JPWO2002021572A1 - 薄膜の製造方法、及びその薄膜を有する電球 - Google Patents

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Abstract

電球・放電ランプ等の光源のバルブ表面に光学薄膜を形成する際、回転楕円体形状の基盤に界面・表面荒れの少ない薄膜を形成する。成膜装置の真空室4内に回転軸を中心に自転する回転楕円体基盤2にスパッタリング法によって薄膜を形成する際、ガス圧を0.04〜5.0Paとし、またはスパッタリングガスとしてArガスとN2ガスの混合ガスでその分圧比がArガス100に対してN2ガスが1〜6、またはArガスとN2ガスとO2ガスの混合ガスでその分圧比がArガス100に対してN2ガスが1〜6、O2ガスが6とし、薄膜形成開始時の入力電力がスパッタリングプロセス全体において最大とし、または被着体基盤に負のバイアスをかけることにより、薄膜の界面または表面の荒れを少なくし、膜厚分布を小さくする。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電球・放電ランプ等の光源のバルブ表面に光学薄膜を形成する際に用いる薄膜の製造方法、及びこの薄膜を有する電球に関する。
【0002】
【従来の技術】
白熱電球やハロゲン電球の消費電力の高効率化を図るため、電球バルブの表面に赤外反射膜を形成させ、電球より放射される可視光はそのまま電球バルブを透過させ、放射エネルギーの7〜8割を占める赤外光を選択的に電球フィラメント部分に反射集光させることによって、フィラメントコイル部分を加熱する方法が提案されている(例えば、ジャーナル オブ イルミネイティング エンジニアリング ソサイエティ、1980年7月、197〜203頁)。
【0003】
電球のフィラメントコイルから発光した赤外光が赤外反射膜による赤外光の選択的な反射と、適当なバルブ形状による効果的なフィラメントコイル部への集光とによって、フィラメントコイル部がこの反射された赤外線によって再加熱されることで、電球として同じ明るさ(全光束値)で比較すれば、20〜30%の消費電力の効率化が実用水準で実現されている。
【0004】
このような赤外反射膜の製法としては、スパッタリング法や各種蒸着法などが用いられるが、電球バルブから赤外光が熱線として飛び出す割合を少なくし、且つ又は、可視光のみを選択的に透過してできる限り多くの赤外光の反射を効果的に実現させる為、高屈折率と低屈折率をもつ複数の透明誘電体薄膜の積層構造による干渉性多層膜とした可視/赤外フィルターの光学膜技術が用いられてきた。この際、光学フィルターとしての波長選択性を得る為に、通常、回転楕円体の立体形状を有する電球バルブ表面上に形成される各光学薄膜の膜厚の設計値とのずれや、その膜厚分布は十分に小さなものであることが要求される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような干渉性多層膜では膜厚の正確さとともに、効率的な赤外反射が行われるための膜質が重要となるが、一般的な成膜条件であるスパッタリングガスとしてArガス、またはArガスとOガスの混合ガスを用いてスパッタリング法により成膜すると、形成された薄膜の界面あるいは表面に荒れが生じ、効果的な赤外反射が十分に行われないという問題があった。すなわち、赤外反射膜によって反射された赤外線が干渉性多層膜の界面あるいは表面の荒れによって乱反射し、効果的なフィラメントコイル部への集光ができず、赤外線反射の効率が低下するという問題があった。一方、CVD法は界面あるいは表面の荒れが少ない薄膜を得られやすいものの、膜厚の絶対値の制御が必ずしも十分でないこと、被着体の加熱が避けられないこと、及び積層する異種の薄膜の積層毎に異なった原料ガスや成膜条件が必要なこと等の多くの問題があった。
【0006】
本発明は、前記のような問題を解決するものであり、成膜方法としてスパッタリング法を用いて、回転楕円体形状を含む被着体基盤上に界面あるいは表面荒れの少ない薄膜を形成できる薄膜の製造方法、及びこの薄膜を有する電球を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の第1番目の薄膜の製造方法は、回転楕円体形状を含む基盤上に薄膜を形成する薄膜の製造方法であって、前記回転楕円体軸を中心にしてスピンさせると同時に、ガス圧を0.04Pa以上5.0Pa以下の範囲でスパッタリングすることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2番目の方法は、回転楕円体形状を含む基盤上に薄膜を形成する薄膜の製造方法であって、前記回転楕円体軸を中心にしてスピンさせると同時に、スパッタリングガスをArガスとNガスの混合ガスでその分圧比がArガス100に対してNガスが1〜6の範囲とするか、またはArガスとNガスとOガスの混合ガスでその分圧比がArガス100に対してNガスが1〜6の範囲およびOガスが6以下の範囲とすることを特徴とする。
【0009】
本発明の第3番目の方法は、回転楕円体形状を含む基盤上に薄膜を形成する薄膜の製造方法であって、前記回転楕円体軸を中心にしてスピンさせると同時に、薄膜形成開始時の入力電力がスパッタリングプロセス全体において最大であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4番目の方法は、回転楕円体形状を含む基盤上に薄膜を形成する薄膜の製造方法であって、前記回転楕円体軸を中心にしてスピンさせると同時に、回転楕円体基盤に負バイアスを印加することを特徴とする。
【0011】
前記第1〜4番目の方法においては、回転楕円体基盤が各種ハロゲン電球や白熱電球の電球バルブであることが好ましい。
【0012】
また前記方法においては、スパッタリング法として高周波スパッタリング法を用いることが好ましい。
【0013】
また前記方法においては、薄膜材料として、TaおよびSiOを用いることが好ましい。
【0014】
次に、本発明の電球は、赤外線反射膜の表面粗さRaが、2.9nm以上20.0nm以下であることを特徴とする。
【0015】
また前記電球においては、赤外線反射膜が、スパッタリング法で形成されたものであることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の一例は、スパッタリングガス圧を0.04Paから5.0Paとし、あるいはスパッタリングガスをArガスとNガスの混合ガスでその分圧比がArガス100に対してNガスが1から6、またはArガスとNガスとOガスの混合ガスでその分圧比がArガス100に対してNガスが1から6、Oガスが6までとし、あるいは薄膜形成開始時の入力電力がスパッタリングプロセス全体において最大とし、あるいは被着体基盤に負のバイアスをかけることにより、回転楕円体形状を含む被着体基盤上に形成された薄膜は界面あるいは表面の荒れが少なくなり、また、膜厚分布が小さくなる。
【0017】
以下、実施の具体例について詳細に述べる。図1は、各実施形態で用いた高周波スパッタリング装置を示したもので、高周波電源9を有するスパッタリング膜形成装置の真空室4内に設置された8インチ×36インチのスパッタリングターゲット1(成膜源)に対向して回転楕円体基盤2があり、その間にシャッター5を有する。また、真空室4内に、Arガスを供給するための供給口6、Nガスを供給するための供給口7、Oガスを供給するための供給口8を備えている。また、回転楕円体基盤2に直流電源3によってバイアス電圧を印加できるようになっている。また、成膜中には回転楕円体基盤2は回転楕円体軸Yを中心にしてスピンしている。
【0018】
以下の具体的実施の形態において、ガス比率は体積比率を示す。
【0019】
(実施の形態1)
実施形態1は、高周波スパッタリング法を用いて電球バルブ表面にTa薄膜とSiO薄膜を交互に積層形成した実施形態である。本実施形態では、電球バルブ表面の膜厚分布の不均一を解消させるために、電球バルブを回転楕円体軸Yを中心として一定角速度で回転させる運動を行った。また、スパッタリングガスとしてTa薄膜を形成するときはArガスとOガスの混合ガスを使用し、SiO薄膜を形成するときはArガスのみを使用した。また、薄膜形成開始時は印加する入力電力を0Wとし、徐々に上げていき、1分後に最大入力電力4000Wが印加されるようにした。スパッタリングガス圧をそれぞれ0.03、0.04、0.15、0.4、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0Paとした場合に、形成された膜厚約1000nmの8層積層膜(サンプルNo.1〜9)の表面粗さRaを原子間力顕微鏡(以後AFMという)で測定し、表1に結果を示した。
【0020】
【表1】
Figure 2002021572
【0021】
表1に示した結果から、スパッタリングガス圧を0.4Paとして形成された積層膜3の表面粗さRaが最も小さいことがわかる。Raが20.0nmを超えると反射の際の散乱の影響が大きくなり、赤外反射膜の反射効率が劣化することになるので、ここでは、表面粗さRaが20.0nm以下のものを有効とし、スパッタリングガス圧として0.04から5.0Paで形成された積層膜の効果が確認できた。尚、スパッタリングガス圧が、0.04〜2.0Paの範囲であると好ましい。また、0.04〜1.0Paの範囲であるとさらに好ましい。
【0022】
(実施の形態2)
実施形態1と同様に、高周波スパッタリング法を用いて電球バルブ表面にTa薄膜とSiO薄膜を交互に積層形成した実施形態である。実施形態1と異なるのは、スパッタリングガス圧を0.4Paとし、スパッタリングガスとしてTa薄膜を形成するときにはArガスとNガスとOガスの混合ガスを使用し、SiO薄膜を形成するときにはArガスとNガスの混合ガスを使用した点である。この条件により形成された膜厚約1000nmの8層積層膜10から13の表面粗さRaをAFMで測定し、表2に実施形態1で形成した積層膜3のデータとともに結果を示した。
【0023】
【表2】
Figure 2002021572
【0024】
表2に示した結果から、スパッタリングガスとしてTa薄膜を形成するときには100対3対6の比率のArガスとNガスとOガスの混合ガスを使用し、SiO薄膜を形成するときには100対3の比率のArガスとNガスの混合ガスを使用して形成された積層膜11が最も表面粗さRaが小さいことが分かる。また、ここでは表面粗さRaがスパッタリングガスとしてNガスを混合せずに作成した積層膜3の表面粗さRaよりも小さいものが効果があったとして、スパッタリングガスとしてTa薄膜を形成するときにArガスとNガスとOガスの混合ガスでその比率がArガス100に対してNガスが1から6、Oガスが6までのものを使用し、SiO薄膜を形成するときにはArガスとNガスの混合ガスでその比率がArガス100に対してNガスが1から6のものを使用して形成された積層膜の効果が確認できた。
【0025】
(実施の形態3)
実施形態2と同様に、高周波スパッタリング法を用いて電球バルブ表面にTa薄膜とSiO薄膜を交互に積層形成した実施形態である。実施形態2と異なるのは、薄膜形成開始時の印加する入力電力を4000Wとした点である。この条件により形成された膜厚約1000nmの8層積層膜14の表面粗さRaをAFMで測定し、表3に実施形態2で形成した積層膜11のデータとともに結果を示した。
【0026】
【表3】
Figure 2002021572
【0027】
表3に示した結果から、薄膜形成開始時に4000Wの電力を印加して形成された積層膜14の方が、薄膜形成開始から電力を徐々に上げていって形成された積層膜よりも積層膜の表面粗さRaが小さいことがわかる。
【0028】
(実施の形態4)
実施形態3と同様に、高周波スパッタリング法を用いて電球バルブ表面にTa薄膜とSiO薄膜を交互に積層形成した実施形態である。実施形態3と異なるのは、電球バルブにマイナス20Vのバイアスを印加した点である。この条件により形成された膜厚約1000nmの8層積層膜15の表面粗さRaをAFMで測定し、表4に実施形態3で形成した積層膜14のデータとともに結果を示した。
【0029】
【表4】
Figure 2002021572
【0030】
表4に示した結果から、電球バルブにマイナス20Vのバイアスを印加して形成された積層膜15の方が、バイアスを印加せずに形成された積層膜14よりも積層膜の表面粗さRaが小さいことがわかる。
【0031】
図2は本実施形態で用いた電球バルブ10の平面図であり、図3は電球バルブ(ガラスバルブ)10表面に形成された多層薄膜の拡大断面図を示すものである。本実施形態によれば、ガラスバルブ11表面にはSiO薄膜12とTa薄膜13が交互に積層形成されている。形成された薄膜は、最外層がSiO薄膜12になる場合とTa薄膜13になる場合とがある。
【0032】
前記の方法によれば、電球バルブの表面に形成された薄膜、すなわち赤外線反射膜の表面粗さRaが、2.9nm以上20.0nm以下の電球を実現できる。表面粗さRaが20.0nmを越えると散乱が大きくなり、反射効率が悪くなる。一方、表面粗さが2.9nmより小さいと電球ガラス表面との鏡界面で被着力が弱くなり、膜が剥がれやすくなる。表面粗さは、好ましくは2.9nm以上15nm以下の範囲であり、より好ましくは2.9nm以上10nm以下の範囲である。
【0033】
尚、前記電球としては、特に限定はなく、フィラメントを発光体とするクリプトン電球、ハロゲン電球等の全ての電球が含まれる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の回転楕円体基盤への薄膜の製造方法によって、形成される薄膜の表面粗さRaが小さくなる。このため、赤外反射膜の反射率が向上し、赤外反射膜としての性能の向上が得られる。
【0035】
また、電球の赤外線反射膜の表面粗さRaの範囲を2.9nm以上20.0nm以下とすることによって、赤外線反射膜の反射効率が向上した高性能の電球が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による薄膜の一実施例の形成方法の構成を示した図である。
【図2】
本発明による電球バルブの一実施例の構成を示した正面図である。
【図3】
本発明による薄膜の一実施例の構成を示した断面図である。

Claims (9)

  1. 回転楕円体形状を含む基盤上に薄膜を形成する薄膜の製造方法であって、前記回転楕円体軸を中心にしてスピンさせると同時に、ガス圧を0.04Pa以上5.0Pa以下の範囲でスパッタリングすることを特徴とする薄膜の製造方法。
  2. 回転楕円体形状を含む基盤上に薄膜を形成する薄膜の製造方法であって、前記回転楕円体軸を中心にしてスピンさせると同時に、スパッタリングガスをArガスとNガスの混合ガスでその分圧比がArガス100に対してNガスが1〜6の範囲とするか、またはArガスとNガスとOガスの混合ガスでその分圧比がArガス100に対してNガスが1〜6の範囲、およびOガスが6以下の範囲とすることを特徴とする薄膜の製造方法。
  3. 回転楕円体形状を含む基盤上に薄膜を形成する薄膜の製造方法であって、前記回転楕円体軸を中心にしてスピンさせると同時に、薄膜形成開始時の入力電力がスパッタリングプロセス全体において最大であることを特徴とする薄膜の製造方法。
  4. 回転楕円体形状を含む基盤上に薄膜を形成する薄膜の製造方法であって、前記回転楕円体軸を中心にしてスピンさせると同時に、回転楕円体基盤に負バイアスを印加することを特徴とする薄膜の製造方法。
  5. 回転楕円体基盤が各種ハロゲン電球や白熱電球の電球バルブである請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
  6. スパッタリング法として高周波スパッタリング法を用いる請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
  7. 薄膜材料として、TaおよびSiOを用いる請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
  8. 赤外線反射膜の表面粗さRaが、2.9nm以上20.0nm以下であることを特徴とする電球。
  9. 赤外線反射膜が、スパッタリング法で形成されたものである請求項8に記載の電球。
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