JPS6346137B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

この発明は、すぐれた高温サグ性および犠牲陽
極性をもつた熱交換器用アルミニウム合金（Al
合金）薄板に関するものである。 一般に、オートバイ、自動車などのラジエータ
ーやクーラーのコンデンサーなど（以下これらを
総称して熱交換器という）には、フイン材として
それぞれAA規格1050材（99.5％以上のAl）、同
3003材（Al−1.2％Mn）、および同7072材（Al−
1.2％Zn）などの薄板やろう材クラツド薄板が使
用され、前記フイン材を管体に有フラツクスろう
付け法や真空ろう付け法によつて取付けることに
より熱交換器を製造している。 しかし、フイン材を構成する上記の従来Alお
よびAl合金薄板は、高温サグ性（後述の実施例
参照）が劣るために管体へのフイン材ろう付け時
に、外力および自重によつて変形し、ろう付け前
のフイン材組立て形状を保持し得ないという問題
点がある。 また犠牲陽極性が比較的良好であるといわれる
7072合金においても、この合金製のフイン材を管
体に真空ろう付けによつて接合して熱交換器を製
造する際に、前記フイン材からZn成分の蒸発が
起つて、その犠牲陽極性が低下し、使用中に管体
に腐食を発生させて製品寿命を縮める場合がしば
しば生じていた。 本発明は、上述のような観点から、特に熱交換
器のフイン材として使用するのに適したAl合金
薄板を得べく研究を行なつた結果、重量％で、 Zn：0.5〜8.0％、 Mn：0.5〜1.5％、 を含有し、 Alおよび不可避不純物：残り、 からなる組成をもつたAl合金薄板は、特に熱交
換器のフイン材として使用するのに適してすぐれ
た高温サグ性と犠牲陽極性をもつという知見を得
るに至つたのである。 この発明は、上記知見にもとづいてなされたも
のであつて、以下に成分組成範囲を上述のように
限定した理由を説明する。 (a) Zn Zn成分には合金薄板の犠牲陽極性を向上さ
せる作用があるが、その含有量が0.5％未満で
は所望のすぐれた犠牲陽極性を確保することが
できないので0.5％以上含有させなければなら
ない。しかし、8.0％を越えて含有させるとサ
グ性が劣化するようになると共に、合金薄板の
溶融点が低下するようになつてろう付けに際し
ての高温加熱時に部分溶融する場合があるので
８％を越えて含有させてはならない。 (b) Mn Mn成分には合金薄板のサグ性を向上させる
と共に、ろう付け時のZnの蒸発を抑制して犠
牲陽極性の低下を阻止する作用があるが、その
含有量が0.5％未満では前記作用に所望の効果
が得られないので0.5％以上含有させなければ
ならない。しかし、1.5％を越えて含有させて
もさらに一段の効果向上は現われないことか
ら、その上限値を1.5％と定めた。 つぎに、この発明のAl合金薄板を実施例によ
り比較例とともに説明する。 実施例 通常の溶融法により第１表に示される成分組成
をもつたAl合金をそれぞれ溶製し、鋳造して鋳
塊となした後、この鋳塊（長さ2000mm×幅900mm
×厚さ450mm）をそれぞれ温度580℃に24時間保持
して均熱化処理した後、その上下面を各５mm厚だ
け機械面削により除去した。 このように厚さ440mmとした面削鋳塊を、温度
510℃で熱間圧延して厚さ８mmとした後、冷間圧
延によつて厚さ２mmにまで圧延した。ついで温度
400℃に１時間保持の中間焼鈍を施した後、その
厚さ２mmを冷間圧延によつて厚さ0.5mmにまで減
じ、さらに前記の中間焼鈍を行ない、最終冷間圧
延によつて厚さ0.5mmを厚さ0.15mmに減じて本発
明合金裸薄板１〜７、および比較7072合金裸薄板
をそれぞれ製造した。 また、上記合金の面削鋳塊の上下面削面のそれ
ぞれに、厚さ55mmのAl−9.5％Si−1.5％Mg合金
ろう材を重ね合わせ、両側４隅部（計８ケ所）を
スポツト的に溶接して仮付けし、以後上述の裸薄
板製造の場合と同一条件で圧延して、本発明合金
ろう材クラツド薄板１〜７、および比較7072合金
ろう材クラツド薄板をそれぞれ製造した。 ついで、この結果得られた裸薄板およびろう材

【表】 クラツド薄板に関してサグ性試験および犠牲陽極
性試験を行なつた。 まず、サグ性試験は、上記の裸薄板およびろう
材クラツド薄板のそれぞれから長さ60mm×幅15mm
×厚さ0.15mmの寸法をもつた試験片を切出し、第
１図に概略側面図で示されるように、前記試験片
１を、その長さ方向半分がステンレス鋼台２から
突出するように固定し、 温度600℃に、それぞれ１分、２分、３分、
および５分間加熱保持、 温度560℃、580℃、600℃、および620℃にそ
れぞれ３分間加熱保持、 の条件で加熱し、前記試験片１の垂下値ｔを測定
した。この測定結果を第２表および第３表に示し
た。 第２表および第３表に示す結果から明らかなよ
うに、裸薄板およびろう材クラツド薄板のいずれ
においても、本発明合金薄板は比較7072合金薄板
に比して著しくすぐれたサグ性を示している。 一般に上表の各温度に３〜５分間保持した場合
に垂下値が５mm以下のものが実用性があるとされ
ているが、比較7072合金ろう材クラツド薄板に関
しては、いずれの条件においても垂下値12.5mm以
上を示すことから実用性に乏しく、また同裸薄板
についても加熱時間が３分以内の場合に限つてか
ろうじて実用性があることを示すにすぎない。

【表】

【表】

【表】 これに対して、本発明合金薄板に関しては、ろ
う材クラツド薄板でも最大垂下値8.5mmを示すに
すぎず、十分実用に供されるすぐれたサグ性を示
している。 ついで、犠牲陽極性試験は、上記の裸薄板およ
びろう材クラツド薄板のそれぞれから長さ140mm
×幅20mm×厚さ0.15mmの寸法をもつた試験片を９
枚づつ切り出し、第２図に概略斜視図で示される
ように、裸薄板試験片３については、心材：AA
規格3003材、ろう材：同X4004材（Al−9.5％Si
−1.5％Mg）からなる長さ140mm×幅70mm×厚さ
1.0mmの寸法をもつたろう材クラツド平板４の上
面に７mm間隔に真空ろう付けにより立設し、一方
ろう材クラツド薄板試験片３′については同寸法
の1050材（99.5％以上のAl）からなる裸平板４′
の上面に前記の裸薄板試験片の場合と同様にこれ
を立設して、それぞれ犠牲陽極性試験用組立て体
Ａを形成し、つぎにこの組立て体に対して、温度
30℃の５％食塩水に10分間浸漬、引上げての強制
乾燥50分間の１時間

【表】 サイクルの交互浸漬を90日間施し、前記ろう材ク
ラツド平板４および裸平板４′の上記試験片ろう
付け側の面に発生した孔食状況を観察した。この
観察結果が第４表に示されている。 第４表に示される結果から明らかなように、本
発明合金薄板は、裸材およびろう材クラツド材の
いずれの場合にもすぐれた犠牲陽極性を示すので
相手材である平板には、Zn含有量が低い場合に
わずかの腐食が見られるだけで、その他の場合に
は全く腐食が発生していないのに対して、比較
7072合金薄板においては、犠牲陽極性が悪いため
に相手材である平板には多数の孔食が発生してい
る。 上述のように、この発明のAl合金薄板は、す
ぐれたサグ性および犠牲陽極性をもつので、これ
を特に通常の熱交換器のフイン材として使用した
場合には、フインのもつすぐれた犠牲陽極効果の
ために管体の腐食が完全に防止でき、また管体と
フイン材とのろう付けに際しても組立て時の形状
がそのままろう付け後も保持されるのでフイン材
に粗密が発生せず、この結果冷却・加熱が均一に
効率よく行なうことができて性能および寿命の向
上がはかれるなど有用な効果がもたらされるので
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図はサグ性試験態様を示す概略側面図、第
２図は犠牲陽極性試験用組立て体の概略斜視図で
ある。図面において、 １……サグ性試験片、２……ステンレス鋼台、
Ａ……犠牲陽極性試験用組立て体、３，３′……
試験片、４，４′……平板。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ Zn：0.5〜8.0％、 Mn：0.5〜1.5％、 Alおよび不可避不純物：残り、 （以上重量％）からなる組成を有することを特
   徴とする高温サグ性および犠牲陽極性にすぐれた
   熱交換器用アルミニウム合金薄板。