JP2953576B1 - コンクリート表面のひび割れ防止法 - Google Patents

コンクリート表面のひび割れ防止法

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Abstract

【要約】 【課題】 硬化したコンクリートの表面に発生するひび
割れを防止する。 【解決手段】 コンクリート表面に,中空ビーズを塗膜
固形分中20〜98容積%含有する断熱性下層塗膜を形
成し,この下層塗膜の上に,白色顔料を分散させた塗料
を塗布して光の反射率が80%以上で且つ熱の放射率が
80%以上の高反射・高放射性の上層塗膜を形成するコ
ンクリート表面のひび割れ防止法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,コンクリート表面
の亀裂(ひび割れ)を防止する方法に関する。
【0002】
【従来技術】コンクリート表面に生ずるひび割れは,硬
化収縮,乾燥収縮,温度ひび割れ等の様々な原因で発生
するが,硬化したコンクリートでは,コンクリート内部
とコンクリート表面の温度差の発生や温度変化もその要
因である。最近ではコンクリートの内部と表面の温度差
が発生し易い状況が増えており,またコンクリートの温
度が上下する環境も増加しているので,この原因による
表面ひび割れが深刻化している。
【0003】例えば,冷暖房の普及により建物内外の温
度差が発生し,とくに,最近の都市のヒートアイランド
化による外気温度の異常な上昇により,この温度差も大
きくなりつつあり,これに伴って温度変化も大きくな
る。またコンクリート自身は蓄熱材として機能するの
で,昼間に熱を保有したコンクリートが,夜間では表層
部だけが冷える現象が生じ,夜と昼ではコンクリート内
部と表面の温度が逆転し,温度差が経時的に±逆転しな
がら繰り返し発生する現象も生じる。したがって,一般
建物のコンクリート壁はもとより,大気に露出している
コンクリート構造物や高温(または低温)の特殊環境に
面しているコンクリートの表面にもひび割れの発生を見
ることが多い。
【0004】コンクリート表面に生ずるひび割れは,構
造上の問題となり,また耐久性の低下に影響を及ぼすこ
とに加え,美観上においても好ましくない。
【0005】従来より,コンクリート壁には美観や保護
を目的として塗装が施されることが多いが,前記のよう
な熱的な原因で発生するコンクリート表面のひび割れを
防止するために塗装することは無かったと言っても過言
ではない。したがって,一般的な塗装を施したコンクリ
ート表面でもひび割れが普通に発生する。
【0006】特開平6−100796号公報には,シラ
スバルーンを主剤とし,これに白セメントと珪砂を配合
してなる無機粉体に,常温架橋型合成エマルジョン樹脂
液を混合してペーストとした断熱性塗材が提案され,ま
た,この断熱性塗材を塗布したあと,その上に反射塗料
例えばシリコン系塗布層を形成することによって,太陽
光を反射させるようにしたものが記載されている。しか
し,このものは,強度の弱いシラスバルーンを主剤とす
るので,塗膜強度の改善が必要とされるであろう。他
方,シラスバルーンの空孔内に樹脂液が充填された場合
には強度が上昇するかも知れないが,この場合には断熱
性が失われることになる。また反射塗料についても,太
陽光の反射と熱の放射が必ずしも最も高くなるように配
慮されたものではないので,コンクリート壁のひび割れ
を防止することは困難であると思われる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明は,
従来よりその対策に苦慮しているコンクリート表面のひ
び割れの発生を抑制することを課題としたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,前記の課
題を解決するために種々の試験研究を重ねた結果,コン
クリート表面に特定の断熱性を有する塗膜と,特定の光
の反射率および熱の放射率をもつ白色塗膜を形成する
と,コンクリート表面のひび割れの発生を長期にわたっ
て防止できることを見い出した。本発明はこの知見に基
づいてなされたものである。
【0009】すなわち本発明によれば,コンクリート表
面に,中空ビーズを塗膜固形分中20〜98容積%含有
する断熱性下層塗膜を形成し,この下層塗膜の上に,白
色顔料を分散させた塗料を塗布して光の反射率が80%
以上で且つ熱の放射率が80%以上の高反射・高放射性
の上層塗膜を形成すること,更に必要に応じ,この上層
塗膜の上に透明保護塗膜を形成すること,を特徴とする
コンクリート表面のひび割れ防止法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明においては,コンクリート
表面のひび割れを防止するために,コンクリート表面に
断熱層と光反射熱放射層を施す点に特徴があり,これら
断熱層と光反射熱放射層を適切な塗膜によって形成する
ものである。すなわち,図1に示すように,コンクリー
ト1の表面(壁)に断熱層の下層塗膜2を施し,その上
に光反射熱放射層の上層塗膜3を施す。また,図2に示
すように,上層塗膜3の上に透明保護膜4を施すことも
できる。さらに,図3のように,コンクリート表面に下
地層5を施してから下層塗膜2を施すのもよい。
【0011】下層塗膜2は,中空ビーズを主体とした断
熱層であり,層中のビーズは結合剤中に分散固定されて
いる。この中空ビーズは,薄いシエル内に空洞を形成し
たものであり,代表的な外形は球体であるが,卵形,偏
平球形,うろこ型などであってもよく,平均外径は施工
場所に応じて適当なものを選択するが,10〜500μ
m程度のもの,好ましくは20〜150μmのものが適
当である。
【0012】中空ビーズを形成するシエル材料として
は,塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体または
アクリル酸エステル−スチレン共重合体等の高分子有機
材料(樹脂)が好適である。これに代えて無機材料例え
ばガラス等も使用することができる。シエル内は空洞で
ある必要があり,この空洞が下層塗膜2の伝熱抵抗を高
める。空洞内には気体(代表的には空気)が封入される
ことにより中空ビーズの圧縮強度を高めるが,場合によ
っては減圧または真空であってもよい。多孔質材料例え
ばシラスバルーンのような表面にまで細孔が連通してい
る多孔粒子では,その細孔に塗料中の液体成分が侵入し
て空孔を塞ぎ,このため断熱性を低下させるので好まし
くない。
【0013】中空ビーズ(樹脂ビーズ,ガラスビーズ)
を分散固定するための結合剤としては,アクリル樹脂,
アルキド樹脂,エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,フッ素
樹脂あるいはこれらの変性樹脂や混合樹脂等を使用する
ことができる。これらの結合剤と前記の中空ビーズを必
須成分として塗料を構成するが,必要に応じて,有機溶
剤,水あるいはこれらの混合物などの溶媒,硬化剤(架
橋剤),着色顔料,体質顔料などの顔料,分散剤,増粘
剤,酸化防止剤,防カビ剤などの各種添加剤等の成分を
加えて塗料とする。塗料の形態は,無溶剤型,有機溶剤
型あるいは水希釈型等の各種形態での使用が可能であ
る。またこれら塗料は,自然乾燥型,焼付硬化型あるい
は紫外線硬化型等特に制限はない。
【0014】このように構成される下層用塗料は,中空
ビーズが塗膜固形分中20〜98容量%,好ましくは5
0〜95容量%となるように,中空ビーズを配合したも
のである。中空ビーズの配合量が前記範囲より少ないと
断熱性効果が悪く,逆に多いと相対的に結合剤の量が少
なくなるため下層塗膜の物理的,化学的強度が悪くなり
いずれも好ましくない。このように,中空ビーズの配合
により塗膜の断熱性が向上するが,他方において,中空
ビーズの配合により塗料の比重が小さくなるため塗装作
業性も向上し,また厚膜化できるという有利な作用を果
たす。
【0015】結合剤中の中空ビーズの充填率を向上させ
るには,粒径分布の異なる二種以上の中空ビーズを混合
することもできる。すなわち比較的粗大な粒径を有する
中空ビーズと,比較的微細な粒径を有する中空ビーズを
適量配合することにより,粗大粒子の間隙に微細粒子が
入り込むようにすることによって,中空ビーズの充填率
を向上させ,ひいては,下層塗膜中での空洞率を均一に
高めることにより,断熱性を向上させることができる。
また,材質や形状の異なる二種以上の中空ビーズを適宜
配合して塗膜強度や塗装作業性を向上させることもでき
る。
【0016】次に,下層塗膜2の上に形成する光反射熱
放射用の上層塗膜3について説明する。上層塗膜3は,
太陽光の反射率が80%以上で,熱の放射率が80%以
上のものである。この高反射性・高放熱性の上層塗膜を
形成する塗料は,アクリル樹脂,アルキド樹脂,シリコ
ーン樹脂,フッ素樹脂もしくはこれらの変性樹脂や混合
樹脂,あるいは後述するオルガノシランまたはその部分
加水分解縮合物等の無機材料等の結合剤と,白色顔料を
必須構成成分とし,さらに必要に応じて,有機溶剤,水
あるいはこれらの混合物などの溶媒,硬化剤(架橋
剤),体質顔料,分散剤,酸化防止剤,防カビ剤,紫外
線吸収剤などの各種添加剤等を配合した塗料である。塗
料形態や硬化形態は前述の下層2の塗膜を形成する塗料
と同様に特に制限ない。
【0017】白色顔料としては,酸化チタン,アルミ
ナ,シリカ(石英ガラスの粉砕物等も含む),硫酸バリ
ウム,ポリテトラフルオロエチレンまたは酸化マグネシ
ウムから選ばれる少なくとも一種の白色顔料が好適であ
る。白色顔料の配合量は,得られる白色塗膜が太陽光等
の光の反射効率,熱の放射効率をよくするため光の反射
率が80%以上かつ熱の放射率が80%以上である必要
上,塗膜固形分中40〜90容量%,好ましくは50〜
85容量%が適当である。
【0018】図4は,各種材料表面の日射吸収率と長波
長ふく射率を示しているが,同図によれば,ペイントの
うち日射吸収率が低く長波長ふく射率が高いのは白色ペ
イントであり,それぞれ0.2および0.9である。ま
た,図5は太陽エネルギーの分光特性(波長と放射エネ
ルギ密度の関係図)の例を示しているが,同図のように
太陽光は波長が0.5μm前後で放射エネルギ密度が最
も高い。一方,図6は黒体の単色放射発散度(縦軸)と
波長の関係を示すものであるが,300°K(27℃)
での放射発散度は10μm前後が高い。
【0019】このような事実から,波長0.5μm前後
をピークとする光線を高反射し,且つ波長10μm前後
をピークとする熱線を高放射する白色塗料があれば,材
料の表面温度の上昇を低くすることができることがわか
る。
【0020】図7は,厚み120mmの内側コンクリー
トと厚み60mmの外側コンクリートの間に断熱材を介
装した積層コンクリートを屋上スラブ材料とし,内側コ
ンクリートの下面を屋内の25℃の対流空気に曝し,外
側コンクリートの上面を太陽光に曝した場合,暗い色調
をつもコンクリート(c材料),明るい色調をもつコン
クリート(b材料)および後記の本発明実施例と同様の
塗膜を外側コンクリート上面に形成した場合(a)につ
いて,東京の8月の晴天日の13時における反射率と表
面温度の関係を示したものである。本発明実施例の塗膜
をもつもの(a)では,反射率は90%(0.9)であ
り,表面温度も30℃以下であるのに対し,コンクリー
トのままでは反射率は40%(0.4)および10%
(0.1)であり,表面温度は41℃(b材料)および
48℃(c材料)と試算される。このように,同じコン
クリートでも,日射吸収率が高い(光の反射率が小さ
い)材料ほど表面温度が高く,日射吸収率が低い(光の
反射率が高い)材料ほど表面温度が低くなり,この傾向
は最高気温を示す日中程顕著であるが,本発明の塗膜を
形成すると,表面温度の上昇を低く抑えることができ
る。また夜間においても,表面温度がc,b,aの順に
低くなる。
【0021】このように,本発明に従う上層塗膜3は,
適切な白色顔料の結合剤中分散により,波長0.5μm
前後をピークとする光線を高反射し且つ波長10μm前
後をピークとする熱線を高放射する高反射・高放射の塗
膜である点に特徴がある。
【0022】さらに,この高反射・高放射の上層塗膜3
の表面には,図2に示すように,透明保護膜4を設ける
のが好ましい。この透明保護膜4は,上層塗膜3の汚染
を防止して上層塗膜3の高反射・高放射の機能を長期に
わたって維持することを主たる目的とするものである
が,最外表面を形成する関係上,熱の放射層としても機
能する。透明保護膜4は,前述上層の白色塗膜が汚染さ
れると太陽光の反射率が低下して光の反射性および熱の
放射性が劣化するのを防止するものであるから,この保
護膜4を形成するための塗料は,該白色塗膜を保護する
とともに光の反射及び熱の放射を低下させないことが必
要である。このために透明度が高い塗料を使用する。該
塗料としては,前述の白色塗膜を形成する場合と同じ
く,白色顔料などの着色顔料を配合しない以外は,同様
の塗料成分が特に制限なく使用できる。すなわち,透明
保護膜4は,前記の上層塗膜を形成する塗料から白色顔
料を除いた結合剤成分,さらにはこれに必要に応じて添
加される添加剤とからなる透明塗料を塗布することによ
って形成できる。
【0023】この透明保護膜4を形成する場合には,上
層塗膜の上に予めオルガノシラン又はその部分加水分解
縮合物溶液を塗布するのが好ましく,これによって透明
保護膜を形成したさいの上層塗膜の白色度の低下を防止
することができる。オルガノシランは,一般式 R1Si(OR2)3 で示される化合物である。
【0024】式中のR1は炭素数1〜8の有機基であ
り,例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,i−
プロピル基などのアルキル基や,γ−クロロプロピル
基,3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化
アルキル基,ビニル基,γ−グリシドキシプロピル基等
のグリシドアルキル基,γ−メタクリルオキシプロピル
基等の(メタ)アクリルオキシアルキル基,γ−メルカ
プトプロピル基等のメルカプトアルキル基,フェニル基
や,フリル基,チエニル基,ピリジル基,ナフチル基等
のアリール基,3,4−エポキシシクロヘキシルエチル
基等のエポキシアルキル基,γ−アミノプロピル基等の
アミノアルキル基などが挙げられる。式中のR2は炭素
数1〜5のアルキル基であり,例えばメチル基,エチル
基,n−プロピル基,i−プロピル基,n−ブチル基,
s−ブチル基,t−ブチル基,i−ブチル基などが挙げ
られる。
【0025】これらのオルガノシランの具体的例として
は,メチルトリメトキシシラン,メチルトリエトキシシ
ラン,エチルトリメトキシシラン,エチルトリエトキシ
シラン,n−プロピルトリメトキシシラン,n−プロピ
ルトリエトキシシラン,i−プロピルトリメトキシシラ
ン,i−プロピルトリエトキシシラン,γ−クロロプロ
ピルトリメトキシシラン,γ−クロロプロピルトリエト
キシシラン,ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエ
トキシシラン,3,3,3−トリフロロプロピルトリメ
トキシシラン,3,3,3−トリフロロプロピルトリエ
トキシシラン,γ−グリシドキシプロピルトリメトキシ
シラン,γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラ
ン,γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラ
ン,γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラ
ン,γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン,γ−
メルカプトプロピルトリエトキシシラン,フェニルトリ
メトキシシラン,フェニルトリエトキシシラン,γ−ア
ミノプロピルトリメトキシシラン,3,4−エポキシシ
クロヘキシルエチルトリメトキシシラン,3,4−エポ
キシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン,などが
挙げられる。
【0026】また,これらオルガノシランの平均2〜3
0量体の部分加水分解縮合物も同様に使用可能である。
【0027】また,一般式Si(OR2)4または R1 2Si(OR2)2 〔ただし,式中のR1とR2は前述のものと同様〕のオル
ガノシランまたはその部分加水分解物も一部併用可能で
ある。
【0028】これらオルガノシラン又はその部分分解縮
合物は,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタ
ノール等のアルコール類,キンレン,トルエン等の炭化
水素類,メチルエチルケトン,アセトン等のケトン類な
どの10〜50重量%濃度溶液として使用され,さらに
必要に応じ塩酸,硝酸,酢酸などの酸化合物や,チタニ
ウムキレート化合物,アルミニウムキレート化合物,ジ
ルコニウムキレート化合物などの硬化促進剤を併用して
もよい。
【0029】また,図3に示すように,下層塗膜2を塗
布する前のコンクリート1の表面に下地層5を塗布し,
塗料とコンクリート表面との密着性の改善や,コンクリ
ートの耐食性,防水性等の改善を図ることもできる。下
地層5を形成する材料としては,エポキシ樹脂系,ウレ
タン樹脂系,アクリル樹脂系,塩化ゴム系等の従来より
普通に使用されてシーラー若しくはプライマーが使用で
きる。
【0030】本発明に従ってコンクリート表面のひび割
れを防止するには,対象とするコンクリート表面を,必
要に応じて清掃処理し,場合によってはシーラー若しく
はプライマーを塗布したあと,まず前述の微細中空ビー
ズを配合した塗料を塗布して下層塗膜2を形成する。下
層塗膜2の硬化塗膜厚は特に制限はないが,塗膜強度や
断熱性効果等の観点から0.1〜10mm,好ましくは
1〜5mmが適当である。次いで,この下層塗膜2の表
面に前述の白色顔料を配合した塗料を塗装して,上層塗
膜3を形成する。上層塗膜3の硬化塗膜厚は特に制限は
ないが,塗膜強度や隠蔽性等の観から0.1〜3mm,
好ましくは0.5〜1mmが適当である。なお,下層塗
膜2および上層塗膜3の硬化方法は,使用する結合剤の
種類に応じて,自然乾燥,焼付硬化法等の周知の方法に
より硬化することができる。
【0031】本発明においては,これら下層塗膜2や上
層塗膜3の耐久性向上,保持のために,また上層塗膜3
の汚染防止のため,上層塗膜表面に前述の透明塗料を塗
装して,透明保護膜4を形成するのが望ましい。透明保
護膜4の硬化塗膜厚は特に制限はないが,通常0.02
〜0.5mmが適当である。
【0032】また本発明においては,上層塗膜3の表面
に直接透明保護膜4を形成すると若干白色度が低下する
傾向があるため,あらかじめ上層塗膜表面に前述のオル
ガノシラン又はその部分加水分解縮合物溶液を含浸,塗
布しておくのが望ましい。
【0033】
【実施例】以下に本発明の実施例を挙げる。実施例中
「%」および「部」は特に断らないかぎり重量基準で示
す。
【0034】下記組成の下層塗膜形成用の塗料と,上層
塗膜形成用の塗料を作製した。
【0035】〔下層塗膜形成用の塗料〕 フッ素樹脂溶液(固形分50%) 62% 中空状ガラスビーズ(注1) 30% 分散剤 1% ポリイソシアネート溶液(固形分50%) 7% 注1:平均外径40μmのガラスシエル内に空気を封入
した真比重0.2の粒子。
【0036】〔上層塗膜形成用の塗料〕 フッ素樹脂溶液(固形分50%) 9% 白色アルミナ(注2) 89% 分散剤 1% ポリイソシアネート溶液(固形分50%) 1% 注2:電融白色アルミナ質研削材を母粒として,これを
微粉砕,整粒した粉末。平均粒径:4μm
【0037】都心に存在する建物の南面の日射を受ける
打ちっぱなしコンクリートの外壁を約3.2m2づつA,
BおよびCの3区画に区分し,AおよびB領域に対し,
後述のエポキシ樹脂系シーラー(厚み約30μm)を施
した。
【0038】 シーラー(エポキシ樹脂系) エポキシ樹脂 40% (油化シェルエポシキ株式会社製のエピコート1001) メチルイソブチルケトン 10% トルエン 10% ポリアマイド系硬化剤 40% (三和化学株式会社製のサンマイド)
【0039】シーラーを施したA区画に対して,前記の
下層塗膜形成用の塗料を乾燥膜厚2mmになるように塗
装し,自然乾燥させたあと,前記の上層塗膜形成用の塗
料を乾燥膜厚1mmになるように塗装し,自然乾燥させ
た。これにより,中空状ガラスビーズ82容量%が分散
した膜厚2mmの下層塗膜と,その上に膜厚1mmの白
色の上層塗膜をもつ壁面が得られた。上層塗膜は光の反
射率が91%で熱の放射率は90%を示した。なお,光
の反射率はJIS A 5759に準ずる方法で測定
し,熱の放射率は株式会社島津製作所製の放射率測定器
FTIRを用いて大気の窓と言われる波長8〜13μm
での放射率の値で評価した。
【0040】比較のために,シーラーを施したB区画に
対し,中塗が乾燥膜厚30mmで,上塗が乾燥膜厚30
mmの従来の塗装を行った。用いた塗料は市販の次のも
のである。 ・中塗の塗料(フッ素樹脂系) フッ素樹脂溶液 40% (旭碍子株式会社製の商品名#ルミフロン) 酸化チタン 30% 酢酸ブチル 27% ポリイソシアネート 3% (日本ポリウレタン株式会社製 コロネートHX) ・上塗の塗料(フッソ樹脂系) フッ素樹脂溶液 60% (旭碍子株式会社製の商品名#ルミフロン) 酸化チタン 30% 酢酸ブチル 5% ポリイソシアネート 5% (日本ポリウレタン株式会社製 コロネートHX)
【0041】前記のC区画はコンクリートの打ちっぱな
しままの無塗装とし,1年経過した時点での各区画のひ
び割れ状況を目視観察した。その結果,C区画ではひび
割れの発生が見られた。このC区画のひび割れの程度を
100として相対比で約55%のひび割れがB区画でも
観察された。しかし,A区画では,B区画よりも塗膜厚
みが1/20であるにも拘わらず,ひび割れは全く観察
されなかった。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によると簡
易な方法でコンクリートの表面ひび割れを防止すること
ができ,コンクリート構造物の美観の向上はもとより,
その耐久性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理を施したコンクリート表面の構造
を示す略断面図である。
【図2】本発明の処理を施したコンクリート表面の他の
構造例を示す略断面図である。
【図3】本発明の処理を施したコンクリート表面の他の
構造例を示す略断面図である。
【図4】各種材料の日射吸収率と長波長ふく射率を示す
図である。
【図5】太陽エネルギの分光特性を示す図であり,波長
と放射エネルギ密度との関係を示す図である。
【図6】黒体の単色放射発散度と波長の関係を温度に応
じて示した図である。
【図7】通常のコンクリート(bおよびc)と,それに
本発明の処理を施したもの(a)の太陽光反射率と表面
温度の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 コンクリート 2 下層塗膜(断熱層) 3 上層塗膜(光反射熱放射層) 4 保護塗膜(透明層) 5 下地層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鶴田 政博 東京都調布市飛田給二丁目19番1号 鹿 島建設株式会社技術研究所内 (72)発明者 辻 敏幹 栃木県大田原市下石上1382−12 大日本 塗料株式会社那須工場内 (72)発明者 水野 民雄 栃木県大田原市下石上1382−12 大日本 塗料株式会社那須工場内 (72)発明者 石原 眞興 栃木県大田原市下石上1382−12 大日本 塗料株式会社那須工場内 (72)発明者 館山 陽介 栃木県大田原市下石上1382−12 大日本 塗料株式会社那須工場内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C04B 41/71 C09D 5/00 E04F 13/02

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンクリート表面に,中空ビーズを塗膜
    固形分中20〜98容積%含有する断熱性下層塗膜を形
    成し,この下層塗膜の上に,白色顔料を分散させた塗料
    を塗布して光の反射率が80%以上で且つ熱の放射率が
    80%以上の高反射・高放射性の上層塗膜を形成するコ
    ンクリート表面のひび割れ防止法。
  2. 【請求項2】 コンクリート表面に,中空ビーズを塗膜
    固形分中20〜98容積%含有する断熱性下層塗膜を形
    成し,この下層塗膜の上に,白色顔料を分散させた塗料
    を塗布して光の反射率が80%以上で且つ熱の放射率が
    80%以上の高反射・高放射性の上層塗膜を形成し,こ
    の上層塗膜の上に透明保護膜を形成するコンクリート表
    面のひび割れ防止法。
  3. 【請求項3】 中空ビーズは,樹脂製またはガラス製の
    シエル内に空気を封入した粒子からなる請求項1または
    2に記載のコンクリート表面のひび割れ防止法。
  4. 【請求項4】 上層塗膜と透明保護膜の間に,一般式R
    1Si(OR2)3,〔但し,式中R1は炭素数1〜8の有機
    基,R2は炭素数1〜5のアルキル基を表す〕で示され
    るオルガノシランまたはその部分加水分解縮合物溶液を
    塗布する請求項2または3に記載のコンクリート表面の
    ひび割れ防止法。
  5. 【請求項5】 上層塗膜は,酸化チタン,アルミナ,シ
    リカ,硫酸バリウム,ポリテトラフルオロエチレンまた
    は酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種の白色
    顔料を含有し,且つ波長0.28〜2.5μmの分光反射
    率を測定したときの波長0.5μmにおける反射率が8
    0%以上で且つ波長8〜13μmでの熱の放射率が80
    %以上である請求項1,2,3または4に記載のコンク
    リート表面のひび割れ防止法。
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