JPS6310030B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、主として車両に採用されるラツク
アンドピニオン式ステアリング装置に関するもの
である。

第１図、第２図で示すラツクアンドピニオン式
ステアリング装置は、周知のようにボデー側に固
定されたラツクハウジング２に対し、一方端部に
ピニオン３をもつピニオンシヤフト４が軸支さ
れ、さらにこのピニオン３と噛合うラツク歯６を
備えたラツクバー５が挿入されている。そして、
ピニオンシヤフト４の他方端部はステアリングメ
インシヤフト（図示しない）に対して連結され、
ラツクバー５の両端はそれぞれタイロツド２０を
経て車軸のナツクルアーム（図示しない）に連結
されるものである。また、上記ピニオン３とラツ
ク歯６との噛合位置の反対側において、ラツクハ
ウジング２に設けたラツクガイド孔１４にはラツ
クガイド７が挿入されていて、その先端の半円筒
面形状をしたガイド面１１がラツクバー５の背面
に当接する。さらに、ラツクガイド７の下方には
ラツクガイド７の後退量を規制するセツトボルト
８が螺合されているとともに、このセツトボルト
８とラツクガイド７との間にはラツクガイド７を
常にラツクバー５の方向に付勢する圧縮バネ９が
介装されている。なお、上記のラツクガイド７と
セツトボルト８との間には、このラツクガイド７
が前記のガイド孔１４に沿つて一定量だけ後退し
得るように間隙t′（ガイドクリアランス）が設け
られている（第２図参照）。

上記の第１図、第２図で示す構成において、ピ
ニオン３とラツク歯６との間で大きい回転力が伝
達されるときは、ピニオン３の圧力角に基づき、
ラツクバー５をピニオン３から押し離す方向の離
反力が生じる。この離反力によるラツクバー５の
移動は、ラツクガイド７が前記の間隙t′を詰めて
セツトボルト８に当ることにより、許容限度内に
おさめられる。したがつて、ラツクガイド７の素
材としては、車両の悪路走行時などにおいて大き
な離反力が発生しても破損しないように剛性の高
い金属などの材料が一般に採用されている。しか
しながら、特に悪路走行時においては前記圧縮バ
ネ９の付勢力より大きい離反力が発生する頻度が
高く、その都度ラツクガイド７とセツトボルト８
とが衝突して騒音発生の原因となりやすい。

この対応策としては、ラツクガイド７の剛性を
下げることが有効であり、このためには形状的な
工夫とともにその素材を例えば低剛性の合成樹脂
材とすることが考えられ、これは車両の軽量化及
びコスト低減の観点からも望ましいものである。
ただし、樹脂製のラツクガイドは、大きな離反力
を受けたときにも破損しないだけの十分な強度を
獲得することが困難である。

この発明の目的は、樹脂のような低剛性の素材
によるラツクガイドの使用を可能とし、もつて騒
音を抑え、かつ軽量・安価なラツクアンドピニオ
ン式ステアリング装置を提供することにある。

すなわち、この発明はラツクとピニオンとの間
で伝達される回転力、換言すればこれら両者間で
発生する上記の離反力につき、その大きさと発生
頻度を調べ、低剛性の素材を用いたときにその変
形破壊を引き起すような大きい離反力が発生する
頻度はきわめて少ないのに対し、低剛性の素材で
も使用可能で、騒音に結びつくような小中程度の
離反力が発生する頻度は多いことに着目した。

この結果、本発明はラツクハウジングのラツク
ガイド孔の周辺に、ラツクガイドの後退量規制値
よりも大きい間隙をもつてラツクバー当接部を設
け、低剛性素材を採用したラツクガイドの変形破
壊に結びつく大きい離反力は直接ラツクハウジン
グのラツクガイド当接部で受け、しかも騒音に結
びつく高頻度小中程度の離反力は低剛性素材によ
るラツクガイドで受けて騒音発生を抑制し得る構
成とした。

以下、この発明の実施例につき図面によつて説
明する。前記の第２図と対応して表した第３図及
び第３図の−線断面を表した第４図におい
て、ラツクアンドピニオン式ステアリング装置の
ラツクハウジング２内には、一方端部にピニオン
３をもつピニオンシヤフト４がベアリング１によ
つて回転可能に軸支されている。ラツクバー５
は、その軸芯に沿つた一面の一定範囲においてラ
ツク歯６が加工されていて、このラツク歯６と前
述のピニオン３とが互いに噛合うようにラツクハ
ウジング２の挿通孔１３の中に挿通されている。
そして、ピニオンシヤフト４の他方端部は図示し
ないステアリングメインシヤフトに対して連結さ
れ、ラツクバー５の両端はそれぞれタイロツドを
経て車軸のナツクルアームに対して連結される。

ラツクガイド７は低剛性のポリアセタール等の
合成樹脂材で有底円筒状に形成され、その上端面
（底面に相当）にはラツクバー５の外周円筒面に
対応する半円筒状のガイド面１１が形成されてい
る。ラツクハウジング２において、上記のピニオ
ン３とラツク歯６との噛合い位置の反対側には、
ピニオンシヤフト４の軸芯とラツクバー５の軸芯
とに直角な方向にガイド孔１４が形成されてい
て、その下方開口端側の内側壁には雌ネジ１６が
加工されている。また、ハウジング２の上記挿通
孔１３には、ガイド孔１４が開口する部分におい
て一定の範囲にわたつて、その他の部分よりは小
径で、ラツクバー５の外径よりわずかに（直径で
約１mm）大きいラツクバー当接部１７が形成され
ている。ちなみに、挿通孔１３の内径はラツクバ
ー５の外径よりも４mm〜５mmほど大きい寸法に設
定されている。

上記のガイド孔１４には、ラツクガイド７が挿
入され、その上端のガイド面１１がラツクバー５
の背面に当接している。また、このガイド孔１４
の上記雌ネジ１６に螺合されるセツトボルト８
は、その内端部に圧縮バネ９の位置決め座１２を
もつている。このセツトボルト８とラツクガイド
７との間には、上記圧縮バネ９が介装されてい
て、ラツクガイド７を常にラツクバー５の方向に
付勢している。そして、ラツク歯６とピニオン３
とが正規に噛合つた状態で、ラツクガイド７とセ
ツトボルト８との間には、このラツクガイドの後
退量規制値に相当する間隙（ガイドクリアラン
ス）ｔ１が設定され、またラツクバー５の背面と
ラツクハウジング２の前記ラツクバー当接部１７
との間には間隙ｔ２が設定されている（第４図参
照）。

間隙ｔ１は、ピニオン３の加工誤差、ピニオン
シヤフト４とピニオン３の同芯度、ラツク歯６の
加工誤差、ラツクバー５とラツク歯６との平行度
などの影響を受けてラツクバー５が前記ガイド孔
１４の軸線に沿つた方向へ変位したとき、その変
位量を吸収しうる寸法として規定されている。従
つてその規定値を越える変位は、ラツクガイド７
が間隙ｔ１を詰め、それ以上の後退を規制するこ
ととなる。この間隙ｔ１の値は、通常約0.05mm程
度である。

また、上記の間隙ｔ２はラツクバー５が後述す
る離反力を受け、変位ｔ１を越えて移動する場合
に、ラツクガイド７に加えられる変形量の許容値
を越えない範囲で定められている。この間隙ｔ２
は、本実施例については要求荷重約300Kg（騒音
上問題となるほどの発生頻度を伴わない範囲での
最大の離反力）に対するラツクガイド７の弾性変
形量約0.45mm（樹脂の弾性係数、ラツクガイド７
の形状で異なる）に間隙ｔ１を加えた0.5mm程度
である。なお、セツトボルト８はそのねじ込み量
を調整して間隙ｔ１を設定した状態で、ロツクナ
ツト１５によつてハウジング２にロツクされる。

以上のように構成したラツクアンドピニオン式
ステアリング装置においては、ステアリングホイ
ール（図示しない）の操作により、ピニオン３が
回転し、これに連動してラツクバー５が第４図の
左右方向へ往復移動する。このとき、先に述べた
ピニオン３やラツクバー５の加工誤差等に起因し
てラツクバー５がラツクガイド７と共に、このガ
イド７の軸線方向へ変位する。このときの変位ｔ
が０＜ｔ＜ｔ１の範囲にある限り、この変位ｔは
圧縮バネ９の伸縮によつて吸収される。悪路走行
時や旋回時のようにラツク歯６とピニオン３との
間に大きい回転力が伝達される場合は、すでに述
べたようにピニオン３の圧力角に起因してピニオ
ン３からラツクバー５を押し離す方向の離反力が
発生する。この離反力が、例えば悪路走行時に高
頻度で発生する小中程度の力（約300Kg以下）の
場合は、ラツクバー５の変位ｔはｔ１＜ｔ＜ｔ２
の範囲となる。そして、この変位ｔは圧縮バネ９
の撓みｔ１、及びラツクガイド７がセツトボルト
８に当接したあとのラツクガイド７の弾性的圧縮
変形ｔ−ｔ１（＜ｔ２）として吸収される。

ｔ２は前述したようにラツクガイド７に加えら
れる変形量の許容値を越えない範囲で定めてある
ので、この変形でラツクガイド７が破損すること
はない。また、ラツクガイド７がセツトボルト８
と衝突する時の騒音は、ラツクガイド７が樹脂で
あることで抑制され、問題となることはない。

比較的まれにしか発生しない大きな離反力（約
300Kg以上）の場合、ラツクバー５は圧縮スプリ
ング９、ラツクガイド７を順次変形させながらｔ
２だけ変位し、ラツクハウジング２のラツクバー
当接部１７と直接当接する。そして、それ以後の
離反力の増加分は全てラツクハウジング２のラツ
クバー当接部１７で受けとめられ、ラツクガイド
７が破損することはない。また、ラツクバー５と
ラツクバー当接部１７との衝突による騒音は、そ
の発生頻度が小さいため車両騒音としては問題に
ならない。

以上に述べた離反力とラツクバー５の変位の関
係は第５図の実線で示すとおりである。この関係
は、変位ｔが０＜ｔｔ１の範囲では圧縮バネ９
のバネ定数で定まる直線上をたどり、ｔ１＜ｔ
ｔ２の範囲では圧縮バネ９のバネ定数とラツクガ
イド７の弾性係数で定まる直線上をたどり、さら
にｔ２＜ｔの範囲ではラツクハウジング２の弾性
係数で定まる直線上をたどる。図から明らかなよ
うに、ラツクハウジング２にラツクバー当接部１
７を設けないときは、離反力が約300Kgを越える
と図中２点鎖線上をたどつてラツクバー５の変位
が増大し、やがてラツクガイド７が破損（図中×
印）するのに対して、本実施例の場合は、約300
Kg以上に増加しても変位はほとんど変らないので
ラツクガイド７が破損することはないのである。

以上のように本発明は、ラツクガイドとセツト
ボルトとの間においてここに介装したスプリング
によつて通常ではラツクガイドの後退量規制値に
相当する隙間をもたせるとともに、このラツクガ
イドを低剛性で弾性的に圧縮変形可能な素材で形
成し、しかもラツクハウジングの内部におけるガ
イド孔の周辺部には上記ラツクガイドの後退量規
制値に相当する隙間にラツクガイドの圧縮変形の
許容値を越えない値を加えた寸法の隙間をもつて
ラツクバーの背面に対向するラツクバー当接部を
設けたことにより、例えば悪路走行時においてラ
ツクバーがラツクガイドの後退量規制値を越えて
変位し、このラツクガイドを圧縮するように作用
した場合、ラツクバーの背面は前記ラツクバー当
接部で受止められ、ラツクガイドに対してその変
形許容値を越えた力が加わることを防止できる。
このため、ラツクガイドを軽量化かつ安価な低剛
性の素材で形成することが可能となり、もつて悪
路走行時などにおける騒音の低減、ならびにステ
アリング装置の軽量化あるいはコストの低減を達
成することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はラツクアンドピニオン式ステアリング
装置におけるラツクハウジングの外観を表した正
面図、第２図は従来技術のラツクガイド構造を示
す断面図、第３図はこの発明の実施例を第２図と
対応して表した断面図、第４図は第３図−線
断面図、第５図はこの実施例における離反力とラ
ツクバーの変位との関係を示す特性図である。 ２……ラツクハウジング、３……ピニオン、４
……ピニオンシヤフト、５……ラツクバー、６…
…ラツク歯、７……ラツクガイド、８……セツト
ボルト、９……圧縮バネ、１４……ラツクガイド
孔、１７……ラツクバー当接部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ラツクハウジングの内部で回転するピニオン
   に常時かみ合つたラツク歯を有し、ピニオンの回
   転に伴つてラツクハウジング内を往復動作するラ
   ツクバーと、ピニオンおよびラツク歯のかみ合い
   位置の反対側においてラツクハウジングに形成さ
   れたガイド孔と、このガイド孔内に組み込まれて
   ラツクバーの往復動作を案内すべく、その背面に
   接触するラツクカイドと、このラツクガイドの後
   から前記ガイド孔にねじ込まれ、ラツクガイドが
   ガイド孔に沿つて後退する量を規制するセツトボ
   ルトと、このセツトボルトおよびラツクガイドの
   間に介装されてラツクガイドを所定の力でラツク
   バーの背面に押しつけるように作用するスプリン
   グとを備えたラツクアンドピニオン式ステアリン
   グ装置であつて、前記のラツクガイドとセツトボ
   ルトとの間にはここに介装した前記スプリングに
   よつて通常ではラツクガイドの後退量規制値に相
   当する隙間をもたせているとともに、このラツク
   ガイドを低剛性で弾性的に圧縮変形可能な素材で
   形成し、しかも前記ラツクハウジングの内部にお
   ける前記ガイド孔の周辺部には前記ラツクガイド
   の後退量規制値に相当する隙間にラツクガイドの
   圧縮変形の許容値を越えない値を加えた寸法の間
   隙をもつてラツクバーの背面に対向するラツクバ
   ー当接部を設けてなるラツクアンドピニオン式ス
   テアリング装置。