JPS6359371B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本考案は深絞り成形等を行うに際しその生産工
程の安定性が高く成形品の歩留り率の向上したポ
リエステルシートの深絞り成形方法に関するもの
であり、その目的とするところはポリエステルシ
ートの熱成形、特に絞り比が1.0以上の深絞り成
形における生産工程の安定向上及び成形品の歩留
り向上を達成するポリエステルシートの深絞り成
形方法を提供することにある。 これまでポリエチレンテレフタレートのフイル
ム，シート状物は二軸延伸フイルムとして電気部
品，印刷，農業用資材，包装分野等に広く使用さ
れている。 最近ではその優れた特性を活かしトレー或いは
カツプ製品等の食品包装分野に使用される動きが
出始め、容易に熱成形のできるポリエチレンテレ
フタレートシートに対する需要が高まつてきた。 ところでポリエチレンテレフタレートは結晶性
高分子でありながら、その結晶化速度がポリエチ
レン，ポリプロピレン或いはポリアミド等に比べ
遅いため溶融状態から急速に冷却することにより
非晶質の状態を発現することが可能である。非晶
質のシートは球晶が発達した結晶性のシートに比
べ弾性率が低く伸度が大きいため比較的低温で、
また小さな力で成形或いは延伸することができる
という特徴を有する。このような理由からポリエ
チレンテレフタレート二軸延伸フイルムの製造に
おいては押出機の口金から吐出されたシート状溶
融体は70〜80℃に保持された回転急冷体表面で冷
却固化され延伸の容易な非晶質のシートとされ、
しかる後二軸延伸されるのが通常の方法である。 このようなことから従来の回転急冷体表面を70
〜80℃に保持して得られる非晶質のポリエチレン
テレフタレートシートを熱成形、特に深絞り成形
する場合、例えば多数個取りの金型を装着した高
速連続真空成形機にかけ、絞り比1.0以上の深絞
り成形品をプラグアシスト法でしかも金型の形状
を忠実に反映するために圧空及び真空を併用した
成形法で成形することにより目的のものが効率よ
く得られるものと考えられたが、意外にも安定に
成形品が得られず、その歩留りが約50％となり、
従来の方法で得られるポリエチレンテレフタレー
トシートは成形加工性が著しく悪いことが判明し
た。 本発明者はかかる欠点をなくし、熱成形工程の
安定性を計り成形歩留りを向上させる方法を見出
すべく鋭意検討の結果特定の示差走査熱量計（以
下DSCという。）曲線を示すようなポリエステル
シートを用いて深絞り成形することにより深絞り
成形時の歩留りを著しく向上せしめることを見出
し本発明に到達した。 本発明の要旨とするところは未延伸非晶質ポリ
エステルシートを深絞り成形するに際して、該シ
ートとしてDSCによりガラス転移温度を測定し
た時シート本来のガラス転移温度より低温に現わ
れる異常吸熱ピークが全く存在しないシートか、
或いは異常吸熱ピークが存在しても本来のガラス
転移温度より低温側に現われるシートを使用し、
かつ絞り比1.0以上の深絞り成形することを特徴
とするポリエステルシートの深絞り成形方法にあ
る。 本発明はポリエチレンテレフタレートの非晶質
構造がシート状溶融物を冷却固化する場合の冷却
速度に依存して変化し、冷却速度が遅くなるに従
がい比重の大きい非晶質となりDSC曲線に本来
のガラス転移温度に重なつて異常吸熱ピークが発
生しピークが大きくなることを知見したこと、ま
たこのシート状溶融物を一度充分に速い速度で急
冷し異常吸熱ピークが全くない延伸性に優れたシ
ートを製造しても約20℃〜ガラス転移温度の範囲
で長時間放置する間に異常吸熱ピークがガラス転
移温度より低温側に発生し、時間と共に、また放
置温度が高い程異常吸熱ピークが大きくなり、高
温側にシフトすることを知見したこと、さらにか
かる異常吸熱ピークが発生したシートは弾性率が
高くなり、伸度が低下し延伸しにくくなり、特に
異常吸熱ピークが本来のガラス転移温度に重なつ
たものは脆性破壊することを知見したこと等に基
くものである。 本発明において用いるポリエステルシートを構
成するポリエステルとは繰り返し単位の80％以上
がポリエチレンテレフタレート単位よりなるポリ
エチレンテレフタレート又はエチレンテレフタレ
ート共重合体、さらにはポリエチレンテレフタレ
ートが80重量％以上、他の熱可塑性樹脂が20重量
％以下から構成される樹脂混合物を示すものであ
る。前記ポリエステルには必要に応じ他の添加
剤、例えばブロツキング防止剤、核形成剤等を含
有せしめてもよい。 本発明を実施するに際して用いるポリエステル
シートを製造するには、まず本発明で規定するポ
リエステルを押出機の口金からシート状に溶融押
出してシート状溶融体とし、しかる後かかるシー
ト状溶融体をその表面温度が60℃以下、好ましく
は40〜60℃の温度に保持された回転急冷体表面上
で冷却固化することにより得ることができる。上
記ポリエステルシートの製造に際して回転急冷体
表面の温度が低すぎるとシート表面に横皺が発生
し厚み斑の原因となり、得られるシートを深絞り
成形した場合にその成形性を悪化させることにな
るので回転急冷体表面の温度は40℃以上60℃以下
が好ましい。一方回転急冷体表面の温度が60℃を
超える場合にはシートに対する急冷効果が弱く得
られるシートの延伸性が悪くなる。 なお上述した如き方法で得られるポリエステル
シートを本発明で使用できる状態で保存するため
には保存温度は25℃以下、好ましくは20℃以下
で、また保存期間は長期間に及ばないことが好ま
しく３ケ月以内であることが好ましい。 本発明の深絞り成形方法によれば特に多数個取
りの高速連続圧空・真空成形機による深絞り成形
工程の成形歩留りを著しく向上せしめることがで
きる等の優れた効果を奏する。 以下実施例により本発明を具体的に説明する。 なお実施例中の極限粘度〔η〕、異常吸熱ピー
クは下記測定法によつた。 極限粘度〔η〕： フエノール／テトラクロルエタン（50／50重量
比）の混合溶媒にて25℃で測定した。 異常吸熱ピーク： シートを約10〜20mgに切り取りDSCにより昇
温速度10℃／分にてDSC曲線を測定し、ガラス
転移温度より低温或いはガラス転移に重なつて現
われる吸熱ピークを観察する。 実施例１〜２、比較例１〜２ 極限粘度〔η〕＝0.73のポリエチレンテレフタ
レートのペレツトを90mmφの溶融押出機により樹
脂温度290℃にて吐出し、これを表１の実施例１
及び比較例１に示した温度に保持された回転急冷
体表面で冷却固化し厚さ0.45mm、巾700mmのシー
トを得た。また実施例１で得られたシートを実施
例２及び比較例２の条件で保存した。これらのシ
ートDSC曲線を図に示す。図の曲線Ａ，Ｂ，Ｃ
及びＤは実施例１、比較例１、実施例２、比較例
２に夫々対応する。実施例１の曲線Ａでは異常吸
熱ピークが全く認められない。実施例２の曲線Ｃ
では本来のガラス転移温度より低温に小さな異常
吸熱ピークが認められる。また比較例１及び２の
曲線Ｂ及び曲線Ｄでは大きな異常吸熱ピークが本
来のガラス転移温度に重なつて現われている。こ
れら各シートを高速インライン連続成形機にか
け、口径70mm、絞り比1.35の深絞り成形品を36個
取りで成形した。１サイクルに要する時間は８秒
とした。 成形歩留りは表１に示すごとく、実施例１及び
２では90％以上で良好であつた。 【表】

【図面の簡単な説明】

図面は実施例、比較例における各ポリエステル
シートのDSC曲線である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 未延伸非晶質ポリエステルシートを深絞り成
   形するに際して、該シートとして示差走査熱量計
   によりガラス転移温度を測定した時シート本来の
   ガラス転移温度より低温に現われる異常吸熱ピー
   クが全く存在しないシートとか、或いは異常吸熱
   ピークが存在しても本来のガラス転移温度より低
   温側に現われるシートを使用し、かつ絞り比1.0
   以上の深絞り成形することを特徴とするポリエス
   テルシートの深絞り成形方法。