JPH1190328A - 構造物温度の低減法 - Google Patents

構造物温度の低減法

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JPH1190328A
JPH1190328A JP9271985A JP27198597A JPH1190328A JP H1190328 A JPH1190328 A JP H1190328A JP 9271985 A JP9271985 A JP 9271985A JP 27198597 A JP27198597 A JP 27198597A JP H1190328 A JPH1190328 A JP H1190328A
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coating film
heat
temperature
reducing
film
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JP9271985A
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English (en)
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Minoru Nikaido
稔 二階堂
Shin Terauchi
伸 寺内
Tamio Mizuno
民雄 水野
Masaoki Ishihara
眞興 石原
Koichi Furukawa
紘一 古川
Masayuki Okuyama
正之 奥山
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Kajima Corp
Dai Nippon Toryo KK
Original Assignee
Kajima Corp
Dai Nippon Toryo KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 都市のヒートアイランド化現象を緩和する。 【解決手段】 外径が10〜500μmの中空ビーズを
結合剤中に分散させた塗料を基材表面に塗布することに
より該中空ビーズが塗膜固形分中20〜98容積%を占
める断熱性下層塗膜を構造物の基材表面に形成し,該下
層塗膜の上に,白色顔料を分散させた塗料を塗布するこ
とにより光の反射率が80%以上で且つ熱の放射率が8
0%以上の高反射・高放射性の上層塗膜を形成すること
からなる構造物温度の低減法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,都市のヒートアイ
ランド化現象を緩和するための技術,特に都市の各種構
造物の表面に対して,光を高反射し且つ熱を高放射する
機能と,断熱機能とを併せもつ塗膜を形成することによ
り構造物温度を低減する技術に関するものである。
【0002】
【従来技術】近年、都市のヒートアイランド化が問題と
なってきている。これは冷暖房などによる廃熱量の増
大,建物や道路などのコンクリート化やアスファルト化
による太陽熱の吸収の増大,そして,蓄熱した熱の大気
への放熱等が主なる原因として挙げられている。例えば
コンクリート建物の場合には,太陽熱を吸収しやすいの
で建物内の温度が上昇し,その分冷房負荷が増大し,そ
の際の廃熱が屋外に排出されると共に,コンクリート自
身が蓄熱体となってその外表面から大気に放熱する。コ
ンクリート構造物が密集する都市では,このような現象
の高密度化と,地表がコンクリート系構造物で覆われて
いるので地盤のヒートシンク作用が良好に機能しないこ
ともあって大気温度が異常に上昇するような現象が起き
ている。
【0003】このようなヒートアイランド化現象を既成
都市の形態のままで人工的に緩和することは容易なこと
ではないが,基本的には都市が吸収する太陽熱を緩和す
ればよい。すなわち,都市構造物の表面に照射される太
陽光線のうち特に放射エネルギー密度の高い波長の光線
を天空に向けて反射させ,また,該構造物に吸収された
熱を天空に放射されやすくすればよく,さらに,構造物
表面が断熱性であればよい。
【0004】一般に,コンクリート等の都市構造物の表
面には美観や保護を目的として塗料が塗装されている
が,ヒートアイランド化を抑制するために,前記のよう
な熱的な配慮を構造物表面の塗膜に施すようなことは行
われていなかったと言っても過言ではない。
【0005】わずかに,特開平6−100796号公報
には,シラスバルーンを主剤とし,これに白セメントと
珪砂を配合してなる無機粉体に,常温架橋型合成エマル
ジョン樹脂液を混合してペーストとした断熱性塗材が提
案され,また,この断熱性塗材を塗布したあと,その上
に反射塗料例えばシリコン系塗布層を形成することによ
って,太陽光を反射させるようにしたものが記載されて
いる。しかし,このものは,強度の弱いシラスバルーン
を主剤とするので,塗膜強度の改善が必要とされるであ
ろう。他方,シラスバルーンの空孔内に樹脂液が充填さ
れた場合には強度が上昇するかも知れないが,この場合
には断熱性が失われることになる。また反射塗料につい
ても,太陽光の反射と熱の放射が必ずしも最も高くなる
ように配慮されたものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】都市のヒートアイラン
ド化抑制対策の一つとして,建物等の都市構造材料の表
面に,光の高反射,熱の高放射,断熱の機能を持たせる
ことが考えられるが,これらの機能を建物を保護する塗
膜に付与することが市場において要求されるような社会
すう勢にあると予測される。しかし,外装材や内装材の
塗膜には,その適用基材や用途に応じて多様な目的を有
しており,前記のような機能を果たす汎用的な塗膜の形
成は簡単なことではない。本発明の課題は,このような
要求を満たすことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,外径が
10〜500μmの中空ビーズを結合剤中に分散させた
塗料を基材表面に塗布することにより該中空ビーズが塗
膜固形分中20〜98容積%を占める断熱性下層塗膜を
構造物の基材表面に形成し,該下層塗膜の上に,白色顔
料を分散させた塗料を塗布することにより光の反射率が
80%以上で且つ熱の放射率が80%以上の高反射・高
放射性の上層塗膜を形成することからなる構造物温度の
低減法を提供する。また,前記の上層塗膜の上に透明保
護被膜を形成する構造物温度の低減法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で断熱・高光反射・高熱放
射の被覆材料は,基材に被覆された状態において,図1
に示すように,下層(断熱層)1と,その上の上層(反
射・放射層)2とからなる基本積層構造を有する。ま
た,図2に示すように,上層2の表面には透明な保護膜
3を被覆することもできる。さらに,図3のように,基
材の種類に応じて,基材の表面に下地層4を施してか
ら,下層1を形成する。基材はコンクリート系材料を主
とする一般構造材のほか,各種の無機材料,有機材料さ
らには金属材料であってもよい。
【0009】下層1は,中空粒子(以下,中空ビーズと
呼ぶことがある)を主体とした断熱層であり,層中のビ
ーズは結合剤中に分散固定されている。この中空ビーズ
は,薄いシエル内に空洞を形成したものであり,代表的
な外形は球体であるが,卵形,偏平球形,うろこ型など
であってもよく,平均外径は施工場所に応じて適当なも
のを選択するが,10〜500μm程度のもの,好まし
くは20〜150μmのものが適当である。
【0010】中空ビーズを形成するシエル材料として
は,塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体または
アクリル酸エステル−スチレン共重合体等の高分子有機
材料が好適である。これに代えて無機材料例えばガラス
等も使用することができる。シエル内は空洞である必要
があり,この空洞が下層1の伝熱抵抗を高める。空洞内
には気体(代表的には空気)が封入されることにより中
空ビーズの圧縮強度を高めるが,場合によっては減圧ま
たは真空であってもよい。多孔質材料例えばシラスバル
ーンのような表面にまで細孔が連通している多孔粒子で
は,その細孔に塗料中の液体成分が侵入して空孔を塞
ぎ,このため断熱性を低下させるので好ましくない。
【0011】中空ビーズ(樹脂ビーズおよび/またはガ
ラスビーズ)を分散固定するための結合剤としては,ア
クリル樹脂,アルキド樹脂,エポキシ樹脂,シリコーン
樹脂,フッ素樹脂あるいはこれらの変性樹脂や混合樹脂
等を使用することができる。これらの結合剤と前記の中
空ビーズを必須成分として塗料を構成するが,必要に応
じて,有機溶剤,水あるいはこれらの混合物などの溶
媒,硬化剤(架橋剤),着色顔料,体質顔料などの顔
料,分散剤,増粘剤,酸化防止剤,防カビ剤などの各種
添加剤等の成分を加えて塗料とする。塗料の形態は,無
溶剤型,有機溶剤型あるいは水希釈型等の各種形態での
使用が可能である。またこれら塗料は,自然乾燥型,焼
付硬化型あるいは紫外線硬化型等特に制限はない。
【0012】このように構成される下層用塗料は,中空
ビーズが塗膜固形分中20〜98容量%,好ましくは5
0〜95容量%となるように,中空ビーズを配合したも
のである。中空ビーズの配合量が前記範囲より少ないと
断熱性効果が悪く,逆に多いと相対的に結合剤の量が少
なくなるため下層塗膜の物理的,化学的強度が悪くなり
いずれも好ましくない。このように,中空ビーズの配合
により塗膜の断熱性が向上するが,他方において,中空
ビーズの配合により塗料の比重が小さくなるため塗装作
業性も向上し,また厚膜化できるという有利な作用を果
たす。
【0013】結合剤中の中空ビーズの充填率を向上させ
るには,粒径分布の異なる二種以上の中空ビーズを混合
することもできる。すなわち比較的粗大な粒径を有する
中空ビーズと,比較的微細な粒径を有する中空ビーズを
適量配合することにより,粗大粒子の間隙に微細粒子が
入り込むようにすることによって,中空ビーズの充填率
を向上させ,ひいては,下層塗膜中での空洞率を均一に
高めることにより,断熱性を向上させることができる。
このために,粒径10〜500μmの範囲において,適
切な粒度分布を有するものを,塗膜形成部材や位置にお
いて,適切に選択するのが好ましい。また,材質や形状
の異なる二種以上の中空ビーズを適宜配合して塗膜強度
や塗装作業性を向上させることもできる。
【0014】次に,下層1の上に形成する上層(反射・
放熱層)2について説明する。上層2の塗膜は,太陽光
の反射率が80%以上で,熱の放射率が80%以上のも
のである。この高反射性・高放熱性の上層塗膜を形成す
る塗料は,アクリル樹脂,アルキド樹脂,シリコーン樹
脂,フッ素樹脂もしくはこれらの変性樹脂や混合樹脂,
あるいは後述するオルガノシランまたはその部分加水分
解縮合物等の無機材料等の結合剤と,白色顔料を必須構
成成分とし,さらに必要に応じて,有機溶剤,水あるい
はこれらの混合物などの溶媒,硬化剤(架橋剤),体質
顔料,分散剤,酸化防止剤,防カビ剤などの各種添加剤
等を配合した塗料である。塗料形態や硬化形態は前述の
下層1の塗膜を形成する塗料と同様に特に制限ない。
【0015】白色顔料としては,酸化チタン,アルミ
ナ,シリカ(石英ガラスの粉砕物等も含む),硫酸バリ
ウム,ポリテトラフルオロエチレンおよび酸化マグネシ
ウムから選ばれる少なくとも一種の白色顔料が好適であ
る。白色顔料の配合量は,得られる白色塗膜が太陽光等
の光の反射効率,熱の放射効率をよくするため光の反射
率が80%以上かつ熱の放射率が80%以上である必要
上,塗膜固形分中40〜90容量%,好ましくは50〜
85容量%が適当である。
【0016】図4は,各種材料表面の日射吸収率と長波
長ふく射率を示しているが,同図によれば,ペイントの
うち日射吸収率が低く長波長ふく射率が高いのは白色ペ
イントであり,それぞれ0.2および0.9である。ま
た,図5は太陽エネルギーの分光特性(波長と放射エネ
ルギ密度の関係図)の例を示しているが,同図のように
太陽光は波長が0.5μm前後で放射エネルギ密度が最
も高い。一方,図6は黒体の単色放射発散度(縦軸)と
波長の関係を示すものであるが,300°K(27℃)
での放射発散度は10μm前後が高い。
【0017】このような事実から,波長0.5μm前後
をピークとする光線を高反射し,且つ波長10μm前後
をピークとする熱線を高放射する白色塗料があれば,材
料の表面温度の上昇を低くすることができることがわか
る。
【0018】図7は,厚み120mmの内側コンクリー
トと厚み60mmの外側コンクリートの間に断熱材を介
装した積層コンクリートを屋上スラブ材料とし,内側コ
ンクリートの下面を屋内の25℃の対流空気に曝し,外
側コンクリートの上面を太陽光に曝した場合,暗い色調
をつもコンクリート(c材料),明るい色調をもつコン
クリート(b材料)および後記の実施例3と同様の塗装
を外側コンクリート上面に形成した場合(a)につい
て,東京の8月の晴天日の13時における反射率と表面
温度の関係を示したものである。実施例3の塗膜をもつ
もの(a)では,反射率は90%(0.9)であり,表
面温度も30℃以下であるのに対し,コンクリートまま
では反射率は40%(0.4)および10%(0.1)で
あり,表面温度は41℃(b材料)および48℃(c材
料)と試算される。このように,同じコンクリートで
も,日射吸収率が高い(光の反射率が小さい)材料ほど
表面温度が高く,日射吸収率が低い(光の反射率が高
い)材料ほど表面温度が低くなり,この傾向は最高気温
を示す日中程顕著であるが,本発明の塗膜を形成する
と,表面温度の上昇を低く抑えることができる。また夜
間においても,表面温度がc,b,aの順にに低くな
る。
【0019】このように,本発明に従う上層2は,適切
な白色顔料の結合剤中分散により,波長0.5μm前後
をピークとする光線を高反射し且つ波長10μm前後を
ピークとする熱線を高放射する高反射・高放射の塗膜を
形成する点に特徴がある。
【0020】さらに,この高反射・高放射の上層2の表
面には,図2に示すように,透明な保護膜3を設けるの
が好ましい。この透明保護膜3は,上層2の塗膜の汚染
を防止して上層2の高反射・高放射の機能を長期にわた
って維持することを主たる目的とするものであるが,最
外表面を形成する関係上,熱の放射層としても機能す
る。透明保護膜3は,前述上層の白色塗膜が汚染される
と太陽光の反射率が低下して光の反射性および熱の放射
性が劣化するのを防止するものであるから,この保護膜
3を形成するための塗料は,該白色塗膜を保護するとと
もに光の反射及び熱の放射を低下させないことが必要で
ある。このために透明度が高い塗料を使用する。該塗料
としては,前述の白色塗膜を形成する場合と同じく,白
色顔料などの着色顔料を配合しない以外は,同様の塗料
成分が特に制限なく使用できる。すなわち,透明保護膜
3は,前記の上層塗膜を形成する塗料から白色顔料を除
いた結合剤成分,さらにはこれに必要に応じて添加され
る添加剤とからなる透明塗料を塗布することによって形
成できる。
【0021】この透明保護膜3を形成する場合には,上
層塗膜の上に予めオルガノシラン又はその部分加水分解
縮合物溶液を塗布するのが好ましく,これによって透明
保護膜を形成したさいの上層塗膜の白色度の低下を防止
することができる。オルガノシランは,一般式 R1Si(OR2)3 で示される化合物である。
【0022】式中のR1 は炭素数1〜8の有機基であ
り,例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,i−
プロピル基などのアルキル基や,γ−クロロプロピル
基,3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化
アルキル基,ビニル基,γ−グリシドキシプロピル基等
のグリシドアルキル基,γ−メタクリルオキシプロピル
基等の(メタ)アクリルオキシアルキル基,γ−メルカ
プトプロピル基等のメルカプトアルキル基,フェニル基
や,フリル基,チエニル基,ピリジル基,ナフチル基等
のアリール基,3,4−エポキシシクロヘキシルエチル
基等のエポキシアルキル基,γ−アミノプロピル基等の
アミノアルキル基などが挙げられる。式中のR2 は炭素
数1〜5のアルキル基であり,例えばメチル基,エチル
基,n−プロピル基,i−プロピル基,n−ブチル基,
s−ブチル基,t−ブチル基,i−ブチル基などが挙げ
られる。
【0023】これらのオルガノシランの具体的例として
は,メチルトリメトキシシラン,メチルトリエトキシシ
ラン,エチルトリメトキシシラン,エチルトリエトキシ
シラン,n−プロピルトリメトキシシラン,n−プロピ
ルトリエトキシシラン,i−プロピルトリメトキシシラ
ン,i−プロピルトリエトキシシラン,γ−クロロプロ
ピルトリメトキシシラン,γ−クロロプロピルトリエト
キシシラン,ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエ
トキシシラン,3,3,3−トリフロロプロピルトリメ
トキシシラン,3,3,3−トリフロロプロピルトリエ
トキシシラン,γ−グリシドキシプロピルトリメトキシ
シラン,γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラ
ン,γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラ
ン,γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラ
ン,γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン,γ−
メルカプトプロピルトリエトキシシラン,フェニルトリ
メトキシシラン,フェニルトリエトキシシラン,γ−ア
ミノプロピルトリメトキシシラン,3,4−エポキシシ
クロヘキシルエチルトリメトキシシラン,3,4−エポ
キシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン,などが
挙げられる。
【0024】また,これらオルガノシランの平均2〜3
0量体の部分加水分解縮合物も同様に使用可能である。
【0025】これらオルガノシラン又はその部分分解縮
合物は,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタ
ノール等のアルコール類,キンレン,トルエン等の炭化
水素類,メチルエチルケトン,アセトン等のケトン類な
どの10〜50重量%濃度溶液として使用され,さらに
必要に応じ塩酸,硝酸,酢酸などの酸化合物や,チタニ
ウムキレート化合物,アルミニウムキレート化合物,ジ
ルコニウムキレート化合物などの硬化促進剤を併用して
もよい。
【0026】また,図3に示すように基材の種類に応
じ,下層1を塗布する前に,基材に下地層4を塗布し,
塗料と基材との密着性の改善や,基材の耐食性,防水性
等の改善を図ることもできる。このための表面処理材或
いはプライマーとしては,基材の種類に応じて従来より
普通に使用されているものが使用できる。
【0027】次に,本発明の塗膜の形成方法について説
明する。
【0028】本発明において塗膜が形成される基材とし
ては,鉄,アルミニウム,ステンレス,銅,亜鉛等の金
属基材,コンクリート,モルタル,ガラス等の無機質基
材,ポリ塩化ビニル,ポリカーボネート,ポリオレフイ
ン等のプラスチック基材,アスファルト,木材基材等が
代表的なものとして挙げられ,これら基材は密着性,耐
食性,防水性等を改良するため,表面処理を施したも
の,あるいはプライマー等を塗布したものであってもよ
い。
【0029】このような基材表面に,前述の微細中空粒
子を配合した塗料を塗装して下層塗膜を形成する。下層
塗膜の硬化塗膜厚は特に制限はないが,塗膜強度や断熱
性効果等の観点から0.1〜10mm,好ましくは1〜
5mmが適当である。
【0030】次いで下層塗膜表面に前述の白色顔料を配
合した塗料を塗装して,白色塗膜を形成する。白色塗膜
の硬化塗膜厚は特に制限はないが,塗膜強度や隠蔽性等
の観から0.1〜3mm,好ましくは0.5〜1mmが適
当である。なお,下層塗膜および上層塗膜の硬化方法
は,使用する結合剤の種類に応じて,自然乾燥,焼付硬
化法等の周知の方法により硬化することができる。
【0031】本発明においては,これら下層塗膜や白色
塗膜の耐久性向上,保持のためまた白色塗膜の汚染防止
のため,白色塗膜表面に前述の透明塗料を塗装して,透
明保護膜を形成するのが望ましい。透明保護膜の硬化塗
膜厚は特に制限ないが,通常0.02〜0.5mmが適当
である。
【0032】また,本発明においては,白色塗膜表面に
直接透明保護膜を形成すると若干白色度が低下する傾向
があるため,あらかじめ白色塗膜表面に前述のオルガノ
シラン又はその部分加水分解縮合物溶液を含浸,塗布し
ておくのが望ましい。
【0033】
【実施例】以下本発明を実施例により,さらに詳細に説
明する。なお実施例中「%」および「部」は特に断らな
いかぎり重量基準で示す。
【0034】下記組成の下層塗膜形成用塗料Aおよび
B,上層塗膜形成用塗料C,DおよびEを作製した。
【0035】〔下層塗膜形成用の塗料A〕 フッ素樹脂溶液(固形分50%) 86% 中空状樹脂粒子(注1) 3% 分散剤 1% ポリイソシアネート溶液(固形分50%) 10% 注1:塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体から
なる平均外径30μmのシエル内に空気を封入した真比
重0.06の粒子。空洞率:94容量%
【0036】〔下層塗膜形成用の塗料B〕 フッ素樹脂溶液(固形分50%) 62% 中空状ガラスビーズ(注2) 30% 分散剤 1% ポリイソシアネート溶液(固形分50%) 7% 注2:平均外径40μmのガラスシエル内に空気を封入
した真比重0.2の粒子。
【0037】〔上層塗膜形成用の塗料C〕 フッ素樹脂溶液(固形分50%) 9% 白色アルミナ(注3) 89% 分散剤 1% ポリイソシアネート溶液(固形分50%) 1% 注3:電融白色アルミナ質研削材を母粒として,これを
微粉砕,整粒した粉末。平均粒径:4μm
【0038】〔上層塗膜形成用の塗料D〕 フッ素樹脂溶液(固形分50%) 29.7% 白色アルミナ(前掲注3と同じ) 66% 分散剤 1% ポリイソシアネート溶液(固形分50%) 3.3%
【0039】〔上層塗膜形成用の塗料E〕 フッ素樹脂溶液(固形分50%) 29.7% フタロシアニンブルー 66% 分散剤 1% ポリイソシアネート溶液(固形分50%) 3.3%
【0040】〔実施例1〕エポキシ樹脂系プライマーを
施したスレート板表面に塗料Bを乾燥膜厚2mmになる
ように塗装し,自然乾燥させた。次いで,塗料Cを乾燥
膜厚1mmになるように塗装し,自然乾燥させた。これ
により,中空状粒子82容量%が分散した膜厚2mmの
下層塗膜と,その上に膜厚1mmの白色の上層塗膜をも
つ塗板が得られた。
【0041】〔実施例2〕塗料Bに代えて塗料Aを使用
し,また塗料Cに代えて塗料Dを使用した以外は,実施
例1を繰り返した。これにより,中空状粒子50.5容
量%が分散した膜厚2mmの下層塗膜と,その上に膜厚
1mmの白色の上層塗膜をもつ塗板が得られた。
【0042】〔実施例3〕実施例1で得られた塗板の塗
膜表面に,次のようにして透明保護膜を形成させた。先
ず,実施例1の塗板の白色上層塗膜表面に,メチルトリ
メトキシシランの平均10〜20量体の部分加水分解縮
合物の30%イソプロパノール溶液100部とテトラブ
チルチタネート1部との混合物を0.1g/m2 塗布し
乾燥させた。次いで,塗料Cの組成から白色アルミナと
分散剤を除いた透明塗料を乾燥膜厚25μmになるよう
に塗装し,自然乾燥させた。これにより,実施例1のも
のに透明保護膜をもつ塗板が得られた。
【0043】〔実施例4〕実施例1の塗板に代えて実施
例2で得られた塗板を使用した以外は実施例3を繰返
し,実施例2のものに透明保護膜をもつ塗板を作製し
た。
【0044】〔比較例1〕下層塗膜を形成することな
く,プライマーの上に直接塗料Cを塗装した以外は実施
例1と同様にして白色塗膜をもつ塗板を作製した。
【0045】〔比較例2〕下層塗膜を形成することな
く,プライマーの上に直接塗料Dを塗装した以外は実施
例1と同様にして白色塗膜をもつ塗板を作製した。
【0046】〔比較例3〕エポキシ樹脂系プライマーを
施したスレート板表面に,塗料Aを乾燥膜厚2mmにな
るように塗装し,自然乾燥させて下層塗膜(中空状粒子
50.5容量%)を形成させた。次いで塗料Eを乾燥膜
厚1mmになるように塗装し,自然乾燥により色付き塗
膜を形成した。
【0047】各例で得られた塗板を,光の反射性,熱の
放射性および断熱性の各試験に供した。それらの試験結
果を表1に総括して示した。各試験は次の方法に従っ
た。
【0048】〔光の反射性〕反射率測定器MSR−70
00を用いて,波長0.28〜2.5μmの分光反射率を
測定し,太陽光の放射エネルギー密度の最も高い波長
0.5μmにおいて次の4段階評価を行ない,表1にそ
の評価結果を各マークで示した。 反射率90%以上 :◎印 反射率85〜90%:○印 反射率80〜85%:△印 反射率80%未満 :×印
【0049】〔熱の放射性〕株式会社島津製作所製の放
射率測定器FTIRを用いて,分光放射率を測定し,大
気の窓と言われる波長8〜13μmでの放射率の値で次
の4段階評価を行った。表1に評価結果を各マークで示
した。 放射率90%以上 :◎印 放射率85〜90%:○印 放射率80〜85%:△印 放射率80%以下 :×印
【0050】〔断熱性〕京都電子工業株式会社製のKemt
herm QTM 03 迅速熱伝導率計のプローブを塗膜に60秒
間押しあてて塗膜の熱伝導率を測定し,その測定値を塗
膜の厚さで割った値を断熱性能として,次の4段階評価
を行った。表1の評価結果を各マークで示した。 断熱性能30W/m2k以下 :◎ 断熱性能30〜60W/m2k :○ 断熱性能60〜120W/m2k:△ 断熱性能120W/m2k以上 :×
【0051】
【表1】
【0052】表1より明らかなとおり,実施例1〜4の
塗板は,光の反射性および熱の放射性が高くまた断熱性
も良い。特に,実施例1と実施例3のものは全てにおい
て優れたものであった。一方,中空状粒子含有の下層塗
膜を施さない比較例1と2のものは断熱が悪く,また中
空状粒子含有の下層塗膜を施しても,白色以外の着色塗
膜を塗り重ねた比較例3においては光の反射性が低く,
又断熱性も不十分であった。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように,本発明の塗膜によ
れば,コンクリート系材料やその他の人工材料で構成さ
れる構造物の屋外表面に対して,優れた断熱性・光反射
性・熱放射性を同時に具備させることができるので,こ
れら構造物が密集する都市のヒートアイランド化を防止
することができる。また,屋内の基材表面に対しても,
例えば照明の光の反射が大きくなり,その結果,省電力
で明るさが維持でき,且つ屋外への熱流出量が低減でき
る。このようなことから,冷暖房や照明等の効率が良く
なり,それが省電力,省資源となり,都市のヒートアイ
ランド化の防止にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う塗膜の基本構造を示す略断面図で
ある。
【図2】本発明に従う塗膜の積層例を示す略断面図であ
る。
【図3】本発明に従う塗膜の他の積層例を示す略断面図
である。
【図4】各種材料表面の日射吸収率と長波長ふく射率を
示す図である。
【図5】太陽エネルギの分光特性を示す図であり,波長
と放射エネルギ密度との関係を示す図である。
【図6】黒体の単色放射発散度と波長の関係を温度に応
じて示した図である。
【図7】コンクリート材料とそれに本発明の塗膜を形成
したものの太陽光反射率と表面温度の関係を示す図であ
る。
【符号の説明】
1 下層塗膜(断熱層) 2 上層塗膜(反射・放射層) 3 保護塗膜(透明層) 4 下地層
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C09D 7/12 C09D 7/12 Z A (72)発明者 寺内 伸 東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建 設株式会社内 (72)発明者 水野 民雄 栃木県大田原市下石上1382−12 大日本塗 料株式会社那須工場内 (72)発明者 石原 眞興 栃木県大田原市下石上1382−12 大日本塗 料株式会社那須工場内 (72)発明者 古川 紘一 栃木県大田原市下石上1382−12 大日本塗 料株式会社那須工場内 (72)発明者 奥山 正之 栃木県大田原市下石上1382−12 大日本塗 料株式会社那須工場内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外径が10〜500μmの中空ビーズを
    結合剤中に分散させた塗料を基材表面に塗布することに
    より該中空ビーズが塗膜固形分中20〜98容積%を占
    める断熱性下層塗膜を構造物の基材表面に形成し,該下
    層塗膜の上に,白色顔料を分散させた塗料を塗布するこ
    とにより光の反射率が80%以上で且つ熱の放射率が8
    0%以上の高反射・高放射性の上層塗膜を形成すること
    からなる構造物温度の低減法。
  2. 【請求項2】 外径が10〜500μmの中空ビーズを
    結合剤中に分散させた塗料を基材表面に塗布することに
    より該中空ビーズが塗膜固形分中20〜98容積%を占
    める断熱性下層塗膜を構造物の基材表面に形成し,該下
    層塗膜の上に,白色顔料を分散させた塗料を塗布するこ
    とにより光の反射率が80%以上で且つ熱の放射率が8
    0%以上の高反射・高放射性の上層塗膜を形成し,この
    上層塗膜の上に透明保護膜を形成することからなる構造
    物温度の低減法。
  3. 【請求項3】 中空ビーズは樹脂製シエル内に空気を封
    入した粒子からなる請求項1または2に記載の構造物温
    度の低減法。
  4. 【請求項4】 中空ビーズはガラスシエル内に空気を封
    入した粒子からなる請求項1または2に記載の構造物温
    度の低減法。
  5. 【請求項5】 上層塗膜と透明保護膜の間に,一般式R
    1Si(OR2)3 ,式中R1は炭素数1〜8の有機基,R2
    は炭素数1〜5のアルキル基,で示されるオルガノシラ
    ンまたはその部分加水分解縮合物溶液を塗布する請求項
    2に記載の構造物温度の低減法。
  6. 【請求項6】 上層塗膜は,酸化チタン,アルミナ,シ
    リカ,硫酸バリウム,ポリテトラフルオロエチレン及び
    酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種の白色顔
    料を含有し且つ波長0.28〜2.5μmの分光反射率を
    測定したときの波長0.5μmにおける反射率が80%
    以上で且つ波長8〜13μmでの熱の放射率が80%以
    上である請求項1または2に記載の構造物温度の低減
    法。
  7. 【請求項7】 上層塗膜は,白色顔料を塗膜固形分中4
    0〜90容量%含有する請求項6に記載の構造物温度の
    低減法。
  8. 【請求項8】 構造物基材は,セメントコンクリート系
    材料またはアスフアルト系材料である請求項1または2
    に記載の構造物温度の低減法。
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