JPS5813250B2 - クランクシヤフトの荒打閉塞鍛造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、クランクシャフトの荒打閉塞鍛造方法に関
するものである。

この明細書中、クランクスローなる用語は、クランクピ
ンとクランクピンの両端に隣接する一対のクランクアー
ムとを一括総称する用語として用いるものとし、またク
ランク軸とは、クランクスロ一部に隣接するクランクジ
ャーナル部分を指称する用語とし、さらにクランクシャ
フトとは、クランクスローならびにクランク軸を交互に
連続してそなえる一個の軸体を総称する用語として用い
るものとする。

よく知られるように、従来のクランクシャフトの型鍛造
方法は、多くの他の一般部品における型鍛造方法と同様
に、荒打，仕上打共あらかじめ型空洞形状の固定してい
る一対の型によって、製品の正味容積より若干大きい材
料を加圧成形するのであるが、このとき材料のこの大き
めの余肉は、型割面にパリとなって流出する。

このときのパリの流出抵抗に起因して型空洞内に発生す
る材料の圧力によって、いわゆる型満たしが行われ、成
形が遂行されるのであるが、比較的形状の複雑な部材に
属するクランクシャフトの場合、パリ量は特に大きく付
加しなければならず、したがって有効歩留りが極めて低
く、材料の無駄が甚たしいものとなる。

そのうえ、このバリは厚さが薄く、冷却も早いため、こ
の部分の変形抵抗ならびに摩擦抵抗は益々増大し、その
ため有効部分に対する加圧成形よりも、むしろバリの圧
下のために大半の加圧力を費やす結果となり、製品の大
きさの割合にはぼう犬な出力の加圧機を必要とすること
になる。

この発明の課題とする荒打閉塞鍛造方法は、これに続く
仕上打閉塞鍛造の工程と一体となって全鍛造工程を完了
するものであって、荒打閉塞鍛造によって得られる成品
態様は、次工程の仕上打閉塞鍛造と無関係ではあり得ず
、仕上打閉塞鍛造を最も効果的に遂行するための最適の
態様を提供するものでなければならない。

本出願と同一出願人のもとに昭和５３年特許願第１４０
１９７号として出願され、名称を「クランクシャフトの
閉塞鍛造方法」とする先願技術は、上記の仕上打閉塞鍛
造としての好適な鍛造方法を提供するもので、本出願は
上記先願技術の前工程としての位置に置かれて特に効果
を発揮する鍛造方法に関するものである。

前記したように、従来のクランクシャフトの型鍛造方法
によれば、材料の歩留りが悪いことなどの欠点があり、
これらの要因の根源はすべてパリの発生にある。

したがって、パリを発生せしめない鍛造方法を実現する
ことにより、上記従来方法の欠点は大巾に改善されるこ
とになる。

パリを発生せしめない鍛造方法に関する先願技術として
は、たとえば特開昭４９−１１９８４９号公報のものが
ある。

これについて概説すると、第１５図および第１６図はこ
れを示し、第１５図中の材料２１は、挿入マニピュレー
ター鉗子２２により中心の位置決めをして支持される。

この状態で下型２３の上に上型２４が所定の位置まで下
降するが、この状態では金型空間の両端面は開放してい
る。

つぎに衝きラム２５，２５が両側から前進して上記金型
空間の両端面を密閉する。

この密閉された状態でさらに各衝きラム２５，２５の中
心部に装備されている中央穴ラム２６．２６が前進する
。

第１６図はその状態を示す。この鍛造方式はいわゆる閉
塞鍛造方式であり、この方式によれば前記のパリの発生
はなく、またパリを発生させる必要もなく、原則的には
きわめて精度の高い成品を効率よく鍛造することが可能
である。

しかし、この先願技術による鍛造方法をそのままクラン
クシャフトの鍛造に適用しても、精度の高いクランクシ
ャフトの鍛造品を得ることは不可能である。

その理由は、上記先願技術の構成から明らかなように、
該技術の対象とする成品は、使用される材料２１がたと
え棒状であっても、鍛造後の成品形状はむしろ塊状に近
いものであり、したがって両端面から前進する中央穴ラ
ム２６，２６による型内の隅々への肉の押込み作用も可
能であるが、複雑な形状をそなえるクランクシャフトに
対し、とくに多気筒機関用の長大なクランクシャフトに
対しては、該先願技術における中央穴ラム２６，２６の
前進操作によっては、型内の隅隅への肉の押込み作用は
望み得す、また各クランクスローに対する肉の均等配分
も行われなくて、その結果到底精度の高いクランクシャ
フトを得ることができないばかりか、閉塞鍛造の理念そ
のものの達成さえも不可能である。

つまり、上記先願技術は、成品形状が短小でコンパクト
な構成の部品などに適用可能の技術であり、本願の対象
とするクランクシャフト、またはその他の長大形の部品
に対しては適用することができないものである。

さらに、該先願技術では、衝きラム２５，２５の前進行
程を完全に同調せしめる必要があること、挿入マニピュ
レーター鉗子２２によって材料２１をあらかじめ所定の
位置に保持する必要があること、などの問題点がある。

この発明は、上記従来の型鍛造ないし閉塞鍛造によるク
ランクシャフトの荒打鍛造方法の欠点を改善することを
目的としてなされたものである。

つぎに、本発明方法の構成につき、実施例を示す図面に
基いて詳細に説明する。

第１図の符号１はクランクシャフト用の棒状の材料であ
る。

図では丸棒の例が示されるが、角棒が適当な場合もある
。

第２図の符号２は、材料１に本発明方法を実施して形成
された製品であり、次工程の仕上打に対する材料となる
ものであるが、２ａはクランク軸部、２ｂはクランクス
ロ一部であって、それぞれの形状が第３図に示される。

第４図ないし第６図は本発明方法に使用される二つ割れ
の一対の型のうちの下型を示し、下型３は下部に設けら
れる五涸のポンチ５をそれぞれ貫通するための通孔３ａ
を穿設され、また、クランクスロ一部２ｂを形成せしめ
るための型空洞４を刻設される。

第７図および第８図はポンチ５の形状を示す。

ポンチ５の先端５ａは凹面を形成し、これを材料１に対
して圧入せしめることにより、クランク軸部２ａの表面
を凸面状に成形する。

上型３′ならびにこれを貫通して上部に設けられる五個
のポンチ５′は、下型３ならびにポンチ５とそれぞれ対
応する位置に対向配置されるもので、その構成はいずれ
も上記に準じるものであり、図示による説明は省略する
が、下型３と上型３′との相違する点は、実施例に示す
クランクシャフトのクランク配置が四筒１８０°のクラ
ンクシャクトであり、この位相差の方向を加圧機の作動
方向と一致せしめる方向に置いて鍛造する場合の例が示
されているため、第９図に示すように各クランクスロー
に対する型空洞の深さが、下型３と上型３′とでは、交
互に相違する点のみである。

上記の一対の型およびポンチを使って材料１に対し荒打
閉塞鍛造を行うための加圧機の一例として、複動液圧プ
レスの構成が第９図ならびに第１０図に示される。

図において、アウタースライド８はアウタープレス９，
９を固着され、アウタープレス９，９は上フレーム１２
の中にあって油圧により上下動せしめられる。

親板６は、下盤７に設けられた下部プレス１１に固着さ
れて、下型３内のポンチ５，５・・・を進入せしめるた
めのものであり、親板６′は、上フレーム１２に設けら
れたインナープレス１０に固着されて、上型３′内のポ
ンチ５’，５’・・・を進入せしめるためのものである
。

下盤７と上フレーム１２とは、アップライト１３，１３
によりたがいに連結されてプレスの架構を構成する。

１４は各プレス引戻用の油圧源としてのアキュムレータ
で、油路１５，１６を通じてアウタープレス９，９なら
びにインナープレス１０を、また油路１７を通じて下部
プレス１１を、それぞれ加圧側の油圧を作動させない限
り引き戻しておくためのものである。

また、１８はアウタープレス９，９の加圧側の油路であ
り、１９および２０はそれぞれインナープレス１０およ
び下部プレス１１の加圧側の油路で、油路１９，２０は
たがいに連結されてそのため下部ブレス１１はインナー
プレス１０に追随連動せしめられる。

いま、本発明にかゝる方法を用いてクランクシャフトの
荒打閉塞鍛造を行う作用につき説明する。

第９図および第１０図は、アウタースライド８を上昇せ
しめ、下型３内に材料１を供給した状態を示し、このと
きポンチ５，５′は上下に拡げられた伏態にある。

つぎにアウタープレス９，９に対して加圧を発動すると
、上型３’はポンチ５’を保持したま５下降して、第１
１図および第１２図に示すように、上型３′が下型３に
対して互の型割面で密着し、押付けられて停止する。

このとき、上下各型の型空洞４，４′の部分およびその
他両端の空洞部分の大きさは、材料１が型割面にはみ出
すことのないような大きさとされる。

引続いて、インナープレス１０と下部プレス１１とに対
して加圧を発動すると、ポンチ５および５′は親板６，
６′を介して下型３および上型３′ノ通孔３ａ，３ａ’
に沿って対向進入し、材料１上の各クランク軸に相当す
る部分に対して凹面状の先端５ａ，５ａ’を圧入せしめ
ることにより、該部分に対して凸面をそなえる荒打形状
を形成せしめるとともに、押しのけられた余肉を隣接す
るクランクスロ一部用の型空洞４，４′に向って移動せ
しめ、型空洞４，４′内における材料の不足分を補充々
満せしめる。

その最終の状態を第１３図および第１４図に示す。

材料１の余肉を型空洞４，４′に向って移動させるため
の内圧は、ポンチ５，５′の進入によって材料１内に発
生せしめられ、その圧力は同時に下型３および上型３′
を押し開こうとする力となって作用するが、上記の力は
アウタープレス９による下向きの力によって対抗せしめ
、上下型間の密着状態を保持せしめる。

上記の作用の説明から明らかなように、本発明方法によ
る荒打操作の特長は、棒状の材料に対して、各クランク
軸部の位置を設定し、かつ各クランク軸部に必要とされ
る材料の概略の予量を付与せんとするものであって、ク
ランクスロ一部に対してはクランクピンもしくはクラン
クアームに関しての個々の予備成形を行うことなく、単
にクランクスロ一部のためのブロックとしてそれぞれの
ブロックに対する概略の位置づけを行うための鍛造方法
であり、クランクピンもしくはクランクアームに関して
の個々の成形は、次工程としての仕上打閉塞鍛造に委ね
る方式である。

したがって、次工程の仕上打閉塞鍛造によってクランク
ピンおよびクランクアームの成形の結果はみ出てくる材
料の余肉によって、荒打の場合とは逆に、クランク軸部
２ａのための仕上打用型空洞を充すような手順にするこ
とが望ましく、そのため本発明方法によって形成される
クランク軸部２ａの断面積は、次工程の鍛造操作を考慮
して、仕上打閉塞鍛造によって最終的に形成されるクラ
ンク軸部の断面積よりやや小さく設定しておくことが望
ましい。

また本発明方法において、形成されるクランク軸部の形
状を、対向する一対の凸面をそなえる形状とした理由も
、金型の開閉方向ならびにポンチ進入方向がこの荒打工
程とは９０°回転した方向となる次工程としての仕上打
閉塞鍛造における型閉塞時、該部において材料のはみ出
しを起こさないように配慮されたものに外ならない。

さらに、上記の実施例は、竪型の複動プレスに関するも
のであるが、これを横型とすることもでき、またそのと
き左右両方共複動プレスの相打ち式とすることも可能で
あり、さらに、液圧プレスは勿論、その他の機械プレス
に適用することも容易に可能であることは明らかである
。

本発明方法によれば、次工程の仕上打閉塞鍛造と共に、
クランクシャフトの鍛造を行うに際し、従来はバリを発
生せしめることが必要不可欠の条件とされたのに対して
、バリの発生を必要とせず、いわゆるバリ無し鍛造を実
現することができ、そのため材料の歩留りを向上し、バ
リ取りの作業が省略され、またバリを加圧するために消
費される鍛造機械の余分の出力を削減することが可能と
なって、鍛造作業の能率を向上せしめるなどの著るしい
効果を発揮するものである。

また、従来の閉塞鍛造が両端面から左右一対の中央穴ラ
ムを前進せしめて型内における肉の充満を図るのに対し
、本発明方法では、各クランク軸部のすべてに対してそ
れぞれ上下から一対のポンチを進入せしめる方式とした
から、クランクシャフトのような長大な成品の鍛造に際
しても肉の配分が無理なく均等に行われ、精度の高いク
ランクシャフトの荒打鍛造ができるというすぐれた効果
がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は材料の外形の一例を示す斜視図、第２図は本発
明方法により鍛造された製品の一例を示す斜視図、第３
図は第２図に示す製品の中央部における横断面図、第４
図は下型の平面図、第５図は第４図中の■−■線におけ
る断面図、第６図は第４図中の■−■線における断面図
、第７図は本発明方法に使用される一部品としてのポン
チの正面図、第８図はその側面図、第９図は本発明方法
を使用するプレスの断面図、第１０図は第９図中の■−
■線における断面図、第１１図および第１３図はいずれ
も本発明方法を使用するプレスの作動経過を説明するた
めの断面図、第１２図は第１１図中の■■一■■線にお
ける断面図、第１４図は、第１３図中の■■一■■線に
おける断面図、第１５図および第１６図はいずれも従来
方法によるプレスのそれぞれ異なる作動経過を示す断面
図である。 １・・・材料、２・・・製品、２ａ・・・クランク軸部
、２ｂ・・・クランクスロ一部、３・・・下型、３′・
・・上型、３ａ，３ａ’・・・通孔、４，４′・・・型
空洞、５，５′・・・ポンチ、５ａ，５ａ’・・・先端
、６，６′・・・親板、７・・・下盤、８・・・アウタ
ースライド、９・・・アウタープレス、１０・・・イン
ナープレス、１１・・・下部プレス、１２・・・上フレ
ーム、１３・・・アップライト、１４・・・アキュムレ
ータ、１５，１６，１７，１８，１９，２０・・・油路
。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ クランクシャフトの荒打鍛造方法において、各クラ
   ンクスロ一部に付与すべき荒打形状をあらかじめ刻設さ
   れてクランクシャフトの長手軸に平行に分割された二つ
   割れの一対の型の間にクランクシャフト用の棒状の材料
   を挟んで上下から該一対の型を加圧閉塞したのち、それ
   ぞれの先端に凹面を形成せしめた上下一対よりなるポン
   チを上記各クランクスロ一部に隣接配置されるクランク
   軸部のすべてに対して上記一対の型のそれぞれに穿設さ
   れた通孔を貫通して上下から対向進入せしめることによ
   り、対向する一対の凸面をそなえる各クランク軸部の荒
   打形状を上記材料に対して形成せしめるとともに、上記
   各クランク軸部の材料の余肉を各クランク軸部に隣接す
   る上記各クランクスロ一部に向って移動せしめ、クラン
   クスロ一部の型内における材料の不足分を補充々満せし
   めることを特徴とするクランクシャフトの荒打閉塞鍛造
   方法。