc.,400 Vally Road,Warrington,PA,18976 U.S.A.)。他方のアミノ酸を開始核部分とするデンドリマーは、例えば前記したペプチド合成法に従い製造することができる。また、例えばFmoc8−Lys4−Lys2−Lys−βAla−Alko樹脂(渡辺化学工業社製)などとして市販のデンドリマー原料を利用して製造することもできる。
より具体的には、上記デンドリマー原料は、次の如くして製造することができる。即ち、固相ペプチド合成用の樹脂に、スペーサーを介してまたは介さずに、2つのアミノ基を同一のまたは同一でない保護基で保護したα,ω−ジアミノ酸を縮合反応させ、ついで保護基を除去し、更に同様の保護α,ω−ジアミノ酸の縮合反応及び脱保護基反応を繰返す。
固相ペプチド合成用の樹脂としては、通常のペプチド合成に汎用されているものをいずれも使用することができる。その例としては、例えばポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリスチレンポリエチレングリコール樹脂などの末端にクロロメチル基、4−(ヒドロキシメチル)フェノキシ基、4−((α−2’,4’−ジメトキシフェニル)−9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノメチル)フェノキシ基などを有するものを挙げることができる。スペーサーとしては、1個または複数個のアミノ酸を挙げることができる。また、α,ω−ジアミノ酸としては、リジン、オルニチン、1,4−ジアミノ酪酸、1,3−ジアミノプロピオン酸などを挙げることができる。
保護基としては、Boc基、Fmoc基、Z基などを挙げることができる。機能基としては、アミノ基、カルボキシル基および水酸基を挙げることがきる。保護基の除去反応は、前述したペプチド合成法に従うことができる。枝の数は、繰返し単位の縮合と保護基の除去とをn回繰り返すことにより2nとなる。この枝数は、具体的には2から16の範囲を好ましいものとして挙げることができる。
得られるデンドリマー原料の各枝末端の機能基に、CD結合性ペプチドの特定アミノ酸配列を結合させることにより、所望のMAP形態の本発明のペプチド(分岐状多抗原性ペプチド)を収得することができる。この結合反応は、前記したペプチド合成法に従うことができる。
MAP形態の本発明ペプチド(分岐状多抗原性ペプチド)は、常法に従い、適当なマトリックス、例えばセファクリールS−300(ファルマシア社製)などの樹脂を用いたクロマトグラフィー操作などにより精製することができる。
本発明の分岐状多抗原性ペプチドにおいて、各枝末端を構成するアミノ酸配列は、同一のものである必要はなく任意に異なるCD結合性ペプチドのアミノ酸配列を組合せたものであることもできる。異なるCD結合性ペプチドのアミノ酸配列の組合せ例としては、例えば、(i)CD1ペプチド及びその同効物、(ii)CD2ペプチド及びその同効物、(iii)CD3ペプチド及びその同効物、及び(iv)CD4ペプチド及びその同効物よりなる4群のうち、少なくとも2群、好ましくは3群、より好ましくは4群の中から選択される異なる2種以上、好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上のペプチドのアミノ酸配列の組合せを例示することができる。このような複合型分岐状多抗原性ペプチドによれば、個々の被験者についてクローン病の罹患の有無をより高い精度で検出することができる。
本発明のCD結合性ペプチドは、クローン病患者に特異的に認められるクローン病特有の抗体(クローン病抗体)を選択的に認識してそれと結合する性質を有するものである。よって、本発明のCD結合性ペプチド及びそのアミノ酸配列を含む分岐状多抗原性ペプチドは、クローン病の罹患の有無、すなわちクローン病の検査及び診断に有効に利用することができる。
(2)クローン病の検査試薬及び試薬キット
以上のことから、本発明は上記のCD結合性ペプチドまたは及びそのアミノ酸配列を含む分岐状多抗原性ペプチドを有効成分とするクローン病の検査試薬を提供する。
具体的には、本発明のクローン病の検査試薬は、有効成分として、前述する(i)CD1ペプチドまたはその同効物、(ii)CD2ペプチドまたはその同効物、(iii)CD3ペプチドまたはその同効物、及び(iv)CD4ペプチドまたはその同効物からなる各種のCD結合性ペプチドの中から選択される少なくとも1つのペプチド、または(i)CD1ペプチドまたはその同効物、(ii)CD2ペプチドまたはその同効物、(iii)CD3ペプチドまたはその同効物、及び(iv)CD4ペプチドまたはその同効物からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドのアミノ酸配列を、同一または異なって一分子中に、分岐状に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを含むものである。
なお、上記のCD1ペプチドの同効物には、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体が包含される。
ここで有効成分として用いるこれらのCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドは、クローン病抗体に対するその特異的結合性を利用して、被験者の生体試料中に存在し得るクローン病抗体と結合してそれを捕捉または標識化する抗原物質としての役目を担うものである。
クローン病の検査試薬の有効成分として、上記のCD結合性ペプチドは1種単独で使用されてもよいが、2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。精度(判定の信頼性)向上の点からは2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。かかる組合せの態様は特に制限されないが、好ましくは(i)CD1ペプチドまたはその同効物(例えば、CDP−1aペプチド,CDP−1ペプチド,CD5ペプチド,CDP−5aペプチド,CDP−5ペプチド,VATE−201cペプチド,VATE−201ペプチド,CD1sペプチド,CDP−1sペプチド、V−ATPase,サブユニットEまたはこれらの同効物)、(ii)CD2ペプチドまたはその同効物(例えば、CDP−2ペプチド,CD2sペプチド,CDP−2sペプチド,CD2s1ペプチド,CDP−2s1ペプチドまたはこれらの同効物)、CD3ペプチドまたはその同効物(例えば、CDP−3ペプチド,CDP3ペプチド,CDP3−1ペプチド,CDP3−2ペプチド,CDP3−3ペプチド,CDP3−4ペプチド,CDP3−5ペプチド,CDP3−6ペプチド,CDP3−8ペプチド,CDP3−12ペプチド,CDP3−14ペプチド,Z300ペプチド,ヒト核内蛋白質(HZF300)またはこれらの同効物)、及び(iv)CD4ペプチドまたはその同効物(例えば、CDP−4ペプチド,CDP4ペプチド,CDP4−1ペプチド,CDP4−2ペプチド,CDP4−3ペプチド,CDP4−4ペプチド,CDP4−10ペプチド,CDP4−13ペプチド,CDP4−14ペプチド,TO3965ペプチド,Rice allergen,Rice seed allergen RA5,Rice allergen RA5B precursor,Rice seed allergen RA14,Rice allergen RA14B precursor,Rice seed allergen RAG2またはこれらの同効物)の各群(i)〜(iv)のうち、少なくとも2群、好ましくは3群、より好ましくは4群から任意に選択される2種以上、好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上のペプチドを組み合せて使用する態様である。
本発明のクローン病の検査試薬が、上記のようにCD結合性ペプチドを2種以上含有する組成物の態様である場合、各CD結合性ペプチドの配合割合は特に制限されない。例えば、各CD結合性ペプチドを互いに等しい割合で配合してもよいし、またクローン病抗体に対する反応性(結合性)の弱いペプチド等を含む場合はそれを考慮して、該反応性の弱いペプチド等の配合割合が多くなるように配合することもできる。例えば、制限されないが、有効成分として、上記(i)群、(ii)群、(iii)群及び(iv)群のそれぞれに属するCD結合性ペプチドとして、(i)CD1ペプチド、(ii)CD2ペプチド、(iii)CD3ペプチド、及び(iv)CD4ペプチドを用いる場合、これらは1:2:2:1の割合で用いることができる。
また、クローン病の検査試薬の有効成分として、上記の分岐状多抗原性ペプチドを用いる場合、当該多抗原性ペプチドは分枝を構成するアミノ酸配列は、同一種のCD結合性ペプチドのアミノ酸配列からなるものであってもよいが、2種以上の異なるCD結合性ペプチドのアミノ酸配列を含むものであってもよい。後者の場合、かかる分枝として用いるCD結合性ペプチドのアミノ酸配列の組合せの態様も特に制限されないが、上記各群(i)〜(iv)のうち、少なくとも2群、好ましくは3群、より好ましくは4群から任意に選択される2種以上、好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上のCD結合性ペプチドのアミノ酸配列を組み合せて分岐鎖として使用する態様である。
本発明のクローン病の検査試薬は、クローン病抗体と特異的に結合する抗原物質として、クローン病抗体の捕捉や標識化に用いることができる。よってこの目的を逸脱しない限り、当該検査試薬は、有効成分として1種または2種以上のCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドだけからなるものであってもよいし、また他の成分を含有するものであってもよい。また、クローン病抗体の標識に用いるためには、これらのCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドは、任意の標識物質で標識されていることが好ましい。かかる標識に用いられる標識物質としては、当業界で用いられる通常の標識物質を広く用いることができ、特に制限されないが、具体的には3Hや14C等の放射性同位元素;アルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ(POX)、マイクロパーオキシダーゼ、キモトリプリノーゲン、プロカルボキシペプチダーゼ、グリセロアルデヒド−3−リン酸脱水酵素、アミラーゼ、ホスホリラーゼ、D−ナーゼ、及びP−ナーゼなどの酵素;フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)等の蛍光物質;並びに、その他1N−(2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシル−4−ピペリジル)−5N−(アスパルテート)−2,4−ジニトロベンゼン(TOPA)、染料ゾル、金属ゾル、ラテックス粒子等を例示することができる。なお、前述する本発明にかかるCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドには、これらの標識化CD結合性ペプチドも包含される。
一般に、被験者の生体試料を被験試料として、クローン病の検査を行うには、CD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドを有効成分とする上記の検査試薬を含む試薬キットを利用することが簡便である。ゆえに、また本発明はクローン病の検査(診断)に有効に利用できる試薬キットを提供する。
本発明のクローン病の検査試薬キットは、前述する検査試薬を、クローン病抗体と結合させる目的で含むものであれば、クローン病抗体の捕捉剤として含んでいても、またクローン病抗体の標識剤として含んでいてもよい。なお、上記の検査試薬をクローン病抗体の捕捉剤として利用する場合には、予め任意の支持体(固相)に固定化させた固定化物として用いることもできる。またクローン病抗体の標識剤として利用する場合には、前述するように任意の標識物質で標識されたCD結合性ペプチドまたは多抗原性ペプチドを用いることが好ましい。
本発明の検査試薬キットに上記の検査試薬と組み合わせて用いられる他の成分は、クローン病の検査に利用される免疫学的測定方法の種類や採用される検出手段に応じて、常法に従って適宜選択して用いることができる。好ましくは、本発明の検査試薬キットには、CD結合性ペプチドまたは多抗原性ペプチドを有効成分とする上記の検出試薬以外の他の成分として、ヒトIgGを検出するための二次抗体(例えば抗ヒトIgG抗体)を含めることができる。なお、当該抗ヒトIgG抗体は、前述する標識物質で標識化されていてもよいし、また予め任意の支持体(固相)に固定化されていてもよい。
また、検査試薬キットには、標識物質に応じた基質、または標識物質と基質との反応を検出するための検出試薬が含まれていてもよく、さらに測定の実施の便益のために適当な被験試料希釈液、二次抗体希釈液(例えば抗ヒトIgG抗体希釈液)、標準抗体、緩衝液、洗浄液、酵素基質液、反応停止液などが含まれていてもよい。さらに、上記の検査試薬または抗ヒトIgG抗体として、標識または固定化されていないものを使用する場合は、検査試薬キットの他に成分として、支持体(固相)や標識物質を含めることもできる。
すなわち、本発明のクローン病の検査試薬キットは、上記のCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドを有効成分とする検出試薬(固定化または/及び標識されていてもよい)に、固定化または/及び標識されていてもよい抗ヒトIgG抗体、標識物質に応じた基質、抗体希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄液、基質溶解液、反応停止液、支持体(固相)、及び標識物質の中から任意に選択される少なくとも一つを組み合わせたクローン病の検査用の試薬セットである。簡便性、安全性、感度等の観点から、好ましくは酵素を標識物質として用いることが好ましい。この点から、本発明のクローン病の検査試薬キットは、上記のCD結合性ペプチドまたは分岐状多抗原性ペプチドを有効成分とする検出試薬(固定化または/及び酵素標識されていてもよい)に、固定化または/及び酵素標識されていてもよい抗ヒトIgG抗体、酵素基質、抗体希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄液、酵素基質溶解液、酵素反応停止液、支持体(固相)、及び酵素標識物質の中から任意に選択される少なくとも一つを組み合わせたクローン病の検査用の試薬セットであることができる。なお、酵素標識のための酵素標識物質としては、例えば、上記に加えて、マイクロパーオキシダーゼ、キモトリプシノーゲン、プロカルボキシペプチダーゼ、グリセロアルデヒド−3−リン酸脱水酵素、アミラーゼ、ホスホリラーゼ、D−ナーゼ、及びP−ナーゼなどを例示することができる
(3)クローン病の検査方法
さらに本発明はクローン病の検査方法を提供する。当該検査方法は、検査のための被験試料として被験者の生体試料を用いて、個々の被験者についてクローン病の罹患の有無を検出するものである。より具体的には、本発明のクローン病の検査方法は、クローン病患者の生体試料に特異的に存在する特定の抗体の存在を指標として、個々の被験者についてクローン病の罹患の有無を検出するものである。
ここで被験試料としては、被験者(ヒト)の血液(血清、血漿)、尿、汗、唾液、精液または髄液等の各種の生体試料、好ましくは血清を用いることができる。
クローン病の検査方法として、下記(3−1)〜(3−3)の3つの方法を挙げることができる。
(3−1) 後述する実施例に示すように、クローン病患者にはヒト液胞型H+輸送性ATPaseを認識する抗体が特異的に存在している。
従って、本発明のクローン病の検査方法として、被験者の生体試料を対象として、ヒト液胞型H+輸送性ATPase(V−ATPase)を認識する抗体を検出する工程を含む方法を挙げることができる。上記の検出対象とする抗体は、好ましくはV−ATPaseのサブユニットEを認識する抗体であり、より好ましくはV−ATPaseのサブユニットEの199〜212位のアミノ酸領域を認識する抗体である。
これらの抗体の検出は、抗原−抗体反応を利用した従来公知の免疫学的測定方法を用いて行うことができる。具体的にはクローン病の罹患が疑われる被験者から、上記各種の生体試料、好ましくは血清を採取し、その生体試料と上記V−ATPaseを認識する抗体に結合性を有する抗原物質を反応させて、抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出することによって実施することができる。
ここでV−ATPaseを認識する抗体に結合性を有する抗原物質としては、V−ATPaseを認識する抗体に特異的に結合するものであれば特に制限されない。好ましくはV−ATPaseのサブユニットEを認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものであり、より好ましくはV−ATPaseのサブユニットEの199〜212位のアミノ酸領域を認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものである。かかる性質を有するものとして、具体的にはLIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチド及びその同効物を挙げることができる。ここで同効物には、上記アミノ酸配列(LIAQQM)において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加により改変されてなるペプチドであって、且つV−ATPaseのサブユニットEを認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものが含まれる。かかるペプチドとしては、例えば配列番号1、5〜15の各々に記載されるアミノ酸配列を有するペプチド(CD1ペプチド、CDP−1aペプチド、CDP−1ペプチド、CD5ペプチド、CDP−5aペプチド、CDP−5ペプチド、VATE−201cペプチド、VATE−201ペプチド、CD1sペプチド、CDP−1sペプチド、V−ATPase、V−ATPaseのサブユニットE)を挙げることができる。また、これらに限定されることなく、例えば上記アミノ酸配列(LIAQQM)を有するアミノ酸数6〜226、好ましくは6〜14のポリペプチドを用いることもできる。
またV−ATPaseを認識する抗体に結合性を有する抗原物質として、V−ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体を用いることもできる。さらにまた、V−ATPaseを認識する抗体に結合性を有する抗原物質として、上記のアミノ酸配列(LIAQQM)からなるペプチドまたはその同効物を、同一または異なって、一分子中に複数個含む分岐状多抗原性ペプチドを用いることもできる。
(3−2) また後述する実施例6に示すように、クローン病患者にはヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300(HZF300))を認識する抗体が特異的に存在している。
従って、本発明のクローン病の検査方法として、被験者の生体試料を対象として、ヒト核内蛋白質(HZF300)を認識する抗体を検出する工程を含む方法を挙げることができる。上記の検出対象とする抗体は、好ましくはヒト核内蛋白質(HZF300)の126〜138位のアミノ酸領域を認識する抗体である。
これらの抗体の検出は、抗原−抗体反応を利用した従来公知の免疫学的測定方法を用いて行うことができる。具体的にはクローン病の罹患が疑われる被験者から、上記各種の生体試料、好ましくは血清を採取し、その生体試料と上記ヒト核内蛋白質(HZF300)を認識する抗体に結合性を有する抗原物質を反応させて、抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出することによって実施することができる。
ここで上記ヒト核内蛋白質を認識する抗体に結合性を有する抗原物質としては、当該ヒト核内蛋白質(HZF300)を認識する抗体に特異的に結合するものであれば特に制限されない。好ましくはヒト核内蛋白質(HZF300)の126〜138位のアミノ酸領域を認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものである。かかる性質を有するものとして、具体的には配列番号51に記載するアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物を挙げることができる。ここで同効物には、配列番号51において1又は複数個のアミノ酸が付加してなるペプチドまたは蛋白質であって、且つヒト核内蛋白質(HZF300)を認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものが含まれる。かかるペプチドとしては、例えば配列番号3及び20〜32の各々に記載されるアミノ酸配列を有するペプチド(CD3ペプチド、CDP−3ペプチド、CDP3−1ペプチド、CDP3−2ペプチド、CDP3−3ペプチド、CDP3−4ペプチド、CDP3−5ペプチド、CDP3−6ペプチド、CDP3−8ペプチド、CDP3−12ペプチド、CDP3−14ペプチド、Z300ペプチド、ヒト核内蛋白質(HZF300))を挙げることができる。また、これらに限定されることなく、例えば配列番号51に記載するアミノ酸配列を一部に有するアミノ酸数7〜604のポリペプチドを用いることもできる。
さらにヒトヒト核内蛋白質(HZF300)を認識する抗体に結合性を有する抗原物質として、上記の配列番号51に記載するアミノ酸配列からなるペプチドまたはその同効物を、同一または異なって一分子中に複数個含む分岐状多抗原性ペプチドを用いることもできる。
(3−3) また後述する実施例7に示すように、クローン病患者にはコメアレルゲン蛋白質を認識する抗体が特異的に存在している。
従って、本発明のクローン病の検査方法として、被験者の生体試料を対象として、コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体を検出する工程を含む方法を挙げることができる。なお、ここでコメアレルゲン蛋白質としては、α−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属するものを挙げることができ、具体的にはRice allergen(158aa)、Rice seed allergen RA5(157aa)、Rice allergen RA5B precursor(160aa)、Rice seed allergen RA14(165aa)、Rice allergen RA14B precursor(166aa)、及びRice seed allergen RAG2(166aa)を例示することができる。上記の検出対象とする抗体は、好ましくはこれらの各種のコメアレルゲン蛋白質の95〜110位のアミノ酸領域に位置する少なくともL(又はV)GGIYRELのアミノ酸配列を認識する抗体である。
これらの抗体の検出は、抗原−抗体反応を利用した従来公知の免疫学的測定方法を用いて行うことができる。具体的にはクローン病の罹患が疑われる被験者から、上記各種の生体試料、好ましくは血清を採取し、その生体試料と上記コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体に結合性を有する抗原物質を反応させて、抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出することによって実施することができる。
ここで上記ヒト核内蛋白質を認識する抗体に結合性を有する抗原物質としては、当該コメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor)のgene familyに属する蛋白質を認識する抗体に特異的に結合するものであれば特に制限されない。好ましくは各種のコメアレルゲン蛋白質の95〜110位のアミノ酸領域に位置する少なくともL(又はV)GGIYRELのアミノ酸配列(配列番号49、50)を認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものである。
かかる性質を有するものとして、具体的にはL(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその同効物を挙げることができる。ここで同効物には、上記L(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が付加してなるペプチドであって、且つコメアレルゲン蛋白質を認識する抗体に特異的に結合する性質を有するものが含まれる。かかるペプチドとしては、例えば配列番号4及び33〜48の各々に記載されるアミノ酸配列を有するペプチド(CD4ペプチド、CDP−4ペプチド、CDP4−1ペプチド、CDP4−2ペプチド、CDP4−3ペプチド、CDP4−4ペプチド、CDP4−10ペプチド、CDP4−13ペプチド、CDP4−14ペプチド、TO3965ペプチド、Rice allergen、Rice seed allergen RA5、Rice allergen RA5B precursor、Rice seed allergen RA14、Rice allergen RA14B precursor、及びRice seed allergen RAG2)を挙げることができる。また、これらに限定されることなく、L(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列を有するアミノ酸数8〜166、好ましくはアミノ酸数8〜14のポリペプチドを用いることもできる。
さらにコメアレルゲン蛋白質を認識する抗体に結合性を有する抗原物質として、上記のL(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその同効物を、同一または異なって一分子中に複数個含む分岐状多抗原性ペプチドを用いることもできる。
このような抗原物質とクローン病患者に特有の抗体との反応によって生じる抗原−抗体複合物の検出方法に関しては、特に制限されることはなく、慣用の方法を広く採用することができる。具体的には抗原物質として上記の各種のCD結合性ペプチドまたはそれを含む分岐状多抗原性ペプチドを利用する各種の免疫測定法が好適に例示できる。例えば、ヒト血清を被験試料とする固相化サンドイッチ法を例にすると、目的抗体は、例えば以下の方法で測定することができる。
まず抗原物質として用いる上記ペプチドを固相化しておき(以下、これを便宜上「固相化ペプチド」という)、これに被験試料としての生体試料(例えば血清検体)を加える。その結果、固相化ペプチドと被験試料中のクローン病患者特有の抗体との間で抗原−抗体反応が起こり、被験試料中に存在する目的抗体は固相化ペプチドに結合する。次に結合した目的抗体の有無及びその抗体量(力量)を、ヒト抗体(IgG)検出試薬を用いて検出することにより、被験試料中、すなわち被験者の生体試料(血清など)中に存在する目的抗体を検出し定量することができる。
また、上記において、ヒト抗体(IgG)検出試薬を予め固相化し、これに被験試料を添加して生体試料中の目的抗体を捕捉させ、次いでこれに上記抗原物質を加えて、目的抗体に結合させることにより、被験試料中に存在する目的のクローン病患者特有の抗体を検出し、その抗体量(力量)を測定することもできる。また、目的抗体に結合した抗原物質にさらに該抗原物質の特異抗体を結合させることにより、該抗体を指標としてクローン病患者特有の抗体が検出でき、その抗体量(力量)を測定することもできる。これら測定手法における各種手段の選択やそれらの改変などはいずれも当業者のよく知るところであり、本発明においてはそれら各手法をいずれも採用することができる〔「臨床検査法提要」、金原出版、1995年等参照〕。
ここで、クローン病抗体を検出するためのヒト抗体(IgG)検出試薬は、特に制限されることなく一般に使用されている各種の試薬を利用することができる。例えば、好適にはヒトIgGに特異的に結合する抗ヒトIgG抗体などが使用できる。これらは市販品として入手できるが、常法に従い調製することもできる。
また、これらのヒト抗体(IgG)検出試薬を指標として、目的とする抗体を検出する場合は、当該ヒト抗体(IgG)検出試薬は標識されていることが好ましい。かかる標識に用いられる標識物質としては、具体的には3Hや14C等の放射性同位元素、アルカリホスファターゼやパーオキシダーゼ(POX)などの酵素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)等の蛍光物質、並びに、その他1N−(2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシル−4−ピペリジル)−5N−(アスパルテート)−2,4−ジニトロベンゼン(TOPA)、染料ゾル、金属ゾル、ラテックス粒子等が例示される。なお、これらの標識物質で標識された検出試薬を用いた免疫測定法は、それぞれラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、フルオロイムノアッセイ、スピンイムノアッセイ、フロースルーアッセイ及びイムノクロマトアッセイと称される。
本発明においては、簡便性、安全性、感度等の観点から、好ましくは酵素を標識物質として用いるエンザイムイムノアッセイが採用される。酵素標識のための酵素標識物質としては、例えば、上記に加えて、マイクロパーオキシダーゼ、キモトリプシノーゲン、プロカルボキシペプチダーゼ、グリセロアルデヒド−3−リン酸脱水酵素、アミラーゼ、ホスホリラーゼ、D−ナーゼ、及びP−ナーゼなどを例示することができる。なお、これらの標識物質による標識方法は、自体公知の方法に従って行うことができる(「単クローン抗体」岩崎辰夫 他著、講談社サイエンティフィク、1984;「酵素免疫測定法」第2版、石川栄治 他著、医学書院、1982年など)。
また、抗原物質(CD結合性ペプチド又はそのアミノ酸配列を含む分岐状多抗原性ペプチド)を指標として目的抗体を検出し測定する場合は、抗原物質として標識されたペプチドを用いることが好ましい。かかる抗原物質の標識も、上記抗ヒトIgG抗体の標識と同様にして、常法に従って任意の標識物質で用いて行うことができる。
また、上記測定方法において、固相法を採用する場合、目的抗体を捕捉する目的で、予め抗原物質或いは抗ヒトIgG抗体を支持体(固相)に固定化して用いてもよい。ここで支持体としては不溶性、不活性担体であれば特に制限されず、通常使用されるものが広く用いられる。例えば、ガラス、セルロース粉末、セファデックス、セファロース、ポリスチレン、濾紙、カルボキシメチルセルロース、イオン交換樹脂、デキストラン、プラスチックフィルム、プラスチックチューブ、ナイロン、ガラスビーズ、絹、ポリアミン−メチルビニルエーテル−マレイン酸共重合体、アミノ酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体などの種々の素材からなるスティック、ビーズ、マイクロプレート、試験管等が広く用いられる。
抗原物質或いは抗ヒトIgG抗体の固相への固定化方法についても特に制限はなく、物理的結合及び化学的結合のいずれをも使用することができる。具体的には、例えば共有結合法としてジアゾ法、ペプチド法(酸アミド誘導体、カルボキシクロライド樹脂法、カルボジイミド樹脂法、無水マレイン酸誘導体法、イソシアナート誘導体法、臭化シアン活性化多糖体法、セルロースカルボナート誘導体法、縮合試薬を使用する方法等)、アルキル化法、架橋試薬による担体結合法(架橋試薬としてグルタールアルデヒド、ヘキサメチレンイソシアナートなどを用いる。)、Ugi反応による担体結合法などの化学的反応:或いはイオン交換樹脂のような担体を用いるイオン結合法:ガラスビーズ等の多孔性ガラスを担体として用いる物理的吸着法等が例示できる。
上記の測定系において使用される溶媒としては、反応に悪影響を与えないものであれば一般的に使用されるもののいずれをも用いることができる。具体的にはクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液などのpHが約5〜9程度の緩衝液が例示される。
免疫反応(抗原−抗体反応)条件も特に制限はなく、一般にこの種の測定法で用いられる通常の条件が採用される。一般には45℃以下、好ましくは約4〜40℃程度の温度条件下に、1〜40時間程度を要して反応を行うことができる。
抗原−抗体反応によって生じる抗原−抗体複合物の測定は、使用する標識物質の種類に応じて慣用方法に従って行うことができる。
例えば、標識物質として酵素を利用する場合、当該酵素の活性を測定することによって行うことができる。酵素活性の測定は、使用する酵素の種類に応じて公知の方法に従って行うことができ、例えば標識酵素としてパーオキシダーゼを用いる場合は基質としてABTSJ2,2’−アジノービ(3’エチルベンツチアゾリンスルホン酸)を用い、またアルカリホスファターゼを用いる場合は基質としてp−ニトロフェニルホスフェートを用いて、それぞれインキュベートし、各基質の分解を分光光度計等を用いて測定する方法等が挙げられる(「酵素免疫測定法」第2版、石川栄治 他著、医学書院、1982年等参考)。なお、上記酵素標識の代わりに、放射性同位元素や蛍光物質による標識体を用いる場合も、自体公知の方法に従って測定することができる。
【実施例】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げる。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 クローン病抗体結合性ペプチドの選別及びその同定
(1)ファージディスプレイライブラリーの調製
フランコらの報告(Franco Felici.,et al.,J.Mol.Biol.,222,301−310(1991))に若干の変更を加え、ファージディスプレイライブラリーを作製した(1.0×10E8クローン)。該ファージディスプレイライブラリーは、具体的にはNNK(NはA,C,G,Tのいずれかを示し、KはG又はTを示す。)が9回繰り返された配列を含むDNAが遺伝子工学的に挿入された繊維状ファージであって、更に主要外殻タンパク質pVIII遺伝子のN端部分に9残基のランダムなアミノ酸からなるペプチドをコードするDNAが挿入されてファージ外殻表面にランダムな9残基のアミノ酸配列を有するペプチドが発現できるように構築されている。
(2)クローン病抗体結合性ペプチド(CD結合性ペプチド)の選択
(i)血清抗体の固定化
抗体として血清抗体を用いた。血清としてクローン病患者の血清20検体、並びに対照血清検体として潰瘍性大腸炎患者の血清20検体及び健常者の血清20検体を用いた。
次のようにして血清中の抗体(IgG)をマグネチックビーズに固定化した。まず、マグネチックビーズ(Dynabeads M−450 Tosyl−activated)に、0.1Mホウ酸緩衝液で200μg/ml濃度に調製した抗ヒトIgG(Fc)特異的抗体(Biodesign)を加え、4℃で一晩反応させた。反応後、該マグネチックビーズを0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含有する(D)−PBS(ダルベッコ式リン酸緩衝液)で洗浄し、0.1%のBSAを含有する0.2Mトリス(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)(Tris−HCl)を用いたブロッキング、次いで0.1%のBSAを含有する(D)−PBSを用いたブロッキングを行い、抗ヒトIgG(Fc)特異抗体固相化マグネチックビーズを調製した。
次いで、この抗ヒトIgG(Fc)特異抗体固相化マグネチックビーズに、クローン病患者の血清20検体よりランダムに選んだ3人分の血清プール2種類(CDG1及びCDG2)、及び健常者の血清20検体よりランダムに選んだ5人分の血清プールをそれぞれ添加し、一晩反応させて、表面に抗ヒトIgG(Fc)特異抗体を介して各血清IgG(健常者の血清IgGまたはクローン病患者の血清IgG)を固定化したマグネチックビーズを作製した。
(ii)CD結合性ペプチドディスプレイファージの選別(バイオパニング)
健常者の血清IgGを固定化したマグネチックビーズに、約1×1011のファージライブラリー(M13ファージのpVIII領域にランダムな9アミノ酸をディスプレイするライブラリー)を添加して4℃で一晩反応させ、次いで結合しなかったファージをクローン病患者の血清IgGを固定化したマグネチックビーズに添加して4℃で一晩反応させた。反応後、ビーズを0.1%BSAを含む(D)−PBSを用いて洗浄し、その後、溶出緩衝液(1mg/mlのBSAを含有する0.1M塩酸をグリシンにてpH2.2に調整)を用いて、ビーズに結合したファージを溶出した。得られた溶出ファージを1Mトリスを用いて中和し、中和後のファージを大腸菌JM109に感染させて、これを150μg/mlアンピシリン、1%グルコースを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。培養後、増殖した培地上の大腸菌を全て掻き取り、ヘルパーファージ(M13KO7)を感染させて、IPTG(イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド)及びカナマイシンを添加した後、37℃で一晩振盪培養した。培養液を遠心分離して不溶物を除去し、この中にポリエチレングリコールを含む塩化ナトリウム溶液を加え、数回撹拌した後、再度遠心してペレットを回収し、0.02%アジ化ナトリウムを含む(D)−PBSに溶解し、濃縮ファージ溶液を得た。
こうして得られたファージ溶液を用いて、さらに上記のようなバイオパニングを2回繰り返した。3回目のバイオパニングで得られたファージ溶液を大腸菌JM109に感染させ、これを150μg/mlアンピシリン、1%グルコースを含むLB寒天培地に塗布し、37℃にて一晩培養した。培地上に形成された単コロニーの大腸菌を掻き取り、150μg/mlのアンピシリンを含むLB液体培地を用いて37℃にて3時間振盪培養した後、ヘルパーファージ(M13KO7)を感染させて、IPTG及びカナマイシンを添加した後、37℃で一晩振盪培養した。
以上のようにして、CD結合性ペプチドディスプレイファージを単クローン化した。
(iii)ファージELISA
上記で単クローン化したCD結合性ペプチドディスプレイファージについて、上記のバイオパニングで用いた健常者血清プール及びクローン病患者血清プール((i)参照)を用いてファージELISAを行った。
ELISAにあたっては、まず抗ファージ抗体(Pharmacia)を96穴マイクロタイタープレートに固定化した。固定化は、具体的には(D)−PBSにて1μg/ml濃度に調製した抗ファージ抗体(Pharmacia)溶液100μlを各ウエルに添加し、4℃で一晩静置した後、洗浄し、300μlのブロッキング溶液(1%BSA、5%ソルビトールを含む(D)−PBS)を加えて4℃で一晩静置することによって行った。
一次反応は、ファージELISA緩衝液(1%BSA、0.05%Tween20、10%正常ヤギ血清を含む(D)−PBS)90μlに上記(ii)で調製したファージ培養液を10μl加え、上記の抗ファージ抗体を固定化した各ウエルに添加した後、37℃にて一時間反応させることによって行った。一次反応終了後、4回洗浄し、二次反応を行った。二次反応は、ファージELISA緩衝液100μlに血清1μl(健常者血清またはクローン病患者血清)を加え、各ウエルに添加した後、37℃にて一時間反応させることによって行った。次いで二次反応終了後、4回洗浄し、三次反応を行った。三次反応は、ファージELISA緩衝液で40,000倍に希釈したHRP(horseradish peroxidase)標識抗ヒトIgG(Fc)特異的抗体(20ng/ml)100μlを各ウエルに添加した後、37℃にて一時間反応させることによって行った。三次反応終了後、洗浄し、発色反応を行った。発色はTMB(3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン)溶液を加えて、室温で10分間反応させた後、停止液(1N 硫酸)を加えることによって反応を停止した。反応を停止させたプレートはプレートリーダーで吸光度(OD450nm)を測定し、血清抗体との反応性を調べた。
これから、健常者の血清抗体とは反応しないでクローン病患者の血清抗体だけに反応性を示すファージクローンを選択した。次いで選択したファージクローンについて、上記方法と同様にしてクローン病患者血清20検体、潰瘍性大腸炎患者血清20検体及び健常者血清20検体のそれぞれに対してELISAを行い、その反応性からクローン病患者血清に特異性の高い5つのクローン(CD−1、CD−2、CD−3、CD−4、CD−5)を選択した。選択した5つのクローンについて各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)に対する反応性(ELISA)をみた結果を図1に示す。
(3)CD結合性ペプチドのアミノ酸配列の決定
上記各ファージELISAによって選択した5つのクローン(CD−1、CD−2、CD−3、CD−4、CD−5)のアミノ酸配列の決定を行った。まず、上記で選択されたファージクローンからDNAを抽出した。具体的にはファージクローンを大腸菌JM109に感染させ、アンピシリンを含むLB寒天培地に塗布し、一晩培養を行い、培地上に形成されたコロニーを掻き取り、2mlのアンピシリン含むLB液体培地で一晩振盪培養し、キアプレップDNA抽出キット(キアゲン)を用いてプラスミドDNAを抽出した。
ファージDNAの塩基配列の決定は、ジデオキシ法(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.,74,5463−5467(1977))により、アマシャム社のサイクルシークエンスキット(Amersham pharmacia biotech,code;2438)を用いて、キットの使用説明書に従い実施した。DNA配列はファルマシア社製のDNAシークエンサー(ALF DNAシークエンサー)を用いてシークエンスを行った。
得られた塩基配列から決定した各クローン(CD−1、CD−2、CD−3、CD−4、CD−5)のアミノ酸配列を1文字表記として表5に示す。
なお、表中、各ペプチドのN末端及びC末端領域に位置するそれぞれAEGEL及びADPAまたはGDPAは、ファージベクターのランダムペプチドの両端に位置するアミノ酸配列に由来するものである。
CD−5クローンを除くCD−1、CD−2、CD−3及びCD−4クローンについて、上記ファージベクター由来のアミノ酸配列を含む18アミノ酸を分岐状多抗原性ペプチド(Multiple Antigen Peptide)(MAPペプチド)の形態にて合成し、以下の実験に使用した。具体的には市販のFmoc8−Lys4−Lys−2−βAla−Alko(渡辺化学工業社製)を用いて下記のアミノ酸配列を有するペプチドをペプチドATC−357 peptide synthesizer(Advanced Chem Tech社製)にて合成した。
本合成法により、各分岐状多抗原性ペプチド(MAPペプチド)は、一分子中にCD結合性ペプチドのアミノ酸配列を分岐状に8つ有することになる(図2)。
実施例2 CD結合性ペプチドの血清検体に対する反応性
(1)個々の分岐状多抗原性ペプチド(MAPペプチド)を抗原としたELISA
実施例1で得られた各MAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3及びCDP−4のMAPペプチド:図3参照)を抗原ペプチドとして利用して、ELISAにより各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)に対する反応性を調べた。
まず、各MAPペプチドを96穴マイクロタイタープレートに固定化した。具体的には、固定化は、各MAPペプチドをbicarbonate buffer(50mM、pH9.6)にて1μg/ml濃度に調製してMAP溶液を調製し、プレートの各ウエルに100μlずつ添加し、4℃にて一晩静置し、その後洗浄して300μlのカゼイン溶液(0.1%カゼイン及び1%TritonX−100を含む(D)−PBS)を加えて、再度4℃にて一晩静置することによって行った。
(i)各MAPペプチドを固定化したMAPプレートを用いて、クローン病患者血清20検体、潰瘍性大腸炎患者血清20検体及び健常者血清48検体の各MAPペプチドに対する反応性をELISAにより確認した。
具体的には、まず一次反応として、カゼイン溶液100μlに血清抗体1μlを加えた全量をMAPプレートの各ウエルに添加し、それを37℃で1時間反応させた。一次反応終了後、4回洗浄し、このウエル中に、カゼイン溶液で20,000倍に希釈したHRP標識抗ヒトIgG(Fc)特異的抗体を添加し、37℃で一時間反応させて二次反応を行った。二次反応終了後、4回洗浄し発色反応を行った。検出は100μlのTMB溶液を加えて、室温で10分間反応させた後、100μlのTMB停止溶液(1N硫酸)を加えることにより反応を停止し、プレートリーダーでOD450nmの吸光度を測定して、各血清について各MAPプレートに対する反応性を調べた。結果を図3に示す。図3からわかるように、4種類のMAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3およびCDP−4のMAPペプチド)は、いずれも潰瘍性大腸炎患者の血清や健常者の血清とは殆ど反応せず、クローン病患者の血清に対して2〜4割の割合で反応性を示した。また図3からわかるように、各MAPペプチドのクローン病患者の血清に対する反応性は各MAPペプチド間でそれぞれ異なっており共通性は認められなかった。このことから、この4種類のペプチドはクローン病患者特異的に反応するそれぞれ異なるタイプのペプチドであると判断された。
(ii)次に多数の血清検体(クローン病患者血清96検体、潰瘍性大腸炎患者血清20検体及び健常者血清48検体)を用いて、上記各MAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3およびCDP−4のMAPペプチド)の反応性を上記(i)の方法と同様にして調べ、クローン病患者血清に対する当該ペプチドの特異性を評価した。結果を表6に示す。
表6に示すように、健常者の血清48検体の平均OD値十5SDをカットオフ値とした場合、クローン病患者血清96検体に対する陽性率はCDP−1ペプチドが31.3%、CDP−2ペプチドが27.1%、CDP−3ペプチドが51.0%、及びCDP−4ペプチドが31.3%であった。また、健常者及び潰瘍性大腸炎患者の血清に対する偽陽性率はいずれのペプチドも5%以下であった。このことから、これらの各ペプチド(CDP−1ペプチド、CDP−2ペプチド、CDP−3ペプチドおよびCDP−4ペプチド)はクローン病患者が有する特有の抗体(クローン病抗体)に特異的に結合し、これを利用することによって、クローン病の罹患の有無を精度よく診断できると考えられた。
(2)混合MAPペプチドを抗原としたELISA
実施例1で調製したMAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3およびCDP−4のMAPペプチド)を混合して混合MAPペプチドを調製し、これを抗原として利用して、ELISAにより多種類の血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清、十二指腸潰瘍患者血清、胃潰瘍患者血清及び健常者血清)に対する反応性を調べた。
なお、検出に使用する抗原プレートは、CDP−1のMAPペプチド及びCDP−4びMAPペプチドがそれぞれ1.5μg/ml、CDP−2びMAPペプチド及びCDP−3のMAPペプチドがそれぞれ3μg/mlとなるように調製し、これらを等量混和したものを(1)に記載するMAPプレートの調製と同様にして96穴マイクロタイタープレートに固定化することによって調製した。
(i)この混合抗原プレートを用いて、クローン病患者血清550検体、潰瘍性大腸炎患者血清20検体、健常者血清120検体、十二指腸潰瘍患者血清25例及び胃潰瘍患者血清15検体について混合MAPペプチドに対する反応性をELISAにより確認した。なお、ELISAは二次反応に使用するHRP標識抗ヒトIgG(Fc)特異的抗体として、カゼイン溶液(0.1%カゼイン及び1%TritonX−100を含む(D)−PBS)で10,000倍に希釈したものを使用する以外は、上記の(1)(i)に記載する方法と同様にして行った。結果を図4及び表7に示す。
図4及び表7からわかるように、健常者の血清120検体の平均unit値十3SDをカットオフ値とした場合、クローン病患者血清に対する陽性率は67.1%(369/550)であり、偽陽性率は潰瘍性大腸炎患者の血清について5%(1/20)、健常者血清について1.7%(2/120)、十二指腸潰瘍患者血清並びに胃潰瘍患者血清については0%(0/25、0/15)であった。
この結果と(1)の結果とを比較することにより、各クローン病抗体結合性ペプチド(CDP−1ペプチド、CDP−2ペプチド、CDP−3ペプチドおよびCDP−4ペプチド)を単独で使用するよりも、これらを組み合わせて用いることによりクローン病特有の抗体に対する特異性が向上し、これによってクローン病の罹患の有無が高い精度で診断できると考えられた。
(3)混合MAPペプチドとパン酵母を抗原としたELISAとの比較
(2)と同様にして、実施例1で調製したMAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3およびCDP−4のMAPペプチド)を混合してこれを抗原として利用して、ELISAにより各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)に対する反応性を調べた。また、クローン病との関連が指摘されているパン酵母(saccharomyces cerevisiae)(Gut 1998,42,pp.788−791、Gastroenterology 1999,116,pp.1001−1003、Am J Gastroenterol 2001,96 pp.730−734)についても同様に、上記各血清検体に対する反応性を調べ、両者のクローン病診断における有用性を比較した。なお、抗原プレートとして使用する混合MAPプレートは、CDP−1のMAPペプチド及びCDP−4のMAPペプチドがそれぞれ1.5μg/ml、CDP−2のMAPペプチド及びCDP−3のMAPペプチドがそれぞれ3μg/mlとなるように調製し、これらを等量混和したものを(1)に記載するMAPプレートの調製と同様にして96穴マイクロタイタープレートに固定化することによって調製した。またパン酵母に対する反応性は、市販の測定キットであるAnti−Saccharomyces cerevisiae antibodies検出キット(ASCA IgG検出キット及びASCA IgA検出キット、使用抗原:パン酵母細胞膜のグリコマンナン、Medizyme製)を用いて測定した。
(i)混合MAPプレートを用いてクローン病患者血清96例、潰瘍性大腸炎患者血清20例、及び健常者血清48例について混合MAPに対する反応性をELISAにより確認した。なお、ELISAは上記(2)(i)に記載する方法と同様に行った。
(ii)また、パン酵母に対する反応性は測定キットの操作説明書に従って行った。結果を図5に示す。図5Aに示すように、抗原として混合MAPペプチドを用いたELISAでは健常者の血清48検体の平均unit値+3SDをカットオフ値とし、図5B及び図5Cに示すように、抗原としてASCA IgG及びASCA IgAの測定キットを用いたELISAでは操作説明書に従ってbinding index(結合インデックス)=1.0をカットオフ値として陽性率と偽陽性率を算出した。陽性率と偽陽性率の結果を表8に示す。
これらの結果から、個々のMAPペプチドを組合せて混合MAPペプチドとして用いることによって、クローン病抗体の認識抗原として指摘されているパン酵母よりも、クローン病抗体が特異的に認識でき、高い精度でクローン病の罹患の有無が検出できると考えられた。
実施例3 CD結合性ペプチドのホモロジー解析
得られたMAPペプチド(CDP−1〜CDP−4のMAPペプチド)について、クローン病との関連が報告されているタンパク〔CDX(measles related antigen)〈Gut 2000 Feb;46(2):163−9〉、porcine pancreatic alpha amylase〈Annual report of the research committee of inflammatory bowel disease.Japan:The ministry of health and welfare of Japan,1999:98−100〉、M.paratuberculosis HSP65(horseradish peroxidase 65)〈Clin Diagn Lab Immunol.1995 Nov;2(6):657−64〉、human HSP60〈Digestion.1997;58(5):469−75〉、M.paratuberculosis p36〈Curr Microbiol.1999 Aug;39(2):115−9〉〕とのアミノ酸配列における相同性をDNASISソフト(日立製作所)を用いて解析した。結果を図6に示す。この結果からわかるように、それぞれのタンパクにおいて弱い相同性が認められたものの、余り高い相同性は認められなかった。
次いでこれらのアミノ酸配列について、FASTAプログラム(Genome Netサイト使用)を用いて、クローン病抗体結合性ペプチドとアミノ酸配列において相同性を有するタンパクをタンパクデータベースより検索した。検索は、Z−scoreが130以上である相同性の高いタンパクだけが抽出されるように行った。結果を図7に示す。図7からわかるように、CD1ペプチド、CD3ペプチド及びCD4ペプチドに関しては、クローン病との関与が報告されているyeastやmycobacteriumのタンパクだけでなく、クローン病との関連性が認められていない病原性微生物や食物(Zea myze等)のタンパク等、細菌、動物及び植物などの多くの種にわたって相同性を有するタンパクがみられた。
実施例4
実施例1において、ファージELISAで得られた各種血清に対する反応性(図1)並びにアミノ酸配列の類似性(表2)から、CD−1及びCD−5クローンのアミノ酸配列を有するそれぞれのペプチド(CDP−1ペプチド(配列番号6)、及びCDP−5ペプチド(配列番号9))は同一抗体を認識するものと考えられた。また当該CDP−1ペプチドとCDP−5ペプチドは、ヒト液胞型H+輸送性ATPase(V−ATPase)のサブユニットEの199−212領域に位置するペプチド(VATE−201ペプチド:配列番号11)とアミノ酸配列上の相同性を有している(図8)。
そこで、下記に示すペプチド(CDP−1aペプチド、CDP−5aペプチド、VATE−201ペプチド)を、上記実施例1(3)に記載する方法と同様にしてMAP(Multiple antigenic peptides)の形態にて合成し(図9)、実施例2(1)の方法に従って、各MAPペプチドの各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)に対する反応性をELISAによって調べた。
血清検体としてクローン病患者の血清20検体、並びに比較血清検体として潰瘍性大腸炎患者の血清20検体及び健常者の血清20検体を用いた。結果を図10に示す。図10からわかるように、CDP−1aペプチド、CDP−5aペプチド及びVATE−201ペプチドは互いに同様のELISA反応性を示した。
実施例5 VATE−201ペプチドによる抗原−抗体反応の阻害試験
実施例4で得られたVATE−201の反応性を確認するために、VATE−201ペプチドを用いてCDP−1aペプチドとクローン病抗体との抗原−抗体反応の阻害試験を行った。血清抗体試料として、各MAPペプチド(CDP−1aペプチド、CDP−5aペプチド、VATE−201ペプチド)に強い反応性を示したクローン病患者の血清8番、9番、及び14番(図11参照)を用いた。
具体的には、抗原プレートとして、CDP−1aのMAPペプチド(図10)をプレートに固定化したMAPプレートを用い(実施例2(1)参照)、これにVATE−201のMAPペプチド(反応阻害物質)を100μg/mLの濃度で含むカゼイン溶液(0.1%カゼイン及び1%TritonX−100を含む(D)−PBS)100μLに血清検体1μLを加えて37℃で1時間反応させた溶液の全量を添加し、実施例2(1)と同様にしてELISAを行った。一方、比較実験として、上記反応阻害物質として、VATE−201のMAPペプチドに代えてCDP−1aのMAPペプチドを用いて同様にELISAを行った。結果を図11に示す。
図11のBに示すように、反応系にVATE−201のMAPペプチドを添加することによって、CDP−1aのMAPプレートに対するクローン病患者の各血清検体(8番、9番、14番)の反応性がすべて阻害された。また、上記CDP−1aのMAPペプチドに代えてCDP−5aのMAPペプチドを用いて同様に行った試験においても同様の結果が得られた(結果示さず)。
以上、実施例4及び5の結果から、VATE−201ペプチド、並びにCDP−1aペプチド及びCDP−5aペプチドはいずれもクローン病患者の血清中に特異的に存在する抗体を認識することがわかった。またVATE−201ペプチドとのアミノ酸配列の類似性並びに血清抗体との反応性の共通性から、CDP−1aペプチドおよびCDP−5aペプチドを始めとする本発明のCD1ペプチド及びその同効物は、ヒト液胞型H+輸送性ATPase(V−ATPase)のサブユニットEを模倣するものであると考えられる。
すなわち、上記実施例の結果は、クローン病患者にはヒト液胞型H+輸送性ATPaseサブユニットEに対する抗体が特異的に存在していることを示すものである。このことから、ヒト液胞型H+輸送性ATPase、特にそのサブユニットEを認識する抗体を指標とすることによって個々の被験者についてクローン病の罹患の有無を診断することができるものと考えられる。
実施例6 CD3ペプチド及びその同効物の模倣蛋白質の探索、並びにその評価
実施例5の結果から、CD1ペプチド及びその同効物は、ヒト液胞型H+輸送性ATPase(V−ATPase)のサブユニットEを模倣していることが分かった。そこで同様にしてCD3ペプチド及びその同効物について模倣蛋白質を探索し、そのクローン病抗体への反応性について評価した。
(1)MAPペプチドの調製
CDP3ペプチドの改変物として、CDP3ペプチド(配列番号21)のアミノ酸配列を基本にそれぞれ1アミノ酸残基をアラニンに置換した14種類のペプチドを調製した(表9)。なお、CDP3−1については1番目のアミノ酸がアラニンであるためセリンに置換した。次いで、これらの15種類のペプチドについて、実施例1(3)の方法に従って、それぞれ1分子あたり8個のペプチドを有するMAPペプチドを調製した(1アミノ酸置換MAPペプチド)。
(2)CDP3エピトープ配列の決定
CDPペプチドのアミノ酸配列において、クローン病抗体との特異的反応性に必要な配列を決定するため、上記で調製した1アミノ酸置換MAPペプチドを反応阻害物質として用いて、下記の反応阻害試験を行った。反応血清抗体試料として、実施例2においてCDP−3ペプチドに強い反応性を示したクローン病患者の血清2番、7番及び8番を用いた(図3参照)。
具体的には、抗原プレートとして、CDP3のMAPペプチドをプレートに固定化したMAPプレート(実施例2(1)参照)を用いて3段階の反応により行った。1次反応は、クローン病患者血清を、1アミノ酸置換MAPをそれぞれ100μg/mL濃度で含む検体希釈液(0.5M食塩、1.5%カゼイン、2%正常ヤギ血清、0.2%Tween20を含む0.1Mトリス緩衝液)にて100倍希釈した後、25℃で1時間反応することにより行った。2次反応は、1次反応液100μLをMAPプレートのウエルに添加した後、25℃にて1時間反応した後、3回洗浄することにより行った。3次反応は、酵素標識抗体希釈溶液(0.14M食塩、0.5%BSA、5%正常ヤギ血清、0.05%Tween20を含むトリス緩衝液)で5,000倍に希釈したHRP標識抗ヒトIgG(Fc)特異的抗体100μLを添加し、25℃にて1時間反応した後、3回洗浄することにより行った。検出は、実施例2(1)に従い、1アミノ酸置換MAPペプチドによる反応阻害活性を測定した。結果を表9に示す。
この結果、クローン病患者血清2番において、反応阻害物質としてCDP3−7、CDP3−9、CDP3−10、CDP3−11及びCDP3−13の各MAPペプチドを用いた場合、クローン病患者血清とCDP3ペプチドと反応に対する阻害活性が50%以下であった。また、クローン病患者血清7番及び8番において、反応阻害物質としてCDP3−7、CDP3−9、及びCDP3−11の各MAPペプチドを用いた場合、クローン病患者血清とCDP3ペプチドと反応に対する阻害活性が50%以下であった。以上の結果より、CDP3のアミノ酸配列においてクローン病抗体との反応(抗体認識)に必要な配列なQXDGQXQ(Xは、同一または異なって、任意のアミノ酸残基)(配列番号51)であると判断された。
(3)CDP3ペプチド模倣蛋白質の探索
上記のことから、クローン病抗体の認識に重要と思われるアミノ酸配列(QXDGQXQ(Xは、同一または異なって、任意のアミノ酸))を用いて蛋白質データベースとの相同性解析を行った。その結果、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300(HZF300))の129〜135位のアミノ酸領域と相同性があることが確認された(図12)。
そこで、ヒト核内蛋白質(HZF300)がCDP3ペプチドの模倣蛋白質であることを確認するために、その126〜138位のアミノ酸領域のアミノ酸配列を有するペプチド(Z300ペプチド)をMAPペプチドの形態に調製し、クローン病患者血清20例、潰瘍性大腸炎患者血清20例、及び健常者血清20例を用いてMAP抗原ELISAを行った。
(4)MAP抗原ELISA
まず、ヒト血清を検体希釈液(前述)にて101倍に希釈し、その100μLをMAPプレートのウエルに添加した後、実施例6(2)の2次反応以降の操作に準じて測定し、MAPペプチドと各種の血清抗体との反応性を調べた。結果を図13に示す。その結果、CDP3ペプチドに強い反応性を示すクローン病患者血清2、7及び8番は、Z300ペプチドに対して同様の反応性を示した。一方、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清に対して、Z300ペプチドは明確な反応性を示さなかった。
(5)抗原−抗体反応の阻害試験
Z300ペプチドのクローン病抗体への反応性を確認するために、Z300ペプチドを用いてCDP3ペプチドとクローン病抗体との抗原−抗体反応の阻害試験を行った。血清抗体試料として、CDP3ペプチドに強い反応性を示したクローン病患者の血清2番、7番、及び8番を用いた。
具体的には、抗原プレートとして、CDP3のMAPペプチドをプレートに固定化したMAPプレートを用い(実施例2(1)参照)、これにZ300のMAPペプチド(反応阻害物質)を100μg/mLの濃度で含む検体希釈液(前述)100μLに血清検体1μLを加えて25℃で1時間反応させた溶液の全量を添加し、実施例6(2)と同様にしてELISAを行った。一方、比較実験として、上記反応阻害物質として、Z300のMAPペプチドに代えてCDP3のMAPペプチドを用いて同様にELISAを行った。結果を図14に示す。
図14のBに示すように、反応系にZ300のMAPペプチドを添加することによって、CDP3のMAPプレートに対するクローン病患者の各血清検体(2番、7番、8番)の反応性がすべて阻害された。
上記の結果から、Z300ペプチド及びCDP3ペプチドはいずれもクローン病患者の血清中に特異的に存在する抗体を認識することがわかった。またZ300ペプチドとのアミノ酸配列の類似性並びに血清抗体との反応性の共通性から、本発明のCD3ペプチド及びその同効物は、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)を模倣するものであると考えられる。
すなわち、上記実施例の結果は、クローン病患者にはヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)に対する抗体が特異的に存在していることを示すものである。このことから、ヒト核内蛋白質(Zinc finger protein 300)を認識する抗体を指標とすることによって個々の被験者についてクローン病の罹患の有無を診断することができるものと考えられる。
実施例7 CD4ペプチド及びその同効物の模倣蛋白質の探索、並びにその評価
次いでCD4ペプチド及びその同効物について模倣蛋白質を探索し、そのクローン病抗体への反応性について評価した。
(1)MAPペプチドの調製
CDP4ペプチドの改変物として、CDP4ペプチド(配列番号33)のアミノ酸配列を基本にそれぞれ1アミノ酸残基をアラニンに置換した15種類のペプチドを調製した(表10)。なお、CDP4−1については1番目のアミノ酸がアラニンであるためセリンに置換した。次いで、これらの14種類のペプチドについて、実施例1(3)の方法に従って、それぞれ1分子あたり8個のペプチドを有するMAPペプチドを調製した(1アミノ酸置換MAPペプチド)。
(2)CDP4エピトープ配列の決定
CDPペプチドのアミノ酸配列において、クローン病抗体との特異的反応性に必要な配列を決定するため、上記で調製した1アミノ酸置換MAPペプチドを反応阻害物質として用いて、実施例6(2)と同様にして反応阻害試験を行った。なお、反応血清抗体試料として、実施例2においてCDP−4ペプチドに強い反応性を示したクローン病患者の血清3番、6番、15番、17番及び20番を用いた(図3参照)。結果を表10に示す。
この結果、クローン病患者血清3番、6番、15番、17番及び20番において、反応阻害物質としてCDP4−7、CDP4−8、CDP4−9及びCDP8−12の各MAPペプチドを用いた場合、クローン病患者血清とCDP4ペプチドとの反応に対する阻害活性が30%以下であった。また、クローン病患者血清6番、15番、17番及び20番において、反応阻害物質としてCDP4−6のMApペプチドを用いた場合、クローン病患者血清とCDP3ペプチドとの反応に対する阻害活性が30%以下であった。さらに反応阻害物質としてCDP4−5及びCDP4−11の各MAPペプチドを用いた場合、それぞれクローン病患者血清6番及び15番において、クローン病患者血清とCDP4ペプチドとの反応に対する阻害活性が30%以下であった。
以上の結果より、CDP4ペプチドのアミノ酸配列においてクローン病抗体との反応(抗体認識)に必要な配列なLGGIYXDL(Xは任意のアミノ酸残基)(配列番号49)であると判断された。
(3)CDP4ペプチド模倣蛋白質の探索
上記のことから、クローン病抗体の認識に重要と思われるアミノ酸配列(LGGIYXDL(Xは任意のアミノ酸))を用いて蛋白質データベースとの相同性解析を行った。その結果、コメアレルゲン蛋白質と相同性があることが確認された(図15)。図15に示すように、コメアレルゲン蛋白質はα−amylase/trypsin inhibitorであり、gene familyを形成している。これらの相互に高い相同性を持つα−amylase/trypsin inhibitorは、いずれもクローン病抗体との反応(抗体認識)に重要と考えられるアミノ酸配列L(又はV)GGIYXD(又はE)L領域(配列番号49、50)を有していた。なお、LとVは脂肪族アミノ酸、DとEは酸性アミノ酸として互いに類似するアミノ酸である。
そこで、コメアレルゲン蛋白質がCDP4ペプチドの模倣蛋白質であることを確認するために、Rice seed allergen RA14(図16)の99〜111番目のアミノ酸領域のアミノ酸配列を有するペプチド(TO3965ペプチド)をMAPペプチドの形態に調製し、クローン病患者血清20例、潰瘍性大腸炎患者血清20例、及び健常者血清20例を用いてMAP抗原ELISAを行った。
(4)MAP抗原ELISA
抗原プレートとして、TO3965のMAPペプチドを固定化して調製したMAP抗原プレートを用いる以外は、実施例6(4)と同様にしてMAP抗原ELISAを行った。結果を図17に示す。その結果、CDP4ペプチドに強い反応性を示すクローン病患者血清3、6、15、17及び20番は、TO3965ペプチドに対しても同様の反応性を示した。一方、TO3965ペプチドは、CDP4ペプチドと同様に、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清に対して、明確な反応性を示さなかった。
(5)抗原−抗体反応の阻害試験
TO3965ペプチドのクローン病抗体への反応性を確認するために、実施例6(5)と同様にして、TO3965ペプチドを用いてCDP4ペプチドとクローン病抗体との抗原−抗体反応の阻害試験を行った。血清抗体試料として、CDP4ペプチドに強い反応性を示したクローン病患者の血清3、6、15、17及び20番を用いた。結果を図18に示す。
図18に示すように、反応系にTO3965のMAPペプチドを添加することによって、CDP4のMAPプレートに対するクローン病患者の各血清検体(3、6、15、17及び20番)の反応性がすべて阻害された。
上記の結果から、TO3965ペプチド及びCDP4ペプチドはいずれもクローン病患者の血清中に特異的に存在する抗体を認識することがわかった。またTO3965ペプチドとのアミノ酸配列の類似性並びに血清抗体との反応性の共通性から、本発明のCD4ペプチド及びその同効物は、コメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor gene family)を模倣するものであると考えられる。
すなわち、上記実施例の結果は、クローン病患者にはコメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor)に対する抗体が特異的に存在していることを示すものである。このことから、コメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor)のgene familyを認識する抗体を指標とすることによって個々の被験者についてクローン病の罹患の有無を診断することができるものと考えられる。
産業上の利用可能性
本発明によれば、クローン病患者に特有に存在する抗体に特異的に結合するペプチドを提供することができる。かかる本発明のペプチドはクローン病の検査試薬として有用であり、かかるペプチド及びそれを含む検査試薬によれば、クローン病の罹患の有無を精度よく診断することができる。
また、本発明は、クローン病患者の体内には、ヒト液胞型H+輸送性ATPase、特にヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEを認識する抗体、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)を認識する抗体、コメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor)のgene familyを認識する抗体が、特異的に存在しているという新たな知見を提供する。そして、この知見に基づいて、本発明はこれらの少なくとも1つの抗体を指標として、被験者の生体試料中にその存在を検出することからなるクローン病の検査方法を提供するものである。かかる方法によれば、個々の被験者について、生体試料(例えば血清等)を対象にすることにより、簡便にかつ精度よく、クローン病の罹患の有無を診断することができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1(2)の結果を示す図である。具体的には、クローン病患者血清に対する特異性から選択した5つのクローン(CD−1,CD−2、CD−3、CD−4、CD−5)について各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)に対する反応性をELISAで調べた結果を示す。
図2は、CDP−1、CDP−2、CDP−3、及びCDP−4の各MAPペプチドの構造を示す図である。
図3は、実施例2(1)の結果を示す図である。具体的には、各MAPペプチド(CDP−1、CDP−2、CDP−3、CDP−4のMAPペプチド)に対する各種血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清)の反応性をELISAで調べた結果を示す。
図4は、実施例2(2)の結果を示す図である。具体的には、混合抗原プレートを用いて、クローン病(CD)患者血清550検体、潰瘍性大腸炎(UC)患者血清20検体、健常者血清120検体、十二指腸潰瘍患者血清25例及び胃潰瘍患者血清15検体について混合MAPペプチドに対する反応性をELISAで調べた結果を示す。
図5は、実施例2(3)の結果を示す図である。具体的には、図Aは、混合MAPペプチドに対する各種血清検体(クローン病(CD)患者血清、潰瘍性大腸炎(UC)患者血清、及び健常者血清)の反応性を示す図である。図B及びCは、混合MAPペプチドに代えてパン酵母を抗原として、パン酵母に対する各種血清検体(クローン病(CD)患者血清、潰瘍性大腸炎(UC)患者血清及び健常者血清)の反応性を示す(市販のAnti−Saccharomyces cerevisiae antibodies(ASCA)検出キットを使用)。図BはASCA IgG、及び図CはASCA IgAを使用。
図6は、クローン病患者特異的ペプチド(クローン病抗体結合性ペプチド:CD1ペプチド、CD2ペプチド、CD3ペプチド、CD4ペプチド)と、クローン病との関連が報告されているタンパク(CDX、pig pancreatic alpha amylase(ブタ膵臓α−アミラーゼ),M.paratuberculosis HSP65(M.パラチュバキュローシスHSP65),human HSP60(ヒトHSP60),M.paratuberculosis p36(M.パラチュバキュローシスp36))とのアミノ酸配列における相同性を示す図である。なお、図中:はアミノ酸が一致することを、また・はアミノ酸が類似していることを示す。
図7は、タンパクデータベースよりホモロジー検索して得られた、クローン病患者特異的ペプチド(クローン病抗体結合性ペプチド:CD1ペプチド、CD3ペプチド、CD4ペプチド)とアミノ酸配列において相同性を有する各種生物(細菌、菌類、動物、節足動物、植物、藻類)に由来するタンパクを示す図である。
図8は、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEのアミノ酸配列と、CD1ペプチドの同効物(CDP−1ペプチド、CDP−5ペプチド)のアミノ酸配列との相同性を示した図である。なお、図中、‖はV−ATPaseサブユニットEのアミノ酸配列とCDP−1及びCDP−5ペプチドの両方またはいずれか一方のアミノ酸配列を一致することを、|はV−ATPaseサブユニットEのアミノ酸配列とCDP−1及びCDP−5ペプチドの両方のアミノ酸配列とが類似することを示す。また、:はCDP−1とCDP−5ペプチドとのアミノ酸が一致することを、・はCDP−1とCDP−5ペプチドとのアミノ酸が類似することを示す。また下線部は、ファージpVIII−蛋白質に由来するアミノ酸配列を示す。
図9は、VATE−201、CDP−1a及びCDP−5aの各MAPペプチドの構造を示す図である。
図10は、実施例4の結果を示す図である。具体的には、CDP−1aペプチド、CDP−5aペプチド、及びヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEに由来するペプチド(VATE−201ペプチド)について、各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清に対する反応性をELISAで調べた結果を示す。
図11は、実施例5の結果を示す図である。具体的には、クローン病患者の血清検体8番、9番、14番のCDP−1aのMAPプレートに対する反応性をCDP−1aのMAPペプチド抗原(図A)またはVATE−201のMAPペプチド抗原(図B)用いて阻害した試験の結果を示す。図中、―■―はクローン病患者血清8番、―●―はクローン病患者血清9番、及び―▲―はクローン病患者血清14番の結果を示す。
図12は、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)のアミノ酸配列、並びにその126〜138位のアミノ酸領域のアミノ酸配列を有するZ300ペプチドの位置関係を示した図である。
図13は、実施例6(4)の結果を示す図である。具体的には、CDP3ペプチド(上段)及びZ300ペプチド(下段)について、各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清に対する反応性をELISAで調べた結果を示す。
図14は、実施例6(5)の結果を示す図である。具体的には、クローン病患者の血清検体2番、7番、8番のCDP3のMAPプレートに対する反応性をCDP3のMAPペプチド抗原(図A)またはZ300のMAPペプチド抗原(図B)用いて阻害した試験の結果を示す。図中、―■―はクローン病患者血清2番、―●―はクローン病患者血清7番、及び―▲―はクローン病患者血清8番の結果を示す。
図15は、コメアレルゲン蛋白質(α−amylase/trypsin inhibitor)のgene familyに属するRice allergen、Rice seed allergen RA5、Rice allergen RA5B precursor、Rice seed allergen R14、Rice allergen RA14B precursor、及びRice seed allergen RAG2について、95〜110位のアミノ酸領域の相同性を比較した図である。
図16は、コメアレルゲン蛋白質(Rice seed allergen RA14)のアミノ酸配列、並びにその99〜111位のアミノ酸領域のアミノ酸配列を有するTO3965ペプチドの位置関係を示した図である。
図17は、実施例7(4)の結果を示す図である。具体的には、CDP4ペプチド(上段)及びTO3965ペプチド(下段)について、各血清検体(クローン病患者血清、潰瘍性大腸炎患者血清及び健常者血清に対する反応性をELISAで調べた結果を示す。
図18は、実施例7(5)の結果を示す図である。具体的には、クローン病患者の血清検体3番、6番、15番、17番、20番のCDP4のMAPプレートに対する反応性をCDP4のMAPペプチド抗原(図A)またはTO3965のMAPペプチド抗原(図B)用いて阻害した試験の結果を示す。図中、―■―はクローン病患者血清3番、―●―はクローン病患者血清6番、―▲―はクローン病患者血清15番、―◆―はクローン病患者血清17番、及び―□―はクローン病患者血清20番の結果を示す。
Claims (38)
- 下記(a)または(b)のいずれかであるクローン病抗体結合性ペプチド:
(a)配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列のいずれかから選ばれるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)上記(a)に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチド。 - 上記(b)に記載されるペプチドが、配列番号1〜4または配列番号7に示されるアミノ酸配列のいずれかを一部に含むペプチドである請求項1に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号5〜14に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである請求項1に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号10に示されるアミノ酸配列のうち少なくともLIAQQMのアミノ酸配列を含むアミノ酸数6〜226ペプチドである請求項1に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
- 配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号15〜19に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである請求項1に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
- 配列番号3に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号20〜32に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである請求項1に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
- 配列番号3に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、少なくとも配列番号51に示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸数7〜604のペプチドである請求項1に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
- 配列番号4に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、配列番号33〜48に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するものである請求項1に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
- 配列番号4に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチドが、少なくともL(V)GGIYXD(E)L(Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列を含むアミノ酸数8〜165のペプチドである請求項1に記載のクローン病抗体結合性ペプチド。
- 分枝鎖のアミノ酸配列として、下記:
(a)配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列のいずれかから選ばれるアミノ酸配列からなるペプチド、または
(b)上記(a)に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加により改変されたアミノ酸配列からなり、且つクローン病抗体に結合性を有するペプチド
のアミノ酸配列を、同一または異なって、一分子中に複数個有する分岐状多抗原性ペプチド。 - (i)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(iii)配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、及び(iv)配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物のうち、少なくとも2つの群の中から選択される2種以上の異なるクローン病抗体結合性ペプチドのアミノ酸配列を分枝鎖に有する、請求項10に記載の分岐状多抗原性ペプチド。
- 請求項1に記載するクローン病抗体結合性ペプチド;請求項10に記載する分岐状多抗原性ペプチド;及びヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体よりなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有するクローン病の検査試薬。
- 上記のクローン病抗体結合性ペプチドが、(i)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、(iii)配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物、及び(iv)配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するペプチド及びその同効物のうち、少なくとも2つの群の中から選択される2種以上のクローン病抗体結合性ペプチドであり、上記の分岐状多抗原性ペプチドが請求項11に記載されるペプチドである、請求項12に記載のクローン病の検査試薬。
- 請求項12に記載の検査試薬をクローン病抗体結合用の抗原物質として含むクローン病の検査試薬キット。
- 抗ヒトIgG抗体、及び請求項12に記載の検査試薬、並びに必要に応じて、検体希釈液、標識物質、支持体(固相)、抗ヒトIgG抗体希釈液、酵素基質液、及び反応停止液よりなる群から選択される少なくとも1つを含有する請求項14に記載のクローン病の検査試薬キット。
- 被験者の生体試料中の、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseを認識する抗体を検出する工程を含むクローン病の検査方法。
- 上記抗体がヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEを認識する抗体である請求項16に記載のクローン病の検査方法。
- 上記抗体が、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体を認識する抗体である請求項16に記載のクローン病の検査方法。
- 上記抗体がヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEの199〜212位のアミノ酸領域を認識する抗体である請求項16に記載のクローン病の検査方法。
- LIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物、またはこれらのペプチド若しくはその同効物のアミノ酸配列を同一または異なって一分子中に分岐状に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを抗原物質として用い、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseを認識する抗体との抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出する工程を有する請求項16に記載のクローン病の検査方法。
- LIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチドまたはその同効物が、LIAQQMのアミノ酸配列を含むアミノ酸数6〜227個からなるペプチドである請求項20に記載のクローン病の検査方法。
- LIAQQMのアミノ酸配列からなるペプチドの同効物が、配列番号1、5〜14に記載されるそれぞれのアミノ酸配列を有するペプチドよりなる群から選択されるものである請求項20に記載のクローン病の検査方法。
- ヒト液胞型H+輸送性ATPaseのサブユニットEと、その他のサブユニットA、サブユニットB、サブユニットC、サブユニットD、115kDaサブユニット、39kDaサブユニット、20kDaサブユニット、及び16kDaサブユニットよりなる群から選択される少なくとも1つのサブユニットとの複合体を抗原物質として用い、ヒト液胞型H+輸送性ATPaseを認識する抗体との抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出する工程を有する請求項16に記載のクローン病の検査方法。
- 被験者の生体試料中の、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)を認識する抗体を検出する工程を含むクローン病の検査方法。
- 上記抗体がヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)の126〜138位のアミノ酸領域を認識する抗体である請求項24に記載のクローン病の検査方法。
- 配列番号51に記載するアミノ酸配列を有するペプチド若しくはその同効物、またはこれらのペプチド若しくはその同効物のアミノ酸配列を、同一または異なって一分子中に分岐状に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを抗原物質として用い、ヒト核内蛋白質(Homo sapiens kruppel−like zinc finger protein 300)を認識する抗体との抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出する工程を有する請求項24に記載のクローン病の検査方法。
- 配列番号51に記載するアミノ酸配列を有するペプチド若しくはその同効物が、配列番号51に記載するアミノ酸配列を含むアミノ酸数7〜604個からなるペプチドである請求項26に記載のクローン病の検査方法。
- 配列番号51に記載するアミノ酸配列を有するペプチドの同効物が、配列番号3、21〜32に記載されるそれぞれのアミノ酸配列を有するペプチドよりなる群から選択されるものである請求項26に記載のクローン病の検査方法。
- 被験者の生体試料中の、コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体を検出する工程を含むクローン病の検査方法。
- 上記コメアレルゲン蛋白質がalpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyに属するものである請求項29に記載のクローン病の検査方法。
- 上記コメアレルゲン蛋白質が、Rice allergen、Rice seed allergen RA5、Rice allergen RA5B precursor、Rice seed allergen RA14、Rice allergen RA14B precursor及びRice seed allergen RAG2よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項29に記載のクローン病の検査方法。
- 上記コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体が、Rice seed allergen RA14の99〜111位のアミノ酸領域を認識する抗体である請求項29に記載のクローン病の検査方法。
- 上記コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体が、alpha−amylase/trypsin inhibitorのgene familyの、L(V)GGIYRELのアミノ酸配列を有するアミノ酸領域を認識する抗体である請求項29に記載のクローン病の検査方法。
- L(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物、またはこれらのペプチド若しくはその同効物のアミノ酸配列を、同一または異なって一分子中に分岐状に複数個有する分岐状多抗原性ペプチドを抗原物質として用い、コメアレルゲン蛋白質を認識する抗体との抗原−抗体反応によって生じる複合物を検出する工程を有する請求項29に記載のクローン病の検査方法。
- L(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその同効物が、アミノ酸配列:L(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)を含むアミノ酸数8〜166個からなるペプチドである請求項34に記載のクローン病の検査方法。
- L(V)GGIYXD(E)L(Xは、同一または異なる、任意のアミノ酸残基である)のアミノ酸配列からなるペプチドの同効物が、配列番号4、33〜48に記載されるアミノ酸配列を有するペプチドよりなる群から選択されるものである請求項34に記載のクローン病の検査方法。
- 請求項1〜11のいずれかに記載のペプチドの、クローン病の検査においてクローン病抗体と反応させる抗原物質としての使用。
- 請求項1〜11のいずれかに記載のペプチドの、クローン病の検査試薬の製造のための使用。
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