JPS6321787Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、コイル・スプリング、特に内燃機
関の動弁機構に適用されるコイル・スプリングに
関する。

一般に、この種の動弁機構に適用されるコイ
ル・スプリングは同一のコイル径をもつて円筒状
に構成されたものが大半を占め、近年では適宜の
部分を境にしてコイル間のピツチを変えるように
不等ピツチをもつて円筒状に形成されたものが多
く適用されてきている。

すなわち、内燃機関が高速運転されるときにお
いて、その動弁機構のコイル・スプリングの固有
振動数と、弁の揚程曲線における高調波の振動数
とが一致すると、サージング、すなわち、共振現
象が発生し、そのサージングによる付加応力を小
さくするために、そのコイル・スプリングは、コ
イル間のピツチが異なる密巻き部分および粗巻き
部分から構成されてきている。

従つて、そのようなコイル・スプリングが、そ
の動弁機構への取付け状態において、サージング
の発生を少なくするように、その密巻き部分のコ
イル間が接触して配置されるならば、弁のリフト
動作はその粗巻き部分によつてなされ、その粗巻
き部分が共振する場合には、その粗巻き部分に発
生するサージ波がその密巻き部分に伝播され、そ
の密巻き部分が接触および離反運動を繰り返すこ
とから、サージング・エネルギーが減衰され、ま
た、そのコイル・スプリング全体としての固有振
動数が急激に変化するために、サージングによる
付加応力が小さくなる。

しかし、そのように構成されるコイル・スプリ
ングにおいて、サージングによる付加反応は、そ
の粗巻き部分の両端側が最も大きくなる傾向にあ
り、さらに、そのコイル・スプリングには静的に
圧縮されるときの応力も加えられることから、内
燃機関が高速運転される場合には、その粗巻き部
分の両端側における応力が極端に大きくなり、そ
の粗巻き部分の両端側、特に、その粗巻き部分と
密巻き部分との境界部分付近が破損する虞れがあ
つた。

また、実開昭53−150359号公報には、ばね粗線
の巻回曲率の小さい部分と、その巻回曲率の小さ
い部分のばね素線の断面２次モーメントよりも小
さいそれを有するばね素線の巻回曲率の大きい部
分とより構成し、コイル軸線方向に作用する荷重
に基づく各部分の最大応力をほぼ均等になし、各
部分の荷重−撓み特性を均一にするところのコイ
ルばねが開示されている。

この種のコイルばねが、内燃機関の動弁機構に
おいて、弁ばねに使用されるならば、その内燃機
関の高速回転時に生じるサージ波によるサージン
グ付加応力は、ばね端で高くなるも、そのコイル
ばねにおいて、その巻回曲率の小さい部分とほぼ
等ピツチに巻回されたその巻回曲率の大きい部分
には、そのサージ波に対応して繰り返されるコイ
ル間の接触および離反運動が困難になり、したが
つて、そのコイルばねには、そのサージング付加
応力の吸収および減衰が期待できない。

それは、有効動作範囲におけるそのコイルばね
の荷重−撓み特性がほぼ線形であるところによ
り、そのコイルばねでは、軸方向荷重に対してそ
の巻回曲率の小さい部分とその巻回曲率の大きい
部分とが一様に伸縮され、介在縮時に相隣る素線
がほぼ同時に密着状態になるところにある。

さらに、米国特許第4017062号明細書には、自
動車エンジンのバルブに使用される圧縮ばねが開
示されている。

この圧縮ばねは、コイル径の大きい部分と、コ
イル径の小さい部分と、そのコイル径の大きい部
分からそのコイル径の小さい部分にコイル径を変
える遷移部分とより構成され、その遷移部分がそ
のコイル径の大きい部分、若しくは、そのコイル
径の小さい部分に接触する摩擦で、所謂、接触摩
擦で、サージングを減少させている。しかし、こ
の圧縮ばねでは、その遷移部分のコイル径よりも
外側におけるばる素線の外周面がそのコイル径の
大きい部分のコイル径よりも内側におけるばね素
線の外周面に接触するか、若しくは、その遷移部
分のコイル径よりも内側におけるばね素線の外周
面がそのコイル径の小さい部分のコイル径よりも
外側におけるばね素線の外周面に接触することに
よつて、その摩擦減衰を得ようとするので、その
サージングが激しくなると、この圧縮ばねの中央
部分においては、ばね素線が互いに激しく衝突し
合つて、騒音を発生する虞れがあつた。

この考案の目的・課題は、ばね自身の弾性振
動、所謂、サージングを減衰させ、そのサージン
グによる付加応力を小さくし、そのサージングに
よるばね素線の激しい衝突を抑制し、そして、そ
のばね素線の激しい衝突による騒音の発生を防止
してそのサージングに基づく疲労破壊を防止し、
耐久性を向上するところのコイル・スプリングの
提供にある。

そられを目的・課題として、この考案のコイ
ル・スプリングは、ピツチが一端から他端に順次
大きくされた不等ピツチでばね素線を円筒状に巻
回し、そして、その巻回されたばね素線をコイル
径上で接触させる状態でセツトされる円筒形密巻
き部分と、その密巻き部分の大ピツチ側端に連続
され、かつ、その密巻き部分のコイル径よりも大
きいコイル径にそのばね素線を樽状に巻回した樽
形粗巻き部分とを含んで構成し、その粗巻き部分
に発生するサージングがその密巻き部分に伝播さ
れると、その密巻き部分が伸縮され、スプリング
の固有振動数を急激に変え、そのサージングを減
衰させ、加えて、その密巻き部分が伸縮される
際、その密巻き部分の巻回されたばね素線がコイ
ル径上で接触および離反運動を繰り返し、その運
動による摩擦でそのサージングを減衰させるとこ
ろにある。

以下、この考案に係るコイル・スプリングの望
ましい具体例について、図面を参照して説明す
る。

図は、内燃機関の動弁機構（図示せず）に適用
されたこの考案のコイル・スプリングの具体例１
０を示している。

そのコイル・スプリング１０は、ピツチが一端
から他端に順次大きくされた不等ピツチでばね素
線を円筒状に巻回し、そして、その巻回されたば
ね素線をコイル径上で接触させる状態でセツトさ
れる円筒形密巻き部分１１と、その密巻き部分１
１の大ピツチ側端に連続され、かつ、その密巻き
部分１１のコイル径よりも大きいコイル径にその
ばね素線を樽状に巻回した樽形粗巻き部分１２と
を含んで構成されている。

その密巻き部分１１は、適宜の直径を有するば
ね素線、すなわち、ばね鋼線から円筒状に形成さ
れたもので、一端から他端にピツチが順次大きく
なるような不等ピツチをもつて巻回されている。

従つて、その密巻き部分１１のほぼ中央におけ
るピツチP₂は、一端側におけるピツチP₁よりも
大きく、また、他端側におけるピツチP₃は、そ
のほぼ中央におけるピツチP₂よりも大きくなる
ように構成されている。

そのように構成された密巻き部分１１の大ピツ
チ端、すなわち、そのピツチP₂側端には、粗巻
き部分１２が連続的に形成されている。

すなわち、その粗巻き部分１２は、上述した密
巻き部分１１と同一のばね鋼線からなるもので、
樽状に形成されている。

勿論、その樽形粗巻き部分１２の両端における
コイル径は、その密巻き部分１１のコイル径とほ
ぼ同一になるように構成され、また、その両端を
除く部分においては、その密巻き部分１１のコイ
ル径よりも大きくなるように構成されている。

また、その粗巻き部分１２のピツチは、その密
巻き部分１１における最大ピツチ、すなわち、ピ
ツチP₃よりも大きくなるように構成されること
は勿論である。

また、その粗巻き部分１２の両端方に密巻き部
分１１をそれぞれ設け、上下ほぼ対称となるよう
に構成することも勿論可能である。

従つて、上述の構成になるそのコイル・スプリ
ング１０が、内燃機関の動弁機構に使用されるな
らば、その密巻き部分１１のその巻回されたばね
素線、すなわち、コイル間が、コイル径上で接触
された状態でセツトされるので、弁のリフト動作
はその粗巻き部分１２によつて行なわれる。

勿論、その粗巻き部分１２のばね定数は、その
弁のリフト動作に適したばね定数とほぼ同一にな
るように構成される。

そのような動弁機構への取付け状態において、
内燃機関の運転により、その粗巻き部分１２の共
振する場合には、その粗巻き部分１２に発生する
サージ波がその密巻き部分１１に伝播され、その
密巻き部分１１が伸縮されるに伴つて、そのコイ
ル・スプリング１０全体としての固有振動数を急
激に変化させ、その結果、サージングが減衰さ
れ、同時に、その密巻き部分１１の伸縮性に伴つ
て、その密巻き部分１１におけるその巻回された
ばね素線がコイル径上で接触および離反運動を繰
り返し、その際の接触による摩擦でサージング・
エネルギーを減衰させ、それらの結果、そのサー
ジングによる付加応力が小さくなる。

また、その粗巻き部分１２のほぼ中央の部分は
コイル径が大きくなるように構成されているた
め、静的な応力が大きくなるが、サージングによ
る付加応力は小さくなり、従つて、その内燃機関
が高速運転される場合にも、その粗巻き部分１２
における応力の分布がほぼ均一になり、その粗巻
き部分１２の両端側、特に、その粗巻き部分１２
と密巻き部分１１との境界部分付近の破損が防止
される。

如上のこの考案によれば、密巻き部分が、ピツ
チを一端から他端に順次大きくした不等ピツチで
ばね素線を円筒状に巻回し、そして、その巻回さ
れたばね素線をコイル径上で接触させる状態でセ
ツトされ、また、粗巻き部分が、その密巻き部分
の大ピツチ側端に連続され、かつ、その密巻き部
分のコイル径よりも大きいコイル径にそのばね素
線を樽状に巻回して形成されるので、サージング
がその粗巻き部分に発生され、そのサージングが
その密巻き部分に伝播されると、その密巻き部分
が伸縮されるに伴つて、スプリングの固有振動数
を急激に変化させ、その結果、そのサージングが
減衰され、そのサージングによる付加応力が小さ
くなり、同時に、その密巻き部分の伸縮に伴つ
て、その密巻き部分におけるその巻回されたばね
素線、すなわち、コイル間がコイル径上で接触お
よび離反運動を繰り返し、その際の接触による摩
擦でそのサージングが減衰され、そのサージング
による付加応力が小さくなり、また、そのサージ
ングによる異状騒音が効果的に緩和され、さら
に、その密巻き部分および粗巻き部分が同一直径
のばね線材から連続して製作されるので、製作が
容易で、しかも、廉価に可能になり、特に、内燃
機関の動弁機構における弁ばねとして非常に有用
になり、かつ、実用的である。

【図面の簡単な説明】

図は内燃機関の動弁機構に適用されたこの考案
のコイル・スプリングの具体例を示す正面図であ
る。 １１……円筒形密巻き部分、１２……樽形粗巻
き部分。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 ピツチが一端から他端に順次大きくされた不等
   ピツチでばね素線を円筒状に巻回し、そして、そ
   の巻回されたばね素線をコイル径上で接触させる
   状態でセツトされる円筒形密巻き部分と、 その密巻き部分の大ピツチ側端に連続され、か
   つ、その密巻き部分のコイル径よりも大きいコイ
   ル径にそのばね素線を樽状に巻回した樽形粗巻き
   部分 とを含むコイル・スプリング。