JPS6213505B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明はエンジン用シリンダのシリンダライナ
に関するものである。

（従来の技術） 一般に、エンジン用シリンダは、鋳鉄製シリン
ダライナをアルミニユーム等によるダイキヤスト
鋳造によつてシリンダ母材に鋳込むという方法に
よつて製作されているが、シリンダライナとシリ
ンダ母材との熱膨張率の違いによつてエンジン運
転中にシリンダライナの位置ずれが生じるという
問題や、鋳造時のアルミニユームの収縮による圧
力を受けてシリンダライナに残留応力や残留歪が
生じて変形するという問題がある。その対策とし
て、例えば、実公昭50−18034号公報に開示され
ている如く、複数の環状リブと縦リブとをシリン
ダライナの外周面に設けるという手法がとられて
いる。

（発明が解決しようとする間題点） しかし、近年はエンジン回転数の更なる上昇と
作業性の更なる向上が望まれているが、前記鋳鉄
等によつて鋳造したシリンダライナの環状リブの
数が多いと作業性の改善がむずかしく、エンジン
の回転数の上昇にはエンジンの軽量化の妨げにな
らないで高温、高圧に耐えるような構成にしなけ
ればならないという問題があつた。作業性につい
て具体的に説明すると、リブの多いシリンダライ
ナでは第３図に示すような鋳造用砂型主型ａに外
周突起中子ｂとボアー中子ｃを用いてシリンダラ
イナの鋳湯空間ｄを作らなければならないので中
子は不可欠であるから、作業性の改善には中子を
必要としない鋳造法を採用しなければならない。
また、エンジン回転数の上昇による耐高温、耐高
圧のためにはリブの数を増加しないでエンジンの
軽量化を達成しなければならないという問題があ
る。本発明はかかる点に鑑み、エンジン回転数の
上昇に対して耐高温性および耐高圧性を有し、作
業性よく鋳造できるエンジン用シリンダのシリン
ダライナを提供するものである。

（問題点を解決するための手段） 本発明の手段は、円筒部の外周面のピストン上
死点より10〜30度のクランク角度範囲の位置に対
応して１カ所に環状リブが位置し、かつこの環状
リブより縦リブが円筒部の中心線と平行に延び、
該環状リブの位置においてシリンダライナの内径
が最小となり、この最小内径部の位置を基点とし
て円筒部の中心線の方向の両端へ向けて僅少な抜
き勾配を設けて鋳鉄等により鋳造されたことを特
徴とする、アルミニユーム等のシリンダ母材に鋳
込むエンジン用シリンダのシリンダライナに係
る。

（作用） シリンダライナは円筒部の外周面のピストン上
死点より10〜30度のクランク角度範囲の位置に対
応して１カ所に環状リブが位置することにより、
エンジンの作動時に最も高温、高圧になるピスト
ン位置において、前記環状リブが耐高温性および
耐高圧性を発揮し、一方環状リブが１カ所で、し
かも、この環状リブの位置において、前記円筒部
の内径が最小となり、かつ、該円筒部の内面はこ
の最小内径部の位置を基点として円筒部の中心線
の方向の両端へ向けて僅少な抜き勾配を設けてい
ることによつて、前記環状リブの位置を分割面と
した中子を必要としない鋳型による鋳造が可能と
なる。

（実施例） 次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第１図および第２図には本発明に係るシリンダ
ライナ１が示されている。このシリンダライナ１
は、円筒部２の外周面３に１条の環状リブ４と、
この環状リブ４から円筒部２の片端面５へ向けて
円筒部２の中心線と平行に延びる４本の縦リブ６
を備えている。環状リブ４はシリンダライナ１が
エンジン運転中に内圧および燃焼熱の最も大きな
影響を受けるピストン上死点より10〜30度のクラ
ンク角度範囲の位置に対応して位置している。

更に、シリンダライナ１は環状リブ４の位置に
おいて円筒部２の内径が最小内径部７となし、か
つ、円筒部の内面が、この最小内径部７の位置を
基点として円筒部２の中心線の方向の両端へ向け
て僅少な抜き勾配（1/220）８，８を設けて鋳鉄
等により鋳造される。

このシリンダライナを鋳造する鋳型は、例え
ば、最小内径部７に対応する還状リブ４の位置を
合わせ面としてシリンダライナ１の円筒部の中心
線の方向に分割した２つ型で構成することがで
き、中子を不要にすることができる。この裏付資
料としては、昭和44年10月30日付産業図書株式会
社発行の吉近昌著「鋳造作業」の第16頁乃至第19
頁の記載がある。

なお、上記のように鋳造されたシリンダライナ
１をシリンダ母材に鋳込むには、シリンダライナ
１をダイキヤスト治具に収容し、環状リブ４およ
び縦リブ６により円筒部の中心線の方向および円
周方向の位置決めを行ない、ダイキヤスト金型に
アルミニユーム等を注湯してシリンダライナとシ
リンダ母材とが一体になるようにダイキヤスト鋳
造を行ない、しかる後、シリンダライナ１の内径
をボーリングおよびホーニング加工によつて精仕
上げしてエンジン用シリンダの製造を完了する。

なお、縦リブ６は４条の場合を例示したが必要
に応じて数を増減してもよく、また、片端面５の
反対側の端面９へ向けて円筒部２の全長に亘つて
延設してもよい。

（効果） 以上のように、本発明のシリンダライナによれ
ば、環状リブは１カ所とし、かつその位置を特定
しこの環状リブの位置においてシリンダライナの
内径が最小となるように、円筒部の中心線の方向
の両端へ向けて抜き勾配を設けてシリンダライナ
を鋳造するようにしたから、使用すべき鋳型が中
子を必要としない構成とすることができ、工程を
簡単にすることが可能となり、加工工数の節減、
生産性の向上およびシリンダの軽量化が図れると
ともに、このシリンダライナによつて高温および
高圧に耐久性の高いエンジン用シリンダが得られ
るという優れた効果がある。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施態様を例示し、第１図はシ
リンダライナの中央縦断面図、第２図は第１図の
−線における断面図、第３図は従来のシリン
ダライナの鋳造用鋳型の縦断面図である。 １……シリンダライナ、２……円筒部、３……
外周面、４……環状リブ、６……縦リブ、７……
最小内径部、８……抜き勾配。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 円筒部の外周面のピストン上死点より10〜30
   度のクランク角度範囲の位置に対応して１カ所に
   環状リブが位置し、かつこの環状リブより縦リブ
   が円筒部の中心線と平行に延び、該環状リブの位
   置においてシリンダライナの内径が最小となり、
   この最小内径部の位置を基点として円筒部の中心
   線の方向の両端へ向けて僅少な抜き勾配を設けて
   鋳鉄等により鋳造されたことを特徴とする、アル
   ミニユーム等のシリンダ母材に鋳込むエンジン用
   シリンダのシリンダライナ。