JPWO2002023219A1 - シンチレータパネル、放射線イメージセンサおよびそれらの製造方法 - Google Patents

シンチレータパネル、放射線イメージセンサおよびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

シンチレータパネル1は、耐熱性を有する放射線透過基板5と、放射線透過基板5上に形成された光反射膜としての誘電体多層膜ミラー6と、誘電体多層膜ミラー6上に形成され、放射線透過基板5に入射され誘電体多層膜ミラー6を通過した放射線30を光に変換して発生させるシンチレータ10とを備えている。放射線透過基板5は耐熱性を有するので、誘電体多層膜ミラー6は高温での蒸着が可能であり、その結果光反射率の高い状態で形成される。また、誘電体多層膜ミラー6は金属膜のようにシンチレータ10と反応して腐食することはない。

Description

技術分野
本発明は、医療用の放射線撮影等に用いられるシンチレータパネル、これを用いた放射線イメージセンサおよびそれらの製造方法に関する。
背景技術
放射線を電気信号に変換し信号の電気的な処理を可能にする放射線イメージセンサは、医療や工業用として広く利用されている。取得した電気信号は電気的に処理してモニタ上に表示することが可能である。このような放射線イメージセンサの代表的なものとして、放射線を光に変換するシンチレータ材料を使用した放射線イメージセンサがある。この放射線イメージセンサでは、変換された光をさらに電気信号に変換するための撮像素子が組み合わされている。撮像素子には例えばMOS型のイメージセンサなどが使用される。医療分野あるいは非破壊検査(そのうち、特にマイクロフォーカスX線源等を用いる検査)においては放射線の照射線量が限られるため、限られた照射線量でも高い光出力を出せる感度の高い放射線イメージセンサが望まれている。
図9は、WO99/66345号公報(以下、従来技術1と呼ぶ。)に記載されている放射線イメージセンサの縦断面図である。この放射線イメージセンサ4は、基板50と、基板50上に形成された光反射膜60と、光反射膜60上に形成されたシンチレータ10とから構成されるシンチレータパネル8に対し、撮像素子20がシンチレータ10に対向配置された状態で組み合わされて形成されている。放射線30は基板50側より入射して光反射膜60を通過し、シンチレータ10で光に変換される。変換された光は撮像素子20により受光され電気信号へ変換される。光反射膜60はシンチレータ10で発生した光を反射してシンチレータ10側へと返し、撮像素子20の受光部に入射する光の量を増加させるという機能を有する。光反射膜60には、主にアルミニウムなどの金属膜が使用される。
図10は、特開平5−196742公報(以下、従来技術2と呼ぶ。)に記載されている放射線イメージング装置の縦断面図である。この放射線イメージング装置3は、基板51と、基板51上に配置された撮像素子としての光検出器21と、光検出器21上に形成されたシンチレータ10と、シンチレータ10上に設けられた薄膜41と、薄膜41上に形成された光反射膜70と、光反射膜70上に形成された水分シール層42とを備えている。放射線30は水分シール層42側より入射する。シンチレータ10を固定支持する基体として光検出器21が使用され、光反射膜70は薄膜41を介してシンチレータ10の上に形成されている点で、配置構成は、従来技術1とは大きく異なる。薄膜41は、有機材料又は無機材料からなり、シンチレータ10上の凹凸を吸収し光反射膜70の反射率を均一にする。光反射膜70として、互いに光屈折率が異なるTiO及びSiOなどから構成される誘電体多層膜を使用してもよいことが記されている。
発明の開示
このような従来の放射線イメージセンサには、次のような問題があった。従来技術1では光反射膜60として金属膜が使用されるが、この金属膜60はシンチレータ10と反応して腐食することが多い。特にシンチレータ10としてCsI(Tl)を使用した場合にはこの腐食は顕著であった。
従来技術2では光反射膜70として誘電体多層膜が使用されているが、シンチレータ10は一本の径が数μm〜数十μm程度の微小な柱状結晶が複数林立した構造であるため表面に微細な凹凸が存在するが、こうした凹凸面上に誘電体多層膜70を直接形成することは困難なため、この凹凸を平坦化するための薄膜41を介在させている。誘電体多層膜70を高反射率を備えた状態で形成するには、それが形成される基体を300℃程度に加熱して蒸着する必要があるが、この薄膜41が有機膜の場合には、高温をかけること自体困難である。300℃以下の温度で多層膜を形成することも可能であるが、形成される膜厚の制御が難しいうえ、誘電体多層膜70が着色した状態で形成されてしまうといった不具合が生じ、反射率が下がり、光出力が低下する結果になる。また、無機膜で薄膜41を形成しようとしても、無機膜ではシンチレータ上に多層膜を形成するための平坦な面を形成することが困難で、その結果、誘電体多層膜の表面(反射面)に凹凸が生じて高い反射率を持たせることができない。
そこで、本発明は、耐腐食性に優れると共に高い光出力を出せるシンチレータパネル及び放射線イメージセンサ、それらの製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明に係るシンチレータパネルは、耐熱性基板と、この耐熱性基板上に堆積された誘電体多層膜ミラーと、誘電体多層膜ミラー上に柱状構造をなして複数配列して堆積され、入射された放射線を光に変換して放射するシンチレータと、少なくともこのシンチレータを被覆する保護膜とを備えており、誘電体多層膜ミラーはシンチレータから放射された光を反射してシンチレータ側へ返すことを特徴とする。
誘電体多層膜ミラーは耐熱性基板上に形成されるため、シンチレータ上に形成される場合に必要な反射率を均一にするための薄膜など(シンチレータ上の凹凸を吸収する膜)を必要としない。そして、基板が耐熱性を有することから、高温での蒸着を行うことができ、反射率の高い誘電体多層膜ミラーを形成することができる。
さらに、基板は放射線透過基板であって、シンチレータは誘電体多層膜ミラーを通過した放射線を光に変換して発生させるものであってもよい。この場合、例えば、シンチレータは、CsI又はNaIを主成分とすることが好ましい。また、シンチレータは、輝尽性蛍光体から構成してもよい。
保護膜は有機膜であることが望ましい。この場合、保護膜を高温で形成する必要がないため、その形成が容易になる。
誘電体多層膜ミラーはTiOあるいはTaとSiOとが交互に複数回繰り返して積層された多層膜が好ましい。これは、TiOあるいはTaとSiOの場合、金属反射膜のようにシンチレータと反応して腐食することがなく、幅広い波長領域で良好な反射特性が得られるためである。
誘電体多層膜ミラーとシンチレータとの間には、シンチレータが誘電体多層膜ミラーから剥離するのを防止する剥離防止層が形成されることが好ましい。剥離防止層はポリイミド層であってもよい。
また、本発明による放射線イメージセンサは、上記のシンチレータパネルと、シンチレータパネルに対向して配置されシンチレータにより発生した光を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。これにより、耐腐食性に優れ高反射率を有するシンチレータパネルを備えた放射線イメージセンサを実現し、このシンチレータパネルにより生成された光を電気的に処理して、モニタなどで表示することが可能となる。
さらに、シンチレータパネルを被覆する光吸収性のハウジングを備えることで、誘電体多層膜ミラーを通過した光が散乱することによる迷光の発生や外乱光の入射によるノイズの発生を抑制でき、高S/N比、高解像度を達成することができる。このハウジングはポリカーボネート製が好ましく、内面に艶消し処理がされていてもよい。
さらに、シンチレータパネルを撮像素子に固定ジグで密着させると光漏れ、クロストークの発生を抑制することができ、さらに好ましい。
本発明に係るシンチレータパネルの製造方法は、耐熱性基板を用意し、この基板上に所望の厚さの誘電体膜を繰り返し堆積させ、所定の反射特性を有する誘電体多層膜ミラーを形成し、誘電体多層膜ミラー上に、柱状構造のシンチレータを堆積させ、シンチレータを保護膜で被覆する各工程を備えている。
そして、本発明に係る放射線イメージセンサの製造方法は、上記工程で製造されるシンチレータに対向させて撮像素子を配置する工程をさらに備えている。シンチレータパネルを光吸収性のハウジングで被覆する工程をさらに備えていてもよい。
これらの製造方法によって上述した本発明に係るシンチレータパネルや放射線イメージセンサを好適に製造することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明に係るシンチレータパネルの第1の実施形態を示す縦断面図である。シンチレータパネル1は、耐熱性を有する放射線透過基板としてのパイレックスガラス基板5と、パイレックスガラス基板5上に形成された誘電体多層膜ミラー6と、誘電体多層膜ミラー6上に形成された剥離防止層としてのポリイミド層7と、ポリイミド層7上に形成され、パイレックスガラス基板5に入射され誘電体多層膜ミラー6及び剥離防止層7を通過した放射線30を光に変換して発生させるシンチレータ10とを備えている。シンチレータ10は、1本の径が数μm〜数十μm程度の微小な柱状結晶が複数林立した構造を有する。これら全体は保護膜としてのポリパラキシリレン膜12で被覆される。パイレックスガラス基板5と誘電体多層膜ミラー6との間には、SiNのような薄い層が設けられてもよい。この薄い層は、ガラス基板表面を均一な清浄表面とすることに役立つ。誘電体多層膜ミラー6には、例えば、互いに光屈折率が異なるTiOとSiOとが交互に複数回繰り返して積層された多層膜が使用され、シンチレータ10で発生した光を反射し増幅する光反射膜として作用する。シンチレータ10には例えば、TlドープのCsIが使用される。
柱状結晶が複数林立した構造を有するシンチレータを形成する場合、シンチレータを固定支持する基体が必要となるが、本実施形態では、シンチレータ10を固定支持する基体としてパイレックスガラス基板5が使用されている。撮像素子を基体としてシンチレータ10を形成することも可能であるが、この場合、撮像素子は、シンチレータ10を形成する際、さらには誘電体多層膜ミラー6を形成する際に熱を繰り返し受けることになり、ダメージが与えられる結果となる。本実施形態では、シンチレータ10はパイレックスガラス基板5に対して形成されるため、このような不具合は解消されている。また、このパイレックスガラス基板5は耐熱性を有するため300℃近い高温での蒸着が可能で、これにより、誘電体多層膜ミラー6は反射率の高い状態に形成することが可能となっている。
また、誘電体多層膜は耐腐食性に優れるため、金属膜のようにシンチレータ10と反応して腐食するということがない。金属膜の場合の腐食は、シンチレータパネル内部に侵入した水分を介してCsI中のTlが金属膜を侵すと考えられ、水分をパネル内部に入り込ませないように構造を工夫する必要があったが、本実施形態では耐腐食性の強い誘電体多層膜ミラー6を使用しているため、この必要性がなくなっている。
さらに、誘電体多層膜ミラー6とシンチレータ10との間には剥離防止層としてのポリイミド層7が設けられているため、シンチレータ10の厚みを増すと(特に400μm以上)発生する虞のあるシンチレータ10の誘電体多層膜6からの剥離が防止されている。
次に、このシンチレータパネル1の製造工程について述べる。まず、放射線透過基板5として20cm角0.5mm厚のパイレックスガラス基板5を準備する(図2A参照)。し、このパイレックス基板5上にTiO、6…641及びSiO、6…642を真空蒸着法で交互に繰り返し積層し(図2B、図2C参照)、合計42層(合計約4μm)からなる誘電体多層膜ミラー6を成膜する(図2D参照)。各膜厚を制御することで誘電体多層膜ミラー6全体として所定の波長域に対して所定の反射率を確保することが可能である。
放射線透過基板5としては、パイレックスガラス基板の他、アモルファスカーボン板あるいはアルミニウム板でもよい。アルミニウム板の場合は、ガラスビーズ(#1500)を用いてサンドブラスト処理を施し、アルミニウム表面の圧延筋を取り除いた後、誘電体多層膜ミラー6を成膜する。誘電体多層膜ミラー6上には、剥離防止層7として透明度の高いポリイミド層(例 日産化学製 型名RN−812)をスピンコートで硬化後、膜厚で1μmコートする(図2E参照)。その後、ポリイミド層7上に、シンチレータ10として厚さ300μmのCsIの柱状結晶を蒸着法により形成する(図2F参照)。そして、CsI表面の異物、異常成長部を平坦にするため、CsI表面にガラス板を載せ、1気圧の力で圧力をかける。最後に、CVD法により、保護膜として厚さ10μmのポリパラキシリレン膜12を形成して全体を覆い、図1に示されるシンチレータパネル1が形成される。
なお、30cm角以上の大面積を有するシンチレータパネル1を形成する場合には、形成するポリイミド層7の厚さを1μmとし、コートする方法としてスクリーン印刷法を採用する。また、大型化に伴い輝度を向上させるためシンチレータ10の厚さも500μmとする。
図3は、本発明に係る放射線イメージセンサ2の縦断面図である。この放射線イメージセンサ2は、図1に示されたシンチレータパネル1のシンチレータ10に対して、撮像素子20を対向配置した状態で組み合わせることで構成されている。撮像素子20はシンチレータ10により発生した光を電気信号に変換するものである。撮像素子20としては、例えば、2次元的に配列されたSiフォトダイオードを有するMOS型のイメージセンサが使用される。
図4は、この放射線イメージセンサ2の動作を説明する拡大断面図である。被写体32によって遮光されないあるいは透過した放射線30はポリパラキシリレン膜12、パイレックスガラス基板5、誘電体多層膜ミラー6、ポリイミド層7を通過してシンチレータ10へ入射する。シンチレータ10は入射した放射線30を光へ変換し放射する。シンチレータ10から放射される光には誘電体多層膜ミラー6側へと向かうものもあり、この光は誘電体多層膜ミラー6により反射されシンチレータ10へと返される。従って発生した光のほとんどが撮像素子20へと向かい受光される。撮像素子20は受光した光画像情報を電気信号へと変換して出力する。こうして出力された電気信号は画像信号としてモニタなどに送られ表示されるが、この画像は、放射線イメージセンサ2に入射した放射線画像がシンチレータ10で光画像に変換され、撮像素子20で電気画像信号に変換されたものであるから入射した被写体32の放射線画像に相当するものである。
前述したように、本実施形態による誘電体多層膜ミラー6は高反射率をもっため、この誘電体多層膜ミラー6が使用されたシンチレータパネル1及び放射線イメージセンサ2は高い光出力を有する。
このようにして作成したシンチレータパネル1を有する放射線イメージセンサ2の放射線30に対する感度及び耐腐食性を評価するため、本発明の実施例としてのサンプル3個(それぞれ実施例1〜3と呼ぶ。)と、従来型の放射線イメージセンサとしてのサンプル2個(それぞれ従来例1、2と呼ぶ。)をそれぞれ構成を変えて作成した。表1は、これらのサンプル構成を示す。
Figure 2002023219
なお、いずれのサンプルについても、シンチレータとしてはCsIを、保護膜としてはポリパラキシリレン膜を、撮像素子としてはC−MOSを使用した。
放射線30に対する感度を評価するための試験として、これらの各サンプルに一定量の放射線30を照射しそれによる光出力値を計測した。耐腐食性を評価するための試験としては、各サンプルにおいて撮像素子20を取り除いたシンチレータパネル単体の状態で数日間にわたる放置試験を行った。表2に、これらの試験結果を示す。光出力値は従来例1を100%としたときの相対値として示されている。
Figure 2002023219
実施例1〜3の光出力値は何れも、光反射膜としてアルミニウム膜を使用した従来例1よりも高く、銀膜を使用した従来例2と同程度の光出力値であった。耐腐食性試験については、金属膜を使用した従来例1、2では1〜2日で腐食したのに対し、誘電体多層膜ミラー6を使用した実施例1〜3では変化が見られなかった。
また剥離防止層7の効果を確認するため以下の試験をおこなった。サンプルとして、まずパイレックスガラス製(PX)の50mm角1mm厚の基板に誘電体多層膜ミラーを27層成膜したものを10個作成する。次に、それぞれのサンプルに対し誘電体多層膜ミラー6上に剥離防止層としてポリイミド層7をコートしたものとしないものを5個ずつ作成し、それら全てに対しシンチレータCsIを堆積する。CsIは5段階に厚さを変えてそれぞれ10枚堆積した。そして、その結果CsIの剥離が起こるサンプルの枚数を調査した。
Figure 2002023219
表3に端的に示されるように、誘電体多層膜ミラー6にポリイミド層7を使用しない構成のサンプルの場合、CsIの厚さが400μmを超えた時点で剥離し始めたのに対し、ポリイミド層7を使用したサンプルの場合、CsIの剥離は見られなかった。さらに、この試験により、このポリイミド層7はシンチレータ10がCaI(Tl)やNaI(Tl)のようにTlがドープされている場合、シンチレータ蒸着形成時、Tlが誘電体多層膜ミラー6にわずかながら拡散し着色してしまうという不具合を同時に防止できることが判明した。
このように、上記試験結果より、本実施形態のシンチレータパネル1及び放射線イメージセンサ2は、高い光出力を出し、耐腐食性に優れ、またシンチレータの剥離防止効果もあることが確認された。
以下、本発明に係るシンチレータパネルおよび放射線イメージセンサのその他の実施形態について詳細に説明する。
図5は、本発明に係るシンチレータパネルの第2の実施形態を示す縦断面図である。このシンチレータパネル1aは、図1に示される第1の実施形態のシンチレータパネル1とほぼ同様の構成を有する。ただし、可視光から紫外線域までの光に対して高い反射率を有するTa/SiOを積層した誘電体多層膜ミラー6aを使用している点と、CsBr:Eu等のいわゆる輝尽性蛍光体をシンチレータ10aとして使用している点が相違する。
このシンチレータパネル1aは、図1に示されるシンチレータパネル1と異なり、シンチレータ10a側から放射線30を照射して使用する。こうして入射する放射線によってシンチレータ10aは励起される。その後、図6に示されるように、He−Neレーザビーム34をシンチレータ10aにスキャン照射することで、照射された放射線30量に応じた光がシンチレータ10aから放射される。この放射される光を光検出器22により検出して電気信号に変換することで、放射線画像に相当する画像信号を取り出すことができる。
このようにシンチレータ6aとして輝尽性蛍光体を使用することで、放射線イメージを一時的に蓄積し、レーザビーム走査によってこれを読み出すことで、大面積の撮像素子を用意する必要がなくなり、胸部撮影などの大面積の放射線画像取得が容易になる。
輝尽性蛍光体としては、上記のCsBr:Euのほか、日本特許第3130633号公報に開示されているような各種の蛍光体を利用することができる。また、誘電体多層膜ミラーとしては、第1の実施形態に用いたTiO/SiO積層体やHFO/SiO積層体等を使用することができる。
図7は、本発明に係る放射線イメージセンサの第2の実施形態を示す縦断面図である。この放射線イメージセンサ2aは、図3に示される放射線イメージセンサ2に、さらにシンチレータパネル1全体を被覆するハウジング25を備えたものである。ハウジング25は放射線透過性であり、全体を保護し外部からの光を遮光する材質の素材、例えば、黒色のポリカーボネート製である。これにより、シンチレータ10で発生して誘電体多層膜ミラー6及びパイレックスガラス基板5を透過した光がハウジング25によって吸収され、再びシンチレータ10側の発光箇所とは別の位置に戻るのを抑制することができ、このような迷光による解像度の劣化を抑制することができる。また、外部からのノイズとなる外乱光の入射も抑制することができ、高いS/N比を維持できる。
また、このハウジング25は、シンチレータパネル1のパイレックスガラス基板5に対し圧接した状態に設けられており、この圧接作用によりシンチレータパネル1は撮像素子20に対しより密着する。これにより、シンチレータ10で発生した光を撮像素子20で認識する際、光漏れ、クロストークなどが発生するのを防止することができる。この密着性を高めるために、パイレックスガラス基板5とハウジング25との間にスポンジなどの弾性体を入れてもよい。
上述したように、シンチレータパネル1の基板としてガラスを使用すると、薄くできかつ撓まないシンチレータパネルが形成できるという利点がある。また、光反射膜として誘電体多層膜を使用すると、耐腐食性に優れかつ高反射率を備えた光反射膜を形成できるという利点がある。これら双方を取り入れたシンチレータパネルを形成した場合、コントラストを低下させる要因となる透過光が発生するが、本実施形態では、さらに光吸収性を有するハウジング25を設けることによりこの透過光を吸収させ、これら双方の利点を生かしかつ不具合を解消している。
図8は、本発明に係る放射線イメージセンサの第3の実施形態を示す縦断面図である。この実施形態(放射線イメージセンサ2b)では、撮像素子20は、駆動・読み出し回路が搭載されたセンサ基板22上に固定されており、シンチレータパネル1が固定ジグ23によってセンサ基板22に固定されることで、撮像素子20に密着固定されており、全体が黒色ポリカーボネート製のハウジング25aによって覆われている。固定ジグ23とハウジング25aの協働により、シンチレータパネル1は撮像素子20に密着するため、シンチレータ10で発生した光を撮像素子20で認識する際、光漏れ、クロストークなどが発生するのを防止することができる。尚、図ではガラス基板5とハウジング25aとの間には空間があるが、これらは密着していても良い。この構造により、パイレックスガラス基板5を通過した後にハウジング25内で反射して再度パイレックスガラス基板5へと入光し、コントラスト低下など光出力に悪影響を与えるような光の発生を抑制することができ、解像度やS/N比の低下を抑制できる。
ハウジング25、25aとしては、ハウジング自体を光吸収性部材とするほかに、パイレックスガラス基板5に接触する内側の面に対し、艷消し処理を行ったもの、光吸収性塗料を塗布したもの、また光吸収部材を貼り付けたものでもよい。
このようなハウジングを有する放射線イメージセンサのコントラスト比を評価するため、本発明の実施例としてのサンプル(実施例Aと呼ぶ)と、従来型の放射線イメージセンサとしてのサンプル(比較例Bと呼ぶ)をそれぞれ構成を変えて作成した。実施例A、比較例Bともに、ハウジングの有無以外の構成は同一であって、パイレックスガラス上に誘電体多層膜ミラーを形成し、その上にCsIからなるシンチレータを配置し、ポリパラキシリレン膜を保護膜として、撮像素子としてC−MOS型の撮像素子を用いている点が共通している。
コントラスト比を測定するための試験として、直径3cm、厚さ0.5mmの鉛製の被写体をハウジング上に配置して放射線を照射し、鉛で隠れた部分及び放射線に露呈している部分に対し、放射線イメージセンサが取得した信号値をそれぞれの場合について測定し、比率として算出した。その結果、実施例Aでは、比較例Bよりコントラストが10%向上し、より明瞭な像を取得することができた。
このように、上記試験結果より、本実施形態の放射線イメージセンサが明瞭なコントラストをもつ像を取得できることが確認された。
以上の本発明の説明から、本発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
産業上の利用可能性
本発明に係るシンチレータパネル、放射線イメージセンサは、胸部撮影などの医療用あるいは非破壊検査等の工業用途において好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係るシンチレータパネルの第1の実施形態の縦断面図である。
図2A〜図2Fは、図1のシンチレータパネルの製造工程を説明する図である。
図3は、本発明に係る放射線イメージセンサの第1の実施形態を示す縦断面図である。
図4は、図3の放射線イメージセンサの動作を説明する拡大断面図である。
図5、図6は、本発明に係るシンチレータパネルの第2の実施形態を説明する縦断面図である。
図7、図8は、本発明に係る放射線イメージセンサの第2、第3の実施形態を示す縦断面図である。
図9、図10は、従来型の放射線イメージセンサの縦断面図である。

Claims (16)

  1. 耐熱性基板と、
    前記耐熱性基板上に堆積された誘電体多層膜ミラーと、
    前記誘電体多層膜ミラー上に柱状構造をなして複数配列して堆積され、入射された放射線を光に変換して放射するシンチレータと、
    少なくとも前記シンチレータを被覆する保護膜とを備えており、
    前記誘電体多層膜ミラーは前記シンチレータから放射された光を反射して前記シンチレータ側へ返すことを特徴とするシンチレータパネル。
  2. 耐熱性を有する放射線透過基板と、
    前記放射線透過基板上に形成された誘電体多層膜ミラーと、
    前記誘電体多層膜ミラー上に柱状構造を成して複数配列して堆積され、前記放射線透過基板に入射され前記誘電体多層膜ミラーを通過した放射線を光に変換して発生させるシンチレータと、
    少なくとも前記シンチレータを被覆する保護膜とを備え、
    前記誘電体多層膜ミラーは前記シンチレータにより発生した光を反射して前記シンチレータへ返すことを特徴とするシンチレータパネル。
  3. 前記シンチレータは、CsI又はNaIを主成分とする請求項1または2に記載のシンチレータパネル。
  4. 前記シンチレータは、輝尽性蛍光体からなる請求項1記載のシンチレータパネル。
  5. 前記保護膜は有機膜である請求項1〜4のいずれかに記載のシンチレータパネル。
  6. 前記誘電体多層膜ミラーはTiOあるいはTaとSiOとが交互に複数回繰り返して積層された多層膜である請求項1〜5のいずれかに記載のシンチレータパネル。
  7. 前記誘電体多層膜ミラーと前記シンチレータとの間には、前記シンチレータが前記誘電体多層膜ミラーから剥離するのを防止する剥離防止層をさらに備えている請求項1〜6のいずれかに記載のシンチレータパネル。
  8. 前記剥離防止層はポリイミド層である請求項7記載のシンチレータパネル。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のシンチレータパネルと、前記シンチレータパネルに対向して配置され、前記シンチレータから放射される光を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする放射線イメージセンサ。
  10. 前記シンチレータパネルを被覆する光吸収性のハウジングをさらに備えている請求項9記載の放射線イメージセンサ。
  11. 前記ハウジングはポリカーボネート製である請求項10記載の放射線イメージセンサ。
  12. 前記ハウジングの内面に艶消し処理がなされている請求項10または11に記載の放射線イメージセンサ。
  13. 前記シンチレータパネルを前記撮像素子に密着固定させる固定ジグをさらに備えている請求項10〜12のいずれかに記載の放射線イメージセンサ。
  14. 耐熱性基板を用意し、
    前記基板上に所望の厚さの誘電体膜を繰り返し堆積させ、所定の反射特性を有する誘電体多層膜ミラーを形成し、
    前記誘電体多層膜ミラー上に、柱状構造のシンチレータを堆積させ、
    前記シンチレータを保護膜で被覆する
    各工程を備えているシンチレータパネルの製造方法。
  15. 請求項14記載の工程の後に、シンチレータに対向させて撮像素子を配置する工程をさらに備えている放射線イメージセンサの製造方法。
  16. 請求項15記載の工程の後、シンチレータパネルを光吸収性のハウジングで被覆する工程をさらに備えている放射線イメージセンサの製造方法。
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