JPS6322982B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、多層シート、更に詳しくは高含水食
品を包装するに適する酸素バリヤー性に優れた成
型用多層シートに関するものである。

従来、プラスチツク成型用多層シートとして
は、種々のものが開発され、提案されているが、
一般にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチ
レン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の
樹脂の単体、複合体又は混合物からなるシートが
主体である。

しかし、上記のような樹脂からなるシートは、
酸素バリヤー性が著しく劣り、用途が限定された
り、商品寿命が短い等の種々の欠点があつて好ま
しくないものである。

近年、酸素バリヤー性を改良した成型用多層シ
ートとして、例えば、ポリオレフイン／ポリ塩化
ビニリデン／ポリオレフイン、或は、ポリオレフ
イン／エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物／
ポリオレフイン等の構成からなる成型用多層シー
トが上市されている。

しかしながら、上記のポリ塩化ビニリデンをバ
リヤー層とするシートにおいては、酸素バリヤー
２c.c.／m²・24H（at30℃dry）以下にすることが非
常に困難であり、また上記のエチレン−酢酸ビニ
ル共重合体ケン化物をバリヤー層とするシートに
おいては、乾燥状態では酸素バリヤー性は良好で
あるが、水分を含むことにより酸素バリヤー性が
著しく低下し、高含水食品の包装には不適である
という欠点がある。

ちなみに、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン
化物の含水率と酸素バリヤー性との関係を示すと
第１図のようになり、また、複合フイルム〔例、
二軸延伸ポリプロピレン（18μ）／エチレン−酢
酸ビニル共重合体ケン化物（16μ）／低密度ポリ
エチレン（50μ）〕の水充填ポーチ法の外部湿度
条件と酸素バリヤー性との関係を示すと第２図の
ようになる。

すなわち、上記の第１図、第２図より明らかな
ように、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物
を酸素バリヤー層とした多層シートにおいては、
高含水食品を密封した場合、内層のポリオレフイ
ン層を透過した水分がエチレン−酢酸ビニル共重
合体ケン化物層に達して含水状態となり、更に、
外側にもポリオレフイン層があることから水分は
にげにくく、従つてより高含水状態となり加速度
的に酸素バリヤー性が低下する。

本発明者は、上記のエチレン−酢酸ビニル共重
合体ケン化物を酸素バリヤー層とする多層シート
について、その積層構成を種々研究の結果、高含
水食品を包装しても長時間酸素バリヤー性の良好
なる成型用多層シートを見出して本発明完成した
ものである。

以下に本発明について更に詳しく説明する。

まず、本発明の多層シートの構成について説明
すると、本発明の多層シートは、第３図に示すよ
うに、少なくとも５層よりなり、内容物に接する
側、すなわち、高水分側より第２層目がポリ塩化
ビニリデン層１、第４層目がエチレン−酢酸ビニ
ル共重合体ケン化物層２よりなり、かつ、第１、
第３および第５層がポリオレフイン系樹脂層３，
４，５で構成することからなるものである。

而して、上記のような層構成にすることによ
り、高水分側よりの水分は、ポリ塩化ビニリデン
層で遮断してエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン
化物層への水分の移行を防止するものである。

また、仮りに水分が移行したとしても、外側層
はポリオレフイン系樹脂層であることから、移行
した水分は、該ポリオレフイン系樹脂層はポリ塩
化ビニリデン層より水蒸気バリヤー性が劣るので
透散してしまい、従つて、エチレン−酢酸ビニル
共重合体ケン化物層が含水することなく、該ケン
化物層本来の酸素バリヤー性を良好に維持するこ
とが可能なものである。

更に又、本発明においては、ポリ塩化ビニリデ
ン層それ自身も酸素バリヤー性は比較的良好な材
質であることから該ポリ塩化ビニリデン層とエチ
レン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層との２層か
らなる酸素バリヤー性の相乗効果を奏し、より良
好な結果を得ることができるものである。ポリ塩
化ビニリデン層を含むシートでは、この層を厚く
すれば目的を達することができるが、加工面、コ
スト面より制約があり、本発明ではより薄い２層
のバリヤー層で目的を達することができる。

上記の本発明において、ポリ塩化ビニリデン層
を構成するポリ塩化ビニリデンとしては、例えば
塩化ビニリデンを主体とする塩化ビニリデン−塩
化ビニル共重合体で旭ダウ(株)製サラン（商品名）
等を適用できる。

又、上記の本発明において、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体ケン化物層を構成するエチレン−酢
酸ビニル共重合体ケン化物としては、例えばエチ
レン25〜50mol％の共重合体でケン化率93％以
上、望ましくは96％以上がよい。

次に又、本発明において、ポリオレフイン系樹
脂層を構成するポリオレフイン系樹脂としては、
例えば、低、中ないし高密度のポリエチレン、ポ
リプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、
エチレンとアクリル酸、メタクリル酸、無水マレ
イン酸等の不飽和カルボン酸との共重合体、アイ
オノマー樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、
エチレン又はプロピレンと、他のオレフイン化合
物との共重合体、その他等から任意に選択して使
用することができる。

而して、本発明において多層シートを構成する
各層の厚さとしては、 ポリオレフイン系層 50〜500μ ポリ塩化ビニリデン層 15〜 50μ ポリオレフイン系層 20〜100μ エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物
20〜100μ ポリオレフイン系層 50〜500μ 最内・最外のポリオレフイン層は、最終の容器
の寸法、形状等により適時増減できる。

次に又、上記の本発明において、多層シートの
製造法について説明すると、かかるシートは種々
の方法で製造することができ、例えば、全層を共
押出し成膜しても良いし、又、ポリオレフイン
系／ポリ塩化ビニリデン層／ポリオレフイン系の
フイルム又はシートと、ポリオレフイン系／エチ
レン−酢酸ビニル共重合体ケン化物／ポリオレフ
イン系のフイルム又はシートを別途製造し、この
２枚をドライラミネーシヨン又は、イクストルジ
ヨンラミネーシヨン・ヒートラミネーシヨンで製
造することができる。

PVDC層を含む積層シート又はフイルムは、ス
クラツプのリサイクルが不可能でコストUPの要
因であつたが、ポリオレフイン系／PVDC／ポリ
オレフイン系のフイルム又はシートの最小必要巾
巻取にこれより広巾でポリオレフイン系／ケン化
物／ポリオレフイン系を共押出し同時ラミネーシ
ヨンすることにより安定的に製造でき、かつ、共
押出し側の両耳のスクラツプ分をリサイクル可能
となりコスト的に有利となる。又、PVDC、ケン
化物を含む各々のシートをヒートラミネーシヨン
でも製造できる。

尚、上記の本発明において、上記の５層からな
る多層シートでは剛度が不足する場合には、第４
図に示すように、上記の５層からなる多層シート
の片側または両側にポリスチレン層６，６′を設
けることができる。

而して、かかることにより、多層シートの成型
性をよくすることができ、深絞り成型が可能とな
り、いわゆるカツプ状容器の製造が可能である。

上記においてポリスチレン層を構成するポリス
チレンとしては、汎用のハイインパクトスチロー
ル樹脂を適用できる。

以上の説明で明らかなように、本発明の多層シ
ートは、酸素バリヤー性に良好であり、圧空成
型、真空成型、その他等の成型法で種々のプラス
チツク容器を生成することができ、従来プラスチ
ツク容器では、酸素バリヤー性不足で包装するこ
とのできなかつた、液体スープ、果汁等酸素で変
質しやすい食品の包装ができる。又、液体に限ら
ず、酸素バリヤー性を要求される固体、粉末等
も、もちろん良好である。

次に実施例をあげて更に具体的に本発明を説明
する。

実施例 １ ハイインパクトスチロール樹脂（旭ダウ(株)製ス
タイロン（商品名））520μ／ポリオレフイン系樹
脂層（三井石油化学(株)製アドマー（商品名））
30μ／ポリ塩化ビニリデン層20μ／ポリオレフイ
ン系樹脂層（三井ポリケミカル(株)製低密度ポリエ
チレン）30μからなる多層シートの低密度ポリエ
チレン面と、ハイインパクトスチロール樹脂（旭
ダウ(株)製スタイロン（商品名））450μ／ポリオレ
フイン系樹脂層（三井石油化学(株)アドマー（商品
名））：接着剤層50μ／エチレン−酢酸ビニル共重
合体ケン化物層（クラレ(株)製エバール（商品名））
50μ／ポリオレフイン系樹脂層（三井石油化学(株)
製アドマー（商品名））50μを共押出し、そのア
ドマー面をインラインラミネーシヨンにより、７
層シートを製造した。

このシートをプラグアシスト圧空成形残で口径
72ｍ／ｍφ、絞り比１：１の容器を作り100％オ
レンジ果汁を充填し、蓋材としてポリエチレンテ
レフタレート12μ／アルミ箔40μ／HS剤を用いて
密封し、常温保存３ケ月したところビタミンＣ
（還元型）の残存率は、75％であり、褐変度・官
能検査でも低下はあるものの実用上、支障ない程
度であつた。

実施例 ２ ハイインパクトスチロール樹脂500μシートと、
サラネツクス（商品名）64μフイルム（旭ダウ(株)
製）をドライラミネーシヨンし、このサラネツク
ス面に、ハイインパクトスチロール樹脂500μ／
接着層50μ／エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化
物50μ／接着層50μの構成で共押出し、この接着
層面とラミネーシヨンして製造したシートを実施
例１と同様に保存テストを行い、１と同等の結果
を得た。

【図面の簡単な説明】

第１図は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン
化物の含水率と酸素バリヤー性との関係を示すグ
ラフ、第２図は、複合フイルム〔例、二軸延伸ポ
リプロピレン（18μ）／エチレン−酢酸ビニル共
重合体ケン化物（16μ）／低密度ポリエチレン
（50μ）〕の水充填ポーチ法の外部湿度条件と酸素
バリヤー性との関係を示すグラフ、第３図は、本
発明の多層シートの構成を示す断面図、第４図
は、本発明の別の形態の多層シートの構成を示す
断面図である。 １……ポリ塩化ビニリデン層、２……エチレン
−酢酸ビニル共重合体ケン化物層、３，４，５…
…ポリオレフイン系樹脂層、６，６……ポリスチ
レン層。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 少なくとも５層よりなり、内容物に接する側
   より、第２層目がポリ塩化ビニリデン層、第４層
   目がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層、
   第１層、第３層および第５層目がポリオレフイン
   系樹脂層よりなる多層シート。 ２ 第１層と第５層のポリオレフイン系樹脂層の
   片面または両面に、更にポリスチレン層を設けて
   なる特許請求の範囲第１項記載の多層シート。