JP2000045560A

JP2000045560A - 制震装置及び八角形状パネル型ダンパー

Info

Publication number: JP2000045560A
Application number: JP10209075A
Authority: JP
Inventors: Tomiaki Cho; 富明張; Takeshi Sato; 武佐藤
Original assignee: Matsumura Gumi Corp
Current assignee: Matsumura Gumi Corp
Priority date: 1998-07-24
Filing date: 1998-07-24
Publication date: 2000-02-15

Abstract

(57)【要約】（修正有）【課題】建築構造物の揺れや変形等の地震応答をそれ
だけ低減できる制震装置、並びに該制震装置を構成する
ために供することができる地震エネルギー吸収用のダン
パーを提供する。【解決手段】建築構造物ＢＬにおける上下の梁１と両
側の柱２とで構成される四角形枠組１０に囲まれた領域
１０１に設けられた制震装置Ａであり、パネル型ダンパ
ー４と、四角形枠組１０の二つの対角線の一方Ｌ１に沿
って上側の柱梁接合部５０１からダンパー４へ、下側の
柱梁接合部５０４からダンパー４へそれぞれ延びる第１
上ブレース３１及び第１下ブレース３２と、他方の対角
線Ｌ２に沿って上側の柱梁接合部５０２からダンパー４
へ、下側の柱梁接合部５０３からダンパー４へそれぞれ
延びる第２上ブレース３３及び第２下ブレース３４とを
備えており、全体としてＸ字状を呈し、該Ｘ字交点部分
にパネル型ダンパー４を含んでいる制震装置Ａ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は建築構造物の制震装
置及び制震装置用の地震エネルギー吸収用ダンパーに関
する。

【０００２】

【従来の技術】今日、建築構造物を地震から保護する様
々の装置が提案されている。その代表的なものは、塑性
変形して地震エネルギーを吸収できるダンパーを組み込
んだ制震装置である。例えば図５に示すように、上下の
梁９１と両側の柱９２とで構成される枠組９０に囲まれ
た領域９００を有する建築構造物において、該領域９０
０における上下の梁９１間に、強度と剛性が大きい上下
部材９３１、９３１に剪断型ダンパー９３２を直列に接
続してなる間柱タイプのダンパー９３を設けてなる制震
装置が提案されている。また図６に示すように、同様の
領域９００を有する建築構造物において、該領域９００
における片方の梁９１に地震エネルギー吸収用ダンパー
（剪断型履歴ダンパー）９５を突設し、そのダンパー９
５にその領域に設置するブレース９６、９７を山形状又
は倒立山形状に接続してＹ形ダンパー構造を形成した制
震装置も提案されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】図５や図６に示すタイ
プの制震装置以前のいわゆるＫ形ブレース構造や偏心Ｋ
形ブレース構造の耐震構造は、大地震時に主構造部分で
ある梁と柱の塑性変形を許容し、主に主構造部分の履歴
エネルギーによって地震エネルギーを吸収しようとする
もので、地震時に柱や梁が損傷することがある。主構造
部分である柱や梁が損傷すると、その後の修復がきわめ
て困難である。また、修復できてもそのコストが高くつ
く。

【０００４】この点、図５に示す間柱タイプダンパーや
図６に示すＹ形ダンパー構造を採用した制震装置のよう
に地震エネルギー吸収ダンパーを採用した制震装置で
は、地震エネルギーが該ダンパーに吸収されるので、Ｋ
形ブレース構造や偏心Ｋ形ブレース構造の制震装置に比
べると、主構造部分である梁等の損傷が抑制され、従っ
てそれらの修復も容易である。

【０００５】しかし、このようなダンパーを採用した制
震装置の制震性能は、建築構造物の中に含め得るダンパ
ーの容量、すなわち、構造物の中に配置されるダンパー
の数（これは構面の数に影響される）とダンパー単体の
容量によるところが大きい。そして多くの場合、ダンパ
ーを配置できる構面の数には制約があるため、制震効果
を十分に発揮させるには少ないダンパー数でダンパー単
体の容量を大きくしなければならない。

【０００６】ところが既述の間柱タイプダンパーやＹ形
ダンパー構造では、ダンパーから梁に作用する２次応力
（付加曲げモーメント）を小さくしなければならないこ
とを考慮すると、ダンパー単体の容量が制約されてしま
い、十分な制震効果を発揮させることができない。そこ
で本発明は、建築構造物における上下の梁と両側の柱と
で構成される四角形枠組に囲まれた領域に設けられる制
震装置であって、地震にみまわれても建築構造物の主構
造部分である梁等の損傷を防止、又はその程度を軽減す
ることができるとともに、従来のダンパーを採用した制
震装置よりも地震エネルギーの吸収能力を大きくでき、
建築構造物の揺れや変形等の地震応答をそれだけ低減で
きる制震装置を提供することを課題とする。

【０００７】また本発明は、かかる制震装置を構成する
ために供することができる地震エネルギー吸収用のダン
パーを提供することを課題とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明者は前記課題を解
決するため研究を重ね、上下の柱梁接合部に接続される
Ｘ字状のブレースは、実質上、柱や梁に２次応力（付加
曲げモーメント）を発生させないことに着目し、さらに
Ｘ字状ブレースのＸ字交点部分に地震エネルギー吸収用
のダンパーを配置すれば、前記課題を解決できることを
見いだし、本発明を完成した。

【０００９】本発明は次の制震装置及びダンパーを提供
するものである。（１）制震装置建築構造物における上下の梁と両側の柱とで構成される
四角形枠組に囲まれた領域に設けられた制震装置であ
り、前記四角形枠組に囲まれた領域に配置され、該枠組
に向けて所定の面的広がりを有する地震エネルギー吸収
用のウエブを含むパネル型ダンパーと、前記四角形枠組
の二つの対角線の一方に沿って上側の一方の柱梁接合部
から前記ダンパーへ、下側の一方の柱梁接合部から前記
ダンパーへそれぞれ延びる第１上ブレース及び第１下ブ
レースと、前記四角形枠組の二つの対角線の他方に沿っ
て上側の他方の柱梁接合部から前記ダンパーへ、下側の
他方の柱梁接合部から前記ダンパーへそれぞれ延びる第
２上ブレース及び第２下ブレースとを備えており、全体
としてＸ字状を呈し、該Ｘ字交点部分に前記パネル型ダ
ンパーを含んでいることを特徴とする制震装置。（２）ダンパー所定の面的広がりを有する地震エネルギー吸収用のウエ
ブを含み、互いに対向する対辺を四つ有する制震装置用
の八角形状パネル型ダンパー。

【００１０】本発明に係る制震装置は、全体として、上
側の一方の柱梁接合部と下側の一方の柱梁接合部とに接
続されたブレースと、上側の他方の柱梁接合部と下側の
他方の柱梁接合部とに接続されたブレースとからなるＸ
字形状ブレースの様相を呈しており、従って地震にみま
われても建築構造物の主構造部分である柱や梁に２次応
力は実質上生じないので、主構造部分である柱や梁の損
傷を防止、又はその程度を軽減することができる。

【００１１】また、Ｘ字状ブレースのＸ字交点部分に
は、上下の梁と両側の柱とで構成される四角形枠組に向
けて所定の面的広がりを有する地震エネルギー吸収用の
ウエブを含むパネル型ダンパーが配置されており、該ダ
ンパー（特にそのウエブ）がいわゆる履歴ダンパーとし
て機能し、地震エネルギーを吸収でき、しかも既述のと
おり柱や梁には実質上２次応力が生じないので、該ダン
パーの容量を大きくして地震エネルギーの吸収能力を大
きくでき、そうすることで建築構造物の揺れや変形等の
地震応答を十分に低減することができる。

【００１２】さらに言えば、本発明制震装置を設けた建
築構造物では、地震時、地震エネルギーにより建築構造
物には揺れが発生したり、層間変形等の変形が発生しよ
うとするが、本発明制震装置を設けた部分ではブレース
及びパネル型ダンパーがその揺れや、層間変形等を抑制
するように働き、さらに大きい地震エネルギーが加わる
とブレースの軸力がパネル型ダンパーに加わり、それに
より該ダンパーが地震エネルギーの一部を吸収するよう
に塑性変形し始め、さらにはブレースの交番繰り返し圧
縮と引っ張りによってダンパーに加わる力と塑性変形の
履歴が生じ、この履歴エネルギーによって地震エネルギ
ーが吸収される。

【００１３】また、これらにより、建築構造物の揺れや
変形等の地震応答をそれだけ低減できる。さらに、かか
るパネル型ダンパーによる地震エネルギーの吸収により
柱、梁等の主構造部分の損傷は抑制され、地震後の建築
構造物の修復は主としてダンパー部分で済むようにな
り、それだけ容易に、安価に修復を行える。

【００１４】また本発明に係る制震装置やパネル型ダン
パーは、既存の建築構造物の耐震補強にも採用できる。
前記パネル型ダンパーは四角形等任意の形状のものを採
用できるが、例えば四角形のパネル型ダンパーでは、地
震時に該四角形の角部分（隅部分）に応力集中が生じや
すいので、それには限定されないが、例えば四角形の４
隅を三角形状に切除した形状を呈するもの、さらに言え
ば例えば互いに対向する対辺を四つ有する八角形状パネ
ル型ダンパーを採用することができる。

【００１５】このような八角形状パネル型ダンパーは、
既述の本発明に係る、所定の面的広がりを有する地震エ
ネルギー吸収用のウエブを含み、互いに対向する対辺を
四つ有する制震装置用の八角形状パネル型ダンパーであ
る。このような八角形状パネル型ダンパーを採用する場
合、一対の辺が前記四角形枠組の一方の対角線を横切っ
て配置されるとともに該対辺に対して前記第１の上下ブ
レースが接続され、もう一対の辺が前記四角形枠組の他
方の対角線を横切って配置されるとともに該対辺に対し
て前記第２の上下ブレースが接続される。

【００１６】普通には、該ダンパーの各対辺は互いに平
行にしておくとよい。具体例として、一辺ｄの正方形の
４隅を一辺ｄ／４の２等辺三角形状に切除してなる八角
形状を呈しているダンパーを挙げることができる。この
ダンパーの場合、辺長ｄ／２の各辺に対して前記ブレー
スを一つづつ接続するとよい。前記いずれのタイプのパ
ネル型ダンパーであれ、ウエブ厚さ方向に幅を有する板
体で構成されて前記ウエブの周縁に囲繞固定され、該ウ
エブの面外方向に対する剛性を付与する（換言すればウ
エブの面外方向へウエブの座屈等を抑制するための剛性
を付与する）フランジ枠を含んでいてもよい。この場
合、前記各ブレースは該フランジ枠に接続すればよい。

【００１７】また、いずれのタイプのパネル型ダンパー
であれ、前記ウエブ両面に沿って面外座屈抑制用の補強
部材を有していてもよい。また、前記のいずれのタイプ
のパネル型ダンパーの場合でも、該ダンパーを構成して
いる前記ウエブは、地震エネルギーをその塑性変形によ
って吸収できる部材であり、材質としては、普通鋼を用
いてもよいが、塑性変形能力に優れた低降伏点鋼（狭義
の低降伏点鋼や極低降伏点鋼）の使用も考えられる。

【００１８】前記低降伏点鋼とは、極軟鋼とも称されて
いるもので、炭素などの添加元素を極力少なくした純粋
な鉄に近い鋼材で、降伏点が普通鋼材に比べて低いが、
伸びが大きいものであり、このような低降伏点鋼は大手
鉄鋼メーカーから市販されている。前記のいずれのタイ
プの制震装置の場合でも、これが採用される前記建築構
造物は、それには限定されないが、代表例として鉄骨梁
を有する建築構造物、すなわち、ａ）鉄骨構造、ｂ）梁
が鉄骨製で柱が鉄筋コンクリート構造の混合構造、ｃ）
梁が鉄骨製で柱がコンクリート充填鉄骨柱のＣＦＴ構造
等の建築構造物を挙げることができ、このような鉄骨梁
を有する建築構造物に好適である。建築構造物が鉄骨梁
を有する建築構造物であるとき、本発明に係る制震装置
を設ける領域を提供する前記枠組の上下の梁は鉄骨梁と
なる。

【００１９】

【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を
参照して説明する。図１は本発明の１実施形態である制
震装置を備えた建築構造物の一部の概略構造を示す図で
ある。図２（Ａ）は図１に示す制震装置におけるパネル
型ダンパーの正面図であり、図２（Ｂ）は同ダンパーの
図２（Ａ）のＸ−Ｘ線に沿う断面図である。

【００２０】この建築構造物ＢＬは上下の鉄骨梁１及び
両側の柱２を備えており、これら梁及び柱で四角形枠組
１０が形成されている。上下の鉄骨梁１及び両側の柱２
で囲まれた領域、すなわち枠組１０内の領域１０１には
制震装置Ａが設けられている。上側鉄骨梁１の両端はこ
こでは柱２と接合され、柱梁接合部５０１、５０２を形
成している。下側鉄骨梁１は柱２と接合され、柱梁接合
部５０３、５０４を形成している。

【００２１】この制震装置Ａは、いわば上下の柱梁接合
部に接続されたＸ字状ブレースのＸ字交点部分に地震エ
ネルギー吸収用のダンパーを配置した構成のものであ
る。制震装置Ａは、四角形枠組１０に囲まれた領域１０
１の中央部に配置されたパネル型ダンパー４と、４本の
ブレース３１〜３４を備えている。ダンパー４は、図１
及び図２に示すように、枠組１０に向けて所定の面的広
がりを有する地震エネルギー吸収用のウエブ４１を含ん
でおり、ウエブ４１の周縁にはフランジ枠４２が囲繞固
定されているとともに、ウエブ４１の両面には補剛部材
であるスチフナー４３が設けられている。

【００２２】ウエブ４１は正方形の各隅部を２等辺３角
形に切除してなる八角形を呈している。フランジ枠４２
はウエブ４１の厚さ方向に所定の幅を有する板部材を該
幅方向における中央部をウエブ４１周縁の側端面に当て
がってウエブに囲繞固定されている。かくしてダンパー
４は全体として、一辺ｄの正方形の４隅を一辺ｄ／４の
２等辺三角形状に切除してなる八角形状を呈している。
そして互いに対向する平行２辺（対辺）のうち、辺長ｄ
／２の一つの対辺が四角形枠組１０の一方の対角線Ｌ１
をそれに垂直方向に（又は略垂直方向に）横切るように
配置されているとともに辺長ｄ／２のもう一つの対辺が
他方の対角線Ｌ２をそれに垂直方向に（又は略垂直に）
横切るように配置されている。

【００２３】スチフナー４３はそれぞれ十字形のスチフ
ナーであり、所定厚さの帯板部材をウエブ４１面に垂直
に配置するとともに十字形に組み合わせてウエブ４１及
びフランジ枠４２に溶接されている。スチフナー４３は
ウエブ４１の両面のそれぞれに、水平方向と鉛直方向に
設けられている。ウエブ面からの高さはフランジ枠４２
のウエブ面からの高さに等しいか、略等しい。

【００２４】なお、スチフナー４３に代えて図３（Ａ）
及び図３（Ｂ）に示すスチフナー４４を採用してもよ
い。スチフナー４４はウエブ４１の両面のそれぞれに一
本ずつ配置した部材４４１からなる十字形スチフナーで
ある。両部材４４１は断面コの字形状の部材であり、そ
の開口部を外側に向けて、且つ、水平方向と鉛直方向に
わたって配置され、ウエブ４１及びフランジ枠４２に溶
接されている。

【００２５】前記フランジ枠４２は、図１に示すように
制震装置Ａの一員として枠組１０内の領域１０１に配置
されたとき、ウエブ４１の面外方向に対する剛性を付与
するものであり、さらに言えば、ウエブ面外方向へのウ
エブの座屈等を抑制するための剛性を付与するものであ
る。スチスフナー４３（４４）もウエブ４１の面外座屈
を抑制するための補強部材（補剛部材）である。

【００２６】なおここでは、それには限定されないが、
ウエブ４１は普通鋼（或いは低降伏点鋼）から形成され
ており、フランジ枠４２とスチフナー４３（４４）は普
通鋼から形成されている。以上説明したようなパネル型
ダンパー４に対し４本のブレース３１〜３４が配設され
ているのであるが、これについてさらに説明する。

【００２７】構造物の四角形枠組１０には二つの対角線
Ｌ１、Ｌ２があり、ブレース３１、３２は一方の対角線
Ｌ１に沿って、ブレース長手方向中心軸線を一致させて
配置されており、ブレース３３、３４は他方の対角線Ｌ
２に沿って、ブレース長手方向中心軸線を一致させて配
置されている。さらに言えば、ブレース３１は枠組１０
の二つの対角線の一方Ｌ１に沿って配置され、上端部が
柱梁接合部５０１に接続されるとともに下端部がダンパ
ー４の辺長ｄ／２の一つの辺を形成しているフランジ枠
４２の部分４２１に接続されている。ブレース３２は、
対角線Ｌ１に沿って配置され、上端部がフランジ枠の対
向辺部分４２２に、下端部が柱梁接合部５０４にそれぞ
れ接続されている。

【００２８】同様に、ブレース３３は枠組１０の二つの
対角線の他方Ｌ２に沿って配置され、上端部が柱梁接合
部５０２に接続されるとともに下端部がダンパー４の辺
長ｄ／２の、さらにもう一つの辺を形成しているフラン
ジ枠４２の部分４２３に接続されている。ブレース３４
は、対角線Ｌ２に沿って配置され、上端部がフランジ枠
の対向辺部分４２４に、下端部が柱梁接合部５０３にそ
れぞれ接続されている。各ブレース３１〜３４は、そ
れには限定されないが、ここではＨ形鋼から形成されて
いる。各ブレースのフランジ枠４２への接続は、各ブレ
ース端に予め設けてあるエンドプレートｆと、該エンド
プレートｆ及びフランジ枠４２とに貫通させた高力ボル
ト（図示省略）を用いてなされている。

【００２９】このように制震装置Ａは、全体として、上
下の柱梁接合部間にわたされたＸ字状ブレースの形態を
呈しており、従って地震にみまわれても建築構造物ＢＬ
の主構造部分である柱２や梁１に２次応力は実質上生じ
ないので、柱２や梁１の損傷を防止、又はその程度を軽
減することができる。また、Ｘ字状ブレースのＸ字交点
部分には、上下の梁と両側の柱とで構成される四角形枠
組１０に向けて所定の面的広がりを有する地震エネルギ
ー吸収用のウエブ４１を含むパネル型ダンパー４が配置
されており、ダンパー４（特にそのウエブ４１）がいわ
ゆる履歴ダンパーとして機能し、地震エネルギーを吸収
でき、しかも柱２や梁１には実質上２次応力が生じない
ので、ダンパー４の容量を大きくして地震エネルギーの
吸収能力を大きくできる。

【００３０】パネル型ダンパーの容量（換言すれば水平
降伏剪断力）は、ダンパー全体の寸法並びにウエブの厚
さと降伏点できまり、変形能力はウエブの材質と幅厚比
（幅ｄ／厚さｔ）に影響されるから、所望のダンパー容
量、変形能を得るように、ダンパー４全体の寸法を設定
するとともに、ウエブ４１の材質及び厚さを設定すれば
よい。ここではウエブ４１の材質として前記のとおり普
通鋼を採用しているが、塑性変形能に富む低降伏点鋼を
採用してもよい。

【００３１】以上説明した制震装置Ａを設けた建築構造
物ＢＬでは、地震時、地震エネルギーにより建築構造物
ＢＬには揺れが発生したり、層間変形等の変形が発生し
ようとするが、制震装置Ａを設けた部分ではブレース３
１〜３４、ダンパー４がその揺れや、層間変形等を抑制
するように働き、さらに大きい地震エネルギーが加わる
とブレース３１〜３４の軸力がパネル型ダンパー４に加
わり、さらに言えばダンパー４のフランジ枠４２を介し
てダンパーウエブ４１に加わり、それにより該ダンパー
４が地震エネルギーの一部を吸収するように塑性変形し
始め、さらにはブレース３１〜３４の交番繰り返し圧縮
と引っ張りによってダンパー４に加わる力と塑性変形の
履歴が生じ、この履歴エネルギーによって地震エネルギ
ーが吸収される。また、これらにより、建築構造物ＢＬ
の揺れや変形等の地震応答をそれだけ低減できる。

【００３２】さらに、かかるパネル型ダンパー４による
地震エネルギーの吸収により柱２、梁１等の主構造部分
の損傷は抑制され、地震後の建築構造物の修復は主とし
てダンパー４部分で済むようになり、それだけ容易に、
安価に修復を行える。なお、制震装置Ａやパネル型ダン
パー４は、既存の建築構造物の耐震補強にも採用でき
る。

【００３３】以上説明した制震装置Ａを設けた領域１０
１を構成している枠組１０は略正方形を呈しており、各
ブレース３１〜３４は水平、垂直に対しそれぞれ略４５
度の角度をなしている。しかし、柱２、２間隔がより大
きいときには、図４（Ａ）に示すように、各ブレースの
水平方向に対する角度θは４５度より小さくなってもよ
い。このときもパネル型ダンパー４は八角形状のダンパ
ーでよく、枠組対角線Ｌ１に沿うブレース３１、３２を
接続するフランジ枠部分４２１、４２２は枠組対角線Ｌ
２に平行でもよく、枠組対角線Ｌ１に垂直又は略垂直方
向でもよい。同様に枠組対角線Ｌ２に沿うブレース３
３、３４を接続するフランジ枠部分４２３、４２４は枠
組対角線Ｌ１に平行でもよく、枠組対角線Ｌ２に垂直又
は略垂直方向でもよい。また、柱２、２間隔がさらに大
きくなってくると、図４（Ｂ）に示すように、柱２、２
の間にさらに柱２０を立設して、梁１、１は柱２、２０
で本発明にいう四角形枠組を形成し、この枠組内領域に
本発明に係る制震装置Ａ’を設けてもよい。

【００３４】

【発明の効果】以上説明したように本発明によると、建
築構造物における上下の梁と両側の柱とで構成される四
角形枠組に囲まれた領域に設けられる制震装置であっ
て、地震にみまわれても建築構造物の主構造部分である
梁等の損傷を防止、又はその程度を軽減することができ
るとともに、従来のダンパーを採用した制震装置よりも
地震エネルギーの吸収能力を大きくでき、建築構造物の
揺れや変形等の地震応答をそれだけ低減できる制震装置
を提供することができる。

【００３５】また本発明によると、かかる制震装置を構
成するために供することができる地震エネルギー吸収用
のダンパーを提供することができる。また本発明による
と、既存の建築構造物の耐震補強にも応用できる制震装
置及び地震エネルギー吸収用のダンパーを提供すること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る制震装置の１例の概略構成を示す
正面図である。

【図２】図（Ａ）は図１に示す制震装置におけるパネル
型ダンパーの正面図であり、図（Ｂ）は同ダンパーの図
（Ａ）のＸ−Ｘ線に沿う断面図である。

【図３】図（Ａ）及び図（Ｂ）は、スチフナーの他の例
を示すためのダンパーの正面図及び図（Ａ）のＹ−Ｙ線
に沿う断面図である。

【図４】図（Ａ）は本発明に係る制震装置の他の例の概
略構成を示す正面図であり、図（Ｂ）は本発明に係る制
震装置のさらに他の例の概略構成を示す正面図である。

【図５】従来の間柱タイプダンパーによる制震装置を示
す図である。

【図６】従来のＹ形ブレース構造を示す図である。

【符号の説明】

Ａ、Ａ’ 制震装置ＢＬ建築構造物１鉄骨梁２、２０柱１０枠組１０１枠組内領域５０１、５０２、５０３、５０４柱梁接合部３１ブレース（第１上ブレース）３２ブレース（第１下ブレース）３３ブレース（第２上ブレース）３４ブレース（第２下ブレース）ｆエンドプレート４パネル型ダンパー４１ウエブ４２フランジ枠４２１、４２２、４２３、４２４ブレースを接続する
フランジ枠部分４３、４４スチフナーｄダンパー４のブレース長手軸線方向を横切る方向の
幅（正方形の一辺長）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続きＦターム(参考） 2E125 AA33 AB01 AC15 AG03 AG12 AG43 AG57 BB09 BB16 BB31 BC09 BD01 BE08 CA05 EA25 3J048 AC06 BC09 BE10 BG06 DA10 EA38 3J066 AA30 BA03 BB01 BD07 BF02

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】建築構造物における上下の梁と両側の柱
とで構成される四角形枠組に囲まれた領域に設けられた
制震装置であり、前記四角形枠組に囲まれた領域に配置され、該枠組に向
けて所定の面的広がりを有する地震エネルギー吸収用の
ウエブを含むパネル型ダンパーと、前記四角形枠組の二つの対角線の一方に沿って上側の一
方の柱梁接合部から前記ダンパーへ、下側の一方の柱梁
接合部から前記ダンパーへそれぞれ延びる第１上ブレー
ス及び第１下ブレースと、前記四角形枠組の二つの対角線の他方に沿って上側の他
方の柱梁接合部から前記ダンパーへ、下側の他方の柱梁
接合部から前記ダンパーへそれぞれ延びる第２上ブレー
ス及び第２下ブレースとを備えており、全体としてＸ字状を呈し、該Ｘ字交点部分に前記パネル
型ダンパーを含んでいることを特徴とする制震装置。
【請求項２】前記パネル型ダンパーは互いに対向する対
辺を四つ有する八角形状パネル型ダンパーであり、一対
の辺が前記四角形枠組の一方の対角線を横切って配置さ
れているとともに該対辺に対して前記第１の上下ブレー
スが接続されており、もう一対の辺が前記四角形枠組の
他方の対角線を横切って配置されているとともに該対辺
に対して前記第２の上下ブレースが接続されている請求
項１記載の制震装置。
【請求項３】前記ダンパーの各対辺は互いに平行である
請求項２記載の制震装置。
【請求項４】前記パネル型ダンパーは、一辺ｄの正方形
の４隅を一辺ｄ／４の２等辺三角形状に切除してなる八
角形状を呈しており、辺長ｄ／２の各辺に対して前記ブ
レースが一つづつ接続されている請求項２記載の制震装
置。
【請求項５】前記パネル型ダンパーは、前記ウエブの厚
さ方向に幅を有する板体で構成されて前記ウエブの周縁
に囲繞固定され、該ウエブの面外方向に対する剛性を付
与するフランジ枠を含んでおり、前記各ブレースは該フ
ランジ枠に接続されている請求項１から４のいずれかに
記載の制震装置。
【請求項６】前記パネル型ダンパーは、前記ウエブ両面
に沿って面外座屈抑制用の補強部材を有している請求項
１から５のいずれかに記載の制震装置。
【請求項７】前記ウエブは低降伏点鋼から形成されて
いる請求項１から６のいずれかに記載の制震装置。
【請求項８】所定の面的広がりを有する地震エネルギ
ー吸収用のウエブを含み、互いに対向する対辺を四つ有
する制震装置用の八角形状パネル型ダンパー。
【請求項９】前記各対辺が互いに平行である請求項８記
載の八角形状パネル型ダンパー。
【請求項１０】一辺ｄの正方形の４隅を一辺ｄ／４の２
等辺三角形状に切除してなる八角形状を呈している請求
項８記載の八角形状パネル型ダンパー。
【請求項１１】前記ウエブの周縁に囲繞固定され、該ウ
エブの面外方向に対する剛性を付与するフランジ枠を含
んでいる請求項８から１０のいずれかに記載の八角形状
パネル型ダンパー。
【請求項１２】前記ウエブ両面に沿って面外座屈抑制用
の補強部材を有している請求項８から１１のいずれかに
記載の八角形状パネル型ダンパー。
【請求項１３】前記ウエブは低降伏点鋼から形成され
ている請求項８から１２のいずれかに記載の八角形状パ
ネル型ダンパー。