JPH0741137U - メタルガスケット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ストッパー部の作成が容易で且つストッパー
部の取付け強度を高め得るメタルガスケット、並びに、
シリンダ孔の開口周縁部に対する面圧を一様に設定して
上死点付近におけるシリンダ孔の真円度の低下を防止し
得るメタルガスケットを提供する。 【構成】 エンジンのシリンダ孔に対応させて開口部１
２を形成し、開口部１２の周縁部付近に環状のビード１
３を形成し、開口部１３の周縁とビード１３間に環状延
設部１４を形成した弾性金属板からなるビード板１１を
備えたメタルガスケット１０であって、環状延設部１４
に開口部１２と同心状に３つの副ビード１５を形成し、
環状延設部１４に副ビード１５を含むように耐熱性及び
耐圧縮性を有する充填材料を肉盛りした肉盛部１６を形
成し、環状延設部１４と肉盛部１６とでビード１１の異
常変位を規制するストッパー部１７を形成した。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、エンジンのシリンダブロックとシリンダヘッド間に介設されるメタ ルガスケットに関する。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、エンジンのシリンダブロックとシリンダヘッド間には、燃焼室を気密 状にシールするためのメタルガスケットが装着されている。 前記メタルガスケットとしては、弾性金属板からなるビード板と、ビード板に 重ね合わされる副板とを備え、ビード板及び副板のエンジンのシリンダ孔に対応 する部分に開口部を形成し、ビード板の開口周縁部付近に副板とは反対側へ突出 した環状のビードを形成し、副板の開口周縁部にビード板の開口周縁部を抱き込 むように折り返えしたストッパー部を形成し、シリンダヘッドを複数のシリンダ ヘッド固定用ボルトでシリンダブロックに締結したときに、ストッパー部の厚さ 分の隙間をビード付近に形成して、ビードの異常変位を規制するように構成した ものが広く採用されている。

【０００３】 ところが、前記メタルガスケットでは、副板の折り返し部分に対してシリンダ ヘッドとシリンダブロックとの熱膨張率の差による横方向への荷重や、エンジン 稼働時における上下方向への荷重が作用し、しかも、この折り返し部分は高温・ 高圧な燃焼ガスに常時さらされるという過酷な条件下で使用されるので、長期間 使用しているうちに破断してストッパー部がビード板の開口縁部から脱落するこ とがある。 そこで、ビード板の開口縁部とビード間に環状の平坦部を形成し、平坦部のビ ードの突出側の面に平板環状の副板を開口部に臨むように接着或いは溶着により 固着し、副板でビードの異常変位を規制するストッパー部を構成したメタルガス ケットが提案されている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

前記メタルガスケットでは、副板を折り返していないので、折り返し部分の破 断によるストッパー部の脱落を確実に防止出来るとともに、上下方向向きの荷重 に対する副板の取付け強度も十分に得られる。しかし、副板を接着によりビード 板の平坦部に固定した場合には、横方向への荷重に対する十分な接合強度を得る ことが困難で、長期間使用しているうちに脱落することも考えられる。また、溶 着により固定した場合には、横方向への荷重に対する接合強度を向上出来るが、 接合作業が大変煩雑になるという問題がある。 また、シール性を向上するためビード板及び副板の表面にゴムコーティング層 を形成した場合には、ビードの異常変位を副板で規制するときに、金属製の副板 とシリンダヘッド或いはシリンダブロック間にゴムコーティング層が高面圧で挟 持され、ゴムコーティング層が副板から剥離するという問題が発生する。

【０００５】 一方、前記メタルガスケットにおいては、通常、ストッパー部の幅が一様で且 つ厚さが一様なので、ストッパー部又はそれに対応するビード板の開口周縁部の シリンダブロックに対する面圧が、シリンダヘッド固定用ボルト側へ行くにした がって大きくなり、シリンダ孔の内壁部が部分的に内側へ変形して、上死点付近 におけるシリンダ孔の真円度が低下し、シリンダ孔とピストンリング間のシール 性の低下により、エンジン性能が低下したり、オイル消費量が増大するという問 題が発生する。特に、シリンダ孔の上死点付近においては、エンジンの圧縮行程 及び爆発行程における高温・高圧な燃焼ガスをシールする関係上、僅かな真円度 の低下でも、エンジン性能が大幅に低下したり、オイル消費量が増大するという 問題が発生するのである。

【０００６】 本考案の目的は、ストッパー部の作成が容易で且つストッパー部の取付け強度 を高め得るメタルガスケット、並びに、シリンダ孔の開口周縁部に対する面圧を 一様に設定して上死点付近におけるシリンダ孔の真円度の低下を防止し得るメタ ルガスケットを提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

請求項１に係るメタルガスケットは、エンジンのシリンダ孔に対応させて開口 部を形成し、開口部の周縁部付近に環状のビードを形成し、開口部の周縁とビー ド間に環状延設部を形成した弾性金属板からなるビード板を備えたメタルガスケ ットであって、前記環状延設部に凹部、凸部、貫通孔のうちの１種又は２種以上 からなる係止部を形成し、前記環状延設部に係止部を含むように耐熱性及び耐圧 縮性を有する充填材料を肉盛りした肉盛部を形成し、前記環状延設部と肉盛部と でビードの異常変位を規制するストッパー部を形成したものである。

【０００８】 請求項２に係るメタルガスケットは、エンジンのシリンダ孔に対応させて開口 部を形成し、開口部の周縁部付近に環状のビードを形成し、開口部の周縁とビー ド間に環状延設部を形成した弾性金属板からなるビード板と、エンジンのシリン ダ孔に対応させて開口部を形成し、ビード板の環状延設部に対応する位置に環状 受部を形成したビード板に重ね合わされる副板とを備えたメタルガスケットであ って、前記環状受部に凹部、凸部、貫通孔のうちの１種又は２種以上からなる係 止部を形成し、前記環状受部に係止部を含むように耐熱性及び耐圧縮性を有する 充填材料を肉盛りした肉盛部を形成し、前記環状受部と肉盛部とでビードの異常 変位を規制するストッパー部を形成したものである。

【０００９】 ここで、請求項３のように、前記係止部を開口部と同心状の副ビードで構成し てもよいし、請求項４のように、前記係止部を多数の凹部で構成してもよいし、 請求項５のように、前記ストッパー部をシリンダヘッドのボルト締結部側へ行く にしたがって薄肉に構成してもよいし、請求項６のように、前記ストッパー部を シリンダヘッドのボルト締結部側へ行くにしたがって幅広に構成してもよい。

【００１０】

【作用】

請求項１に係るメタルガスケットにおいては、ビード板の開口部の周縁とビー ド間に形成された環状延設部に凹部、凸部、貫通孔のうちの１種又は２種以上か らなる係止部が形成され、環状延設部に係止部を含むように耐熱性及び耐圧縮性 を有する充填材料、例えば、ポリエステル系やシリコン系やフッソ系などの合成 樹脂材料や、焼結金属やハンダやロウ金などの金属材料や、テフロンやシリコン 樹脂などの合成樹脂材料と金属材料との複合材料、などの充填材料を肉盛りした 肉盛部が形成されるので、係止部の表面部に対しても充填材料が充分に充填され て、ビード板と肉盛部との密着性が向上するとともに、ビード板と肉盛部との接 合面積が大きくなり、しかも肉盛部に係合した係止部の係止作用により、ビード 板に対する肉盛部の取付け強度が大幅に向上する。 このようにして作成した肉盛部と環状延設部とでビードの異常変位を規制する ストッパー部を構成してあるので、エンジン稼働時における横方向の荷重や上下 方向の荷重によるストッパー部の破損や脱落が効果的に防止される。

【００１１】 請求項２に係るメタルガスケットにおいては、ビード板に重ね合わされた副板 の環状受部に凹部、凸部、貫通孔のうちの１種又は２種以上からなる係止部が形 成され、環状受部に係止部を含むように耐熱性及び耐圧縮性を有する充填材料を 肉盛りした肉盛部が形成されるので、係止部の表面部に対しても充填材料が充分 に充填されて、副板と肉盛部との密着性が向上するとともに、副板と肉盛部との 接合面積が大きくなり、しかも肉盛部に係合した係止部の係止作用により、副板 に対する肉盛部の取付け強度が大幅に向上する。 このようにして作成した肉盛部と環状受部とでビードの異常変位を規制するス トッパー部を構成してあるので、エンジン稼働時における横方向の荷重や上下方 向の荷重によるストッパー部の破損や脱落が効果的に防止される。

【００１２】 前記係止部として、環状延設部又は環状受部に開口部と同心状に副ビードを形 成してもよいし、環状延設部又は環状受部に多数の凹部を形成してもよく、この 場合には、ストッパー部に対する半径方向への荷重を係止部で効果的に受け止め ることが可能となる。

【００１３】 前記ストッパー部をシリンダヘッドのボルト締結部側へ行くにしたがって薄肉 に構成したり、シリンダヘッドのボルト締結部側へ行くにしたがって幅広に構成 した場合には、ストッパー部或いはストッパー部に対応するビード板や副板のシ リンダブロックに対する面圧を、シリンダ孔の開口周縁部の全周に亙って一様に 設定することが可能となり、上死点付近におけるシリンダ孔の真円度を向上する ことが可能となる。

【００１４】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面を参照しながら説明する。 本考案は、Ｖ型６気筒エンジンのシリンダブロックとシリンダヘッドに装着さ れるメタルガスケットに本考案を適用した場合のものである。

【００１５】 図１・図２に示すように、Ｖ型エンジンのシリンダブロック１の左右のバンク １Ａ・１Ｂには３つのシリンダ孔２が夫々形成され、左右のバンク１Ａ・１Ｂに はその上部に夫々形成された８つのボルト孔３にシリンダヘッド固定用ボルト（ 図示略）を装着して１対のシリンダヘッド４が固定され、左右のシリンダヘッド ４とシリンダブロック１の左右のバンク１Ａ・１Ｂ間にはメタルガスケット１０ が夫々装着され、シリンダ孔２内にはピストン５が複数のピストンリング６を介 して気密摺動自在に装着され、ピストン５とシリンダブロック１とシリンダヘッ ド４とで形成される燃焼室７はメタルガスケット１０と複数のピストンリング６ を介して気密状態に保持されている。

【００１６】 前記メタルガスケット１０について説明すると、図２〜図４に示すように、シ リンダブロック１の上面と略同じサイズで略同一形状の弾性金属板からなる略平 板状のビード板１１が設けられ、ビード板１１のシリンダ孔２に対応する位置に はシリンダ孔２と略同径の開口部１２が形成され、開口部１２に臨むビード板１ １の縁部付近には上方へ突出した環状のビード１３がシリンダ孔２の上端を取り 囲むように形成され、開口部１２の周縁とビード１３間には環状延設部１４が形 成され、環状延設部１４にはビード１３と同心状に３つの副ビード（これが係止 部に相当する）１５が形成されている。

【００１７】 前記副ビード１５を含む環状延設部１４の上面及び下面の全周に亙って耐熱性 及び耐圧縮性を有する充填材料、例えば、ポリエステル系やシリコン系やフッソ 系などの合成樹脂材料や、焼結金属やハンダやロウ金などの金属材料や、金属材 料とテフロンやシリコン樹脂などの複合材料を、プリント加工や焼成やロウ付け や複合メッキなどにより、その全周に亙って肉盛りした肉盛部１６が形成され、 環状延設部１４と肉盛部１６とでストッパー部１７が構成され、このストッパー 部１７の厚さはビード１３の高さよりもやや薄く設定され、ビード板１１とスト ッパー部１７の表面部には両者を覆うようにゴムコーティング層１８が形成され ている。

【００１８】 次に、前記メタルガスケット１０の作用について説明する。 メタルガスケット１０を装着した状態でシリンダブロック１とシリンダヘッド ４とを８本のシリンダヘッド固定用ボルトで締結すると、シリンダブロック１と シリンダヘッド４間にメタルガスケット１０が挟持され、メタルガスケット１０ のゴムコーティング層１８を介在させた状態で、ビード１３がシリンダヘッド４ の下面に圧接され、燃焼室７が気密状にシールされるとともに、ストッパー部１ ７の厚さからビード板１１の厚さを差し引いた隙間がビード１３付近に形成され 、ボルト締結時におけるビード１３の異常変位が規制される。

【００１９】 前記副ビード１５を含むように環状延設部１４に対して充填材料を肉盛りして 肉盛部１６を作成してあるので、肉盛部１６と環状延設部１４間の密着性が高く なり、環状延設部１４に対する肉盛部１６の接合面積が大きくなるとともに、副 ビード１５により肉盛部１６が係止されることで、ビード板１１に対する肉盛部 １６の取付け強度、特に横方向の荷重に対する取付け強度が大幅に高くなる。こ のため、環状延設部１４と肉盛部１６とで構成されるストッパー部１７に対して 、シリンダブロック１とシリンダヘッド４との熱膨張率の差による横方向への荷 重や、エンジン稼働時における上下方向への荷重が作用しても、ストッパー部１ ７が破損したり脱落したりすることが効果的に防止される。また、万一、肉盛部 １６が脱落した場合でも、副ビード１５によりビード１３の異常変位が規制され るので、ビード１３のヘタリによるシール性の低下を効果的に防止することが可 能となる。

【００２０】 更に、ビード板１１及びストッパー部１７の表面部にゴムコーティング層１８ を形成してあるので、シリンダブロック１とシリンダヘッド４間のシール性をよ り一層向上することが可能となる。 更にまた、ストッパー部１７を比較的軟質な合成樹脂材料を含む材料で構成し た場合には、ストッパー部１７に対応するゴムコーティング層１８の剥離を防止 することが可能となり、しかもゴムコーティング層１８が剥離した場合でも、ス トッパー部１７により充分なシール性を確保することが可能となる。

【００２１】 次に、前記メタルガスケット１０の構成を部分的に変更した変形例について説 明する。尚、前記実施例とを同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省 略する。 １） 図５に示すように、前記メタルガスケット１０を用いて、積層メタルガス ケットを構成することが可能である。即ち、（ａ）に示すように、前記メタルガ スケット１０の上側に副板２０を設けてもよいし、（ｂ）に示すように、前記メ タルガスケット１０の上側に副板２０を設け、更にその上側にビード２２を上方 へ突出させたビード板２１を設けてもよいし、（ｃ）に示すように、上下を反転 させた前記メタルガスケット１０の上側に副板２０を設け、副板２０の上側にビ ード２２を上方へ突出させたビード板２１設けてもよいし、（ｄ）に示すように 、前記メタルガスケット１０の上側に副板２０を設け、副板の上側にビード２２ を下方へ突出させたビード板２１を設けてもよいし、（ｅ）に示すように、上下 を反転させた前記メタルガスケット１０の上下両側に副板２０を設けてもよいし 、（ｆ）に示すように、上下を反転させた前記メタルガスケット１０の上下両側 に副板２０を設け、下側の副板２０の下側にビード２２を下方へ突出させたビー ド板２１を設け、このビード板２１の下側に副板２０を設けてもよい。但し、前 記メタルガスケット１０を用いて、前記以外の積層メタルガスケットを構成する ことも可能である。

【００２２】 ２） 図６に示す積層メタルガスケット３０のように、前記ビード板１１の副ビ ード１５を省略したビード板３１を設け、ビード板３１の開口部１２の周縁とビ ード１３間に平坦な環状延設部３２を形成し、ビード板３１の上側に重ね合わさ れる副板３３を設け、環状延設部３２に対向する副板３３の部分に環状受部３４ を形成し、環状受部３４に開口部１２と同心状に３つの副ビード３５（これが係 止部に相当する）を形成し、この副ビード３５を含むように前記実施例と同様の 素材からなる耐熱性及び耐圧縮性を有する充填材料を肉盛りして、環状受部３４ の全周に亙って肉盛部３６を形成し、環状受部３４と肉盛部３６とでビード１３ の異常変位を規制するストッパー部３７を構成してもよい。

【００２３】 また、前記副板３３を用いて、図７に示すような構成の積層メタルガスケット を作成することが可能である。即ち、（ａ）に示すように、副板３３の上下にビ ード１３を上方へ突出させたビード板３１を設けてもよいし、（ｂ）に示すよう に、副板３３の上下にビード板３１を設け、上側のビード板３１のビード１３を 上方へ突出させ、下側のビード板３１のビード１３を下方へ突出させてもよいし 、（ｃ）副板３３の上下にビード板３１を設け、上側のビード板３１のビード１ ３を下方へ突出させ、下側のビード板３１のビード１３を上方へ突出させてもよ いし、（ｄ）に示すように、副板３３の上側にビード１３を下方へ突出させたビ ード板３１を設け、ビード板３１の上側にストッパー部３７を有しない副板３８ を設けてもよいし、（ｅ）に示すように、副板３３の上下両側に下方へ向けてビ ード１３を突出させたビード板３１を設け、両ビード板３１の上下両側にストッ パー部３７を有しない副板３８を設けてもよい。但し、前記副板３３を用いて、 前記以外の積層メタルガスケットを構成することも可能である。

【００２４】 ３） 図８に示すように、前記副ビード１５、３５に代えて、ビード板１１の環 状延設部１４又は副板３３の環状受部３４に開口部１２と同心状に１つの副ビー ド４０を設け、この副ビード４０の下面側に前記実施例と同様の充填材料を肉盛 りした肉盛部４１を形成し、副ビード４０が形成された環状延設部１４又は環状 受部３４と肉盛部４１とでビード１３の異常変位を規制するストッパー部４２を 形成してもよい。この場合には、環状延設部１４又は環状受部３４に対する肉盛 部４１の取付強度、特に横方向に対する取付強度が向上する。

【００２５】 ４） 図９・図１０に示すように、前記ビード板１１の環状延設部１４又は副板 ３３の環状受部３４を平坦に構成し、環状延設部１４又は環状受部３４の上面に プレス成形などにより複数の凹部４５を所定間隔おきに形成し、凹部４５を含む 環状延設部１４又は環状受部３４の上面にその全周に亙って前記実施例と同様の 充填材料を肉盛りした肉盛部４６を形成し、凹部４５が形成された環状延設部１ ４又は環状受部３４と肉盛部４６とでビード１３の異常変位を規制するストッパ ー部４７を形成してもよい。この場合、プレス成形するときに、凹部４５の外側 に上方へ突出した環状凸部４８が形成されるので、凹部４５と環状凸部４８によ る係止作用で、環状延設部１４又は環状受部３４に対する肉盛部４６の取付強度 、特に横方向に対する取付強度が向上する。

【００２６】 ５） 前記環状延設部１４又は環状受部３４に複数の貫通孔（これが係止部に相 当する）を設け、貫通孔を含むように環状延設部１４又は環状受部３４に前記実 施例と同様の充填材料を肉盛りして肉盛部を形成してもよい。また、前記貫通孔 と副ビード１５、３５、４０との組み合わせや、貫通孔と凹部４５との組み合わ せにより係止部を形成することも可能である。

【００２７】 ６） 本実施例では、前記ストッパー部１７、３７、４２、４７の厚さ及び幅を その全周に亙って同じに設定したが、図４・図６・図８・図１０に実線及び仮想 線で示すように、ストッパー部１７、３７、４２、４７の厚さをボルト締結部側 へ行くにしたがって肉厚Ｔ２から肉厚Ｔ１に滑らかに変化するように構成しても よいし、ストッパー部１７、３７、４２、４７の幅をボルト締結部側へ行くにし たがって幅広に構成してもよいし、ビード板１１又は副板３３のうちの図１１に 斜線で示すボルト締結部付近の範囲Ａにのみ肉盛部１６、３６、４１、４６を形 成してもよい。この場合には、ストッパー部１７、３７、４２、４７或いはそれ に対応するビード板１１や副板３３のシリンダブロック１に対する面圧を、シリ ンダ孔２の開口周縁部の全周に亙って一様に設定することが可能となり、上死点 付近におけるシリンダ孔２の真円度を向上することが可能となり。上死点付近に おけるシリンダ孔２とピストンリング６間のシール性を充分に確保して、エンジ ン性能を向上出来るとともに、オイル消費量を低減出来る。

【００２８】 ７） 図１２に示すように、前記環状延設部１４或いは環状受部３４に副ビード １５、３５、４０や凹部４５を形成する前に、予め機械加工や薬品処理などによ り粗面化処理部５０を形成してもよい。この粗面化処理部５０には、（ａ）に示 すように、機械加工により編み目状の溝５０ａを形成したり、（ｂ）に示すよう に、機械加工により同心状に多数の溝５０ｂを形成したり、（ｃ）に示すように 、薬品処理などにより微細な凹凸５０ｃを形成することになる。

【００２９】 尚、本実施例では、Ｖ型６気筒エンジンのシリンダブロック１とシリンダヘッ ド４に装着されるメタルガスケット１０、３０に本考案を適用したが、６気筒以 外のＶ型多気筒エンジンや単気筒エンジンや直列多気筒エンジンに対しても本考 案を同様に適用することが可能である。また、エンジン以外のエアポンプなどに 対しても本考案を同様に適用することが可能である。

【００３０】

【考案の効果】

前記作用の項で詳細に説明したように、次のような効果が得られる。 請求項１に係るメタルガスケットによれば、充填材料を肉盛りするという簡単 な作業でストッパー部を容易に作成出来ること、ビード板に対する肉盛部の密着 性が高くなり且つビード板と肉盛部との接合面積が大きくなり且つ肉盛部が係止 部で係止されることにより、ビード板に対する肉盛部の取付け強度が向上し、ス トッパー部の脱落や破損が効果的に防止されること、などの効果が得られる。

【００３１】 請求項２に係るメタルガスケットによれば、充填材料を肉盛りするという簡単 な作業でストッパー部を容易に作成出来ること、副板に対する肉盛部の密着性が 高くなり且つ副板と肉盛部との接合面積が大きくなり且つ肉盛部が係止部で係止 されることにより、副板に対する肉盛部の取付け強度が向上し、ストッパー部の 脱落や破損が効果的に防止されること、などの効果が得られる。

【００３２】 請求項３及び請求項４に係るメタルガスケットによれば、環状延設部又は環状 受部に開口部と同心状の副ビードを形成したり、環状延設部又は環状受部に複数 の凹部を形成し、副ビードや複数の凹部を含むように充填材料を肉盛りしてスト ッパー部を形成してあるので、ビード板や副板に対するストッパー部の取り付け 強度、特に半径方向への荷重に対する取付け強度を格段に向上出来る。

【００３３】 請求項５及び請求項６に係るメタルガスケットによれば、ストッパー部をシリ ンダヘッドのボルト締結部側へ行くにしたがって幅広に構成したり、シリンダヘ ッドのボルト締結部側へ行くにしたがって薄肉に構成してあるので、ストッパー 部のシリンダブロックに対する面圧を、シリンダ孔の開口周縁部の全周に亙って 一様に設定することが可能となり、上死点付近におけるシリンダ孔の真円度を向 上することが可能となる。このように、シリンダ孔の真円度を向上出来るので、 上死点付近におけるシリンダ孔とピストンリング間のシール性を充分に確保して 、エンジン性能を向上出来るとともに、オイル消費量を低減出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 シリンダブロックの斜視図

【図２】 エンジンのメタルガスケット付近の要部縦断
面図

【図３】 メタルガスケットの要部平面図

【図４】 図３のIV−IV線断面図

【図５】 積層メタルガスケットの説明図

【図６】 副板にストッパー部を形成した積層メタルガ
スケットの図４相当図

【図７】 副板にストッパー部を形成した積層メタルガ
スケットの説明図

【図８】 ストッパー部の構成を変更したビード板又は
副板の開口部付近の縦断面図

【図９】 ストッパー部の構成を変更した別のビード板
又は副板の開口部付近の要部斜視図

【図１０】 ストッパー部の構成を変更した別のビード
板又は副板の開口部付近の縦断面図

【図１１】 肉盛部の作成範囲を示す説明図

【図１２】 粗面化処理部を作成した場合におけるビー
ド板又は副板の環状延設部又は環状受部付近の要部斜視
図

【符号の説明】

１ シリンダブロック １Ａ バンク １Ｂ バンク ２ シリンダ孔 ３ ボルト孔 ４ シリンダヘッド ５ ピストン ６ ピストンリング ７ 燃焼室 １０ メタルガスケット １１ ビード板 １２ 開口部 １３ ビード １４ 環状延設部 １５ 副ビード １６ 肉盛部 １７ ストッパー部 １８ ゴムコーティング層 ２０ 副板 ２１ ビード板 ２２ ビード ３０ 積層メタルガスケット ３１ ビード板 ３２ 環状延設部 ３３ 副板 ３４ 環状受部 ３５ 副ビード ３６ 肉盛部 ３７ ストッパー部 ３８ 副板 ４０ 副ビード ４１ 肉盛部 ４２ ストッパー部 ４５ 凹部 ４６ 肉盛部 ４７ ストッパー部 ４８ 環状凸部 ５０ 粗面化処理部 ５０ａ 溝 ５０ｂ 溝 ５０ｃ 凹凸

Claims (6)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジンのシリンダ孔に対応させて開口
   部を形成し、開口部の周縁部付近に環状のビードを形成
   し、開口部の周縁とビード間に環状延設部を形成した弾
   性金属板からなるビード板を備えたメタルガスケットで
   あって、 前記環状延設部に凹部、凸部、貫通孔のうちの１種又は
   ２種以上からなる係止部を形成し、 前記環状延設部に係止部を含むように耐熱性及び耐圧縮
   性を有する充填材料を肉盛りした肉盛部を形成し、 前記環状延設部と肉盛部とでビードの異常変位を規制す
   るストッパー部を形成した、 ことを特徴とするメタルガスケット。
2. 【請求項２】 エンジンのシリンダ孔に対応させて開口
   部を形成し、開口部の周縁部付近に環状のビードを形成
   し、開口部の周縁とビード間に環状延設部を形成した弾
   性金属板からなるビード板と、エンジンのシリンダ孔に
   対応させて開口部を形成し、ビード板の環状延設部に対
   応する位置に環状受部を形成したビード板に重ね合わさ
   れる副板とを備えたメタルガスケットであって、 前記環状受部に凹部、凸部、貫通孔のうちの１種又は２
   種以上からなる係止部を形成し、 前記環状受部に係止部を含むように耐熱性及び耐圧縮性
   を有する充填材料を肉盛りした肉盛部を形成し、 前記環状受部と肉盛部とでビードの異常変位を規制する
   ストッパー部を形成した、 ことを特徴とするメタルガスケット。
3. 【請求項３】 前記係止部が開口部と同心状の副ビード
   からなることを特徴とする請求項１に記載のメタルガス
   ケット。
4. 【請求項４】 前記係止部が多数の凹部からなることを
   特徴とする請求項１又は２に記載のメタルガスケット。
   メタルガスケット。
5. 【請求項５】 前記ストッパー部をシリンダヘッドのボ
   ルト締結部側へ行くにしたがって薄肉に構成したことを
   特徴とする請求項１、２、３又は４に記載のメタルガス
   ケット。
6. 【請求項６】 前記ストッパー部をシリンダヘッドのボ
   ルト締結部側へ行くにしたがって幅広に構成したことを
   特徴とする請求項１、２、３、４又は５に記載のメタル
   ガスケット。