JPS6360278B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は、自動車エンジンの排気管に用いて排
気管放散音の低減等に有効な複合２重鋼管に関す
る。 自動車のエンジンの多岐管から消音器に至る間
を結ぶ排気管は管内を高温のかつ脈動圧力の排気
ガスが流れるので、エンジンがその機械振動で発
生した音がフランジ等を介して伝達した騒音と脈
動排気ガスにより管自身が振動して発生した騒音
との両者を周囲に放散することになる。自動車騒
音は動力音と走行音に大別され、前記はエンジ
ン、ラジエータフアン、および排気ガスなどによ
りまた後者は道路とタイヤとの転動接触および車
体の風切りなどにより生じ、そして排気管放散音
は前者の約14％と言われている。そこで低騒音の
自動車を実現すべく放散音の少ない排気管用鋼管
の研究開発が進められている。 放散音の少ない排気管には材質面で工夫、開発
されたフエライト系ステンレス管があり、また構
造面で工夫、開発された２重管等がある。しかし
前者の現状は放射音の低減効果が少なくまた高価
になるという欠点があり、後者の現状は低減効果
が今１つ充分でなく又熱影響によつて低減効果が
大きく変化する等の欠点を有する。即ち、従来の
排気管は殆んどが鋼単管であり、これは殆ど防音
機能は有しないが、これを吸、遮音材で包囲すれ
ば当然騒音低減に効果がある。第１図ａ，ｂ，ｃ
はこの種の低騒音管の幾つかの例を示す。図で１
０は単管構造の排気管、１２は石綿、ガラス繊維
などの吸音材、１４はカバーであり、ａの場合は
可撓性シート状部材、ｂの場合は鎧構造の部材で
ある。この種のものは充分低騒音にするには吸音
材１２の厚みを大にせねばならず、従つて全体と
しては嵩張つたものになつてしまう。また排気管
は曲つているので吸音材の取付けが厄介である。
即ち巻付け方式を採用するとその巻付けは手作業
になつてしまい、量産に向かない。第１図Ｃに示
すように２つ割りの部材１６にして排気管１０に
両側から被せ、フランジ部でねじ止めする方式は
巻き付け方式より作業性はよいが、直線状および
曲線状各種の遮音部材１６例えば鋼板を用意して
それを曲つている排気管の形状に合わせて選択し
て取付けねばならず、やはり相当に面倒である。 この点２重管方式のものは単管とほゞ同様に扱
え、有利である。第１図ｄ，ｅは内管１０と外管
との間に介挿材１８を挾んだ複合２重管で、ｅの
ものは部分Ａで内、外両管１０，２０が直接々触
して連結（溶接）している点がｄと異なる。ｆは
内、外両管１０，２０を空隙２２で離した２重管
で、両端Ｂ，Ｃでは両管が連結している。試験し
た結果によればｄ，ｅのものは常温においては効
果がある場合でも一度高温に熱せられるとその効
果が激減する。この現象は、排気管の場合、管の
内部に高温のガスが流れ、管は内部で加熱される
ため、内管が熱膨張し外管と密着し、その結果管
同志の振動の減衰効果が働かないためと考えられ
る。しかしｆのごとく内、外管の間に空隙２２を
有するものはその効果の熱による変化は少ない
が、効果がそもそも少なく、しかも内、外管を両
端で、もしくは適宜中間点で連結せねばならず
（連結しなければ取扱い中に内管が外管から抜け
出てしまう）、加工が厄介であつて、またその
まゝ管を曲げるとき内、外管が変形して空隙２２
を確保できないという問題があり、一般には空隙
に砂などの充填物をつめて曲げ加工し、加工後砂
をぬきとるなどきわめてやつかいな方法を用いて
いる。この点ｄ，ｅのものは介装材１８がつまつ
ているので変形の恐れなく曲げ加工できるが、熱
影響により放射音の低減効果が著しく低下すると
いうことは問題である。 本発明はかゝる点に鑑みてなされたもので、そ
の特徴とする所は円周上の１部分で内管と外管が
接触又は溶着しているエンジン排気管用の複合２
重鋼管において内管と外管との最大間隙を0.1〜
0.5mmとし、自由状態で前記最大間隙とほぼ同じ
厚さを有し内管外周または外管内周長さの40〜70
％の幅の耐熱性を有する繊維状物質が中間層材と
して装填されていることにある。以下実施例を参
照しながらこれを詳細に説明する。 第２図は本発明に係る２重管の構造を示す。こ
の図に示すように本発明では内管１０と外管２０
の間に中間層材１８を円周長の40〜70％だけ装填
する。本発明の２重管において内管と外管との最
大間隙は0.1〜0.5mmであり、中間層材の厚みもこ
れと対応して自由状態でほぼ同じ厚さにする。こ
こで自由状態とは、繊維状物質を中間層材として
挿入する前の状態を示すものである。従つて中間
層材は幅方向両端部が大きくつぶされ、中央部が
少しつぶされるかほとんどつぶされない状態で装
填されることになる。第２図のものは１枚のシー
ト状の中間層材１８を用いたので内、外管の間に
は残りの30〜60％に亘つて空隙部１９が生じる。
尤もこの第２図のものは内、外管１０，２０を２
４において互いに接触又は溶着しており、従つて
空隙１９は極めて細い３ケ月状（中央で切断し
て、両端部で突合わせた形状）となる。２４がそ
の溶着部（溶接ビード部）又は接触部である。 このようにすると熱影響の少ない優れた放散音
低減効果が得られる。次に試験結果の一例を挙げ
る。この表でNo.は試料番号で１，２，３，６，
７，11，12は比較用のもの、４，５，８，９，
10，13は本発明のものである。また試料No.１の比
較材は径65mm、厚さ2.4mmの単管、他はすべて２
重管であり、試料No.２〜No.６は径65mm、厚みは
内、外管とも1.2mm、試料No.７〜No.13は経89.1mm、
厚みは外管が1.6mm、内管が1.0mmである。またＡ
はAS ROLLでの、またＢ，Ｃ，Ｄは600℃、700
℃，800℃で各５時間加熱した状態での測定結果
を示す。試験は長さ1000mmの管の両端をチヤツク
およびピボツトからなる支持部材で抑え、管内に
複数個の鋼球を入れ、該支持部材従つて該管を回
転させて鋼球で管内面を叩打させ、管付近に置い
た騒音計で管よりの放散音を測定して行なつた。

【表】

【表】 この表から分るように試料No.１の単管は他のい
ずれの管よりも騒音が大である。また試料No.２の
比較材は中間層材がなく、この場合は曲げ加工し
た場合に前述の難点があり、また内外管の何処か
で実際には接触してしまうためか騒音はアズロー
ルのものでも95.5dBと高く、高温ではそれより
更に高くなる。試料No.３、試料No.７の比較材は充
填率が80，90％と高く、これは第１図ｄ，ｅのも
のに近付いてアズロールのものは比較的低騒音で
あるが、高温で騒音が大になる。また試料No.11、
試料No.12の比較材は中間層材の厚みを0.6mm、0.8
mmと大にした場合でこの場合も高温で騒音が大に
なる。これらに比べて本発明のものNo.４，５，８
〜10、はアズロール、高温状態いずれも低騒音で
あり、この高温状態（排気ガスが流れると排気管
は600〜800℃の高温になる）で低騒音という点が
本発明の２重管の大きな特徴点である。試料No.13
のものは中間層材の厚みが0.1mmと薄いので、騒
音は中間層材なしのものに近付いている。騒音は
前述の内部加振で95dB以下が望ましいので結局
中間層材の厚みは0.1〜0.5mmが望ましく、中間層
材の空隙占積率は円周長で40〜70％が適当という
ことになる。 第５図の曲線C₁は600℃×５時間加熱後のも
の、曲線C₂は常温のものの充填率変化に対する
放散音変化を示す。管径は大なる程放散音も大に
なる傾向があるが、中間層材の最適厚みは管径と
ほゞ無関係である。 本発明の２重管の低放散音性は次のように説明
することができる。即ち中間層材は振動減衰体の
役目を持ち、内、外管が振動するとき、摺動を受
け、摩擦によりこれら内、外両管の振動を減衰さ
せる。つまり中間層材は制振機能を持ち、第１図
ａ〜ｃのものの如く発生した騒音の吸音又は遮音
機能を持つものではない。また管の振動を抑える
ので、排気管に使用した場合、脈動排気ガスによ
り管が振動して騒音を発生するのと、エンジンか
らの騒音を伝達してそれを放散するのとの両者を
抑えることができる。本発明のごとく管の１部で
内管と外管が接触又は溶着していても充分大きい
騒音低減が得られるのは、内外管が強固に密着せ
ず、振動にたいして内外管が摩擦し振動減衰効果
を発揮するからである。制振のためには中間層材
は変形可能である必要がある。若し内、外両管の
間に強圧状態で挿入されて変形不可能であると
内、外両管は１体化されてしまい単管と変らなく
なつてしまう。第１図ｄ，ｅのものの低放散音性
が充分でないということはこの理由によると解さ
れる。この点本発明の中間層材は環状空隙部
（0.1〜0.5mmの厚みであるが）の全周に装填され
るのではなく、円周長の40〜70％であるから、製
管時にまた高温稼動状態で圧縮力を受けたとして
もまだ余裕があり、ダンパーとしての機能を果た
すことができると解される。また中間層材の厚み
については、これが余りに薄いと無いのと同様に
なり、これに反して厚過ぎると内、外両管は分離
して独立に振動してしまい中間層材によるる制振
動作が充分機能しなくなると解される。 中間層材１８としてはガラスクロスの他に、石
綿、セラミツクウール、ロツクウールなど耐熱性
を有する繊維状物質を用いることができる。 この２重管は適宜の方法で作ることができる
が、第３図に電縫管方式による製造法を示す。こ
の図で３０，３２は外管、内管用ストリツプのア
ンコイラー、３４は中間層材（ガラスクロス）の
アンコイラー、３６はガイドロール、３８は成形
ロール、４０はは高周波電源、４２は溶接用コイ
ル、４２はスクイズロールである。また４６はス
トリツプ連続供給のための溶接装置、４８はその
溶接中もストリツプを供給するためのルーパであ
る。内、外管用ストリツプはアンコイラー３０，
３２から繰り出され、これらのストリツプの間に
アンコイラー３４から繰り出されたガラスクロス
が挿入され、これらの３者が成形ロール３８で管
状に曲げられ、溶接コイル４２により高周波誘導
加熱され、スクイズロール４４で圧着され、２重
管となる。第４図ａにその溶接状態を示し、同図
ｂに溶接後の２重管を示す。５０はインピーダー
である。 第２図の構造のものは予め製管された内、外管
を用い、内管の外周に中間層材シートを貼着し、
やゝ大きな内径とした外管にこれらを挿入し、絞
り加工して外管を中間層材付き内管に密着させ
る、等の製造方法を採用することができる。いず
れの製造法を用いても中間層材が円周長の40〜70
％であるので中間層の介挿されない側では円管と
外管は接触した、換言すれば非同心の２重管とな
る。 この場合、内・外管が接触した状態の箇所では
制振性能は若干低下するものの、円周長の40〜70
％に亘つて厚み0.1〜0.5mmの耐熱性を有する繊維
状物質が中間層材として内・外管との間に挿入さ
れておれば、内・外管と中間層材および中間層自
身の摩擦により必要な制振作用は十分発揮するも
のであり、この事実は先の実施例にも示した通り
である。また内、外管の厚みは等しくてもよい
が、この２重管にはフランジを溶接することを考
えると外管の厚みが大なる方がよい。 以上詳細に説明したように本発明によれば高温
でも低放散音性に優れ、曲げ加工なども変形の恐
れなくできる、排気管用に適した複合２重管が得
られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来例の説明図、第２図は本発明の実
施例の説明図、第３図は製管工程の説明図、第４
図はその一部の説明図、第５図は特性図である。 図面で１０は内管、２０は外管、１８は中間層
材である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 円周上の一部分で内管と外管が接触又は溶着
   してなる２重管において内管と外管との最大間隙
   を0.1〜0.5mmとし、自由状態で前記最大間隙とほ
   ぼ同じ厚さを有し内管外周または外管内周長さの
   40〜70％の幅の耐熱性を有する繊維状物質が中間
   層材として装填されていることを特徴とするエン
   ジン排気管用の複合２重鋼管。