JPS5819893B2 - 車輛懸架用圧縮コイルばね - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は自動車の車体懸架装置などに使用される車輌懸
架用圧縮コイルばねに関する。

自動車においては、ワインドアップ振動その他の原因に
より車体あるいは懸架装置のコイルばねの共振を発生す
ることがある。

特に車体の固有振動数とコイルばねの固有振動数が共存
する周波数領域においては共振が増幅され、車内にいわ
ゆるこもり音を誘発する。

このようなコイルばねと車体の共振を防止するには双方
の共振周波数を相互に異ならしめる必要があり、その一
手段として従来は、例えば太いばね素線でコイルばねを
形成することにより固有振動数を低めることが行なわれ
ているが、同一ばね定数を得るためにはばね長やぼね重
量が大幅に増加し、かつ密着高さも高くなるという欠点
がある。

また、コイルの中間部に質量体（ウェイト）を取付けた
り、コイルの内外周面をウレタンフオーム等によって被
覆することによりコイルばねの固有振動数を下げること
も考えられたが、このものは部品点数が多く加工工数が
増大するためにコスト高となり、かつ耐久性にも問題が
あるなどの欠点があった。

しかも車輌懸架用圧縮コイルばねのようにコイルばねに
加わる荷重の大きさが一定でないものの場合には、軽荷
重のときには車体とコイルばねの固有振動数が相違して
互いに共振を生じなくとも、荷重の増大に伴い車体の固
有振動数が低下してコイルばねの固有振動数に近づき、
いわゆる共振荷重に至ると、車体とコイルばねの固有振
動数が共存して同時共振を生じるという問題がある。

本発明は上記事情にもとづきなされたものでその目的と
するところは、コイルばねに所定値以上の圧縮荷重が加
わった場合にその固有振動数を下げることができるよう
にすることにより共振荷重域における同時共振の発生を
防止でき、しかも部品点数や加工工数の増大をもたらす
ことなく低コストで量産でき、しかも重量や密着高さの
増加が僅少ですむ車輌懸架用圧縮コイルばねを提供する
ことにある。

以下、本発明を図示の一実施例にもとづき説明する。

図面においてコイルばね１は、たとえばばね鋼線などの
ようなばね素線２をコイル状に巻回して形成され、コイ
ル軸線方向中間部に設けられた小ピツチ部３と、この小
ピッチ部３０両側に設けられた大ピッチ部４，５と、一
端に設けられた座巻部６とを一体に備えている。

上記小ピツチ部３は、無荷重の自由状態においては図に
示すように隣り合うばね素線２ａ・・・・・・・・・が
相互に離間し、かつ所定値以上の圧縮荷重が作用した状
態においてばね素線２ａ・・・・・・・・・相互に密接
するように小ピツチｐに巻回されている。

一方、大ピッチ部４，５は圧縮荷重の変動に応じて伸縮
自在となるように大ピツチＰに巻回されている。

また小ピツチ部３と大ピンチ部４，５との相互連接部に
おいては、ピッチがｐとＰとの間でほぼ連続的に増加ま
たは減少するように構成されている。

上記コイルばね１は、所定の圧縮荷重に達するまでの軽
荷重状態では小ピツチ部３と大ピツチ部４．５ばともに
隣り合うばね素線が互℃・に離間しを状態となる。

そして所定値以上の圧縮荷重が加わると、小ピツチ部３
のばね素線２ａ・・・・・・・・・が相互に密接し、大
ピッチ部４，５は圧縮荷重の大きさに対応して伸縮する
。

従って密接した小ピツチ部３は大ピッチ部４，５の伸縮
量に応じてコイル軸線方向に一体的に変位する。

換言すれば、所定値以上の圧縮荷重が作用している状態
では、小ピッチ部３自体はばね作用をなすことがなく、
小ピツチ部３は一体的な質量体（ウェイト）としての作
用をなす。

すなわちこの状態では、小ピツチ部３に代えてこれと等
量の質量体を設けたと等価な振動系を構成するため、大
ピツチ部のみを有するコイルばねに比べて固有振動数が
低下する。

したがって、小ピッチ部３０巻数を適宜に設定すること
により、所定値以上の圧縮荷重域でのコイルばね１の固
有振動数を所望の値に設定することができる。

また、所定値未満の圧縮荷重域では小ピツチ部３のばね
素線２ａ・・・・・・・・・も離れるためこの部分もば
ねとして機能する。

したがってコイルばね全長をばねとして有効に使用でき
、軽荷重時に好適なばね定数とすることができるもので
ある。

なお、小ピツチ部３と大ピッチ部４，５との相互連接部
においては、負荷の変動に応じばね素線相互の密接する
範囲が若干変動することになる。

したがって、小ピツチ部３によって代表される質量体の
重量および大ピッチ部４，５におけるばね定数も若干変
動するから、固有振動数のある程度の変動も不可避であ
る。

しかし、このような変動は通常は殆んど無視し得るほど
小さく、また、無視し得ない場合や、特に非線形ばね定
数が望ましいような場合などには、これを考慮して関係
諸元を設定すればよい。

上記コイルばね１を自動車用懸架装置に設ける場合には
、ワインドアップ振動などのような外部振動の振動数範
囲および車体の共振点（高次を含む）等に応じて小ピツ
チ部３の密接長さを適宜に設定することにより、所定値
以上の荷重状態におけるコイルばね１の固有振動数を適
宜に設定しておけば、コイルばねおよび車体の同時共振
を防止し得るので、上述のようなこもり音の発生を防止
することができる。

すなわち従来の無対策の車輌懸架用圧縮コイルばねの場
合には、軽荷重のときには車体とコイルばねの固有振動
数が相違して同時共振を生じなくとも荷重の増大に伴い
共振荷重に至ると車体とコイルばねの固有振動数が共存
して同時共振を発生することがあったが、本発明によれ
ば荷重増大による共振荷重域に至ってもコイルばね１の
固有振動数が低下するため有害な同時共振を防止し得る
のである。

しかも、上記コイルばね１は単一部品であるとともに通
常のコイル製造装置によって低コストで量産することが
可能である。

次表に、本発明と従来のコイルばねとの諸元を比較して
示す。

表中、区分Ａは本発明のコイルばね、Ｂは素線径増大に
よる対策を施した従来のコイルばね、Ｃは通常の無対策
コイルばねである。

表から判るように、コイル直径および負荷状態における
ばね定数が互いに相等しい３種のコイルばねＡ、Ｂ、Ｃ
において、Ｃに対するＢの密着高さおよび重量がそれぞ
れ約１．５４倍および１．８３倍であるのに対し、固有
振動数がＢとほぼ相等しい本発明Ａのそれは約１．２４
倍および１．３１倍程度にすぎず、重量と密着高さの増
加が僅少ですむ。

なお、本発明は上記実施例のみに限定されるものではな
く、たとえば、コイルばね１は置部形、たる形、円錐台
形、つづみ形またはこれらの組合せからなるものなど、
その他の任意の形状のものであってもよく、両端部とも
座巻部６の有無は問わない。

また、これらのいずれの場合であっても、ばね素線２の
断面形状は任意に設定可能であり、かつ長さに関連して
断面積ないし断面形状が異なるようなものであってもよ
く、かつ小ピツチ部３および大ピッチ部４，５はそれぞ
れ不等ピッチ巻きであってもよい。

また、２つ以上の小ピツチ部を設けるようにしてもよい
。

その他、本発明の要旨とするところの範囲内で種々変更
、応用が可能であることはいうまでもない。

本発明は上述したように、コイルの両端部を除く軸線方
向中間部に、自由状態においてばばね素線が互いに離間
し所定値以上の荷重が加わったときに密接する小ピツチ
部を設けたものであり、所定値に至るまでの軽荷重域で
は小ピツチ部もばねとして作用し軽荷重の場合に好適な
柔軟なばね特性を発揮できるとともに、荷重が増大して
共振荷重域に至ると小ピツチ部のばね素線が密接するこ
とにより上記小ピツチ部が一体的な質量体となってコイ
ルばねの固有振動数を下げるため、車体とコイルばね相
互の有害な同時共振を防止できる。

そして上記固有振動数は小ピツチ部の巻数などを適宜に
設定することにより容易に調節可能である。

しかも部品点数や加工工数の増大をもたらすことがなく
、製造が容易で低コストで量産することができる。

しかも、重量や密着高さなどの増加が僅かですむなど、
実用上、多くの優れた効果を奏することができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例を示す側面図である。 １・・・・・・コイルばね、２，２ａ・・・・・・ばね
素線、３・・・・・・小ピツチ部、４，５・・・・・・
大ピツチ部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ばね素線をコイル状に巻回してなる車輌懸架用圧縮
   コイルばねにおいて、コイルの両端部を除く軸線方向中
   間部には、自由状態においては隣り合うばね素線が相互
   に離間しかつ所定値以上の圧縮荷重が作用した状態にお
   いてばね素線が相互に密接することにより一体的な質量
   体となって尚該ばねの固有振動数を下げる小ピツチ部を
   設けるとともに、この小ピツチ部の軸線方向両側には負
   荷に応じて伸縮する大ピツチ部を設けたことを特徴とす
   る車輌懸架用圧縮コイルばね。