JPS6145326B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の技術分野〕 本発明は、水溶性絶縁ワニスと併用される絶縁
材に関するものである。

〔発明の技術的背景〕 水溶性絶縁ワニスは溶剤成分として水、ジメチ
ルエタノールアミン等を含有しているため、例え
ばポリエステルフイルム等と直接併用すると該水
溶性絶縁性ワニスの硬化時等に加水分解、結晶
化、化学分解等の化学変化を生じ、ポリエステル
フイルム等の特性劣化を起す。そこで、従来より
この水溶性絶縁ワニスに組合せて使用する絶縁材
としては、耐加水分解性、耐薬品性、耐溶剤性に
すぐれた耐熱アラミツド紙単体、もしくはそれと
他の材料の貼合せ材、ポリイミドフイルム単体、
もしくはそれと他の材料の貼合せ材等の絶縁材が
適用可能であるとされており、これらはＦ種絶縁
用としても充分適用できるものである。

しかしながら上記各絶縁材は(イ)いずれも高価で
入手が容易でない。(ロ)例えば回転電機の鉄心スロ
ツト絶縁物等として実際に使用する場合、Ｆ種絶
縁では価格上、ポリエステルフイルムを基材とし
てその両面または片面に保護材として耐熱アラミ
ツド紙を貼合せた構成の絶縁材が一般に用いら得
ると考えられるが、このような構成とすると全体
の厚さが厚くなりスロツト内での占積率が低下す
る他両面または片面に貼合せた耐熱アラミツド紙
のすべり性が悪いことおよび特に片面貼合せで
は、貼合せた状態での曲り（そり）が生じること
等に起因して機械挿入作業性が著しく悪い、など
の問題があつた。

〔発明の目的〕

本発明は安価で入手の容易な材料を用いた簡単
な構成により水溶性絶縁ワニスと併用した際の特
性劣化を効果的に防止し得しかもＦ種絶縁に充分
に適用し得る絶縁材を提供することを目的として
いる。

〔発明の概要〕

本発明の特徴とするところは、ポリエステルフ
イルムを基本材料すなわち基材として、その両面
または片面に、水溶性絶縁ワニスに含まれる水、
ジメチルエタノールアミン等の溶剤成分に対し特
性低下がなく、耐熱性の点でＦ種絶縁に充分適合
し、その上表面のすべり性がすぐれた四ふつ化エ
チレン樹脂フイルムを貼着して貼合せ構造とし、
基材を化学的作用から保護し熱劣化の主因である
酸化劣化に対し酸素にふれることを防ぎ、また機
械挿入性を向上させ、水溶性絶縁ワニスと組合せ
使用しても、基材であるポリエステルフイルムの
特性低下を起さず、しかもＦ種絶縁に適用できる
ようにすることにある。

〔発明の実施例〕

第１図に本発明の一実施例の構成を示す。

第１図に示すものは0.075mm〜0.350mmの厚さの
ポリエステルフイルムからなる基材１の両面にシ
リコーン系、エポキシ系等の接着剤により、
0.010mm〜0.100mmの厚さの四ふつ化エチレン樹脂
フイルムからなる保護材２を貼合せて三層構造と
した絶縁材３である。

本実施例の絶縁材３はポリエステルフイルムを
基材１としている。この材料すなわちポリエステ
ルフイルムは単体では、Ｆ種絶縁物として使用で
きず、またこれを水溶性絶縁ワニスと組合せ使用
すると、該ワニス中に含まれる水、ジメチルエタ
ノールアミン等の溶剤成分と、ワニス硬化時の乾
燥温度、乾燥時間の組合せにより、加水分解、結
晶化等の化学変化を起し、実用条件では第２図に
示す試験結果の特性Ａのごとく引張強度で約50％
以下に低下し且つ柔軟性が低下し折り曲げに対し
表皮層が約0.02mmの深さで壁開（われ）を生じ実
用上問題となる。これに対して本実施例では、ポ
リエステルフイルム基材１の両面に、Ｆ種絶縁に
充分適合し、耐加水分解性、耐薬品性にすぐれた
特性を有する0.01mm以上の四ふつ化エチレン樹脂
フイルムからなる保護材２を接着剤等で貼合せ一
体化することにより、上述した水溶性絶縁ワニス
と組合せた時の化学作用の影響が両面に貼合せた
四ふつ化エチレン樹脂フイルム保護材２で遮断さ
れて基材１が保護され第２図の特性Ｂのように基
材１の特性低下が著く改善されることを確認して
いる。また、このようにすることにより基材１の
熱劣化に対しても、両面に貼着された耐熱性の優
れた四ふつ化エチレン樹脂フイルムの保護材２に
よつて酸素の供給が遮断されるため、第３図に示
す伸度特性のようにポリエステル単体の特性Ｃに
比較して特性Ｄのように酸化劣化を主因とする熱
劣化が大幅に抑制され耐熱性が15〜25℃向上し絶
縁材３として、Ｆ種絶縁に充分適合できる特性を
得た。更に、両面に貼合せた四ふつ化エチレン樹
脂フイルム保護材２は表面すべり性も良好で且つ
端裂抵抗も高いため、鉄心スロツト内へのスロツ
ト絶縁物としての機械挿入作業が、ポリエステル
フイルム単一の場合と同等またはそれ以上に容易
に作業でき従来の耐熱アラミツド紙とポリエステ
ルフイルムの貼合せ絶縁材に比し、著しく改良さ
れる。

この３層構造の絶縁材３は、実用時の引張強
度、端裂抵抗等の機械的特性、絶縁耐力等の電気
特性、作業に対する腰の強さ等は、すべて基材１
であるポリエステルフイルムに依存しており両面
に貼合せた保護材２の四ふつ化エチレン樹脂フイ
ルムは前述したように水溶性絶縁ワニスとの組合
せ使用に対する化学作用からの保護、酸化劣化を
主因とする熱劣化の抑制、絶縁材３表面のすべり
性向上による機械挿入性の改善を実現するもので
ある。従つて基材１であるポリエステルフイルム
の厚さは、前述した各特性を満足させるには、お
おむね0.075mm〜0.350mmの厚さを必要とし、また
これに組合せる保護材２としての四ふつ化エチレ
ン樹脂フイルムの厚さはほぼ0.010mm程度以下で
は水溶性ワニスとの組合せによる化学作用の保護
効果、熱劣化抑制効果の点で著しく低下し、また
ほぼ0.100mm程度以上になると基材１のポリエス
テルフイルムに必要な厚さとの組合せから絶縁材
３として厚くなりすぎ、例えば回転電機のスロツ
ト絶縁物に適用すると、スロツト内の占積率（奏
線の断面積とスロツト断面積の比）が著しく低下
することになることから、本実施例のような厚さ
の組合せが最適である。

なお、本発明は上述し且つ図面に示す実施例に
のみ限定されれることなくその要旨を変更しない
範囲内で種々変形して実施することができる。

例えば、保護材２は使用時に水溶性絶縁ワニス
と接する面に設ければよいので使い方によつては
基材１の両面でなく片面にのみ設けるようにして
もよい。

また、ポリエステルフイルム基材１と四ふつ化
エチレン樹脂フイルム保護材２の厚さは回転電機
のスロツト絶縁物等の一般的用途には上記実施例
に示した範囲が最適で且つ基本ではあるが、要は
保護材２で水溶性ワニスによる化学作用を阻止し
且つ基材１の酸化劣化を主因とする熱劣化を抑制
してしかも全体として所要の特性を持つようにし
さえすればよいので、必ずしも上記範囲に限らず
使用目的に応じて厚さ関係を適宜調整して実施す
ることができる。

さらに、上記実施例では、回転電機巻線に適用
する場合をとり上げているが同様の主旨で変圧
器、電磁開閉器等電気機器全般におけるＦ種絶縁
用として応用できる。

〔発明の効果〕

本発明によれば、水溶性絶縁ワニスと組合せ、
Ｆ種絶縁に適用する絶縁材として、基材としてポ
リエステルフイルムを使い、上述した水溶性絶縁
ワニスに溶剤分として含まれる水、ジメチルエタ
ノールアミン等とワニス処理後の乾燥温度と時間
の組合せにより生ず加水分解、結晶化等の化学作
用を防止し、耐熱性向上に対し、熱劣化の主因で
ある酸化劣化を抑制し、且つ表面のすべり性にす
ぐれた四ふつ化エチレン樹脂フイルムを保護材と
して前記基材に貼合せ一体化したことにより、基
材のポリエステルフイルムの化学作用の影響がな
く、Ｆ種絶縁に適合可能でしかも安価で入手の容
易な絶縁材を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例による絶縁材の断面
図、第２図および第３図は同実施例の作用を説明
するための試験結果特性図である。 １……ポリエステルフイルムからなる基材、２
……四ふつ化エチレン樹脂フイルムからなる保護
材、３……絶縁材。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 水溶性絶縁ワニスとの組合せで使用する絶縁
   材において、ポリエステルフイルムを基材としそ
   の少なくとも一方の面に四ふつ化エチレン樹脂フ
   イルムからなる保護材を貼着し貼合せ構造とした
   ことを特徴とする絶縁材。 ２ 特許請求の範囲第１項記載の絶縁材におい
   て、基材に対する保護材の貼着は接着剤を用いた
   接着であることを特徴とする絶縁材。 ３ 特許請求の範囲第１項記載の絶縁材におい
   て、基材に対する保護材の貼着は溶着であること
   を特徴とする絶縁材。 ４ 特許請求の範囲第１項〜第３項のいずれか１
   項に記載の絶縁材において、保護材四ふつ化エチ
   レン樹脂フイルムは厚さほぼ0.010mm〜0.100mmで
   あることを特徴とする絶縁材。 ５ 特許請求の範囲第４項に記載の絶縁材におい
   て、基材ポリエステルフイルムは厚さほぼ0.075
   〜0.350mmであることを特徴とする絶縁材。