JPS6137467B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔利用分野〕 本発明は斜板式圧縮機に係り、とくに斜板とピ
ストンとを係留させるためのシユーの改良に関す
る。

〔従来技術〕

一般に斜板式圧縮機は、例えば第１図に示すよ
うに、対向した位置に適数個のシリンダボア１，
１を有し、対接したシリンダブロツク２，２の端
部はバルブプレート３，３を介在して、ハウジン
グ４１，４２によつて密閉されている。シリンダ
ブロツク２，２の軸心部を貫通して回転自在に支
承された駆動軸５には斜板６が固着され、該斜板
６はシリンダボア１，１内に嵌挿されたピストン
７とボール８およびシユー９を介して係留されて
おり、前記斜板６の回転力によつてピストン７が
シリンダボア１，１内を往復動する。ハウジング
４１，４２には吸入室４３，４４および吐出室４
５，４６が形成されておりそれぞれ弁（図示せ
ず）を介してシリンダボア１，１と連通されると
ともに、外部冷凍回路と連通されている。ただ
し、帰還冷媒を導入するための吸入室４３，４４
との間では、油を含む帰還冷媒の一部もしくは全
部を斜板室１０に導入したり、冷媒より分離され
た油を巧みに導いて、各摺動部の潤滑を行う手段
が構じられている。

上記構成になる斜板式圧縮機のシユー９は、進
歩した最近においてもなお、焼損事故や潤滑不良
などによる作動効率の低下という事故などが生起
している。これらの原因としては、圧縮機の小型
軽量化、年間を通じて空調装置としての過酷な使
用、更にオイルポンプを使用しての強制給油方式
を廃止し冷媒中に含まれる油を直接的に利用して
各摺動部の潤滑を行なう方式の採用などが考えら
れる。しかし、該潤滑方式を採用するに至つたこ
とは、圧縮機の小型軽量化を策する点では多大の
貢献をし、該技術分野では画期的なことであつ
た。

上記潤滑方式では、外部冷凍回路より圧縮機へ
帰還した油を含んだ冷媒又は該圧縮機に入つてか
ら冷媒より分割された油を、圧縮機の各摺動部を
巧みに巡回させて潤滑に供するようにしたことを
特徴とするものであるが、該潤滑方式には宿命的
な欠陥が不可避である。つまり、ある速度以上で
運転される場合は、比較的大量の帰還冷媒がある
ため、各摺動部では十分な潤滑がなされるが、初
期運転時又は低速低負荷運転時には、帰還冷媒は
極端に少なくなり、ほとんど無給油に近い状態に
なることがあり、そのとき金属接触を担わざるを
得ない使用条件が招来することがある。また、車
両空調用冷媒圧縮機はエンジンルーム内に設置さ
れるのが一般的で、高温に曝されるのが常であ
り、圧縮機自体も高温となり易く、その結果油の
粘性が劣化し、必然的に潤滑効果も低下するもの
である。

前記圧縮機の各摺動部分のうちで、とくに過酷
な摺動条件が強いられ、常に良好な潤滑状態を実
現することが困難とされているのは、斜板６とシ
ユー９との摺動部分である。該摺動部分において
は、面圧が100〜300Kg／cm²にも達する。しかもシ
ユー９自体の複雑な運動に伴なつて、斜板６の平
面に対しての姿勢も複雑に変化し、斜板６の平面
常に油粒が存在していても油膜を形成できない状
態となる場合も発生し、その時には金属接触も余
儀なくされるものであつた。

従来、この種の圧縮機におけるシユー９の材料
としては、鉄系金属製の斜板６に対して摺動性の
良好な、つまり耐摩耗性および耐焼付性にすぐれ
た銅一鉛合金層をシユー９の斜板６との摺動面に
形成したもの、アルミ合金製の斜板６に対して機
械強度的と耐摩耗性を一応満足し得るものとして
高ケイ素アルミニウム合金（14〜30％のSiを含
有）及び鉄系金属などが考えられた。したがつて
前記した材料を適切に選択使用することによつ
て、斜板６に対するシユー９の機械的強度と耐摩
耗性を一応満足し得るところまで到達したかにみ
えたが、下記する種々の欠点が露呈するに至つ
た。

〔解決しようとする問題点〕

まず、高ケイ素アルミニウム合金製のシユー９
は耐摩耗性にはすぐれているが、その反面衝撃に
弱いのが欠点であると同時に、近年のオイルポン
プを廃止した潤滑方式の圧縮機では、同材料のシ
ユー９は耐焼付性が乏しく焼損しやすかつた。な
お、高ケイ素アルミニウム合金どうしの摺動は比
較的良好であるが、やはり同種金属のため、長時
間の摺動には無理があつた。

他方、鉄系金属のみ及び鉄系金属を母材として
銅一鉛合金層を斜板６との摺動面に形成したシユ
ー９においては、衝撃に強い特性を有している
が、重量増加の欠点はぬぐい切れず、圧縮機自体
の軽量化や車両そのものの重量が問題化され、重
要視化されている現今の方策に逆行するものであ
る。特に、シユー９は往復動する部品であるの
で、シユー９の重量増加は、円滑な作動を阻害す
る恐れがあり、余計にその欠点が目立つものであ
る。従つて、本願発明の目的は、上記欠点を解消
し、摺動性、耐摩耗性及び耐燃付性にすぐれたシ
ユーを提供することである。

〔問題を解決するための手段〕

本発明の要旨とするところはシユーの主材料を
四フツ化エチレン樹脂とし、その内部に椀形常も
しくは環状に形成された補強部材を鋳ぐるむこと
である。

〔作 用〕

このように構成すれば、母材を四フツ化エチレ
ン樹脂とすることができ斜板とシユーとの摺動面
において、起動時や低速回転時の無潤滑に近い状
態でも斜板との良好な摺動状態が得られ、母材内
鋳ぐるまれた補強部材によつて、摺動面に衝撃に
よる母材の変形を支持し、緩衝体の役目をすると
ともに、両部材の熱膨張係数が異なることから高
温時にシユー内に生じる内部応力差を利用して斜
板との摺動面を中高形状にするという作用を有す
る。

〔実施例〕

以下本発明の実施例を図面に基づいて詳記す
る。

第２図および第３図は本発明の第１実施例で、
母材としての四フツ化エチレン樹脂よりも熱膨張
係数の小さいばね鋼を主材料とする板状部材をプ
レス打抜き加工によつて椀形状となして補強部材
１１Ａとし、該補強部材１１Ａの該周縁をシユー
９Ａの該周縁とほぼ同径にし、かつ該補強部材１
１Ａの周面に複数個の小孔１６を穿設して、シユ
ーの母材の注入を容易にしさらに該小孔１６部位
にて連層部１５Ｂを形成するようにした該補強部
材１１Ａを鋳ぐるむことによつて強化されたシユ
ー９Ａである。

この実施例における前記補強部材１１Ａを鋳ぐ
るむ場合、シユー９Ａの球状凹面側１４を下面
に、斜板６との摺動面側１３を上面にした鋳型を
形成して下型とし、該補強部材１１Ａの外周縁を
球状凹面側１４の面に、かつ球状摺動面１２をま
たぐように該補強部材１１Ａを載置することによ
つてシユー９Ａと補強部材１１Ａとの関係位置が
容易に求められ、次に斜板６との摺動面側１３の
みを有する上型を配置し、上型の上部又は側面に
設けられた湯口より母材注入が可能となる。

第４図及び第５図は本発明の第２実施例で、第
１実施例と同種材料の板材をプレス打抜き加工に
よつて環状となして補強部材１１Ｂとし、該補強
部材１１Ｂを鋳ぐるむことによつて強化されたシ
ユー９Ｂを、第６図および第７図は第３実施例、
第８図及び第９図は第４実施例であつて、第１実
施例と同種材料の板材をプレス打抜き加工によつ
て椀形状となして補強部材１１Ｃおよび１１Ｄと
し、該補強部材１１Ｃ，１１Ｄを鋳ぐるむことに
よつて強化されたシユー９Ｃおよび９Ｄを示し、
シユー９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄの母材剥離を防ぐた
めに前記補強部材１１Ｂ，１１Ｃおよび１１Ｄの
外周縁をシユー９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄの外周縁よ
りもやや小径とし、斜板６との摺動面側１３と球
状凹面側１４との間に連層部１５Ａを形成するよ
うに該補強部材１１Ｂ，１１Ｃおよび１１Ｄを鋳
ぐるむことを特徴としている。なお、１８は補強
部材１１Ｂ，１１Ｃおよび１１Ｄの外周縁上に適
数個配設されている略Ｌ字形状の位置決め用突起
であり、該位置決め用突起１８の外周端はシユー
９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄの外周縁とほぼ同径になる
ようにし、かつ補強部材１１Ｂ，１１Ｃおよび１
１Ｄの平面もしくは該周縁に対しわずかな段差面
１９を有している。したがつて、前記した位置決
め用突起１８の形状によつて、補強部材１１Ｂ，
１１Ｃおよび１１Ｄをシユー９Ｂ，９Ｃおよび９
Ｄに鋳ぐるむ際、シユー９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄの
球状凹面側１４に対する至近位置と球状摺動面１
２に対する関係位置並びにシユー９Ｂ，９Ｃおよ
び９Ｄ母材の連層部１５Ａとが容易に得られる。

前記した連層部１５Ａを形成するに加えて、母
材の剥離防止効果を一層増すために、第６図およ
び第７図に示す第３実施例では第１実施例と同様
補強部材１１Ｃの周面に複数個の小孔１６を、第
８図および第９図に示す第４実施例では補強部材
１１Ｄの周面に複数個の切欠部１７をそれぞれ穿
設し、それらの部位にも連層部１５Ｂを形成する
ように考慮してある。

更に、第２図から第９図の各実施例において、
シユー９Ａ，９Ｂ，９そおよび９Ｄの斜板６に対
する摺動面側１３での耐燃付性を高める意味で、
該摺動面側１３における中高形状を容易に形成さ
せることを考慮して、前記補強部材１１Ａ，１１
Ｂ，１１Ｃおよび１１Ｄの該周縁は、シユー９
Ａ，９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄの球状凹面側１４の至
近位置、つまり斜板６に対するシユー９Ａ，９
Ｂ，９Ｃおよび９Ｄの摺動面側１３と球状凹面側
１４との間における中央位置よりもかなり球状凹
面側１４寄りの位置に該補強部材１１Ａ，１１
Ｂ，１１Ｃおよび１１Ｄが鋳ぐるまれている。

第３図から第９図の各実施例における補強部材
１１Ｂ，１１Ｃ、および１１Ｄを鋳ぐるむ場合、
第２図の第１実施例と同形式の板型とし、該補強
部材１１Ｂ，１１Ｃおよび１１Ｄの位置決め用突
起１８の団さ面１９を球状凹面側１４に当接さ
せ、かつ球状摺動面をまたぐように該補強部材１
１Ｂ，１１Ｃおよび１１Ｄを載置させることによ
つて、すでに述べたごとく、位置決め用突起１８
が予め具備している関係位置が容易に得られ、第
１実施例と同様の上型をのせ、シユー９Ｂ，９Ｃ
および９Ｄの母材注入が可能となる。

さて次に、かように構成された本発明のシユー
９Ａ，９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄの作用・効果につい
て述べる。

〔作 用〕

本発明による四フツ化エチレン樹脂製シユー９
Ａ，９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄは母材を四フツ化エチ
レン樹脂製としたことにより耐付製が向上し、中
んずく、鋳ぐるみ手段によつて、ばね鋼を主材料
とする補強部材１１Ａ，１１Ｂ，１１Ｃおよび１
１Ｄをシユー９Ａ，９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄに内包
することは、十分な強度すなわち耐衝性が得ら
れ、実際の使用時において、満足し得る程度まで
従来技術の欠陥を解消できた。

また、以上に大きな衝撃が、前記シユー９Ａ，
９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄに発生しても、四フツ化エ
チレン樹脂という材質特性によつて、シユー９
Ａ，９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄ自体が緩衝体の役目と
してシヨツクを柔らげ、衝撃恩を吸収するので騒
音が減少する。

斜板式圧縮機が継続運転されると、該圧縮機の
各摺動部において温度上昇が発生する。温度上昇
が一定以上になると、熱膨張大なる四フツ化エチ
レン樹脂を主材料とするシユー９Ａ，９Ｂ，９Ｃ
および９Ｄと該材料より熱膨張係数小なるばね鋼
を主材料とする補強部材１１Ａ，１１Ｂ，１１Ｃ
および１１Ｄとの間に熱膨張係数の差による内部
応力がシユー９Ａ，９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄの半径
方向に発生する。これは四フツ化エチレン樹脂本
来が保持している特性すなわち大きな熱膨張係数
と可撓性による前記の内部応力差を巧みに利用し
て、シユー９Ａ，９Ｂ，９Ｃおよび９Ｄの斜板６
に対する摺動面側１３において、自動的に中高形
状を発生させ、もつて良好な潤滑性および摺動性
を得ようとするものである。特に、本発明の第８
図および第９図の実施例のように、補強部材１１
Ｄの周面に複数個の切欠部１７を設けたことは該
補強部材１１Ｄの弾性変形をしやすくし、その結
果シユー９Ｄの自体の変形と相まつて、シユー９
Ｄの斜板６に対する摺動面側１３において、他の
実施例よりも容易に中高形状を生起せしめ衝撃の
吸収を良好にすることが可能である。

中高形状発生の過程を第２図示の実施例に基づ
いて説明すると、補強部材１１Ａの外周縁はシユ
ー９Ａの球状凹面側１４の至近位置に鋳ぐるまれ
ているので、温度上昇時のシユー９Ａにおける半
径方向の伸びを考えてみると、前記した内部応力
差と、補強部材１１Ａの外周縁の位置等による相
乗的規制によつて、シユー９Ａの内部応力は球状
凹面側１４に片寄つて伸びに制限をうけ、他方摺
動面側１３では比較的自由に延びることができ
る。この内部応力の差が、斜板６に対する摺動面
側１３において、シユー１１Ａの中高形状を自動
的に、かつ容易に具現できる理由である。したが
つて、シユー９Ａに中高形状が形成されると、外
シユー９Ａと斜板６との間の摺動面において、く
さび状空間ができ、常に該空間に油滴を保持し、
さらにシユー９Ａ全体に油膜が発生するので、安
定した潤滑状態が得られ、従来装置において頻発
した、シユーの不安定さから生起する無潤滑接触
の減少、また四フツ化エチレン樹脂自身の無潤滑
時の耐燃付性の良さから燃付き等に発展する問題
が抜本的に解決された。

〔効 果〕

以上述べたごとく本発明は、斜板式圧縮機に使
用されるシユーの主材料を四フツ化エチレン樹脂
としてシユーの摺動性を円滑にし耐燃付性の向上
が可能となり、更にシユーの主材料の材質特性か
らシユーの軽量化が図り得るとともに摺動上の騒
音が減少でき、またばね鋼を主材料とする補強材
を鋳ぐるむことによつて十分な強度および適度な
弾性が得られるとともに、主材料と補強部材の熱
膨張係数の違いから高温状態で中高形状となり、
潤滑性が向上するという効果を有する。

なお、本発明は上記実施例のみに限定されな
い。例えば、四フツ化エチレン母材の高度を増す
ために適当な金属粉を外母材に含ませることも可
能で、このような構成でも本発明の実施例と同じ
効果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は斜板式圧縮機の構成を示す断面正面
図、第２図、第４図、第６図、および第８図は本
発明の第１、第２、第３、および第４の各実施例
で、ばね鋼を主材料とする補強部材を鋳ぐるむこ
とによつて形成された四フツ化エチレン樹脂を主
材料とするシユーを拡大して示す断面正面図、第
３図、第５図、第７図および第９図は本発明の前
記各実施例の補強部材の斜視図である。 ２……シリンダピストン、６……斜板、７……
ピストン、９，９〜９Ｄ……シユー、１１Ａ〜１
１Ｄ……補強部材。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 円板状をなし、一方の平面にボールと摺接す
   る球状凹面を有した斜板式圧縮機用シユーであつ
   て、該シユーは四フツ化エチレン樹脂を主材とし
   てなり、かつ椀形状もしくは還状に形成されて、
   円周数箇所に前記主材樹脂の連層部を生じさせる
   小孔または切欠けを備えた鋼材製の補強部材を、
   前記球状凹面の至近位置において前記主材樹脂中
   に鋳ぐるんだことを特徴とするシユー。