JPS6224119Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は自動車の制動に用いられるデイスク
ブレーキの改良に関し、制動解除後のピストンの
戻りを確実にして非制動時に於けるライニングと
ロータとの引摺りを防止することを目的としてい
る。

デイスクブレーキは例えば第１図に示すように
構成されている。即ち、車輪とともに回転するロ
ータ１の両側にパツド２，２をサポート（図示省
略）により支承して配置し、同じくサポートに支
承され、ピストン３を内装したキヤリパ４によ
り、上記パツド２，２をロータ１に押圧するよう
にしている。制動を行なう場合には、キヤリパ４
のシリンダ室５内に圧油を送給すると、ピストン
３が左行（左右は図面による。以下同じ。）して
一方のパツド２をロータ１の１側面に押圧し、そ
の反作用としてキヤリパ４がサポートに対して右
方に摺動し、他方のパツド２をロータ１の他側面
に押圧する結果、ロータ１がパツド２，２により
両側から強く挾持されて制動が行なわれる。この
他に、ロータの両側に対向してピストンを設け、
それぞれのピストンが独立にロータ両側のパツド
を押圧する形式のデイスクブレーキも使用されて
いる。

ところで、このように構成され使用されるデイ
スクブレーキに於いては、制動解除後にピストン
３をシリンダ室５内に引込むのを、ドラムブレー
キの場合のように戻しばねを設けずに、ピストン
３の外周面とシリンダ室５の内周面との間の油密
を保持するためのシール材６の弾性変形を利用し
て行なつている。即ち、シリンダ室５の内周面に
その全長に亘つて凹設した溝７に、断面角形のシ
ール材６を、このシール材６の内周縁部が溝７外
に突出し、ピストン３の外周面と摺接するように
して嵌着したものである。このシール材６の右側
面には制動時に油圧Ｐが加わるため、このシール
材６は左方に押され、第２図ａに示すように変形
する。制動が解除され油圧Ｐがなくなると、シー
ル材６は弾性的に第２図ｂに示すように復元する
が、この時、シール材６の内周縁とピストン３の
外周面との間の摩擦により、ピストン３は制動時
にシール材６が変形していた分（第２図ａの長さ
ｌ）だけ第２図ｂの矢印Ａ方向に戻される。ピス
トン３が長さｌだけシリンダ室５内に引込まれる
結果、パツド２，２はその分だけロータ１の側面
から離れる。

ところが、このようにピストン３とシリンダ室
５との間の油密を保つためのシール材６の弾性変
形のみでピストン３をシリンダ室５内に引込むデ
イスクブレーキに於いては、次に述べるような不
都合を生じた。即ち、制動時にピストン３により
パツド２，２をロータ１の両側面に強く押圧する
と、このパツド２，２は押圧力によつて僅かに弾
性圧縮され、又キヤリパ４も第１図に鎖線で誇張
して示すように弾性的に変形する。このパツド
２，２とキヤリパ４との弾性変形分は、制動解除
後にシリンダ室５に加えられた油圧が解除される
とともに元に戻るが、この時パツド２，２とロー
タ１の側面との間隔は狭くなる。従来は、このパ
ツド２，２、キヤリパ４の弾性的復元と、上記シ
ール材６の弾性的復元とが制動解除後同時に行な
われた。このため、シール材６の弾性復元による
動きと、パツド２，２、キヤリパ４の弾性復元に
よる動きとが相殺され、非制動時に於けるパツド
２，２とロータ１の側面との間隔は、シール材６
の弾性変形分ｌ（第２図ａ）に見合う分よりも狭
くなり、非制動時にもロータ１の側面とパツド
２，２とが接触したままの状態となる、所謂引摺
りを生じてしまう。

本考案のデイスクブレーキは、制動解除後に於
けるシール材６の弾性復元を、パツド２，２、キ
ヤリパ４の弾性復元よりも遅らせるように構成
し、制動解除後にパツド２，２をロータ１の側面
から確実に離すようにしたものである。

即ち、本考案のデイスクブレーキは、シリンダ
室５とシール材６との間に螺旋形の絞り通路を形
成し、制動解除後に、それまでこのシール材６の
右側面に加わつていた油圧がなくなるまでの時間
を遅らせるようにしている。

以下、実施例を示す図面により本考案を更に詳
しく説明する。

第３〜４図は本考案の実施例を示している。キ
ヤリパ４に設けたシリンダ室５内に有底円筒状の
ピストン３を内嵌し、シリンダ室５の内周面のシ
ール材６を嵌着する環状の溝７よりも奥部（この
最奥端に給油口１４が開口する）に、螺旋状の溝
１１を形成し、この溝１１内に紐状の耐油性弾性
材１２を嵌着している。この耐油性弾性材１２の
内周面はピストン３の外周面と摺接している。螺
旋状に配設された耐油性弾性材１２の間には、微
小面積の螺旋状の通路１３が形成され、シリンダ
室５内の油圧は、この長く断面積が小さい通路１
３を通じてシール材６の右側面に加えられる。こ
のため、制動解除後にシリンダ室５内の油圧が排
除されてからシール材６の右側面に加えられてい
た油圧が排除されるまでに時間的遅れが生じる。

本考案のデイスクブレーキは、以上に述べた様
に、制動解除後にシリンダ室５内の油圧が排除さ
れてからシール材６の右側面に加えられていた油
圧が排除されるまでに時間的遅れが生ずるように
螺旋形の絞り通路を設けたため、以下に述べるよ
うに制動解除後に於けるピストン３のシリンダ室
５内への引込みが確実に行なわれる。

即ち、制動を解除するため、シリンダ室５内の
圧油を排除すると、ピストン３を左行させようと
していた力がなくなり、まずキヤリパ４、パツド
２，２が弾性的に復元する。この弾性的復元によ
りパツド２，２の厚みが増し、キヤリパ４は第１
図の鎖線状態から実線状態に戻るため、パツド
２，２はロータ１の側面に押圧され、その反作用
としてピストン３がこれらの弾性的復元量に見合
うだけ、シリンダ室５内に押し込まれる。この
際、シール材６の右側面に加わる油圧は未だ残つ
ている。その後、シール材６とシリンダ室５との
間の絞り通路を介してこのシール材６の右側面に
加えられていた油圧が排除されると、それまで第
２図ａのように変形していたシール材６が、第２
図ｂに示すように弾性的に復元し、この際ピスト
ン３を更に変形分ｌだけシリンダ室５内に引込
む。従つて、パツド２との間には確実に合計間隙
ｌが形成され、引摺りを起さない。

シール材６の奥に油の流れに対して抵抗となる
環状の第二のシール材を設けて、制動解除後に、
シール材６に加わつていた油圧の除去を遅らせて
パツドの引摺りを防止するデイスクブレーキが、
特開昭56−150632号公報に開示されているが、本
考案は螺旋状通路によりこの抵抗を形成する点に
おいて上記のデイスクブレーキとは別異である。
本考案のデイスクブレーキは、通路の断面積や長
さの調節範囲が広くなつて調節が容易であり、非
制動時の引摺り現象の防止を確実且つ有効に行な
うことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のデイスクブレーキの１例を示す
縦断面図、第２図はシリンダ室とピストンとの間
のシール材の変形状態を示す拡大断面図で、同図
ａは制動時、同図ｂは非制動時の状態を示してい
る。第３〜４図は本考案の実施例を示しており、
第３図はピストン部の部分縦断面図、第４図はシ
リンダ室を示す縦断面図である。 １……ロータ、２……パツド、３……ピスト
ン、４……キヤリパ、５……シリンダ室、６……
シール材、７，８……溝、９……絞りリング、１
０……切欠き、１１……溝、１２……耐油性弾性
材、１３……通路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. キヤリパ４に設けたシリンダ室５に内嵌したピ
   ストン３によりパツド２を車輪とともに回転する
   ロータ１の側面に押圧し制動を行なうデイスクブ
   レーキに於いて、シリンダ室５の内周面に形成し
   た環状の溝７に断面角形のシール材６を嵌着する
   とともに、このシール材６の内周縁をピストン３
   の外周面に摺接させ、このシール材６より奥のシ
   リンダ室内周面に螺旋状の溝１１を形成し、内周
   面がピストン３の外周面と摺接する紐状の耐油性
   弾性材１２をこの溝１１に嵌着して、給油口１４
   が開口するシリンダ室５の奥部とシール材６との
   間に絞り通路を形成したことを特徴とするデイス
   クブレーキ。