JPS636798Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ホテルのロビー、或いはオーデイトリアム、ホ
ールのロビー等では意匠上の理由から、内装を煉
瓦、石、或いはタイル等の硬い仕上げとする場合
が多いが、これらの場所は一般に多くの人が集る
ために雑談等によつて発生する騒音が大きく、お
互いの会話の明瞭度を向上し、或いはマイク、ス
ピーカ等による拡声器からの情報を十分理解する
ためには残響時間を短かくすること、及び騒音レ
ベルを低下させることが必要であり、そのために
は室内の吸音力を大きくしなければならない。

しかしながら前記したような場所では一般に天
井高が高く、室容積が大きいため、天井面による
吸音だけでは吸音力が不足し、吸音力を附加する
ため壁面に吸音性を賦与することが望まれるが、
高い周波数まで吸音率の大きい材料は表面が柔い
ので、音響上の機能を満たし、且つ硬い仕上げと
いう意匠上の要求を満足させることは難しい。

本案は前記した両機能を満足させるための広帯
域吸音ユニツトに係るものである。

従来表面仕上げとして煉瓦を使用する場合、第
１図及び第２図に示すように、吸音材ａとしてグ
ラスウール、ロツクウール等の多孔質材を背後の
コンクリート躯体ｂより空気層ｃを存して配設
し、吸音材ａのプロテクタとして同材の前面に煉
瓦ｄを間隙ｅを存して組積することが多い。この
場合、特に煉瓦を間隙を存して組積するために、
施工に多大の手間を要する。

前記従来の吸音機構は次の２つに区分される。
即ち低音域は煉瓦ｄの間隙ｅに存する空気と、煉
瓦背面の空気層ｃとによつて構成される共鳴器型
の吸音機構によつて吸音され、系の共振周波数
（共鳴周波数）近傍のみで吸音が生じ、その他の
周波数では吸音しない。また高音域は多孔質型吸
音機構によつて吸音され、吸音率はグラスウール
等の煉瓦背面の吸音材ａ及び煉瓦ｄを組積すると
きの開口率によつて決定され、開口率が大きい程
背後の吸音材の吸音率に近づき、吸音率が大きく
なる。

通常背後の空気層厚が一定であるために共鳴周
波数は単一であり、また煉瓦を組積する際の強度
上、開口率を上げることが困難であるため、広い
周波数帯域に亘つて大きな吸音率を得ることは困
難である。

また室内側の仕上げ壁面が平坦であるため、壁
面が平行で対向している場合、音が往復反射する
フラツクエコー（鳴竜）現象が生じ、明瞭度低下
の原因となり易い。

本案はこのような欠点を除去するために提案さ
れたもので、長手方向に亘つて奥行が漸変するよ
うに、表版１が傾斜面に形成された煉瓦、石、陶
器等よりなる中空函状単位体Ａにおける前記表版
１に、同単位体Ａの中空部に連通する開口２を形
成するとともに、前記表版１の背面に吸音材３を
層着し、同吸音材３背面と前記単位体Ａとの間に
空気層４を設けてなることを特徴とする広帯域吸
音ユニツトに係るものである。

なお前記表版１は意匠上の理由から複数の煉
瓦、タイルを貼合わせたようにするが、製造上は
一体の構造として、目地状に開口２を設けるよう
にするとよい。また中空函状単位体Ａの上部版５
の後方には開口部６を設け、同上部版５の後端縁
及び底部版７に突設された突起８，９の間に、吸
音材３を嵌着するようになつており、この際、前
記開口部６は吸音材３の挿入口として利用される
ものである。

本案に係る広帯域ユニツトは前記のように構成
されているので、表版１の傾斜方向が互いに相反
する２種類の広帯域ユニツトU₁，U₂（第６図及び
第７図参照）を使用して、これを構造物躯体の内
壁面に交互に重層するものである。

而して前記ユニツトの主体をなす中空単位体Ａ
は煉瓦、石、陶器等より構成されているので、そ
の表版１によつて煉瓦、タイル状の硬い壁面仕上
げが構成され、意匠上の要求が満足されるもので
ある。

また前記中空函状単位体Ａの表版１には同単位
体Ａの中空部に連通する開口２が設けられるとと
もに、表版１の背面には前記単位体Ａとの間に空
気層４が残置されるようにグラスウール、ロツク
ウール等の吸音材３が層着されているので、同吸
音材３及び前記空気層４と開口２部の空気とより
構成された共鳴器型吸音機構によつて吸音効果が
発揮されるものである。而して本案においては前
記したように、中空函状単位体Ａの表版１が長手
方向に亘つて奥行が漸変するような傾斜面に形成
されているので、吸音材３背面の空気層４の厚さ
が変化し、従つて共鳴周波数が単一でなく、いく
つか連続してできるために広い周波数帯域で吸音
率が大きくなる。またこのように本案の広帯域の
吸音ユニツトの表面全体が傾斜しているため、平
行対向面となつている壁面に施工しても、エコー
障害の惧れがない。更に前記したように傾斜方向
の互いに相反する２種類のユニツトU₁，U₂を組
合わせることによつて拡散性の良好な壁面を構成
しうるものである。

更にまた本案によれば、単一のユニツトが背後
に吸音材及び空気層を有する複数の煉瓦、タイル
等に相当するので、施工する際の手間が大幅に縮
減されるものである等、本案は多くの利点を有す
るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の吸音壁体を示す正面図、第２図
は第１図の矢視−図、第３図は本案に係る広
帯域吸音ユニツトの一実施例を示す横断平面図、
第４図はその正面図、第５図はその縦断側面図、
第６図及び第７図は２種類の広帯域吸音ユニツト
の斜面図である。 Ａ……中空函状単位体、１……表版、２……開
口、３……吸音材、４……空気層。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 長手方向に亘つて奥行が漸変するように、表版
   １が傾斜面に形成された煉瓦、石、陶器等よりな
   る中空函状単位体Ａにおける前記表版１に、同単
   位体Ａの中空部に連通する開口２を形成するとと
   もに、前記表版１の背面に吸音材３を層着し、同
   吸音材３背面と前記単位体Ａとの間に空気層４を
   設けてなることを特徴とする広帯域吸音ユニツ
   ト。