JPS6233380B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、アンボンドPC鋼材が複数スパンに
わたつて埋設される状態に躯体のコンクリートを
打設し、硬化後、このコンクリートを反力として
前記アンボンド鋼材を緊張することにより躯体コ
ンクリートにプレストレスを導入するコンクリー
ト構造体の構築工法において、前記アンボンド
PC鋼材におけるPC鋼材の中間部を躯体コンクリ
ートに固定するための方法に関する。

一般に、ポストテンシヨン方式によるプレスト
レス導入用PC鋼材として、PC鋼より線やPC鋼
棒等のPC鋼材の周囲にグリース等の潤滑材を塗
布し、その周囲をポリエチレン等の合成樹脂製の
スリーブで被覆したいわゆるアンボンドPC鋼材
を用いた場合、躯体コンクリートに対するPC鋼
材の定着は両端でのみ行なわれていた。

従つて、第１図に示す連続梁のように、長尺の
アンボンドPC鋼材Ａが複数スパンにわたつて埋
設させるコンクリート構造体Ｂにおいては、中間
部におけるPC鋼材潤滑材及び被覆スリーブで躯
体コンクリートＣと縁切りされ、自由に移動し得
るところから、一部のスパンに集中荷重Ｗが作用
した場合、この部分に鋼材の伸び量が集中し、そ
の結果、この部分におけるプレストレス導入の効
果が生じない可能性があつた。

このような問題は、アンボンドPC鋼材を各ス
パンごとに、あるいは、適当なスパンごとに躯体
コンクリートに固定することによつて解決できる
と思われるが、現状では、何の対策も講じられて
いない。

本発明は、上記の実情に鑑み、アンボンドPC
鋼材の所々を躯体コンクリートに対して固定で
き、集中荷重が作用した場合に、その部分にPC
鋼材の伸び量が集中してプレストレス導入の効果
が損なわれることを防止でき、しかも躯体コンク
リートに対するアンボンドPC鋼材固定用のピツ
ト（上面の開放した凹部）の成型作業が不要で施
工性が良く、またアンボンドPC鋼材の固定位置
の上方におけるコンクリート面の直仕上げやその
他の作業に与える工程上の制約も少なくて済むア
ンボンドPC鋼材の部分的固定方法を提案するも
のである。

以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第２図は、PC鋼より線やPC鋼棒等のPC鋼材
と、その周囲に塗布されたグリース等の潤滑材
と、これらを被覆するポリエチレン等の合成樹脂
材料等よりなる被覆スリーブとによつて構成され
る長尺のアンボンドPC鋼材Ａを複数スパンにわ
たつて躯体のコンクリートＣ中に埋設し、コンク
リートＣを反力としてアンボンドPC鋼材Ａを緊
張することにより、ポストテンシヨン方式による
プレストレスを導入した連続梁等のコンクリート
構造体Ｂを示す。

前記アンボンドPC鋼材Ａには、各スパンご
と、あるいは複数スパンごとといつたように、中
間部適所においてPC鋼材に固定された鋼製のス
トツパーＤ…が設けられており、PC鋼材はスト
ツパーＤ…を介して躯体コンクリートＣに部分的
に固定されている。

前記ストツパーＤは、第３図、第４図、第５図
に示すように、筒部１と、その両端に設けられた
支圧板２…と、注入用パイプ３及び注入状態の確
認用パイプ４とを有し、かつ、筒部１は直径方向
に二つ割構造を呈し、溶接により互いに連結でき
るようになつている。この連結は溶接に限らず、
例えば第７図イに示すようにボルト・ナツト５を
用いて行なうとか、第７図ロに示すように番線６
等で巻付け結束するといつたように任意の手段を
採用できることは勿論である。尚、第７図イ，ロ
中、７はコンクリートのノロが侵入するのを防ぐ
ために設けたパツキンである。

次に、前記アンボンドPC鋼材におけるPC鋼材
とストツパーＤとの固定方法について説明する。

先ず、アンボンドPC鋼材Ａの中間部の任意位
置において、第６図イに示すように、被覆スリー
ブ８を破り取り、さらに、潤滑材９もきれいにぬ
ぐい取つてPC鋼材１０を露出させる。

次に、第６図ロに示すように、露出したPC鋼
材１０にストツパーＤを套嵌すると共に、その両
側におけるアンボンドPC鋼材Ａの周囲にフープ
筋１１…を配筋する。この場合、支圧板２…に形
成されるPC鋼材挿通用孔の内径が被覆スリーブ
８の外径と等しいか、外径よりもわずかに小さい
場合には、支圧板２…で直接、被覆スリーブ８を
挟持し、被覆スリーブ８をパツキンとして利用す
ることもできるが、この実施例では、ゴムベルト
等の弾性紐状体１２を被覆スリーブ８の周囲に巻
き付け、その外側から支圧板２…で挟持して、コ
ンクリートのノロが侵入しないように構成してあ
る。

以上の作業は、アンボンドPC鋼材Ａを型枠内
の所定位置に配筋した後に行なつてもよく、予め
配筋に先立つて行なつてもよい。

しかる後、第６図ハに示すように、躯体のコン
クリートＣを打設する。注入用パイプ３及び確認
用パイプ４は、それらの端部をコンクリートＣの
表面に突出させておく。

そして、コンクリートＣが硬化し、脱型した
後、アンボンドPC鋼材ＡにおけるPC鋼材１０の
一端をコンクリートＣに定着した状態で、コンク
リートＣを反力としてPC鋼材１０の他端をジヤ
ツキ等で引張り、かつ、コンクリートＣに定着し
て、コンクリートＣに所定のプレストレスを導入
する。

しかる後、第６図ニに示すように、注入用パイ
プ３からストツパーＤの筒部１内部にセメントミ
ルク、モルタル、固結性樹脂等の固結材Ｓを確認
用パイプ４から吹き出るまで注入して、ストツパ
ーＤとその内部に位置するPC鋼材１０とを一体
化するのである。尚、注入用パイプ３や確認用パ
イプ４がコンクリートＣ表面に突出して邪魔にな
る場合は、これらを切り落とす。

上記の構成によれば、コンクリート構造体Ｂの
一部に集中荷重が作用しても、アンボンドPC鋼
材Ａの中間部に位置するストツパーＤがPC鋼材
１０と一体化されて、PC鋼材１０の躯体コンク
リートＣに対する移動を阻止し、PC鋼材１０の
全長にわたる自由な移動を阻止するので、PC鋼
材１０の伸び量が集中荷重の作用した箇所に集中
することを防止でき、従つて、この部分における
プレストレスが解放されることを防止できるので
ある。尚、フープ筋１１は、支圧板２…近辺のコ
ンクリートＣ部分の応力を分散して当該コンクリ
ートＣ部分の圧壊を防止する役目を果たす。

また、コンクリートＣ硬化後に行なわれるPC
鋼材１０への緊張力付近によるPC鋼材１０の伸
びを考慮に入れ、伸びが生じた状態において、
PC鋼材１０の露出部分が筒部１と合致するよう
に、つまり、潤滑材９の塗られた部分が筒部１内
に来ないように、被覆スリーブ８及び潤滑材９を
除去する位置及び長さを適切に設定することによ
り、ストツパーＤにおける筒部１の軸長を可及的
に短くすることができる。この場合、第８図に示
すように、ストツパーＤの外部に位置するPC鋼
材１０部分には、ガムテープ、樹脂テープ１２等
を巻き付けておくことが望ましい。また、露出し
たPC鋼材１０に鉄筋やスチールテープを螺旋状
に巻回して金属用接着剤で固定することによつ
て、注入された固結材Ｓとの付着力を高めたり、
PC鋼材１０の外周面やストツパーＤの内面に凹
凸を設けて固結材Ｓとの付着力を高めることによ
り、ストツパーＤの長さをより短縮することが可
能である。

また、ストツパーＤは、中空形状であれば足
り、先の実施例で図示した筒状のものに限らず、
第９図イ，ロ，ハに例示するように、球形、方
形、円柱状にする等、種々の形状を採用できる。
殊に、第９図イ，ロ，ハに示すような形状の場
合、アンボンドPC鋼材Ａの交差部に適用する上
で便利である。

以上のように、本発明によるアンボンドPC鋼
材の部分的固定方法は、アンボンドPC鋼材が複
数スパンにわたつて埋設された状態に躯体のコン
クリートを打設し、硬化後、このコンクリートを
反力として前記アンボンドPC鋼材におけるPC鋼
材を緊張することにより躯体コンクリートにプレ
ストレスを導入するコンクリート構造体の構築工
法において、前記アンボンドPC鋼材の中間部に
おける被覆スリーブ及び潤滑材を除去してPC鋼
材の一部を露出させ、この露出したPC鋼材に、
注入用パイプと注入状態の確認用パイプとコンク
リートに対する支圧面とを備えたストツパーを套
嵌すると共に、このストツパーがコンクリート内
に埋め込まれかつ前記注入用パイプ及び確認用パ
イプがコンクリート表面に露出する状態に躯体の
コンクリートを打設し、当該コンクリートに対す
るプレストレスの導入後、前記注入用パイプから
前記ストツパ内に固結材を注入して、当該ストツ
パーとその内部に位置するPC鋼材とを一体化す
ることを特徴とするものであるから次の効果を奏
し得るのである。

PC鋼材の中間部がストツパーを介して躯体コ
ンクリートに固定され、PC鋼材の全長にわたる
自由な移動を阻止できるので、コンクリート構造
体の一部に集中荷重が作用した際、この部分に
PC鋼材の伸び量が集中することを阻止でき、プ
レストレス導入の効果を確実に発揮させることが
できる。

殊に、本発明によれば、PC鋼材に、注入用パ
イプと注入状態確認用パイプと支圧面とを備えた
ストツパーを套嵌し、このストツパーがコンクリ
ート内に埋め込まれかつ前記注入用パイプ及び注
入状態確認用パイプがコンクリート表面に露出す
る状態に躯体のコンクリートを打設し、前記注入
用パイプからストツパー内部に固結材を注入する
ので、躯体コンクリートに対するアンボンドPC
鋼材固定用のピツトの成型作業（成型用型枠の設
置及び解体撤去等）が不要で、施工性が良い。

またストツパーをコンクリート内に埋め込むが
故に、アンボンドPC鋼材固定位置の上方におい
て行われる仕上げやその他の作業に与える工程上
の制約が少ない。

即ち、アンボンドPC鋼材を部分的に躯体コン
クリートに固定する方法としては、例えば、躯体
コンクリートに直接ピツトを形成し、ピツト内で
PC鋼材の一部を露出させ、ピツト内に固結材を
充填してアンボンドPC鋼材の部分的固定を行う
ことも考えられるのであるが、この場合には、ピ
ツト用の型枠及びその解体撤去が必要で施工能率
が悪く、しかもプレストレスの導入時期まで、つ
まり躯体コンクリートにある程度の強度が発現
し、プレストレスの導入および固結材の充填が行
われるまでは、ピツトが開放したままであるか
ら、ピツト部分のコンクリート面の仕上げやピツ
ト上に来る間仕切り壁の施工等に着手できない
が、本発明によれば、このような不都合を回避で
きるのである。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来構造における問題点を説明するた
めの構成図、第２図以降は本発明の実施例を示
し、第２図はコンクリート構造体の構成図、第３
図は分解斜視図、第４図は一部切欠側面図、第５
図は筒部の断面図、第６図イ、ロ，ハ，ニは固定
方法の手順を説明する断面図、第７図イ，ロは
各々別の実施例を示す筒部の断面図、第８図は別
の実施例を示す断面図、第９図イ，ロ，ハは各々
別の実施例を示す要部斜視図である。 Ａ…アンボンドPC鋼材、Ｂ…コンクリート構
造体、Ｃ…躯体コンクリート、２…支圧板、３…
注入用パイプ、４…確認用パイプ、８…被覆スリ
ーブ、９…潤滑材、１０…PC鋼材。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ アンボンドPC鋼材が複数スパンにわたつて
   埋設された状態に躯体のコンクリートを打設し、
   硬化後、このコンクリートを反力として前記アン
   ボンドPC鋼材におけるPC鋼材を緊張することに
   より躯体コンクリートにプレストレスを導入する
   コンクリート構造体の構築工法において、前記ア
   ンボンドPC鋼材の中間部における被覆スリーブ
   及び潤滑材を除去してPC鋼材の一部を露出さ
   せ、この露出したPC鋼材に、注入用パイプと注
   入状態の確認用パイプとコンクリートに対する支
   圧面とを備えたストツパーを套嵌すると共に、こ
   のストツパーがコンクリート内に埋め込まれかつ
   前記注入用パイプ及び確認用パイプがコンクリー
   ト表面に露出する状態に躯体のコンクリートを打
   設し、当該コンクリートに対するプレストレスの
   導入後、前記注入用パイプから前記ストツパ内に
   固結材を注入して、当該ストツパーとその内部に
   位置するPC鋼材とを一体化することを特徴とす
   るアンボンドPC鋼材の部分的固定方法。 ２ 前記ストツパーとして、互いに連結可能な二
   つ割構造のものを用いることを特徴とする特許請
   求の範囲第１項に記載のアンボンドPC鋼材の部
   分的固定方法。