JPH1183584A - 発熱抵抗体式空気流量測定装置および逆流判定方法および誤差補正方法 - Google Patents

発熱抵抗体式空気流量測定装置および逆流判定方法および誤差補正方法

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JPH1183584A
JPH1183584A JP9246451A JP24645197A JPH1183584A JP H1183584 A JPH1183584 A JP H1183584A JP 9246451 A JP9246451 A JP 9246451A JP 24645197 A JP24645197 A JP 24645197A JP H1183584 A JPH1183584 A JP H1183584A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】内燃機関の空気流量の検出において、吸気管内
の脈動によって生じる発熱抵抗体式空気流量測定装置の
誤差補正を的確に行う。 【解決手段】逆流が直接進入し難い副空気通路内に発熱
抵抗体を配置し、逆流による誤差を無くした通路を用い
て、順流波形の最大値,最小値及び平均値を用いて振幅
と平均値の比率を使って逆流の有無を判別するとともに
順流の増加による誤差分を補正する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば熱線等を使
って熱線から空気への放熱量を基に空気流量を測定する
空気流量測定装置における誤差補正方法であって、自動
車の内燃機関エンジンに吸入される空気流量を測定する
際に、吸気脈動により生じる特に逆流による測定誤差の
測定誤差補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】発熱抵抗式空気流量測定装置の脈動域に
おける測定誤差補正方法としては、特開平8−105781 号
に示すようなスロットルバルブ開度(α)及び、回転数
(N)により補正マップを有する方法が、一般的に公知
の技術として知られている。
【0003】また、逆流による検出誤差を発熱抵抗体式
空気流量測定装置に用いられる副通路を使って低減する
方法としては特公平2−1518 号がある。これは曲がりを
有する副空気通路内に発熱抵抗体を配置して、少なくと
もエンジンからエアクリーナ方向への逆流を発熱抵抗体
に直接当てない構造とすることにより逆流の影響を低減
したものである。
【0004】更に、本発明に最も近い公知の技術として
は、特公昭59−17371 号がある。この従来技術はアナロ
グ回路を使って発熱抵抗体式空気流量測定装置からの出
力電圧信号の交流成分を取り出して補正に使うものであ
り主に発熱抵抗体の持つ非線形性及び応答遅れによる検
出流量のマイナス誤差(いわゆる二値現象)の改善を図
ったものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】流量検出素子である発
熱抵抗体はその構造上流れの方向を検出することは困難
である。このため、逆流が生じると発熱抵抗体は逆流も
順流と判断して検出してしまいその分誤差として検出し
てしまう。
【0006】エンジンの吸気管内を流れる空気流は吸気
バルブの開閉に伴い脈動流となる。この脈動の大きさは
スロットルバルブが比較的閉じた場合には小さく、スロ
ットルバルブの全開付近となるにつれて大きな脈動流と
なる。
【0007】その概要を図15を使い説明する。回転数
を一定に保ちながらスロットルバルブを徐々に開けてい
くと吸入流速(流量)の増加に伴い、吸気管内の脈動振
幅も徐々に大きくなり、ある程度大きくなると発熱抵抗
体の出力は、自身の持つ非線形性及び応答遅れによりマ
イナスの誤差を持つ流量を指示してしまう。これがいわ
ゆる二値現象である。二値現象の発生メカニズムを図1
3に示す。さらに脈動振幅が大きくなると吸気管内の流
れは逆流を伴うような流れになる。しかしながら発熱抵
抗体はその構造上流れの方向を検出することは困難であ
り、順流でも逆流でも単に流速として検出する。そのた
め、逆流が生じても発熱抵抗体はそれを素直に流速とし
て検出してしまい、その結果プラス側の誤差を示すので
ある。
【0008】これらの理由により発熱抵抗体式空気流量
測定装置を使用した場合には逆流時には何らかの誤差補
正が必ず必要となるのである。
【0009】また、この逆流による検出誤差は単にエン
ジンからエアクリーナ側への逆流分を防げば良いという
ものではない。これは逆流として戻る分、順流分の増加
があるためである。筆者らの実験結果を図14に示す。
図14は吸気管内の空気の流れを順流と逆流とを特別な
手法により測定した結果である。吸入負圧10mmHg付近
から逆流が出始めるエンジン状態である。この場合順流
と逆流とを区別して測定しているにも関わらず順流も逆
流分とほぼ同じ傾斜をもって出力が増加している。即ち
これは前記した逆流として吸気管内に戻る分順流分が増
加しているためである。
【0010】これを防ぐためには順流と逆流とを区別し
て測定し、更に順流分から逆流分を差し引かなければな
らないのである。しかし、そのためには発熱抵抗体の応
答性を十分に早くしなければならない。そのため発熱抵
抗体は厚さを薄くしたりして小型化を図り、熱容量小さ
くしなければそのための応答性の確保は困難となる。こ
のように発熱抵抗体を小さくすることは発熱抵抗体の機
械的な強度を下げるだけでなく、耐汚損性の悪化、更に
は応答性が速まる分出力ノイズ特性の悪化が懸念され平
均流量算出の精度が悪くなるのである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題に対応するた
め、少なくとも一つ以上の曲がりを持つ副空気通路内に
発熱抵抗体を配置し直接、逆流が発熱抵抗体に当たらな
いような通路構造として、発熱抵抗体の検出値を空気流
量変換して直線化した後にある一定時間サンプリングし
てその時間内における最大値と最小値を求めて、それら
の比率等を求めることにより逆流の有無及び補正を行う
こととした。
【0012】具体的な説明を図2を用いて説明する。図
2は逆流が生じる回転数で回転数を一定に保ちながら徐
々にスロットルバルブを開けて吸入負圧(BOOST)
を変化させて測定ポイントを変えながら発熱抵抗体の検
出波形の最大値(Qmax )及び最小値(Qmin)を測定
し、横軸にBOOST、縦軸に空気流量換算値(AIR
FLOW)でプロットしたものである。更に図2には脈
動振幅(Qmax−Qmin)、平均値として(Qmax+Qmin)
/2の値及び、脈動振幅を平均値で割った値((Qmax−
Qmin)/(Qmax+Qmin)/2)を合わせて記載した。本
図においては吸入負圧が約−10mmHg付近から逆流が発
生し、それ以降の吸入負圧でプラスの誤差を示してい
る。
【0013】図示グラフの最大値と最小値に着目すると
逆流により平均値が増加している場合には吸入負圧に対
し最小値の変化分は小さく、最大値が急激に増加してい
ることが判る。更に脈動振幅を平均値で割った値にも着
目すると脈動振幅の大きさに応じてその値も増加してい
る。つまりこの脈動振幅を平均値で割った値にしきい値
を設けてそのしきい値より小さい値では逆流が無いと判
断し、しきい値よりも大きい場合には逆流が有ると判断
することが可能となる。
【0014】更に、逆流が有る場合にはその値が大きい
ほど誤差も大きいといえる。つまり図3に示すような関
係があるのである。図3は横軸に脈動振幅を平均値で割
った値((Qmax−Qmin)/(Qmax+Qmin)/2)、縦軸に
真値に対する誤差を示したものである。このように脈動
振幅を平均値で割った値と誤差との間には単調な増加関
係が有るためこの相関をつかんでおけば発熱抵抗体の検
出波形の最大値と最小値により逆流の有無ばかりではな
く逆流量も概略推定することが可能となる。
【0015】また、発熱抵抗体を曲がりの有る副空気通
路内に配置する理由は発熱抵抗体の検出波形が逆流によ
りひずむことを防ぐためである。主空気通路内に発熱抵
抗体を配置して図2と同様な実験を行った結果を図9
に、出力波形を図8に示す。図2との大きな違いは波形
の最小値が逆流の増加とともに上がってしまう所であ
る。これは発熱抵抗体が逆流を素直に検出して波形が折
り返してしまいこのため、波形が大きくひずんでしまう
ためである。これにより脈動振幅は逆流が生じた領域で
は逆流の大きさによらずほぼ同じ値を示し、また逆流が
大きくなると脈動振幅を平均値で割った値は逆に小さく
なってしまう。このため図3に示したような単調増加の
関係が得られずに逆流の有無判定及び逆流量の推定が困
難となってしまうのである。
【0016】また、発熱抵抗体の検出値を出力電圧から
空気流量へ変換するのは検出値の平均値を最大値と最小
値から概略求めることができる為である。発熱抵抗体の
出力は低流量で傾斜が急で高流量ほど緩やかな非線形な
出力であり、図4に示したようなサイン波近い脈動波形
を検出しても低流量側が鋭利で高流量がなだらかな波形
となってしまい最大値と最小値から実際の平均値を求め
ることが困難となってしまうのである。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施例を以下の図面に従
い詳細に説明する。
【0018】まず最初に、発熱抵抗体式空気流量測定装
置の動作原理について説明する。図16は発熱抵抗体式
空気流量測定装置の概略構成回路図である。発熱抵抗体
式空気流量測定装置の駆動回路91は大きく分けてブリ
ッジ回路とフィードバック回路から成り立っている。吸
入空気流量測定を行うための発熱抵抗体3RH、吸入空
気温度を補償するための感温抵抗体4RC及びR10,
R11でブリッジ回路を組、オペアンプOP1を使いフ
ィードバックをかけながら発熱抵抗体3RHと感温抵抗
体4RCの間に一定温度差を保つように発熱抵抗体3R
Hに加熱電流Ihを流して空気流量に応じた出力信号V
2を出力する。つまり流速の速い場合には発熱抵抗体3
RHから奪われる熱量が多いため加熱電流Ihを多く流
す。これに対して流速の遅い場合には発熱抵抗体Rhか
ら奪われる熱量が少ないため加熱電流も少なくてすむの
である。ここで発熱抵抗体3Rhから奪われる熱量は空
気の流れの方向によらず順流でも逆流でも同じであるた
め逆流時にも加熱電流Ihが流れるため発熱抵抗体式空
気流量測定装置の過大検出誤差が生じるのである。
【0019】図17は発熱抵抗式空気流量計の一例を示
す横断面であり、図18はその上流(左側)から見た外
観図である。
【0020】発熱抵抗体式空気流量測定装置の構成部品
としては駆動回路を構成する回路基板2を内蔵するハウ
ジング部材1及び非導電性部材により形成される副空気
通路構成部材10等があり、副空気通路構成部材10の
中には空気流量検出のための発熱抵抗体3,吸入空気温
度を補償するための感温抵抗体4が導電性部材により構
成された支持体5を介して回路基板2と電気的に接続さ
れるように配置され、ハウジング,回路基板,副空気通
路,発熱抵抗体,感温抵抗体等、これらを発熱抵抗体式
空気流量測定装置の一体のモジュールとして構成されて
いる。また、吸気管路を構成する主空気通路構成部材2
0の壁面には穴25があけられており、この穴25より
前記発熱抵抗体式空気流量測定装置の副空気通路部分を
外部より挿入して副空気通路構成部材の壁面とハウジン
グ部材1とをネジ7等で機械的強度を保つように固定さ
れている。ここで副空気通路が挿入される主空気通路部
分はほぼ円筒管であり、主空気通路の空気の流れる有効
断面積は副空気通路の出入口の配置箇所でほぼ同じであ
る。また、副空気通路構成部材10と主空気通路構成部
材の間にシール材6を取り付けて、気密性を保ってい
る。
【0021】次に本発明の具体的な内容について説明す
る。
【0022】まず、図1は本発明の基本的な概念の一例
を示したものである。誤差補正装置内には発熱抵抗体式
空気流量測定装置検出波形から最大値,最小値及び逆流
による誤差を含む平均値を検出し一時的に所定時間保持
するためのメモリ,振幅検出手段,振幅比率検出手段,
補正値算出手段,逆流有無判別手段及びそれらからの情
報を基に補正を行う補正手段等が備えられている。エン
ジンでの逆流の発生する最低回転数を750rpm とすれ
ば脈動波形の一周期は約40msであるため、メモリにス
トックするための所定時間はそれ以上の時間にしなけれ
ばならない。また、逆流を正確に検出するためにはメモ
リにストックするためのデータのサンプリングは2ms以
下程度にして波形の極値である最大値,最小値近傍の値
を取り逃がさないように、常時20データ以上のサンプ
リング値を使うことが望ましい。次にメモリ内に有る最
大値(Qmax),最小値(Qmin)を使って脈動振幅を求
めるとともに、仮の平均値として(Qmax+Qmin)/2
を求める。(Qmax+Qmin)/2を平均値として使えるの
は逆流を伴うような大きな脈動状態となる場合には脈動
波形が略サイン波に近いことを利用したものである。本
来であれば所定時間内の平均値(積分値)を用いること
が望ましいが逐次平均値を算出することは、処理負荷が
大きくなってしまうため(Qmax+Qmin)/2を代用し
ている。次に脈動振幅と平均値を基にその比率を求め
る。本実施例では脈動振幅を平均値で割った値を比率の
値として使用している。次に前記した比率の値を基にし
て吸気管内に逆流が有るか無いかの判定を行う。判定は
比率値にあるしきい値を設けておき、このしきい値を越
えた場合には逆流が有ると判断し、しきい値以下では逆
流が無いと判断するのである。逆流が無いと判断した場
合には補正はせずにそのままの値を空気流量信号として
出力し、逆流が有ると判断した場合には前記した比率値
に応じた補正値を算出して脈動波形に補正を加えた値を
空気流量信号として出力するのである。
【0023】次に図1に記載した手法がどのようなメカ
ニズムにより成立するのかについて実験データを基に説
明する。まず図2は回転数を一定に保ちながらスロット
ルバルブを徐々に開けていき吸入負圧(BOOST)を
ポイント的に10点変えながら発熱抵抗体が検出する脈
動波形の最大値(Qmax),最小値(Qmin)を吸入負圧
毎にプロットした図である。図中には他にも仮の平均値
として(Qmax−Qmin)/2の値、振幅値(Qmax−Qmi
n)及び、脈動振幅を平均値で割った値を比率の値((Qm
ax−Qmin)/((Qmax+Qmin)/2))を示している。図
2に示した値を計測するのに用いた発熱抵抗体は主空気
通路内にほぼL字形の曲がりを有し、逆流が生じても直
接入り込まない副空気通路内に配置している。逆流が生
じる領域においては平均値は図に示すように増加する
が、この増加する原因は、最小値はあまり変化しないの
に対して、最大値が急激に増加するためである。最小値
はあまり変化しない理由は前記したとおり逆流が生じて
も直接入り込まない副空気通路内に発熱抵抗体を配置し
ている為である。
【0024】図2より脈動振幅は吸入負圧が−20mmHg
以下では非常に小さい値を示すが、それ以上の場合には
吸入負圧に応じて脈動振幅が大きくなり、それに応じて
脈動振幅を平均値で割った比率値も大きくなる。つまり 脈動振幅が大きくなる=逆流が発生し易くなる の関係が成り立つが、実際には同じ脈動振幅でもエンジ
ン回転数が異なる場合があり、脈動振幅だけでは逆流を
誤判定してしまう。このため平均流量に対して脈動振幅
がどのくらいの比率であるかを検知すれば前記した誤判
定を回避することが可能となる。このため本発明では、
脈動振幅を平均値で割った値を比率の値((Qmax−Qmi
n)/((Qmax+Qmin)/2))の値を使って逆流の有無の
判定及び補正を行うこととしたのである。
【0025】図3は図2の値を使って横軸に脈動振幅を
平均値で割った値、縦軸に実際の流量に対する発熱抵抗
体の検出流量の誤差(ERROR)を示した図である。
本図より脈動振幅を平均値で割った値が約0.3 を越え
ると逆流による検出誤差が生じることが分かる。このた
め0.3 の値をしきい値としてそれ以下では逆流無し、
それ以上で逆流有りと判断して、逆流有りの場合には図
3の相関に応じた補正を行えば逆流による誤差の低減が
可能となるのである。但し、前記したしきい値の0.3
は通路構造により変化するため実際には通路に応じたし
きい値の設定が必要となる。
【0026】次に、具体的な補正方法の一例を図4及び
図5を使い説明する。図4及び図5には本発明による補
正前後の波形及び吸入負圧対空気流量特性の値を示し
た。図5の補正無しの値は図2に示した(Qmax+Qmi
n)/2の値と同じである。本検討結果は前記したよう
にある所定時間の最大値と最小値をメモリ内に保持して
おき最小値を固定して最小値から遠ざかるほど実際の測
定値の値を下げるような補正を行っているのである。例
えば、エンジン回転数の1周期以上の時間、具体的には
アイドル回転数が750rpm であれば約40ms以上,6
00rpm であれば50ms以上。これを式で表すと式1に
記載したような式となる。
【0027】
【数1】 Qnew=Qsamp−k0×(Qsamp−Qmin)×K1×K2 …(式1) k0:gain係数 K1:負荷係数 K2:回転数係数 式1に記載したQsampは実際の測定値、Qnewは補正し
たあとの値、Qminは前述べるためここでは両方とも1
と考えてよい。また、K0については副空気通路の構造
などによるため任意の数を予め実験等から求めて入れて
おく。このような式とすると最小値付近においては実際
の測定値と補正後の値はさほど変わらないが、最小値か
ら遠ざかるほど実際の測定値からの引数が多くなり、最
大値において最も引数が多くなる。即ち脈動振幅を小さ
くしながら平均値を下げることができるのである。更に
本式によれば図2に示したように吸入負圧に応じて最小
値がさほど変化せずに最大値が大きく変化するような場
合には最大値が大きくなるほど補正量が大きくなるた
め、吸入負圧に応じた補正が可能となり結果的に図5に
示したように逆流により生じていた誤差をキャンセルす
るようなことが可能となるのである。
【0028】本例に示した補正方法は逆流により生じた
プラス側の誤差を下げるために平均値を下げる補正を行
ったが、課題の中で述べた発熱抵抗体の持つ非線形性と
逆流と迄は至らない脈動振幅により生じるマイナス誤差
(いわゆる二値現象)の場合には例えば、最大値を固定
して脈動振幅を減らすような補正を行えば逆に平均値が
増加するため、マイナス誤差を回避することが可能とな
る。このように本例で示した最大値,最小値を固定して
脈動振幅を小さくする補正手段は逆流によるプラス側の
誤差低減だけでなくマイナス側の誤差低減にも効果を示
すのである。
【0029】次に前記した式1に記載のK1及びK2に
ついて説明する。まず図6は脈動振幅に対する発熱抵抗
体の検出感度を示す周波数特性の一例を示したグラフで
ある。発熱抵抗体は低周波数では検出感度は高いが、周
波数が高くなるほど検出感度が低くなる。このため同じ
脈動振幅でも周波数が変わると検出する脈動振幅の値が
変わってしまうのである。
【0030】そのため回転数に応じて正確に補正を行う
場合には回転数に応じた補正が必要となる。この回転数
に応じた補正については例えば、エンジン制御を一手に
まかなうエンジンコントロールユニット(ECU)によ
り本補正を行う場合には、エンジン回転数センサにより
得られた回転数信号がECU内にあるためこの信号を使
って前記した図6に示した周波数特性に応じた補正を行
うことができる。このエンジン回転数に応じた補正係数
に相当するのが式1に示したK2の係数である。
【0031】また、図3に示した脈動振幅を平均値で割
った値を比率の値((Qmax−Qmin)/((Qmax+Qmin)
/2))と検出誤差の関係は直線的な関係ではなく実験
的にはほぼ二乗の関数で近似できる。このためエンジン
負荷の例えば吸入負圧やスロットルバルブ開度信号等を
使ってエンジン負荷を検出してその負荷状態に応じて図
3に記載したような二乗の曲線を使って補正すれば正確
な補正が可能となる。比較のため、この直線近似による
補正結果を図7に示す。図示のように直線補正では脈動
振幅を平均値で割った値を比率の値の小さい領域(逆流
の出始め付近)においては補正が足りなくプラス側の誤
差が残ってしまい、逆に比率の十分大きい領域において
は逆に補正が多くてマイナス側の誤差を示してしまう。
これに対して図5に示したのが二乗により近似した曲線
を使用した場合である。これには殆どプラス側にもマイ
ナス側にも誤差はなく良好な結果を得ることができるの
である。このエンジン負荷に応じた補正を行う補正係数
に相当するのが式1に示したK1の係数である。
【0032】この補正係数においても、本補正をECU
にて行う場合には吸入負圧信号やスロットルバルブ開度
信号がECU内に取り込まれているため補正値は容易に
示すことが可能である。上記したようなエンジンコント
ロールユニットを用いて本発明の補正を行うための概念
の一例を図10に示す。基本的には図1に示した内容と
同じであるがエンジン回転数とスロットルバルブの開度
を検出し、それらの信号を使って補正値を算出し、空気
流量信号として出力するものである。
【0033】次に本発明の補正を発熱抵抗体式空気流量
測定装置自身が行う実施例について説明する。まず図1
1は概念を示したものである。発熱抵抗体式空気流量測
定装置内部に例えばマイコン等を用いた誤差補正装置を
搭載し、空気流量変換を行うとともにメモリ内に最大
値,最小値を保持する。更にその最大値,最小値を用い
て脈動振幅,平均値,回転数及び負荷を検出し、逆流の
有無を判別するとともに、補正値を算出し、補正処理を
行った後に空気流量信号として出力する。補正方法につ
いては例えば図4に記載したような最小値を固定したま
ま脈動振幅を小さくする補正を行う。ここで負荷及び回
転数の検出手段について式2を用いて説明する。
【0034】
【数2】
【0035】式2に記載したS1は逆流の有無を判別す
るためのしきい値である。この値は本例では図3の結果
より0.3 付近の値とする。また、S2は本補正式を設
定した際のエンジン回転数における流量の平均値を示し
たものであり、本例においては図5より約40kg/hに
設定する。まず式1におけるK1の負荷に相当する値と
しては脈動振幅を平均値で割った値からしきい値をひい
た値を用いる。これにより脈動振幅が大きくなるにつれ
て引き量を大きくすることが可能となる。もちろん図3
に記載したグラフの相関を多項式で表してその式を用い
て補正を行えば補正の精度を上げることが可能である。
【0036】また、回転数に相当するK2の値としては
補正式の設定の際の空気流量に対して、補正を行う際の
空気流量が何倍になっているかで回転数が略どのくらい
かを知ることができる。補正式の設定時のエンジン回転
数が800rpm で40kg/hとすると、例えば平均値が
80kg/hと検出した場合にはエンジン回転数は略16
00rpm であるといえる。これはエンジン回転数と吸入
空気流量が略比例関係にあることを利用したものであ
る。
【0037】上記説明のように発熱抵抗体の検出流量だ
けを用いた場合でも概略エンジンの負荷状態及び回転数
状態を知ることができるため、逆流により生じた誤差分
を自己補正して出力する発熱抵抗体式空気流量測定装置
を提供することが可能となる。
【0038】以上説明した通り上記した補正方法は逆流
による誤差補正を的確にすることが可能である反面、例
えば図12に示すような脈動状態にない場合で空気流量
がステップ的に変化した場合に誤った補正を行うことが
考えられる。これは最小値と最大値の関係がステップ的
に流量が変化したために生じたものなのか、脈動振幅に
よるものなのかの判断が付かずによるものである。これ
はエンジンコントロールユニットを使って本補正を行う
場合には比較的簡単に回避することが可能である。一例
を示せば、例えば前記したようなエンジン回転数信号や
スロットルバルブ開度信号を使って、明らかに逆流が生
じない領域においては補正処理を行わないようにすれば
図12に示すような誤検出を防ぐことが可能である。
【0039】また、発熱抵抗体式空気流量測定装置自身
が自己補正する場合においても例えば前回補正出力した
出力値に対して明らかに大きく補正を行わなければなら
ないような場合においては補正を行わないようにすれば
誤検出を防ぐことが可能となる。筆者らの検討結果では
概略10%以上の出力差が生じた場合において補正を行
わないようにした場合にはステップ的な流量変化に対し
ても誤検出しないことを確認した。
【0040】以上、説明したように本発明によれば内燃
機関の吸気管内の逆流などにより生じる発熱抵抗体式空
気流量測定装置の測定誤差を低減することが可能とな
り、信頼性の高いバイパス通路を用いた発熱抵抗体式空
気流量測定装置においても脈動影響の誤差補正を的確に
行え、更に逆流時に脈動振幅を小さくすることが可能で
あり、平均流量が算出しやすくすることができる。その
結果、高精度なエンジンの燃料制御を行うことが可能と
なる。
【0041】最後に、図19を使い電子燃料噴射方式の
内燃機関に本発明品を適用した一実施例を示す。
【0042】エアクリーナ54から吸入された吸入空気
67は、発熱抵抗式空気流量測定装置のボディ53,吸
入ダクト55,スロットルボディ58及び燃料が供給さ
れるインジェクタ60を備えたインテークマニホールド
59を経て、エンジンシリンダ62に吸入される。一
方、エンジンシリンダで発生したガス63は排気マニホ
ールド64を経て排出される。
【0043】発熱抵抗式空気流量測定装置の回路モジュ
ール52から出力される空気流量信号,温度センサから
の吸入空気温度信号,スロットル角度センサ57から出
力されるスロットルバルブ角度信号,排気マニホールド
64に設けられた酸素濃度計65から出力される酸素濃
度信号及び、エンジン回転速度計61から出力されるエ
ンジン回転速度信号等、これらを入力するコントロール
ユニット66はこれらの信号を逐次演算して最適な燃料
噴射量とアイドルエアコントロールバルブ開度を求め、
その値を使って前記インジェクタ60及びアイドルコン
トロールバルブ66を制御する。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば自動車エンジン等に吸入
され逆流を伴うような脈動流下においても高精度に空気
流量を測定する発熱抵抗体式空気流量測定装置の測定誤
差補正方法、あるいは制御装置を提供できるため、エン
ジンの燃料制御を高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概要を示すブロック図。
【図2】曲がり通路内における発熱抵抗体が検出する最
大値,最小値及びこれらを使って求めた値をプロットし
た図。
【図3】脈動振幅を平均値で割った値と検出誤差の相関
を示す図。
【図4】本発明における補正方法の一つとして最小値を
変えずに脈動振幅を小さくするように補正した波形の補
正前後を示す図。
【図5】本発明の効果を示す吸入負圧対空気流量信号の
関係を補正前後で比較した図。
【図6】発熱抵抗体の周波数特性を示す図。
【図7】補正係数を直線近似と平方根→直線近似を使っ
て補正を行った比較を示す図。
【図8】主空気通路に発熱抵抗体を配置した場合の脈動
波形。
【図9】主空気通路内における発熱抵抗体が検出する最
大値,最小値及びこれらを使って求めた値をプロットし
た図。
【図10】本発明の更なる一実施例であるエンジンコン
トロールユニットを用いた場合の概要を示すブロック
図。
【図11】本発明の更なる一実施例である発熱抵抗体式
空気流量測定装置内部で回転数及び負荷状態を検出する
場合の概要を示すブロック図。
【図12】ステップ的な流量変化に対する本発明の誤検
出を示す図。
【図13】発熱抵抗体の脈動振幅により生じる出力の低
下(二値現象)のメカニズムを示す図。
【図14】吸気管内の流速を順流,逆流を分離して測定
し、横軸に吸入負圧,縦軸に平均流速を示した図。
【図15】吸気管内の吸入負圧毎の脈動振幅状態を示し
た図。
【図16】発熱抵抗体式空気流量測定装置の概略回路構
成を示す図。
【図17】発熱抵抗体式空気流量測定装置の横断面を示
す図。
【図18】図17を上流側から見た図。
【図19】内燃機関のシステム構成を示す図。
【符号の説明】 1…ハウジング部材、2…回路基板、3…発熱抵抗体、
4…感温抵抗体、5…支持体、6…シール材、10…副
空気通路構成部材、11…副空気通路入口、12…副空
気通路出口、13…縦通路、14…横通路、20…主空
気通路構成部材、22…主空気通路、23…順方向空気
流れ、24…逆方向空気流れ、25…穴、51…吸気温
度センサ、52…モジュール、53…ボディ、54…エ
アクリーナ、55…吸入ダクト、56…アイドルエアコ
ントロールバルブ、57…スロットル角度センサ、58
…スロットルボディ、59…インテークマニホールド、
60…インジェクタ、61…回転速度計、62…エンジ
ンシリンダ、63…ガス、64…排気マニホールド、6
5…酸素濃度計、66…コントロールユニット、67…
吸入空気。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小澤 正之 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器事業部内 (72)発明者 菅家 厚 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内燃機関の吸入空気通路内に配置された少
    なくとも一つ以上の曲がりを有する副空気通路と、 前記副空気通路内に配置された発熱抵抗体と、を備えた
    発熱抵抗体式空気流量測定装置において、 前記発熱抵抗体から得られた空気流量信号値の最大値と
    最小値とに基づいて、前記吸入空気通路内の逆流の有無
    を判定する判定手段を備えたことを特徴とする発熱抵抗
    体式空気流量測定装置。
  2. 【請求項2】請求項1において、 前記判断手段が逆流有りを判断した場合に、前記空気流
    量信号を補正する補正手段を備えたことを特徴とする発
    熱抵抗体式空気流量測定装置。
  3. 【請求項3】内燃機関の吸入空気通路内に配置された少
    なくとも一つ以上の曲がりを有する副空気通路と、 前記副空気通路内に配置された発熱抵抗体と、を備えた
    発熱抵抗体式空気流量測定装置において、 前記発熱抵抗体から得られた空気流量信号値の最大値と
    最小値とに基づいて、前記吸入空気通路内に生じる逆流
    による測定誤差を補正する補正手段を備えたことを特徴
    とする発熱抵抗体式空気流量測定装置。
  4. 【請求項4】請求項1から3のいずれかにおいて、 ある所定時間内の空気流量信号値の中から前記最大値と
    前記最小値とを求める手段を備え、 前記ある所定時間は、前記内燃機関のアイドル回転数の
    周期以上の時間であることを特徴とする発熱抵抗体式空
    気流量測定装置。
  5. 【請求項5】請求項1から3のいずれかにおいて、 ある所定時間内の空気流量信号値の中から前記最大値と
    前記最小値とを求める手段を備え、 前記ある所定時間は、前記内燃機関の吸気行程時間に応
    じて変化することを特徴とする発熱抵抗体式空気流量測
    定装置。
  6. 【請求項6】請求項1または2において、 前記判定手段は、次式で求められる値Fに基づいて、 F=(前記最大値−前記最小値)/((前記最大値+前
    記最小値)/2) 逆流の有無を判定することを特徴とする発熱抵抗体式空
    気流量測定装置。
  7. 【請求項7】請求項3において、 前記補正手段は、次式で求められる値Fに基づいて、 F=(前記最大値−前記最小値)/((前記最大値+前
    記最小値)/2) 前記測定誤差を補正することを特徴とする発熱抵抗体式
    空気流量測定装置。
  8. 【請求項8】請求項2において、 前記補正手段は、データのサンプリング毎に検出波形に
    対して逐次補正を行い、脈動一周期分の平均流量を変化
    させる補正を行うことを特徴とする発熱抵抗体式空気流
    量測定装置。
  9. 【請求項9】請求項2において、 前記補正手段は、検出波形の最大値及び最小値のいずれ
    か一方の値の近傍の補正量は小さくし、他方の値に近づ
    くほど補正量を大きくすることを特徴とする発熱抵抗体
    式空気流量測定装置。
  10. 【請求項10】請求項9において、前記検出波形の最小
    値近傍は補正量を少なく、最大値に近づくほど補正量を
    大きくして脈動振幅を小さくし、前記内燃機関の吸気工
    程一周期分の平均流量を下げる補正を行うことを特徴と
    する発熱抵抗体式空気流量測定装置。
  11. 【請求項11】請求項8において、 前回補正した値に対して略10%以上の流量変化が生じ
    た場合には補正を行わないようにしたことを特徴とする
    発熱抵抗体式空気流量測定装置。
  12. 【請求項12】発熱抵抗体式空気流量測定装置から入力
    された空気流量信号値の最大値と最小値とに基づいて、
    前記発熱抵抗体式空気流量測定装置の被測定空気通路内
    の逆流の有無を判定する判定手段を備えた内燃機関の制
    御装置。
  13. 【請求項13】発熱抵抗体式空気流量測定装置から入力
    された空気流量信号値の最大値と最小値とに基づいて、
    前記発熱抵抗体式空気流量測定装置の被測定空気通路内
    の逆流による測定誤差を補正する補正手段を備えた内燃
    機関の制御装置。
  14. 【請求項14】請求項1から11のいずれか記載の発熱
    抵抗体式空気流量測定装置と、 前記発熱抵抗体式空気流量測定装置からの信号に基づい
    て、前記内燃機関に供給する燃料量を制御する制御装置
    と、を備えた内燃機関の制御システム。
  15. 【請求項15】内燃機関の吸入空気通路内に配置された
    少なくとも一つ以上の曲がりを有する副空気通路と、前
    記副空気通路内に配置された発熱抵抗体と、を備えた発
    熱抵抗体式空気流量測定装置の逆流判定方法であって、 前記発熱抵抗体から得られた空気流量信号値の最大値と
    最小値とを検出し、 検出された前記最大値と前記最小値とに基づいて、前記
    吸入空気通路内の逆流の有無を判定する発熱抵抗体式空
    気流量測定装置の逆流判定方法。
  16. 【請求項16】内燃機関の吸入空気通路内に配置された
    少なくとも一つ以上の曲がりを有する副空気通路と、前
    記副空気通路内に配置された発熱抵抗体と、を備えた発
    熱抵抗体式空気流量測定装置の誤差補正方法であって、 前記発熱抵抗体から得られた空気流量信号値の最大値と
    最小値とを検出し、 検出された前記最大値と前記最小値とに基づいて、発熱
    抵抗体式空気流量測定装置の被測定流体の逆流による測
    定誤差を補正する発熱抵抗体式空気流量測定装置の誤差
    補正方法。
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