JP3600887B2 - エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、建築構造体の柱梁接合部の技術分野に属し、地震や風等により建物に入力される振動エネルギーを吸収して建物の振動を抑制するエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、柱と梁を剛接合してラーメンを形成する建築構造体の柱梁接合部、特に振動エネルギーを吸収し建物の振動を抑制する耐震性の柱梁接合部に関しては、下記するような技術が提案されている。
▲1▼ 特開平8−151686号公報には、建築構造体の柱梁接合部における柱梁のフランジ交差部の材軸方向に、柱材又は梁材よりも降伏点が低い金属材料からなるT字形断面のエネルギー吸収部材が、そのウェブ部を前記柱又は梁のウェブと平行な配置としたハンチ形状に一体的に接合されたエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部が記載されている。
▲2▼ 特開平8−326154号公報には、建築構造体の柱梁接合部における柱及び梁のフランジ交差部の材軸方向に、柱材又は梁材と合一に変位する取付板を前記柱又は梁のウェブと平行な配置で各々が相対変位するハンチ形状に取付け、柱材及び梁材の前記取付板の相互間に粘着性体シートを接着したエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部が記載されている。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
(1) 上記▲1▼の柱梁接合部によれば、振動エネルギーを塑性エネルギーとして吸収し建物の振動を抑制することは可能であるが、そのエネルギー吸収機構は、ハンチ形状とされ中立軸から距離を大きくすることにより、エネルギー吸収機構に生じる塑性ひずみを増幅し、振動エネルギー吸収性能を向上させる構成とされているため、梁成を大きくすることになり、建築計画上、階高を大きくすることになり、設計上の自由度を制限することになる。
(2) 上記▲2▼の柱梁接合部は、床スラブが梁上部に設置される場合に、片側のみにハンチ状にエネルギー吸収機構を設けたものであるが、やはり梁成を大きくすることに変わりなく、建築計画上、階高を大きくする結果となり、設計上の自由度を制限することになる。
【0004】
従って、本発明の目的は、エネルギー吸収機構を組み込んだ状態においても、設計上の自由度を制限せず、しかも地震や風等により建物に入力される振動エネルギーを十分に吸収することが可能なエネルギー吸収機構を備えた柱梁の接合部を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部は、柱と梁を剛接合してラーメンを形成する建築構造体の柱梁接合部において、
前記梁の端部の位置に、一方のフランジ及びウェブの一部を切り欠いた切欠部を設け、同フランジ及びウェブの母材よりも降伏点の低い金属材料からなるT字型断面のエネルギー吸収部材のT形フランジを前記母材のフランジと一致させ、T形ウェブを前記母材のウェブと一致させて前記切欠部の中へ一体的に組み込むと共に、梁耐力を確保する平板状の中間フランジを前記の各フランジと平行に前記T形ウェブと母材のウェブの間へ一体的に組み込み接合していることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明に係るエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部は、柱と梁を剛接合してラーメンを形成する建築構造体の柱梁接合部において、
前記梁の端部近傍の位置に、一方のフランジ及びウェブの一部を切り欠いた切欠部を設け、同フランジ及びウェブの母材よりも降伏点の低い金属材料からなるT字型断面のエネルギー吸収部材のT形フランジを前記母材のフランジと一致させ、T形ウェブを前記母材のウェブと一致させて前記切欠部の中へ一体的に組み込むと共に、梁耐力を確保する平板状の中間フランジを前記の各フランジと平行に前記T形ウェブと母材のウェブの間へ一体的に組み込み接合していることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載したエネルギー吸収部材及び中間フランジを前記切欠部に接合する手段は、溶接であることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項1又は2に記載した中間フランジは、梁の横断面における位置及びその断面積が、梁耐力の確保、及びひずみ分布の中立軸を母材の非切欠フランジの方向へ偏位させ、エネルギー吸収部材に相対的に大きなひずみが生じるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載した発明は、請求項1又は2に記載した中間フランジは、切欠部として切り欠かれた母材のフランジの残り部分と軸線方向の重なり長さを持っていることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した中間フランジと切欠部として切り欠かれた母材のフランジの残り部分との重なり長さの範囲に、母材よりも降伏点の低い金属材料からなるエネルギー吸収部材のT形ウェブの延長部分を一体的に組み込み接合していることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施形態及び実施例】
本発明は、柱2と梁1を剛接合してラーメンを形成する建築構造体の柱梁接合部に実施される。
請求項1の発明に係るエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部は、図1A、Bに示したように、梁1の端部の位置(端部から梁スパンの中央側へ適切な長さの範囲)に、下側のフランジ1b及びウェブ1cの一部を矩形状に切り欠いた切欠部Zを設け(図1A)、前記フランジ1b及びウェブ1cの母材よりも降伏点の低い金属材料(極低降伏点鋼、低降伏点鋼、ステンレス鋼等。母材が高張力鋼の場合には普通鋼でもよい。)からなるT字型断面のエネルギー吸収部材3を、図1Bに示したように、そのT形フランジ3aを下側のフランジ1bと一致させ、T形ウェブ3bを母材のウェブ1cと一致させて前記切欠部Zの中へ組み込む。更に、梁耐力を確保する平板状の中間フランジ6を、前記T形ウェブ3bと母材のウェブ1cとの間へ梁母材の上下のフランジ1a、1b及びT形フランジ3aと平行な配置で一体的に組み込み、それぞれ溶接により一体的に接合した構成とされている。中間フランジ6は、梁耐力を確保するため、梁母材と同等の強度を有する金属材料で製作されている。
【0010】
図1中の符号4及び5は、柱2の補強用として梁1の上下のフランジ1a、1b及び中間フランジ6と同一レベルに設けたスチフナーである。
請求項2の発明に係るエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部は、図2A、Bに示したように、梁1の端部から少し離れた端部近傍の位置に、下側のフランジ1b及びウェブ1cの一部を矩形状に切り欠いた切欠部Zを設け(図2A)、前記フランジ1b及びウェブ1cの母材よりも降伏点の低い金属材料(極低降伏点鋼、低降伏点鋼、ステンレス鋼等。母材が高張力鋼の場合には普通鋼でもよい。)からなるT字型断面のエネルギー吸収部材3を、図2Bに示したように、そのT形フランジ3aを母材の下側のフランジ1bと一致させ、T形ウェブ3bを母材のウェブ1cと一致させて前記切欠部Zの中へ組み込む。更に、梁耐力を確保する中間フランジ6を、前記T形ウェブ3bと母材のウェブ1cとの間へ梁母材のフランジ1a、1b及びT形フランジ3aとそれぞれ平行な配置で組み込み溶接により一体的に接合した構成とされている。この中間フランジ6も、梁耐力を確保するため、梁母材と同等の強度を有する金属材料で製作されている。本実施例の場合は、図2Aで明らかなように、切欠部Zには下側のフランジ1bが両サイドから長さLだけ突き出た構成とされている。
【0011】
図2中の符号4も柱2の補強用として梁1の上下のフランジ1a、1bと同一レベルに設けたスチフナーである。
上記の各実施例における中間フランジ6は、梁1の横断面における位置及びその断面積が、梁耐力の確保、及びひずみ分布の中立軸を母材の非切欠フランジ(上方のフランジ)1aの方向へ偏位させ、エネルギー吸収部材3に相対的に大きなひずみが生じるように構成される(図3参照)。
【0012】
即ち、図3Aには中間フランジ6を持たない従来一般の梁の横断面を示し、図3Bには本発明に係るエネルギー吸収部材3及び中間フランジ6を含む梁1の横断面図を示している。各々には梁1に外力が加えられた場合に発生するひずみ分布図も示している。これら図3A、Bの対比で明らかなように、従来一般の梁は、横断面の中央に中立軸N−Nが位置し、これを中心として上下対称形状にひずみ分布が生じる(図3A)。これに対し、本発明のように中間フランジ6を設置した場合には、断面係数が変化して中立軸N−Nが上方のフランジ1aの方へ偏位する。その結果、中立軸N−Nからの距離が大きくなったエネルギー吸収部材3には相対的に増幅された塑性ひずみが生じることになる(図3B)。
【0013】
ここでエネルギー吸収部材3のT形フランジ3aの断面積LAFを、母材のフランジ1a、1bの断面積AF のγ倍(LAF=γAF )とし、同様に中間フランジ6の断面積MAFを母材のフランジ1a、1bの断面積AF のα倍(MAF=αAF )とし、また中間フランジ6の挿入位置を母材梁成Hのβ倍(βH)とすると、断面の平面保持を仮定し、断面内力が釣り合っていることにより、エネルギー吸収部材3のT形フランジ3aの塑性率μ、中間フランジ6の塑性率θ、及びエネルギー吸収部材3を組み込む断面の曲げ耐力My と母材断面の曲げ耐力My0の比λ(=My /My0)は、それぞれ次の(式1)〜(式3)で表すことができる。
【0014】
(曲げ耐力比の式)
λ=β(1−γ・φ)+γ・φ ……(式1)
(中間フランジ塑性率の式)
θ=(1−γ・φ)/α ……(式2)
(エネルギー吸収機構部分の塑性率の式)
μ=α/β・(1−γ・φ)+(1−β)/β ……(式3)
また、上記の(式1)〜(式3)を変形すると、α、β、γはそれぞれ次の(式4)〜(式6)で表すことができる。
【0015】
(中間フランジ断面積比の式)
α=[θ・μ・(1−λ)−λ・θ+1]/θ2 ・(μ−1)…(式4)
(中間フランジの位置の式)
β=(λ−γ・φ)/1−γ・φ ……(式5)
(エネルギー吸収部材のT形フランジの断面積比の式)
γ=(1/φ)・[λ・θ・(μ+1)−(θ+1)]/θ・(μ−1)……(式6)
但し、上記の式中のφは、フランジ1a、1b及びウェブ1cの母材の降伏点σy とエネルギー吸収部材3の降伏点Lσyとの比(φ=Lσy/σy )である(図5及び図6参照)。図5のひずみ分布図は、上側のフランジ1a(母材)の降伏時まで応力がひずみに正比例していることから図5に示されたように求められる(図5及び図6において前記降伏点σy 、Lσyに対応するひずみをそれぞれεy 、Lεyとしている)。また、曲げ応力は、梁母材のフランジ1a、1b及びT形フランジ3aのみで負担するものとし、ウェブ1c、3b、3cの効果は微小であると仮定し無視するものとする。
【0016】
ここで、一例としてγ=1、φ=1/3としα=1.0、1.2、1.5に対するβを変化させた時のμ、θ、λの変化をそれぞれ図7、図8、図9のグラフに表す。前記図7〜図9から明らかなように、中間フランジ6の断面積を大きくする(αを大きくする)と、エネルギー吸収部材3に生じる塑性ひずみは増大する(μが増大する)が、梁断面の曲げ耐力は略一定である(λは略一定である)ことが分かる。また、中間フランジ6の位置をフランジ1aに近づける(βを小さくする)と、エネルギー吸収部材3に生じる塑性ひずみは増大する(μは増大する)が、梁断面の曲げ耐力は線形に減少する(λは減少する)。ここで示されるエネルギー吸収部材3に生じる塑性ひずみの大小は、エネルギー吸収部材3における振動エネルギー吸収能力の大小を示している。
【0017】
上記のことから建築構造体の柱梁接合部において、エネルギー吸収機構(エネルギー吸収部材3及び中間フランジ6)を組み込む位置における必要な曲げ耐力を設定することにより、その耐力に応じて適切なエネルギー吸収機構の設計が可能であると言える。また、適切な設計範囲としてα<2、γ<2、0.5<β<1.0とすると、上記の(式3)より、エネルギー吸収部材3に生じる塑性率は10以下となる(μ<10)。このことからエネルギー吸収部材3に極低降伏点鋼を用いると、塑性率が10程度であれば再使用可能、つまり取り替えが不要であるということが分かる。
【0018】
次に、本発明の前記中間フランジ6は、切欠部Zとして切り欠かれた下方のフランジ1bと軸線方向の重なり長さLを持っている(請求項1の発明では片側、請求項2の発明では両側)。そこで中間フランジ6と下方のフランジ1bの間に挟まれたT形ウェブ3bの延長部分3c(図4)が設けられ、前記両フランジ6、1bに負荷する応力により前記T形ウェブ3bの延長部分3cに大きなせん断ひずみが生じ、そのエネルギーを吸収するように構成されている(図4参照)。これにより、更にエネルギー吸収機構のエネルギー吸収能力を高めることができる。
【0019】
上記の効果を検証し、最適な場合を求めるために、図12A〜Fのような6つのケースを想定し、有限要素法(FEM)を用いて解析する。図12A〜Fは、図11に示した梁1を簡略に模式図化して描いたものである。図11の梁1は請求項1の発明に係るエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部を実施した解析モデルであり、左端部は固定端となっている(つまり剛接合されている)。また、実験において、該解析モデルは、梁長さスパン1/2の片持梁形式となっており、前記解析モデルの片持梁先端の梁成方向中央の節点に強制変位を与える変位制御載荷を設ける方法で実施された。
【0020】
図11の解析モデルを用いて行った実験及びFEM解析は、α=γ=1、β=2/3とし、図12A〜Fに、梁成H=300mm、エネルギー吸収機構のウェブ3bの長さLH =100mm、梁幅G=150mm、エネルギー吸収部材3のフランジ3aの長さLLF=300mmと共通の要素を与えて実施した。
図12A〜Fに図示された解析パラメータの関係を以下に示す。
【0021】
図12Aのケースでの解析パラメータの関係式
LLW=LLF+2×LH 、LF =LLW
図12Bのケースでの解析パラメータの関係式
LLW=LLF、LF =LLW
図12Cのケースでの解析パラメータの関係式
LLW=LLF+LH 、LF =LLW
図12Dのケースでの解析パラメータの関係式
LLW=LLF、LF =LLF+LH
図12Eのケースでの解析パラメータの関係式
LLW=LLF、LF =LLF+2×LH
図12Fのケースでの解析パラメータの関係式
LLW=0、LF =LLF
上記図12のA〜Fのケースについて荷重−変位関係を描いたグラフが図13のように得られた。
【0022】
図13により母材弾性範囲で梁単体の等価減衰定数h=4〜6%が得られることが確認された。等価減衰定数hとはエネルギー吸収性能を表す定数であり、母材のみで弾性範囲であればh=0%となる。
等価減衰定数hが相対的に大きいのは、図12A、B、Cのケースであるが、等価減衰定数hが最も大きい図12Bのケースは、図10で示すB部分のウェブ2に局部的なひずみ集中が発生し梁耐力が低下してしまうので適当ではない。次に、図12Aのケースは、図12Cのケースと同等の等価減衰定数hが得られるが、図12Cのケースに比較して、エネルギー吸収部材の量が多いので効率が良くない構成である。図14は、図12Cのケースのエネルギー吸収部材3のT形フランジ3aの応力ひずみ関係図であるが、フランジの塑性率は10〜15程度となり、安定したエネルギー吸収を期待できる範囲にあることが分かる(但し、母材の弾性域であることが示されている)。図12Dのケースでは、下方のフランジ1bと中間フランジ6との間にエネルギー吸収部材3のT形ウェブの延長部分3cを設けていないことから等価減衰定数hが図12Cのケースに比べて1割強小さくなっている。以上から図12Cのケースが6つ想定されたモデルの内最適なものであることが分かった。
【0023】
本発明のようにエネルギー吸収機構(エネルギー吸収部材3及び中間フランジ6)を組み入れることにより中間フランジ6の始端部で梁断面が不連続となるため、図10に示すB部分のウェブ2に局部的なひずみ集中が発生するが、母材の下側のフランジ1bと中間フランジ6の軸線方向の重なり長さ(図中の長さL)を適切に設計することにより、母材の下側のフランジ1bから中間フランジ6への応力の伝達をスムーズにし、前記の局部的なひずみの集中を抑制することが可能であることがFEM解析により確認できたのである。
【0024】
上述したようにFEM解析による検討から、本発明に係るエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部は、適切に設計され、その結果、エネルギー吸収性能(塑性率分布)が制御されたものとして実施される。
【0025】
【本発明が奏する効果】
本発明に係るエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部は、梁端部又は梁端部近傍にエネルギー吸収機構を設置する構成であるため、同エネルギー吸収機構を設置するための壁、ブレース、間柱等を必要とせず、梁成を大きくする必要もないので、設計上の自由度が制限されない。このため、建築構造物の架構に数多く、バランス良く配置することが可能である。
【0026】
また、前記エネルギー吸収機構は、地震や風等の水平外力を受けた時に大きな応力が生じる梁端部又は梁端部近傍の位置に設置されるため、その適切な設計を行うことでエネルギー吸収機構部分に大きなひずみを生じさせることができ、エネルギー吸収機構の機能を十分に生かすことができる。更に、制振効果の定量的な把握、及び安全性に関する検討等も、通常の構造設計で行われる部材の断面設計に関する検討方法より可能であるという利点もある。その具体例として上記した有限要素法(FEM)解析による検討があげられ、梁単体での等価減衰定数hは、h=4〜6%ということが分かったが、建物構造体全体では一般的におおよそその半分の等価減衰定数h=2〜3%が付加されることになる。更に、建物自体(構造体を構成する部材ではなく、外装材等の仕上材によるエネルギー吸収能力)の等価減衰定数hは一般に2〜3%とされていることを考慮すると、本発明によるエネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部を採用することにより建物全体のエネルギー吸収能力は大幅に向上することが分かる。
【0027】
前記エネルギー吸収機構は、梁母材部分を弾性状態に留めたままで、該エネルギー吸収機構に生じる塑性変形により大きな振動エネルギーを吸収することができるので、少量の材料で大きな働きをする。よって、一次設計レベル外力に対しても応答の低減効果を十分に期待できる。
以上のことから、本発明によれば、安全性が高く、設計上の自由度が制限されず、経済的に有利である建築構造物の設計を可能とすることに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】Aは梁の切欠部を示した柱梁接合部の正面図、Bは前記切欠部にエネルギー吸収機構を組込んだ柱梁接合部の正面図である。
【図2】Aは梁の切欠部を示した柱梁接合部の正面図、Bは前記切欠部にエネルギー吸収機構を組込んだ柱梁接合部の正面図である。
【図3】Aは中間フランジが設置されていない従来一般の梁の横断面図とそのひずみ分布図、Bは図1BのA−A矢視及び図2BのA’−A’矢視に相当する断面図とそのひずみ分布図である。
【図4】中間フランジと下側のフランジに挟まれたエネルギー吸収部材のウェブ部の延長部分を示す正面図である。
【図5】中間フランジの配置とそのひずみ分布を示した模式図である。
【図6】応力ひずみ関係図である。
【図7】中間フランジの位置と中間フランジ塑性率、曲げ耐力低下率、エネルギー吸収機構塑性率の関係図である。
【図8】中間フランジの位置と中間フランジ塑性率、曲げ耐力低下率、エネルギー吸収機構塑性率の関係図である。
【図9】中間フランジの位置と中間フランジ塑性率、曲げ耐力低下率、エネルギー吸収機構塑性率の関係図である。
【図10】エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部における局部的なひずみ集中の発生を説明する正面図である。
【図11】FEM解析に用いた解析モデルの斜視図である。
【図12】A〜Fは実験に想定した6つのケースの概念図である。
【図13】荷重、変位関係図である。
【図14】応力、ひずみ関係図である。
【符号の説明】
2 柱
1 梁
1b 下側のフランジ
1c ウェブ
Z 切欠部
3 エネルギー吸収部材
3a T形フランジ
3b T形ウェブ
6 中間フランジ
1a 非切欠フランジ
L 軸線方向の重なり長さ
3c T形ウェブの延長部分
Claims (6)
- 柱と梁を剛接合してラーメンを形成する建築構造体の柱梁接合部において、
前記梁の端部の位置に、一方のフランジ及びウェブの一部を切り欠いた切欠部を設け、同フランジ及びウェブの母材よりも降伏点の低い金属材料からなるT字型断面のエネルギー吸収部材のT形フランジを前記母材のフランジと一致させ、T形ウェブを前記母材のウェブと一致させて前記切欠部の中へ一体的に組み込むと共に、梁耐力を確保する平板状の中間フランジを前記の各フランジと平行に前記T形ウェブと母材のウェブの間へ一体的に組み込み接合していることを特徴とする、エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部。 - 柱と梁を剛接合してラーメンを形成する建築構造体の柱梁接合部において、
前記梁の端部近傍の位置に、一方のフランジ及びウェブの一部を切り欠いた切欠部を設け、同フランジ及びウェブの母材よりも降伏点の低い金属材料からなるT字型断面のエネルギー吸収部材のT形フランジを前記母材のフランジと一致させ、T形ウェブを前記母材のウェブと一致させて前記切欠部の中へ一体的に組み込むと共に、梁耐力を確保する平板状の中間フランジを前記の各フランジと平行に前記T形ウェブと母材のウェブの間へ一体的に組み込み接合していることを特徴とする、エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部。 - 請求項1又は2に記載したエネルギー吸収部材及び中間フランジを前記切欠部に接合する手段は、溶接であることを特徴とする、エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部。
- 請求項1又は2に記載した中間フランジは、梁の横断面における位置及びその断面積が、梁耐力の確保、及びひずみ分布の中立軸を母材の非切欠フランジの方向へ偏位させ、エネルギー吸収部材に相対的に大きなひずみが生じるように構成されていることを特徴とする、エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部。
- 請求項1又は2に記載した中間フランジは、切欠部として切り欠かれた母材のフランジの残り部分と軸線方向の重なり長さを持っていることを特徴とする、エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部。
- 請求項5に記載した中間フランジと切欠部として切り欠かれた母材のフランジの残り部分との重なり長さの範囲に、母材よりも降伏点の低い金属材料からなるエネルギー吸収部材のT形ウェブの延長部分を一体的に組み込み接合していることを特徴とする、エネルギー吸収機構を備えた柱梁接合部。
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