JPS605211B2 - 絶縁コイル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は絶縁コイル、特にタービン発電機や水奮発電
機などの使用電圧の高い回転電機用として好適な絶縁コ
イルに関する。

タービン発電機や水車発電機などの発電機においては、
電力需要の増加に伴なつて、単機容量の増大とともに使
用電圧を上昇させる傾向が強まり、最近では３０ＫＶに
達する高い使用電圧のものまで出現している。

このような使用電圧の上昇によって、絶縁コイルには、
起動停止の反復に対するヒートサイクル性、温度上昇に
対する耐熱劣化性、振動や短絡などに対する機械的性質
などの多くの点でより厳しい性能が要求されるようにな
っている。

回転電機に組み込まれた絶縁コイルは、一般的に気相中
に置かれるが、高電圧下ではコイル部分に存在する気体
の電気破壊に基づくコロナ放電が発生し、コイルの絶縁
層が破壊される恐れがあるため、絶縁材として古くから
耐熱性、耐コロナ性、耐高電圧性などに優れたマィカ箔
を用いた絶縁シート（テープ状のものを含む。

以下同様）が使用されている。マイカ箔は、マイカ源鉱
を薄く剥がして得られる薄片からなる剥がしマィカ箔と
、マイカ原鉱ないし剥がしマィカ箔の残品を焼成法や水
噴射法などで処理して細かい鱗片状とした集成マィカ箔
とに大別され、絶縁シートは前者ではバインダーによる
貼着、後者では抄紙によってシート状に形成し、このシ
ートに紙、フィルム額、ガラスクロス、ポリエステル不
織布などの多孔質絶縁材を裏打ちしたものである。

通常の絶縁コイルは、適当な絶縁被覆を施した絶縁素線
を組み合わせて所定の形状に成形してなるコイル導体上
に、上記の絶縁シートを巻回し、この巻回層に熱硬化性
樹脂を合浸して加熱硬化せしめて絶縁層を形成したもの
である。ところが、剥がしマィカ箔を用いた絶縁シート
（以下、単に剥がしマィカシートと称する）にて上記の
ように形成された絶縁層は、集成マィカ箔を用いた絶縁
シート（以下、単に集成マィカシートと称する。

）にて形成された絶縁層に比較して、たとえば曲げ強度
においては１２０〜１５０％の強度であるように機械的
性質に優れるが、たとえば絶縁耐力においては７０〜９
０％であるように電気的性質で劣っており、両者はそれ
ぞれ一長一短があり、また耐熱性の点でも両者ともにま
だ不十分である。さらに、集成マィカシートは、上記の
ように本来、絶縁耐力に優れるものであるが、マィカ箔
が単に抄紙されたものであるため、マィカ箔自体の密度
が十分でなく、テーピング作業時にマィカ片間のずれが
生じる結果、高い絶縁耐力が発揮されない場合がある。
いっぽう、絶縁シートの強度を左右する多孔質絶縁性の
裏打ち材についても、紙、ポリエステル不織布、フィル
ム類などでは比較的安価であっても引張り強度に難があ
り、ガラスクロスなどでは良好な引張り強度を示しても
非常に高価であり、コストと性能の両面で満足できるも
のは現われていない。この発明は、上記した従来の絶縁
シートを使用した絶縁コイルの欠点を改善し、電気的、
機械的、熱的性質のいずれにおいても満足できる絶縁層
を有し、かつ低廉な絶縁コイルを提供することを目的と
する。

この発明の絶縁コイルは、前記の従来におけるものと同
様にコイル導体上に絶縁シートを巻回し、この巻回層に
熱硬化性樹脂を含浸して加熱硬化させて絶縁層を形成し
たものであるが、上記の絶縁シートとして、集成マィカ
箔と芳香族フィプリッドとの混抄シートに芳香族ポリア
ミド紙を熱圧着して一体化した集成マィカシートを使用
したことを特徴とするものである。

上記の集成マィカシートでは、マィカ鱗片間および芳香
族ポリアミド紙間が芳香族ポリアミドフイブリッドによ
って強固に融着されているため、従来の集成マィカ箔の
みを抄紙したものに比較して、集成マィカ箔層の厚みが
均一で、しかも密度が高く、シ−ト自体の引張り強度も
大きく、これらの諸点から絶縁特性も良好であり、特に
耐電圧比では１１０〜１３５％と高くなっている。

またト絶縁層の機械的性質においては、従来の集成マィ
カシートが集成マイカ箔と裏打ち材からなり、マィカ層
はマィカ鱗片間に含浸樹脂が充填されて高弾性を示すが
、裏打ち材層では含浸樹脂自体の特性が現われて通常は
固くて脆い性質を示し「結果的に裏打ち材の部分に弱点
が残る欠点があった。これに対して、この発明における
絶縁層では、マィカ鱗片と芳香族ポリアミド紙とが芳香
族ポリアミドフィブリッドを介在して強固に一体化され
ているので、弱点部が形成されず、かつ芳香族ポリアミ
ドの持つ柔軟性が加味される結果、固くてしかも剛的な
外力にも耐え得るものとなる。さらにこの発明の絶縁コ
イルでは、芳香族ポリアミドの高い耐熱性によって絶縁
層全体の耐熱性が非常に優秀となり、温度上昇に伴なう
劣化が少なく、使用電圧の高い回転電機用としての適性
に優れるという利点がある。

この発明における上記の集成マィカシートは、金雲母や
白雲母などの細鱗片、すなわち通常の集成マィカ箔と芳
香族ポリアミドフィプリッドとを含む水分散混合液を用
いて抄紙し、乾燥後に芳香族ポリアミド紙を重ねて熱圧
着することによって製造される。

このとき、芳香族ポリアミドフィプリッドは集成マィカ
箔１０の邦（重量部、以下同様）に対して０．１〜５部
の割合であることが好ましく、また熱圧着処理は１８０
〜３５０ｑ０で０．５〜１０分間程度とするのが普通で
ある。さらに好適な態様として、上記の熱圧着ののち、
熱硬化性樹脂による処理を施してもよく、これはェポキ
シ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド
樹脂、シリコン樹脂、ポリアミド樹脂などの一般的な熱
硬化性樹脂を集成マィカシート１００部に対して０。１
〜２碇都、好ましくは５〜１の邦含浸させることによっ
て行なう。

このような熱硬化性樹脂を含有する集成マィカシートは
、機械的特性がさらに改善されたものとなり、特にコイ
ル導体上への巻回性が優秀である。以上のようにして得
られ、所望の幅と長さに切断された集成マィカシートを
絶縁シートとして、常法に準じてコイル導体上に巻回し
、この巻回層に上記の前処理の場合と同様な熱硬化性樹
脂を真空舎浸などの既知の手段で含浸し、加熱硬化せし
めて絶縁層が形成される。

なお、この発明においては、絶縁シートとして上記の集
成マィカシートを単独で使用する以外に、他の材料と組
み合わせて使用してもよい。

たとえば、発電機などの用途によってヒートサイクル性
や機械的性質などで厳しい性能が要求されるとき、前述
した既知の剥がしマィカシートあるいはこれに熱硬化性
樹脂処理を加えた剥がしマィカシートと併用することも
できる。この場合、上記の集成マィカシートの使用によ
る高い信頼性と効果を有効に発揮させるために、絶縁テ
ープの巻回層の少なくとも最下部と表面部、すなわち、
コイル導体に道姿々触する部分と熱の影響を受け易い表
面部分とに上記の集成マィカシートを使用することが推
奨される。また、絶縁シートとして、上言己の集成マィ
カシートに、紙、フィルム類、ガラスクロス、ポリエス
テル不織布などの多孔質絶縁材シート、前述した芳香族
ポリアミドフイブリッドを含まない通常の集成マィカシ
ート、剥がしマイカシートなどを積層した積層シートを
用いることも、この発明の好適な態様である。

以下、この発明を実施例にて説明する。

実施例 １ 集成マィカシート・…・・集成マィカ箔１００重量部に
対して５部の芳香族ポリアミドフィブリツドを含有する
混抄シートに、芳香族ポリアミド紙を熱圧着したもの（
日本アロマ社製）。

厚さ０．１３側、幅３比肋。熱硬化性樹脂前処理・・・
・・・ェピコート１００１（シェル化学社製ェボキシ系
樹脂）１０の部とオクチル酸亜鉛８部からなる樹脂をシ
ート中に７ｗｔ％含有するように含渡処理。

コイル導体・・・・・・２．２×５．０×２００仇奴の
２重ガラス巻平角銅線を２列、２の史こ組み合わせたも
の。

断面４４×１仇吻。熱硬化性樹脂後処理・・・・・・ェ
ピコート８２８（シェル化学社製ェポキシ系樹脂）１０
＄部、無水メチルテトラハイドロフタル酸１０碇郡、ク
レジルグリシシジルエーテル２礎都からなるェポキシ系
含浸樹脂中にて、圧力０．１脚Ｈｇ以下で３時間の真空
含浸を行ない、ついで圧力３ｋ９′ので３時間加圧した
のち、成型加熱炉中で１５０００、１斑時間の加熱硬化
を行なう。

上記の材料および処理条件を採用し、熱硬化性樹脂前処
理を施した集成マィカシートを絶縁シートとして、コイ
ル導体上に半重ね巻きにて１０回巻回し、さらに絶縁層
としてテトロンテープ（帝人社製、厚さ０．１３側）を
１回巻回した。

ついで、熱硬化性樹脂後処理を施して、絶縁層厚さ約３
．０柳の絶縁コイルを得た。実施例 ２ 実施例１の集成マィカシートにポリエステル不・織布Ｋ
Ｈ３００狐（日本バイリーン社商品名）を種層し、実施
例１と同一の熱硬化性樹脂前処理を施して得られる厚さ
０．１５肋、幅３仇舷の絶縁シートを用い、実施例１と
同じコイル導体上に半重ね巻きにて９回巻回し、さらに
実施例１と同じテトロンテープを１回巻回した。

ついで実施例１で示す熱硬化性樹脂後処理を行なって、
絶縁層厚さ約３．０側の絶縁コイルを得た。実施例 ３ 実施例１の集成マィカシートに厚さ０．０３肌のガラス
クロス（有沢製作所製）と通常の集成マィカシートＤＲ
−２（岡部マイカ社商品名）とを頃層し、実施例１と同
一の熱硬化性樹脂前処理を施して得られる厚さ０．２５
肋、幅３０肋の絶縁シートを、実施例１と同じコイル導
体上に半重ね巻きにて５．５回巻回し、さらに実施例１
と同じテトロンテープを１回巻回した。

ついで実施例１で示す熱硬化性樹脂後処理を行なって、
絶縁層厚さ約３．０肌の絶縁コイルを得た。実施例 ４ それぞれ実施例１で示す熱硬化性樹脂前処理を処した実
施例１記載の集成マイカシートと、通常の剥がしマィカ
シート（光菱電機社製、製品名Ｔマィカ）とを使用し、
実施例１と同じコイル導体上に、集成マイカシートを初
回として交互巻きにて計９回巻回し、さらに実施例１と
同じテトロンテープを１回者回した。

ついで実施例１で示す熱硬化性樹脂後処理を行なって、
絶縁層厚さ約３．０柳の絶縁コイルを得た。比較例 １ 通常の集成マィカシートＤＲ−２（前出）にポリエステ
ル不織布ＫＨ３００２歌（日本バイリーン社商品名、厚
さ０．０３側）を穣層し、実施例１で示す熱硬化性樹脂
前処理を施して得られる厚さ０．１３５柵、幅３仇肋の
絶縁シートを、実施例と同じコイル導体上に半重ね巻き
にて１０回巻回し、さらに実施例１と同じテトロンテー
プを１回巻回した。

ついで実施例１で示す熱硬化性樹脂後処理を行なって、
絶縁層厚さ約３．０肌の絶縁コイルを得た。実施例１〜
４および比較例１で得た絶縁コイル＊の特性を第１表に
示す。なお、第１表中の△ｔａｎ６とは電圧を変えて譲
露正薮を測定したときの、２電圧間の差を意味し、５Ｋ
Ｖ′柵〜０．郎Ｖ／側を対象としている。耐電圧値とは
、シリコン油中にて５ＫＶ／ｍｉｎの段階上昇法により
得た値を３．仇舷の絶縁厚さで除したものであり、また
曲げ変形付与の条件とは、間隔５０仇肋、変形量１０脚
の片持ばり法により曲げ変形をｌｏｏ回与えたものであ
る。第１表上記の実施例では、前処理および後処理の熱
硬化性樹脂としてェポキシ樹脂を用い、また前処理では
含浸樹脂の寿命を長く保つためにェポキシ樹脂の硬化促
進剤を加えているが、この発明では前記にて例示したよ
うな他の熱硬化性樹脂を使用したものであっても実施例
と同様の効果を奏し、また前処理と後処理の熱硬化性樹
脂を別々に硬化させたものであっても支障なく実用に供
し得る。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 絶縁シートの巻回層に熱硬化性樹脂を含浸して加熱
   硬化させた絶縁層を有する絶縁コイルであって、上記の
   絶縁シートとして、集成マイカ箔と芳香族ポリアミドフ
   イブリツドとの混抄シートに芳香族ポリアミド紙を熱圧
   着にて一体化した集成マイカシートを使用したことを特
   徴とする絶縁コイル。 ２ 絶縁シートとして、集成マイカシートのみを用いた
   特許請求の範囲第１項記載の絶縁コイル。 ３ 絶縁シートとして、集成マイカシートと、剥がしマ
   イカ箔に多孔質絶縁材を裏打ちしてなる剥がしマイカシ
   ートとを組み合わせて使用した特許請求の範囲第１項記
   載の絶縁コイル。 ４ 巻回層の最下部と表面部とに集成マイカシートを使
   用した特許請求の範囲第３項記載の絶縁コイル。 ５ 絶縁シートとして、前記の集成マイカシートと、多
   孔質絶縁材単独よりなるシート、集成マイカ箔に多孔質
   絶縁材を裏打ちしてなる芳香族ポリアミドフイブリツド
   を含まない集成マイカシート、剥がしマイカ箔に多孔質
   絶縁材を裏打ちしてなる剥がしマイカシートの３種より
   選ばれる１種もしくは２種以上のシートとの積層体を使
   用した特許請求の範囲第１項記載の絶縁コイル。