JPS5811094B2 - コイル装置の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はフランジに端子を植設した成形ボビンに電線を
巻装し、電線の巻始め、巻終りの両端を前記端子に接続
してなるコイル装置の製造方法に関するものである。

一般に、フランジを有する成形ボビンの多くはそのフラ
ンジを利用して端子が設けてあり、コイル装置を製造す
るに当っては電線を巻装すると共にその電線の巻始め、
巻終りの両端を端子に接続している。

しかるに、その製造工程について見ると、電線の巻装工
程に関する自動化はかなり進んでいるものの、電線端の
処理に関しては適当な方法がなく人手に依存しているの
が実状である。

電線端の処理、すなわち電線の巻始め、巻終りの両端を
それぞれ所定の端子に接続する作業は、従来の電線端の
絶縁被覆を剥離した後に端子に半田付けしていた。

この電線の絶縁被覆を剥離する作業は、剥離剤を使用す
るにせよ、機械的に行うにせよ、非常に面倒で自動化は
実施し難い作業であった。

本発明はこのような事情に鑑みなされたものでその目的
とする所は、電線端を端子に機械的に係止させた後に電
線と端子を電気溶接することによって絶縁被覆の焼散と
溶着を行い、コイル装置の製造工程をはゞ全面的に機械
装置による自動化可能ならしめようとするものである。

以下、本発明の内容を図面に示す実施例を用いて詳細に
説明する。

先ず第１図乃至第４図に示す第１の実施例について説明
すれば、１は成形ボビンで、巻線を施す筒状の巻線部１
１と該巻線部１１の両端に形成されたフランジ部１２か
ら構成されている。

１３はフランジ部１２の外面に設けた突出部で、この突
出部１３よりさらに突出するように端子２をこの端子２
は、突出部１３に一端を埋込んだ形でフランジ部１２に
植設しているが、端子２の植設形態としてはこのような
形に限らず、例えば図示の端子２の周囲を突出部１３の
延長による樹脂で囲むようにしてもよいし、さらに突出
部１３を延長させ、これに端子の数に合わせた透孔を設
けておき、この透孔を覆うように上から端子２を植設す
ることもできる。

第１図に示す成形ボビン１の場合は端子２を２個図示し
であるが、必要に応じて２個以上必要数設けることがで
きる。

なお、この端子２にはその一部を切起した舌片２１が設
けてあり、この舌片２１は切抜き部２２に対し鈍角を呈
するように折曲しておく。

このような構成になる成形ボビン１に電線３を巻装する
場合は、電線３の巻始め端３１を一方の端子２に係止す
る。

この係止の方法は後述する巻終り端３２の場合と同様で
あるので説明は省略する。

なお、第１図に示すように端子２の位置に境界を一致さ
せた切欠き１４をフランジ部１２に形成しておくと電線
３の巻始め、巻終り端３１．３２をその切欠き１４の境
界に引掛けて引き出せるので作業上都合がよい。

本実施例においては、図示してはないが成形ボビン１を
固定し、電線３を把持したフライヤーを成形ボビン１の
周囲で回転させることにより電線３を巻装する巻線機を
使用したので、巻始め、巻終りの位置はフライヤーの回
転方向によって決定されることになる。

なお、巻線機には成形ボビン１が回転する方式のものも
あり、巻線工程に関してはいずれの方式でもよい。

本実施例においてはフライヤーが左回転であるので、左
側の端子２に電線３の巻始め端３１が係止される。

巻始め端３１が係止された電線３はフライヤーの回転に
従って成形ボビン１の巻線部１１に所定回数巻装され、
巻終り端３２を右側の端子２の位置に引き出してくる。

そして第３図に示すように端子２の舌片２１に引掛けて
舌片２１の裏側に当接するように折曲して係止させ、電
線３を端子２の平板部分と舌片２１とで包むように舌片
２１を折曲し、電線３の巻終り端３２を機械的に係止す
る。

このとき電線３の絶縁被覆３３は心線３４を覆っている
ので電気的接続は行われない。

なお、舌片２１の折曲は、例えば第３図に示すように小
形のプレス装置の押型４１，４２により矢印Ａのように
押圧して行う。

このようにして電線３の巻終り端３２を端子２に機械的
に係止した後余長を切断し電気溶接を行う。

本発明に使用される電気溶接方法としては抵抗溶接法が
最も簡便であり適しているが、他の方法でも可能である
。

抵抗溶接の場合は第２図および第４図に示すように、溶
接電極５１，５２を電線３を包んだ舌片２１の上側と端
子２の裏側から加圧接触させた後通電する。

このとき、電流は舌片２１を矢印Ｂのように流れてジュ
ール熱を発生する。

その結果、電線３の絶縁被覆３３は燃焼して絶縁が破壊
される。

そして、さらに通電を続けることによって電線３の心線
３４と舌片２１を含む端子２を溶着させる。

絶縁被覆３３を施した電線３を端子２のような導体に溶
接する方法としては、溶接電極４１自体を発熱させて絶
縁被覆３３を燃焼させたり、絶縁被覆をバーナーで焼散
させる方法など、多数提案されているが、いずれも溶接
装置が特殊であったり、寸法的に大きい素材に適してい
たりで、本実施例のように極く細い電線３を溶接するに
適した方法はなかったものである。

本実施例においては、電線３をフランジ部１２より大き
く突出した端子２に設けた舌片２１で包み込むようにし
て固定し、この舌片２１を通して絶縁被覆３３を焼散さ
せる電流を流し、さらに電流を心線３４を通して供給す
ることによって溶着させているので、舌片２１で発生す
るジュール熱は電線３に確実に伝達され、その絶縁被覆
３３を効率よく焼散させることができ、しかも溶接機は
汎用のものが使用でき、電線３は細くても舌片２１によ
って保護されるので確実に溶接できる。

なお、絶縁被覆の焼散と半田接続を同時に行なおうとす
る提案もあるが、一般に半田の溶融温度は２２０℃前後
であり、電線の絶縁被覆であるエナメルやポリエステル
が３５０℃乃至４００℃でないと燃焼しない点を考慮す
ると、絶縁被覆を焼散させる温度では半田の流動性が高
くなり半田寸けが極めて困難になり実際的でない。

これは、本来の作業が絶縁被覆を除いた後に接続するも
のであるのに対し、半田の溶融温度と絶縁被覆の燃焼温
度が逆であるからである。

それに比較して、本発明による溶接温度は銅の溶融温度
である約１，０００℃前後であり、絶縁被覆の燃焼温度
よりはるかに高く半田のような問題は生じない。

また、説明は省略したが、層間紙や外装紙の装着は必要
に応じて従来通り行ってもよいことは勿論である。

なお、こゝで本実施例において行われた実験結果につい
て説明する。

コイル装置としては３０ワツト螢光灯用安定器に用いら
れるものを対称とした。

成形ボビンは硝子繊維を混入したナイロン製で、これに
ポリエステル絶縁被覆を施した直径０．３５ｍｍの絶縁
電線を巻装している。

端子は厚さ０．５ｍｍ、巾４ｍｍの真鍮製で、長さが約
３ｍｍの舌片が設けである。

この端子の舌片に電線を係止し約１０〜でこれをかしめ
止めし、溶接電極間に約１２Ｋｇの加圧力を加えて溶接
した。

通電時間は全部で１３Ｈｚとし、最初の８Ｈｚを７００
Ａ、後半の５Ｈｚを１５０ＯＡに設定した。

前半と後半で電流値を変えたのは、絶縁被覆の有無によ
って電流の流れる径路が変わるため、絶縁被覆の燃焼と
、実際の溶接用電流とを考慮することによって信頼性の
高い溶接作業を行おうとしたものである。

結果は十分な接続強度が得られ満足すべきものであった
。

また、他の実験によれば、巾６ｍｍ、舌片の長さ４ｍｍ
とした端子を使用し、電線を挾持した状態で最初の２０
Ｈｚを６５０Ａ、後半の４Ｈｚを１５００Ａとして合計
２４Ｈｚ通電し、やはり良好な接続状態が得られている
。

共通的に言えることは、最初に小さい電流で絶縁被覆を
燃焼散逸させ、その後大電流で一気に溶接する点である
。

このようにすれば、溶接による接合状態が良好で、絶縁
被覆等が原因で生ずる接触不良などが殆んど発生しない
。

本発明は以上説明したように、従来と同様な電線の巻装
工程に続けて、電線の巻始め、巻終り端を電気溶接によ
り端子に接続する工程を加えたものであり、実施上の問
題は電線の端子への固定と溶接可能な構造にあるといえ
る。

前述した第１の実施例はその構造が巻線機および溶接機
との関連において適切なものであるが、その他にも第５
図以下に示すような構成が代表的なものとして考えられ
る。

第５図および第６図に示す第２の実施例は、端子２にＶ
字状切欠きを有する羽根を広げたような舌片２２を形成
し、このＶ字状切欠きに電線３を当接してプレス装置の
押型４１，４２で舌片２２を重ね折りし、その間に電線
３を挾み込んで固定し、しかる後に溶接電極５１，５２
を加圧接触させ第１の実施例と同様絶縁被覆３３を焼散
させて溶接するものである。

このような構造の端子２を用いる利点は、電線３を真直
ぐ引き出してくればよいので、自動化の際の機構が簡単
になる所にある。

第７図および第８図に示す第３の実施例は、端子２に舌
片２３を設けると共に、この舌片２３に電線３が喰い込
む鋭角状の切込み２４を設けたも１のである。

この切込み２４は、電線３を舌片２３に係止すると同時
に機械的な係止が行われる所に意味がある。

すなわち、プレス装置による舌片２３の折曲作業を行う
ことなく電線３が係止されるので、直接溶接電極５１，
５２を当接させ、溶接電極５１，５２の加圧力を利用し
て舌片２３を折曲し、溶接作業を行うものである。

この場合の舌片２３は、これが折曲されたとき電線３を
包み込むように構成されねばならないことは勿論である
。

第９図および第１０図に示す第４の実施例は、端子２に
外形がＭ字形の厚肉状の舌片２５を設けたものである。

この舌片２５の中央には鋭角を呈する切込み２６を設け
ておき、電線３をこの切込み２６に喰い込ませて機械的
に係止する。

電線３は舌片２５の中に嵌め込まれた形になるので、前
述の実施例で説明した舌片で包み込まれた状態と同様に
なり、加圧溶接することによって容易に絶縁被覆３３の
焼散と溶着を行うことができる。

以上詳細に説明したように、本発明はフランジ部に端子
を植設した成形ボビンに電線を巻装すると共に、電線の
巻始め、巻終り端を端子に設けた舌片に引掛けて折曲係
止させ、電線を舌片で包み込むようにして挾持させ、挾
持した状態で電気溶接により絶縁被覆を燃焼散逸させ、
さらに溶着させてコイル装置を製造するものである。

したがって本発明の方法によれば、電線の巻始め巻終り
端の端子への接続が、電線の絶縁被覆の除去作業を特別
に要することなく行われるので、機械装置による自動化
が可能になる効果がある。

【図面の簡単な説明】

図面はいずれも本発明による製造方法を用いて製造され
るコイル装置と、電線と端子の接続方法を示すもので、
第１図は第１の実施例によるコイル装置の斜視図、第２
図は電線と端子を溶接する状態を示す側面図、第３図は
電線を端子に係止する方法を示す要部斜視図、第４図は
第２図に示す溶接時の要部を拡大して示す側面図、第５
図は第２の実施例による電線と端子の係止方法を示す要
部斜視図、第６図はその溶接方法を示す正面図、第７図
は第３の実施例による電線の端子への係止方法を示す要
部斜視図、第８図はその溶接方法を示す正面図、第９図
は第４の実施例による電線の端子への係止方法を示す要
部斜視図、第１０図はその溶接方法を示す正面図である
。 図において、１は成形ボビン、１２はフランジ部、１３
は突出部、２は端子、２１，２２，２３゜２５は舌片、
３は電線、３１は巻始め端、３２は巻終り端、３３は絶
縁被覆、３４は心線、５１゜５２は溶接電極である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ フランジ部に端子を植設してなる成形ボビンにポリ
   エステル等の絶縁被覆を施した電線を巻装すると共に、
   前記端子の一部に形成した舌片に前記電線の端部を折曲
   係止させた後、電線を挾持し、しかる後前記舌片上側と
   端子裏側に溶接電極を加圧接触させた状態で電流を供給
   し、電線の絶縁被覆を燃焼散逸させると共に端子と電線
   の心線を溶着せしめてなるコイル装置の製造方法。 ２ 前記溶接電流を供給するに当り、最初は比較的小さ
   い電流を供給して絶縁被覆を燃焼散逸させ、その後大電
   流で実質的な溶接を行うことを特徴とする特許請求の範
   囲第１項記載のコイル装置の製造方法。