JPS6317990B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は鉄骨高層建築構造物の要素として骨組
されるブレース架構において、そのブレースの耐
震構造に関するものである。

建築構造物は従来から梁と柱により四角形に組
まれた軸組に対角線状に型鋼等のブレースを入れ
て補強されているが、近年の高層化した鉄骨構造
物においては、従来のブレースでは強震時や強風
時に構造体に巨大な水平力が作用した場合、ブレ
ースが大なる圧縮力により座屈を起こして著しい
耐力低下をきたし、又、座屈後の剛性低下によつ
て架構全体としての良好な復元力特性を発揮でき
なくなる欠点がある。

このようなブレースの座屈を防止するために該
ブレース材として剛性の大なるものを用いると架
構全体に過大な剛性を与えることになり、柔構造
建築物に良好な動的特性を持たせることができな
くなるものである。

本発明はこのような問題点を解消するために、
耐力や剛性を自由に選択できると共に急激な耐力
低下を起すことなく粘り強い性質を有する耐震構
造体であつてこの耐震構造体をブレースの適宜個
所にブレースと同軸線上に接続させるように構成
したことを特長とするブレース架構における耐震
構造を提供するものである。

本発明の実施例を図面について説明すると、第
１，２図において、適宜間隔毎に立設した柱Ｂ，
Ｂの上下部に梁Ｃ，C′を架設して矩形のラーメン
架構が形成され、このラーメン架構に型鋼、棒鋼
等よりなるブレース６を対角線状に或いは第２図
に示すように上部梁Ｃの中央部から下部梁C′の両
端隅部間に接続して配設されるものであるが、こ
のブレース６の適宜個所を２分してその分断端部
間に本発明の耐震構造体Ａが同一軸線上にして接
続されるものである。

第３，４図はその耐震構造体の一例を示すもの
で、矩形状の鋼製板よりなる中央部材１ａ，１
a′を適宜間隔２を存して直列状に配設し、この中
央部材１ａ，１a′の両側方に長さがこれらの中央
部材１ａ，１a′間の寸法に略々等しい矩形状の鋼
製板よりなる側方部材３ａ，３ａを中央部材１
ａ，１a′から一定間隔を存して配設し、さらに中
央部材１ａ，１a′と側方部材３ａ，３ａの対向面
間に鋼製の細長矩形板よりなる細長部材４ａの両
端部を一体的に固着する。この細長部材４ａは複
数本、中央部材の長さ方向に所定間隔毎に設けら
れてある。

なお、細長部材４ａは第４図に示すように中央
部材の巾方向の中央部において長さ方向に並列さ
せてもよく、第５図に示すように中央部材の両側
部において長さ方向に２列状態で配設してもよ
い。又、中央部材１ａ，１a′や側方部材３ａ，３
ａの対向面に補強板５を一体的に固着して座屈に
対する耐力を増大させておいてもよい。

細長部材４ａの両端面を中央部材１ａ，１a′と
側方部材３ａ，３ａに一体的に固着させる手段と
しては、端面を中央部材１ａ，１a′と側方部材３
ａ，３ａに接触させて溶接させて溶接するか或い
は中央部材１ａ，１a′と側方部材３ａ，３ａに長
さ方向に一定間隔毎に通孔を穿設し、この通孔に
細長部材４ａを挿嵌させたのち溶接してもよい。

こうして複数本の細長部材４ａは中央部材１
ａ，１a′及び側方部材３ａ，３ａに対して直角方
向に一体的に固着されて耐震構造体Ａが形成さ
れ、中央部において分離２した中央部材１ａ，１
a′の端面にブレース６の分割端面を溶接等により
同軸線上に接続して一体化し、ブレースの耐震構
造として使用される。

なお、ブレース６の適所を２分割し、その分割
ブレース６ａ，６ｂの対向端面から適宜長さ部分
を中央部材１ａ，１a′に使用してその両側に複数
本の細長部材４ａを介して側方部材３ａ，３ａを
一体的に設けてもよい。

次に、第６図は中央部材１ｂを一枚の矩形状鋼
製板で形成し、この中央部材１ｂの両側に所定間
隔を存して長さ方向の中央部材を適宜寸法切除２
した矩形状鋼製板よりなる側方部材３ｂ，３b′を
並設し、中央部材１ｂと側方部材３ｂ，３b′との
対向面間を前記実施例と同様に鋼製の細長矩形板
よりなる複数本の細長部材４ｂにより一体的に連
結した耐震構造体Ａ２を示すものである。

この耐震構造体Ａ２は、中間で２分した分割ブ
レース６ａ，６ｂの対向端面に門形状の連結部材
７ａ，７ｂを溶接等により一体化し、これらの連
結部材７ａ，７ｂの両端面を中央部が分割された
両側方部材３ｂ，３b′の端面に一体的に固着して
ブレース６ａ，６ｂの同一軸線上に連結した状態
で使用される。

第７図は第３図に示した実施例において、細長
部材４ｃとしてボルトを使用した耐震構造体Ａ３
を示すものである。

即ち、矩形状鋼製板よりなる中央部材１ｃ，１
c′と側方部材３ｃ，３ｃとに長さ方向に一定間隔
毎に通孔（図示せず）を穿設し、これらの長さ方
向に直交する方向で同軸線上に連通する通孔間に
順次ボルトよりなる細長部材４ｃを挿通したのち
各部材１ｃ，１c′，３ｃの両側面を挟持するよう
にしてナツト８，８を螺締したものである。

以上の各実施例においては、細長部材として単
一部材を複数使用したが一枚の板状物によつて形
成することもできる。

即ち、第８図はその実施例を示すもので、鋼製
矩形板よりなる左右一対の側方部材３ｄ，３ｄの
対向面中央部間又は両側部間に同じく鋼板製矩形
部材９の両側端面を溶接等により一体的に固着す
る。この矩形部材９の長さ方向の中央部には横長
の大形長孔１０を穿設すると共に該大形長孔１０
を中央にして上下両側部に横長の小形長孔１１を
長さ方向に所定間隔毎に穿設して隣接する長孔間
の桟状部分を前記実施例と同様な細長部材４ｄに
形成し、さらに両側小形長孔１１，１１間を分割
するようにして矩形部材９を長さ方向に２分割
し、該分割対向端面を矩形状鋼板よりなる中央部
材１ｄ，１d′の両側面又は２分したブレースの分
割部両側面に一体的に固着したものである。

従つて、この耐震構造体Ａ４においては中央の
大形長孔１０が前記各実施例の中央切除部に当る
ものである。

次にこのように構成された耐震構造体Ａの作用
を述べると、第１図及び第２図において説明した
ように、ブレース６に耐震構造体Ａが同一軸線上
にして接続された建築構造物において、該構造物
に地震等による水平力が作用したとき、引張力又
は圧縮力（以下外力という）を受ける。この外力
はブレース６と一体的に接続している部材、即ち
中央部において分離２している中央部材又は側方
部材を介して複数本の細長部材に伝達される。中
央部材及び側方部材は外力と同一方向に固定され
てあり、細長部材は直角方向に配設されているた
め、細長部材に外力が曲げ剪断力として作用し、
細長部材は巾方向に変形しようとする。

この外力と細長部材の変形量との関係は、曲げ
剪断特性、即ち、外力が小さい場合は弾性的に変
形し、外力が増加してある大きさ以上になると塑
性的に変形して破壊までの変形量が大なる特性を
示す。

この特性によつて細長部材は、中、小地震時や
強風時等のように外力が小さい時には弾性変形を
行つて外力を吸収し、大地震などのように外力が
大なる時には塑性変形を行つて外力を吸収するも
のである。そして又、中央部材や側方部材は、細
長部材が曲げ剪断破壊を行う程の外力であつても
引張力による降伏や圧縮力による座屈が生じない
ように、さらには細長部材はブレースが圧縮力に
よつて座屈する前に降伏するように設計されてい
るものである。従つて、このような耐震構造を有
するブレースは大きな外力を受けても座屈せず、
架構全体は耐力低下や剛性の低下を起すことはな
い。

なお、以上の実施例においては、中央部材や側
方部材、細長部材等を鋼製材料で形成した鉄製或
いは合金材料等の金属製材料より形成してもよ
い。

以上のように本発明は、金属製中央部材の両側
に適宜間隔を存して同じく金属製側方部材を並設
し、これらの側方部材と前記中央部材との対向面
間をこれらの部材の長さ方向に所定間隔毎に配設
した複数本の金属製細長部材で一体的に連設する
と共に前記中央部材の長さ方向の中央部又は両側
方部材の長さ方向の中央部のいずれかを切除して
中央部を切除された中央部材又は両側方部材の両
端面にブレースを同軸線上に一体的に接続するよ
うに構成したことを特徴とするブレース架構にお
ける耐震構造に係るものであるから、ブレースに
作用する引張力や圧縮力などの外力をこの外力の
作用方向に対して直角に配した細長部材による曲
げ剪断抵抗力で抗するようにしたので、該細長部
材の断面積や長さ、本数を適宜に組合せ選択する
ことによつて任意の耐力と剛性と粘り強さを得る
ことができ、従つて、架構の耐力や剛性等を自由
に設定できるものであり、又、地震時の大きな水
平力に対して細長部材の曲げ剪断降伏をブレース
の座屈に先行させることによつて降伏後の靭性が
期待でき、良好な復元力特性を有する耐震構造と
なるものである。

さらに、細長部材の降伏によつてブレースの座
屈が防止でき、架構全体の耐力や剛性の低下を防
止することができるものである。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示すもので、第１図及
び第２図は本発明の耐震構造体を設けた架構の簡
略正面図、第３図は耐震構造の例１を示す正面
図、第４図及び第５図は耐震構造体の２種の横断
面図、第６図乃至第８図は耐震構造体の例２乃至
例４を示す正面図である。 Ａ１〜Ａ４……耐震構造体、１ａ〜１ｄ……中
央部材、２……切除部、３ａ〜３ｄ……側方部
材、４ａ〜４ｄ……細長部材、６……ブレース。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 金属製中央部材の両側に適宜間隔を存して同
   じく金属製側方部材を並設し、これらの側方部材
   と前記中央部材との対向面間をこれらの部材の長
   さ方向に所定間隔毎に配設した複数本の金属製細
   長部材で一体的に連設すると共に前記中央部材の
   長さ方向の中央部又は両側方部材の長さ方向の中
   央部のいずれかを切除して中央部を切除された中
   央部材又は両側方部材の両端面にブレースを同軸
   線上に一体的に接続するように構成したことを特
   徴とするブレース架溝における耐震構造。