JP4258304B2 - 締結構造及びこれに使用する座金並びにボルト - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、取付部材が被取付部材に少なくともボルトを含む締結部材により締結される締結構造、及びこれに使用する座金並びにボルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車体フレームにステアリングギアボックスをゴムブッシュを介してボルト、ナット及びワッシャー(座金)により締結する締結構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の締結構造では、ボルトは、ステアリングギアボックスに組み込まれる中空円筒形のカラーに挿通され、カラーの一端面がワッシャーの座面を構成している。また、ワッシャーは、カラーの一端面に対向する中央部以外の領域(即ち、外周部)では、ステアリングギアボックスに対して離間している。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−290761号公報(第3頁、及び、第5頁第5図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特に、ステアリングギアボックスのように車外(典型的には、車体下面)に取り付けられる部品やその締結部に関しては、路上の障害物(例えば、縁石や車輪止め等の突起物)との干渉が生じやすい故に、当該干渉を防止するか、若しくは、当該干渉が避けられない場合には、当該干渉による破損や変形を最小限に抑えて、必要な機能を確保することが望ましい。この点、上述の従来の締結構造においては、路上の障害物がワッシャーの外周部に干渉すると、ワッシャーの外周部の変形に伴いワッシャーの中央部(即ち、ボルト座面部)も変形し、ボルトの軸力が低下してしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、ワッシャーに大きな外力が作用した場合にもボルトの軸力の低下を防止することができる、締結構造及びこれに使用する座金並びにボルトを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、請求項1に記載する如く、取付部材が被取付部材に少なくともボルトを含む締結部材により締結される車体下部の締結構造において、
前記締結部材と前記取付部材との間に、ボルト軸が挿通する中央穴を有する座金が介在し、該座金が、前記締結部材の座面を含む中央部と、外周部とを含み、
前記座金における前記中央部と前記外周部の間に、周方向で全周に亘って溝部が形成されることを特徴とする、締結構造により達成される。
【0007】
本発明によれば、縁石や車輪止め等のような路面上の突起物や段差等との強干渉が生じうる車体下部の締結構造に対して、当該強干渉後のボルト軸力の低下を防止することができる。尚、本発明において、取付部材と被取付部材とは、ボルト及びナットからなる締結部材により、若しくは、ボルトと被取付部材に形成されたネジ溝により、締結されてよい。従って、座金は、取付部材とボルト及び/又はナットとの間に介在してよい。
【0008】
部は、周方向で全周に亘って、即ちワッシャーの周方向に沿って連続的に形成される。
【0009】
また、本発明による締結構造は、ワッシャーの外周部と取付部材との間に隙間が形成されている場合のような、ワッシャーの変形が起こりやすい場合においても有効に機能する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、車両のステアリングギアボックス周辺の要部を示す正面図である。本実施例では、本発明による締結構造は、パワーステアリングギアハウジング10(以下、「PSギアハウジング10」という)とサスペンションメンバー20間の締結部に適用される。但し、本発明は、特にこの両者の締結部に限定されるものではなく、車体下部におけるあらゆる2部品間の締結部に対しても適用可能である。
【0012】
図1に示すように、PSギアハウジング10は、本発明による締結構造(図中、X部により指示)を介してサスペンションメンバー20に支持されている。サスペンションメンバー20は、PSギアハウジング10と略並列に車幅方向に延在し、車体フレームの一部を構成する。本発明による締結構造は、サスペンションメンバー20の左右両側にそれぞれ適用され、PSギアハウジング10は、サスペンションメンバー20に2点で支持される。尚、PSギアハウジング10は、エンジン等の搭載性を考慮して、サスペンションメンバー20よりも車両前側に組み付けられる。
【0013】
尚、公知の如く、PSギアハウジング10は、車両の操舵機構の一部を構成するギア類やパワーシリンダ等を収容する。概説すると、ステアリングシャフトの下端に設けられるピニオンは、PSギアハウジング10内においてラックバーに噛合され、ラックバーの両端には、それぞれタイロッドの一端が接続されると共に各タイロッドの他端にはナックルアームを介して転舵輪が接続される。尚、本発明は、PSギアハウジング10の構成を含む操舵機構の構成を特定するものではなく、如何なる操舵機構の構成に対しても適用可能である。
【0014】
図2は、図1のラインI−Iに沿って切断された際の、本発明による締結構造の断面図を示す。図2に示すように、本実施例のPSギアハウジング10は、サスペンションメンバー20にボルト30、ナット32及びワッシャー40を介して締結されている。
【0015】
PSギアハウジング10には、ボルト30を挿通するための中空部12が形成されている。実際には、この中空部12に中空円筒形のカラー14が配設され、カラー14の中空部にボルト30が挿通される。尚、カラー14の中空部は、サスペンションメンバー20の挿通穴22と略同径に設定される。カラー14の外周面には、ゴムブッシュ16が設けられる。カラー14は、ゴムブッシュ16が加硫接着された状態で、PSギアハウジング10の中空部12に圧入される。従って、ゴムブッシュ16は、カラー14の外周面と中空部12の周面の間に形成される環状の隙間に配置されることになる。かかる構成では、PSギアハウジング10は、サスペンションメンバー20に対してゴムブッシュ16により弾性的に支持されることになる。即ち、ゴムブッシュ16は、路面から車輪等を介してPSギアハウジング10に伝達される入力をその径方向の弾性変形により吸収する機能を果たす。
【0016】
カラー14の車両前側の端面15は、ワッシャー40の座面を構成している。このカラーの端面15は、ワッシャー40の外径に比して小さい外形を有している。従って、ワッシャー40は、その中央部42のみでカラーの端面15と面で接触している。尚、図2に示す実施例では、カラーの端面15の外形は、ボルト30の頭部の外形と略同一に設定されている。
【0017】
ワッシャー40の外周部44とPSギアハウジング10の車両前側の端面11との間には、ボルト軸方向に隙間Δが形成されている。この隙間には、ゴムブッシュ16の端部が配置される。かかる構成では、上述と同様、ゴムブッシュ16は、路面から車輪等を介してPSギアハウジング10に伝達される入力をその軸方向の弾性変形により吸収する機能を果たす。また、ワッシャー40の外周部44は、ゴムブッシュ16の端部を保護する機能(即ち、端部のはみ出しを防止する機能)をも果たす。
【0018】
図3(A)は、本実施例のワッシャー40を上面図であり、図3(B)は、ワッシャー40の側面図である。図3(A)及び図3(B)に示すように、ワッシャー40は、ボルト30の軸径に対応した中央穴を有する円板状の部材である。ワッシャー40の中央部42は、中央穴の外周側に画成され、ワッシャー40の外周部44は、中央部42の外周側に画成される。本実施例では、ワッシャー40の中央部42は、ワッシャー40の外周部44に比して大きな板厚に設定される。ワッシャー40の中央部42は、上述の如く、ボルト30の頭部とカラーの端面15の間に挟まれる部位(即ち、ボルト30の座面部)であり、ボルト30の必要な軸力を確保する上で重要な部位となる。このため、ワッシャー40の中央部42の外径r2は、好ましくは、少なくともボルト30の頭部の外形と同一若しくはそれよりも大きくなるよう設定される(図2参照)。
【0019】
ところで、上述の如く、種々の要件により、PSギアハウジング10がサスペンションメンバー20よりも車両前側に設定され、両者の締結部が車両下方に設定される場合(特に、締結部が車体下部に設定され、路面に対して露出している場合)、当該締結部が路上の縁石や車輪止め等の路上突起物に干渉する可能性がある。
【0020】
次に、図4を参照して、突起物に干渉した際の、本発明による締結構造の作用について説明する。図4は、図3のZ部を拡大した状態で示している。本実施例では、上述の如く、ワッシャー40の外周部44とPSギアハウジング10の端面11との間には隙間Δが形成されており、ワッシャー40の座面がワッシャー40全面で確保されていない。従って、図4(A)に示すように、車両前進中に車両前方にある突起物にワッシャー40が干渉すると、ワッシャー40の変形が引き起こされる。
【0021】
この際、従来的なワッシャー、即ち板厚が一定のワッシャーを用いた場合には、ワッシャー全体の変形が生ずるため、ワッシャーの中央部(即ち、ボルトの座面部)にまで変形が及び、当該ワッシャーの中央部の変形に起因したボルトの軸力の低下が生ずることになる。
【0022】
これに対して、本実施例では、上述の如く、ワッシャー40の外周部44が中央部42に比して薄肉に形成されているので、図4(B)に示すように、ワッシャー40の外周部44の変形に伴う中央部42の変形が最小限に抑えられる。即ち、本実施例によれば、突起物との干渉時に最弱部位であるワッシャー40の外周部44のみを実質的に変形させることができ、これにより、中央部42への曲げモーメントの影響が小さくなり、ワッシャー40の中央部42の変形を最大限に防止することができる。このため、本実施例によれば、突起物とワッシャー40が干渉した場合であっても、ワッシャー40の中央部42の変形に起因したボルト30の軸力の低下を防止することができる。
【0023】
また、本実施例では、上述のようなワッシャー40の外周部44のみが変形する変形モードにより、車両の前方移動に伴って、突起物をPSギアハウジング10の下方へと滑らかに潜りこませる(即ち、車両が滑らかに突起物を乗り越える)ことができ(図中、矢印Y参照)、車両への衝撃やPSギアハウジング10へのダメージを最小限にすることができる。
【0024】
図5は、上述のワッシャー40の作用を実証する試験結果を示すグラフであり、ワッシャー40の外周部44の板厚t1と中央部42の板厚t2の関係と、ワッシャー40の中央部42の変形量との関係を示す。具体的には、図5は、横軸に板厚t2に対する板厚t1の比t1/t2を、縦軸に中央部42の変形量を示している。この試験は、図4に示すような突起物との干渉を再現する所定の治具を用いて実施されたものである。
【0025】
図5に示すように、比t1/t2が大きくなるにつれて、ワッシャー40の中央部42の変形量が増加していくことがわかる。他言すると、外周部44の板厚t1が小さくなるにつれて、ワッシャー40の中央部42の変形が抑えられることがわかる。ワッシャー40の中央部42の変形許容限度は、ボルト30の軸力の低下との関係で定まるが、本試験により、比t1/t2が約1/2より小さい場合に、ワッシャー40の中央部42の変形が許容限度内に収まることもわかった。従って、ワッシャー40の具体的な寸法としては、例えば外周部44の板厚t1を0.2mm、中央部42の板厚t2を0.4mm程度に設定してよい。但し、ワッシャー40の具体的な寸法は、締結箇所や締結部材等に依存した種々の要件により定まるものである。
【0026】
次に、図6を参照して、上述の実施例に対する代替実施例について説明する。図6は、各種代替実施例に係るワッシャー40を示す、図4(B)に対応する側面図である。
【0027】
図6(A)に示す代替実施例では、ワッシャー40の外周部44が、上述の実施例と同様、中央部42に比して薄肉に構成されている。但し、上述の実施例では、ワッシャー40の両面に段差を形成することで、ワッシャー40の中央部42から外周部44への遷移が実現されているのに対して、本代替実施例では、ワッシャー40のボルト30側の面にのみ段差を形成することで、ワッシャー40の中央部42から外周部44への遷移が実現されている。従って、本代替実施例のワッシャー40は、カラー14側では全面に亘って平らな面となる。当然に、ワッシャー40のカラー14側の面にのみ段差を形成することで、ワッシャー40の中央部42から外周部44への遷移が実現されてもよい。いずれの場合であっても、上述の実施例と同様、突起物との干渉時に最弱部位であるワッシャー40の外周部44のみを実質的に変形させることができ、ワッシャー40の中央部42の変形を最大限に防止することができる。尚、本代替実施例の場合も、上述の実施例と同様に、ワッシャー40の外周部44の板厚t1と中央部42の板厚t2の関係が決定されてよい。
【0028】
尚、上述の実施例の場合も同様であるが、ワッシャー40の中央部42から外周部44への遷移、即ち板厚変化は、好ましくは、急激に実現される(即ち、ワッシャー40の中央部42の周面(板厚変化面)と外周部44の基本面とのなす角度が90°となるようにする)。但し、板厚変化は、径方向の短い範囲内で実現されるのであれば、徐々に変化するものであってもよい。また、ワッシャー40の中央部42の周面と外周部44の基本面との間には、好ましくは、小さな角Rが付けられるが(理想的には、R=0)、製造上の観点からある程度の角R(例えば、R=0.5)が付けられてもよい。
【0029】
図6(B)に示す代替実施例では、ワッシャー40の両面には、互いに対向する位置に、周方向に沿って溝46が形成されている。本代替実施例では、溝46よりも中央側がワッシャー40の中央部42(即ち、ボルト30の座面部)を構成し、溝46よりも外周側がワッシャー40の外周部44を構成する。尚、溝46は、ワッシャー40の何れか一方の面にのみ形成されるものであってもよい。いずれの場合であっても、溝46が形成された部位のワッシャー40の板厚と、その他の部位の板厚との関係は、上述の実施例の外周部44の板厚t1と中央部42の板厚t2の関係に対応するものであってよい。
【0030】
本代替実施例では、突起物との干渉時に、溝46が形成された応力集中部位を起点にワッシャー40の外周部44のみを曲げ変形させることができ、ワッシャー40の中央部42の変形を最大限に防止することができる。
【0031】
尚、上述した各実施例では、ワッシャー40は、略平らな円板状の部材であったが、ワッシャー40の外形はこれに限定されるものでなく、矩形や楕円形等であってもよい。また、上述した各実施例において、ワッシャー40は、ばね座金であってもよい。また、いずれの場合であっても、ワッシャー40は、ボルト30とは別に組み付けられるものであってよく、或いは、ボルト30に一体的に組み付けられているものであってよい。
【0032】
また、上述した各実施例は、サスペンションメンバー20に対するPSギアハウジング10の締結構造に関するものであったが、本発明は、車体下部(路面に対向する車体部位)における如何なる2つの部材の締結構造にも適用可能である。即ち、本発明は、図7に示すように、何らかの要件により、取付部材100がワッシャー40の外周部44に対して座面を提供できない構成に対して、適用可能である。かかる場合であっても、ワッシャー40の外周部44に衝撃力が作用した際に、ワッシャー40の外周部44のみを変形させることができ、ワッシャー40の中央部42の変形を最大限に防止することができる。
【0033】
また、上述した各実施例では、ワッシャー40の中央部42が、ボルト30の座面を構成するものであったが、ボルト30とナット32の位置関係が逆転する構成に対しては、ワッシャー40の中央部42が、ナット32の座面を構成することになる。
【0034】
また、上述した各実施例では、ボルト30がナット32に螺合することで、締結が実現されているが、被取付部材(上述の実施例の場合、サスペンションメンバー20の中空部周面)に螺子溝を設けることで、ナットを使用することなく締結が実現されるものであってもよい。
【0035】
また、上述した各実施例では、突起物との干渉時にワッシャー40の外周部44を塑性変形させる(即ち、中央部42と外周部44の境界部で座屈させる)ものであったが、この際に、ワッシャー40の外周部44を破断させることとしてもよい。
【0036】
また、上述した各実施例では、締結構造を構成するボルト30は、略水平面内で車両前後方向に延在するボルト軸を有しているが、ボルト軸は、略水平面内に延在する限り、如何なる方向に延在するものであってもよい。また、上述した各実施例は、車両前側の締結構造に関するものであるが、本発明は、車体下面における車両後側の締結構造にも適用可能である。従って、例えばボルト30の頭部が車両後側に向く車両後側の締結構造において、当該ボルト30と取り付け部材との間に上述のワッシャー40を介在させることも可能である。かかる締結構造の場合、車両後退時に対して、車両後方の突起物との干渉時に、上述と同様の効果を得ることができる。
【0037】
次に、図8以下の図面を参照して、本発明の第2の実施例に係る締結構造について説明する。図8は、第2の実施例に係る締結構造の断面を示し、上述の実施例に関する図2に対応する断面図である。本実施例は、締結構造を車両前側から覆う保護ブラケット50が設けられる点が、上述の実施例と異なる。保護ブラケット50は、図8に示すように、PSギアハウジング10にボルト52により締結されることで、PSギアハウジング10に固定・支持されてよい。
【0038】
図9(A)は、本実施例の保護ブラケット50を車両前方から見た際の正面図であり、図9(B)は、保護ブラケット50の側面図である。保護ブラケット50は、板金(例えば、板厚2mm)を曲げ加工して成形され、図8及び図9(B)に示すように、車両前方に凸となる凸状の断面を有している。即ち、本実施例の保護ブラケット50は、ボルト30の頭部に対向する略鉛直面内の基本面54と、基本面54の上下端から連続し、PSギアハウジング10に向かって基本面54に対して傾斜した上下の傾斜面56a,bとを有し、更に、上の傾斜面56aから連続し、ボルト52の座面を構成する略鉛直面内の取り付け面58を有する。保護ブラケット50の外形は、図9(A)に示すように、ボルト30の頭部及びワッシャー40を全体的に覆うことができるような大きさに設定されている。また、保護ブラケット50は、取り付け面58のみにより片持ち支持されており、保護ブラケット50の基本面54及び傾斜面56a,bとボルト30の頭部との間には、所定の隙間が形成されている。
【0039】
次に、図10を参照して、突起物に干渉した際の、本実施例による締結構造の作用について説明する。図10は、図8のZ部を拡大した状態で示している。本実施例では、図10(A)に示すように、車両移動中に路面上の突起物が車体下方を通過すると、突起物が先ず保護ブラケット50に干渉する。車両の移動が更に継続されると、保護ブラケット50の変形が進み、その背後にあるボルト30の頭部と干渉する。その後、保護ブラケット50は、図10(B)に示すように、ボルト30の頭部の縁部を支点として変形し始める。
【0040】
本実施例では、上述のような保護ブラケット50の変形モードにより、車両の前方移動に伴って、突起物をPSギアハウジング10の下方へと滑らかに潜りこませる(即ち、車両が滑らかに突起物を乗り越える)ことができ(図中、矢印Y参照)、突起物とワッシャー40との干渉を回避することができる。これにより、ワッシャー40の変形を防止することができ、上述の実施例と同様、ボルト30の軸力の低下を防止することができる。
【0041】
実施例のワッシャー40は、上述の各実施例のようなワッシャー40であってもよい。
【0042】
本願発明者は、保護ブラケット50の効果を確認すべく、保護ブラケット50の有無の各場合において実車路面干渉試験を実施した。図11は、その試験結果を示す表図である。本試験では、試験前後でPSギアハウジング10のボルト30の締付トルクを測定し、当該締付トルクの低下率を評価した。
【0043】
図11に示すように、保護ブラケット50の設定がない場合、干渉後に締付トルクが大きく低下するのに対して(即ち、低下率37.5%)、保護ブラケット50を設定した場合、干渉後の締付トルクの低下が改善されていることがわかる(即ち、低下率25%)。この結果から、保護ブラケット50を設定した場合、保護ブラケット50の変形に伴って突起物をPSギアハウジング10の下方へと滑らかに潜りこませることができるため、保護ブラケット50の設定がない場合に比して、ワッシャー40のより外周側でワッシャー40と突起物とを干渉させることができていることがわかる。即ち、保護ブラケット50を設定した場合、保護ブラケット50の設定がない場合に比して、ワッシャー40の中央部42(ボルト30の座面)の変形を大幅に低減でき、ボルト30の軸力の低下を防止することができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した各実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した各実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したようなものであるから、以下に記載されるような効果を奏する。即ち、本発明によれば、ワッシャーに大きな外力が作用した場合にもボルトの軸力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両のステアリングギアボックス周辺の要部を示す正面図である。
【図2】図1のラインI−Iに沿って切断された際の、本発明による締結構造の断面図を示す。
【図3】図3(A)は、本実施例のワッシャー40を上面図であり、図3(B)は、ワッシャー40の側面図である。
【図4】本発明による締結構造の作用の説明図である。
【図5】ワッシャーの板厚とワッシャー中央部の変形量との関係を示す試験結果である。
【図6】ワッシャーの代替実施例を示す図である。
【図7】締結部材のその他の実施例を示す図である。
【図8】図1のラインI−Iに沿って切断された際の、本発明の第2実施例による締結構造の断面図を示す。
【図9】図9(A)は、保護ブラケット50を車両前方から見た際の正面図であり、図9(B)は、保護ブラケット50の側面図である。
【図10】本発明の第2実施例による締結構造の作用の説明図である。
【図11】実車路面干渉試験結果を示す図である。
【符号の説明】
10 PSギアハウジング
11 端面
12 中空部
14 カラー
15 端面
16 ゴムブッシュ
20 サスペンションメンバー
22 挿通穴
30 ボルト
32 ナット
40 ワッシャー
42 中央部
44 外周部
46 溝
50 保護ブラケット
52 ボルト
54 基本面
56a,b 上下の傾斜面
58 取り付け面

Claims (6)

  1. 取付部材が被取付部材に少なくともボルトを含む締結部材により締結される車体下部の締結構造において、
    前記締結部材と前記取付部材との間に、ボルト軸が挿通する中央穴を有する座金が介在し、該座金が、前記締結部材の座面を含む中央部と、外周部とを含み、
    前記座金における前記中央部と前記外周部の間に、周方向で全周に亘って溝部が形成されることを特徴とする、締結構造。
  2. 前記座金の外周部と前記取付部材との間に隙間が形成されている、請求項1記載の締結構造。
  3. 前記締結部材及び前記座金を覆う保護ブラケットが設けられる、請求項1又は2記載の締結構造。
  4. 前記保護ブラケットは、前記取付部材としてのパワーステアリングギアハウジングに前記ボルトとは別の第2のボルトにより締結され、前記締結部材及び前記座金を車両前方から覆う、請求項3記載の締結構造。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載の締結構造において使用される座金。
  6. 請求項5記載の座金が一体的に組み付けられたボルト。
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