JPWO2002070886A1 - 金属ガスケット - Google Patents

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Abstract

この発明は、燃焼室孔の全周にわたって十分なシール性能を得ると共に運転時の鋳鉄製スリーブの熱膨張によって該スリーブの下端部を支持するシリンダブロックの段差部が破壊したり、ボアの真円度を損ねたり、鋳鉄製スリーブが沈下したり、締結ボルト間での圧漏れの発生したりするのを回避するために、シム板(14)の燃焼室孔(12)側の端部を鋳鉄製スリーブ(2)の上端面の外周位置(OL1)の径方向外側に配置すると共に、シム板(14)の燃焼室孔(12)から離間する側の端部をシリンダブロック(1)に形成されたウォータージャケット(4)の外側ライン(OL2)より燃焼室孔(12)側に配置し、且つ、フルビード(13)の一部を鋳鉄製スリーブ(2)の上端面に配置する。

Description

技術分野
本発明は、燃焼室孔の周囲にビードが設けられた基板と、該基板より薄肉に形成されて前記基板に積層されたシム板とを備えた金属ガスケットに関する。
背景技術
従来のこの種の金属ガスケットとしては、例えば図21に示すように、基板aの燃焼室孔bの周縁部(基板ビードcより燃焼室孔側)に該基板aより薄肉のシム板dを積層したものや、図22に示すように、二枚の基板a間にシム板dを介装したもの、或いは図23に示すように、二枚の基板a間にシム板dと副板eとを介装してシム板dの燃焼室孔b側の端部を折り返して副板eの端部を包み込んだもの等が知られている。
これらの金属ガスケットは、いずれも燃焼室孔bの周縁部の板厚を最も厚くして他の部分との間に板厚差を設けたものであり、かかる板厚差により、シリンダヘッドとシリンダブロックとの接合面間に介装して締結ボルトで締め付ける際に、燃焼室孔bの周縁部に最も面圧が集中するようにし、これにより、シリンダボア端部周縁に最大荷重をかけてシールするようにしている。
ところで、図24はエンジンの軽量化の要請から最近多く採用されているアルミニウム製のシリンダブロックを示したものであり、このシリンダブロック1はボア部の耐久性や耐摩耗性等の観点からシリンダボアに円筒状の鋳鉄製スリーブ2を圧入等により嵌め込んでその下端部をシリンダブロック1に形成された段差部3で支持するようにしている。また、この鋳鉄製スリーブ2は、シリンダブロック1に形成されたウォータージャケット4内の冷却水によるエンジンの冷却効率を高めるため、近年の加工技術の向上等も手伝ってできるだけ薄肉(2〜5mm程度)に加工されている。
しかしながら、このようなシリンダブロック1とシリンダヘッド(図示せず。)との接合面間に上記金属ガスケットを介装して締結ボルトで締め付けた場合には次のような問題が生じてくる。
即ち、運転時においてはボア側である鋳鉄製スリーブ2は高温になり、接触するアルミニウム製シリンダブロック1に熱伝導して冷却されるが、シリンダボア側の熱発生量が極端に多いため、鋳鉄製スリーブ2とアルミニウム製シリンダブロック1との温度差による体積膨張差に起因して冷却構造を持たない鋳鉄製スリーブ2が軸方向に熱膨張してシリンダブロック1のデッキ面から突出しようとする。
従って、上記のように燃焼室孔bの周縁部にシム板dを積層して厚肉部を形成することによりシリンダボア端部周縁に最大荷重をかけるようにした金属ガスケットにおいては、鋳鉄製スリーブ2の上端面によって該厚肉部が押圧されて該鋳鉄製スリーブ2の周方向の特に高面圧域である締結ボルト近傍に過大な面圧が発生し、この結果、薄肉の鋳鉄製スリーブ2の下端部を支持するシリンダブロック1の段差部3が破壊する等の不具合が生じ、しかも、鋳鉄製スリーブ2が周方向(締結ボルト近傍と締結ボルト間)における面圧の極度の不均衡で変形してシリンダボアの真円度を損ねる不具合が生じる虞れがある。
また、シリンダブロック1の段差部3が破壊しない場合においても、該段差部3の面積が小さいと鋳鉄製スリーブ2が沈下したり、更には、シリンダヘッドの剛性が小さい場合には鋳鉄製スリーブ2がシリンダヘッドを押し上げて締結ボルト間での圧漏れの発生原因となる虞れがある。
一方、上記のようにシリンダボアに鋳鉄製スリーブを圧入したエンジンに代えて、アルミニウム製のシリンダブロックにシリンダボアを直接開け、該シリンダボアの内周面(アルミニウム面)に金属類やセラミック、樹脂等の被膜をメッキや爆射等で形成して耐久性を確保するようにした所謂オールアルミエンジンが採用され始めてきている。
このようなオールアルミエンジンは、上述した鋳鉄製スリーブの不具合を回避することができ、しかも、軽く、熱伝導性も良いことからシリンダブロックに形成されたウォータージャケット内の冷却水によるエンジンの冷却効率を高めることができる。
しかしながら、オールアルミエンジンでは、鋳鉄製スリーブを圧入したシリンダブロックに比べてシリンダボアの端部周縁の剛性が低いため、上記のように燃焼室孔bの周縁部にシム板dを積層して厚肉部を形成することによりボア端部周縁に最大荷重をかけるようにした金属ガスケットにおいては、該最大荷重によりシリンダボア端部周縁が変形してシリンダボアの真円度の確保が難しいという問題が生じてくる。
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、燃焼室孔の全周にわたって十分なシール性能を得ることができ、しかも、鋳鉄製スリーブが嵌め込まれたエンジンに用いる場合は運転時の鋳鉄製スリーブの軸方向の熱膨張による不具合、即ち、鋳鉄製スリーブの下端部を支持するシリンダブロックの段差部が破壊したり、シリンダボアの真円度を損ねたり、鋳鉄製スリーブが沈下したり、締結ボルト間での圧漏れの発生したりするのを回避することができ、オールアルミエンジンに用いる場合はシリンダボアの真円度を良好に確保することができる金属ガスケットを提供することを目的とする。
発明の開示
本発明の金属ガスケットは、かかる目的を達成するために、燃焼室孔の周囲にビードが設けられた基板と、該基板より薄肉に形成されて前記基板に積層されたシム板とを備え、シリンダヘッドとシリンダブロックとの接合面間に介装して締結ボルトで締め付けることにより、前記接合面間をシールするようにした金属ガスケットにおいて、
前記シム板の前記燃焼室孔側の端部を該燃焼室孔の径方向外側位置に離間配置すると共に、該シム板の前記燃焼室孔から離間する側の端部を前記ビードの外側に形成されたボルト挿通孔より該燃焼室孔側で且つ該ボルト挿通孔と前記ビードとの間に形成された水孔を除いて配置したことを特徴とする。
本発明によれば、シム板を積層した燃焼室孔の周囲の厚肉部分と他の薄肉部分との板厚差により、燃焼室孔の周囲に面圧が集中してシール条件が一番厳しいシリンダボア端部周囲に最大荷重が作用し、また、圧縮変形したビードの弾性反発力よるシール圧によって高温高圧の燃焼ガスに対するシールがなされ、これにより、燃焼室孔の全周にわたって十分なシール性能を得ることができる。
また、シム板の燃焼室孔側の端部を該燃焼室孔の径方向外側位置に配置しているため、剛性が低いシリンダボアの端部周縁に最大荷重が作用しないようにすることができ、この結果、オールアルミエンジンに用いた場合にシリンダボア端部周縁の変形が防止されてシリンダボアの真円度を良好に確保することができる。
この場合、シム板の燃焼室孔側の端部を、ボルト挿通孔間は該燃焼室孔側に接近配置し、ボルト挿通孔近傍は燃焼室孔から離間配置することにより、シリンダボアの端部周縁に作用する周方向の面圧の平均化を図ることができる。
また、シリンダブロックに鋳鉄製スリーブが嵌め込まれたエンジンに用いる場合は、前記シム板の前記燃焼室孔側の端部を、鋳鉄製スリーブの上端面の外周位置の径方向外側に配置すると共に、前記ビードの少なくとも一部を前記鋳鉄製スリーブの上端面に配置することにより、運転時の鋳鉄製スリーブの軸方向の熱膨張による不具合、即ち、鋳鉄製スリーブの下端部を支持するシリンダブロックの段差部が破壊したり、シリンダボアの真円度を損ねたり、鋳鉄製スリーブが沈下したり、締結ボルト間での圧漏れの発生したりするのを回避することができる。
更に、前記ビードを前記燃焼室孔の径方向に互いに離間して複数設け、複数のビードの内の最も該燃焼室孔に近いビードの一部又は全部を前記鋳鉄製スリーブの上端面に配置することにより、互いに隣り合う各シリンダボア間の間隔が広い場合に好適に用いることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態の一例である金属ガスケットを説明するための要部平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3〜図13及び図17〜図20は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図、図14は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的平面図、図15は図14のA−A線断面図、図16はオールアルミシリンダブロックを説明するための説明的断面図である。なお、この実施の形態では、アルミニウム製シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装される金属ガスケットを例に採り、また、鋳鉄製スリーブが嵌め込まれたアルミニウム製シリンダブロックについては、図24と同様のものを採用し、同一部分に同一符号を付して説明する。
図1及び図2を参照して、この金属ガスケット10は、燃焼室孔12の周囲にフルビード13が形成された基板11と、基板11より薄肉に形成されて該基板11のフルビード13の凹部側に積層されたシム板14とを備えている。基板11のフルビード13の周囲には水孔15がアルミニウム製シリンダブロック1のウォータージャケット4に対応して形成され、水孔15の周囲には締結ボルトのボルト挿通孔16及び油孔17が形成されている。
ここで、この実施の形態では、シム板14の燃焼室孔12側の端部をシリンダブロック1のシリンダボアに嵌め込まれた鋳鉄製スリーブ2の上端面の外周位置OLの径方向外側に配置すると共に、該シム板14の燃焼室孔12から離間する側の端部をシリンダブロック1のウォータージャケット4の外側ラインOLより燃焼室孔12側に水孔15を除いて配置し、且つ、フルビード13の一部を鋳鉄製スリーブ2の上端面に配置している。これにより、シム板14の積層部分が他の部分より厚肉に形成されている。なお、シム板14の燃焼室孔12から離間する側の端部がシリンダブロック1のウォータージャケット4の外側ラインOLより多少外側にあっても良いが、シム板14の材料費削減の観点から外側ラインOLより燃焼室孔12側に配置するのが好ましい。
そして、かかる構成の金属ガスケットをシリンダブロック1とシリンダヘッドとの間に介装して締結ボルトで締め付けると、フルビード13が板厚方向に圧縮変形し、締め付け終了時においては、鋳鉄製スリーブ2の上端面で圧縮変形したフルビード13の弾性反発力によるシール圧によって高温高圧の燃焼ガスに対する一次シールがなされると共に、シム板14を積層した燃焼室孔12の周囲の厚肉部分と他の薄肉部分との板厚差により、燃焼室孔12の鋳鉄製スリーブ2の周囲に面圧が集中してシール条件が一番厳しいシリンダボア端部周囲に最大荷重が作用し、圧縮変形したフルビード13の弾性反発力よるシール圧によって高温高圧の燃焼ガスに対する二次シールがなされ、これにより、燃焼室孔12の全周にわたって十分なシール性能を得ることができる。
ここで、この実施の形態では、シム板14を鋳鉄製スリーブ2の上端面の外周位置OLの径方向外側に配置すると共、フルビード13の一部を鋳鉄製スリーブ2の上端面に配置しているため、鋳鉄製スリーブ2の上端面とシリンダヘッドのデッキ面との間にはシム板14の板厚分だけすき間が形成されることになる。
従って、運転時に発生する鋳鉄製スリーブ2とアルミニウム製シリンダブロック1との温度差による体積膨張差に起因して鋳鉄製スリーブ2が軸方向に熱膨張して鋳鉄製スリーブ2の上端面がシリンダブロック1のデッキ面から突出して基板11を上方向に押圧しても該押圧力は前記すき間内での部分的なフルビード13の弾性を利用した基板11の弾性変形により吸収され、これにより、鋳鉄製スリーブ2の周方向の特に高面圧域である締結ボルト近傍に過大な面圧が発生するのを防止することができ、この結果、薄肉の鋳鉄製スリーブ2の下端部を支持するシリンダブロック1の段差部3が破壊するのを回避することができる。
また、鋳鉄製スリーブ2の周方向に過大な面圧が作用しないため、従来のように、鋳鉄製スリーブ2の変形によってシリンダボアの真円度を損ねるといった不具合を防止することができると共に、シリンダブロック1の段差部3の面積が小さい場合でも鋳鉄製スリーブ2が沈下するのを防止することができ、更には、シリンダヘッドの剛性が小さい場合においても、従来のように、鋳鉄製スリーブ2がシリンダヘッドを押し上げて締結ボルト間で圧漏れの発生するといった不具合を防止することができる。
一方、エンジン停止時に鋳鉄製スリーブ2が冷却されて収縮した際には、該鋳鉄製スリーブ2の上端面に押圧されていた基板11は鋳鉄製スリーブ2の上端面に部分的に配置されたフルビード13の弾性反発力により鋳鉄製スリーブ2の収縮動作に追従して弾性復帰する。
なお、上記実施の形態では、基板11に一つのビードを設けた場合を例に採ったが、例えば図3に示すように、基板21の燃焼室孔22側の端部にステップビード23を設けると共に、該ステップビード23の燃焼室孔22から離間する側にフルビード13を設けて、ステップビード23を鋳鉄製スリーブ2の上端面に配置するようにしてもよい。また、上記実施の形態では、平板状のシム板14を用いた場合を例に採ったが、これに代えて、例えば図4に示すように、シム板14の一部をフルビード13の凹部側の曲面に沿わせるようにしてもよい。
次に、図5〜図20を参照して、本発明の他の実施の形態である金属ガスケットを説明する。
図5及び図6は3層構造の金属ガスケットであり、図5の金属ガスケットは図2の金属ガスケットに対してシム板14の下側に該シム板14より薄い薄板30を積層し、該薄板30の燃焼室孔12側の端部を上方に折り返して基板11の燃焼室孔12側の端部を包み込むようにしたものであり、図6の金属ガスケットは図3の金属ガスケットに対して下側の基板21と同一の基板21をシム板14の上側に対称配置して、二枚の基板21でシム板14を挟み込むようにしたものである。
図7〜図12は二枚の基板、シム板及び厚さ調整用の副板からなる4層構造の金属ガスケットであり、図7の金属ガスケットは図2の金属ガスケットに対してシム板14の下側に副板40を配置して該副板40の下側に図2の基板11と同一の基板11を互いに同一方向に向けて配置したものであり、図8の金属ガスケットは図7の金属ガスケットに対して上側の基板11を下側の基板11に対して対称配置したものである。
図9の金属ガスケットは図6の金属ガスケットに対して上側の基板21とシム板14との間に副板40を配置したものであり、図10の金属ガスケットは図9の金属ガスケットに対して副板40のシム板14積層面(上面)に該シム板14の板厚の約1/2の段差凹部41を設けて該段差凹部41にシム板14積層し、且つ、副板40の下面にシム板14の板厚の約1/2の段差凸部42を設けたものであり、図11の金属ガスケットは図10の金属ガスケットに対して上側の基板21を下側の基板21と同一方向に向けて配置したものである。図10及び図11の金属ガスケットによれば、副板40の上面にシム板14の1/2の板厚が突出し、下面にシム板14の1/2の厚さの段差凸部42が突出するため、シム板14による面圧集中効果を上下均等にすることができる。図12の金属ガスケットは図9の金属ガスケットに対して基板21に形成した2つのビード13,23の内で最も燃焼室孔22側にあるステップビード23の全部を鋳鉄製スリーブ2の上端面に配置した例である。
図13は5層構造の金属ガスケットであり、この金属ガスケットは図11の金属ガスケットに対して副板40のシム板14積層面(上面)に該シム板14の板厚と同等の段差凹部51を設けて該段差凹部51にシム板14を積層し、且つ、副板40の下面にシム板14の板厚と同等の段差凸部52を設けると共に、副板40と上側の基板21との間に他の副板50を配置したものである。なお、図6、図9〜図13の金属ガスケットは、互いに隣り合う各シリンダボア間の間隔が広い場合に好適な例である。
図14及び図15はオールアルミエンジンに好適な金属ガスケットを示している。オールアルミエンジンは、図16に示すように、アルミニウム製のシリンダブロック61にシリンダボアを直接開け、該シリンダボアの内周面(アルミニウム面)に金属類やセラミック、樹脂等の被膜63をメッキや爆射等で形成して耐久性を確保するようにしたものである。なお、図において符号62はウォータージャケット、64はボルト孔である。
この金属ガスケット100は、燃焼室孔102の周囲にフルビード103が形成された基板101と、基板101より薄肉に形成されて該基板101のフルビード103の凹部側に積層されたシム板104とを備えている。基板101のフルビード103の周囲には水孔105がアルミニウム製シリンダブロック61のウォータージャケット62に対応して形成され、水孔105の周囲には締結ボルトのボルト挿通孔106がアルミニウム製シリンダブロック61のボルト孔64に対応して形成され、ボルト挿通孔106の周囲には油孔107が形成されている。
ここで、この実施の形態では、シム板104の燃焼室孔102側の端部を該燃焼室孔102の径方向外側位置に配置すると共に該シム板104の燃焼室孔102から離間する側の端部をシリンダブロック61のウォータージャケット62の外側ラインOLより燃焼室孔102側に水孔105を除いて配置している。これにより、シム板104の積層部分が他の部分より厚肉に形成されている。なお、シム板104の燃焼室孔102から離間する側の端部がシリンダブロック61のウォータージャケット62の外側ラインOLより多少外側にあっても良いが、シム板104の材料費削減の観点から外側ラインOLより燃焼室孔102側に配置するのが好ましい。
また、シム板104の燃焼室孔102側の端部は、ボルト挿通孔106間は該燃焼室孔102側に接近して配置され、該ボルト挿通孔106近傍は燃焼室孔102から離間配置されており、また、シム板104の燃焼室孔102側の端部の燃焼室孔102に対する接近位置110及び離間位置111は共にフルビード103内に配置されている。
そして、かかる構成の金属ガスケットをシリンダブロック61とシリンダヘッドとの間に介装して締結ボルトで締め付けると、フルビード103が板厚方向に圧縮変形し、締め付け終了時においては、圧縮変形したフルビード103の弾性反発力によるシール圧によって高温高圧の燃焼ガスに対する一次シールがなされると共に、シム板104を積層した燃焼室孔102の周囲の厚肉部分と他の薄肉部分との板厚差により、燃焼室孔102の周囲に面圧が集中してシール条件が一番厳しいシリンダボア端部周囲に最大荷重が作用し、圧縮変形したフルビード103の弾性反発力よるシール圧によって高温高圧の燃焼ガスに対する二次シールがなされ、これにより、燃焼室孔102の全周にわたって十分なシール性能を得ることができる。
ここで、この実施の形態では、シム板104の燃焼室孔102側の端部を該燃焼室孔102の径方向外側位置に配置しているため、剛性が低いシリンダボアの端部周縁に最大荷重が作用しないようにすることができ、この結果、シリンダボア端部周縁の変形が防止されてシリンダボアの真円度を良好に確保することができる。
また、シム板104の燃焼室孔102側の端部を、比較的面圧の低いボルト挿通孔106間は該燃焼室孔102側に接近させて配置し、面圧の高いボルト挿通孔106近傍は燃焼室孔102から離間配置しているので、シリンダボアの端部周縁に作用する周方向の面圧の平均化を図ることができる。
図17の金属ガスケットは図15の金属ガスケットに対してシム板104の下面側に基板101を対称配置して二枚の基板101間にシム板104を配置した例であり、図18の金属ガスケットは図17の金属ガスケットに対してシム板104の上側に副板120を配置した例であり、図19の金属ガスケットは図18の金属ガスケットに対してシム板104の下側にも副板120を配置して二枚の副板120間にシム板104を配置した例であり、図20の金属ガスケットは互いに隣り合う各シリンダボア間の間隔が広い場合に好適なもので、二枚の基板101間にシム板104及び副板120を介装して基板101の燃焼室孔102側の端部にステップビード113を設けると共に、該ステップビード113の燃焼室孔102から離間する側にフルビード103を設けた例である。
なお、シム板104の燃焼室孔102側の端部をボルト挿通孔106間は該燃焼室孔102側に接近配置し、ボルト挿通孔106近傍は燃焼室孔102から離間配置した構成を図14,図15、図17〜図20の金属ガスケットに適用しているが、上述した図1〜図13に示す金属ガスケットにも同様の構成を適用してもよい。
産業上の利用可能性
上記の説明から明らかなように、本発明によれば、燃焼室孔の全周にわたって十分なシール性能を得ることができ、しかも、オールアルミエンジンにおいて剛性が低いシリンダボアの端部周縁に最大荷重が作用しないようにすることができるので、シリンダボア端部周縁の変形が防止されてシリンダボアの真円度を良好に確保することができるという効果が得られる。
また、シム板の燃焼室孔側の端部を、ボルト挿通孔間は該燃焼室孔側に接近配置し、ボルト挿通孔近傍は燃焼室孔から離間配置した場合は、シリンダボアの端部周縁に作用する周方向の面圧の平均化を図ることができるという効果が得られる。
更に、シム板の前記燃焼室孔側の端部を、鋳鉄製スリーブの上端面の外周位置の径方向外側に配置すると共に、ビードの一部又は全部を鋳鉄製スリーブの上端面に配置した場合は、シリンダブロックに鋳鉄製スリーブが嵌め込まれたエンジンに用いる際に、運転時の鋳鉄製スリーブの軸方向の熱膨張による不具合、即ち、鋳鉄製スリーブの下端部を支持するシリンダブロックの段差部が破壊したり、シリンダボアの真円度を損ねたり、鋳鉄製スリーブが沈下したり、締結ボルト間での圧漏れの発生したりするのを回避することができるという効果が得られる。
更に、ビードを燃焼室孔の径方向に互いに離間して複数設け、複数のビードの内の最も該燃焼室孔に近いビードの一部又は全部を鋳鉄製スリーブの上端面に配置した場合は、互いに隣り合う各シリンダボア間の間隔が広い場合に好適に用いることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の実施の形態の一例である金属ガスケットを説明するための要部平面図である。
図2は図1のA−A線断面図である。
図3は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図4は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図5は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図6は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図7は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図8は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図9は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図10は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図11は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図12は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図13は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図14は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的平面図である。
図15は図14のA−A線断面図である。
図16はオールアルミシリンダブロックを説明するための説明的断面図である。
図17は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図18は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図19は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図20は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図である。
図21は従来の金属ガスケットを説明するための説明的断面図である。
図22は従来の金属ガスケットを説明するための説明的断面図である。
図23は従来の金属ガスケットを説明するための説明的断面図である。
図24は鋳鉄製スリーブを嵌め込んだアルミニウム製シリンダブロックを説明するための説明的断面図である。

Claims (4)

  1. 燃焼室孔の周囲にビードが設けられた基板と、該基板より薄肉に形成されて前記基板に積層されたシム板とを備え、シリンダヘッドとシリンダブロックとの接合面間に介装して締結ボルトで締め付けることにより、前記接合面間をシールするようにした金属ガスケットにおいて、
    前記シム板の前記燃焼室孔側の端部を該燃焼室孔の径方向外側位置に離間配置すると共に、該シム板の前記燃焼室孔から離間する側の端部を前記ビードの外側に形成されたボルト挿通孔より該燃焼室孔側で且つ該ボルト挿通孔と前記ビードとの間に形成された水孔を除いて配置したことを特徴とする金属ガスケット。
  2. 前記シム板の前記燃焼室孔側の端部を、前記ボルト挿通孔間は該燃焼室孔側に接近させ、該ボルト挿通孔近傍は前記燃焼室孔から離間させたことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の金属ガスケット。
  3. 前記シム板の前記燃焼室孔側の端部を、前記シリンダブロックのシリンダボアに嵌め込まれた鋳鉄製スリーブの上端面の外周位置の径方向外側に配置すると共に、前記ビードの少なくとも一部を前記鋳鉄製スリーブの上端面に配置したことを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載の金属ガスケット。
  4. 前記ビードは前記燃焼室孔の径方向に互いに離間して複数設けられ、複数のビードの内の最も該燃焼室孔に近いビードの一部又は全部を前記鋳鉄製スリーブの上端面に配置したことを特徴とする請求の範囲第3項に記載の金属ガスケット。
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