JPS6220069B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は履帯式トラクタの新たな弾性履板に
関し、特に反転使用を可能にしたトラクタの弾性
履板に関する。

通常、履板全体が鋼製乃至鋳鋼製の履帯式トラ
クタは舗装路を走行できないため、例えば舗装路
を横断するだけの僅かなトラクタ移動にも種々の
困難をきたす結果となる。

そこで、履帯式トラクタの舗装路走行が可能な
るよう舗装路面の保護、および騒音減少を意図し
て弾性をもたせた履板は、従来から種々構成のも
のが提供されている。

その大概の履板は、路面接触部、即ち接地側の
部分をプラスチツク等の硬質弾性体のみとし、該
弾性体そのものを単純な鋼製乃至鋳鋼製の履板本
体の表面に溶着またはボルト締め等で装着してい
るにすぎない。

かかる履板は、一般にトラクタの相当な単位荷
重を繰返えし受けるため、特に該トラクタの舗装
路走行時には上記弾性体が著しく摩耗し、その寿
命短縮を余儀なくされる。

従つて、上述の如く履板本体の表面部にだけ装
着された弾性体は、履板本体の近くまで摩耗する
と、その機能が全く損なわれる。

このため、該弾性体は摩耗等による機能損失時
の都度、新たなものと取換えなければならない。

その取換えに際しては、新たな弾性体を現場ま
で取寄せる場合もあるので、種々の不都合が生じ
る。

また、履板本体に焼付けられた弾性体の場合
は、履板本体ごと新たなものと取換えねばならな
いため、コスト的にも不利である。

加えて、履板本体の表面に装着しただけの弾性
体は、繰返えし荷重により早期に疲労して永久変
形を起し易い。また、石等障害物を繰返えし踏み
つけたときの剪断荷重に対しても自らの弾性力だ
けでは抗し難くなつて亀裂等が生じ易くなるな
ど、強度上の問題もある。

そこで、弾性履板の寿命延長を目的として弾性
体の高さ（履板高）を高くすると、該弾性体に座
屈、変形、欠損等が生じる結果となつて上記目的
が達成できない。

このことは履帯式トラクタの牽引力の点におい
ても同じである。

即ち、弾性履板は既述の通り舗装路走行、騒音
対策を目的とするため、この場合に限つては大き
な牽引力は不要である。

しかしながなら、本来履帯式トラクタは主に排
土作業を目的とするために大きな牽引力を必要と
する。該牽引力を一層大きくするには履板高のア
ツプが有効であるが、そのアツプを図つた弾性履
板の場合は上述の如き寿命延長を目的とした場合
と同じ問題が生じる。

また、既存の弾性履板において、弾性体支持板
だけで荷重を受けるようにした場合、該支持板は
板厚、硬度、材質等を相当にアツプしなければな
らないなど、かなりの強度が必要である。更に、
弾性体を反転可能に履板本体に着脱する構成も知
られている。例えば実開昭50―124034号の装軌式
車輛の履板では断面亀甲型の履板主体を用いて反
転可能としているが、これは弾性体を用いたもの
ではないので、その強度上乃至牽引力の補強につ
いて全く配慮されておらず、弾性履板に用いるこ
とは不可能である。

そこで本発明者は実開昭56―8588号の装軌式車
輛用履帯の路面保護装置で、乾地シユーについて
既に、ゴム台を基台の両面に設けた路面保護体を
スペーサを介して履板に取付けた構成を提案して
いる。しかし、上記構成では履板への取付構成は
スペーサーを介するのみであるので、湿地シユー
として用いられて断面略三角形からなる所謂三角
シユーに利用することはできない。

また、この路面保護体は、舗装路面走行時に用
いるもので、トラクタの作業時には取外し本来の
履板を用いて牽引作業等を行うものであるので、
路面保護体の取付には、牽引作業等に要求される
高負荷に対する配慮も必要でない。

従つて、三角シユーにおいて、トラクタの作業
にも使用することのできる高負荷対応の反転可能
な弾性履板が望まれていた。

この発明は上記事事情に鑑みて鋭意研究の結
果、新たになされたものである。

この発明の主目的は、反転可能な硬質弾性材を
弾性材支持板の両面に固着し強度を高めると共
に、該弾性材支持板の両端を弾性材収納溝の上縁
部分に衝合させて上記弾性材支持板にかかる負荷
を履板本体に分散させて牽引作業等に適した弾性
履板を提供するにある。

この発明の他の目的は、反転前の弾性接地体に
おける非接地側の弾性部材が履板本体内に格納さ
れ、もつて、使用前の該弾性部材が確実に保護さ
れるようにしたトラクタの弾性履板を提供するに
ある。

この発明の更に別の目的は、繰返えし荷重や剪
断荷重に対する弾性接地体の強度上昇が図れて、
該接地体の永久変形を抑え、かつ亀裂等が生じ難
い構成としたトラクタの弾性履板を提供するにあ
る。

従つて、この発明によれば、信頼性の高いトラ
クタの弾性履板を提供できる。

以下、この発明の好適実施例を図面に基づいて
説明する。

この発明に係わる弾性履板は、鋼製乃至鋳鋼製
など所謂金属製の履板本体１と、該本体の接地側
に着脱可能に取着される弾性材支持板２と、該支
持板を有する反転可能な弾性接地体３とを備え
て、全体が断面略三角形状に形成される。

第１図〜第６図に示す履板本体１の場合、その
両端部と中央部にボルト孔４と５，６とが開口形
成してある。また、該履板本体１は、長手方向中
央部に沿つて少なくとも接地側が開口した弾性材
収納溝７を有している。

該溝７は、上記ボルト孔４〜６の開口部を避け
て形成されているため、履板本体１の中央部でそ
の幅方向へ離間する中央部ボルト孔５と６との間
にて幅狭溝部７ａ（第６図参照）を有する。

かかる弾性材収納溝７は、接地側の開口端側が
漸次幅広くなるよう形成されたテーパ面７ｂ，７
ｃを有し、かつ幅狭溝部７ａを除く非接地側が幅
狭く開口した断面形状をとつている。

一方、弾性接地体３は、支持板２の両面に焼付
け等により固着された表裏一対の硬質弾性材３
ａ，３ｂからなつている。

これらの硬質弾性材３ａ，３ｂは、ゴム類また
は合成樹脂等からなつてそれぞれが上記弾性材収
納溝７に整合し得る対称な断面形状をなしてい
る。

かかる弾性接地体３と履板本体１との関連構成
において、該本体の弾性材収納溝７の幅狭溝部７
ａを除く非接地側が上述の如く開口しているた
め、その収納溝７に嵌込み整合された硬質弾性材
３ａまたは３ｂの先端側が図示の如く上記収納溝
７の非接地側開口端部から突出するように硬質弾
性材３ａおよび３ｂを形成することができる。

もつて、該弾性材３ａ，３ｂの肉厚、いわゆる
高さを高くすることができるため、それらの強度
と弾性機能を向上させ得る。

加えて、弾性接地体３が上述の如く、支持板２
と、該支持板を挾む硬質弾性材３ａおよび３ｂと
の三位一体の合体構成になつているため、該硬質
弾性材３ａ，３ｂは支持板２で更に補剛される。

従つて、各硬質弾性材３ａ，３ｂの強度および
弾性機能は一層向上して充分に満足させられる。

上記構成の弾性接地体３は履板本体１に対し、
支持板２の片面側の硬質弾性材３ａを弾性材収納
溝７に嵌込み、その弾性材収納溝７を形成する側
壁の上縁部分に衝合させた状態で上記支持板２を
ボルト締めすることにより反転可能に装着され
る。

このため、支持板２は、上述の如く硬質弾性材
３ａまたは３ｂを収納溝７に整合させたとき、履
板本体１のボルト孔４〜６と必然的に合致連通す
るボルト孔８〜１０（第３図、第６図参照）を有
している。

もつて、支持板２は履板本体１に対し、弾性材
収納溝７の接地面側開口部を覆う位置にそれぞれ
のボルト孔８〜１０と４〜６とを介してボルト１
１〜１３で着脱可能に締着される。

以上、第１図〜第６図の実施例の場合、履板本
体１と弾性接地体３の支持板２、および図示省略
のトラツクリンクとが中央部のボルト１２，１３
によつて共締めされる。

上記構成の履板において、弾性接地体３は、金
属製の履板本体１に周りが支持された弾性材支持
板２を中間層として一体に有し、該支持板２が接
地体３の補剛材となり、かつ非接地側の硬質弾性
材３ａが履板本体１の弾性材収納溝７内に格納さ
れているため、座屈、変形、欠損等が生じ難くな
つて耐久性が大幅に向上する。

また、支持板２の周りが上述の如く金属製履板
本体１で支持されるため、その支持板２は板厚、
硬度、材質等のアツプ、即ち高強度を必要とせず
に荷重には充分に対応させ得る。

特に、弾性接地体３の非接地側の硬質弾性材３
ａは、金属製履板本体１の弾性材収納溝７内に上
述の如く格納されるため、損耗等の惧れのない状
態に確実に保護される。従つて、弾性接地体３の
反転後の寿命をも保証し得る。該接地体３の反転
は、反転前に接地側にある硬質弾性材３ｂがトラ
クタの舗装路走行等によつて支持板２、もしくは
該支持板の近くまで摩耗した際に遂行される。

その遂行に際しては、すべてのボルト１１〜１
３を取外して履板本体１の弾性材収納溝７内に整
合している接地体３の硬質弾性材３ａを抜き取
る。

次いで、該硬質弾性材３ａが既に摩耗消滅して
いる反対側の硬質弾性材３ｂに代わつて接地側と
なるように接地体３を反転させ、その支持板２を
ボルト１１〜１３で履板本体１に再度締着する。

もつて、得られた履板は舗装路走行が可能な弾
性履板として旧に復し再使用され、その機能を充
分に発揮する。

また、該履板は弾性接地体３の反転前、反転後
を問わず、履板本体１が金属製のため、履板全体
が土中に埋まる状態となる湿地帯等でのトラクタ
走行時には、その金属製履板本体１によつて充分
な牽引力を得ることができる。このため、弾性接
地体３に無理な力がかかるのを未然に防止でき
る。

第７図〜第１３図には、弾性接地体３の支持板
２を履板本体１の裏側から該本体にボルト締めす
る場合が示してある。

この場合、履板本体１には、中央部ボルト孔
５，５間および６，６間に新たに中心ボルト孔
５′，６′（第７図、第１２図参照）を設け、該中
心ボルト孔５′，６′と両端側のボルト孔４とを弾
性接地体取付用とし、かつ中央部ボルト孔５，６
をトラツクリンク取付用としている。一方、支持
板２には、履板本体１の両端側のボルト孔４と中
心ボルト孔５′，６′とに合致整合させるべきボル
ト孔８′と９′，１０′とが設けられ、該ボルト孔
８′〜１０′を螺孔構成にしてある。

もつて、図示省略のトラツクリンクを履板本体
１の裏側に該本体の中央部ボルト５，６とリンク
のボルト孔を介してボルト１２，１３で締着した
のち、履板本体１の裏側から該本体の両端側ボル
ト孔４および中心ボルト孔５′，６′を介して支持
板２のボルト螺孔８′，１０′にボルト１１′〜１
３′を螺合緊締している。

このように、履板本体１の裏側から弾性接地体
３をボルト締めすることにより、該接地体３の表
面側にボルトヘツド等が突出しなくなる。このた
め、弾性接地体３の摩耗代を多くとることができ
る。なお、この場合の弾性接地体３には、第８
図、第１３図で明確な如く、トラツクリンク取付
用ボルト１２，１３のヘツドを避けるための陥没
部３′を形成しておく。この場合、弾性接地体３
の反転時に履板本体１をトラツクリンクから脱着
せず（取付用ボルト１２，１３をそのまま）に接
地体取付ボルト１１′〜１３′のみを脱着して接地
体３を反転できる。

第１４図〜第１８図には履板本体１の横方向か
ら弾性接地体３を挿脱できるようにした履板が示
してある。

該履板の場合、弾性材収納溝７を断面蟻溝状に
形成し、かつ該収納溝７の接地面側開口部にて相
対方向に突出する所謂開口壁部７ａ，７ｂの対向
面に係合溝１４，１５を形成している。

これに関連して、弾性接地体３には、上記開口
壁部７ａ，７ｂに嵌込み整合させるべく、支持板
２の長手方向両側に沿つた嵌合溝１６，１７が形
成され、かつ該嵌合溝内に支持板２の側縁部２ａ
を上記係合溝１４，１５に整合させるべく該係合
溝と同一断面形状にして突出させてある。

もつて、弾性接地体３の両側嵌合溝１６，１７
を履板本体１の横方向から弾性材収納溝７の開口
壁部７ａ，７ｂにスライド嵌入させる。

これによつて、支持板２の片面側の硬質弾性材
３ａが蟻溝状の収納溝７内に、かつ支持板２の両
側縁部２ａ，２ａが係合溝１４，１５にそれぞれ
同時に整合する。

このため、弾性接地体３が収納溝７の接地面側
開口部から抜けるようなことはない。

しかしながら、このままの状態の弾性接地体３
では、未だ収納溝７内をスライドして横方向に抜
け出してしまう。

そこで、履板本体１の横端面にサイドプレート
１８をボルト締めしてプレートで収納溝７の横開
口面部を塞ぐ。これによつて、弾性接地体３は履
板本体１に確実堅固に装着される。

従つて、この場合の履板では、支持板２にボル
ト孔を設ける必要がなくなる。

第１９図の履板では、弾性接地体３の支持板２
に、その長手方向へ沿つた所定位置にて開口する
透孔２０を設け、該透孔を介して支持板２の両面
の硬質弾性材３ａと３ｂとを同質材で一体結合さ
せている。従つて、この場合の弾性接地体３は更
に一層強靭なものとなる。

なお、第７図〜第１９図の履板のその他の構成
および作用効果は、第１図〜第６図の場合と同一
のため、説明を省略して同一構成部には同一符号
を附しておく。

以上、この発明では、弾性材収納溝を有する金
属製の履板本体と、その弾性材収納溝にそれぞれ
が整合可能な対称形状の硬質弾性材を支持板の両
面に固着してなる弾性接地体とを備え、一方の硬
質弾性材を収納溝に整合させて支持板を履板本体
に着脱可能に取着してなる履板構成としたので、
次の如き種々の優れた効果が得られる。

(1) 弾性材支持板に硬質弾性材を固着するので硬
質弾性材の強度が高まると共に、該弾性材支持
板は、履板本体の弾性材収納溝の上縁部分に衝
合（または係合）されるので、硬質弾性材は、
まず金属製の弾性材支持板体により強度を高め
ることができる。更に上記弾性材支持板は履板
本体の弾性材収納溝の上縁部で衝合（または係
合）されて支持されるので、牽引作業等の際に
弾性材支持板に大きな負荷がかかつても応力を
分散することができ、充分作業に耐えることが
できる。

また、舗装路を走行することができるのは勿
論であり、騒音減少が図れると共に、弾性接地
体を摩耗等による取り替え時期に反転して上記
と同様に使用することができる。

(2) 反転前の弾性接地体における非接地側の硬質
弾性材が金属製履板本体内に格納されて確実に
保護されるため、該硬質弾性材の使用時におけ
る寿命を保証し得る。

(3) 履板が土中に埋まるような湿地帯等でのトラ
クタ走行に際しては、金属製履板本体によつて
充分な牽引力が得られる。このため、弾性接地
体に無理な力が作用するようなことがない。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の好適一実施例に係わる弾性
履板の一部を欠除した平面図、第２図は同履板の
一部を断面した側面図、第３図は第１図の―
線断面図、第４図は第１図の―線断面図、第
５図は第１図の―線断面図、第６図は第１図
の―線断面図、第７図はこの発明の変形例に
係わる弾性履板の一部を欠除した平面図、第８図
は同履板の一部を断面した側面図、第９図は第７
図の―線に沿う断面図、第１０図は第７図の
―線に沿う断面図、第１１図は第７図のXI―
XI線に沿う断面図、第１２図は第７図のXII―XII線
に沿う断面図、第１３図は第７図の―線
に沿う断面図、第１４図はこの発明の更に異なつ
た変形例に係わる弾性履板の一部を欠除した平面
図、第１５図は同、一部を断面した側面図、第１
６図は第１４図の―線矢視図、第１７図
は第１４図の―線断面図、第１８図は第
１４図の―線断面図、第１９図はこの発
明のまたの変形例に係わる履板断面図である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 硬質弾性材を弾性材支持板の両面にそれぞれ
   略対称に固着されてなる接地体を、金属製の履板
   本体に上下反転可能にボルト締めで連結してなる
   トラクタの弾性履板において、 履板本体の長手方向両端部又は側端部と中途部
   に形成されて上下に貫通するボルト孔と 履板本体で、上記ボルト孔の配設位置を避けて
   長手方向に沿つて接地側に開口すると共に、該履
   板本体に連結されて接地体の裏面側となつた硬質
   弾性材を略隙間なく収納する弾性材収納溝と、 該弾性材収納溝の両側壁のそれぞれの上端を形
   成する部分で前記弾性材支持板の両端と衝合可能
   な縁部と からなることを特徴とするトラクタの弾性履板。 ２ 弾性材収納溝が、接地側が漸次幅広く開口す
   るように形成されると共に、弾性材支持板の両端
   が断面略く状の角形に形成されていることを特徴
   とする特許請求の範囲第１項記載のトラクタの弾
   性履板。 ３ 弾性材支持板の縁部が、弾性材支持板の長手
   方向両側縁部をスライドさせて嵌脱自在に嵌込み
   係合させる係合溝からなつており、弾性材収納溝
   の端部を閉止するための、着脱自在なサイドプレ
   ートを備えていることを特徴とする特許請求の範
   囲第１項記載のトラクタの弾性履板。 ４ 弾性材収納溝が、蟻溝状に形成されているこ
   とを特徴とする特許請求の範囲第３項記載のトラ
   クタの弾性履板。