JPH1181458A - エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部 - Google Patents

エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部

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JPH1181458A
JPH1181458A JP9236361A JP23636197A JPH1181458A JP H1181458 A JPH1181458 A JP H1181458A JP 9236361 A JP9236361 A JP 9236361A JP 23636197 A JP23636197 A JP 23636197A JP H1181458 A JPH1181458 A JP H1181458A
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重雄 嶺脇
Satoru Aizawa
相沢  覚
Kotaro Toyama
幸太郎 遠山
Masafumi Yamamoto
雅史 山本
Hirofumi Kaneko
洋文 金子
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 地震や風等により建物に入力される振動エネ
ルギーを吸収して建物の振動を抑制するエネルギー吸収
機構を備えた柱梁接合部を提供する。 【解決手段】 柱と梁を剛接合してラーメンを形成する
建築構造体の柱梁接合部における前記梁の端部の位置
に、一方のフランジ及びウェブの一部を切り欠いた切欠
部を設け、同フランジ及びウェブの母材よりも降伏点の
低い金属材料からなるT字型断面のエネルギー吸収部材
のT形フランジを前記母材のフランジと一致させ、T形
ウェブを前記母材のウェブと一致させて前記切欠部の中
へ一体的に組み込むと共に、梁耐力を確保する平板状の
中間フランジを前記の各フランジと平行に前記T形ウェ
ブと母材のウェブの間へ一体的に組み込み接合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、建築構造体の柱
梁接合部の技術分野に属し、地震や風等により建物に入
力される振動エネルギーを吸収して建物の振動を抑制す
るエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、柱と梁を剛接合してラーメンを形
成する建築構造体の柱梁接合部、特に振動エネルギーを
吸収し建物の振動を抑制する耐震性の柱梁接合部に関し
ては、下記するような技術が提案されている。 特開平8−151686号公報には、建築構造体の
柱梁接合部における柱梁のフランジ交差部の材軸方向
に、柱材又は梁材よりも降伏点が低い金属材料からなる
T字形断面のエネルギー吸収部材が、そのウェブ部を前
記柱又は梁のウェブと平行な配置としたハンチ形状に一
体的に接合されたエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合
部が記載されている。 特開平8−326154号公報には、建築構造体の
柱梁接合部における柱及び梁のフランジ交差部の材軸方
向に、柱材又は梁材と合一に変位する取付板を前記柱又
は梁のウェブと平行な配置で各々が相対変位するハンチ
形状に取付け、柱材及び梁材の前記取付板の相互間に粘
着性体シートを接着したエネルギー吸収機構を備えた柱
梁接合部が記載されている。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
(1) 上記の柱梁接合部によれば、振動エネルギーを塑
性エネルギーとして吸収し建物の振動を抑制することは
可能であるが、そのエネルギー吸収機構は、ハンチ形状
とされ中立軸から距離を大きくすることにより、エネル
ギー吸収機構に生じる塑性ひずみを増幅し、振動エネル
ギー吸収性能を向上させる構成とされているため、梁成
を大きくすることになり、建築計画上、階高を大きくす
ることになり、設計上の自由度を制限することになる。 (2) 上記の柱梁接合部は、床スラブが梁上部に設置さ
れる場合に、片側のみにハンチ状にエネルギー吸収機構
を設けたものであるが、やはり梁成を大きくすることに
変わりなく、建築計画上、階高を大きくする結果とな
り、設計上の自由度を制限することになる。
【0004】従って、本発明の目的は、エネルギー吸収
機構を組み込んだ状態においても、設計上の自由度を制
限せず、しかも地震や風等により建物に入力される振動
エネルギーを十分に吸収することが可能なエネルギー吸
収機構を備えた柱梁の接合部を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
めの手段として、請求項1に記載した発明に係るエネル
ギー吸収機構を備えた柱梁接合部は、柱と梁を剛接合し
てラーメンを形成する建築構造体の柱梁接合部におい
て、前記梁の端部の位置に、一方のフランジ及びウェブ
の一部を切り欠いた切欠部を設け、同フランジ及びウェ
ブの母材よりも降伏点の低い金属材料からなるT字型断
面のエネルギー吸収部材のT形フランジを前記母材のフ
ランジと一致させ、T形ウェブを前記母材のウェブと一
致させて前記切欠部の中へ一体的に組み込むと共に、梁
耐力を確保する平板状の中間フランジを前記の各フラン
ジと平行に前記T形ウェブと母材のウェブの間へ一体的
に組み込み接合していることを特徴とする。
【0006】請求項2に記載した発明に係るエネルギー
吸収機構を備えた柱梁接合部は、柱と梁を剛接合してラ
ーメンを形成する建築構造体の柱梁接合部において、前
記梁の端部近傍の位置に、一方のフランジ及びウェブの
一部を切り欠いた切欠部を設け、同フランジ及びウェブ
の母材よりも降伏点の低い金属材料からなるT字型断面
のエネルギー吸収部材のT形フランジを前記母材のフラ
ンジと一致させ、T形ウェブを前記母材のウェブと一致
させて前記切欠部の中へ一体的に組み込むと共に、梁耐
力を確保する平板状の中間フランジを前記の各フランジ
と平行に前記T形ウェブと母材のウェブの間へ一体的に
組み込み接合していることを特徴とする。
【0007】請求項3に記載した発明は、請求項1又は
2に記載したエネルギー吸収部材及び中間フランジを前
記切欠部に接合する手段は、溶接であることを特徴とす
る。請求項4に記載した発明は、請求項1又は2に記載
した中間フランジは、梁の横断面における位置及びその
断面積が、梁耐力の確保、及びひずみ分布の中立軸を母
材の非切欠フランジの方向へ偏位させ、エネルギー吸収
部材に相対的に大きなひずみが生じるように構成されて
いることを特徴とする。
【0008】請求項5に記載した発明は、請求項1又は
2に記載した中間フランジは、切欠部として切り欠かれ
た母材のフランジの残り部分と軸線方向の重なり長さを
持っていることを特徴とする。請求項6に記載した発明
は、請求項5に記載した中間フランジと切欠部として切
り欠かれた母材のフランジの残り部分との重なり長さの
範囲に、母材よりも降伏点の低い金属材料からなるエネ
ルギー吸収部材のT形ウェブの延長部分を一体的に組み
込み接合していることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施形態及び実施例】本発明は、柱2と梁1を
剛接合してラーメンを形成する建築構造体の柱梁接合部
に実施される。請求項1の発明に係るエネルギー吸収機
構を備えた柱梁接合部は、図1A、Bに示したように、
梁1の端部の位置(端部から梁スパンの中央側へ適切な
長さの範囲)に、下側のフランジ1b及びウェブ1cの
一部を矩形状に切り欠いた切欠部Zを設け(図1A)、
前記フランジ1b及びウェブ1cの母材よりも降伏点の
低い金属材料(極低降伏点鋼、低降伏点鋼、ステンレス
鋼等。母材が高張力鋼の場合には普通鋼でもよい。)か
らなるT字型断面のエネルギー吸収部材3を、図1Bに
示したように、そのT形フランジ3aを下側のフランジ
1bと一致させ、T形ウェブ3bを母材のウェブ1cと
一致させて前記切欠部Zの中へ組み込む。更に、梁耐力
を確保する平板状の中間フランジ6を、前記T形ウェブ
3bと母材のウェブ1cとの間へ梁母材の上下のフラン
ジ1a、1b及びT形フランジ3aと平行な配置で一体
的に組み込み、それぞれ溶接により一体的に接合した構
成とされている。中間フランジ6は、梁耐力を確保する
ため、梁母材と同等の強度を有する金属材料で製作され
ている。
【0010】図1中の符号4及び5は、柱2の補強用と
して梁1の上下のフランジ1a、1b及び中間フランジ
6と同一レベルに設けたスチフナーである。請求項2の
発明に係るエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部は、
図2A、Bに示したように、梁1の端部から少し離れた
端部近傍の位置に、下側のフランジ1b及びウェブ1c
の一部を矩形状に切り欠いた切欠部Zを設け(図2
A)、前記フランジ1b及びウェブ1cの母材よりも降
伏点の低い金属材料(極低降伏点鋼、低降伏点鋼、ステ
ンレス鋼等。母材が高張力鋼の場合には普通鋼でもよ
い。)からなるT字型断面のエネルギー吸収部材3を、
図2Bに示したように、そのT形フランジ3aを母材の
下側のフランジ1bと一致させ、T形ウェブ3bを母材
のウェブ1cと一致させて前記切欠部Zの中へ組み込
む。更に、梁耐力を確保する中間フランジ6を、前記T
形ウェブ3bと母材のウェブ1cとの間へ梁母材のフラ
ンジ1a、1b及びT形フランジ3aとそれぞれ平行な
配置で組み込み溶接により一体的に接合した構成とされ
ている。この中間フランジ6も、梁耐力を確保するた
め、梁母材と同等の強度を有する金属材料で製作されて
いる。本実施例の場合は、図2Aで明らかなように、切
欠部Zには下側のフランジ1bが両サイドから長さLだ
け突き出た構成とされている。
【0011】図2中の符号4も柱2の補強用として梁1
の上下のフランジ1a、1bと同一レベルに設けたスチ
フナーである。上記の各実施例における中間フランジ6
は、梁1の横断面における位置及びその断面積が、梁耐
力の確保、及びひずみ分布の中立軸を母材の非切欠フラ
ンジ(上方のフランジ)1aの方向へ偏位させ、エネル
ギー吸収部材3に相対的に大きなひずみが生じるように
構成される(図3参照)。
【0012】即ち、図3Aには中間フランジ6を持たな
い従来一般の梁の横断面を示し、図3Bには本発明に係
るエネルギー吸収部材3及び中間フランジ6を含む梁1
の横断面図を示している。各々には梁1に外力が加えら
れた場合に発生するひずみ分布図も示している。これら
図3A、Bの対比で明らかなように、従来一般の梁は、
横断面の中央に中立軸N−Nが位置し、これを中心とし
て上下対称形状にひずみ分布が生じる(図3A)。これ
に対し、本発明のように中間フランジ6を設置した場合
には、断面係数が変化して中立軸N−Nが上方のフラン
ジ1aの方へ偏位する。その結果、中立軸N−Nからの
距離が大きくなったエネルギー吸収部材3には相対的に
増幅された塑性ひずみが生じることになる(図3B)。
【0013】ここでエネルギー吸収部材3のT形フラン
ジ3aの断面積LAFを、母材のフランジ1a、1bの断
面積AF のγ倍(LF=γAF )とし、同様に中間フラ
ンジ6の断面積MFを母材のフランジ1a、1bの断面
積AF のα倍(MF=αAF)とし、また中間フランジ
6の挿入位置を母材梁成Hのβ倍(βH)とすると、断
面の平面保持を仮定し、断面内力が釣り合っていること
により、エネルギー吸収部材3のT形フランジ3aの塑
性率μ、中間フランジ6の塑性率θ、及びエネルギー吸
収部材3を組み込む断面の曲げ耐力My と母材断面の曲
げ耐力My0の比λ(=My /My0)は、それぞれ次の
(式1)〜(式3)で表すことができる。
【0014】 (曲げ耐力比の式) λ=β(1−γ・φ)+γ・φ ……(式1) (中間フランジ塑性率の式) θ=(1−γ・φ)/α ……(式2) (エネルギー吸収機構部分の塑性率の式) μ=α/β・(1−γ・φ)+(1−β)/β ……(式3) また、上記の(式1)〜(式3)を変形すると、α、
β、γはそれぞれ次の(式4)〜(式6)で表すことが
できる。
【0015】 (中間フランジ断面積比の式) α=[θ・μ・(1−λ)−λ・θ+1]/θ2 ・(μ−1)…(式4) (中間フランジの位置の式) β=(λ−γ・φ)/1−γ・φ ……(式5) (エネルギー吸収部材のT形フランジの断面積比の式) γ=(1/φ)・[λ・θ・(μ+1)−(θ+1)]/θ・(μ−1) ……(式6) 但し、上記の式中のφは、フランジ1a、1b及びウェ
ブ1cの母材の降伏点σy とエネルギー吸収部材3の降
伏点Lσyとの比(φ=Lσy/σy )である(図5及び図
6参照)。図5のひずみ分布図は、上側のフランジ1a
(母材)の降伏時まで応力がひずみに正比例しているこ
とから図5に示されたように求められる(図5及び図6
において前記降伏点σyLσyに対応するひずみをそれ
ぞれεyLεyとしている)。また、曲げ応力は、梁母
材のフランジ1a、1b及びT形フランジ3aのみで負
担するものとし、ウェブ1c、3b、3cの効果は微小
であると仮定し無視するものとする。
【0016】ここで、一例としてγ=1、φ=1/3と
しα=1.0、1.2、1.5に対するβを変化させた
時のμ、θ、λの変化をそれぞれ図7、図8、図9のグ
ラフに表す。前記図7〜図9から明らかなように、中間
フランジ6の断面積を大きくする(αを大きくする)
と、エネルギー吸収部材3に生じる塑性ひずみは増大す
る(μが増大する)が、梁断面の曲げ耐力は略一定であ
る(λは略一定である)ことが分かる。また、中間フラ
ンジ6の位置をフランジ1aに近づける(βを小さくす
る)と、エネルギー吸収部材3に生じる塑性ひずみは増
大する(μは増大する)が、梁断面の曲げ耐力は線形に
減少する(λは減少する)。ここで示されるエネルギー
吸収部材3に生じる塑性ひずみの大小は、エネルギー吸
収部材3における振動エネルギー吸収能力の大小を示し
ている。
【0017】上記のことから建築構造体の柱梁接合部に
おいて、エネルギー吸収機構(エネルギー吸収部材3及
び中間フランジ6)を組み込む位置における必要な曲げ
耐力を設定することにより、その耐力に応じて適切なエ
ネルギー吸収機構の設計が可能であると言える。また、
適切な設計範囲としてα<2、γ<2、0.5<β<
1.0とすると、上記の(式3)より、エネルギー吸収
部材3に生じる塑性率は10以下となる(μ<10)。
このことからエネルギー吸収部材3に極低降伏点鋼を用
いると、塑性率が10程度であれば再使用可能、つまり
取り替えが不要であるということが分かる。
【0018】次に、本発明の前記中間フランジ6は、切
欠部Zとして切り欠かれた下方のフランジ1bと軸線方
向の重なり長さLを持っている(請求項1の発明では片
側、請求項2の発明では両側)。そこで中間フランジ6
と下方のフランジ1bの間に挟まれたT形ウェブ3bの
延長部分3c(図4)が設けられ、前記両フランジ6、
1bに負荷する応力により前記T形ウェブ3bの延長部
分3cに大きなせん断ひずみが生じ、そのエネルギーを
吸収するように構成されている(図4参照)。これによ
り、更にエネルギー吸収機構のエネルギー吸収能力を高
めることができる。
【0019】上記の効果を検証し、最適な場合を求める
ために、図12A〜Fのような6つのケースを想定し、
有限要素法(FEM)を用いて解析する。図12A〜F
は、図11に示した梁1を簡略に模式図化して描いたも
のである。図11の梁1は請求項1の発明に係るエネル
ギー吸収機構を備えた柱梁接合部を実施した解析モデル
であり、左端部は固定端となっている(つまり剛接合さ
れている)。また、実験において、該解析モデルは、梁
長さスパン1/2の片持梁形式となっており、前記解析
モデルの片持梁先端の梁成方向中央の節点に強制変位を
与える変位制御載荷を設ける方法で実施された。
【0020】図11の解析モデルを用いて行った実験及
びFEM解析は、α=γ=1、β=2/3とし、図12
A〜Fに、梁成H=300mm、エネルギー吸収機構のウ
ェブ3bの長さLH =100mm、梁幅G=150mm、エ
ネルギー吸収部材3のフランジ3aの長さLF=300
mmと共通の要素を与えて実施した。図12A〜Fに図示
された解析パラメータの関係を以下に示す。
【0021】図12Aのケースでの解析パラメータの関
係式LWLF+2×LH 、LFLW 図12Bのケースでの解析パラメータの関係式LWLF、LFLW 図12Cのケースでの解析パラメータの関係式LWLFLH 、LFLW 図12Dのケースでの解析パラメータの関係式LWLF、LFLFLH 図12Eのケースでの解析パラメータの関係式LWLF、LFLF+2×LH 図12Fのケースでの解析パラメータの関係式LW=0、LFLF 上記図12のA〜Fのケースについて荷重−変位関係を
描いたグラフが図13のように得られた。
【0022】図13により母材弾性範囲で梁単体の等価
減衰定数h=4〜6%が得られることが確認された。等
価減衰定数hとはエネルギー吸収性能を表す定数であ
り、母材のみで弾性範囲であればh=0%となる。等価
減衰定数hが相対的に大きいのは、図12A、B、Cの
ケースであるが、等価減衰定数hが最も大きい図12B
のケースは、図10で示すB部分のウェブ2に局部的な
ひずみ集中が発生し梁耐力が低下してしまうので適当で
はない。次に、図12Aのケースは、図12Cのケース
と同等の等価減衰定数hが得られるが、図12Cのケー
スに比較して、エネルギー吸収部材の量が多いので効率
が良くない構成である。図14は、図12Cのケースの
エネルギー吸収部材3のT形フランジ3aの応力ひずみ
関係図であるが、フランジの塑性率は10〜15程度と
なり、安定したエネルギー吸収を期待できる範囲にある
ことが分かる(但し、母材の弾性域であることが示され
ている)。図12Dのケースでは、下方のフランジ1b
と中間フランジ6との間にエネルギー吸収部材3のT形
ウェブの延長部分3cを設けていないことから等価減衰
定数hが図12Cのケースに比べて1割強小さくなって
いる。以上から図12Cのケースが6つ想定されたモデ
ルの内最適なものであることが分かった。
【0023】本発明のようにエネルギー吸収機構(エネ
ルギー吸収部材3及び中間フランジ6)を組み入れるこ
とにより中間フランジ6の始端部で梁断面が不連続とな
るため、図10に示すB部分のウェブ2に局部的なひず
み集中が発生するが、母材の下側のフランジ1bと中間
フランジ6の軸線方向の重なり長さ(図中の長さL)を
適切に設計することにより、母材の下側のフランジ1b
から中間フランジ6への応力の伝達をスムーズにし、前
記の局部的なひずみの集中を抑制することが可能である
ことがFEM解析により確認できたのである。
【0024】上述したようにFEM解析による検討か
ら、本発明に係るエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合
部は、適切に設計され、その結果、エネルギー吸収性能
(塑性率分布)が制御されたものとして実施される。
【0025】
【本発明が奏する効果】本発明に係るエネルギー吸収機
構を備えた柱梁接合部は、梁端部又は梁端部近傍にエネ
ルギー吸収機構を設置する構成であるため、同エネルギ
ー吸収機構を設置するための壁、ブレース、間柱等を必
要とせず、梁成を大きくする必要もないので、設計上の
自由度が制限されない。このため、建築構造物の架構に
数多く、バランス良く配置することが可能である。
【0026】また、前記エネルギー吸収機構は、地震や
風等の水平外力を受けた時に大きな応力が生じる梁端部
又は梁端部近傍の位置に設置されるため、その適切な設
計を行うことでエネルギー吸収機構部分に大きなひずみ
を生じさせることができ、エネルギー吸収機構の機能を
十分に生かすことができる。更に、制振効果の定量的な
把握、及び安全性に関する検討等も、通常の構造設計で
行われる部材の断面設計に関する検討方法より可能であ
るという利点もある。その具体例として上記した有限要
素法(FEM)解析による検討があげられ、梁単体での
等価減衰定数hは、h=4〜6%ということが分かった
が、建物構造体全体では一般的におおよそその半分の等
価減衰定数h=2〜3%が付加されることになる。更
に、建物自体(構造体を構成する部材ではなく、外装材
等の仕上材によるエネルギー吸収能力)の等価減衰定数
hは一般に2〜3%とされていることを考慮すると、本
発明によるエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部を採
用することにより建物全体のエネルギー吸収能力は大幅
に向上することが分かる。
【0027】前記エネルギー吸収機構は、梁母材部分を
弾性状態に留めたままで、該エネルギー吸収機構に生じ
る塑性変形により大きな振動エネルギーを吸収すること
ができるので、少量の材料で大きな働きをする。よっ
て、一次設計レベル外力に対しても応答の低減効果を十
分に期待できる。以上のことから、本発明によれば、安
全性が高く、設計上の自由度が制限されず、経済的に有
利である建築構造物の設計を可能とすることに寄与す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】Aは梁の切欠部を示した柱梁接合部の正面図、
Bは前記切欠部にエネルギー吸収機構を組込んだ柱梁接
合部の正面図である。
【図2】Aは梁の切欠部を示した柱梁接合部の正面図、
Bは前記切欠部にエネルギー吸収機構を組込んだ柱梁接
合部の正面図である。
【図3】Aは中間フランジが設置されていない従来一般
の梁の横断面図とそのひずみ分布図、Bは図1BのA−
A矢視及び図2BのA’−A’矢視に相当する断面図と
そのひずみ分布図である。
【図4】中間フランジと下側のフランジに挟まれたエネ
ルギー吸収部材のウェブ部の延長部分を示す正面図であ
る。
【図5】中間フランジの配置とそのひずみ分布を示した
模式図である。
【図6】応力ひずみ関係図である。
【図7】中間フランジの位置と中間フランジ塑性率、曲
げ耐力低下率、エネルギー吸収機構塑性率の関係図であ
る。
【図8】中間フランジの位置と中間フランジ塑性率、曲
げ耐力低下率、エネルギー吸収機構塑性率の関係図であ
る。
【図9】中間フランジの位置と中間フランジ塑性率、曲
げ耐力低下率、エネルギー吸収機構塑性率の関係図であ
る。
【図10】エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部にお
ける局部的なひずみ集中の発生を説明する正面図であ
る。
【図11】FEM解析に用いた解析モデルの斜視図であ
る。
【図12】A〜Fは実験に想定した6つのケースの概念
図である。
【図13】荷重、変位関係図である。
【図14】応力、ひずみ関係図である。
【符号の説明】
2 柱 1 梁 1b 下側のフランジ 1c ウェブ Z 切欠部 3 エネルギー吸収部材 3a T形フランジ 3b T形ウェブ 6 中間フランジ 1a 非切欠フランジ L 軸線方向の重なり長さ 3c T形ウェブの延長部分
フロントページの続き (72)発明者 遠山 幸太郎 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 山本 雅史 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 金子 洋文 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 柱と梁を剛接合してラーメンを形成する
    建築構造体の柱梁接合部において、 前記梁の端部の位置に、一方のフランジ及びウェブの一
    部を切り欠いた切欠部を設け、同フランジ及びウェブの
    母材よりも降伏点の低い金属材料からなるT字型断面の
    エネルギー吸収部材のT形フランジを前記母材のフラン
    ジと一致させ、T形ウェブを前記母材のウェブと一致さ
    せて前記切欠部の中へ一体的に組み込むと共に、梁耐力
    を確保する平板状の中間フランジを前記の各フランジと
    平行に前記T形ウェブと母材のウェブの間へ一体的に組
    み込み接合していることを特徴とする、エネルギー吸収
    機構を備えた柱梁接合部。
  2. 【請求項2】 柱と梁を剛接合してラーメンを形成する
    建築構造体の柱梁接合部において、 前記梁の端部近傍の位置に、一方のフランジ及びウェブ
    の一部を切り欠いた切欠部を設け、同フランジ及びウェ
    ブの母材よりも降伏点の低い金属材料からなるT字型断
    面のエネルギー吸収部材のT形フランジを前記母材のフ
    ランジと一致させ、T形ウェブを前記母材のウェブと一
    致させて前記切欠部の中へ一体的に組み込むと共に、梁
    耐力を確保する平板状の中間フランジを前記の各フラン
    ジと平行に前記T形ウェブと母材のウェブの間へ一体的
    に組み込み接合していることを特徴とする、エネルギー
    吸収機構を備えた柱梁接合部。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載したエネルギー吸
    収部材及び中間フランジを前記切欠部に接合する手段
    は、溶接であることを特徴とする、エネルギー吸収機構
    を備えた柱梁接合部。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2に記載した中間フランジ
    は、梁の横断面における位置及びその断面積が、梁耐力
    の確保、及びひずみ分布の中立軸を母材の非切欠フラン
    ジの方向へ偏位させ、エネルギー吸収部材に相対的に大
    きなひずみが生じるように構成されていることを特徴と
    する、エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2に記載した中間フランジ
    は、切欠部として切り欠かれた母材のフランジの残り部
    分と軸線方向の重なり長さを持っていることを特徴とす
    る、エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載した中間フランジと切欠
    部として切り欠かれた母材のフランジの残り部分との重
    なり長さの範囲に、母材よりも降伏点の低い金属材料か
    らなるエネルギー吸収部材のT形ウェブの延長部分を一
    体的に組み込み接合していることを特徴とする、エネル
    ギー吸収機構を備えた柱梁接合部。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH09221835A (ja) * 1996-02-15 1997-08-26 Ohbayashi Corp 建物の制振構造

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