JPS6320767Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

本考案は、床舗装構造物の塗装面又は舗装面、
殊に該塗装面等が合成樹脂やゴム弾性体材料など
の高分子材料のみで構成されている場合、該層に
しばしば発生するブリスターと呼ばれるふくれ
（膨化）現象に対して有効に抵抗しうる床舗装構
造に関する。 一般に鉄筋コンクリート建築物が低水位地帯や
湿地帯、排水不良地帯またはこれらに準じる条件
の場所に築造された場合、土中の水分がセメン
ト・コンクリート中の微細空隙や亀裂を通じて上
昇し、床面や壁面のコンクリート下地内に多量の
水分が含浸されることはよく知られている。ま
た、打設コンクリートの乾燥不足の場合にも同様
な現象は起りうる。 一方、例えば上記床面は、内外装のためコンク
リート下地の表面をエポキシ樹脂やウレタン樹脂
その他適当な合成樹脂又は天然ゴムや合成ゴムな
どの高分子材料よりなる塗料もしくは舗装材又は
タイルなどで舗装される。したがつて、これら表
面舗装が上記高分子材料を結合材とする「樹脂モ
ルタル（又はラテツクスモルタル）」の如き微細
多孔質材料で構成される水分透過性構造である場
合は別として、該高分子材料のみで構成される不
透水性構造である場合には、床面のコンクリート
下地に含浸された水分は、前記表面舗装層により
大気中への放散を阻止される。そのため、前記水
分は前記舗装層の内側に滞留し、そこにかなりの
膨張圧力（Pb）を発生する。そして、この膨張
圧力（Pb）が表面舗装層とコンクリート下地面
との接着力を超えると、前記舗装層に「ブリスタ
ー」と呼ばれるふくれ現象を発生させる結果とな
る。この「ブリスター」は、通常直径0.5mm程度
の微小のものから５〜10mm程度の大径のものまで
大小様々であつて、床面上に、かつ部分的に集中
して発生し、該集中部分において星雲状の外観を
呈することが多い。 本考案者らは、コンクリート建造物の床舗装面
における上述ブリスターの発生を有効に防止でき
る方法につき検討した結果、 (1) コンクリート下地からの水分透過量を可及的
に小さくする方法。 (2) 含浸水分の膨張圧力（Pb）を可及的に小さ
くする方法。 (3) 表面舗装層とコンクリート下地との接着力を
より一層増大させる方法。 (4) 表面舗装層の水分透過率を増大させる方法。 (5) 表面舗装層の硬化初期のモジユラスを上げる
方法。 などの各種方法を着想し、それぞれ具体的技術手
段を開発したが、これら方法に加えて、表面舗装
層とコンクリート下地との間に介在せしめられる
プライマー層のモジユラスを増大させることによ
つても、先述ブリスターの発生を完全に防止でき
ることを見出した。 そこで本考案の目的は、コンクリート床の舗装
面におけるブリスターの発生を有効に防止しうる
手段を提供しようとするに在り、その骨子はプラ
イマー層を構成する高分子材料にガラスフレーク
を混入する点に在る。 先述の通り、本考案者らが床舗装面でのブリス
ター発生を防止しうる各種方法につき検討した過
程において、その一方法としてプライマー層の構
成材料中に短小繊維を混入することにより、該層
のモジユラスを増大させることを着想した。そし
て、実際に各種繊維の混入を試みたが、その効果
は期待した程に有効なものではなかつた。即ち、
通常床面の舗装工事はコンクリート下地の表面
に、エポキシ樹脂やウレタン樹脂、ポリエステル
樹脂、その他適当な合成樹脂などからなる粘稠材
料をコテ塗りで、表面が平滑となる様に敷き展げ
てプライマー層を形成し、さらに該プライマー層
の上に前記合成樹脂を主材とする塗料又は舗装材
料を塗装して表面舗装層を形成するといつた手順
で行なわれる。また上の如き「塗床」構造に代え
て、プライマー層のさらに上面に、合成樹脂系接
着剤又はゴム系接着剤を塗布した上、塩化ビニル
のようなプラスチツク製タイル又はゴム製タイル
を貼着する場合もある。 いずれにしても、プライマー層は上述の如く粘
稠な高分子材料を主材とするので、該主材の粘度
を適宜調節しても、これに多量の短小繊維を混入
すると、著しく増粘されて平滑かつ迅速な塗装操
作を阻害することになる。したがつて、前記短小
繊維の混入量は自ずから制約を受けることとな
る。しかも、短小繊維は自体線状物体であるの
で、混入量が少ない場合、後述実験結果に示すご
とく効果は不充分であつた。 そこで、本考案者らは上の短小繊維に代えてガ
ラスフレークを混入した高分子材料によりプライ
マー層を形成したうえ、ブリスター発生状態を観
察した結果、舗装表面でのブリスター発生を完全
に防止しうることを確認した。これは、線状の短
小繊維と比べてガラスフレークが範板状小片物体
であるため、僅かな混入量でありながらプライマ
ー層内より広い面積に亘つて埋め尽されることに
よるものと推測される。 以上の実験結果を下表に示す。同表において、
試料Ａ，Ｂ及びＣは、それぞれエポキシ樹脂を主
材とし、該樹脂の100重量部に対して夫々15重量
部のアスベスト繊維Ａ、ガラス繊維とセメントの
混合物、Ｂ及びガラスフレークＣが混入されたも
のである。

【表】 上表から明らかな通り、短小繊維の混入では殆
んど効果を発揮しえなかつた。 上のガラスフレークは、主材中での分散性及び
粘度への影響などを勘案して２ないし80メツシ
ユ、好ましくは約40メツシユ程度のものが用いら
れ、また混入量は主材100重量部に対して５ない
し50重量部、好ましくは10ないし20重量部の割合
である。 本考案によれば、コンクリート下地の上面に上
述構成材料よりなるプライマー層が形成されたう
え、さらに該層の上面にエポキシ樹脂、ウレタン
樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子材料を主材
とする塗料又は舗装材により表面舗装層が形成さ
れる。 本考案の他の実施例によれば、コンクリート下
地上に、ガラスフレーク入り高分子材料によりプ
ライマー層が形成されたうえ、さらに該層上に、
合成樹脂系又はゴム系の光知接着剤を介してプラ
スチツク製又はゴム製タイルが貼着される。 以上の通り、本考案の床舗装構造体は、コンク
リート下地と表面舗装層との間に介在するプライ
マー層を形成する際、該層の構成主材である高分
子材料中にガラスフレークを混入することによ
り、コンクリート下地の含浸水分の膨張圧力によ
るブリスター発生を確実に防止できるという効果
を有する。 以下図示の実施例について説明する。第１図は
低水位地帯に建築された鉄筋コンクリート製建造
物の一階部分床面に発生したブリスターを補修す
るために適用された本考案の床舗装構造物の部分
断面図である。即ち、先づ補修すべき床面から既
設の表面舗装層及びプライマー層が完全に〓り取
られた後、露出したコンクリート下地の表面には
所定の研削及び清浄処理を施された。次いで、本
考案に従つて前記コンクリート下地１の上面に、
ウレタン樹脂100重量部に対して平均粒径が45メ
ツシユ程度のガラスフレーク３を約15重量部混入
された高分子材料からなるプライマー層２が形成
された上、さらに該プライマー層２の表面にウレ
タン樹脂を主材とする新たな表面舗装層４が塗装
された。 以上の如く構成された本例床舗装構造物は、そ
の後、表面にブリスターが全く発生することもな
く実用に供されている。 第２図は前例建造物とは別の、しかし同様な多
湿地帯に建造された新築の鉄筋コンクリート建築
物の床面に適用された他の実施例を示す部分断面
図である。本例の床舗装構造物は、コンクリート
下地１と、該下地１上に敷き均らされた、エポキ
シ樹脂100重量部に対して平均粒径30メツシユ程
度のガラスフレーク３を約15重量部混入された混
合物からなるプライマー層２と、該プライマー層
２の表面に塗り付けられた酢酸ビニル樹脂を主材
とする接着剤層５を介して貼着されたポリ塩化ビ
ニル製タイル４′とからなる。本例床構造物もま
た、建築後約６ケ月を経過した現在、表面舗装層
であるタイル４′にブリスターが発生することも
なく供用されている。 本考案は、以上の通り低水位地帯や多湿地帯等
に建造される建築物又は打設コンクリートの乾燥
が不充分な建築物における床舗装面でのブリスタ
ー発生を完全に防止できる床舗装構造を提供す
る。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本考案の実施例を示す部分
断面図である。 １：コンクリート下地、２：プライマー層、
３：ガラスフレーク、４：表面舗装層、４′：タ
イル（表面舗装層）、５：接着剤層。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) コンクリート下地層の上面に、プライマー層
   又はプライマー層及び接着剤層を介して高分子
   材料よりなる表面舗装層を形成されてなる床舗
   装構造物であつて、前記プライマー層がガラス
   フレークを混入された高分子材料を主材として
   構成されていることを特徴とする床舗装構造
   物。 (2) ガラスフレークが２ないし80メツシユの範囲
   の粒径を有し、かつ主材である高分子材料の
   100重量部に対して５ないし50重量部の範囲で
   混入されている登録請求の範囲第(1)項記載の床
   舗装構造物。