JPS6135578Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はモケツト織機やウイルトン織機等のパ
イル織機により生産される織パイル布帛の織パイ
ル組織（織構造）に関する。

近時パイル布帛の生態がタフテツド、ニツト、
ボンテツド（接着植毛）等の革新技術により高速
化される中で、織パイル布帛は織組織特有の美的
外観形態やパイル及び地組織風合等の品質特性要
因により高付加価値を生み、市場において高級パ
イル布帛としての地位を保持している。この様に
織組織に起因する付加価値を有するものであるた
め、織パイル布帛原反の仕上加工に、タフテツド
布帛原反に施されるラテツクス裏打によるパイル
固着や裏基布貼合せによる形状安定化等の処理
は、織パイル布帛特有の品質特性を著しく阻害す
るものとして適当でなく、それ故に織パイル布帛
のパイル抜糸強度等の特性強度の面において高速
化され安価に生産されるタフテツド布帛等に比し
て劣るという技術的問題があつた。かかる技術的
問題は、織パイル布帛の一層の高級品化を指向し
てパイル糸に繊維を均整に紡績した梳毛糸を使用
するとき、或は、紡績技術の革新に呼応してスパ
ン・ライク・フイラメント糸（長繊維）を使用し
ようとするとき、それらの糸は表面が滑らかで摩
擦抵抗が従来慣用の紡毛糸に比して少ないために
特に重視されなければならず、又、タフテツド布
帛等がフアイン・ゲージ化や電子柄出装置或は連
続パイル捺染装置等の開発により漸次高品質化し
品質的に織パイル布帛と競合する市場分野が拡大
する傾向にある中で特に指摘されなければならな
い問題である。かかる市場における場合は、苛酷
な条件の下で使用され耐久性の特に要求される床
敷物として使用されるパイル布帛分野においてそ
の傾向が大きいため、以下、多彩色パイル糸を使
用したウイルトンカーペツトとしての織パイル布
帛との関連において本考案を具体的に説明する。

織パイル布帛のパイル糸片と地経織との係絡形
態については一般にパイル糸片が一本の緯糸に
360゜迂回する浮房（ルーズパイル：loose
pile）と三本以上の奇数本に720゜＋180゜ｎ（ｎ
＝０，１，２………）曲折迂回する閉房（フアー
ストパイル：fast pile）とに類別され、閉房は浮
房に比して２倍以上の曲折角度をもつて数本の緯
糸に係絡し耐脱毛性を有する形態のものである
が、一本のパイル糸片の係絡に三本以上の緯糸を
要するためパイル密度は浮房パイル布帛の1/3以
下になり、パイルの高い圧縮弾性回復率の要求さ
れるウイルトンカーペツト（以下ウイルトンと称
する。）のパイル組織として適当でない。このた
めウイルトンのパイルの係絡形態は第３図に図示
する如く地経糸G′と沈糸ロ′（１本の筬羽に配列
された数本のパイル糸の中でパイル面の図柄模様
に応じて該当位置でパイルを形成せず地組織緯糸
の下に沈んでいる糸をいう。以下同じ）とにより
上下に分離されて打込まれ締経糸A′とB′とで締
束される緯糸１′と３′の一方にパイル糸片Ｐが係
絡する所謂「二越組織」或は第４図に図示する如
く地経糸G′と沈糸ロ′とにより上下に分離されて
打込まれ締緯糸A′とB′とで締束される緯糸１′，
３′，５′の中の緯糸１′と５′とに係絡する所謂
「三越組織」に示される如く浮房形態に属するも
のであり、耐脱毛性に欠くものであつた。ただ、
三越組織においてパイル糸片は別々に締束される
２本の緯糸１′と５′との挾圧を受けるため二越組
織に比して耐脱毛性を有し、第５図に図示する実
公昭46−11740に係るパイル組織は更に三越組織
の耐脱毛性を改善するためパイル糸片を地組織に
深く係絡させ裏側に位置する緯糸３′を迂回さ
せ、個々のパイル糸片の根部を表側に位置する緯
糸１′，５′間で挾圧しようとするものであるが、
複数本の彩色パイル糸を一群として各筬羽に通糸
し、所要図柄模様に応じてシヤカードで選択され
る一本のパイル糸の上下二段開口と二丁同時走杼
とにより上下に同一組織のカーペツトを同時に二
反生産される二重織パイル組織としては三越組織
は理論的にも不適であり、又仮に、開口を二段に
せず一丁走杼させて三越組織を形成することがで
きるとしても生産量は1/3と著しく低下して技術
的に適せず、これら第４図、第５図に図示される
パイル組織によつて二重織パイル布帛（ウイルト
ン）の耐脱毛性を改善するはできない。又第６図
に図示するパイル組織は第４図に図示するシング
ル・ウイルトンの三越組織が第３図に図示する二
越組織に比して耐脱毛性を有することに着目し一
本のパイル糸片P′が締経糸A′，B′とにより別々
に締束される緯糸１′と７′とにより地組織に挾圧
される様に開発される様に開発したものである
が、そのためには第４図に図示する三越組織に比
して余分の緯糸３′の挿入を要し、地経糸Ｇと沈
糸ロで上下に分離されて上方に位置する緯糸は
１′，３′，７′の３本になり、第３図に図示する
通常のダブル・ウイルトンの二越組織に比して最
大パイル打込密度が1/3に著しく減少し高密度パ
イルのウイルトンが得られない。

本考案は上記の如くシングルワイヤーパイル織
機とダブルフエースパイル織機への汎用性、パイ
ルの耐脱毛性、パイル密度、生産性等織パイル布
帛の付加価値要因を技術的見地及び経済的見地か
ら鋭意研究し完成されたものである。

即ち本考案に係る織パイル組織は第２図に例示
する如く、パイル糸片Ｐと、地経糸Ｇと、パイル
沈糸ロと、二種の締経糸Ａ，Ｂ並びに四種の緯糸
１，３，５及び７とで基本織パイル組織の単位構
成糸とし、二種の締経糸は相互に一方Ａ（又は
Ｂ）が四種の緯糸１，３，５，７（１１，３１，
５１，７１………）の上を連続越えて織込まれる
とき他方Ｂ（又はＡ）がそれらの緯糸１，３，
５，７の下に連続潜つて織込まれる交互の繰返し
により連続し、その二種の締経糸Ａ，Ｂの交叉に
よりこれら四種の緯糸１，３，５，７を一束に締
束し、パイル沈糸ロと地経糸Ｇは締束された四種
の緯糸を上一種３と中二種１，７及び下一種５の
上中下三層に分層してその間を織方向にそれぞれ
直線的に連続し、パイル糸片Ｐはこれらの締経糸
Ａ，Ｂ、地経糸Ｇ、パイル沈糸ロ及び緯糸１，
３，５，７で形成された地組織に上一種の緯糸３
を挾在させ、中二種の緯糸１と７との間を通り、
下一種の緯糸５の裏側に巻回して係絡するこれら
の関係をもつて形成されることを特徴とする。

この織パイル組織を一丁走杼のウイルトン織機
により形成することもできるが、織パイル布帛の
高速生産を指向する本考案にあつては二丁同時走
杼するダブル・フエース・ウイルトン織機への適
合性を第１図を参照しつつ説明するに、第一走杼
において上布締経糸Ｇとパイル糸１を上口とし、
上布地経糸Ｄと上布締経糸Ｈ及び上布パイル沈糸
ハ，ニ並びに下布締経糸Ａ及び下布パイル沈糸ロ
を中口とし、下布締経糸Ｂ及び下布地経糸Ｇを下
口とし、これらの上口経糸と中口経糸とによる上
段開口と、中口経糸と下口径糸とによる下段開口
との二段開口のそれぞれに二丁杼を同時走杼して
緯糸１と２を下布と上布に織込み、第二走杼にお
いて経糸Ｃ，Ｈを上口とし、経糸Ｄ，ニ，ハ及び
Ａを中口とし、経糸Ｂ，Ｇ，イ，ロを下口とする
二段開口において緯糸３と４を同様に織込み、第
三走杼において経糸Ｄ，Ｈを上口とし、経糸Ｃ，
ハ，ニ及びＡ，Ｇ，ロを中口とし、経糸Ｂ，イを
下口とする二段開口において緯糸５と６を同様に
織込み、第四走杼において経糸Ｄ，Ｈ，イ，ハ，
ニを上口とし、経糸Ｃ及びＡ，ロを中口とし、経
糸Ｂ，Ｇを下口とする二段開口において緯糸７と
８とを同様に織込み、次いで、これら第一、第
二、第三及び第四走杼における上布締経糸ＣとＤ
及び下布締経糸ＡとＢの開口位置をそれぞれ取替
え他の経糸の開口位置はこれら第一〜第四走杼に
それぞれ準じて順次第五，第六，第七及び第八走
杼を行つて緯糸１１と２１，３１と４１，５１と
６１及び７１と８１をそれぞれ下布と上布に同時
に織込み、これら第一〜第八走杼を繰返して緯糸
１２と２２，３２と４２，５２と６２，７２と８
２，１３と２３，３３と４３，５３と６３及び７
３と８３………）を同時に織込み、かくして図柄
模様の彩色に応じて使用されるパイル糸イ，ロ，
ハ及びニの中の一種の開口位置を所望の図柄模様
の構成に応じて第１と第２、第５と第６走杼間に
上口から下口へと、第３と第４、第７と第８走杼
間に下口から上口へとジヤガード、ドビー等の柄
出装置により選定するとき、上布と下布とはそれ
らの選定されたパイル糸により連結され、その連
結部分のＸ−Ｘにおける切断により上下二重して
二枚の織パイル布帛（カーペツト）が織成され、
その製織中の経糸張力を地経糸が最も大きく、締
経糸は地経糸より若干弱く、パイル糸がそれらに
比して著しく弱くするとき、その張力差と織前で
の強い筬打撃力によつて織パイル組織は第２図に
示す形態に構成される。

しかして本考案によると、パイル糸片Ｐは締経
糸Ａ，Ｂの締圧の作用する締束の中にあつて織方
向に高密で強い筬打撃力の作用する中二種の緯糸
１て７との間で挾持され、そこから下一種の緯糸
の裏側に巻回して上下に曲折するため耐脱毛性に
優れたものとなり、地経糸Ｇとパイル沈糸ロとが
中二種の緯糸により分離されるため経糸及び幅方
向パイルが高密化されると共に地経糸Ｇは織パイ
ル布帛裏面においてパイル沈糸ロの彩色を被覆す
るため裏面外観が美麗且つ重厚なものとなり、二
丁同時走杼を可能にして織パイル布帛の生産を高
速化する等の効果が生じる。

尚、本願において「二種の締経糸」「四種の緯
糸」という用語は、使用する糸の本数によつて限
定されず引揃、並列或は重複配置により基本織相
織内において曲折係絡形態を同一にする数本の糸
により「一種の締経糸」が構成される場合をも含
む意味において用いられ、又、第１図に例示する
走杼順序の本考案に係る織パイル組織を織成する
範囲内での変更、例えば逆順に走杼する等は本考
案の効果を妨げず技術的範囲を何ら制限するもの
ではない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る織パイル組織の織成過程
を示す側面図、第２図は本考案に係る織パイル布
帛の側面断面図、第３図、第４図、第５図及び第
６図はそれぞれ本考案に係る織パイル布帛に対す
る比較比較パイル布帛の側面断面図。 １，２，３，４，５，６，７，８……緯糸、
Ａ，Ｂ，Ｃ，Ｄ……締経糸、Ｇ，Ｈ……地経糸、
Ｐ……パイル糸片、イ，ロ，ハ，ニ……パイル
糸。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. パイル糸片Ｐと、パイル沈糸ロと、地経糸Ｇ
   と、二種の締経糸Ａ，Ｂ及び四種の緯糸１，３，
   ５，７とで基本織パイル組織の単位構成糸とし、
   二種の締経糸Ａ，Ｂは相互に一方のＡが四種の緯
   糸１，３，５，７の上を連続越えて織込まれると
   き他方Ｂがそれらの１，３，５，７の下に連続潜
   つて織込まれる交互の繰返しにより連続し、その
   二種の締経糸Ａ，Ｂの交叉によりこれら四種の緯
   糸１，３，５，７を一束に締束し、パイル沈糸ロ
   と地経糸Ｇとは締束された四種の緯糸１，３，
   ５，７を上一種３と中二種１，７及び下一種５の
   上中下三層に分層してその間を織方向にそれぞれ
   直線的に連続し、パイル糸片Ｐはそれらの締経糸
   Ａ，Ｂ、地経糸Ｇ、パイル沈糸ロ及び緯糸１，
   ３，５，７で形成された地組織に上一種の緯糸３
   を挾圧させ、中二種の緯糸１，７の間を通り、下
   一種の緯糸５の裏側に巻回して係絡する関係をも
   つて形成されることを特徴とする織パイル布帛の
   構造。