JPS6346710Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、ポンプに係り、特にその低速回転
時の性能改善に関するものである。

［従来の技術］ 従来から知られるポンプとしては、第１図及び
第２図に示されるものがあつた。

図において、ブラケツト１に軸受３を介して支
持される軸２は、図示しない原動機によつて駆動
される。

この軸２にスプライン嵌合により固定されたロ
ータ４には、その半径方向に摺動自在な複数のベ
ーン７が放射状に設けられている。

また、ロータ４には、その周辺から中心軸に向
つて複数個のベーン溝４ａが形成されている。こ
のベーン溝４ａは、ベーン７を保持ガイドするた
めのものである。

次に、ハウジング５は、軸２とロータ４の中心
に対して偏心した筒状内周面を有しており、取付
ボルト６によりブラケツト１に固定されている。
このブラケツト１とハウジング５との接合面は、
パツキン８により気密が保たれるようになつてい
る。なお、ブラケツト１に固定され軸２に周接し
たオイルシール９は、ポンプの気密を保つための
ものである。

ハウジング５の吸気口１０は真空タンク（図示
せず）に接続され、排出口１１はオイルパン（図
示せず）へ接続される。一方、軸２に対向してハ
ウジング５に設けられた給油口１２はオイルポン
プ（図示せず）に接続されている。

また、ハウジング５内には、ベーン７によつて
仕切られた可変室１３ａ，１３ｂ，１３ｃ，１３
ｄが形成され、これら可変室１３ａ，１３ｂ，１
３ｃ，１３ｄの容積は、ロータ４が回転してベー
ン７が摺動することにより変化するようになつて
いる。

次に、上記のように構成された従来のポンプの
動作について説明する。

先ず、軸２が矢印方向へ回転するとロータ４も
回転し、ベーン溝４ａ内を摺動可能に構成されて
いるベーン７は、遠心力によつてハウジング５の
内周面まで飛び出す。

更に回転すると、ロータ４はハウジング５に対
して偏心しているため、ベーン７はハウジング５
の内周面に押されてベーン溝４ａの底まで押し下
げられる。

以上のような動作によつて、可変室１３ａ，１
３ｂ，１３ｃ，１３ｄは、回転に伴ない吸気口１
０に達するまでは真空となり、吸気口１０を介し
て真空タンクから空気を吸い込む。更に回転すれ
ば、圧縮された空気と、給油口１２から供給され
た潤滑油とを排出口１１からオイルパンへ排出す
る。

［考案が解決しようとする問題点］ 上記のような従来のポンプにおいては、ベーン
７とベーン溝４ａとの間に介在する油により、ベ
ーン７のベーン溝４ａへの保持力が生じている。

従つて、ベーン７の飛び出しに要する遠心力
は、当然にこの保持力よりも大なることが条件で
ある。

ところが実際には、低速回転時にはベーン７の
遠心力が小さい故、高速回転にならないとベーン
７の飛び出しが安定しない。そのため、低速回転
時にはポンプの真空特性が得られないという問題
点があつた。

この考案は、上記のような問題点に鑑みてなさ
れたものであり、その目的とするところは、遠心
力が小さくてもベーンを外周方向へ飛び出させる
ことが可能で、低速回転時にも所望の真空特性が
得られるポンプを提供することである。

［問題点を解決するための手段］ この考案は、周辺から中心軸に向つて形成され
た複数個のベーン溝を有するロータをハウジング
内に偏心して設け、このハウジング内を前記ベー
ン溝に摺動自在に設けられた複数個のベーンによ
り複数個の室に仕切り、前記ロータの回転により
上記室の容積を変化させるようにしたポンプにお
いて、 前記ハウジングに前記ロータ端面と対向する給
油口を設けると共に前記ロータ端面に前記各ベー
ン溝の底部と連通する環状の溝を形成し、且つこ
の溝の外周壁の内面に、前記給油口から供給され
た油の流動抵抗が前記ロータの回転方向より反回
転方向で大となる鋸刃状の凹凸を設けたものであ
る。

［作用］ この考案においては、ベーンがベーン溝の底ま
で押し下げられることにより、このベーン底部と
ベーン溝底との間の空間が圧縮されると、その空
間中の空気及び油が、環状の溝を通つて先行する
ベーン底部に圧力を加える。

従つて、先行するベーンの遠心力によるベーン
飛び出しが付勢される。

また、給油口は、環状の溝が設けられたロータ
端面に対向するように設けられているため、給油
圧力により、ベーンの飛び出しを付勢することが
できる。

更に、環状の溝の外周壁の内面に設けられた鋸
刃状の凹凸は、給油口から供給された油の流動抵
抗がロータの回転方向より反回転方向で大となる
となるように設定されている。それ故、環状の溝
中の油は、先行ベーンの方向に流れ易く、後続ベ
ーンの方向には流れにくい。従つて、油圧による
先行ベーンの飛び出しの付勢が一層確実なものと
なり、後続ベーンの押し下げが、油圧により阻害
されることもない。

［実施例］ 以下、添付図面を参照して本考案の実施例につ
いて説明する。

第３図には、この考案の一実施例に係るポンプ
の縦断面図が示されている。また、第４図には、
第３図の−方向矢視断面図が示されている。

図において、ハウジング５の給油口１２は、ロ
ータ４の端面と対向して設けられている。

一方、このロータ４の端面には、各ベーン溝４
ａの底部と連通する環状の溝１４が形成されてい
る。

この溝１４の外周壁の内面には、給油口１２か
ら供給された油の流動抵抗が、ロータ４の回転方
向よりも反回転方向で大となる鋸刃状の凹凸１４
ａが設けられている。

次に、上記実施例の動作について説明する。

軸２の矢印ａ方向への回転、即ちロータ４の回
転に伴ない、ハウジング５の内面に押されたベー
ン７は、上記従来技術と同様にベーン溝４ａの底
まで押し下げられる。

このとき、押し下げられたベーン７底部が恰も
ピストンの如き作用を成し、このベーン７底部と
ベーン溝４ａ底との間に介在する空気、油を圧縮
し、各ベーン溝４ａの底部と連通する環状の溝１
４に向わせる。圧縮された空気、油は、この環状
の溝１４を介して先行するベーン７底部に圧力を
加え、先行するベーン７の飛び出しを付勢する。

この場合、給油口１２は、環状の溝が設けられ
たロータ端面に対向するように設けられているた
め、給油圧力によりベーン７の飛び出しを付勢す
ることもできる。

なお、溝１４の外周壁に給油口１２から供給さ
れた油の流動抵抗がロータ４の回転方向より反回
転方向で大となる鋸刃状の凹凸１４ａを設けたの
は、空気、油が後続のベーン溝４ａに逆流するの
を防止するためで、これにより先行するベーン７
の飛び出し性能を向上させると共に、後続のベー
ン７の押し下げを妨げないようにしたものであ
る。

ここで、鋸刃状の凹凸１４ａについて、第５図
及び第６図を参照して更に詳しく説明する。

第５図において、ロータ４は矢印ａ方向へ回転
しており、ベーン７ａ，７ｂは飛出し中であり、
ベーン７ｃ，７ｄは押し下げ中である。また、ベ
ーン７ａはベーン７ｄの回転方向であり、ベーン
７ｃはベーン７ｄの反回転方向である。

このとき、環状溝１４内では、第６図に示すよ
うに、鋸刃状の凹凸１４ａの上刃部１５ａが回転
方向ａに、下刃部１５ｂが反回転方向にある。

つまり、流動抵抗が回転方向より反回転方向で
大となるため、空気、油は回転方向へ流れやすい
（流れを矢印ｂで示す）。従つて、ベーン７ａの飛
出しを助けるが、ベーン７ｃの押し下げに対して
は抵抗にならない。飛出し中のベーン７ｂと押し
下げ中のベーン７ｄについても同様である。

［考案の効果］ 以上説明したように、この考案によれば、給油
圧力やベーンのベーン溝底への下降時の圧力によ
つて低圧側のベーンを押しあげるようにしたの
で、遠心力の小さな低速回転時にも、安定した真
空特性を得られるという効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のポンプに係る断面図、第２図は
前図の−方向矢視断面図、第３図は本考案の
一実施例に係るポンプの縦断面図、第４図は前図
の−方向矢視断面図、第５図は本考案の一実
施例に係るポンプのベーンの動作を説明する縦断
面図、第６図は本考案の一実施例に係るポンプの
鋸刃状の凹凸を示す部分拡大図である。 図において、１はブラケツト、２は回転軸、３
は軸受、４はロータ、４ａはベーン溝、５はハウ
ジング、６は取付ボルト、７はベーン、８はパツ
キン、９はオイルシール、１０は吸気口、１１は
排出口、１２は給油口、１３ａ，１３ｂ，１３
ｃ，１３ｄは可変室、１４はベーン溝底を連絡す
る溝、１４ａは鋸刃状の凹凸である。なお、各図
中、同一符号は同一または相当部分を示す。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 周辺から中心軸に向つて形成された複数個のベ
   ーン溝を有するロータをハウジング内に偏心して
   設け、このハウジング内を前記ベーン溝に摺動自
   在に設けられた複数個のベーンにより複数個の室
   に仕切り、前記ロータの回転により上記室の容積
   を変化させるようにしたポンプにおいて、 前記ハウジングに前記ロータ端面と対向する給
   油口を設けると共に前記ロータ端面に前記各ベー
   ン溝の底部と連通する環状の溝を形成し、且つこ
   の溝の外周壁の内面に、前記給油口から供給され
   た油の流動抵抗が前記ロータの回転方向より反回
   転方向で大となる鋸刃状の凹凸を設けたことを特
   徴とするポンプ。